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2023年04月01日
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カテゴリ: 経済
 英国のEU離脱に伴って実施した外国人客に対する付加価値税(VAT)免税措置の廃止によって、大英帝国の観光が落日を迎えようとしている。
 多くの先進国にとって、外国人観光客の消費は経済、雇用に与える影響が大きく、英国も例外ではない。
 EUに対する優遇措置と考えていた付加価値税(VAT)免税措置の廃止が、思わぬところで自らの足元、英国経済に火をつけた形となっている。
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 英国が2020年、外国人買い物客向けの免税措置を廃止した影響で、外国からの客がパリやミラノに流れ始めた。高級小売店は、ロンドンが人気あるショッピング都市としての地位を失うのではないかと懸念を募らせている。
 外国人客に対する付加価値税(VAT)免税措置は、英国が欧州連合(EU)を離脱した際に廃止された。ハント財務相による15日の予算案発表を前に、ハロッズ、ハーベイ・ニコルズ、高級ショッピング地区チェルシーの不動産会社カドガン、レーンズバラ・ホテルなど数百社が、免税措置の復活を求めている。
 高級店が軒を並べるナイツブリッジとキングズロードの商業会議所のステーブ・メドウェイ会頭はロイターのインタビューで「店舗の投資先として、パリの方を優先していると言うブランドもある。売り上げを見ての判断だ」と語った。
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 メドウェイ氏によると、外国人旅行客は英国の国内総生産(GDP)に年間284億ポンド(345億ドル)寄与しており、ナイツブリッジとキングズロードがその大きな部分を占める。
 国際的な免税サービス企業、グローバルブルーのデータによると、英国を訪れる米国人旅行客の支出は昨年、コロナ禍前の2019年並みに戻ったが、フランスは19年の256%、イタリアは226%と2倍以上に増えている。
 さらに厄介なことには、英国の消費者自体も税還付が受けられるEU域内での買い物を増やし始めている。
 業界は、免税措置が不在のままではホテルやレストラン、タクシー、美術館、劇場を含む観光業界全体に影響が及ぶと訴える。
 これに対して政府は、旅行者は購入品を直接海外の住所に送れば今でも免税を享受できると主張。免税措置の廃止は、観光業に大きな影響は及ぼさないとの評価結果に基づき、税収を増やすために実施した経緯があると説明している。
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<オウンゴール>
 英国最大の高級小売りブランド、バーバーリーは昨年、VATの規定が原因でロンドンは他の欧州都市に負けつつあると警鐘を鳴らした。ハンドバッグのマルベリーは先月、目抜き通りボンド・ストリートの店舗を閉鎖する際、免税措置の廃止を主な要因に挙げた。
 600社が所属する業界団体ニュー・ウエスト・エンド・カンパニーのコミュニケーション担当ディレクター、サラ・ジャコネッリ氏は、英国は盛大なオウンゴールを決めたと手厳しい。「欧州大陸に行けば20%値引きされるというのに、行かない手があるだろうか」と話す。
 グローバルブルーのデータでは、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)といった湾岸諸国からの旅行客による買い物支出は、2019年水準の65%にしか戻っていない。これに対し、フランスは19年比で198%、イタリアは166%、スペインは158%に増えている。
 2019年に欧州を訪れた中国人旅行客1万人を対象にグローバルブルーが実施した調査でも、英国の魅力が衰えていることが示された。これは将来に向けてひときわ心配な兆候だ。
 調査によると、19年時点で英国は欧州の大国の中でフランスに次いで最も人気の高い旅行先だった。しかし、現在は英国旅行を計画していると答えた割合が42%と19年の70%から減り、スペイン、イタリア、ドイツの割合が増えている。
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 メドウェイ氏は「中国人はこれまで常に最も価格に敏感だったため、一番注視していくべき重要な層になるだろう」と指摘。「だからこそ免税は、彼らにとって非常に重要だ。そして、わが国は欧州で免税を提供していない唯一の国になってしまった」と語った。
 ハロッズのマイケル・ウォード総支配人は、何も行動を起こさなければロンドンのホテルやレストランにも影響が広がるとの懸念を示した。これらの店では既に外国人客の不在ぶりが目立っているという。
 カドガンのヒュー・シーボーン最高経営責任者(CEO)は「海外旅行の促進に注力すべき時だというのに、われわれは近隣EU都市に対して明確かつ不要なハンデを背負っている」と訴えた。
 ―  引用終り  ―
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 ハロッズの主要株主はカタールの投資庁であるが、外国人客不在で業績不振となり大英帝国の空洞化(外国資本化)がさらに進むかもしれない。
 コロナ禍後の世界は情報により敏感になり、流動化の度合いを高めた。古さだけの権威などの評価は低下した。西欧中心でまとめられた世界史の観点から、重要な歴史上の遺産、文物を多数有する英国の観光の価値も相対化されている。
 地球温暖化阻止に世界各国が積極的に取り組み、ウクライナ侵略戦争が長期化し、食糧不足による飢餓が心配され、トルコ・シリア大地震の被害の大きさと復興が憂慮される中、観光による経済効果の大きさが深刻な問題として取りざたされるのも「現実」。
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 花より団子





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最終更新日  2023年04月02日 06時21分31秒
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