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昨夜の帰りの車の中で、
「飲みに行くべきか、行かざるべきか、それが問題だ」
と、いつものように人生最大の問題に頭を悩ませていた。
暗い窓に映る街の灯りが、家族のうらめしそうな顔、潤のうるんだ瞳を思い出させる。週末にはまたスキーツアーの予定もあるし、今夜は控えようかなあ、などと考えていると、
「ビ、ビー」
後ろの車がクラクションを鳴らした。あ、とっくに青だったのねー。
まてよ。ビ、ビーには、「ちんたらしてねーで、さっさと行け」という気持ちが込められているわけだよね。つまり、これは「うじうじ考えていないで、素直にBARにいきなさい」という、神様が僕に送ってくれたエールではあるまいか。
そうか、そうか、人生やっぱりポジティブに考えねば。今夜の僕には神様という強~い見方ががついている。よし、いぐべ。
そういうわけで、うちの駐車場にそっと車を止めると、再び夜の闇に紛れた。
ひとりWにふさわしいBARといったら、もう、ここしかない。SJ1。いっつも空いている。いちおう会員制だし小さな路地でめだたないせいだ、ということにしておこう。
たぶんこの時間だったら誰もいないだろうと予想して中を覗くと、奥に2人ほど先客がいた。いつもの最奥のモルト席(正面の棚にモルト)に向かうのは不自然だろう。やむを得ず手前のバーボン席に腰を下ろす。
今夜は初めからモルトでいくぞと思って来たのだが、偶然の出会いを大切にしよう。まずは久しぶりにオールドグランダッド114、オン・ザ・ロック。
唇に冷たく、喉に刺激的な甘辛。次第に胃が熱くなる。
氷りが徐々に滑らかになるにつれ、ミントの香りやバニラの甘さに誘われて、閉ざされていた僕の孤独なドアが開かれていく。
うーむ、ハードボイルドな夜にふさわしい一杯ではないか、ねえ、マーロウ君。
とりあえずは、ここまで。絵はまだ色を乗せていないのだ。続きを考えながら帰って、また途中で「ビッー」と鳴らされないように気をつけよう。
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