2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
全1件 (1件中 1-1件目)
1
『夏の全滅』 町田康ぼくらが全滅したらぼくらの憎しみが全滅するぼくらが全滅したらぼくらの愛が全滅するぼくらは全滅したいなあ汗ながして歩く午後の濃い影ぼくらは全滅したいなあ夏の午後に乳みせルックでぼくらは全滅したいなあ(文藝春秋9月特別号より)8月上旬、我が家にスズムシが9匹やってきた。毎日うだるような猛暑だったが、夜になりスズムシが一斉に鳴きだすと、多少は涼しげな気分になった。8月中旬頃、気が付くとスズムシの数が半分ぐらいに減っていた。よく見ると、脚やら羽根やらの残骸が土の上に散らばっていた。世話係である妻に聞くと、スズムシというのは夏の終わりに近づくと、メスが産卵に備えて体力をつけるために他のスズムシ(主にオス)を喰ってしまうのだという。涼しげな鳴き声に反して、ずいぶん残酷な虫なのだなぁと思った。昨日、いよいよ二匹にまで減っていたスズムシは、ついに最後の一匹が喰われてしまい、メスが一匹だけ残った。スズムシはオスしか鳴かないので、飼育ケースは静かなものである。そのメスも、もうしばらくして産卵を終えると、数日後には死んでしまうらしい。冒頭の詩の、町田康という人は、かつては知るヒトぞ知るロクでもないパンクバンドの狂気のボーカリストとして、或いは、ロクでもない映画の狂気の俳優として、ワタシの中では結構評価の高いヒトであった。しかし数年前に突如芥川賞作家となり、某読売新聞で連載小説を書いたりして、今や作家先生としてそれなりのポジションを確保しているようなのだが、何度かトライはしてみたものの彼の読み物はさっぱり面白くなくて、世間の評価に反比例してワタシの中では作家としての彼の評価はほとんど地に落ちていた。しかし先日、偶然パラパラとめくっていた文芸春秋の中の1ページにオマケのように掲載されていた上記の詩には、なぜだか思わず手が止まった。今のワタシの気持ちに不思議なほど妙にフィットしたのだ。ああ スズムシといっしょに 僕らの暑い夏も全滅しないかなあ
2004年08月27日
コメント(17)