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約一カ月近くブログを書いてませんでした。このところ、ちょっと勉強にはまっていました。久しぶりに数学をやり出したら、面白くて、、、。あと近頃妙にジャズがまたやりたくなってしまい、ついつい譜面を読んだり、楽器を触ったり、、、。もともとあまり時間があるほうではないので、ついついブログがさぼりがちに、、、。まあ、少し涼しくなってきましたし、月が変わることもありますので、またぼちぼち更新していきますのでよろしくお願いします。 最近さかもとこーひーのさかもとさんのブログがとても面白いです。読んでいて、その通り!と思う事が多くて楽しいです。小手先だけのビーズショップが多いという話や最高の素材を手に入れても仕上げの精度がなければだめという話などはまさにふだん私が考えていることそのものですね! さかもとさんはこーひー、私は料理、普通は異分野なんですが、さかもとさんに関しては下手な同業者よりよほどシンパシーを感じます。というのは、火の使い方なんです。さかもとさんが豆を焼く話を聞いていると、実に科学的で筋が通っています。作業中に訊けばその瞬間に今何が起きて豆がどうなっているかは、完全に把握しているはずです。そんなの当たり前だろう?と思うかもしれませんが、それがなかなかどうしてそういう訳じゃないんですよ。職人の場合、多くは師匠なり仕事を教わる先輩がいることが多いです。そのため多くの場合、先達から言われたことを盲目的に繰り返していることが多いんです。私もさかもとさんも専門的な仕事にしては珍しく独学ですから、そういう意味では先達のあしき伝統は受け継いでいないいんですね。全部自分で考えてやるわけですから、、、。 職人仕事というのは、本人が意識しているいないは別として、専門的に訓練された脳が肉体をいかにうまくコントロールして、物を作ったりできるかという事なんです。プロスポーツ選手なども同じです。野球のピッチャーなら、自分の脳でイメージした通りの軌道で変化球や速球を投げたり、左右高低のコントロールができるかなわけですし、ゴルフならロングホールで400メートル余り先の小さな穴に4打で入れれば、バーディーなわけですが、その球をいかにイメージ通りのコントロールで打てるかという事ですよね。こう書けば、実に簡単なことですし、とりあえず球を投げたりゴルフボールを打ったりは誰でもできるわけですが、どっこいそれで食っていくのはなかなか難しいですよね。 コーヒーを焼くのも料理で肉や魚を焼くのも、作業そのものは単純なことで誰にでも出来ます。ただ、そういう事をほんの1度2度の温度の違いやほんの数秒の加熱時間の違いにまでこだわって精度の高い仕事ができるか?または瞬時にその違いを感じて判断できるのか?が、本当の職人のレベルなんですね。 さかもとさんが使っている豆は、世界でもトップクラスの豆です。その豆をさかもとこーひーの味に仕上げるのがその焙煎やブレンドの技術でしょう。ところが、多くのこーひーやさんは、その素材自慢に陥ってしまうんでしょうね。よいものを仕入れただけで満足してしまう。小洒落たスペースを用意して、うちの素材は最高です!と言うだけのお店が多いんでしょうね、、。 素材のレベルが高ければ美味しいもんができるのは当たり前と思うかもしれませんが、そう簡単ではないんです。実は、素材のレベルが上がると加工や調理も難しくなる事が多いんです。高いレベルの素材と高い技術があってはじめて美味しくなるんですね。 最近サンク・オ・ピエでお出ししていたブレス産の地鶏、あれは実に焼くのが難しい。ブロイラーの鶏とは全く肉が違いますから、まさに完璧な火の通し加減でないと美味しくないんです。10数年前に初めてブレスの地鶏に挑戦したときには、全く歯が立ちませんでした。鶏のほうに「お前の技術じゃまだまだ使いこなせないぞ」と言われた気がしたものです。 他にもうちで使っている素材なら、シャラン産の窒息鴨やフォアグラなど火の通し加減が難しい素材の代表格です。サンク・オ・ピエの食材の一部は、ブレスの地鶏やラベルルージュのマグレ鴨やシャランの窒息鴨、秋冬のジビエなど都内の一流店など日本でもごく限られたお店でしか使ってないものがけっこうありますが、そういうものは調理が実に難しい。素人にはもちろん技術のない自称プロみたいなやつにはとても上手に料理はできません。 つまり、数学風に言いますと、、、最高の素材は、最高の料理の必要条件ではあるが、十分条件ではない。という事ですね。さかもとさんの仕事を見ていると、私はこーひーの専門家ではありませんが、必要十分条件を持った職人だと思っています。そして私も必要十分条件を持った職人でありたいと思っています。 私のように料理人で数学や物理が好きというのは、結構異色だと思うんですが、物を厳密に考えるという点では仕事に少し役立っているかなと思います。 そこで、ちょっと小話を、、、あるとき天文学者と物理学者と数学者が休暇でスコットランドを旅行していました。列車の窓からふと見ると、原っぱに一頭の黒い羊がいるのが見えました。それを見た天文学者が、「ほー、スコットランドの羊はくろいんだね。」すると物理学者が、「それは違う。スコットランドの羊の少なくとも一頭は黒いという事にすぎんよ」少し呆れた顔をした数学者は「君たち、これはこういう事さ。いいかい、スコットランドには少なくとも一つの原っぱがあり、その原っぱには一つの羊が含まれ、その羊の少なくとも一方の面が黒いという事さ。」 天文学者は、見る商売。物理学者は見たことに理屈をつける商売。数学者は理屈のための理屈をこねる商売。という事ですね。一方の面が黒いというところが笑えますね! 9月は、富士幻豚のコースをやります。 富士幻豚は、富士山麓方面で作られている非常に希少な豚です。日本の豚生産量のわずか0.1%という文字通り幻の豚です。生産効率が悪く繁殖効率も悪い中ヨークシャ種という品種の豚を桑原さんという優秀な養豚家が育てています。桑原さんは農水大臣賞を6回も受賞するなど、豚の人工授精技術では、世界でもトップクラスだそうです。気になる方は富士幻豚のホームページをご覧ください。 これは富士幻豚の自家製スモークももハム。この画像は水茄子や自家製セミドライトマトとサラダ仕立てにしてあります。軽いけど綺麗で深い味わいに赤みを楽しめます。 これは、富士幻豚の自家製パンチェッタ。ものすごく口解けがよいのに全くしつこくありません。 富士幻豚は、イタリアンのカリスマシェフ山田宏巳シェフが絶賛しています。 ちょっと珍しいインゲン豆と富士幻豚のカスレにフォアグラを添えた、コクのある温前菜を挟んで、、、 メインは、富士幻豚の背肉の低温長時間ロースト。美味しい肉を最高の技術で焼き上げます。 デザートは、ショコラの最高峰!フランスヴァローナ社のグランクリュショコラの“マンジャリ”を使った生チョコとシェフ風の小さなモンブランと自家菜園のブルーベリーのアイスクリームです。 もちろん、〆はさかもとこーひーです!詳しくは、ホームページをご覧ください。
Aug 29, 2011

毎年恒例となったK氏のワイン会の夏のイベント“シャンパーニュ尽くし”が先週の土曜日にあった。今回は、ボランジェ特集。あの007のジェームス・ボンドがお気に入りの一流ブランド。 スタートは、Special Cuvee Brut (Bollinger)これはノンビンテージのブレンドものでボランジェの看板品。すっきりと辛口で、きれいな酸味。これに合わせて、ラベル・ルージュのマグレ鴨の自家製スモーク生ハムのサマートリュフとトリュフオイル風味。このシャンパーニュは、黒ブドウの配合が多いので肉系にもよく合う。鴨の旨味とスモークとトリュフの香りが最高です。 二番手は、La Grande Annee (Bollinger)2002これは、当たり年にしか仕込まないヴィンテージもの。これも黒ブドウが6割以上で、力強さを持っているシャンパーニュ。合わせた料理は、大分産の旬のイサキのポワレにフォアグラのソテーをソース代わりにのせたもの。定番の甘酸っぱいハチミツ・バルサミコソースは使わずに、イタリアトスカーナのチェルビアの塩(フルール・ド・セルタイプ)をパラリと散らす。魚にフォアグラという異質の組み合わせだが、白ワインの要素と赤ワインの要素をあわせもつシャンパーニュならではのマリアージュ。 メインは、フランス産鳩のポワレに夏のジロール茸を添えて、ソースは鳩のジュ、それにまたトリュフオイルの香りも添えた。合わせるワインは2本。La Grande Annee Rose (Bollinger)2002とAy Rouge "La Cote Aux Enfants" (Bollinger)2002。ロゼのシャンパーニュとボランジェ唯一の赤ワイン。赤はやはり当たり年にほんの少しだけ作られるピノ・ノワール100%のワイン。そしてロゼのシャンパーニュには、先のグランダネの白にこの赤ワインをアッサンブラージュ(ブレンド)して作られている。フランスの高級ワインの中で唯一白に赤ワインを混ぜてロゼを作ってよいのがシャンパーニュなのだ。 La Grande Anneeは、英語でいえばThe great vintage、文字どおり当たり年にしか作らないシャンパーニュですね。"La Cote Aux Enfants" は、子供たちの丘という意味。珍品中の珍品で、私も初めてみました。どちらもシンプルな鳩の料理とキノコのニュアンスによく合うでしょう。 デザートには、ボランジェではなくSublime Reserve Sec (Philipponnat)1996フィリッポナ社のシュブリム・リゼルヴァ・セック。セックというのは辛口という意味だが、シャンパーニュに限ってはやや甘口。シャンパーニュの辛口は、brutと言いますね。合わせたデザートは、焼きたてのアーモンドとアプリコットのタルト。シャンパーニュにもアプリコットのニュアンスがあるので、ナッツやバターの香りも含めて、相性は最高ですね! 食後のこーひーがまたすごかった! 開店以来18年で一番凄いと思うケニアに出会いました。この「ケニア・カングヌ」が今までのさかもとこーひーのケニアで一番だと感じた魅力は、ブルゴーニュの上質な白ワインのような魅力に惹き付けられたからです。熱い時は、まずフローラルや赤いベリーのキャラクターから感じられて...次にシトリック系の味わいが顔を出してきます。徐々に冷めてくると...味わいの繊細さや滑らかさが魅力的に伝わり...優しい口当たりと上質で複雑な香りが一体化してきます。さらに冷めて来ると...優しい口当たり、余韻の柔らかな甘さとシトリックさ...繊細で、きれいな余韻へとご機嫌になってきます。そこにグッと印象的に感じられるのが...ブルゴーニュの上質な白ワインのような際立つ魅力です。香りと滑らかで柔らかな口当たりと甘さに、心地よい上質な酸が顔を出して...このニエリの高地産「ケニア・カングヌ」を際立たせていると思います。是非...このこーひーだけで、ゆっくりと味わい、楽しんでほしいと思います。 上記太字は、毎回このワイン会に参加するさかもとこーひーのさかもとさんのコメント。一口飲んでみると、信じがたいほどの綺麗さ!デザートのアプリコットの後味も引き取って楽しませてくれます。さらに、さかもとこーひー開店18周年記念ブレンドの、、、 さかもとこーひー18周年記念の「アニバーサリー2011」です。使ったこーひーは、18周年のお祝いですから...「ボリビアCOENWアルベルト」「コロンビアCOEパロセコ」「ブラジルCOEカンバラ」という思いっきり贅沢にブレンドしました。コーヒー相場が高騰するなか、原価なんて忘れて、ブレンドしました。イメージしたのは...華やかさ、輝きを第一にして...フローラルさから柑橘系...ベリーな感じからほのかなミルクチョコレートの感じです。口当たりの柔らかな心地よさと上品な甘さ...赤いベリー系のフローラルな余韻へと流れて...夏向けのキレの良い味わいがフィニッシュとなります。「ボリビアCOENWアルベルト」のミントキャラクターが隠し味で活躍しています。 さかもとこーひーの場合、ケニアやコロンビアといった1種類の豆のシングルオリジンのこーひーのキャラクターが際立ったものの味わいも素晴らしいのですが、やはりさかもとさんのブレンドの技術とセンスにはいつも驚かされるんです。このアニバーサリー2011もちょっと言葉が出ないこーひーでした。サンク・オ・ピエの特別コースのデザートに合わせて特製のブレンドをよく作ってもらうんですが、それがまたいつもドンピシャで、、、そのブレンドの技術とセンスには全く恐れ入るばかりです。 振り返れば、2005年のシャンパーニュ尽くしにさかもとさんが、コロンビアのカップ・オブ・エクセレンスを持ってきて飲ませてもらったのが、さかもとこーひーとの出会いでした。 その時のコロンビアのあまりの美味しさとコーヒー離れした綺麗さに、「もし、コーヒーのロマネコンティというものがあるなら、こういうものかもしれません。」と言ってしまったものでした。「ビロードの手袋をはめた鉄の爪」なんて言う事も言いました。これは、どなたかは知りませんが、フランス人がロマネコンティを表現した言葉です。つまり、しなやかで滑らかな中に重厚かつ鋭いニュアンスが含まれているという事なんだと思います。 さかもとこーひーがまさにそんなスタイルで、苦くて濃くてエグいコーヒーに慣れているととてもこーひーとは思えないほど。うっかりすると、さっぱりしすぎているくらいで、物足らないと思う人もいるかもしれません。味や風味をとらえる感性が弱いと、味がわからないようなこーひーだと思います。ただ、さかもとこーひーに慣れてしまうと、もう他のこーひーは飲めなくなります。うちのお客さもにもそういう風にさかもとこーひーにはまってしまう方も多いです。 2009年の年末に開店以来使っていたエスプレッソマシーンが壊れました。ちょうどその日にさかもとさんがお客で来ていて、「マシーン壊れちゃったんですよ。」と相談すると、「じゃあ、うちのこーひー使ってよ。サンクなら儲けなしでキロ¥○○○でいいよ!」、「え!そんな安くていいんですか?」という事で、以来」さかもとこーひーを使わせてもらっています。そのキロ¥○○○でも実は普通レストランで使うコーヒーよりは高い位なんですが、、、。お客様の反応の良さを見れば安いもんです。 食後のこーひーや紅茶はとても大事です。せっかく美味しい前菜、美味しいスープ、美味しいメイン、デザートと続いても、最後のこーひーが淹れて保温して置いたような不味いこーひーが出てきては、せっかくの食事も台無しですからね。
Aug 3, 2011
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