森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2015.05.05
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為末大さんのお話です。
2001年と2005年の世界陸上で銅メダルをとった人だ。競技は400メートルハードル。

為末氏は小学生のころ50m徒競争に出場した。独走だった。
見物人の驚きと注目を一身に浴びた。
自分が走るだけでこんなにも人を驚かせるというのはすごいことだと思った。
この風景は為末氏の走る原点となった。その後走れば走るほど記録がでた。
毎日毎日走るのが楽しくて仕方がなかった。
中学3年生の時には100mと200mの短距離走で日本一になった。勝てた、喜びがある。
みんなが賞賛してくれた。自信になった。


ところがそのうち「走ると女の子にもてる」「走ると進学ができる」
「プロになればお金が儲かる」「勝てば名誉が手に入る」「有名人になれる」という世界に変わっていった。
そしてとうとう、そうした「手に入れたものを失うのが怖い」と言う心境になっていった。

世界陸上で銅メダルをとったあと「徹子の部屋」に呼ばれた。
次もまたメダルを期待されるようになった。
今度は金だ、銀だと周囲の期待はどんどん膨らんでいった。
すると為末氏の心の中に「勝ってほしいと言われるとその声に答えなくては」
「勝つために確実な練習をしなくては」と言う気持ちが湧いてきた。
日の丸を背負って勝ってメダルをとることが自分の使命だ。
それが僕に与えられた責任だ。
どんなことがあっても、何が何でも勝たねばならないという悲壮な状況に追い込まれた。


どんどん成績が伸びてみんなを喜ばすことがうれしい。
そして「走ると女の子にもてる」「走ると進学ができる」
「プロになればお金が儲かる」「勝てば名誉が手に入る」「有名人になれる」と考えた。
多少の邪心がでてきた。でもこれはまだよい。
その気持ちを「てこ」にしてさらにモチュベーションを高めることができたのだから。


その後何が何でもオリンピックでメダルをとらねばならないに結びついてしまった。
走ることが楽しくなくなったのである。

この点アメリカの選手は自分自身が中心軸だから、オリンピックでもとことん楽しむことができる。
「私がアメリカを代表しています」という責任感は、日本人に比べると格段に少ないという。
自分が普段練習してきたことを100%出せばよい。
それで負けるのなら相手が1枚上手だったということだ。
正直に負けを認めて、相手を称えてあげよう。
つまりオリンピックでは適度な緊張感の中で、自分の実力以上の力を出せる要素があるのだ。

それに引き換え日本人は「国の代表である」という意識に圧倒されてしまい、100%の力をそのまま出し切ることは難しい。
練習ではよい成績を出しても本番では70%、80%の力しか出せなくなってしまうのだ。
競技をする前から自分に負けてしまっているのだ。

「かくあるべし」はスポーツの世界にも弊害をもたらしているということだろう。
我々は森田理論で「かくあるべし」という世界から「事実本位」の世界に転換することをめざしているのである。
森田理論の体得でその方向へ向かうことができるので是非本気になって取り組んでもらいたい。
(「遊ぶ」が勝ち 為末大 中公新書参照)





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Last updated  2024.06.02 00:03:59
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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