森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2015.05.14
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芥川龍之介は昭和2年に睡眠薬自殺をしました。その原因はなんだったのか。
一つの手がかりとして「ぼんやりした不安」があると手記に書いていたという。
芥川龍之介はマズローのいう基本的生存欲求は満たされていたと思われます。
衣食住、安全、金銭的にはまずまず保障されていたのです。
中東やアフリカなど内戦で生まれ故郷を追われ、難民としてしか生きていくすべを持たない人から見ると、なんと贅沢な悩みかと見えることでしょう。
日本で自殺者3万人を超えるというというのは信じられないと言います。

五木寛之氏は、徹底的に絶望しているのなら、それはそれでいい。
絶望の底には、必ず希望が潜んでいるからです。
しかし絶望もなく、希望もないという状態。それが一番厄介なのではないか。

昼でもなければ、夜でもない。日は沈んでも、あたりはまだ明るい。
たそがれていくそんな時刻を昔の人は「逢魔が時」(おうまがとき)といいました。
おそろしい魔物に出会う時、という感覚でしょう。「大禍時」(おおまがとき)ともいいました。
禍の訪れる時間です。現代の日本人はまさにそういう状態におかれているのではないでしょうか。
このまま夜になって真っ暗になっていくのでしょうか。
あるいはこの時代閉塞時代からしだいに夜が開けて白々と夜が明けていくのでしょうか。

私は森田理論の考え方を基本に据えれば、時代閉塞の壁を打ち破ることができると思います。
どうすればよいのか。それは人間一人ひとりが自分の為に生きていくことだと思います。
先日、人間は「遊ぶ」ために生まれてきたのだと書きました。
裏を返せば人の為に尽くすために生れてきたのではありません。
自分自身が自由にのびのびと生を謳歌して、楽しく生きていくために生れてきているのだと思います。


極端な話になりますが、例えば基本的に自分の能力や特技を活かして人の為に働くのは1日のうちの半分だけ。後の半分は自分と家族の生活を維持するために自分の為に働くという考え方はどうでしょうか。

現代はどうなっているのかというと、ほとんどの人が、大半の時間を人の為だけに働いているのです。
生活費を稼がないと自分と家族の生活が維持できないような社会の仕組みが出来上がっているからです。
そして人のために働いて得た給料で、衣食住、家電、自動車、電気、ガス、水道等すべての生活必需品を賄っているのです。その方が合理的であると信じて疑うことはありません。
でも本来はそうした基本的な日常生活は人に依存することなく自らが賄うものではないでしょうか。

特に食生活の堕落は人間の尊厳を奪っています。
われわれはそういう社会の中に否応なしに引きずり込まれているのです。
そういう意味では便利で快適で依存体質の社会の実現が私たち人間の生きがいを奪ってしまっているのです。
自分たちの首を絞めているのです。

本来の生き方は自分でできる自分の生活に必要な日常茶飯事は自分で手を出し、足を出してやることなのです。
そんな生活は意味がない。面白みがない。わずらわしいことはお金を出して人に依存する。
その方が楽だし合理的だ。自分は空いた時間でもっともっと生活を楽しみたい。
もっとレジャーに力を入れたい、もっともっと物質的に豊かな生活をしてゆきたい。
そういう生き方が絶対的、唯一の理想的生き方だと信じて疑わない人が多いのではないでしょうか。

そうした考え方が「ぼんやりとした不安」を絶えず抱え、1億総うつ状態の社会を作り出しているのだという警鐘を鳴らしたいと思います。
これは森田理論の「生の欲望の発揮」を学習するとすぐにはっきりと分かることです。
意欲や情熱が持てない仕事そのものが苦痛の種となり、その中での人間関係で神経をすり減らし、ストレスや抑鬱で苦しむ人を大量に生み出している背景には、このような生活の在り方や考え方が背景にあるのではないでしょうか。
(新・幸福論 五木寛之 ポプラ社参照)





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Last updated  2015.05.14 06:52:20
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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