森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2015.09.27
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エリク・H・エリクソンという心理学者がいる。
臨床心理学を学習した人は誰でも知っている有名な人である。
アイデンティティ理論のエリクソンとして有名である。

この人には面白い逸話が残っている。これを「エリクソンの奇跡」というそうだ。
エリクソンはユダヤ人で、ナチスからの迫害から逃れるために、1933年にドイツからアメリカのボストンにやってきた。
英語は全く分からず、単語を100個ぐらいしか知らなかった。
当時心理学はおろかカウンセリングもほとんど知らなかった。
学校では問題児で、大学には行かずに、画家を目指して専門学校に行った。
しいて言えば、アンナ・フロイト(あの有名なフロイトの娘である)のもとで精神分析を受ける子どもたちの世話係をしていただけだった。

当時のアメリカでは、訓練を受けた医師のみに精神分析を認めていた。
エリクソンは、いわば無許可の営業をしていたのである。

ところがその彼が奇跡を起こしたのだ。
それまで、名高い精神分析医が長年治療を行っても、少しもよくならなかった患者が、顕著な改善を見せたのだ。
それも一人ではない。何人もいたのだ。
精神科医が見捨てたような患者が(彼のもとにはそういう人しかやってこなかった)すっかりよくなっていったのだ。そのうわさがボストン中に広まったという。

その一人にマーサ・テイラーという女性がいた。深刻な自己不全感で苦しんでいた。
今でいえば境界性人格障害と依存性人格障害を抱えた状態だったと思われる。
マーサは裕福だったため、パリまで行って著名な精神分析医の治療を受けたが全く改善しなかった。
そこで手あたりしだい治療先を見つけていたのだ。その最中に偶然エリクソンに出会った。
だが、マーサがまず驚いたのは、みすぼらしい診察室。

エリクソンは分析を中断して子どもの面倒を見に行っていたという。
分析の方法も、正式な寝椅子を用いた精神分析ではなく、ごく普通の会話だった。
治療の後には、マーサを家族に紹介したり、一緒に食事をしたりした。
通常のやり方からすればタブーとされることばかりだった。
しかも英語が話せない。治療という名目で患者から英会話のレッスンを受けているようであった。


これについて岡田尊司氏の分析はこうである。
エリクソン自身は重い愛着障害を抱えていた。
エリクソンは不義の子として生まれ、実の父親が誰か知らないまま育った。
幼いころからエリクソンは自分につきまとう影のようなものを感じていた。
しだいに母や義父との確執が強まっていった。
つまりエリクソンの人生は、愛着障害と格闘し、克服するための人生を歩んできていたのである。
エリクソンはマーサ等の患者さんたちに自分と同じ愛着障害があることを見抜いていたのである。
その治療、癒し方を自分の体験を通じて会得していたのが大きかったのである。

現在神経症で悩む人がいる。発達障害で悩む人もいる。人格障害などで悩む人がいる。
そういう人たちは薬物療法、精神分析、認知行動療法、カウンセリングなどを受ける。
岡田氏は、もしその人たちに愛着障害があれば、そちらの治療が先に来ないといけないのではないかといわれる。
私もその考え方に賛同している。愛着障害の詳しい説明は明日投稿いたします。
(愛着障害 子ども時代を引きずる人々 岡田尊司 光文社新書参照)






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Last updated  2015.09.27 09:30:12
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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