森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.07.07
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今日は「宿命」と「運命」について考えてみたい。
私は宿命と言われると、すぐに「砂の器」という映画の中で演奏された交響曲「宿命」を思い出す。
父親がライ病に罹り、村に居ることができず、一人息子を連れて、日本中を放浪する人の話だった。
理不尽でやるせない宿命に翻弄されて生きていかざるを得ないこの親子に対して、交響曲「宿命」の旋律が胸を打った。

宿命というのは、人間が自由自在に改良することができないものである。
地球という惑星に人間として誕生した。
日本人として生まれた。戦国時代に生まれた。あるいは過酷な戦争中に青年時代を過ごした。
マネー資本主義が世界を席巻し、生存競争の激しい時代に生を受けた。
養育能力のない両親のもとで生を受けた。

それなのになにか勘違いして、宿命に歯向かい、修正しようと企てる人は多い。
しかし、なかなか思った通りには変更できないので、苦悩や葛藤が生まれる。

森田先生は、沸き起こってくる感情に対してもそうですが、宿命に対しては、素直にその事実を受け入れて、むしろそこを土台としてしっかりと認識することを強調しておられる。
そして覚悟を決めて生きていく。そのことを「運命を切り開いていく」と言われている。
運命は堪え忍ぶには及ばない。耐え忍んでも、忍ばなくても結果は同じである。
重要なことは、我々はただ運命を切り開いていくべきであると言われる。

その例として、正岡子規の話をされている。
正岡子規は、 7年にわたる肺結核と脊椎カリエスによる抑臥に、堪え忍ぶことのやりくりや心構えを求めることをしなかった。病苦に泣くのみであった。
極貧の中にあって看護人もなく、寝返りも打つには柱につないだ紐を引っ張ってこれをやるという仕儀であった。子規は痛みと喀血の耐えがたきことを、はからうことなく、ただ慟哭していた。
痛みに常に襲われながらも、俳句と随想の創作活動は続けていた。
正岡子規の優れた作品はこのような状況の中で生み出されていった。


形外会で佐野さんという方が森田先生に次のように質問した。
「私は本年、医大の本科生になりましたが、どうも医科に入ったのは間違っていたのではないかと思います。私の頭が向かないためか、難しくてわからない。いっそやめて郷里に帰り、家の商売でもしたほうが、自分に向いていると思いますが、どうでしょう」
これに対して森田先生は次のように答えている。
こんな考えが起こるのは、誰でもありがちのことで、そのままでよい。ただ、迷いながら、かじりついていればよい。
これは正しい人生観のできない幼稚な思想から起こることで、この形外会でも今まで時々説明したことであります。

ともかくもわれわれは、各々その境遇に応じて、従順にこれに適応し、あるいはその運命を切り開いていくということが、第一の着眼点でなくてはならない。(森田正馬全集第5巻 765ページより引用)

ここで大切なことは宿命に対しては素直に服従して、生の欲望にのっとり前向きに生き抜いていく覚悟を決めるということだと思う。





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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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