森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.10.04
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カテゴリ: 行動のポイント
水谷啓二先生の啓心寮に対人恐怖症のMさんという娘さんがいた。
この方は、 「人前でオナラが出て嫌われたら困る」などと思って、人を訪問することもできず、昼間は電車や汽車に乗ることもできなかった。
東北生まれの娘で、顔立ちは悪くないが、ひどく青白くて、まるで生気というものがなく、それに目がガラス玉のように冷たく、態度も固くてぎこちなかった。

水谷先生のところで、この人の対人恐怖症が治ったのである。どのような事をされたのか興味がある。
水谷先生の所では様々な小鳥を飼っていた。水谷先生はその世話をMさんに頼んだ。
Mさんははじめ、仕方なしにやっていたが、やがてジュウシマツの卵がかえって、小さなヒナが二羽産まれた。
ところが、餌が悪いのか、ヒナは育ちそうにない。彼女は、まだ羽毛の生えていない、生まれたばかりの小さなヒナをそっと手に握り、自分でこしらえた柔らかいすり餌を箸の先に付けて、用心深く、しかも丹念に食べさせていた。
こうして毎日、まるで赤ん坊にお乳を含ませるようにして育てていった。
やがて羽毛も生えそろい、若い元気なジュウシマツどうなったが、とても彼女になついていて、手のひらに乗ったり、肩に止まったりしていた。


そしていつの間にか彼女の顔には、健康そうな自然の赤味がさし、目も人間らしい暖かみのある潤いを帯びてきた。
また固い感じがなくなって、柔らかく生き生きとしてきて、態度にも親しみやすい中にも若い女性らしい慎みがあって、まことに人間味豊かな美しい娘が誕生したのである。

その後水谷先生にあてた手紙には、 「今まで自分のことばかりに明け暮れていた私も、少しは相手は今どんなことを求めているかを考えるようになりました」とあった。
水谷先生は、神経症の全治とは、とらわれの古い殻を破って、自分の本来性、そのままの本物の人間、つまり当たり前の人間が誕生することだ、と思っているが、これはその実例だと思うと言われている。
(慎重で大胆な生き方 水谷啓二 白揚社 88ページより引用)

確かに、神経症が治るということは、自分の症状のことは横に置いて、目の前の仕事や日常茶飯事に注意や意識を振り向けることである。
こうすることで、いったんは神経症のアリ地獄から地上に入れることができる。
今症状でアリ地獄に陥っている人は、苦しいだろうがこの道にかけてみるとよい。
欲を言えば、神経症に陥る人は、 「かくあるべし」という考え方が強く、思想の矛盾に陥って葛藤や苦悩を抱えている場合が多い。
「かくあるべし」という考え方を弱めて、事実本位・物事本位という生活態度に転換できれば、神経症とは完全に縁が切れる。
その後は不安を活用しながら、生の欲望の発揮に向かって、自分の持てる力を存分に活かしていけば、味わいのある人生を全うすることができると考えている。





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Last updated  2017.10.04 06:30:09
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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