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長沙贈衡岳祝融峰般若禪師 劉長卿般若公、般若公。負■(「缶」のみぎに「本」。ハツ)何時下祝融。歸路卻看飛鳥外、禪房空掩白雲中。桂花寥寥閑自落、流水無心西復東。【韻字】公・融・中・東(平声、東韻)。【訓読文】長沙にて衡岳祝融峰般若禅師に贈る。般若公、般若公。鉢を負ひて何れの時にか祝融を下らん。帰路卻つて看る飛鳥の外、禅房空しく掩ふ白雲の中。桂花寥寥として閑(しづか)に自ら落ち、流水無心にして西復東す。【注】大暦六年(七七一)秋、潭州における作。○長沙 湖南省長沙市。○衡岳 湖南省衡岳県の西にある山。中国五岳の一。南岳。○祝融峰 衡山に七十二峰あるとされるその最高峰。○般若禅師 楊世明校注『劉長卿集編年校注』によれば、ケイ賓国の人で、玄宗の時、中国に来て経典の翻訳に従事した醴泉寺の僧かという。○公 尊称。○鉢 僧侶の食器。○何時 いつになったら。○帰路 かえりみち。作者が山上の寺を訪ねて帰るみちみちということであろう。○卻 かえって。あべこべに。○禅房 禅宗寺院。○桂花 モクセイの花。○寥寥 ひっそりとしてさびしい。○閑 静かに。○無心 きわめて自然に。○西復東 西に向かってながれ、曲折して東に向かう。【訳】長沙において衡山の祝融峰の般若禅師に贈る詩。般若禅師、般若禅師。鉢を負い、いつになったら祝融峰を下られる。帰りがけにあべこべに飛ぶ鳥のむこうの山上をみれば、禅寺の上をしずかに覆う白い雲。モクセイの花はらはらと音もたてずに散りゆきて、流るる水は西に向きまた東へと向き変える。
March 28, 2008
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弄白鴎歌 劉長卿泛泛江上鴎、毛衣皓如雪。朝飛瀟湘水、夜宿洞庭月(一本有洞庭二字)。歸客正夷猶、愛此滄江閑白鴎。【韻字】雪・月(入声、屑韻)。猶・鴎(平声、尤韻)。【訓読文】白鴎を弄ぶ歌。 劉長卿泛泛たり江上の鴎、毛衣皓(しろ)きこと雪のごとし。朝飛瀟湘の水、夜宿洞庭の月(一本に「洞庭」の二字有り)。帰客正に夷猶し、此の滄江の閑白鴎を愛す。【注】○弄 めでる。○白鴎 鴎は水に浮かんでのんびり漂うので、悠々自適な隠者や、世俗を離れた生活の象徴。○泛泛 浮かび漂うようす。○皓 白い。○瀟湘 湖南省の二つので、合流して洞庭湖に注ぐ。○帰客 故郷にもどった旅人。○夷猶 ぐずぐずする。○滄江 深緑色の水をたたえた広い川。【訳】白鴎をめでる歌。白き鴎はゆらゆらと浮かびただよう波の上、その毛ごろもは白くして雪のごとくに汚れなし。朝に瀟湘の上を飛び、夜は洞庭の月に寝る。故郷に着いた我はただためらいがちにぐずぐずと、此の大川の鴎をばひたすらめづるばかりなり。
March 23, 2008
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新安送陸■(サンズイに「豐」。ホウ)歸江陰 劉長卿新安路、人來去。早潮復晩潮、明日知何處。潮水無情亦解歸、自憐長在新安住。【韻字】去・処(去声、御韻)。路・住(去声、遇韻)。【訓読文】新安にて陸■(ホウ)の江陰に帰るを送る。新安の路、人来たり去る。早潮復た晩潮、明日何れの処なるを知らんや。潮水無情なるも亦た解(よ)く帰る、自ら憐ぶ長く新安に住(とど)まるを。【注】○新安 睦州。晋代に新安郡が置かれたのでいう。【訳】新安の地に君きたり、またこのたびは帰り行く。朝のうしおに夕のしお、明日はいずこに行くやらん。心をもたぬ汐とても海に向かいてかえれども、われはこの土地新安にとどまることこそ悲しけれ。
March 20, 2008
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疲兵篇 劉長卿驕虜乘秋下薊門、陰山日夕煙塵昏。三軍疲馬力已盡、百戰殘兵(一作躯)功未論。陣雲泱▼(サンズイに「莽」。モウ)屯塞北、羽書紛紛來不息。孤雲望處増斷腸、折劍看時可霑臆。元戎日夕且歌舞、不念關山久辛苦。自矜倚劍氣凌雲、卻笑聞笳涙如雨。萬里飄■(「瑤」のみぎに「風」。ヨウ)空此身、十年征戰老胡塵。赤心報國無片賞、白首還家有幾人。朔風蕭蕭動枯草、旌旗獵獵楡關道。漢月何曾照客心、胡笳只解催人老。軍前仍欲破重圍、閨裏猶應愁未歸。小婦十年啼夜織、行人九月憶寒衣。飲馬●(サンズイの右上に「虍」、右下に「乎」。コ)河晩更清、行吹羌笛遠歸營。只恨漢家多苦戰、徒遺金鏃滿長城。【韻字】門・昏・論(平声、元韻)。北・息・臆(入声、職韻)。舞・苦・雨(上声、麌韻)。身・塵・人(平声、真韻)。草・道・老(上声、皓韻)。囲・帰・衣(平声、微韻)。清・営・城(平声、庚韻)。【訓読文】三軍疲馬力已に尽き、百戦残兵(一に「躯」に作る)功未だ論ぜず。陣雲泱▼(サンズイに「莽」。モウ)塞北に屯し、羽書紛紛として来りて息(や)まず。孤雲望む処増ます腸を断ち、折剣看る時臆を霑ほすべし。元戎日夕且らく歌舞し、念はざりき関山に久しく辛苦せんことを。自から矜(ほこ)る剣に倚つて気は雲を凌ぎ、卻つて笑ふ笳を聞きて涙雨のごときを。万里飄■(「瑤」のみぎに「風」。ヨウ)として此の身を空しくし、十年征戦胡塵に老ゆ。赤心もて国に報いるも片賞無く、白首にして家に還るもの幾人か有る。朔風蕭蕭として枯草を動かし、旌旗猟猟たり楡関の道。漢月何ぞ曽て客心を照らし、胡笳只だ解く人の老いを催す。軍前仍ち重囲を破らんと欲すれば、閨里猶ほ応に未だ帰らざるを愁ふべし。小婦十年夜織に啼き、行人九月寒衣を憶ふ。飲馬●(サンズイの右上に「虍」、右下に「乎」。コ)河晩更に清く、行きて羌笛を吹きて遠く営に帰る。只だ恨む漢家に苦戦多く、徒らに金鏃を遺して長城に満たしむ。【注】○三軍 大軍。○百戦 多くの戦闘。○陣雲 戦場の空に浮かぶ殺気に満ちた雲。○泱▼(サンズイに「莽」。モウ) たなびくようす。○塞北 北方の国境付近。○羽書 檄文。○紛紛 数多いさま。○孤雲 ぽつんと一つそらに浮かぶ雲。○断腸 ひじょうに辛く、悲しむこと。○元戎 多数の兵士。○日夕 朝夕。○関山 関所のある山。○剣倚 剣にもたれかかる。○笳 胡笳。葦笛。○飄■(ヨウ) 一カ所に定まらないさま。○征戦 戦争。○胡塵 攻め来るえびすの軍勢が巻き起こす砂塵。○赤心 まごころ。○片賞 たった一つの褒美。○白首 白髪頭。老年。○有幾人 いくらもいない。反語。○朔風 北風。○蕭蕭 風がさびしげに吹くさま。○旌旗 はたのぼり。○猟猟 風になびくさま。○楡関 の道。○何曽 どうして。○客心 故郷を離れている者の心細い気持ち。○笳 アシの葉を巻いて作った笛で、多く中国の西北の民族が使った。○重囲 敵軍の何重もの包囲網。○閨裏 婦人の部屋。ねやの中。○小婦 若い妻。○夜織 夜なべ仕事のはたおり。○行人 出征兵士。○九月憶寒衣 陰暦九月に冬の衣を一家の主人が家族に与えた。『詩経』《ヒン風・七月》「九月衣を授く」。○飲馬 馬に水を飲ませる。○●(コ)河 山西省に源を発し、河北省で黄河に注ぐ川。○羌笛 羌人(中国北西部に住んでいた民族)の吹く笛。○営 大隊。○漢家 漢の帝室の軍隊。○金鏃 黄金のやじり。○長城 万里の長城。【訳】兵士も馬も力尽き、論功行賞いまだ無し。とりでの北のその空に戦場の雲屯して、火急の文書つぎつぎと来りてやまぬせわしさよ。ぽつんと空に雲ひとつ浮かぶ望めば悲しくて、折れた剣を看る時は心をいため泣きくずる。つわものどもは明け暮れに歌をば歌い舞いを舞い、関所の山で長いこと苦労するとは知らなんだ。剣を杖つき意気高く雲しのぐほど身をほこり、かえって笑ふ胡笳を聞き涙を流す連中を。万里のかなたにあてどなく我が身空しく世を送り、十年間も戦して蛮族の地に老いつもる。忠義つくすは国のため、されども賞の一つ無く、しらが頭で無事家に還るものとて有るまいに。北風ふいて蕭蕭と枯れたる草をそよがせて、漢軍の旗数多くなびくは楡関につづく道。漢の夜空に浮かぶ月、なぜに兵士の心をば照らして郷里思わせる、胡笳はあくまで悲しげに人の老いをばせきたてる。軍前いく重に囲んだる敵の包囲を破らんとすれば心に浮かび来る、閨のうちには我が妻が我が帰りをば待つらんと。妻は十年夜なべして機織りながら啼きながら、夫は九月に届くらん冬着いまかと待ちこがる。馬に飲ませる●(コ)河の水、ゆうぐれ更に水清く、しきりに羌笛吹きながら遠き陣営に帰るなり。あな恨めしや漢軍のいくさは苦戦多くして、金の鏃(やじり)を長城のあたりに残すむなしさよ。
March 8, 2008
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