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山■(「瞿」のみぎに「鳥」。ク)▼(「谷」のみぎに「鳥」。ヨク)歌(一作韋應物詩) 劉長卿山■(ク)▼(ヨク)、長在此山吟古木。嘲▲(「口」のみぎに「折」。タツ)相呼響空谷、哀鳴萬變如成曲。江南逐臣悲放逐、倚樹聽之心斷續。巴人峽裏自聞猿、燕客水頭空撃筑。山■(ク)▼(ヨク)、一生不及雙黄鵠。朝去秋田啄殘粟、暮入寒林嘯群族。鳴相逐、啄殘粟、食不足。青雲杳杳無力飛、白露蒼蒼抱枝宿。不知何事守空山、萬壑千峰自愁獨。【韻字】▼(ヨク)(入声、沃韻)・木・谷(入声、屋韻)・曲・続(入声、沃韻)・筑(入声、屋韻)鵠(入声、沃韻)・族・逐(入声、屋韻)・粟・足(入声、沃韻)。宿・独(入声、屋韻)。【訓読文】山■(ク)▼(ヨク)の歌。山■(ク)▼(ヨク)、長く此の山に在りて古木に吟ず。嘲▲(「口」のみぎに「折」。)相呼んで空谷に響き、哀鳴万変して曲を成すがごとし。江南の逐臣放逐せられしを悲しび、樹に倚つて之を聴きて心断続す。巴人峡裏自づから猿を聞き、燕客水頭空しく筑を撃つ。山■(ク)▼(ヨク)、一生双黄鵠に及ばず。朝に秋田に去つて残粟を啄み、暮に寒林に入つて群族に嘯く。鳴きて相逐ひ、残粟を啄めども、食足らず。青雲杳杳として力無く飛び、白露蒼蒼として枝を抱きて宿る。知らず何事ぞ空山を守り、万壑千峰自から独りなるを愁ふるやを。【注】睦州司馬に赴任途中の作。○嘲▲(「口」のみぎに「折」。タツ) 粗俗なようす。 ○巴人峡裏自聞猿 『水経注』《江水》に引く漁者の歌に「巴東の三峡にては巫峡長し、猿鳴くこと三声にして涙衣を沾す」。○燕客水頭空撃筑 『史記』《刺客列伝》に、戦国時代に高漸離と荊軻が燕の市で酒を酌み交わし、筑(竹で叩いて演奏する瑟に似た楽器)を叩いて易水のほとりで秦始皇帝暗殺に赴く荊軻を見送ったという。○黄鵠 一度舞いあがると千里も遠くまで飛ぶという大鳥。【訳】ハハチョウの歌。ハハチョウは、此の山住まい久しくて年ふりた木に鳴きさけぶ。その鳴く声はひとけ無き谷にこだまし、哀しげで曲を奏づるごとくなり。われ江南に流されて左遷の憂き目悲しみて、林の中で鳴き声を聴きて心をかきみだす。巴東の人は峡谷に猿の鳴き声常に聞き、燕の国人川端に筑を奏づることむなし。山■(ク)▼(ヨク)、一生双黄鵠に及ばず。朝には秋の田に向かい刈り残したる粟をはみ、夕暮れさびしき林にて群れいる仲間に鳴きさけぶ。身の上嘆き鳴きさけび、粟をはめども、食足らず。力無く飛ぶ青い空、秋の夕べは露おりて枝を抱きて眠るなり。いったいなにゆえ人も無い山を守りて、あちこちの谷や峰々移動して独りをかこつや情けなや。
July 20, 2008
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送郭六侍從之武陵郡 劉長卿常愛武陵郡、羨君將遠尋。空憐世界迫、孤負桃源心。洛陽遙想桃源人、野水閑流春自碧。花下常迷楚客船、洞中時見秦人宅。落日相看斗酒殘、送君南望但依然。河梁馬首隨春草、江路猿聲愁暮天。丈人別乘佐分憂、才子趨庭兼勝遊。■(「シ」のみぎに「豊」。ホウ)浦荊門行可見、知君詩興滿滄洲。【韻字】尋・心(平声、侵韻)。碧・宅(入声、陌韻)。然・天(平声、先韻)。憂・遊・洲(平声、尤韻)。【訓読文】郭六侍従の武陵郡に之(ゆ)くを送る。常に愛づ武陵郡、羨(うらや)む君の将(まさ)に遠く尋ねんとするを。空しく憐(あはれ)ぶ世界の迫り、桃源の心に孤負(コフ)するを。洛陽遥かに想ふ桃源の人、野水閑流して春自から碧りなり。花の下に常に迷ふ楚客の船、洞中時に見ゆ秦人の宅。落日相看て斗酒残し、君を送りて南望すれば但だ依然たり。河梁の馬首春草に随ひ、江路の猿声暮天に愁ふ。丈人別乗佐(たす)けて憂ひを分ち、才子庭に趨りて兼ねて勝遊す。■(ホウ)浦荊門行くゆく見るべし、知んぬ君の詩興滄洲に満つるを。【注】天宝年間、洛陽における作。○郭六侍従 ○武陵郡 湖南省常徳県。○将 これから…しようとする。○世界 この世。世間。○孤負 そむく。○桃源心 世俗を離れてのんびりと暮らそうという心。○洛陽 河南省洛陽市。○遥かに想ふ桃源の人、○野水 野の川。○閑流 しずかに流れる。○花下常迷楚客船 武陵の漁夫が桃花の林に迷い込んだという《桃花源記》の話をふまえる。○洞中時見秦人宅 道に迷った武陵の漁夫が桃花の林にの奥の山の洞窟を抜けたところで視界がひらけ、そこに住む人びとは混乱した秦の時代に家族を引き連れて隠れ住んだという《桃花源記》の話をふまえる。○落日 沈む夕陽。○斗酒 一斗の酒。多量の酒。○南望 遠く南方を眺めやる。○依然 樹木が盛んに茂るさま。○河梁 川に架かる橋。○馬首 馬の頭。○江路 船旅の道筋。○暮天 夕暮れの空。○丈人 老人に対する敬称。○別乗 別駕。刺史の補佐官。○才子 才能ゆたかな人物。郭六を指す。○趨庭 『論語』《季子》に、孔子の息子の鯉が、庭を小走りに横切ったときに「『詩』を学んだか?」と声をかけられた話をふまえる。父から教えを受けることをいう。○勝遊 優れた景勝地に旅する。○■(ホウ)浦 洞庭湖に注ぐ。○荊門 湖北省宜昌・枝城の間の長江西岸にあり。○詩興 詩を作りたいとわき起こる感興。○滄洲 青々とした水辺。【訳】郭六侍従が武陵郡にゆくのを見送る。常に武陵郡にあこがれて、君の尋ぬるうらやまし。あくせくとした世の中に我は空しく追われつつ、のんびり暮らす生活にそむき続くる宮仕へ。洛陽の地で桃源に向かう君をば想ひやる、野の川静かに流れては水あおあおと春のどか。君の乗る船桃源の桃咲くしたに迷ふらん、洞あな抜けて時々は見るか世避けし人の家。夕陽傾き酒酌みて互いに名残尽きねども、君を見送り南方を眺むるかなた木々茂る。川に架かれる橋のそば馬はうなだれ草をはみ、船路にひびく猿の声夕べの空にいと悲し。父の別駕は刺史のこと補佐して民と憂ひ分け、君は父君に教へ受け景勝武陵に旅ぞする。
July 13, 2008
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