おしゃれ手紙

2009.11.26
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カテゴリ: 父の麦わら帽子

夏は行水で済ませたが、冬は村中の家をもらい湯をしてあるいた。

村の中でも、皆、毎日焚くというところは無かった。
焚くと
「今日は、うちに、風呂を焚くから、おいで」声をかけてくれたる人がいた。
言われると
「ほんなら、風呂をよばれに行こう」とホイホイと出かけた。
風呂をよばれる・・・。
風呂は、ごちそうと同じく、「よばれる」ものだった。


ウラのクマさんは、村には珍しく、植木職人で、町の暮らし振りを伝えてくれた。
「町には、便利なもんがある。」とクマさんは言った。
「寝ている間に飯が炊ける道具がある。」
「ほー、そうか!!」と父と母は、感嘆の声をあげたが、私は、信じられなかった。
「寝ている間に、ご飯が炊けるなんて、考えられない」子どもの私は、心の中でつぶやいた。

「クマさんは、女道楽で、女を泣かせてばかりいる」と母が父に言ってたの聞いたことがあったからだ。
そんな、クマさんの言うことは、信じられない。
ご飯を焚くには、米を研いで、クドに火を焚きつけて、始めチョロチョロ、中パッパと火加減を気にしながら、焚かなければいけない・・・。
寝てる間に炊けるなんてありえない。
そう思ったが口には、出さなかった。
 風呂場は月明かりが頼りで暗かった。

ぬるくても、焚いてと言えなかった。
小さな石鹸が置いてあったが、使うと悪いような気がしていつもタオルでゴシゴシと体を、こするだけだった。
そのタオルも、一家に1本だったから、ヨレヨレだった。

けれども、入っていると
「湯かげんはどうじゃ?

「もっと焚(た)こうか?」などと声がかかった。
今では、自分の好きな温度で好きな時間に何回でも風呂に入れる。

すきなだけ、お湯が使える。
石鹸も、シャンプーも、リンスも、タオルも、バスタオルもある。
考えると、なんと、贅沢なことか・・・。

けれども、だれも湯加減を聞いてくれないのは、少し寂しい気がする。


■2002.11.17 に書いたものに手を加えました。

父の麦わら帽子

◎◎◎◎◎◎

12月19日、PCがやっと復活。
約1ヵ月間、パソコンのない生活だった。
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◎自然と人間が仲良く暮らしていたころの話です。
★11月16日 *父の麦わら帽子:永訣の朝 *
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Last updated  2009.12.22 18:16:16
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天地はるな@ Re[1]:へび年ですから:口縄坂(10/01) ミリオンさんへ 最近忙しくて朝ドラを見る…
天地はるな@ Re[1]:9月のおしゃれ手紙:連歌と茶道(09/30) ミリオンさんへ 京都は観光客が多すぎて最…
ミリオン@ Re:ごちそうさん歌・サラダ記念日(07/06) こんばんは。 サラダは美味しいですね。食…
ミリオン@ Re:ウラワザをもって、おフジ様、登場!!(07/05) おはようございます。 野球は面白いですね…
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