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他人事じゃない 気をつけよう でもどうやって 前にも書いたような気がするが、bambooは三日間連続で働いたことがある。初日の朝から三日目の終業時刻まで、およそ57時間連続勤務だ。多少は居眠りもしたのだが、不整脈が頻発して、本当に死ぬかと思った。今では人手も増え、さすがに三日連続勤務と言うことはない。立場も変わって、時間外労働も部下に比べれば少ない。でも、部下達は時には月に60時間以上の時間外勤務をしている。以下の記事は他人事ではない。 asahicom麻酔科医師の急死「過労死」と認定 大阪地裁判決2007年03月30日 大阪府立急性期・総合医療センター(旧大阪府立病院、大阪市住吉区)の麻酔科医だった奥野恭嗣(きょうじ)さん(当時33)が急死したのは過重労働が原因だったとして、奥野さんの母親が府に約1億5400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、大阪地裁であった。古谷恭一郎裁判長は「時間外労働が月88時間を超えており、業務と死亡に因果関係が認められる」と述べ、約1億700万円の支払いを命じた。府側は控訴する方針。 判決によると、奥野さんは94年7月から旧府立病院の麻酔科に勤務。平日の所定勤務以外に、時間外労働や休日勤務などがあった。96年3月5日、大阪市内の自宅で急性心機能不全で死亡した。 判決は、奥野さんの時間外労働について、同僚医師の証言などに基づき、95年9月~96年2月に月88時間を超えていたと判断。そのうえで「人の生命にかかわる業務に就いて精神的負担を抱えていたのに、病院側は十分な休憩を取らせるなどの配慮を怠った」と指摘した。 賠償額については、一般の男性医師の平均給与をもとに、奥野さんが将来得るはずだった逸失利益などを算定した。 笹井康典・府健康福祉部長の話 主張が認められず、誠に厳しいものと考えている。 まだ33歳の若き麻酔科医が亡くなった。過酷な労働のあげくの過労死だという。麻酔科医は自分で仕事の量を調節出来ない。言い張れば出来ないこともないが、手術待ちの患者がたくさんいて、病床に余裕があれば断ることは難しい。緊急手術は待ったなしだ。こちらの体調なんかに関わりなくやってくる。 当時の麻酔科医は何人いたのだろう。みんな同じように働いていたのだろうか。立場上1人にだけ過剰な仕事量が割り振られていたのだろうか。後者だとすれば上司にも責任があろう。私は今は麻酔科のトップなのだが、部下が徹夜で働いた後は、多少無理をしてでも早退させている。疲労による健康被害とミスの起こしやすさを考えれば、残りが無理をする方がまだましだ。 大阪府も面子なんかにこだわらず、控訴なんかしないで認めるべきだ。尋常じゃない働き方で病院を支えてくれた医師に、感謝の気持ちくらい表したらどうだ。
2007.03.31
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そりゃ死なない奴だっているさ 死んだ奴が悪いっての? 中原利郎先生の自殺が労災と認められたのもつかの間、勤務先への損害賠償責任は否定された。たいしたことのない勤務状態だったんだそうだ。患者を診察しているとき以外は眠れると思って居るんだろうな。医療行為の緊張感から解き放たれて眠れるまで、 bambooは2時間はかかる。もちろん実際に診療していないときにも、色々な雑用があって眠れない。患者の相手をしているときだけが仕事じゃないのだ。小児科医自殺 賠償認めず…東京地裁判決労災認定と異なる判断 東京都中野区の「立正佼成会付属佼成病院」の小児科医・中原利郎さん(当時44歳)が自殺したのは、過密勤務からうつ病になったためだとして、遺族が病院側に慰謝料など計約2億5000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、東京地裁であった。 湯川浩昭裁判長は「仕事は特に過密だったとはいえず、うつ病を発症させる危険性があったとも認められない」として、請求を棄却した。 中原さんの自殺を巡っては、遺族が労働基準監督署を相手取り、遺族補償給付の支給を求めた訴訟で、東京地裁が今月14日、「過密勤務などが原因でうつ病にかかり自殺した」と労災を認定し、判決は29日に確定した。二つの訴訟の司法判断が正反対となったことについて、原告代理人は「同じ証拠で、ここまで百八十度違う判決になる理由が分からない」としている。 原告側は、中原さんが1999年3月以降、同病院の小児科医師の相次ぐ退職に伴い、宿直回数や心理的負担が増えた結果、うつ病を発症し、同年8月に自殺したと主張していた。 判決は「宿直回数は、他の病院の小児科医と比較して突出して多いとはいえず、過重な業務だったとは認められない」と指摘。仕事とうつ病の関係についても、「健康状態や相続問題など仕事以外にも心理的負担になる問題を抱えていた」と、因果関係を否定した。(2007年3月30日 読売新聞) みんな無理するのは止めよう。普通の労働者としての権利を主張しよう。自分の身体を壊してまで、他人の健康に責任を持つことはない。医者だって人間だ。奴隷じゃないんだ。人間らしい生活を求めたって良いじゃないか。
2007.03.30
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署名して 署名して 署名して 麻酔科医のメーリングリストで署名運動を知り、署名に応じたところ、出来るだけ多くの人に署名を依頼するメールを転送して欲しいとの返事を頂いた。目的には賛同しているのだが、やはりチェーンメールのようなことはしたくないので、ここで紹介することにした。とは言え、私が相手を選んで送るのと違い、ここは誰でも見られる場所だ。実名の記載されているメールを公開して良いものか悩ましい。と思っていたら、ちゃんと署名を呼びかけているサイトがあった。http://expres.umin.jp:80/genba/comment.html 下記はそこからの引用だが、詳しくはリンク先を見て欲しい。厚生労働省試案「診療行為に関連した死亡の死因究明等のあり方に関する課題と検討の方向性」へのパブリックコメント意見書への署名募集のご案内厚生労働省は「診療行為に関連した死亡の死因究明等のあり方に関する課題と検討の方向性」に関してパブリックコメントを募集しています。 厚労省のパブコメ募集サイト「現場からの医療改革推進協議会」は医療に関係する現場の方々が意見交換し、社会提言と同時に実践を目指すグループです。医師、看護師などの医療職以外に、メディアや政治関係者、患者会関係者などが参加しています。これまで、福島県立大野病院事件で逮捕された産婦人科医師の支援活動を継続しながら、この事件を契機に我が国が抱える医療紛争の問題に関して議論を続けてまいりました(シンポジウム抄録PDF 1.2MB)この度は、厚労省のパブリックコメントに応募するという形で私たちの意見を提出したいと考えています。以下に、医療における事実解明と裁判外紛争処理のあり方に関する論点を整理し、私たちの主張を述べさせていただきます。皆様の御意見を賜ると同時に、私たちの考えに御賛同いただき、連名でパブリックコメントを提出いただける方は、私まで連絡いただけませんでしょうか。氏名、所属、職業を書いて下記までお送り下さい。連絡方法はe-mail、fax、電話、郵送のいずれでも結構です。何卒、宜しくお願い申し上げます。連絡先: 上 昌広現場からの医療改革推進協議会 事務局長〒108-8639 東京都港区白
2007.03.28
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コラ~ へたくそー 引っ込め~ プロ野球も開幕し、野球ファンの bambooは嬉しい。どんなにすばらしいバッターでも三振するし、どんなにすばらしいピッチャーでも、失投して打たれることもある。また、ゴールデングラブの常連でも、エラーすることはある。野球ファンにとっては常識だ。例えどのようなミスをしようと、トータルで良い成績を残すのが一流選手だ。一度のミスでクビにしていては、選手は居なくなってしまう。 プロ野球選手というのは、大変な競争を勝ち抜いてきた人たちだ。例え二軍の選手といえども、素人から見たら雲の上の存在だ。草野球選手と較べたらレベルが違う。 ところで医者はどうだろう。医者はどのような競争を勝ち抜いてきたのだろうか。確かに大学入試は、裏口でない限り難しい。でも、国家試験は、裏口入学者でもない限り、まともに勉強していれば受かる。そして、国家試験を受かっただけでは使い物にならない。 プロ野球選手は野球の技術で選抜されるが、医者は医療技術で選抜されるわけではない。外科を希望すれば外科医になれるし、循環器科を希望すれば循環器科医になれる。当然のことながら、プロ野球レベルの医者もいれば草野球レベルの医者もいる。ある医者にとっての通常業務が、別の医者にとっては医療ミスであったりするのだ。 選抜されて高度な技術を持った集団であるプロ野球選手のミスがそれほど致命的にならないのに、制度上玉石混淆になることが避けられない医療の世界で、たった一度のミスで葬り去られることはどうなのだろう。 どのような名手でもミスはする。それまで多くの命を救ったプロ野球レベルの名医が、誰でもする可能性のあるたった一度のミスで抹殺されるとしたら、医療界にとって損失じゃないのだろうか。故意犯や誰もしないような酷いミスを除いて、医療におけるミスに刑事罰はなじまない。医師も、トータルでどれだけ役に立ったかを見て欲しいと思うのは、贅沢だろうか。ましてや、同業者から見てミスとはいえない状況で、逮捕され、起訴されて被告人となっている医師がいることは、どうにかならないかと思う。
2007.03.27
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集約化 その効能は いかがなり 産科医の負担が大きいので集約化しようという案がある。集約化すれば、産科医の居ない地域が出ることになり、不便になることは間違いない。でも、産科医の負担を軽減し、これ以上の逃散を防ぐ効果はあるだろう。また、マンパワーが増えれば、医療安全の面からも好ましい結果に繋がるだろう。でも、大事なことが議論の俎上に乗っていない気がする。産科医が楽になる分、診療を受けられる患者は減るはずなのだ。asahicom救急対応のセンターの設置を提言 日本産科婦人科学会2007年03月21日22時47分 日本産科婦人科学会は21日、医師不足対策と安全な「お産」についての最終報告書案をまとめた。24時間救急対応できる「地域産婦人科センター」の設置を提言。相次ぐ医療訴訟が産婦人科医不足を招いているとして、医療紛争解決制度が早期に必要だとした。 同学会の医療提供体制検討委員会が05年から、医師不足対策について議論してきた結論で、4月の学会総会で提出する。今後、国や自治体に要望する。 報告案は、人口30万~100万人程度を一つの産科医療圏と設定。各医療圏ごとに、ハイリスク分娩(ぶんべん)など24時間対応できる「地域産婦人科センター」を設置するほか、圏内の診療所や助産所、中小病院などが連携し、30分以内に緊急な帝王切開に対応できる体制も整備するとした。 医療事故の事実関係などを明らかにする「原因究明機構」の設置や、医師の責任にかかわらず患者に補償する「無過失救済制度」の整備も求めている。 救急対応のセンターの運営をするには、かなりのマンパワーが必要だ。当然医療圏はかなり広くなる。医療圏が広くなれば、患者の数も増える。その患者が救急対応のセンターに押しかけたら、対応できるのか。 今までなら一人医長で、緊急帝王切開も一人でやった。集約化して二人でやれば、同時に手術が出来る数は減る。医療圏が広くなれば、同時に母体搬送と言うこともあるだろう。今までなら他を当たることも出来たが、集約化してしまえば他に行くところはない。産科医だけでなく、事務、看護師、助産師や麻酔科医も集約化しなければならない。産科医だけたくさん集めて、麻酔科医は少ない人数で当直を回すのはごめんだ。 結局、日本全体で産科医や麻酔科医の数が増えなければ、救急対応のセンターを作って30分以内でいつでも帝王切開なんて絵空事だ。そもそも産科医が少ないから集約化の案が出てきたのに、何寝言言っているのだろう。具体的に30分なんて数字出すと、今後の裁判の基準になるんじゃないかと不安じゃないか。
2007.03.25
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救急専門医でねえと救急やっちゃナンネエってか? ソッタラもの、何処にいるだ! 救急指定病院の返上が相次いでいるらしい。元々救急医療なんて赤字で、何とか行政に頼まれて嫌々やっていたという事情がある。それなのに、患者はわがまま言いたい放題で感謝のかけらもない。ボランティアをドレイのようにこき使い、場合によったら賠償金までふんだくろうとすれば、逃げるでしょうな。勤務医不足深刻、5年で430病院が救急指定返上…本社調査 全国の「救急告示医療施設」(救急病院)の総数が過去5年間で「医師不足」などを理由に1割近く減っていることが、読売新聞の緊急自治体アンケートでわかった。 減少傾向には歯止めがかかっておらず、いざという時に患者の受け入れ病院がなかなか見つからないなど、救急体制の危機が深刻化している実態が浮き彫りになった。 読売新聞が全国47都道府県を対象に、救急体制について聞いたところ、2001年3月末に全国で5076施設あった救急告示医療施設が06年3月末までに約8・5%に当たる432施設減少し、4644施設になっていた。今年度に入っても減少傾向は変わらず、38都道府県の121施設が救急告示(救急医療施設の指定)を撤回、または撤回する予定だ。 医療施設が告示を撤回する理由については、38都道府県のうち6割以上にあたる24自治体が、「医師の確保が困難」(青森県)、「常勤医の退職」(秋田県)、「医師などの体制確保が困難」(福岡県)など医師不足による受け入れ体制の問題を挙げた。勤務医不足で夜間当直体制が確保できず、撤回するケースも相次いでいる模様だ。 救急医療施設の減少で地域によっては一刻を争う救急患者の搬送先確保にも困難が生じているが、救急告示を撤回していない医療施設でも患者の受け入れが困難となる施設も多く、山梨県東部では東京都内の病院に高速道路を使って搬送するケースも相次いでいる。 救急医療施設の過去5年間の増減について都道府県別にみると、37都道府県で減少。特に北陸、四国の減少率が高かった。同数は3県。増加したのは7県だった。 東日本で増加した県はなかった。地域医療の中心となるべき医療施設が、指定を次々と撤回する背景には地方で深刻化する病院勤務医の人員不足があることは確実といえそうだ。 アンケートは、2月末から3月上旬にかけ、自治体の地域医療担当部署に書面で実施し、全47都道府県から回答を得た。(2007年3月20日 読売新聞) 建前は医師不足だけど、実際には次の判例も大きかったのだと思う。大阪高等裁判所平成15年10月24日判決(平成14年(ネ)第602号損害賠償請求控訴事件)抜粋(脳外科医として)最善の措置を講じたということができるのであって,注意義務を脳神経外科医に一般に求められる医療水準であると考えると,被控訴人Eに過失や注意義務違反を認めることはできないことになる。G鑑定やH鑑定も,被控訴人Eの医療内容につき,2次救急医療機関として期待される当時の医療水準を満たしていた,あるいは脳神経外科の専門医にこれ以上望んでも無理であったとする。 しかしながら,救急医療機関は,「救急医療について相当の知識及び経験を有する医師が常時診療に従事していること」などが要件とされ,その要件を満たす医療機関を救急病院等として,都道府県知事が認定することになっており(救急病院等を定める省令1条1項),また,その医師は,「救急蘇生法,呼吸循環管理,意識障害の鑑別,救急手術要否の判断,緊急検査データの評価,救急医療品の使用等についての相当の知識及び経験を有すること」が求められている(昭和62年1月14日厚生省通知)のであるから,担当医の具体的な専門科目によって注意義務の内容,程度が異なると解するのは相当ではなく,本件においては2次救急医療機関の医師として,救急医療に求められる医療水準の注意義務を負うと解すべきである。 そうすると,2次救急医療機関における医師としては,本件においては,上記のとおり,Fに対し胸部超音波検査を実施し,心嚢内出血との診断をした上で,必要な措置を講じるべきであったということができ(自ら必要な検査や措置を講じることができない場合には,直ちにそれが可能な医師に連絡を取って援助を求める,あるいは3次救急病院に転送することが必要であった。),被控訴人Eの過失や注意義務違反を認めることができる。 つまり宿直医は、脳外科医としては十分な能力を持っていたとしても、救急医としては十分な能力ではなかったというわけだ。救急医として十分な能力がないなら、救急指定病院で救急患者を診てはいけないと言う判断だ。 実際には、このような優秀な脳外科医がいつも宿直をしているわけではない。下手をすればマイナー科の医師の宿直にあたることもある。日本の現状はその程度なのだ。経済的裏付けもなく、無い物ねだりを繰り返せば、崩壊するほか無い。 更に言えば、宿直医が救急患者を診る必要はない。宿直というのは、本来その様な業務ではないのだ。もう一つ、鑑定医の能力のあきれるほどのお粗末さが上記判決に関与している。たとえ医師免許があっても、たとえ教授などのお偉いさんでも、現場を知らない素人はすっこんでろ!
2007.03.23
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1人でも 死んだら駄目か? お産では。 最近はお産というのは安全なものだと思っている人が多い。だから、お産で亡くなったりすると医療ミスだと言われて高額の賠償金を請求されたり、下手をすると刑事事件として逮捕されたりする。でも、以下の記事を見て欲しい。250人に1人は、致死的な状態になるのだ。致死的状態になった73人の妊産婦のうち、医療のおかげで72人は助かっているのだ。残念ながら、全員を助けることは出来ないが、それでも海外のデータと比べればきわめて優秀な成績だ。医療ミスだと騒ぐ前に、是非以下の記事を読んで欲しい。 重篤は死亡妊産婦の70倍 厚労省調査、250件に1人 出産時の大量出血などで、一時でも「生命に危険がある」と判断される重篤な状態に陥った妊産婦は、実際の死亡者数の70倍以上、出産約250件に1人の割合に上るとみられることが、厚生労働省研究班(主任研究者・中林正雄愛育病院院長)などの全国調査で20日までに分かった。 2000-05年の国内の妊産婦死亡は出産10万件当たり4-7人程度で、一般には比較的まれな現象と受け止められてきたが、死に至る危険は多くの妊婦にあった実態が明らかになった。 調査に参加した専門家は「妊娠・出産の本当のリスクは、これまで考えられていたより高い」と指摘。産科医の減少が懸念される中、母親と新生児を守る周産期医療体制の充実を訴えている。 研究班は日本産科婦人科学会周産期委員会と共同で昨年、全国の産婦人科病院など998施設を対象にアンケートを実施。333施設から、04年の実績で国全体の11%に当たる約12万5000件の出産について回答を得た。 それによると、大量出血や常位胎盤早期はく離、頭蓋(ずがい)内出血などで死亡したのは計32人。 だが、血管内凝固症候群などで一時でも生命に危険があると判断された妊産婦を含めると計2325人で、実際の死亡数の約73倍だった。 この割合を、全国で62人が死亡した05年に当てはめて推計したところ「生命の危険あり」は約4500人となり、出産約250件に1人の割合であることが明らかになった。 【妊産婦死亡】 妊娠・出産が原因になった女性の死亡。国内の2000-05年の統計では、年間49-84人が死亡しており、出産10万件に対し4-7人が死亡した計算になる。06年版世界人口白書に掲載された推定値によると、妊産婦死亡はアフリカでは出産10万件当たり1000人を超える国も多い。日本は同17人の米国より少ないが、同2人のスウェーデンよりは多い。世界平均は同約400人(約250件に1人)といわれ、日本で重篤な状態に陥った妊産婦とほぼ同じ割合になる。(中日新聞) アフリカでは妊産婦死亡率は100人に1人以上の国も多いとのことなので、医療の介入がなければ、それくらいの妊産婦が致死的状態になるのであろう。先進国では、出産前から医療が介入しているので、250人に1人で済んでいると考えられる。 致死的状況に陥った妊産婦の多くは、医療によって救われている。もちろん全員を助けられればよいのだが、残念ながら医療にも限界がある。それでも、諸外国と比べれば優秀な成績である。本来なら誉め称えてしかるべきなのに、全員を助けなかったからと言われてバッシングされているのが現状だ。そのあげくに産科医療の崩壊を招き、今まで助かっていたはずの人たちの命を危うくしている。 産科が崩壊した後、助産師に期待する向きもあるだろうが、助産師に出来ることは、アフリカ並みの100人に1人の致命率を、文明国並みの250人に1人の致死的状況にすることが精一杯だろう。そして、医療の介入がなければ、致死的状況に陥った妊産婦はそのまま死亡する。今までは73人のうち72人は助かっていたのに、全員が死亡するのだ。73人に1人が死亡することを咎めて、73人全員が死亡する道を選択しようと言うのが今の民意なのだろうか。本当にそれで良いのか?困るのは誰か、良く考えてみて欲しい。
2007.03.22
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健康保険・薬剤添付書・判例に基づいた医療で良い? 昨日紹介した福島県立大野病院事件第三回公判(2)が加筆されていた。頷ける部分が多かったので紹介する。裁判の傍聴記からははずれるので、こちらでは別エントリにした。また、引用は一部に過ぎないので、出来ればリンク先の原文を読んで欲しい。H医師からすれば「客観的事実に照らして判断してください。 照らすべき事実がないなら『疑わしきは被告人の利益に』でしょ」という心境ではないかと推察する。だが現在の司法ルールではいったん署名捺印してしまったなら、それは証拠能力を持つのだ。立場を引っくり返した検察側が(そもそも事件の見立てがおかしいという問題はさておき)きちんと手続きしたのに、なぜ揃いも揃って証言を翻すのかと、怒り心頭になるのも分からないではない。要するに司法ルールを当然のことと考えて行動している人たちから見ると医療者の「司法リテラシー」は低すぎるのであり一体どういう発想で動いている職業集団なのか理解不能だと思う。トラブルに巻き込まれないためにも医療者は、もう少し世の中の動きに関心を持って一般の社会人として振舞うことも考えた方が良いと思う。ただし、一方の患者サイドから見た場合医療者に司法リテラシーを求めるのが果たして良いことなのか。傍聴記を離れてしまうがなぜにここまで医療者は司法ルールに無頓着で司法の場でオロオロしてしまうのかという問題と併せて私なりに考えたことを述べてみたい。人間が生きていく中で従わねばならない最も基本的な規範は何か。現在の日本ではほとんどの人が「憲法」とか「法律」とか答えるのであろうが少なくとも医療者にとっては(科学者にとっても?)法律よりも自然法則の方が上位概念ではないだろうか。社会が(イコール人間が)どんな決まりや約束事を作ろうが人間にできることなどタカが知れておりできないことはできないのである。法律で病気が治ったりまして死にそうな人が蘇生したりは絶対にしないのである。であれば医療者が日常で学び指針とすべきは自然法則であり、過去からの経験の集積であって、法律ではない。医療者は違法行為をしても許されると主張しているわけではない。医療といえども社会システムであるから社会のあり方と無関係に存在するわけにもいかずその目が医療者に対して厳しくなっている現状は否めないのだが角を矯めて牛を殺すなかれ。ただでさえ学ぶべきことが多い医療者に対して司法ルールを学びなさい、法律を第一に考えなさいというのが本当に社会全体の利益になるのかは考えどころだ。 まずは供述書について考える。我々が論文を書くときには、客観的事実は出来るだけ図や表を用いる。文章はその説明に過ぎないことが多い。ところが供述書には図や表はない。すべてを文章で表さなければならない。このブログを読んでもお分かりの通り、医者はそのようなことは苦手なのだ。 図や表を用いれば誤解されることも少なくなるが、文章だけで誤解の余地なく表現するのは、素人には難しい。ましてや、実際に文章を書く者が、別なストーリーを組み立てやすいように意図しているとしたら、訂正を求めるにしても限度がある。医者に限らず、被疑者として供述する場合には、誰でもとまどうのではないだろうか。 次は法曹と医療の事実認定の違いについて考えてみる。 bambooがよく行く 元検弁護士のつぶやきでも、しばしば医師と弁護士の間で紛糾することがある。確かに常識が違うのだ。法律家にとっては、証拠などから再構築されたものが事実なのだろうし、医者にとっては実際に起きたことが事実なのだ。もちろん実際に起きたことを知るには証拠などから判断するしかないが、捜査権を持つ側が証拠を押収して独占し、自分たちに有利になるように出したり出さなかったりしている現状では、とても公平に判断して貰えるとは思えない。 最後に規範の違いについて考えてみる。医療は実際に治らなければ意味がない。治すために重要なのは、科学的裏付けである。科学的に結論が出ていなければ、経験に照らして良さそうな手法を選ぶ。ガイドラインなどはそのようにして出来る。ガイドラインは保険診療や薬剤の添付書や判例にとらわれない。それらを重視しても治らないからだ。 本当の診断名では有効な治療法を保険機構に認めて貰えない場合、多くの医者は保険病名を付ける。もしかしたら詐欺に当たるのかも知れないが、それなくして医療の質は保てない。また、薬剤の添付書も同様である。添付書通りに使っていたのでは有効な治療は出来ない。何かトラブルがあったら、きっと裁判で問題になるのだろう。でも、それを気にしていたら、医療の質は保てない。もちろん判例を重視したりしたら、医療は完全に崩壊する。(たぶん医療だけでなく国家も崩壊する。なぜなら、判例によれば、ほとんどすべての患者にありとあらゆる検査をしなければならない。医療費だけで国家予算より多くなるんじゃないかな。) 結局、引用文にもあるように、法律で病気は治らない。今の法律は医療の質に追いついていないのだ。まともな医療ができる法体制になっていないのだ。法を完全に守って保険診療をしたら、多くの命が失われるだろう。これは誇張ではない。身を守るために萎縮診療をすれば、モチベーションが保てない。法が医療の世界にどうしても踏み込んで来るというなら、黙って立ち去るか、「逮捕するならしてみやがれ」と開き直って続けるしかない。 でも、多くの医師は漠然たる不安は感じているものの、どのような状況なのか知らない。大野病院のことすらよく知らないのだ。ネットであれこれ言っているのは、ほんの一部なのだ。まだ自分が歩いているのは地雷原なのだと言うことに気がつかない医師も多い。彼らが自分の置かれた立場を認識したとき、医療は完全に崩壊する。
2007.03.20
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言ったとおりに書かんかい! まずは毎日新聞の記事を読む前に、福島県立大野病院事件第三回公判(1)と福島県立大野病院事件第三回公判(2)を読むことをお奨めする。クリックで飛べます。 上記を読んだ上で、次の毎日新聞の記事を読んでみましょう。証人尋問で麻酔科医、刑事責任追及を疑問視 大野病院医療事故 07/03/19記事:毎日新聞社 大野病院医療事故:証人尋問で麻酔科医、刑事責任追及を疑問視----地裁公判 /福島 ◇「明らかな過失ない」 県立大野病院で起きた帝王切開手術中の医療事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた同病院の産婦人科医、加藤克彦被告(39)の第3回公判が16日、福島地裁(大沢広裁判長)であり、証人尋問が行われた。手術に立ち会い、自身も被疑者として警察の取り調べを受けた同病院の麻酔科医は「ミスと呼べるようなことがあったかは疑問」と、加藤被告への刑事責任追及に疑問を投げかけた。 麻酔科医の証人尋問では、助手として立ち会った同病院の外科医も被疑者として取り調べを受けたことが明らかになり、麻酔科医は「逮捕を覚悟した」と述べた。その上で手術について「他の臓器を傷つけるなど明らかな過失はなかった」と証言した。また、術中に「わき出るような出血があった」と証言したが、胎盤剥離が原因だったか「時期については記憶があいまい」として明言しなかった。 この日は手術に立ち会っていた助産師に対する証人尋問も行われた。助産師は、県立医大病院で行われた同様の症例の手術で大量出血があったことを術前に聞いていたため、「うちの病院(大野病院)で対応できるのか不安だった」と述べた。【松本惇】 記事では外科医が被疑者として取り調べを受け、麻酔科医も逮捕を覚悟したように書かれているが、上記リンク先では麻酔科医自身が被疑者として取り調べを受けたとなっている。どちらが正しいのかbambooには判断が付かない。まあ、どちらでも、麻酔科医が逮捕におびえつつ供述したことには違いない。その供述だが、細かいニュアンスは全く無視され、断定していないことも断定したように書かれたそうな。供述するのは取り調べを受けている人だが、供述書を書くのは調べる側だ。そして、調べる側の仕事は、有罪に持っていくことなのだ。供述証書は何度も何度も読み返して、気に入らないところが全くなくなるまで訂正させない限り、署名をしてはいけないのだ。自分が不利になるだけでなく、他人にも迷惑をかけることになるからだ。 結局麻酔科医も被告人を無責とする証言をしているので、検察は医者同士のかばい合いで事実を歪曲しているというシナリオを書くことにしたようだ。裁判官が騙されないと良いが。 さて、もう1人の助産師だが、記事でも前置胎盤のような危険な症例を大野病院でやって良いのかという不安があったように書いてある。もちろん検察も、その様な危険な症例を大野病院でやったこと自体がミスであるというシナリオを書いている。でも、この助産師は、それまでに前置胎盤の症例はゼロで、その後も経験していない。つまり、この症例一例だけが唯一の症例なのだ。不安も大学で大出血の症例があったという伝聞によるものである。何の問題もなく終わる前置胎盤の症例が大多数だと言うことも知らないのだ。一方、何の問題もないと思われた自然分娩で、頸管裂傷などで大量出血を来して亡くなることもあると言うことも知らないだろう。 この助産師が実際に大量出血を予想していたとしたら、点滴ルートは出来るだけ太い針で取ったであろう。でも、実際は18ゲージか20ゲージの指示の所、20ゲージで取った。数が増えるほど細い針なので、輸血のスピードは遅くなる。大量出血が予想されるのであれば、してはならない選択だ。結局、経験の浅い助産師が、何となく漠然と不安に思ったことが、さも重大なことのように取り上げられたと言うことだろう。検察にもメディアにも。 上記リンク先によれば、繰り広げられた茶番はこれだけじゃない。確実な証拠である胎盤や胎盤の写真、麻酔記録などをさしおいて、2年も前のあやふやな記憶に基づいた証言や、経験の乏しい助産師の主観などで心証を形成しようと言う魂胆が透けて見える。前にも書いたが、裁判で求められるのは真実ではない。お互いに不利な証拠は隠せるだけ隠し、自分に都合の良いストーリーを裁判官に吹き込むこと。これが裁判なのだ。死と常に隣り合わせの医療という仕事は、刑事告発されれば、場合によっては重大なミスが無くても有罪になるおそれはある。そんな制度は許してはならないと思う。まともな医療の存続を願うのならば。 この件は刑事事件として裁くようなものじゃない。さっさと終わりにして、被告人を解放しよう。
2007.03.20
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処罰より 原因究明 優先だ ずうーっと前から、これだけ話題になっているのに、振り込め詐欺の被害が後を絶たない。おそらくは毎日スーパーのチラシとにらめっこして少しでも家計を浮かせようと努力している奥様方が、簡単に数百万円もの金を振り込んでしまうのだ。冷静な第三者として記事を読めば、バカだなあと思う。でも、これだけ被害が続くのであれば、バカでは片づけられないものがあるのだろう。 bambooの所属する県医師会で、振り込め詐欺に注意するようにと言う講演があった。その講師が家に帰ったまさにその時、電話が鳴った。迫真の演技に我を忘れる講師。つい今し方まで、自分が注意を呼びかけていた術中に見事にはまってしまった。途中で気がついて、被害はなかったものの、人間というのはいかに騙されやすいか実感したそうな。この件は県医師会雑誌で読んだ。照れくさそうだった。 TBSアナウンサーの外山惠理氏の母上は、自分の目の前に息子本人が居るにもかかわらず、息子だと名乗る電話にすっかり騙された。本人が「俺はここにいる」と何度も言っているにもかかわらず、しばらく騙され続けて曰く「だって、貴方からの電話なのよ」。これはラジオで外山惠理氏が言っていたのを聞いた。 いつもと違うただならぬ様子の電話が来ると、ついパニックに陥ることがあるのだろう。その様な経験がなければ、自分は大丈夫だと思っているだろうが、実際にその場になってみなければ判らない。明日の被害者は貴方かも知れないのだ。医療の現場でパニックに陥るとどうなるのか、次の記事が参考になるだろうか。【2007年3月10日】 大阪市大病院:麻酔で挿管ミス、患者が意識不明 大阪市立大病院(大阪市阿倍野区)は9日、腫瘍(しゅよう)切除手術のため全身麻酔した患者に対し、呼吸確保用のチューブを誤って食道に挿入し、患者が意識不明の状態になった、と発表した。本来、気管に挿入すべきところを誤ったうえ、麻酔医がその後の異常な兆候を見逃したとしている。同院の届け出を受けた大阪府警阿倍野署は業務上過失傷害の疑いもあるとみて捜査する方針。 同院によると手術は2月22日に実施。30歳代の女性麻酔医が、手術前の措置として麻酔薬と筋弛緩(きんしかん)薬を投与した。呼吸を補助するために軟質樹脂製チューブを気管に挿入したつもりだったが、間もなく脈拍が下がりはじめ、約20分後には心停止に近い状態になった。 駆け付けた別の麻酔医が食道への挿管に気づいたが、正常に戻すまでの約30分間、低酸素状態が続いた。このため患者は脳に損傷を受け、現在も意識不明のままという。 麻酔医はマニュアルに従ってチェックしていたが、▽聴診の際、胸の呼吸音が異常だった▽手動で酸素を送るためのバッグの手応えが異常に重かった----などの兆候があったが、「挿管で急にぜんそく発作が起こり、チューブがふさがるなどした」と勘違いし、気管支の収縮を抑える薬を投与するなどしていた。 同院は「重大なミスを起こし申し訳ない」と陳謝し、詳しい原因究明を進めるとしている。【野原靖】 麻酔科医にとって、気管挿管は基本中の基本である。もちろん難しい症例もあって、食道挿管をすることはある。でも、その様な場合は食道挿管かも知れないと言う意識があるものだ。この件の麻酔科医は30代とのことなので、通常であれば5年以上の経験があったであろう。だとすれば、困難な症例で食道挿管したのであれば、すぐに気がついたと思われる。おそらく、自分では普通に挿管したつもりだったのに食道挿管してしまったのだろう。だからこそ、呼吸不全となったときに食道挿管の可能性に思いが至らず、患者の全身状態の悪化に伴ってパニックに陥り、麻酔科医としての正常な判断が出来なかったのではないかと推察する。 第三者の麻酔科医として見れば、この麻酔科医を非難することはたやすい。でも、このような事故が起こった以上、再発防止が計られるべきであろうと思う。振り込め詐欺と同様、場合によって、人間は馬鹿なことをすることがあるという観点が必要なのだ。当事者を処罰して終わりにするより、処罰を断念してでも原因の解明が必要なのだ。実はこのようなことは安全管理の講習の初歩中の初歩なのだ。 安全管理の観点から原因を追及する場合、事故の原因を5個くらい挙げる。そして、それぞれの原因の原因を更に5個くらい挙げる。それを繰り返して何層も深く掘り返し、奥に潜む原因を明らかにする。そうすることで、費用対効果に優れた対処が可能になるのだ。 麻酔科医個人の問題だけに絞っても、技術の問題・危機管理の問題・疲労・人間関係・勤務態度など、いくつもの問題点を挙げられる可能性がある。いくつもの階層に渡って問題点が明らかになれば、改善すべき点も判るだろう。 いつものことだが、事故の責任は当事者に押しつけ、何ら改善することなく続けられてゆく医療。 命に関わる分野で、医療ほど前近代的な環境が放置されている分野があるだろうか。
2007.03.16
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誤診 → 業務上過失致死 → 書類送検 ヤバクね → もうダメポ → ドロッポ → 医療崩壊 bambooは二つの絵を比較して間違いを見つけるゲームが苦手だ。でも、答えを知っていれば、間違い探しなど容易だ。マジックも好きなのだが、トリックを暴くのは、どれだけスロービデオで見ても出来ない。でも、あらかじめトリックを知っていれば、どんなにすごいマジックでも不思議じゃない。何も知らなければ絶対正解出来ないようなことでも、答えを知っていれば何でもない。問題は、答えを知っているから容易なのに、答えを知らない人が正解出来ないのは、そいつが馬鹿だからだと誤解する人が多いと言うことだ。おそらく自分だって、答えを最初から教えられていなければ判らなかったであろうに。 絞扼性の腸閉塞を見抜けなかった医師二人が書類送検された。誤診によって死なせたとして業務上過失致死に問われようとしている。腸捻転を風邪と誤診 札幌で女児死亡 2医師書類送検 2007/03/13 14:02 札幌市厚別区の会社員三上直也さん(27)の長女紗英ちゃん(4つ)が昨年一月、同区の小児科医院で診察を受けた際、院長の男性医師(50)から、実際は腸捻転(ねんてん)なのに風邪と診断され、回復しないため再び医院を訪れた際も、男性医師(57)に誤診され死亡したとして、道警は十三日、業務上過失致死の疑いで、院長と医師を書類送検した。 三上さんらによると、長女は昨年一月二十三日夜から腹痛を訴え、回復しないため、翌二十四日午前、家族と同医院を訪れた。診察に当たった院長から、風邪と診断されて帰宅したが、ぐったりした状態となったため、二十五日夕方、再び医院を訪れ、別の男性医師の診察を受けた。この際、エックス線などの検査を受け、医師から「胃腸炎ではないか、風邪の影響もある」と診断され、「命に別条はない。明日来なさい」と言われたという。 長女は帰宅後、意識がなくなり、心肺停止状態となったため、救急車を呼んで市立札幌病院に搬送したが、二十六日早朝に死亡した。 道警が長女の遺体を司法解剖した結果、死因は、腸捻転による腹膜炎だった。道警は、診察した医師二人が二回の診察でいずれも誤診したとみて、適切な医療行為を怠ったことから長女を死亡させたと判断した。 同医院の院長は、北海道新聞の取材に対し「誤診ではなく、適切な診療だった。今回の送検は女児の解剖結果を誤って解釈しており、妥当性を欠いている」と話している。 腸捻転による腹膜炎というのは、腸が捻れて血液が腸に行かなくなって、腸が腐ったと言うことでしょうね。絞扼性イレウスというのですが、手遅れになると簡単に死にます。問題は手遅れになったことに対して、医師にどれだけの責任があるかと言うことでしょう。 医院とあるので開業医でしょうね。通常、開業医の所には命に関わる患者はあまり来ないのではないでしょうか。二人の医師が風邪とか胃腸炎と考えたのは、いつもはそのような患者ばかり診ているからでしょう。それでも小児科医のようですから、絞扼性イレウスを疑わせるような症状があれば気づいたのではないでしょうか。病気は教科書通りの症状を呈するとは限りません。あまり重症感がないのに重症だったと言うことはあるのです。 誰でも判る症状があったのに見逃したのであれば、書類送検くらいはしょうがないかな。平均的医師なら気がつくような症状なら、警察沙汰は勘弁でも、民事訴訟は仕方がないかも。平均的医師が見逃すようであれば、これは不幸な結果ではあっても、医師の責任を問うのは酷です。少なくとも、結果が出てから、診断は可能だったはずだというのはフェアではありません。診察したときの情報だけで、結果を知らない医師がどのように判断するであろうか、と言う観点から批判するべきです。 ところで、「適切な医療行為を怠ったことから長女を死亡させたと判断した」と言う言い方はないのではないでしょうか。死亡させたというのは、何らかの行為で死に至らしめたということであって、今回のは、死を防げなかっただけです。悪意を感じるなあ。 只、bambooとしては、たとえ診断が難しい症例だったとしても、二人の医師には苦言を呈したいとは思う。診断が困難な症例があると言うことを、患者の側にも理解して欲しいと思うが、医療側も理解していなければならないでしょう。理解していれば、診断はあくまで今現在のもので、今後の症状によっては変わりうることを説明するでしょう。症状が長く続くようなら、あるいは酷くなるようなら、もう一度受診するなり高次の病院に行くなり勧めるべきであったと思います。
2007.03.15
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拍手 Applause パチパチパチ アッパレ 今回は医療ニュースではない。でも、カテゴリーは医療である。3月13日23時0分配信 時事通信 「決められた通りにやりました」。前輪が出なかった全日空1603便ボンバルディア機を高知空港に胴体着陸させた今里仁機長(36)は、着陸後、会社に対しこう冷静に報告したという。 全日空によると、機長は別の航空会社勤務を経て1996年に入社。2003年から機長を務め、総飛行時間は約7900~8000時間だった。事故を起こしたDHC8-400型機での飛行時間は900時間弱で、「十分な経験」(関係者)を備えていた。機長を知る人によれば「冷静沈着な人物」という。 機長は大阪(伊丹)空港を離陸して約1時間後、「前輪が下りないため、地上と連絡を取り合いながら原因を究明しています」とアナウンス。後輪を滑走路に接触させ衝撃で前輪を出すため「タッチアンドゴー」を行ったが、成功しなかったため、「緊急着陸します」と告げ、胴体着陸に踏み切った。最悪の状況ながら1人のけが人も出ず、「前輪がないとは思えないほど衝撃が少なかった」と振り返る乗客もいた。 まずは機長の技術に脱帽しよう。他の報道も合わせてみると、乗客への対応も着陸の技術も、ともに卓越したものだったようだ。人の命を預かる技術者として、分野は違えど見習いたいと思った。特に、危機に際しての乗客の不安の解消という面で、優れた対応をしたと思う。 今回の事故の原因は機体の不具合によるものである。その責任は、機体の製造元や管理者にあるのだろう。少なくともパイロットにあるのではない。もし、今回の事故で、不幸にして死傷者が出たらどうだったのだろう。今回は無事だったが、どれだけ丁寧な着陸をしたとしても、炎上する可能性はゼロには出来ないだろう。それでも、着陸が下手だったからと言って機長が業務上過失致死で逮捕されたのだろうか。実際には、まずは機体の不具合の責任が追及されるのではないだろうか。 振り返って、医療の現場を考えてみよう。病気や怪我は患者自身の不具合であって、医者が不具合を起こしているわけではない。たとえ命に関わるような状態であっても、それを引き起こしたのは医師ではないのだ。もちろん持てる技術を駆使して治療にあたるのであるが、人手も予算も限られた中で出来ることには限界がある。助かることもあれば助からないこともあるだろう。でも、助からなかったときには医師の対応だけが問題とされることが多い。他国に比べて少ない予算しか出さず、劣悪な医療環境を放置している政府が起訴されたり、民事訴訟を起こされたりすることはない。 胴体着陸のような場合、うまくいったら賞賛され、たとえ不幸な結果になったとしても、責められるべきは機体の不具合の責任者であろう。医療の場合は、毎日が胴体着陸のようなものだ。必ずうまくいくとは限らない。構造や機能が判っている飛行機と違って、人体には判っていないことの方が多い分、医療の方が免責範囲が広い必要がある。「医療ミス」の報道を見ると、神の視点で助けられたかどうかが論じられることが多いが、平均的医療で助からなければ、それは仕方がないことなのだ。
2007.03.14
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病院で 死んだらみんな 医療ミス もう除細動器を抱えて世界新で走らなければならないな。まあ、この記事を見てください。3月6日のながさきニュース 長崎新聞遺族が賠償求め提訴 奈良尾病院で「除細動遅れ死亡」 二〇〇五年二月、新上五島町の県離島医療圏組合奈良尾病院に入院していた女性=当時(70)=が心室細動で死亡したのは除細動の遅れなど病院側の過失が原因として、遺族ら九人が五日までに、同組合に損害賠償約四千二百万円の支払いを求める訴訟を長崎地裁に起こした。第一回口頭弁論は四月十七日。 訴えによると、女性は同年二月十二日、体調を崩し血圧が高いことから同病院に入院。十四日午前六時半ころ、病院内のトイレで倒れているのを入院患者が発見した。駆け付けた看護師の呼び掛けに「はい」と答えたが、同三十四分に心室細動の波形が確認された。 医師らは心臓マッサージをした後、同四十三分に電気的除細動器でショックを与え、除細動に一回成功。しかし、心臓の収縮力が次第に衰え、同七時五十分に死亡した。死因は慢性心不全による心室細動だった。 原告側は「除細動が早期に行われていれば生存の可能性があった」と主張。病院側は「適正に処置したと認識している」としている。 心室細動は心臓が不規則に細かく収縮と緩みを繰り返す状態。心臓のポンプ作用が失われて心肺停止につながる。この心室細動を除去することが除細動。除細動による救命率は、心停止から一分以内なら90%と高いが、五分で約50%、十分で約10%、十二分を超えると数%に低下するという。 〇四年七月の厚労省通知で、従来は医師や救急救命士だけが使えた自動体外式除細動器(AED)の一般使用を解禁。県によると、昨年八月現在、県内計百十七の公共施設に設置されている。 まずは見出しが気に入らない。「除細動遅れ死亡」と書かれていれば、除細動が遅れるというミスのために死んだという印象を受ける。見出しだけ見る人も多いので、そのまま信じてしまう人は多いだろう。また、きちんと記事の中身まで読んで、ミスだと言っているのは原告だけで、病院側は否定していると判ったとしても、見出しに誘導されてミスだという印象を残すことは十分にありそうだ。そもそも訴訟を起こすこと自体は誰でも出来るので、訴訟に値するかどうか位自分たちで考えてから記事にしろよと言いたい。 実際にミスだったかどうか、記事から判る範囲で考えてみよう。元々具合が悪くて入院した患者が、朝の6時半頃にトイレで倒れた。入院していたからと言って具合が悪くならないわけではないので、そのようなことはあり得るし、病院の責任ではない。他の患者に発見され、看護師が駆けつけたときには意識があった。トイレで治療するわけにも行かないので、治療可能な場所に運ばれる過程で心室細動が起きたのだろう。発見からわずか4分後には心室細動の診断がついている。まだ診療時刻前の早朝であることを考えると、驚異的な早業だ。たまたま当直医が病棟にいたのじゃないかと思いたくなる。 その後はきちんと心臓マッサージを行い、心室細動の診断から、わずか9分で除細動を行っている。言っちゃ悪いが、奈良尾病院というのは離島のわずか60床の病院だ。田舎の小さな病院にすぎないのだ。トイレでの発見から13分で除細動を行ったというのは奇蹟に近い。 また、急性心筋梗塞などの場合であれば、早期に除細動をすれば、それだけ快復する可能性が高くなるだろう。けれども慢性心不全であれば、早期に除細動をしたからと言って、それほど多くの快復率は望めないだろう。徐々にに弱った心臓が耐えきれずに心室細動を起こしたのであれば、結局は助からない。だからこそ、一度除細動は成功しているのに、死亡しているのだ。 時系列は算数の問題である。きちんと経過を追って考えれば、ジャーナリストなら対応の迅速さが判るだろう。自分の頭で考えず、「医療訴訟?あ、医療ミスね」という脊髄反射で書くからいい加減な記事になる。お奨めのブログを紹介しておく。内容もしっかりしているが、ついているコメントも質・量ともによい。http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20070307
2007.03.08
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麻酔科と 看護師いなけりゃ オペ出来ず最初に脳性麻痺 を見てみましょう。お産は脳性麻痺の原因のごく一部だと言うことが判るでしょうか。その上で次の記事を見てみましょう。出産後に障害、大和市に1億4250万円命令 記事:毎日新聞社提供:毎日新聞社【2007年3月1日】 大和市立病院損賠訴訟:出産後に障害、市に1億4250万円命令----地裁 /神奈川 ◇担当医の過失認める 大和市立病院(大和市深見西)で97年に仮死状態で生まれた男児(10)=東京都町田市=が手足のまひなど重い障害を負ったのは、同病院の担当医師が適切な時期に帝王切開しなかったためとして、男児と両親が大和市を相手取り損害賠償を求めていた訴訟で、横浜地裁は28日、同市に計約1億4250万円の支払いを命じる判決を言い渡した。三木勇次裁判長は「担当医は速やかに帝王切開の準備を始めなかった」と過失を認めた。 判決によると、母親は97年2月24日午後9時ごろ、胎児の心拍数が一時的に低下する症状が表れ始め、同40分にも再発したため担当医師が帝王切開を決定。午後11時ごろ、帝王切開で男児が生まれたが、手足のまひや発達遅滞の後遺症が出た。 三木裁判長は「午後9時ごろには既に胎児の心拍数が一時的に低下する症状がみられ、帝王切開の準備を始めるべきだった」と指摘。さらに「帝王切開決定から実施まで約1時間16分要し、遅きに失した」と述べた。【伊藤直孝】 当たり前の話ですが、医療にも限界があります。いつでも何処でも誰にでも理想的な医療が出来れば、それに超したことはありませんが、医学的にも医療体制にも限界はあります。 周産期医療は昔と較べれば格段に進歩しましたが、それでも脳性麻痺の頻度は変わりません。脳性麻痺の原因として、お産そのものの占める割合が少ないからでしょう。帝王切開をしないからだという言いがかりは昔からあって、以前より帝王切開になる割合が増えましたが、脳性麻痺は減りません。つまり、医学的には帝王切開で脳性麻痺は防げないと言うことになります。 でも、この判決では全面的に帝王切開の遅れが原因だと決めつけています。なにしろ1億4250万円ですから。 そもそも、帝王切開を決意してから1時間ちょっとで手術できたのに、それを遅いと言われては手術は出来ません。医療体制は一病院だけで決められるものではなく、社会体制の一部として存在するものです。何時いかなる時でもすぐに手術が出来なければならないのなら、そのような体制が可能な投資が必要です。麻酔科医と手術部看護師を当直させ、無駄になることをいとわずに手術器械を準備する。そのような体制を望むのなら、それを可能にする政策を採ればいいのです。でも、実際は逆です。元々少ない医療費を、さらに絞ろうというのが現政権の思惑です。 かけそばの料金しかないのなら、かけそばを食べればいいのです。日本の医療は、かけそばの料金で、栄養のバランスのとれた定食くらいは出しているぞ。高級フランス料理を出さないからと言って、1億4250万円もふんだくるとは、あまりに阿漕じゃござんせんかねえ、お代官様。 速やかに帝王切開をしても、今回の脳性麻痺を防ぐことは出来なかったと思われますので、実際にはフランス料理を出しても許されなかった事例なんだろうな。
2007.03.02
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研修医 ただ働きで 業過かよ!以前「不正請求」についた、あみぐだらさんのコメントで危惧していたことが現実になった。 チューブ誤挿入で女性死亡 函館の病院 07/02/28記事:共同通信社提供:共同通信社 北海道函館市の共愛会病院で昨年12月、同市の無職女性(87)が胃に栄養剤を入れるチューブを誤って挿入され、死亡していたことが28日、分かった。 病院側はミスを認め遺族に謝罪。函館中央署は業務上過失致死の疑いもあるとみて調べている。 病院によると、女性は自力で食事ができなかったため昨年4月から11月まで入院してチューブを胃に入れて栄養剤を注入された。退院後も胃にチューブを入れたまま自宅で療養していたが、昨年12月17日、チューブが外れているかもしれないと病院を訪れ、男性研修医(27)が腹からチューブを入れ直す処置をした。帰宅後、まもなく家族が女性の様子がおかしいのに気付き、同18日夜、女性を別の病院に運んだが、同19日未明に死亡した。 死因はチューブがうまく胃に挿入されず栄養剤が体内に漏れたことによる腹膜炎だった。同病院は「深刻に受け止め遺族に誠実に対応したい」と話している。 胃瘻チューブの入れ替えは、普通は何事もなく終わる。だから特に診療報酬もないのだろう。しかしながら、時にはこのようなこともあるのだ。このようなことが起こらないように、実際には技術も知識も必要なのだ。でも、日本で技術や知識が問題となるのは、結果が悪いときだけだ。技術や知識が功を奏して、長いこと安全が保たれていても、誰も評価してくれない。安全であればあるほど、それが当たり前になり、何かことが起きればミスだと騒ぎ立てられる。 今回のことはミスと言えばミスだ。研修医はチューブの入れ替えが危険な行為だとは知らなかったのだろうし、指導医は、自分の仕事が忙しかったのかも知れない。そのような事情は報道からは判らないから、単なる推測だ。一つだけはっきりしているのは、診療報酬を見る限り、胃瘻チューブの入れ替えに気を遣うだけの対価は用意されていないと言うことだ。手技を過小評価するなら、事故の時だけ過大評価するのは辞めて欲しい。細心の注意を求めるなら、それなりのペイが必要だ。その後地元紙から詳しい記事を得た。函館・共愛会病院 研修医ミス、患者死亡 チューブ交換で指導医も見逃す 北海道新聞 2007/03/01 00:28 【函館】函館市内の共愛会病院(福島安義院長)で昨年十二月、男性研修医(27)が同市内の女性の外来患者=当時(87)=に対し、胃に栄養液を注入するチューブの交換処置を誤り、患者が二日後に死亡していたことが二十八日分かった。指導医である内科部長(45)もミスを見逃していた。 共愛会病院によると、研修医は昨年十二月十七日、女性患者を診察し、腹部に開けた穴に取り付けた栄養液注入用のシリコーン製チューブ(長さ約二十センチ、直径約一センチ)を新品に交換した。 しかし、患者が自宅へ戻り、家族が栄養液を注入したところ、容体が悪化。翌十八日夜、市立函館病院に救急搬送され、十九日未明、同病院で腹膜炎のため死亡した。 共愛会病院で処置後に撮影したエックス線写真を点検した結果、交換したチューブは胃に入っていなかった。同病院は、栄養液が腹腔(ふくくう)内に漏れ出し、容体悪化につながったとみて二月十三日、福島院長が女性の遺族に謝罪した。 研修医は処置後、エックス線写真を指導医に見せ、処置について報告した。しかし、当日は同病院が救急当番だったため指導医は多忙で、院内の廊下などでエックス線写真を裏側から見ただけで了承、ミスを見逃した。 研修医は昨年三月、医師免許を取得。同四月から同病院で二年間の臨床研修に入った。これまで十数例の同様の処置経験があり、現在は外科で研修を続けている。 福島院長は二十八日会見し、「患者と遺族に心からおわびする。本来指導医が付き添うべき処置だった。再発防止に努めたい」と述べた。 指導医が多忙だったことはbambooの想像通りだったが、研修医は重要性を理解して、ちゃんとレントゲンも撮り、指導医に相談もしていたのだね。見くびって済まない。m(_ _)mそうなると、研修医が書類送検されるのは、ますます気の毒だな。一定の確率で避けられない合併症と言うことでの幕引きを望む。
2007.03.01
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