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挿管は いつも容易な わけじゃない 「前から予想していたんだけど」でも書いたけど、気管挿管は出来ないときは出来ない。しばらく挿管していた患者では、喉頭の浮腫(むくみ)のために前回より難しいこともある。たとえ命に関わることであろうと、出来ないものは出来ないのだ。もちろんもっと技術が高く、そのような状況に慣れた医師であれば対処できたかも知れないが、それは無い物ねだりである。現にその場にいる医師やすぐに呼べる医師で対処するしかないのだ。 治療手間取り患者重体 ICUで意識不明に 彦根市立病院 記事:毎日新聞社【2007年6月29日】 彦根市立病院:治療手間取り患者重体 ICUで意識不明に /滋賀 彦根市立病院(赤松信院長)は28日、集中治療室(ICU)で、心筋こうそくの県内の70歳代の女性患者への気管内挿管に手間取って低酸素状態になり、意識不明の重体になったと発表した。赤松院長は「治療中のことであり、患者、家族には申し訳ない」と話した。 病院側によると、患者は13日早朝、救急車で循環器科に緊急入院。呼吸不全状態のため、気管内挿管を行い、人工呼吸器を装着した。意識や呼吸が改善したため、30代の主治医が循環器科の日村好宏主任部長と相談し、25日午前11時過ぎ、人工呼吸器を外し、自発呼吸を確認し、気管挿入したチューブを抜いた。 主治医が30-40分間、経過観察したが、自然呼吸状態が良くなく、再び気管内挿管を行った。喉頭周囲が腫れて挿管困難だったため、医師3人で何度か挿管し、気道を確保したが、約17分間、経過。この間の低酸素状態で意識障害をきたした。 赤松院長は「咽頭周囲の腫れや、同じ医師が気管内挿管を行ったのに、なぜ2度目はうまくいかなかったのか、分からない。本来なら回復するのに、挿管操作に17分間も手間取り、こんなことになった。不可抗力かミスか細部の検証をするとともに、患者の回復に全力を尽くす」と話している。【松井圀夫】 呼吸器を止めて自発呼吸を観察して、問題ないと判断して抜管した。ここまでは特に問題ないだろう。出来れば再挿管も必要かも知れないと考え、準備をしておけば良かったかも知れない。30-40分間観察して再挿管に踏み切ったということであれば、すぐに重篤な低酸素血症になるとも思えない。喉頭浮腫のために呼吸が障害されているのであれば、30-40分間も観察している状況ではないであろう。とすると、挿管操作に伴う無呼吸があった可能性を考えたくなる。再挿管時の呼吸管理はどうだったのだろう。問題があるとすればここだろうと推察する。 気管挿管を容易にするために、呼吸を止めるような処置(鎮静剤や筋弛緩薬の投与)をしたのだとすれば、マスク換気が出来なかったのだろう。特に何も処置をしないで自発呼吸を残したまま気管挿管を試みたのだとすると、挿管操作の刺激で喉頭痙攣(声帯が閉じる反射)を起こしたのだろうか。いずれにせよ、修羅場に慣れている医師であれば、いろいろと対処も可能だったかも知れない。でも、修羅場に慣れていなければ医師をやってはいけないという決まりもない。 気道確保さえ出来ていれば障害の起きない症例だったかも知れない。でも、3名の医師が頑張っても対処できなかったことに対して、あれこれ責めても仕方がない。少なくとも、その3名の医師にとっては困難な状況だったのだ。その3名が特別劣った医師であり、代わりのもっと優秀な医師が簡単に見つかるというなら別だが、もちろんそんなことはあるまい。ミラーサイトが変更になりました。m3.com の検閲制度に反対して、脱会も考慮している医師もいる状況なのに、わざわざミラーサイトを作るのは少々気が引けている。しばらく続けてみて、具体的に問題が持ち上がったら、やっぱり引き上げるのかな。あくまでミラーサイトなのでいつでもやめられるし。
2007.06.30
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帝切の 遅れじゃないの 犯人は 毎度おなじみ帝王切開が遅れたから脳性麻痺になったという判決。いつものようにとても高額の賠償金。支払われる医療費を考えたら、とても産科医療は見合わない。そのうちにとても支払えないほど医賠責保険は高騰するだろう。そのときまで産科医療が持つのかどうか知らないが、保険料を支払えなくなれば完全にとどめを刺される。 新生児に後遺症、1億余賠償命令 病院側敗訴 東京・町田 記事:毎日新聞社【2007年6月27日】 損賠訴訟:新生児に後遺症、1億余賠償命令 病院側敗訴----東京・町田 町田市民病院(東京都町田市)で生まれた男児(4)に重い後遺症が出たのは分娩(ぶんべん)方法の選択ミスだとして、横浜市青葉区の両親と男児が町田市と担当医師を相手取り、介護費用など計約1億8000万円の損害賠償を求めた訴訟で、横浜地裁は26日、同市と医師に計約1億3800万円の支払いを命じた。三代川俊一郎裁判長は「適切な分娩方法を選択すべき注意義務に違反した過失がある」と指摘した。 判決によると、男児の母親は03年6月7日、破水して同病院に入院。担当医は吸引分娩を試みたが失敗し、帝王切開したが男児は低酸素脳症となり、脳性まひによる重度障害が残った。同病院は「判決文を見ていないのでコメントできない」としている。【鈴木一生】 前にも書いたが、お産が脳性麻痺の原因と考えられる割合は10から15%くらいだ。多くの例ではお産以外の原因で脳性麻痺になるのだ。だから帝王切開をしても脳性麻痺は減らないのだ。最近では妊娠中の妊婦の感染が取りざたされている。いずれにしても、帝王切開が遅れたから脳性麻痺になったという可能性は低いのだ。そもそも、帝王切開が必要になった原因そのものが、脳性麻痺の原因でもある可能性が高いのではないだろうか。 いい加減に科学的根拠のない判決はやめて欲しい。ミラーサイトが変更になりました。
2007.06.29
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不謹慎 だけど言いたい ぼったくり 自分ではまともに食事も摂れないほど弱ったお年寄りが亡くなって、医療者が全面的に死亡の責任を取らされ、その対価が2900万円とは。 おにぎりで窒息、賠償命令 福岡県立病院の80歳死亡で 記事:共同通信社【2007年6月27日】 おにぎりを気管に詰まらせて意識不明となり、後に死亡したのは食事の際に看護師が注意を怠ったためとして、旧福岡県立消化器医療センター朝倉病院に入院していた男性=当時(80)=の遺族が、県と担当の女性看護師に計約4000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は26日、両者に計約2900万円の支払いを命じた。 判決理由で永松健幹(ながまつ・たけもと)裁判長は「男性は食事が適切に取れず、病院側にはのみ下しにくいおにぎりを出せば詰まらせる危険性が認識できた」と指摘し、「看護師は約30分も病室を離れ、男性の食事を見守らなかった過失がある」と述べた。 判決によると、男性は発熱や食欲不振で2003年12月に入院。04年1月12日に夕食のおにぎりを詰まらせ、窒息で心肺停止状態となった。約30分後に発見されたが意識は戻らず、約10カ月後に死亡した。 県保健福祉部は「主張が受け入れられず残念。判決内容を検討し、関係部署とも協議の上、今後の対応を決定する」としている。同病院は05年に県から地元の医師会へ経営移譲されている 被告は県と担当の看護師だ。その看護師は亡くなった患者の専属というわけでもないだろう。看護師の仕事は忙しい。一人の患者にかかりきりになっているわけにはいかない。食事を詰まらせて死亡した結果から見れば、予想できたのではないかと言えるが、本当に食事を詰まらせる前に予想できただろうか。この看護師が気の毒でならない。 30分ですら患者のそばを離れてはいけない業務なのだとしたら、入院費はいくらだったのだろうか。病院から見て十分にペイする金額だったのだろうか。そんなことはあるまい。定食屋で高級フランス料理店並みのサービスを要求する、いつものパターンだろう。 亡くなった主な原因は看護師のせいではなく、あくまで患者の病態なのに、いつまでこんな判決が続くのだろう。ミラーサイト 変更しました。
2007.06.28
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マスコミを 信じたオイラが バカだった 先ほど「甘いかな?」と書いたばかりだが、その通り。甘かった。記事のほとんどが原告の言い分だけで出来ている。さすが毎日だ。恐れ入った。ここまで偏向報道をするのか。 賠償訴訟 初弁論、夫が涙の訴え 両親も癒えぬ悲しみ 奈良・妊婦転送死亡 記事:毎日新聞社【2007年6月26日】 奈良・妊婦転送死亡:賠償訴訟 初弁論、夫が涙の訴え 両親も癒えぬ悲しみ ◇「命助けようとする必死さ伝わらなかった」 ◇娘の死、産科医療に生かして----両親も癒えぬ悲しみ 奈良県大淀町の町立大淀病院で昨年8月、分娩(ぶんべん)中に意識不明となった同県五條市の高崎実香さん(当時32歳)の転送が難航した上、死亡した問題で、夫晋輔さん(25)と10カ月の長男奏太ちゃんが町と担当医師に約8800万円の損害賠償を求めた訴訟の初弁論が25日、大阪地裁(大島眞一裁判長)であった。晋輔さんは「命を助けようとする必死さが伝わってこなかった」と涙ながらに意見陳述。被告側は「早く搬送していても救命の可能性はなかった」と全面的に争う姿勢をみせた。【高瀬浩平、撮影も】 この日、実香さんの両親も傍聴。母(58)は終了後、「あの子は天国から見守ってくれたと思います」と涙を浮かべた。 晋輔さんが意見陳述に立つと、母は胸に抱いた実香さんの遺影に「見守っててね」と語りかけた。手にした赤い巾着(きんちゃく)袋の中には安産のお守りと、実香さんの回復を願って写した般若心経。「奇跡が起きて良くなりますようにと、わらにもすがる思いでした。あの子の枕元にずっと置いていました。奇跡は起きませんでした」と袋をさすった。 弁論で、母は被告側の「社会的なバッシングで大淀病院は周産期医療から撤退した」との意見表明に心を痛めた。「実香の死で病院が閉鎖に追い込まれたかのような主張。実香も『そうじゃないでしょ』と言いたいと思う」と少し口調を強めた。 父(60)も「娘は亡くなったのに、被告側が被害者だと言っている感じがした。なぜ亡くなったのか、なぜ脳内出血が起きたのか究明してほしい」と訴えた。 母の悲しみは癒えない。一日に何度も仏壇に手を合わせ「どうしてる?」「実香ちゃん。安らかになれたらいいね」と話しかける。24日に墓参りし、「正しい道が開かれますように見守ってね」と祈った。 父も「寂しさや悲しみは和らぎ、薄らぐことがない。日がたつにつれて増していく感じ。娘は妻として母としての夢があった。子どもにどんな服を着せよう、どんなお弁当を作ってあげよう、と言って、普通の平凡な生活を望んでいたと思う。夢を閉ざされて無念だっただろう」と話した。訴訟については「娘の死を産科医療の充実のために生かしてほしいというのが親としての思いだ」と話した。 せめて報道機関としてのプライドがあるのなら、争いごとの報道では、両者の言い分を伝えるくらいのことをしろよ。これだけ一方に肩入れしていたのではメディアとは言えないだろう。両者の言い分を伝えた上で、新聞社としての見解を示すのであればまだ分かる。お涙頂戴の感情に訴えるやり方で一方だけの主張を垂れ流すのでは、中立な報道機関とは言えない。ミラーサイト
2007.06.26
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今回も 全国報道 無いのかな 何かことが起きると全国規模で医師バッシングをするくせに、公判が始まると地方紙以外は報じない。医師を叩けそうなら報じるのかも知れないが、大野病院や大淀病院の件のように、医師に落ち度がなさそうだと、とたんに沈黙する。 遺族は責任を転嫁」 妊婦死亡で町が争う姿勢 Kyoto Shimbun 2007年6月25日(月) 奈良県大淀町立大淀病院で出産時に意識不明となり、約20の病院に転院を断られた後に死亡した高崎実香さん=当時(32)=の夫晋輔さん(25)らが大淀町と担当医に損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が25日、大阪地裁(大島真一裁判長)で開かれ、町側は争う姿勢を示した。 町側代理人は「診療体制の問題点を特定の医師、医療機関に責任転嫁しようとしており、到底許容できない」と主張。提訴を「正当な批判を超えたバッシング」と批判し「結果として病院は周産期医療から撤退、県南部は産科医療の崩壊に至っている」と述べた。 遺族側の訴えについては「脳内出血は当初から大量で、処置にかかわらず救命し得なかった」と反論した。 これに先立ち意見陳述した晋輔さんは、転院先の医師から「あまりに時間がたちすぎた」と伝えられたことを明かし、おえつしながら「もう少し早ければ助かったということ。それが頭から離れません」と訴えた。(共同通信) こんなことで喜んじゃいけないのだろうけど、医療側の言い分がたったこれだけでも報道されたことは滅多にないのではないだろうか。原告側の言い分より多いとは画期的だ。それだけ奈良県南部の産科医療の状況が厳しいのだろう。そしてそれは、この件のせいだという認識の表れだろう。メディアですら、そのことを認めざるを得なくなっているのではないだろうか。甘いかな?ミラーサイト
2007.06.26
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昨日のエントリは、閲覧数、コメント数、トラックバック数ともに、このブログ始まって以来のことでした。閲覧してくださった方、コメントをお寄せくださった方、トラックバックしてくださった方皆様に感謝いたします。 こちらからも出来るだけトラックバックしようと思っていたのですが、トラックバック用URL記入欄が三つしかないため、それ以上にトラックバックするには、日記の編集を繰り返すことになります。何度かやっているうちに、何処にトラックバックして、何処がまだなのか分からなくなってしまいました。多くのブログで許認可性となっていますので、確かめることもままならず、二重にトラックバックしたところやトラックバックしないままになったところが多々あると思いますが、なにとぞご容赦ください。 また、アダルトサイト関係のトラックバック防止のためにNGワードを設定していますので、たまたま引っかかってしまうと、当ブログにトラックバックできません。必ずしも卑猥な言葉だけを設定しているわけではないので、たまたまハネてしまった方にはお詫びいたします。 これからも、どう考えてもおかしいことに対しては、今回のように連帯して声を上げられたら良いと思います。今後ともよろしくお願いします。
2007.06.26
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無実でも 勝ち取る必要 ある辛さ このブログは未明にアップすると前日の日付になってしまう。今はすでに25日。今日は大淀病院で起きた、妊婦が脳内出血で亡くなった事例の民事裁判が開始される日だ。確かに亡くなった患者はお気の毒だし、ご遺族も無念であろうことは理解できる。だからといって、罪のない当事者、場合によっては感謝しなければならない当事者に当たることは容認できない。亡くなったのは、あくまで脳内出血という病気のせいであり、医師のせいではないのだ。 大淀病院の事例とは、こんな事例。(記事内容はあくまで遺族側の視点)「異常見過ごし死亡」 遺族、大淀町と医師を提訴 記事:毎日新聞社【2007年5月24日】 奈良・妊婦転送死亡:「異常見過ごし死亡」 遺族、大淀町と医師を提訴 奈良県大淀町立大淀病院で昨年8月、同県五條市の高崎実香さん(当時32歳)が分娩(ぶんべん)中に意識不明となり、転送先で脳内出血で死亡した問題で、遺族は23日、病院を経営する大淀町と担当産科医を相手取り、慰謝料など損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。「大淀病院の担当医が脳の異常を見過ごしたことが死亡につながった」と過失責任を主張している。(29面に関連記事) 提訴したのは夫晋輔さん(25)と、転送先で生まれた9カ月の長男奏太(そうた)ちゃん。訴状によると、実香さんは昨年8月7日、出産のため大淀病院に入院。翌8日午前0時ごろ頭痛を訴えた後、突然意識を失った。産科医は頭痛と陣痛から来る失神と説明し、仮眠のため退室。同1時40分ごろ、両腕が硬直するなど脳内出血をうかがわせる症状が表れたが、来室した産科医は子癇(しかん)発作(妊婦が分娩中に起こすけいれん)と誤診して処置をせずに病室を離れ、同4時半ごろまで病室に来なかった。 病院は同2時ごろまでに転送先探しを始め、実香さんは19病院で転送を断られた後、大阪府吹田市の国立循環器病センターに同6時ごろ到着。CT(コンピューター断層撮影)で右脳に大血腫が見つかった。奏太ちゃんは帝王切開で生まれたが、実香さんは8日後に死亡した。 死亡診断書では同センター受診時、実香さんの意識が刺激にまったく反応しないレベルに達していたなどとする記載があり、遺族は「脳内出血の発症は午前0時ごろ」と主張。「これ以降、家族らが再三脳の異常を訴えたのに産科医はCTなどの検査をせず、手術でも回復しないほど脳内出血を進行させた」としている。 大淀病院の原育史(やすひと)院長は「今後、司法の場において(立場を)明らかにしてまいりたいと考えております」とのコメントを出した。【中村敦茂】 1)すべての患者を助けられるわけではない。2)後から考えても完璧な行動を常にとることは不可能。 上記に反対する人はいるだろうか。反対する人は、病院に行ってはいけない。あなたに必要なのは神であり、医師ではない。医師をやっていれば、患者が亡くなることは避けられない。あのとき「ああしていれば」、それとも「こうしていれば」と言う後悔は常にある。患者が亡くなれば、医師だって自分を責めているのだ。周りから見れば無理もないという状況でも、自分を責めているのだ。そうした意識が、ほんの少しずつでも医療を向上させる。 結果が悪かったからミスだったのに違いない。あのとき違う対応だったら助かったに違いない。どちらも言いがかりだ。結果から見て違う対応の方が良かったとしても、そのときの状況では、実際に行われた対応の方が確率的に良かったのなら、問責されるいわれはないのだ。まじめな医師に対する言いがかりは、一瞬で医療を崩壊させた。 この事例ではCTを撮る必要があったのかが争点になるのだろう。確率的には子癇である可能性が高く、子癇であれば安静が第一選択となる。CTを撮らなかったからと言ってミスとは言えない。結果的には脳内出血であったのだから、CTを撮れば診断は付いた。診断は付いても治療は別だ。結局は何処も引き受けてくれなかったのだから、助かった可能性はほとんど無い。後出しじゃんけんの結果論でも助かる可能性は低かったのだ。 結局は避けられない死だったのだが、それでも医療体制の不備は責められるべきだろう。その責任はもちろん行政にある。それなのに、遺族だけでなく、メディアがこぞって医師の個人的責任に矮小化しているのは何故なのか。 ミラーサイト
2007.06.24
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除細動 どうしてしたの? 1年後 心房細動が発症すると血栓が出来やすくなり、それが脳に飛ぶと脳梗塞を起こす。脳梗塞になりやすい危険因子は知られていて、弁膜症、高齢、糖尿病,高血圧,高脂血症,虚血性心疾患,心不全などである。危険因子がなければ、必ずしも抗凝固療法が必要というわけでもないようだ。専門外のbambooの言うことなので、話半分に聞いておいた方が良いかもしれないが。 男性に後遺症 4922万円支払え 岡山地裁判決 記事:毎日新聞社【2007年6月22日】 医療過誤:倉敷中央病院、男性に後遺症 4922万円支払え----岡山地裁判決 /岡山 ◇不整脈治療の男性、脳などに後遺症 適切な投薬せず 不整脈の電気ショック治療を受けた際、病院側の不手際で脳などに障害が残ったとして、倉敷市の男性(62)が倉敷中央病院を相手取り約6850万円の賠償を求めた訴訟の判決が21日、岡山地裁であった。広永伸行裁判長は「適切な投薬をしなかった」として、病院側に約4922万円の支払いを命じた。 判決などによると、男性は01年2月、不整脈の一種、心房細動と診断された。02年2月に倉敷中央病院で、電気ショックによる治療を受けた後、「目が見えなくなった」などと訴えて別の病院を受診。脳梗塞(こうそく)と診断され、高次脳機能障害が残った。 男性は「循環器学会が定めたガイドラインは、電気ショック後に適切な投薬を薦めていた。投薬していれば、合併症である脳梗塞は防げた」と主張。病院側は「脳梗塞のリスクは低いと判断し、別の薬を選択した。ガイドラインに従って投薬しても、確実に脳梗塞を予防できたとはいえない」と反論していた。広永裁判長は「ガイドラインに記載されている投薬を行えば、脳梗塞にならなかった可能性は高い」として病院側の過失を認めた。 倉敷中央病院は「当院の主張が認めらず遺憾だ。今後、判決を読んで控訴も含めて検討したい」とコメントした。【石戸諭】 記事からは分からないのだが、診断から一年も経ってから除細動(電気ショックによる治療)をしたのは何故だろう。その間、抗凝固療法はしていたのだろうか。元々危険因子がなければ(62歳は高齢ではない)必要ではないと判断してもおかしくない。危険因子があったのなら、除細動前から抗凝固療法が行われていたのではないだろうか。 そもそもガイドラインでは、症例に応じた治療法が推奨されているはずであり、この症例に、除細動後に抗凝固療法が必要だったのかどうか、具体的な病態が何も書いていないので判断できない。抗凝固療法が必要なのだとしても、普通は除細動後ではなく、除細動前に、あるいは前から継続的に、必要なのではないだろうか。 ミスによって重大な結果が起きたのであれば、それ自体は不幸なことである。でも、その情報を共有することによって、他の医師がミスを防ぐための参考になるのであれば、無駄な犠牲ではなくなる。でも、結局いつものように報道からは何も分からない。このような何も分からない記事では、この患者の不幸は全くの無駄に終わってしまうだろう。本当にミスだったのかどうかは知らないが。ミラーサイト
2007.06.23
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検診を 受ければ死なない 訳じゃない 検診は一人の医師がたくさんの症例を見るのだから、微妙な症例の見落としを責めるのは酷だ。誰でも見落とすはずがないような症例を見落としたのなら責任は重いが、そうでなければあきらめて貰うしかない。検診とはそういうものなのだ。そうではなく、もっとずっと素晴らしいもののように宣伝しているから誤解されているが、それ程のものではないのだ。 健診でがん見落とし死亡 遺族が京都市を提訴 記事:共同通信社【2007年6月20日】 京都市が実施したがん検診で「異常なし」とされ、約半年後に進行胃がんが判明し死亡した男性=当時(67)=の遺族が19日、「がん見落としは市の過失」として、約3800万円の損害賠償を求める訴訟を京都地裁に起こした。 訴状によると、男性は2005年5月、市の胃がん集団検診を受診。「異常なし」と通知を受けたが、同年12月に体調不良のため市内の病院で受診したところ「進行胃がんで手遅れの状況」と宣告され、06年8月に死亡した。 遺族は「検診のエックス線写真で胃がんを発見できたのに、誤った判定の結果、摘出手術などの治療を受けられず死亡した」と主張している。 市保健福祉局は「検診は国のがん指針に基づき実施しており、検査方法に問題はなかったと考えている」としている。 肺がん見落としで和解へ 広島県立広島病院 記事:共同通信社【2007年6月20日】 広島県立広島病院で肺がんを見落とされ死亡したとして、広島市の男性=当時(41)=の遺族が県に9000万円の損害賠償を求めた広島地裁での訴訟で、広島県は19日、3000万円を支払うことで和解に応じる方針を明らかにした。 訴状によると、男性は2001-02年、広島病院で3回にわたり胸の検査を受け、肺の影は「昔の肺炎のあと」と診断された。02年6月にあらためて受けた精密検査で肺がんと診断され、04年に死亡した。 裁判で県側は「当初、肺がんと見抜くことは難しかった」と反論したが、地裁の和解勧告を受け「注意義務を怠った」と認め、応じることを決めた。 ガン検診を受けたときの場合分けをしてみよう。陰性の場合。1)実際にガンではない。2)発見可能なのに見落としで実はガンであったが、助かった。3)発見可能なのに見落としで実はガンであり、手遅れで亡くなった。4)発見不可能なガンであったが、助かった。5)発見不可能なガンであり、手遅れで亡くなった。3)だと文句も言いたくなるのだろうな。5)でも文句を言うかも知れないが、訴訟になれば病院は負けない。たぶん負けないと思う。負けないんじゃないかな。ま、ちょっと覚悟しておいた方が良いかも。陽性の場合。6)実際にガンで、早期発見で命が助かった。7)実際にガンで、手遅れで亡くなった。8)実はガンではなく、不必要な検査や治療を受けた。 結局検診を受けて意義があるのは6)だけだ。1)も安心を得たという意味では意義があるとも言えるが、誤解に基づいた安心だ。和解した後者の事例は肺ガンだが、実は肺ガンの検診は難しい。検診群と非検診群の予後に差が出ないのだ。つまり、検診にあまり意義がある現状ではないのだ。でも、検診をしていると言うことは、検診に意義があるという幻想をばらまいているわけで、今更たいした意義なんて無いのですと言うわけにも行かないのだろう。 検診の意義はどの程度のものなのか、する方も受ける方も、理解した上で行うべきだと思う。ミラーサイト
2007.06.22
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善い人に 袋だたきに されるかな 大野病院の癒着胎盤、大淀病院の脳内出血、どちらも患者は亡くなった。それらの事例が報道されたとき、多くの善意の人々が憤慨した。ろくでもない医者が、何の罪もない患者を殺したのだと。救えるはずの命を奪ったのだと。医師である私から見たら、いずれも救命は困難だった。むしろ、現場の医師は良くやった方だと思う。善意の人々の怒りが、多くの医師の心を萎えさせる。 医師と並んでメディアに叩かれやすいのが教師だ。何かことがおきれば、何でも学校のせいにしておけば間違いはない。今日の記事を引用したいくつかのブログを見たが、やはりみんな怒っている。犯人よりも学校に怒っている。でもbambooは怒らない。怒るべきことではなかったというわけではない。怒るべきことなのかどうか、一つの記事で判断したりはしないだけだ。 と言うわけで、今日は医療報道ではない。 「旅館で男に触られた」児童の被害届けず修学旅行を続行 2007年06月16日06時35分 asahi.com 横浜市の市立小学校が栃木県日光市に修学旅行中、小学校6年生の女子児童2人から、旅館で就寝中に侵入してきた男に体を触られたと訴えを受けながら、「狂言の可能性もある」などとして警察に届けず、旅行を続けていたことがわかった。横浜に戻った後、保護者から届けるよう求められて学校側は神奈川県警に相談。同県警から連絡を受けた日光署は15日、千葉市在住の無職の男(36)を住居侵入と強制わいせつの疑いで逮捕した。 横浜市教委などによると、6年生約130人が5月31日から1泊2日で日光を訪れた際、旅館に宿泊中の1日未明に7人部屋で寝ていた女児2人が、侵入した男に体を触られた。教諭の見回りのため、部屋の鍵はかけていなかった。男は女児が目を覚ましたため、逃走したという。 女児は教諭にすぐに被害を訴え、教諭は校長に連絡。しかし1日も日程通り旅行を続け、午後6時ごろ、学校に戻った。その後、女児のそれぞれの母親に校長が事件の発生を伝えた。被害届は4日に保護者らが出した。 市教委に対し、校長は「被害を受けた女児は落ち着いている様子だったので、みんなと同じように修学旅行を続けさせたかった。狂言の可能性もあると思った」と説明しているという。市教委の担当者は「学校が事件を隠そうとしたと思われても仕方がない対応だった」としている。 まず、現場の教師は校長に連絡し、校長の指示で動いているので責任はない。責任を問われるとすれば校長だろう。でも、何も考えずにすぐに警察に届ければ良かったのかというと、それはそれで無責任だと思う。警察に届ければ大騒ぎになる可能性もあるからだ。 「しかし1日も日程通り旅行を続け」と言う書き方からは、旅行を続けてはいけないという意志を感じる。せっかくの修学旅行なのだから、続けさせてあげたいのは教師とすれば当然じゃないのだろうか。日程通り旅行を続けながら、裏では解決に向けて動いていれば良かったのだろうなと思う。 校長は連絡を受けたらすぐに保護者に連絡し、対応を相談すれば良かったと思うし、警察にも、児童に配慮した捜査を依頼することも出来たとは思う。それでも、後からあれこれ言うのは簡単だ。もう少しうまくやれたのではないかとは思うが、だからといって怒ったりはしない。そもそも遅れたと言っても、その日のうちに警察に相談しているのだ。「学校が事件を隠そうとしたと思われても仕方がない対応だった」というのは、責任のすべてを学校に丸投げにしたい教育委員会の発言だ。子供に口止めしたわけでもなく、帰ってすぐに保護者に連絡しているのに、どう隠そうとしたというのだろう。 多くの人の怒りの矛先は「狂言」だろう。子供を嘘つき扱いしたことを怒っているのだ。でも、bambooが本当に心配しているのはこうした対応だ。信じるのなら完全に信じる。少しでも疑うのであれば、それは完全に黒だと言っているものと見なす。こうした思考回路を持つ人は多い。でも、それでは危機管理は出来ない。 そもそも狂言という言葉は、校長から教育委員会に対しての報告の中で言われた言葉だろう。どのような文脈であったのかも分からない。ほんのわずかでも狂言の可能性があるのであれば、慎重に対応するのは当然だ。そして、狂言の可能性が全くないと断定するだけの根拠は記事からは分からない。たとえ狂言ではなくとも、勘違いという可能性だってあるだろう。何もメディアに公表する必要はないが、公表したのは教育委員会で、校長がメディアに直接言ったわけではないだろう。 bambooはメディアに乗せられるのは嫌いだ。今回も、狂言というキーワードでみんなの怒りを煽ろうという魂胆は見え見えだ。厚労相の「女性は産む機械」の時と同様だ。厚労相の発言を実際に聞いてみれば、そのような内容ではないことが分かる。でも、誰かをバッシングしたい人々は、メディアに乗って狂ったように踊った。 医療崩壊に直面した医師にとって、厚労省は親の敵とも思えるほど憎い存在である。厚労相は、そのトップである。それほど憎い厚労相をかばってでも批判するほど、メディアリテラシーは重要なのだ。ミラーサイト
2007.06.19
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診断が 何だったのか 知りたいな こちらも胸腔穿刺である。やはり死亡している。いつものことだが、実際に何があったのか、記事を読んでも分からない。 医療ミスで長女死亡と提訴 両親が病院側に賠償求める 記事:共同通信社【2007年6月15日】 大阪府高槻市の高槻赤十字病院で2005年、入院していた大学2年の長女=当時(19)=が死亡したのは担当医のミスが原因として、福岡県内の両親が14日、病院を運営する日本赤十字社と担当医2人に計約1億2000万円の損害賠償を求め、大阪地裁に提訴した。 訴状によると、長女は05年2月上旬から微熱が続き、血小板が急激に減少していることが判明して入院。退院後にけいれんを起こし、6月10日に救急搬送された。 13日、胸腔(きょうくう)に針を刺して胸水を吸引する検査を受けた後に強い痛みを訴え、翌日に意識を失って死亡。解剖の結果、胸に血が2.6リットルたまっており、死因は出血性ショックだった。 両親は「担当医は動脈を傷つけ、痛みを訴えても鎮痛剤を投与するだけで放置した」と主張。昨年、業務上過失致死容疑で2人を大阪地検に告訴し、受理されている。 同病院は「訴状が届いておらずコメントできない」としている。 最初の入院の原因となった微熱と血小板減少はなぜだろう。退院後、なぜ痙攣が起きたのだろう。胸水はなぜたまったのだろう。強い痛みの原因は何だろう。胸に出血した(血胸)のはなぜだろう。手技の問題なのか、病態の問題なのか。記事だけ読んでも何も分からない。 血胸になって、出血性ショックの症状が見られても、主治医は放置したのだろうか。それとも、対処はしていたのだが、主治医がつきっきりではなかったので、放置されたと思ったのだろうか。たとえ重態の患者でも、他にも患者はいるので、必要な指示を出すだけでつきっきりになれないことはよくある。 単純に外科系の病気なら、麻酔科医のbambooには記事から想像することが出来る。でも、内科系の病気だと、こんな記事では何も分からない。元々血小板減少があったのだから、血胸を作ったとしても、手技のせいとは言い切れない。通常なら自然に止血する細い動脈を傷つけることは避けられないからだ。 内科系医師の予想はSLEだそうだ。ミラーサイト
2007.06.19
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不具合も 起きることある 医療では 亡くなった方はお気の毒だと思うし、遺族から見たら許せないと思う気持ちもよく分かる。でも、全て医師の責任にしておしまいにすることには納得がいかない。医療行為にはそれなりに危険が付き物だからだ。確かに注意することで不幸な結果を少なくすることは出来る。でも、皆無にすることは出来ないだろう。不幸な結果そのものを問うのではなく、当然払うべき注意を怠ったかどうかを問うべきなのだと思う。北海道、紋別病院の死亡事故で賠償金----ミス認め示談 記事:毎日新聞社【2007年6月15日】 医療事故:道、紋別病院の死亡事故で賠償金----ミス認め示談 /北海道 道立紋別病院(紋別市)で05年9月、医療ミスにより患者が死亡する事故があり、道はミスを認め、道内と東京都内に住む遺族計4人に計2200万円の損害賠償を支払うことで示談が成立していたことが14日分かった。道は15日に始まる道議会第2回定例会に金額決定の議案を提出する。 道立病院管理局によると、結腸がんで入院していた70代の男性入院患者が肺炎を併発。肺にたまった体液を取り除くため、30代の医師が右脇腹からチューブを挿入した。しかし、肺の位置確認が不十分だったため肺を傷つけ、患者は出血により翌日死亡した。道は道警に通報しているという。【去石信一】 肺にたまった体液ではなく、胸腔にたまった体液(胸水)を取り除くためのチューブ(胸腔ドレーン)を入れたのだろう。腹と言えば普通は肋骨より下部を指すので、側胸部からの挿入だろう。出来れば想像しなくても良い表現にして欲しいと思う。 抜かなければならないくらい胸水がたまっているとすれば、肺は浮いているので、下の方を狙えば肺を刺す確率は少なくなる。このような注意すら払われていなかったとすれば、ミスと言っても間違いじゃない。実際はどうなのだろう。慎重にやったのだけど結果が悪かったのだとしたら、責めても仕方がないのではないだろうか。時に命に関わるような合併症の起こる手技でも、採用せざるを得ない時もあるのだから。ミラーサイト
2007.06.18
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愚痴言えば 少しは元気 出るのかな 以前はこんなことは少なかったのだが、最近は私の勤務先でも医事紛争が多い。訴訟になったもの、訴訟を宣言されているもの、訴訟には至らないが医療費の支払いを拒否しているものなど、いろいろである。直接関係しているわけではないが、トラブルの当事者の片割れと言えば言えないこともないので、書けることはほとんど無い。でも、共通点くらいは書いても良いだろう。 たいていの事例は、誰かがずっと、片時も目を離さずにいたら、大事には至らなかった可能性があった。でも、片時も目を離さないことが可能だろうか。うちも例に漏れず医師不足である。1人で10人以上の入院患者を受け持つのは珍しくない。医師によっては、20人の患者を受け持っているらしい。出来るだけ入院させないようにしているのだが、それでも限界はある。最近は患者を診るだけでなく、書類を書く事務仕事が増えた。更に、患者や家族に説明する時間もバカにならない。医師が1人の患者にかけられる時間は限られているのだ。 看護師だって十分な数がいるわけではない。医師よりは数が多いとはいえ、患者の観察以外にもいろいろと仕事があるのだ。1人の患者にかかりきりになるわけには行かない。常識的にはICUに入れるほどの状態では無かった症例が、予想に反して重症化した場合、勘弁して欲しいと思うのは甘えだろうか。私には社会が医療界に甘えすぎているように思えるのだが。 昨日は夜の10時過ぎまで仕事をして、夕食を摂ったのは11時過ぎだった。今朝は1時前から仕事をしている。今はやらなければならない仕事はないのだが、立場上帰れない。 こんな日は、愚痴を言ってもいいんだ。ミラーサイト
2007.06.16
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どのように 容易なのかが 分からない 予見が極めて容易だと言うことは、誰でも気が付くと言うことだ。誰でも気が付くことなのかどうか、一審で分からないことなのだろうか。一審で予見が不可能だと判断されたのであれば、少なくとも予見は容易ではなかったのではないか。せいぜい、予見は不可能とまでは言えないと言うところだろう。「死亡予見、極めて容易」=検察側、無罪破棄求める-東京女子医大事故控訴審 東京女子医大病院(東京都新宿区)で心臓手術を受けた小学6年平柳明香さん=当時(12)=が死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われ、一審で無罪となった元同病院医師佐藤一樹被告(43)の控訴審第1回公判が13日、東京高裁(高橋省吾裁判長)で開かれた。 検察側は、控訴趣意書で「重度の脳障害による被害者の死亡を予見することは、極めて容易だった」と主張。事故の予見可能性を否定した一審判決は「事実誤認」とし、破棄を求めた。弁護側は控訴棄却を求めた。 [時事通信社] でかでかと見出しを付けて報道するのであれば、せめて見出しの根拠くらい記事で触れて欲しい。一審では危険の予見は不可能だったという判断なのだから、それを覆すだけの根拠があるのかどうか、判断するに足る内容を記事に盛り込まなければ情報として無価値じゃないか。 そもそも人工心肺のポンプが停止することを予想していたら、そんなものを使うはずがないと思う。きちんと作動することが前提で使用していたはずだ。考えても見て欲しい。初めからブレーキが利かないと予想される車でドライブに出かけるバカが何処にいるというのだ。ミラーサイト
2007.06.14
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満点で なけりゃ通すな 医師国試 こんな裁判をまだやるのかと思うとうんざりだ。確かに人命は大切だが、たとえ理想的な医療であれば助けられたのだとしても、助けられなかったら刑事罰というのはばかげている。何かをしなかったことが犯罪だと見なされるのは、医師なら誰でも必ず行うような重要で容易な医療を行わなかったときだけだろう。動脈性の出血があるのに、特に理由もなく放置して、そのまま失血死させたら、さすがに私でも犯罪だと思う。 検察「救命できた」 割りばし事故の控訴審 検察「救命できた」 割りばし事故の控訴審 記事:共同通信社【2007年6月13日】 東京都杉並区で1999年、割りばしがのどに刺さった保育園児杉野隼三(すぎの・しゅんぞう)ちゃん=当時(4)=が杏林大病院(東京都三鷹市)で治療後に死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われ、1審判決で無罪を言い渡された当時の担当医根本英樹(ねもと・ひでき)被告(39)の控訴審初公判が12日、東京高裁(阿部文洋(あべ・ふみひろ)裁判長)であった。 昨年3月の東京地裁判決が、割りばしが頭の中まで達していることを想定せず、十分な診察や検査をしなかった過失を認めた一方で「気付いても救えた可能性は極めて低かった」と、死亡との因果関係を否定したことに対し、検察側は「正しい判断を前提に適切な措置をすれば救命できた」と主張、禁固1年の刑を求めた。 弁護側は1審と同様に「割りばしが頭の中に到達したと想定することは不可能だった」と無罪を主張した。 東京地裁判決によると、隼三ちゃんは99年7月10日、転倒して綿菓子の割りばしがのどを貫き、脳に刺さった。杏林大病院の当直だった根本被告は、傷口に消毒薬を塗るなどして帰宅させたが、隼三ちゃんは翌日、死亡した。 はじめにも書いたが、「正しい判断を前提に適切な措置をすれば救命できた」かどうかが争点になるのはおかしい。その点では、たとえ無罪になったとはいえ、一審の判決もおかしいのだ。誰でも分かる易しい症例で正しい判断を出来なかったら、それは問題だろう。(問題でも、せいぜい民事の事例と思うが)「割り箸事故」と言われるこの事例は、決して容易な事例とは言い難い。多くの医者が、自分でも分からなかったと思うから、これほどムキになるのだ。 困ったことに、自分では何も出来ないくせに、自分じゃ何でも分かっていると思う脳天気な人たちもいる。その中で発言権の強い集団は、たいていは教授と呼ばれている。「正しい判断を前提に適切な措置をすれば救命できた」と言っているのは、こうした教授の一人だろう。医療が適性だったかどうかを審査する第三者機関を立ち上げるにしても、こうした教授連を排除することが必要だ。ミラーサイト
2007.06.13
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リドカイン 濃度違えば 死を招く 医療でミスがあると、個人の不注意のせいにして、システムとして改善しようという観点が以前は無かった。そのために同じミスが何度も続いた。麻酔関連では純酸素を投与するつもりで100%の亜酸化窒素を投与して死亡させることが続いた。その後、フェイルセーフ機構として、麻酔器は酸素無しに亜酸化窒素を投与できない構造になった。それでも、誤薬を防ぐシステムは構築されてこなかった。 遺族に謝罪、5200万円払い和解 聖隷三方原病院誤投薬訴訟 記事:毎日新聞社【2007年6月9日】聖隷三方原病院誤投薬訴訟:遺族に謝罪、5200万円払い和解 /静岡 浜松市北区の無職男性(当時66歳)が同区の聖隷三方原病院に誤った薬を投与され死亡したとして、男性の妻ら遺族4人が病院を経営する社会福祉法人聖隷福祉事業団などに約8000万円の損害賠償を求めた訴訟は7日、地裁浜松支部(酒井正史裁判長)で和解が成立した。被告が和解金5200万円を払い、原告に謝罪するなどの内容。 訴状によると、男性は03年10月、自宅で胸の痛みを訴え、救急車で同病院に搬送された。急性心筋梗塞(こうそく)と診断され投薬治療などが行われたが、1時間後に死亡した。男性医師から指示を受けた女性看護師が、本来なら静脈注射用の抗不整脈薬剤を投与しなければならないのに、同成分を高濃度に含む点滴用の薬剤を誤って静脈注射したことによる中毒死だった。医師は薬剤を商品名でなく一般名で指示したため看護師が誤解した。 同病院は「亡くなられた患者様のご冥福をお祈りする。今後もより安全な医療を提供すべく、取り組んでいく」とコメントを出した。【平林由梨】 想像するに、心室性不整脈を治療または予防するために、2%リドカイン(キシロカイン)を静注する指示だったのだろう。ところが、本来は薄めて点滴静注する薬である10%のキシロカインを静注してしまった。よくあるミスだ。よくあるのだが、当事者の不注意を責めて終わりにしてきたので、いつまで経ってもよくあるミスであった。 最近になって、医療安全はシステムの問題だと言うことが理解されるようになってきた。医療の世界では、危険を少なくするための改善が行われるようになってきた。危険な薬は容易に手の届かないところに保管するようにしたり、注意を喚起するデザインにしたりするようになった。けれども、メディアや患者、司法の世界では、未だに個人の責任に矮小化したがっているように見える。そうしなければ、政治が一番悪いことが明らかになるからだろうか。ある程度豊かな国の中で、日本の医療システムは、少なくとも行政レベルでは最低だ。現場の努力で何とかなっているだけなのだが、その現場に責任を丸投げしているのが実情だ。 ミラーサイト
2007.06.12
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審査会 新たな病名 創作し NATROMさんからの情報で11人のイかれた男を見た。なかなか味わい深いものがあった。そういえば、bambooは検察審査会というのは検察関係者で構成されているのだとばかり思っていた。bambooの賢さが1あがった。 不起訴不当を議決 検察審査会 富士の患者死亡 富士市立中央病院(同市高島町)で2004年1月、入院中の女性患者=当時(34)=が死亡したのは担当医による重大な治療ミスが原因で、静岡地検が業務上過失致死罪で担当医を起訴しないのは不当として、静岡検察審査会は7日までに、不起訴不当の議決をした。 問題をめぐっては女性の夫(39)ら遺族3人が同年4月、地検に担当医と女性の死亡当日の当直医を刑事告訴したが、地検は05年12月、嫌疑不十分としていずれも不起訴処分にしていた。これを受けて遺族は昨年3月、病院を管理する市を相手に約7600万円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁に起こすとともに、同年4月には検察審査会に審査を申し立てていた。議決を受けて同地検は今後、担当医を再捜査することになる。 議決によると、女性は04年1月22日、腸閉塞によって引き起こされた「低アルカローシス」を原因とする心不全で死亡。しかし、女性からは腹部のCTスキャンなどで小腸にガスがたまる腸閉塞の明らかな所見が入院当初からみられたのに、担当医は完全絶食やガスを抜くための管(イレウス管)の挿入など適切な治療をしなかった。 さらに、担当医は(1)原因究明のための迅速な検査をしなかった(2)検査時に投与された造影剤が診療報酬明細書に記載された量と供述とで食い違う(3)栄養不十分な女性に安全性を考慮せずに向精神薬を投与した―と認定。担当医は注意義務を怠ったとして不起訴処分の再考を促した。当直医は当時病状を知らなかったとして不起訴妥当とした。 議決を受けて7日、県庁で会見した遺族の弁護士は「医師として考えられないミスなのに、病院側から今も謝罪はない。誠意ある対応を求めたい」と話した。 一方、同病院総務課は「現時点で情報が何も入っていないのでコメントできない」としている。 2007/06/08 08:04 【静岡新聞】強調はbambooによる。 リンク先をコメントまで含めて読んでいただければ、今更bambooが付け加えることなんか無いんだけど、面倒だという人もいるだろうから少し解説。低アルカローシスという病気も病態もない。おそらくは血清中のカリウムが不足する低カリウム血症に伴って、血液がアルカリ性に傾いたアルカローシスになったのだろう。でも、bambooの予想では、死亡の原因になったのは細菌性ショックだろうと思う。完成された細菌性ショックの予後は悪い。アルカローシスは電解質異常とショックによる、単なる結果だと思う。 末梢循環が悪くなって組織にまで血液が十分に行き渡らない状態をショックと言うが、このとき、普通は血液が酸性に傾くアシドーシスになる。でも、いよいよ重症のショックになると、組織で産生された炭酸ガスが戻って来れなくて、アルカローシスになることがあるのだ。 また、保険請求と実際に使った薬の量が異なるのは不思議ではない。1アンプル20mlの造影剤を15ml使用すれば、請求は20mlになる。残りの5mlは捨てるしかないからだ。 何にせよ、検察審査会は何も分かっていない。これほど何も分からない状態で、起訴という、一人の人間の人生を破滅に追い込むような決定をするとは恐ろしいことだ。他人の責任を追及している場合ではない。自分たちの責任というものを、もう少し考えるべきだろう。 ミラーサイトの方には昨日アップされている。本家のここは、下書きだけしてアップせずに閉じてしまったようだ。さっきまで全く気がつかなかった。本業でこんなうっかりをしないように気をつけねば。
2007.06.10
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遅れれば 死ぬこともある Volvulus 死ぬ病気だと分かっていたが、死んでもいいやと放っておいたのなら別だが、正しい処置を執れなかっただけなら起訴するのは反対だ。もちろん記事の内容自体が全く実態を反映していないこともあるので、その場合はbambooのコメントは意味をなさないことをお断りしておく。 医療死亡事故で不起訴不当 静岡検察審査会、主治医を 記事:共同通信社【2007年6月8日】 静岡県富士市立中央病院に腸閉塞(へいそく)で入院した同市の女性を死亡させたとして、業務上過失致死容疑で告発された主治医と当直医を静岡地検が不起訴とした処分について、静岡検察審査会は7日までに、主治医の不起訴は不当と議決した。 遺族の代理人によると、女性=当時(34)=は2003年12月30日、激しい嘔吐(おうと)のため入院。主治医は顕著な腸閉塞の症状が出ているのに、必要な処置を怠り、悪化後も緊急開腹手術などをしなかった。当直医も様子を見に行かず放置し、女性は04年1月22日、心不全で死亡した。 審査会は「主治医は原因究明のための検査などをしておらず、責任を追及されてもやむを得ない」と指摘。当直医については「病室に駆け付けたとしても、救命できたかどうかは分からない」としている。 絞扼性イレウス(Volvulus)は怖い病気だ。シロウトっぽく表現すると、いわゆる腸捻転だけど、腸が捻れて血液が行かず、腸が腐ってしまうのだ。手遅れになると、細菌性ショック→多臓器不全→死亡、と言うコースも十分にあり得る。 死亡という結果から見ると、他に何か原因がなければ、絞扼性イレウスであった可能性は高いのではないか。だとすれば、やはり早期に手術を考えるべきであったと思う。このように批判したからと言って、ただ単に主治医を責めればいいと言っているわけではない。主治医の判断が間違っていたのであれば、その間違いを修正できる体制が必要だったのだ。おそらくは未熟な医師だったのだろうから、上級医のフォローが必要だったのだろう。上級医にそれだけの余裕があったかどうかは定かでないが。 いずれにしても、当事者に刑事罰を科すだけでは問題の解決にはならない。刑事事件になれば真相は分からない。誰しも自分に不利になるようなことは伏せるからだ。今後に役立てるためには、どこに問題があり、どのような改善が望まれるのかが明らかになる必要があるのだ。ミラーサイト
2007.06.08
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新聞じゃ 何が何だか 分からない 医療報道の多くが、具体的にどういうことなんだか分からない。書いている本人はどうなのだろう。書き手の意志のようなものも見えないので、自分でも何を書いているのか、具体的なイメージはないのではないか。 息子の死因はCT検査の怠り 草津総合病院相手に母親提訴 記事:毎日新聞社【2007年6月7日】 損賠訴訟:息子の死因はCT検査の怠り 草津総合病院相手に母親提訴 /滋賀 草津市の「草津総合病院」で今年1月、男性(当時33歳)が死亡したのは「CTスキャン検査を怠ったためだ」などとして、母親が「医療法人誠光会」(水野光邦理事長)を相手取り、慰謝料など総額約7500万円を求める損害賠償請求訴訟を大津地裁に起こした。 訴状によると、男性は同月8日、首の痛みを訴え、同病院は頸椎(けいつい)症と診断。その後、他院でCTを受け、「脳が腫れている」と診断され、同病院に戻り、「脳動脈瘤(りゅう)」の手術を数回受けたが、脳循環不全に陥り、2月4日に死亡した。 原告側はCTのほか、白血球が異常な高数値を示した▽手術法を具体的に説明せず、血管内手術の選択機会を奪った--などと主張。被告の病院側は「訴状を精査して今後の対応を検討する」としている。【豊田将志】 出来るだけ素直に記事を読んでみよう。今年の1月、33歳の男性が頸部の痛みを訴えて、草津総合病院を受診した。頸部の痛みだったので、医師は頸椎症と診断した。ところが他の医療機関でCTを撮ったところ、脳浮腫が認められた。再度草津総合病院を受診し、精査によって脳動脈瘤の破裂によるクモ膜下出血と診断されたのだろう。その後、何回かの脳動脈瘤の手術を受けたが、亡くなった。 訴訟を起こすわけだから、過失によって亡くなったと遺族は思っているのだろう。では、何が過失なのだろうか。CTを撮らなかったのが過失なのだろうか。確かに診断が遅れたかも知れないが、そのせいで脳動脈瘤が再破裂を起こしたのであれば(そんな記載はないが)、責任があるとも云えるかも知れない。なぜ「とも」なのかというと、疑うべき症状があるのに必要な検査をしなかったのなら過失と言われても仕方がないが、非典型的な症状だったために判断を誤ることを責めるのは酷だからだ。後医でCTを撮ったのは、それなりの症状が出てきたからだろう。 白血球の増加はどうだろう。白血球の増加がいつ見られたのか記事からは分からない。訴訟の原因として、どのような意味があるのかも不明だ。また、説明を受けなかったので血管内手術の機会を奪われたことが問題なのだと言うが、血管内手術だったら死亡しなかったという論拠は何だろう。血管内手術で詰め物が飛んで、脳梗塞を起こした症例だってあるのだ。そもそも手術が原因で死亡したという根拠があるのだろうか。そうでなければ訴訟の原因たり得ないと思うのだが、記事には手術のミスであるとは書いていない。 結局、記事を見ても、どうして訴訟になっているのか、bambooにはさっぱり分からないのだ。ミラーサイト
2007.06.08
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不注意を しようとする人 いないよね 人間というのは不完全なものだから、どれだけ注意をしようとしても抜けることがある。それを不注意だと責めても何の解決にもならない。ミスを起こさないようにするには、ミスが起きない、あるいは起きても気が付くシステムが必要なのだ。体内にガーゼ置き忘れ 三重県立総合医療センター 記事:共同通信社【2007年6月6日】 三重県は6日、県立総合医療センター(同県四日市市)で2005年に手術をした30代の女性患者の体内にガーゼを置き忘れていたと発表した。約7カ月後に手術で取り出し、女性の病状は安定しているという。 県によると、女性は05年10月に髄液を調節するバルブを右脇腹皮下に埋め込む手術をした。しかし06年5月に、髄液の調節がうまくいかず、うみが確認されたので切開したところ、止血用のガーゼ(縦横30センチ)が直径約3センチの球状になって見つかったという。 同センターでは03年10月にも、手術前後のガーゼの確認不足で50代の女性患者の体内にガーゼを置き忘れ、翌日に取り出す事案があった。 以前にもガーゼの置き忘れがあったとすれば、その後の対応はどうだったのだろう。現場の不注意で済ませたのだろうか。そうだとすれば、管理者の怠慢が招いたミスだと思う。いくら数を確認しても、ガーゼや手術器械の置き忘れは起こりうる。手術終了直後にレントゲン写真で確認する以外に防ぐ方法はないのだ。同じことはガーゼの置き忘れでも書いた。これ以上同じこと、書きたく無いなあ。ミラーサイト
2007.06.07
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周術期 肝に銘じる その怖さ 奇しくも同じ時期に報道された肝臓の手術の後の呼吸停止。いったい何がおきたのだろう。 術後管理ミス認める 男性意識不明、900万円賠償へ 堺市立堺病院 記事:毎日新聞社【2007年5月30日】 堺市立堺病院:術後管理ミス認める 男性意識不明、900万円賠償へ 堺市は29日、同市立堺病院で一昨年8月に手術を受けた男性(79)が術後管理ミスで低酸素脳症に陥ったとして、男性に対し900万円の賠償金を支払うことを明らかにした。 同病院によると、男性は肝臓がんのため、肝臓の部分切除と胆のう摘出の手術を受けた。その後、主治医が集中治療室(ICU)の必要はないと判断して一般個室に収容したところ、間もなく呼吸停止状態になり、ICUに移したが、低酸素脳症や脳浮腫が生じたという。男性は意識の戻らない状態となり、現在も同病院に入院している。 男性の成年後見人が同市に対し損害賠償請求を行ったことから、同病院が調査。ICUへの収容を不要と判断したことなど、病院のリスク管理が不十分だったことを認めた。【高田房二郎】 こちらは裁判の結果である判決。と思ったけど、和解なのかな。一応訂正しておきます。 次の記事は提訴。 「重い後遺症」 24歳女性と家族3人、国立病院機構に損賠提訴 記事:毎日新聞社【2007年6月1日】 医療過誤:「重い後遺症」 24歳女性と家族3人、国立病院機構に損賠提訴 /千葉 千葉医療センター(千葉市中央区)で肝腫瘍(しゅよう)の切除手術を受けた千葉市内の女性(24)が術後に呼吸停止になり、脳障害による重い後遺症が残ったのは病院側に過失があったとして、女性と家族3人が、同センターを運営する独立行政法人国立病院機構(東京)を相手取り、2億1000万円の損害賠償を求める訴えを千葉地裁に起こしていたことが5月31日、分かった。 訴状によると、当時女子大生(21)だった女性は04年4月5日に同センターに入院し、同23日に手術を受けた。 しかし、手術後、医師と看護師は約5分間にわたり、女性を目の届かない場所に放置し、全身麻酔の終了後、突発的に起きる可能性のあるけいれんなどの異常に気付かなかった。その間に女性の心肺は停止、低酸素性脳症による言語や歩行障害が残り、現在も入院中。女性は当時私立大薬学部の4年生で薬剤師を目指し、就職希望企業から内定を受けていた。 原告側は「医師らは術後の一定期間、患者を観察する義務があるが、怠った」と主張。同センターは「このような事態になったことは憂慮するが、医療事故という認識は持っていない」としている。【寺田剛】 どちらも肝腫瘍の術後の呼吸停止だ。何があったのだろう。呼吸停止は術後すぐなのか、数時間経ってからなのか、どちらだろう。はじめの記事では帰室後、比較的すぐに呼吸停止となったようだ。ICUに入れるかどうか迷うような状態だったのだから、全身状態はかなり悪かったのだろう。結局、主治医の想定よりも全身状態が悪かったと言うことなのだろうか。結果だけから主治医のミスと責めるのは酷のような気もする。常に結果から見ても正しい判断をすることなんて、誰にも出来ないからだ。 後の方の記事を見ると、麻酔覚醒のすぐ後のように思える。どのような状況か分からないが、たった5分目を離しただけで急変したのだとすれば、肺塞栓などが考えられないか。手術直後はいろいろと忙しい。たまたま5分くらい目を離すこともあるだろう。そこでたまたま急変したら、どちらにとっても不幸な事態だ。でも、5分目を離しただけなら、すぐに蘇生術が行われたはずだ。それでも脳に障害が残ったのであれば、目を離していなくても障害は残ったのではないだろうか。 いずれにしても、他人事ではない。油断しないようにしよう。 ミラーサイト
2007.06.05
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長いのでコメントは無し。以下全文引用。 今回の記事は転送歓迎します。その際にはMRICの記事である旨ご紹介いただけましたら幸いです。 MRIC(エムリック)田中━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 傍聴希望者は84人まで減った。だが相変わらず傍聴券は当たらない。 この日も検察側証人尋問。証人は死亡した妊婦さんの子宮を病理鑑定した福島県立医大のS助手。これまで、午前と午後に1人ずつだったのに対して、たった1人の尋問が17時50分まで延々と長引いたらしい。普通に解釈すれば、この証言が重大な位置を占めるからということになるのだろうが、どうも素直に受け取れない。 らしいと書いたのは、実はこの日、仙台で糖尿病学会に併せたロハス・メディカルのワークショップがあり、傍聴を午前の部(12時45分まで)で切り上げたためだ。証人が1人なら全部聴けるかなと思っていたけれど、結局、検察側の主尋問だけで終わってしまった。なので、今回はいつにも増して『周産期医療の崩壊を食い止める会』頼みの面がある。 「食い止める会」の傍聴録の後半部を読ませてもらったのだが、自分で体感していないこともあり、また尋問に込められた検察の狙いを掴みかねたこともあり、午前の部についてだけ記すことにする。午後の部は食い止める会のサイトをご覧いただきたい。 検察の狙いを掴めないというのは、純粋な有罪立証だけを目指しているとはとても思えないからだ。たとえば、下記のやりとりだけ見れば「いい加減な鑑定をしやがって!!」と、無罪判決が出た場合に備えて「戦犯」追及しているようにも思える。検事 鑑定書の後でさらに病理診断したことがありましたか。S助手 あります。検事 それは自発的に行ったものですか。S助手 依頼されて行いました。検事 誰から依頼されましたか。S助手 警察と検事さんから。検事 どのような趣旨でしたかS助手 癒着の部位、範囲について検事 どのように依頼されたか覚えていますかS助手 せん入胎盤かかん入胎盤か、よく明らかにしてくださいとのことでした。検事 再度検査をする契機になったのは何ですか。S助手 弁護人側の鑑定書が公開されて、鑑定に食い違う部分があるから、その食い違いをもう一度見直してもらえないかということでした。検事 依頼を受けた時期は覚えていますか。S助手 昨年だったか。。。検事 記憶喚起のために言いますが、契機になったのは弁護側の鑑定書が出てきてからでしたね。S助手 今年の1月でした。検事 平成19年の1月に間違いありませんね。S助手 はい。検事 今度は組織学的に鑑定書を作成したわけでしょうか。S助手 以前の鑑定書で癒着でないと判断していた部位に癒着が新たに見つかったので、それを鑑定書にしました。検事 どうして判断が変わったのですか。S助手 理由はいくつか挙げられます。一つは残存する絨毛が少なく剥離による挫滅で判断できない部分があったことで、紛らわしいものについて前回は癒着はないものと判断していましたが改めて見てみると癒着と判断し直したところがありました。それから、癒着胎盤の診断基準は絨毛と子宮筋層との間に脱落膜が介在しないことなのですが、栄養膜細胞が脱落膜細胞と同じ構造で区別できないので、難しいところは脱落膜細胞ということにしておこうと判断していましたが、私自身も過去の標本を見て勉強し直して改めて見直すと、脱落膜ではなく栄養膜と判断できるものがあり、そういう理由でいくつか前回は癒着でないと判断したものの判断が変わりました。 滔々としゃべるのを聴いて唖然とした。鑑定結果って、そんなに簡単に変わるものなのか? 癒着と鑑定された部位が拡大した結果、「子宮の後ろ側だけでなく前部にも癒着があったのだから、帝王切開実施前に癒着胎盤を予見できたはず」との検察側主張を裏付けることになった。 しかし、どうもS助手の行動は辻褄が合わないような気がしてスッキリしないのである。弁護側の反対尋問でも明らかにされたことだが、S助手の専門は腫瘍で、子宮の病理診断に長けているわけではない。 1月の時点では、医療界を上げての加藤医師支援が広がっており、弁護側の立ててくる鑑定人が、分野の第一人者となることは火を見るより明らかだ。弁護側の鑑定結果との間に食い違いがあると言われた場合、私だったら、自分の方が間違えているのでないかと考えるし、対立がより明確になるようなことは避けたいので、以前の鑑定書以上にエッジを立てるようなことはしない。むしろ、恐ろしくてできないと言うべきか。私なら「専門外の鑑定だったのだから勘弁して」と言って、お茶を濁すと思う。 特に研究者というのは、どちらかと言えば臆病な人種であり、勘弁してもらいたかったのに許されなかったのかな、という感じがしてならない。そうやって考えてみると、鑑定で癒着の範囲を広げてきたのには、検察の意思が働いたと見るべきなのだろう。そして以下のように弁護側と押し問答する以上、検察側は、まだ有罪立証をあきらめていないと見なければいけないのだが、しかし、それもどうもしっくりこない。検事 証人は判断した根拠を説明できますか。S助手 はい。検事 写真を示せば説明できますか。S助手 はい。検事 写真なしで説明できますか。S助手 写真はあった方がいいと思います。検事 甲〓証(平成19年1月時点での鑑定=捜査事項照会回答書)添付の写真を示したいと思います。弁護人 異議があります。検察は平成18年3月で公判維持に足る証拠があるとして起訴しているわけですから、後だしジャンケンのように鑑定をやり直すのはおかしいですし、その文書は不同意にしておりますから。検事 癒着胎盤の範囲を示したいもので、やむを得ない事由は証人の証言から明らかです。別の検事 この書証は刑事訴訟法321条4項に該当するものとして、後ほど証拠として提出いたします。裁判長 留保事項としてということですが、いかがですか。弁護人 留保も何も弁護人は不同意にしておりますので、証拠採用されている甲6号証の写真を使えばいいではないですか。 いつもならすぐ判断を下す裁判長が、左右の陪席判事と1分以上相談している。 と検事 あのもう一つ。甲6号証についているのは顕微鏡写真ではないので。裁判長 まったく別のものなの?検事 はい、いや拡大したものなので、写真としては別のものです。裁判長 この写真には、どこの部分と記載されているわけね。異議は棄却します。 こうして顕微鏡写真を使っての講釈を挟み、検事はS助手に子宮写真の上に癒着の範囲を図示させた。そして、おや?と思うやりとりがあった。検事 帝王切開創と癒着胎盤の範囲とは重なっていますか。S助手 改めてマッピングしてみたところ、今回必ずしも一致していません。検事 以前は重なっていると鑑定していましたね。S助手 はい。検事 変更された。S助手 そうです。検事 理由は何ですか。S助手 前回の鑑定では標本の一部に癒着があった時、標本のブロック全体が癒着していると考えましたが、今回はより詳細に検討しました。 ビックリである。どうやら最初の鑑定書では、胎盤と帝王切開創が重なっていたことになっているらしい。であれば、子宮を切開した時に胎盤も傷をつけていることになり、胎盤を無理やり剥がした云々以前に、出血が止まらなくて当然ということになる。医療ミスと言われても仕方ないかもしれない。 検察は、S助手が証言を覆すことを知らずに質問したとも思えないので、やはり狙いは、「いい加減な鑑定をした戦犯」の印象づけだろうか。 ただ、S助手は何を根拠にそんな重大な鑑定をしたのか。警察なり検察なりから、誤った情報か圧力を加えられていたとでも考えないと、客観的に見た際にすぐバレるような鑑定書を書くとは思えない。 午後、S助手は弁護側から相当追及されたようである。専門家として鑑定書を書いてしまった以上当然とも言えるが、S助手だけが悪いのでもなかろう、と少し同情した。(この傍聴記はロハス・メディカルブログhttp://lohasmedical.jpにも掲載されています)
2007.06.04
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学会から帰ってきたら、m3comの掲示板が大変なことになっているらしい。らしいというのは、bambooにはよく分からないからだ。まずは以下のサイトを見て欲しい。m3com 弾圧の嵐 NATROMの日記 ssd's Diary 以前から品のない発言や確度の低い情報の垂れ流しには批判的だったので、何らかの介入自体は歓迎している。でも、リンク先で言われているような削除の嵐という状況はやり過ぎだろう。警告も無しに削除し、痕跡も残さないのでは、たまにしか覗かないbambooには削除があったことすら分からない。 実際に今日、m3comの掲示板がどんなことになっているのか覗いてみた。自分で見た限りにおいては、削除しまくっているという風には見えなかった。誰かの発言にあったように、日曜日は削除担当者が休みなのかも知れないが。それでも、過去のメディアの批判も載っていて、記事配信元の毎日新聞に対する批判を封殺しているわけでもなさそうだ。過去のスレッドも検証が終わったものから再掲しているようだし、行き過ぎた言論統制というのが単なる誤解であればいいと思う。 フェアに行われることが前提だが、誹謗中傷や挑発行為、意図的なアラシなどに対する規制に関しては、bambooは歓迎する。一方で、どれだけ厳しい内容であっても、真摯な批判を削除するようなことは決してあってはならないと考える。
2007.06.03
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勝てば良い? そうじゃないんだ 理解して 何が原因かによっても異なるだろうが、髄膜脳炎の予後は良くない。死亡する可能性も少なくないし、助かったとしても後遺症の残る可能性が高い。そのような背景を考えると、たとえ病院に責任があろうとも、5300万円の支払いを命じた一審判決には首をかしげたくなる。 原告側が逆転敗訴 「病院側に過失なし」 川崎医科大 記事:毎日新聞社【2007年5月26日】 川崎医科大の医療過誤損賠訴訟:原告側が逆転敗訴 「病院側に過失なし」 /岡山 ◇高裁岡山支部・控訴審判決 98年7月、髄膜脳炎で川崎医科大付属病院(倉敷市)に入院していた女性(当時25歳)が死亡したのは、カテーテル挿入で肺出血を生じた際、適切な処置を怠ったことなどが原因として、女性の両親が病院と担当医師を相手取って9000万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、広島高裁岡山支部であった。 安原浩裁判長(小川正明裁判長代読)は「肺出血による気道閉塞(へいそく)が死因の可能性は高いが、カテーテル挿入が原因とは断定できない。病院側に過失は認められない」として、被告側に約5300万円の支払いを命じた一審判決を取り消し、原告の請求を棄却した。 判決によると、女性は髄膜脳炎の治療中にカテーテル挿入を受けた後、無呼吸状態になり、人工呼吸器を装着した。右気管支からの出血が確認されたが、止血できず死亡した。原告側はカテーテル挿入のミスで肺出血が起こり、気道閉塞を起こして死亡したと主張。被告側はカテーテル挿入と肺出血、死因との関係は不明として争っていた。 訴訟は00年に提起され、05年に岡山地裁倉敷支部で原告一部勝訴の判決が出たが、双方が控訴していた。逆転敗訴を受けて、被告側代理人の弁護士は「思いがけない判決で驚いている」と話し、女性の父は「信じられない判決だ」と肩を落とした。同病院の角田司院長は「当院の主張が全面的に認められた。これからも医療機関としての使命を果たせるように努めていきたい」と話した。【石戸諭】 記事からは詳細が全く分からないので、あくまで仮定の話として、カテーテル挿入時に肺を損傷したのだとしよう。このカテーテルというのは、鎖骨下から鎖骨下静脈を穿刺して、心臓の手前の中心静脈に入れるCVカテーテルだろう。CVカテーテル挿入時の事故は結構ある。たいていは大事にならずに済んでいるが、患者の病態によって、または傷つけ方によって、致命的になることはあるだろう。これはそのような手技なのだ。まして、挿入時に患者が動いたりすれば、予想外に傷つけることは大いにあり得る。髄膜脳炎の患者がどのような状態だったのか分からないが、突然動いたりする可能性はあるだろう。 CVカテーテルは、食べられない患者の栄養補給や、血管が細すぎて点滴の出来ない患者の血管確保には欠かせない手技だが、危険性がゼロだというわけではない。その他の医療行為でも同様だが、必要性と危険性を秤にかけて、必要性が勝ると考えた時、その医療行為を選択するのだ。うまくいったときには特別な報酬はなく、結果が悪かったときだけ罰を与えられるのだとしたら、リスクのある医療行為は出来ない。「カテーテル挿入が原因とは断定できない」ではなく、カテーテルの挿入が原因であっても、受忍すべきリスクとして医療側の無責を認定して欲しいと思う。 ミラーサイト
2007.06.03
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