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厚労省 飛び越え動く 財務省 前回に続いて医療報道ネタではなく、看板に偽りありと言われても仕方がないが、お許しあれ。今回は宿日直手当についての考察なのだ。今、多くの病院で宿日直手当がらみで追徴金を支払わされている。それは何故なのか、知らない人も多いのではないかと思って書くことにした。 宿日直手当は、一回につき4000円までは非課税である。非課税の所得に対しては源泉徴収をしないから、当然、病院ではその分の源泉徴収をしていない。ところで、宿日直手当というのは、宿日直に対する手当である。当たり前と言えば当たり前だが、多くの病院では、医師の宿日直は本来の意味での宿日直ではないという現実がある。以下は厚生労働省による宿日直の定義である。1)通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。即ち通常の勤務態様が継続している間は、勤務から解放されたとはいえないからその間は時間外労働として取扱わなければならないこと2)夜間に従事する業務は、一般の宿直業務以外には、病室の定時巡回、異常患者の医師への報告、あるいは少数の要注意患者の定時検脈、検温など、侍殊の措置を必要としない軽度のまたは短時間の業務に限ること3)夜間に充分睡眠がとりうること4)上記三項自以外に一般の宿直の許可の際の条件を充たしていること 少なくとも、急性期の病院でこのような要件を満たしている宿直体制はないであろう。従って、名目は宿日直手当でも、実態は時間外労働に対する給与と見なされる。当然のことながら、4000円の控除はない。今まで源泉徴収をしていなかった分が追徴されるのはもちろん、延滞金まで発生する。 本来なら宿日直の実態が時間外労働であることを労働基準局が取り締まらなければならないのだが、それをすると、同じ厚生労働省管轄の病院事業が成り立たないことは明白なので、労働基準局は見て見ぬふりをしている。でも、財務省は関係ないので、取れるものは取るという、至極わかりやすい対応をするようになった。我々から見たら、どちらも国の機関なのだから納得いかない。とりあえず病院が追徴金を払うのだとしても、その後、手当を貰った医師から回収することになる。所得税なのだから、所得にかかるのは当然なのだ。当然でないのは、同じ国の機関でありながら、御都合主義のダブルスタンダードを執って平然としていることだ。
2007.09.29
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私たちは 大野病院事件被告の無罪を信じ このような人権侵害が 一刻も早く終わることを望みます ロハス・メディカル・ブログの大野病院事件公判の報告が始まった。詳しくは福島県立大野病院事件第八回公判(1)を見て欲しい。現時点ではホンのさわりだけだが、だんだん詳しくなってくると思う。 通常、専門業務の内容を刑事罰に問うのであれば、専門家のほとんどが酷いと思うケースに限られるのではないだろうか。専門家同士で意見が割れるようなケースは、刑事裁判で争うべきではなく、学会などで、研究活動を通して決着をつけるべきだろう。もちろん目的はより良い専門業務を実現するためであって、結果的に誤りと判断されても処罰など無用だ。 今8回目の公判を数えている「大野病院事件」では専門家同士の意見が割れていると言うより、専門家のほとんどがミスではないと判断している。その様な状況で刑事被告人として裁判を受けなければならない立場は、私なら耐えられないだろう。民主国家では、あってはならない人権侵害だと思う。検察には検察の面子があるのだろうが、面子で1人の医師の人生を破壊して良いのか、良く考えて欲しい。
2007.09.29
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病院じゃ 何が起きても 医療事故 医療事故というのは、医療行為が原因となって何らかの被害が患者にもたらされることだと思っていた。ただ単に病院で転んで怪我をした場合でも医療事故と言うとは知らなかった。毎日新聞社だけの用法である可能性はあるが。 医療事故:県立中央病院で 入院患者が転倒、まひ残る /徳島 記事:毎日新聞社 【2007年9月27日】 県立中央病院(徳島市蔵本町1)は26日、入院中の徳島市内の男性患者(81)が病棟のトイレで転倒し、言語障害と右半身にまひが残る医療事故があったと発表した。 同院によると、男性は腸閉そくの診断を受けて15日から入院し、絶食状態で点滴治療を受けていた。18日午前1時40分ごろ、9階のトイレから物が落ちるような音を聞いた看護師が駆けつけたところ、入り口付近で移動式点滴台と一緒にあおむけで倒れている男性を発見。声をかけたが、応答がなかったという。 検査の結果、男性は外傷性クモ膜下出血と診断。同院は同日中に事故経過と今後の治療について男性の家族に説明した。施設に安全上の不備がなかったかなどを含め、原因を調べている。【岸川弘明】 実際のところ、どのように転倒したのだろう。大腿骨頸部骨折なら分かるが、ちょっと転んだだけではクモ膜下出血にはならないような気がする。ツルッと滑って体が浮いて、頭から落ちるような転び方をしたのであれば、そのような床を放置した落ち度を突かれる恐れはあるだろう。そのあたりのことは分かるはずもないので、以下は一般論。 転んで怪我をすることはよくあることだ。病院には体の不自由な人や高齢者が多く、転倒のリスクは高い。そのため多くの病院では手すりを備えるなど、ある程度の転倒対策をしている。それでもすべての転倒を防ぐことは出来ない。そのことを入院時に説明しておいた方がいいと思う。ある程度の配慮はするけれど、それでも転倒した場合は自己責任でお願いすると言っておいた方がいい。何も言わなければ、今までの例だと何らかの責任を追及される可能性が高い。
2007.09.28
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健診は 保険診療 許されず 報道というのは事実を知らせることなのだから、保険診療で人間ドックは出来ないと言う事実も知らせて欲しい。特に症状のない疾患についても調べて欲しければ、自費で健康診断を受けるべきなのだ。総合水沢病院:胃がんで死亡、遺族に賠償金支払い決める----奥州 /岩手毎日新聞社 【2007年9月26日】 奥州市立総合水沢病院は、胃がんで昨年8月に死亡した女性(当時74歳)の遺族に損害賠償金300万円を支払うことを決めた。「早く胃の検査をしていればいくらかでも延命が可能であり病院の不手際で死期が早まった」と遺族から損害賠償を求められていた。 女性は91年11月に胃潰瘍(かいよう)で入院して以来、ほぼ定期的に病院を利用し主に糖尿病の治療を受けていた。01年5月の内視鏡検査で胃潰瘍が治っていることが確認されていた。その後腹痛や体重の減少を訴えたため昨年5月に内視鏡検査を再度行ったところ胃がんが分かった。 病院の梅田邦光管理者は「治療ミスや不手際はないが、(昨年5月の)内視鏡検査を早くしていればがんが見つかった可能性はあった。円満な解決を目指し双方の弁護士が重ねた協議結果を受け入れることにした」と話した。【石川宏】 胃潰瘍の治癒が確認されたのは01年5月。消化器症状が出現して検査したのが06年5月。つまり、胃潰瘍治癒から5年後に癌が発見されたことになる。症状があったにもかかわらず検査していなかったわけではなく、症状の訴えがあったときには癌が進行していたのだ。その間は通院していたとはいえ、糖尿病の治療をしていたのだ。 症状が無くても検査するのは健康診断であって、通常の保険診療は認められない。症状が無くても念のためにいろいろな疾患を見つけて欲しければ、自費で人間ドックなどを受けて貰うしかない。このケースでは医師の対応に全く問題はなさそうだ。 病院側がどうして賠償金を支払うことにしたのか理解に苦しむ。実際に診療に当たった医師にしてみれば納得行かないだろう。円満な解決であれば、保険医療体制の根幹に関わる問題を無視していいのだろうか。どうせ自分が払うのではなく、税金なのだから構わないのだろうか。他の患者も同じように、通院していればどんな病気も発見出来るはずだとゴネたら、同じように対応するのだろうか。
2007.09.27
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合併症 賠償責任 あるのかな 医療行為には危険がつきものだ。どのような医療行為にも、それなりに危険はある。風邪薬の内服だって、死ぬこともある。結果が悪かったら賠償責任を負わされるのであれば、該当する医療行為の保険点数を大幅に上げなければバランスが取れないだろう。 秋田市立病院の医療過誤訴訟:秋田市の敗訴確定 最高裁、上告棄却 /秋田 記事:毎日新聞社 【2007年9月21日】 秋田市立秋田総合病院で採血を受けた際、神経を傷つけられ左手に障害が残ったとして、潟上市の元飲食店経営の女性(58)が秋田市に約3500万円の賠償を求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は18日付で、市側の上告を退ける決定を出した。女性側が逆転勝訴した2審・仙台高裁秋田支部判決(今年1月)が確定した。 市に約1028万円の賠償を命じた2審判決によると、女性は01年9月、持病の検査のため採血を受けた直後から左腕に痛みを訴え、しびれや運動まひなどの後遺症が左手に残った。 1審・秋田地裁は05年3月、女性が採血時に電撃的な痛みを訴えなかったことなどを理由に「採血で神経が損傷されたとは認められない」と請求を棄却した。だが2審は「細い神経は、針に刺されても電撃痛が生じるとは限らない」との鑑定などを基に、一転して、採血と後遺症との因果関係を認めた。【高倉友彰】 細い神経なら刺しても電撃痛が起きるとは限らないという判断は、誰がどのような根拠に基づいて行ったのだろう。それが本当かどうか知らないが、電撃痛を起こさないような神経を刺したからといって、神経障害が起きる可能性はどれくらいだろう。 見出しでは医療過誤訴訟となっているが、記事を読む限り、本来避けなければならないような太い神経を刺したのではなさそうだ。だとすれば、本当に因果関係があったとしても、採血に伴う極めて希な、避けられない合併症なのだろう。過誤ではない。今まで例に無いような希な合併症であれば、説明責任も無いだろうし、通常は運が悪いとあきらめて貰うしかないと思う。 賠償責任を負わされるべきハイリスク行為に対しては、ハイリターンでなければ業務として成り立たない。現状はとてつもないハイリスク・ローリターンなのだ。まだ現状に幻想を持っている病院幹部も多いので、生き残りに必死になっているが、医賠責が大幅に値上げになれば、どうあがいても経営が成り立たないことに気がつくだろう。そのとき、日本の医療に完全に幕が下りる。
2007.09.23
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書くのなら せめて意味ある 情報を 実際に医療ミスがあったのなら、その情報は医師にとって極めて重要だ。医療ミスの被害者とされる人々は異口同音に「真相究明と再発防止を求める」と言う。それは我々医師にとっても同じだ。他の人が起こしたミスの情報は出来るだけ詳しく知りたい。自分が同じミスを起こさないための重要な情報だからだ。本当に医療ミスがあったのなら、何が何だか分からないような記事ではなく、再発防止に役に立つような内容を書いて欲しい。 医療事故:こども病院で手術ミス、女子高生の足にまひ 県、慰謝料支払いへ /長野 記事:毎日新聞社 【2007年9月21日】 ◇慰謝料6800万円支払いへ 県は20日、県立こども病院(安曇野市)で06年1月、手術を受けた女子高校生(当時16歳)が治療後に足のまひが残る医療事故があったと発表した。県は女子高校生に慰謝料6800万円を支払う予定で、9月定例議会に提出する補正予算案に盛り込んだ。 女子高校生は、06年1月に消化器系の病気のため、同病院で手術を受けたところ、足がまひする障害が残ったという。県側はこれまでに同病院の過失を認め、女子高校生との間で慰謝料を支払い和解することで合意したという。 医療事故を公表しなかった理由について、県衛生部では「原因がはっきりしなかったためと、家族との交渉が始まり公表することについて、家族の同意が得られなかったため」(県立病院課)としている。【仲村隆】 この記事からは具体的なことがほとんど分からない。「消化器系の病気の手術で足に麻痺の残る医療事故」と言われても、どのようなことが起こったのか想像するのは難しい。メディアがミスと報道したからと言ってミスとは限らない事例はたくさん見てきた。また、県がミスを認めたからと言ってミスとは限らない事例もたくさん見てきた。 結局具体的なことが何も書いていなければ、ミスがあったのかどうかすら分からない。多くの医師が、「同じ過ち」を回避するための努力も出来ない。報道する意義をどのように考えているのか、私にはどうしても理解できない。この記事、何か意味あるの?
2007.09.22
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賠償金 名誉の価値は それだけか 個人で訴訟を継続するのは難しい。経済的負担はもちろんのことだが、かなりの時間や労力を費やす必要があるだろう。日本では、名誉に対する損害賠償額は極めて少ない。訴えようとしても、失うものに比べて得るものが少なすぎて、どうしても泣き寝入りしがちだ。一方で、メディアからすれば、たとえ賠償金を払っても、それ以上に売れて利潤があれば構わないのだ。 たとえ得るものが少なくても、どれだけコストがかかっても、どうしても名誉を回復したい者にとっては泣き寝入りは出来ない。そうした人を応援するとしたら、判決で名誉回復がなされたという事実を伝え続けることは重要だろう。多くの人に伝わらない限り、名誉が回復されたとは言えないからだ。東京女子医大訴訟:配信記事で敗訴…3紙に賠償命令毎日新聞 2007年9月18日 23時12分 東京女子医大病院で心臓手術を受けた女児が死亡した事故で業務上過失致死罪に問われ、1審で無罪になった同病院元助手の佐藤一樹被告(44)=検察側控訴=が、記事で名誉を傷つけられたとして事故原因に絡む記事を配信した共同通信社と掲載した3紙に総額2000万円余の賠償を求めた訴訟で、東京地裁は18日、3紙に計385万円の支払いを命じた。綿引穣裁判長は「(3紙は)配信記事を受けただけで、記事を真実と信じる相当の理由があったとは言えない」と述べた。 敗訴したのは▽上毛新聞社(前橋市)▽静岡新聞社(静岡市)▽秋田魁新報社(秋田市)。 判決は共同通信については「警視庁の会見などに基づいている」として賠償請求を退けた。しかし3紙については「配信記事の真実性に信頼性が確立しているとは言えない」とする最高裁判例を引用。配信元が明記されていない体裁も踏まえ、各社が責任を持って配信内容の真実性を判断すべきだとの判断を示した。【北村和巳】 ▽江渡悦正・共同通信編集局次長の話 判決は極めて不当だ。通信社の配信機能を理解しない内容で、到底承服できない。 とうてい承服出来ないのは原告の佐藤氏であろう。元々の誤報を流した共同通信の責任が認められていないからだ。それでも、記事が誤りであることは認められた。名誉を傷つけた報道内容は誤りであることが認められたのだ。賠償金はわずかでも、名誉そのものは今回は公的に認められた。現状にまだまだ不満は残るだろうが、原告の佐藤氏には心から勝訴へのおめでとうを言いたい。
2007.09.20
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9月13日版の Mdical Tribune(日本語版)に、Virchow がネアンデルタール人の発見にイチャモンを付けたというコラムがある。少々奇異に感じたのは、フィルヒョーと記載されていることだ。我々が受けた授業ではウィルヒョーと習ったはずだ。 自分がどのように習ったかは別にして、世間ではどのように表記されるのが普通なのだろうと調べてみた。ビッグローブの検索では、フィルヒョーが116件、ウィルヒョーが114件とほぼ互角。グーグルでは、フィルヒョーが442件、ウィルヒョーが690件で、多少ウィルヒョーが有利。でも、たいした差ではない。自分が学んだ環境が絶対では無いことを肝に銘じる必要を感じた。 ところで、以前ミラーサイトに使っていたソネットのブログを、医療ネタ以外を掲載するための別館として使うことにした。bambooの日記という。今はオーストラリアの旅行記を書いている。よろしかったら覗いてみてください。
2007.09.16
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意味あるの? 答えを知ってる 鑑定医 高学歴で賢いと思われている人の間抜けな行為を見ているのは楽しい。それにピッタリのマジックがあって、私は同じマジックを別の番組で3回見た。トリックは簡単で、と言うよりも、トリックなどは無いも同然。私が見た被験者(被害者)は全員アナウンサーだった。アナウンサーは高学歴だし、いかにも賢そうだし、罪のないトリックで笑いものにするにはうってつけなのだろう。 マジシャンは被験者の左側に立ち、左手の手の平を被験者の目の前に差し出す。右手でティッシュペーパーを丸めた程度の大きさのもの(何でも良い)をつまみ、手の平に軽く打ち付けるように数回動かす。するとあら不思議、いつの間にか右手に持っていたものは消えている。 消えたと思っているのは被験者だけで、周りで見ている人たち(テレビの視聴者も)には何が起きたかよく分かる。マジシャンは被験者の肩越しに投げ捨てただけなのだ。(音のするものは助手が受け取る)でも、何度やっても被験者には分からない。だんだんものを大きくしても、リンゴやトイレットペーパーのロールくらいでは分からない。さすがにティッシュの箱くらいになると分かる。そして後ろを振り返って愕然とする。 周りで見ていると、被験者は本当に間抜けに見える。でも、人間の注意力なんてそんなものなのだ。答えを知っていれば簡単なことでも、答えを知らない状況では困難なことなどいくらでもある。私には、そんなことすら考慮しない裁判のあり方がとても不合理に思える。 名張市立病院:がん診断ミス、伊賀の男性死亡 2305万円賠償で示談へ /三重 記事:毎日新聞社 【2007年9月14日】 ◇伊賀の70代男性が診断ミスで死亡 伊賀地域の70歳代の男性が、名張市立病院(同市百合が丘西1)で腹部の造影MRI(磁気共鳴画像化装置)検査を受けた際、がんだったにもかかわらず、良性の腫瘍(しゅよう)と診断され、その後、死亡していたことが分かった。病院側はミスを認め、損害賠償金2305万円を支払うことで患者の遺族と示談する方針。 竹内謙二院長が13日、同市役所で記者会見して明らかにした。 同病院によると、男性は、すい炎の病歴があるため、03年10月から04年11月にかけ、腹部のCT(コンピューター断層撮影)検査やMRI検査を受けた。その際、主治医の内科医と放射線科医は、良性である肝血管腫の疑いと診断した。 ところが、男性が県外の別の病院で検査を受けたところ、肝臓やリンパ節への転移を伴う肝内胆管細胞がんと判明。男性は昨年5月に死亡した。 遺族の求めを受け、市立病院がMRIの画像を院外の4人の専門医に分析してもらったところ、「がんを疑うべきだった」との所見が示された。示談については今月12日、遺族の内諾を得たという。 会見で竹内院長は「診断はかなり難しいケースだったが、今後は継続的な検査による注意深い診断に努め、患者に院外の専門医も紹介する」などと話した。【渕脇直樹】 記事では良性の腫瘍と判断された時期と、他施設で転移を伴ったガンと診断された時期との経過が分からない。両者の時期がほとんど同時であったのなら、名張市立病院の診断能力に問題があったとも言えるだろうが、すでに転移があったのであるから、結局は助からなかっただろう。とすれば、実害はなかったと言うことになり、賠償責任はないと思われる。 あるいは、良性の判断からガンの診断まで時間がかかっていたのであれば、それだけガンの診断が容易になっていたはずであり、名張市立病院の診断能力を問題にするのはおかしいと言うことになる。どちらにしても、賠償責任はないと思われる。 それでも、4人の専門医が名張市立病院のMRIを見て、「がんを疑うべきだった」との所見が示されたのだから、賠償責任はあると判断したのだろう。でも、前述したマジックを思い出して欲しい。トリックを知っていればマジックには引っかからない。答えを知っている人が、知らない人の判断について評価するのは誤りなのだ。 今回の事例で「がんを疑うべきだった」と正確に判断するためにはどうしたらよいだろう。刑事事件の面通しが参考になるかも知れない。似たような画像ではあるが、良性のMRIを数枚、ガンのMRIを数枚用意し、その中に鑑定すべきMRIを紛れ込ませて、全体を鑑定してもらう。鑑定医の全員が良性の画像を良性と判断し、ガンをガンと判断し、問題の画像もガンと判断したのであれば、名張市立病院の診断能力に問題があることは明白であり、賠償責任を問われることは避けられないかも知れない。でも、こんな作業が行われたとは思えない。 そして最後にもう一つ、最初から正しく診断したら、必ず助かったという根拠は何だろう。「診断ミスで死亡」と言うからには、診断ミスがなければ必ず助かったのでなければならない。医学常識からすれば、この表現は明らかな虚偽と言わざるを得ないと思うがどうだろう。
2007.09.15
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ドレ医にも 命の洗濯 必要だ 少々遅めの夏休みを取ります。しばらく更新もコメントへのレスも出来なくなります。
2007.09.08
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人命は トラック以下か この国じゃ 奈良県で死産の妊婦をいくつもの病院が受け入れられなかったことについて、奈良県立医大附属病院がホームページで「今般の妊婦救急搬送事案について」と言う説明をしている。それを読むと、当直医は一睡もしないで次から次へと仕事をしていたことが分かる。もちろん次の日も引き続き通常勤務をしているのだ。その働きぶりを引用する。平成19年8月28日の当直日誌記録より(産婦人科当直者 2名) 対応内容8月28日(火)19:06 前回帝王切開した患者A(妊娠36週)が出血のため来院 診察終了後、患者A帰宅19:45 重症患者B(妊娠32週) 妊娠高血圧のため搬送入院、病状管理に努める23:00 重症患者Cの手術終了(9:00~手術開始) 医師一人が術後の経過観察を実施23:30 患者B 早剥のため手術室へ搬送、緊急帝王切開実施(00:08終了)8月29日(水)00:32 患者Bが病室に帰室重症であったため、医師一人が朝まで術後の処置等におわれながら、他の患者への処置等を応援、当直外の医師1名も、重症患者の処置応援にあたり2:30頃まで勤務02:54 患者D(妊娠39週) 陣痛のため緊急入院、処置02:55 救急隊から1回目の入電(医大事務当直より連絡があり、当直医一人が事務に返答)「お産の診察中で、後にしてほしい」03:32 患者E(妊娠40週) 破水のため緊急入院、処置(患者Eの入院により、産科病棟満床となる)04:00 開業医から、分娩後に大量出血の患者Fに関する入電があり、搬送依頼あるが、部屋がないため他の病棟に交渉を開始04:00頃上記の直後に救急隊から2回目の入電(医大事務が説明したところ電話が切れる)「今、医師が、急患搬送を希望している他医療機関医師と話をしているので後で電話をしてほしい」05:30 産科満床のため、患者Fを他病棟に緊急収容05:55 患者Dの出産に立ち会う その後も、患者Fの対応におわれる08:30 当直者2名は一睡もしないまま、1名は外来など通常業務につき、他1名は代務先の医療機関において24時間勤務に従事 トラック業界でこのような勤務体制をしいたら、経営者は処罰されるだろう。でも、人命を預かる医師をこのような勤務に従事させ、堂々と公表しても院長は処罰されることはない。トラックの運転手が過労で事故を起こすことは許されないが、医師が過労で事故を起こそうがかまわないと言うことなのだろう。 これほどの激務をこなしていたというのに、今回の件で奈良県立医大には多くの抗議の電話があったという。考えてみれば分かることだが、今回の事例でも、搬送先を探していた救急隊は他の救急要請には対処出来なかったはずだ。他の患者にかかりきりになっているときには、新たな患者の診療は出来ないと言う、当たり前のことがどうして理解出来ないのだろう。 そもそもこれらの当直医の勤務状況は当直ではない。当直というのはちょっとした雑用や、滅多にない緊急事態に備える勤務を言うのだ。毎度毎度診療に追われるのは立派な夜勤だ。交代性で行われなければならないのだ。 たとえば救急隊と比べてみよう。地域によって違いはあるかも知れないが、私の居住地では、救急隊の勤務は24時間連続勤務だ。出動しなければ仮眠も可能だが、それでも24時間全てが勤務時間だ。だから、三日に一日だけ働けばよい。一方医師は、たとえ一睡もしなくても当直なので勤務ではないと見なされる。だから連続30時間以上の勤務が放置され、その前後にも休日はない。 既に人間の限界を超えるような勤務態勢を放置して、それでも不十分だとしたら、体制そのものを抜本的に変えなければ立ちゆかないことくらい、行政も、メディアも、国民も、理解しよう。一度完全に崩壊しなければ理解出来ないのだろうが。
2007.09.05
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人質を 取って白状 させる気か ロハス・メディカル・ブログの福島県立大野病院事件第七回公判(1)を見ると、権力が他人の不幸を何とも思っていないことがよく分かる。でも、これは序の口なのだそうだ。このエントリのシリーズは現在(4)まで発表されているが、未だに検察の本当の恐ろしさは明らかにされていない。以下は(1)からの引用である。弁護人 逮捕拘留されたのはいつですか。加藤医師 昨年2月18日です。弁護人 検察に送致されたのは翌日ですか。加藤医師 はい。弁護人 起訴されるまで21日間拘留されたのですか。加藤医師 はい。弁護人 当時、何人ぐらいの患者さんを担当していましたか。加藤医師 10人くらいです。弁護人 手術の予定はありましたか。加藤医師 はい。3月はじめに入っていました。弁護人 外来では何人の患者を診察していましたか。加藤医師 日に20人から30人くらいだと思います。弁護人 逮捕拘留されて引き継ぎはできましたか。加藤医師 いえ、突然の逮捕でしたし、接見も認められなかったので。弁護人 患者さんが気がかりではありませんでしたか。加藤医師 はい、気がかりでした。弁護人 早く拘留を解かれたいと思いましたか。加藤医師 はい思いました。弁護人 解かれたかった理由は何ですか。加藤医師 患者さんの診療をしなければと思いました。弁護人 お子さんはいらっしゃいますか。加藤医師 はい、一人おります。弁護人 お子さんの誕生日はいつですか。加藤医師 昨年の2月25日です。弁護人 逮捕拘留された時、奥さんは妊娠何週でしたか。加藤医師 〓(聞き取れず)週で、いつ生まれてもおかしくない状況でした。弁護人 予定日はいつでしたか。加藤医師 2月22日です。弁護人 誰が赤ちゃんをとり上げる予定でしたか。加藤医師 私がとりあげる予定でした。弁護人 お子さんが生まれたと聞いて、どんな気持ちになりましたか。加藤医師 嬉しかったんですけれども、とりあげることも会うこともできず悔しい感じがしました。弁護人 早く会いたかったのではありませんか。加藤医師 はい、早く会いたかったです。強制調査に着手する時期を第一子出産の時期と重ね、精神的に揺さぶろうとしたのでないかそんな疑念を抱かせる弁護側の先制パンチである。そして、この後の公判の展開を経験した身からするとその時期を狙ったに違いないと確信する。敵の最も嫌がることをするのが戦いのセオリーとはいえ「処罰してやる」という強烈な意思を感じそして、巻き添えを食う人がいても知ったことではないという態度に国家権力の傲慢さも感じ、背筋の凍る思いがする。 これを読むと、検察が目指しているのは、実際に犯罪が行われたかどうかを明らかにすることではなく、犯罪を認めさせることだと言うことがよく分かる。出産を控えた臨月の妻を人質に取り、主治医を失ってうろたえる患者を人質にとって自白を迫る。江戸時代の拷問と何が違うのだろう。 ロハス・メディカル・ブログの記事は相当長い。でも読むだけの価値はある。是非読んで欲しい。
2007.09.04
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