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無罪でも 忘れられたら 敗北だ 福島県立大野病院事件第四回公判が行われた。傍聴券を求めて並ぶ人が激減したらしい。回数を重ねるごとに「事件」が風化するのは世の常だ。でも、この裁判の行方に医療の未来を託している医師は多いだろう。簡単に言えば、「これが有罪になるのなら、辞めよう」と思っている医師は少なくないということだ。医療の崩壊は一気に起きるということでもある。 今回は引用はしない。報道より正確で詳しい情報が見られるからだ。できるだけ多くの人にこの「事件」の記憶を残してほしいと思う。結審して無罪になったとしても、メディアの扱いは小さいものだろう。そのころには多くの人は「事件」そのものを忘れているに違いない。 でも、多くの医師にとってはトラウマだ。これからずっと、このトラウマを背負って診療をするのだ。このことを患者にも理解してほしいと思っている。リンク先を見てほしい。福島県立大野病院事件第四回公判(1) 福島県立大野病院事件第四回公判(2) ミラーサイト
2007.04.30
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誤診だと 裁くお方の 誤審です 病気は教科書通りの症状を呈するとは限らない。と言うより、普通は教科書通りのわかりやすい症例なんて希なのだ。実際の医療というのは、限られた情報の中で試行錯誤で診断をつけていくのだ。正解にたどり着くまでは誤診の連続なのだ。1億3100万円支払い命令 岐阜・中津川市民病院の医療過誤訴訟 記事:毎日新聞社 【2007年4月26日】 岐阜・中津川市民病院の医療過誤訴訟:1億3100万円支払い命令----名古屋地裁 岐阜県中津川市の男性(45)が99年、ヘルペス脳炎で重度の後遺症を負ったのは、中津川市民病院の医師の診断が適切でなかったためとして、同市を相手取り約2億2100万円の損害賠償を求めた訴訟で、名古屋地裁は26日、1億3100万円の支払いを命じた。永野圧彦裁判長は「男性の意識障害による異常行動を精神疾患と判断し、脳炎の可能性を十分に調べなかったのは医師の過失だ」などと述べた。 判決によると、男性は99年5月、高熱と衣服を何枚にも重ね着するなどの異常行動が見られたことから、同病院の神経内科を受診し、入院した。男性は入院後も熱が下がらず、会話が成立しない状態となり、02年3月、ヘルペス脳炎による高次脳機能障害が固定したと診断され、現在も全く働けない状態という。【月足寛樹】 ◇中津川市民病院の口脇博治病院長 判決文を十分検討して対応を決めたい。 医療の現実として誤診は避けられないし、たとえ正しい診断がついたとしても、後遺症なくヘルペス脳炎が治癒したとも限らない。高次脳機能障害の原因は医師ではなく、あくまでヘルペス脳炎という病気なのだ。診断や治療がうまくいかないからといって、1億3100万円はあんまりだ。病気になったことも後遺症が残ったことも気の毒ではあるけれど、だからといってすべての責任を医師に負わすのはあまりに不合理だ。このようなことの繰り返しが、確実に医療を崩壊させている。産科・小児科の崩壊が話題になっているが、最近は内科医が逃散し始めている。ミラーサイト
2007.04.28
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肺塞栓 脳梗塞と 間違うか? 今日紹介の記事は本当に意味不明。記事を読んでも何が起きたのか、おおよそのことすらわからない。たぶん書いた記者自身わからないのだろう。 「落ち度ない」 病院側争う姿勢 前橋の病院 記事:毎日新聞社 【2007年4月25日】 前橋の病院処置ミス損賠訴訟:「落ち度ない」 病院側争う姿勢----初弁論 /群馬 善衆会病院(前橋市二之宮町)で手術を受けた沼田市の女性(当時54歳)の遺族が、病院と3人の医師を相手取って慰謝料など総額約6700万円を求めた損害賠償の第1回口頭弁論が24日、前橋地裁(渡辺和義裁判官)であった。病院側は「落ち度はない」とする答弁書を提出。原告の請求棄却を求め、全面的に争う姿勢を示した。 訴状によると、女性は足の手術後、肺に血栓が生じたが、担当医師は呼吸困難などの症状から脳梗塞(こうそく)と診断。特に検査しないまま、女性は手術の2日後に肺栓塞症で死亡した。【鈴木敦子】 記事にするなら、どのような病気やけがで手術をしたのかくらい書けばいいのにと思う。おそらくは骨折のために手術をしたのだろう。骨折というのは安静にしなければならないので、足の静脈に血栓ができやすいのだ。その血栓が肺に飛ぶと、肺塞栓を起こす。サッカーの高原選手も飛行機での移動時になった、いわゆるエコノミー症候群である。肺塞栓症になることは、一定の確率で起こりうるもので、仕方がないことなのだ。 さらに分からないのは、呼吸困難などの症状から脳梗塞と診断したということ。呼吸困難ならむしろ肺塞栓の方を疑うだろう。何をわざわざ脳梗塞を疑うというのだろう。麻痺などによる呼吸障害や、中枢性呼吸抑制で脳梗塞を疑うというのなら分かる。でも、呼吸困難という言葉から医師が想像する状態で肺塞栓よりも脳梗塞を疑う医師がいるとも思えない。 たぶん、医学知識のない人の書いた意味不明の訴状を、医学知識のない記者が分からないまま記事にしたのだろう。分からなければ記事にしなければいいのに。情報になってないぞ!ミラーサイト
2007.04.27
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判決も 70分で 出せるのね? 4月13日に「加古川市民病院の患者死亡 3900万円、市に支払い命令」と言う記事について書いた。このときは70分の遅れがなければ90%助かっていたという認定のおかしさについてだけ述べたが、そもそも70分手をこまねいていたわけではないと思ってもいた。そのあたりについて新たな情報をもたらしているブログを紹介したい。 健康、病気なし、医者いらずを見て欲しい。ネットの情報は玉石混淆だから、必ずしも信用がおけるとは限らない。でも、このブログの著者のいつもの発言や書かれている内容から見て、bambooは信用に値すると判断している。 重要だと思われるところだけ引用してみよう。新聞記事では、 >担当医師は同0時40分ごろ、急性心筋梗塞と 診断して点滴を始めたが、症状が変わらないため、 同1時50分ごろ、効果があるとされる 経皮的冠動脈再建術(PCI)が可能な 同県高砂市の病院への転送を要請した。 って書いていますけど。 実際は、「点滴をして症状が変わらない為」、 ではなく、診断した「直後」に搬送しようとして いろんな病院に電話をした。 しかし、いろんな病院に電話したけど。 受け入れることが難しい、って事で 最終的に70分の時間がかかった。 という事が真相です。 搬送先にいろいろ電話をして。 全部断られて、一巡してもう一度、高砂市民病院 (神鋼加古川?)に2回目の搬送要請の電話をしたのが、 13:50という事です。 そして多分一旦電話を切るか保留されて返事待ちでしょう。 ようやくOKが出たらそれから救急隊を呼びます。 この時点で少なくとも14時は回っているでしょう。 救急隊が14時15分に着いたとして、 ストレッチャーに乗せる14時半頃から痙攣、頓死。 真実はそういう事ですよ、おそらく。 他の病院に断られて、結果的に時間がかかっても、 それは、全部現場で働いている医師の責任。 そういう事ですか、この判決。 どのようなことにも時間はかかります。患者が生きるか死ぬかと言うとき、あっという間の気がしても、かなりの時間がかかっているものです。このときも当事者にとってはあっという間の出来事だったでしょう。それでも満額賠償の敗訴だなんて、納得出来ないでしょうね。このような判決を出す判事は、最終結論が出るまで数十年かかる裁判制度というものを、どのように考えているのでしょうか。訂正 2010/01/08 引用文の内容は裁判での事実認定とは異なるようです。社会的には公的な記録と伝聞とでは信頼性に差がありますから、70分の間に転送依頼をしたかどうかについては判断を保留します。医療への期待が過度であるとの判断はそのままです。 ミラーサイト
2007.04.25
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大往生 今となっては 死語なのか いくら平均寿命が延びたとは言え、人は何時か死ぬ。歳を取れば身体のあちこちにガタが来て、些細なことで怪我をすることはある。怪我をすれば褥瘡だって出来るだろう。元々何時亡くなってもおかしくない状況で生きているのだ。介護さえしていれば、人は何時までも健康に生きられるという愚かな誤解は、いったいいつから広まったのだろう。けが防止の義務違反認定 老健施設側に賠償命令 記事:共同通信社 【2007年4月23日】 東京都足立区の老人保健施設や病院で、認知症の女性が骨折した上、床擦れになり、その後、感染症で死亡したのは適切な処置を怠ったためとして、遺族が施設と病院を運営する医療法人に計約6800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は20日、医療法人に計約800万円の支払いを命じた。 杉原則彦(すぎはら・のりひこ)裁判長は、骨折の一部について施設入所中に発生したと認定。「自力歩行できない女性がけがをすることを防止する注意義務に反した。この骨折が床擦れの発生と悪化に影響した」と判断したが「感染症発症を示す検査結果がない」として死亡との因果関係は否定した。 判決によると、女性は1999年8月、当時89歳で同施設に入所。同9月に左足の骨折が判明し、床擦れが悪化したことから病院に移った。その後、別の病院への転院を繰り返すなどして、2001年5月、死亡した。 そもそも何時骨折したのか判らなかったようだ。高齢になると女性の骨は非常に脆くなる。転んだだけで骨折することは良くある。今回は自力歩行も出来なかったようなので、転倒ではないだろう。気がつかなかったのであれば、特に骨折するような状況でなかったのに骨折したのに違いない。被告の責任はいくつかあった骨折の一部であったようなので、本当に些細なことで骨折するような状況だったのだろう。ベッドから下りるだけで骨折することだってあるし、体位を変えただけで骨折することもあるのだ。歳を取るとは、そう言うことなのだ。 骨が脆くなっている人の怪我を完全に防止することは不可能だ。動かさなければ褥瘡(床ずれ)が出来るし、動かせば骨折することもある。介護にも限界はあって、払うべき注意を払っていても、老衰目前の人には何が起きるか判らない。まして今回の対象は認知症だ。本人の協力は得られない。危険防止のための行為だけで骨折することもあろう。 平均寿命を大きく超えた認知症の老人が健康を害し、亡くなったからといって、6800万円もの損害賠償を請求する神経が bambooには判らない。卒寿を超えれば大往生と言ってもいいんじゃないか。今回は死亡との因果関係を認めず、賠償額は大幅に減額されたとは言え、賠償責任そのものは認めた。歳を取って衰えた身体は些細なことで壊れる。そう言う常識が、裁判官にすらないのはどうしたことだろう。 ミラーサイト できました。しばらくしたら、使い勝手の良い方に一本化するつもりです。
2007.04.24
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言われたら すぐに鳴きます bambooは やっぱり患者の要望を無視するのはトラブルの原因になるんだろうね。ここを見ると、骨盤位のうち自然分娩は10%くらいに行われていて、特別無茶なことをしたわけではないのだろうに。 高裁判決 両親「実情と乖離」 説明との因果関係認めず 記事:毎日新聞社 【2007年4月20日】 国立病院損賠訴訟:高裁判決 両親「実情と乖離」 説明との因果関係認めず /埼玉 独立行政法人国立病院機構「西埼玉中央病院」(所沢市)で出産直後に亡くなった男児の両親が、死亡は「逆子なので帝王切開を希望したのに自然分娩(ぶんべん)をさせられたのが原因」として、病院側に約8400万円の賠償を求めた訴訟。東京高裁は19日、「自然分娩のリスクの説明が不十分だった」として医師の説明義務違反を認め、病院側に1100万円の支払いを命じた。しかし、両親が認定を求めた死亡との因果関係は「十分な説明をしても両親が帝王切開を選んだとは言い切れない」と否定した。両親は判決後「患者の置かれた実情や社会常識と乖離(かいり)している」と憤った。 両親はこれまで一貫して「帝王切開の希望を認めないのは患者の自己決定権侵害」と訴えてきた。病院側は「医師の裁量権」を主張し、01年のさいたま地裁判決は「医師は患者に対し優位にある」との背景から権利侵害を認めた。だが、05年の最高裁判決は権利侵害に言及せず、医師の説明義務違反を認定し、高裁に審理を差し戻した。 こうして至った今回の控訴審。争点は医師の説明義務違反と胎児死亡との因果関係だった。 両親は「医師は『大丈夫』といって私たちに選択肢を与えず出産方法を決めた。責任を問われるべきだ」と主張。一方、病院側は「妊婦には(転院など)選択の機会があったのに(通入院を続けて)自然分娩を受け入れたかのような姿勢を示した」と反論していた。 判決は「自然分娩のリスクなどを十分に説明しなかった」などと医師の説明義務違反を認定し、両親の要望にも医学的根拠があるとした。しかし、死亡との因果関係は▽仮に十分な説明をしても両親が帝王切開を選択したとまでは言い切れない▽両親は医師が自然出産すると知りながら転院しなかった----などと否定した。 両親は判決について「妊婦(患者)の置かれている実情を無視している」と指摘する。当時、胎児は大きく(出産時約3800グラム)なっていた上に逆子のため、破水の危険があった。入院中の母親は絶対安静が必要な状態だった。両親は「胎児を危険にさらしてまで、転院しようとする親がいるだろうか」と振り返り問いかける。「医師は家族にかけがえのない命に最善を尽くしたのか、患者の希望がかなわない医療は正しいのか」。 一方、病院側は判決後「患者と医師の意思疎通が図られるよう、より一層努力する」とコメントした。 ◇仏壇に遺影もなく 東京都内の自宅にある仏壇=写真=には、子どもらしいお供え物も遺影もない。長男は産声をあげることも目を開くこともなかった。4時間しか生きられなかった長男に「思い出の品は残らなかった」(両親)という。仏壇には名前を記した位牌(いはい)と一片の骨だけが大切そうに置かれていた。 長男は94年5月12日、大学教員の父(45)と主婦の母(44)の元に生まれた。不妊治療の末の第1子。両親は集中治療室で数十秒間、体に触れた。そして母は病室のベッドで、冷たくなった長男と並んで写真を撮り、父は自宅で一晩、布団に寝かせた長男に添い寝した。我が子にしてやれたのはそれだけだった。 「何もしてあげられなかった。やめるわけにはいかない」。両親はそんな思いを抱いて闘い続けている。【村上尊一】 13年前の状況は判らないが、今でも1割に自然分娩が採用されている以上、自然分娩自体が誤りだというわけではないだろう。説明義務違反で1100万円なら十分な額だと思うがどうだろう。通常のお産であれば、陣痛がついてから入院するものだから、「胎児を危険にさらしてまで、転院しようとする親がいるだろうか」と言うのは根拠がない。何が何でも帝王切開が良ければ、やはり転院すべきだったのだ。帝王切開にもリスクはあるけどね。悪い結果が出てからあれこれ言うのはフェアじゃない。 一方、どうして医師は帝王切開をかたくなに拒んだのだろう。現在は麻酔科指導病院に認定されているようだが、当時は麻酔科医が居なかったのだろうか。帝王切開の時の脊椎麻酔は血圧が下がりやすく、結構危険なのだ。自分で麻酔をして、その後は看護師に患者の全身管理を任せ、自分は手術をするということは、今でも行っている病院もあるが、やはり危険だろう。何かあれば母児ともに死亡という最悪の結果もあり得る。実際にそうなれば、やはり訴えられただろう。 今ならインフォームドコンセントの概念が浸透しているから説明しない医師はいないだろうが、13年前なら「黙って俺に任せておけ」という医師は珍しくなかった。患者は今でも判らないからお任せしますという人の方が多い。日本はそう言う国なのに、説明義務を一方的に医師に課するのは無茶じゃないか。しかも13年前に。ミラーサイト できました。しばらくしたら、使い勝手の良い方に一本化するつもりです。
2007.04.21
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不起訴でも つらい気持ちは 分かります 患者を救えなかったとき、医者だってつらい。あの時こうしていれば、あるいはああしていたら、考え出すときりがない。でも、たとえ理想的な医療を施していても、それなりの所見がなければ正しい診断は出来ない。ましてや、いつでも理想的な医療をするなんて無理だ。亡くなった患者に対しては心からお悔やみを申し上げるが、関わった医師の罪を問うのは無茶だ。たとえ不起訴になったとしても、時間的にも心理的にも経済的にも負担は大きかっただろう。お察しします。予測不可能と医師不起訴 奈良の妊婦死亡で地検 記事:共同通信社 【2007年4月19日】 奈良地検は18日までに、出産時の処置のミスで女性を死亡させたとして業務上過失致死容疑で書類送検された奈良県大和高田市の市立病院の30代の男性産婦人科医を、嫌疑不十分で不起訴処分にした。 地検は、子宮破裂による出血が超音波検査で確認できず、死因の出血性ショックを予測できなかったと判断した。 2004年10月、30代の女性が病院で出産中、心拍数が上昇するなど容体が急変し死亡。医師は心拍数を安定させる投薬をしたが原因を特定せず、適切な治療をしなかったとして書類送検されていた。 奈良県の産科崩壊の先駆けとなった事例。この後の大淀病院の事例でとどめを刺された。不起訴になったこと自体は喜ばしいと思うが、たとえ不起訴でも、嫌疑をかけられるだけで計り知れない苦労があっただろう。民事についてはこれから考えるとして、刑事に関しては、故意以外のケースでの介入を控えて欲しい。これだけはすぐにでも対応して貰いたい。 ミラーサイト出来ました。しばらくしたら、使い勝手の良い方に一本化するつもりです。
2007.04.20
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麻酔科が 促さなけりゃ 止血せず? 国立ガンセンター中央病院と言えば日本の癌治療の総本山だ。そこの婦人科の科長であれば、日本の婦人科の重鎮だろう。決して論文だけは書くけど手術は出来ない教授連のようなことはないと思う。腕が立つからこそ、血管にへばりついたリンパ節を郭清しようとしたのだろう。上手く行けばそれだけ生存の可能性が高くなるが、時には出血で命を落とすこともある。どちらに転ぶか判らないが、トータルでメリットの方が多いと思えば危ない橋も渡る。これが医療だ。一回の結果が悪かったから断罪されるのでは医療は出来ない。執刀医ら2人を書類送検 子宮摘出手術の死亡事故で 07/04/17 記事:共同通信社 国立がんセンター中央病院(東京都中央区)で2002年8月、子宮摘出手術を受けた東京都八王子市の主婦=当時(47)=が手術翌日に死亡した事故で、警視庁築地署は17日までに、業務上過失致死の疑いで執刀医(65)と麻酔医(44)を書類送検した。 調べでは、執刀医は骨盤内のリンパ節をはがす際、静脈を傷つけ、大量出血したのに十分な止血をしなかった疑い。麻酔医は、執刀医に十分止血するよう促さなかった疑い。 主婦は子宮がん治療のため02年8月8日、同病院に入院。同12日、手術中に大量出血し、翌日、多臓器不全などで死亡した。 書類送検くらいたいしたことは無いという人もいるが、その前に何度も取り調べを受けて、相当うっとうしい思いをしたのではないかと推察する。今回ビックリしたのは麻酔科医まで送検されていること。十分止血するよう促さなかったって何だ?大量出血しているときに促されないと止血しない医者がいるものか。これが輸血の遅れで送検なら、ことの是非はともかく理解は出来る。でも、止血を促さなかったとはねえ。具体的にどうしたら良かったんだろう。「血を止めてー」と叫べば良かったのだろうか。しかし、20以上も歳の離れた日本の重鎮に向かって言えるか?
2007.04.18
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ドレイには 感謝する人 いないだろう 以下の記事は昨日配信されたものだが、m3com の医師掲示板ではすでに218のコメントがついている。もちろん批判のコメントだ。今まで勤務医を絞り抜いてきたが、これ以上絞れないと見た厚労省は開業医も絞ることにしたようだ。今まで勤務医は使命感に燃えて犠牲的精神で働いてきた。自分ではボランティアのつもりであった。でも、患者もメディアも厚労省もドレイだと思っていたのだ。今ドレイが文句を言い始めたので、メディアが吃驚している。開業医は日曜や夜も診療を 携帯で連絡取れるように 今後の医療政策で厚労省 07/04/16 記事:共同通信社 厚生労働省は13日、開業医に対し地域で果たすべき役割として、日曜日や祝日、夜間も診療することなどを求めた今後の医療政策に関する報告書案をまとめた。 2030年には75歳以上の後期高齢者が、現在の2倍近い2260万人に増えるとみられており、現在は時間外や日曜・夜間の診療を行っている診療所が減少するなど身近な地域での医療に不安があると問題提起。 このため、開業医について(1)地域で在宅当番医制のネットワークを構築、日曜日など救急センターに交代勤務(2)いつでも携帯電話で連絡が取れる(3)午前中は外来、午後は往診、訪問診療(4)みとりまで行う在宅療養支援診療所を含めグループによる対応で24時間体制の確保―といった取り組みが期待されるべきだと提言している。 病院と診療所の役割分担については、診療所は1次的な地域医療の窓口として患者の生活を支えながら、急な発症への対応を診療所同士や病院との連携で実現。急性期の病院は、質の高い入院医療が24時間提供されるよう原則、入院治療と専門的な外来診療のみとする。 報告書案は、都道府県が08年度までに定める医療計画づくりに役立てるようまとめた。▽在宅療養支援診療所 在宅療養支援診療所 長期入院患者の退院後の受け皿となる在宅での医療を推進させるため、2006年度の診療報酬改定で新設された制度。24時間365日の対応が可能なため、在宅でのみとり介護(ターミナルケア)の中心的な役割を果たす。現在、全国で歯科を除く一般診療所は約9万9000あり、そのうち約9400の診療所が届け出ている。 いい加減救急医療を片手間にやるという前提を止めたらどうだ。日常の診療をしている医師に夜間の救急をさせるのではなく、3交代で救急専門に診療するのでなければ体が持たないだろう。そもそも急性期の病院だって質の高い入院医療が24時間提供出来る訳じゃない。夜には専門医はいないのだ。そして、昼にだって本当の意味での専門医がそろっている訳じゃない。最近は専門領域が細分化し、内科医と言ったって専門はバラバラなのだ。全ての専門家を十分な数そろえている病院なんてほとんど無いだろう。 世界的に見れば、日本の医療は格安で非常に旨く行っているのだ。常に最高の医療を施すことは無理でも、そこそこの医療は出来ていたのだ。でも、いつでも何処でも最高じゃなければ非難され、民事ばかりか刑事罰まで恐れなければならない状況では、自分の専門領域ですら診療に不安を覚える。まして専門外の患者を診るのは苦痛以外の何者でもない。このような状況に追い込めば救急医療が崩壊するのは当然だ。何でそこそこの医療で我慢しようと言わないのだろう。軽症患者は我慢して、本当に緊急に診療が必要な重症患者だけが救急医療を受け、夜間には専門医でなくても我慢し、ろくな検査を受けられなくても我慢し、大切な医療資源をみんなで維持しようと、どうして言わないのだろう。もう崩壊は目の前だというのに。
2007.04.17
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科学の眼 脳性麻痺にも 使ってね 3月にも書いたが、脳性麻痺の原因を帝王切開の遅れと結びつける迷信が後を絶たない。ただでさえ瀕死の産科医療を潰してどうしたいのだろう。 新生児脳性まひ1億2000万円賠償 青森・黒石病院の医療過誤訴訟 07/04/02 記事:毎日新聞社青森・黒石病院の医療過誤訴訟:新生児脳性まひ1億2000万円賠償----地裁弘前支部 青森県黒石市の市国保「黒石病院」(村田有志院長)で生まれた長男(3)が脳性まひになったのは医師が適切な処置を怠ったためとして、同市内の20代の夫婦と長男が市と医師を相手取り約1億3000万円の損害賠償を求めた訴訟で、青森地裁弘前支部(加藤亮裁判長)は30日、同市と医師に計約1億2000万円の支払いを命じた。 判決などによると、03年8月に、同病院で生まれた際、長男は仮死状態でけいれんを起こしていた。その後、別の病院に転送され、低酸素性虚血性脳症による脳性まひと診断された。加藤裁判長は「医師が妊婦と胎児の状態を経過観察する義務を怠った。早期に帝王切開をしていれば脳性まひを発症しなかった可能性が高い」と指摘した。 原告の夫婦は「判決の瞬間、頭の中に長男の顔が思い浮かんだ。病院側は控訴しないでほしい」と話している。黒石病院は「判決を厳粛に受け止める。弁護士と協議し対応を決めたい」とコメントを出した。【太田圭介】 自分の子が脳性麻痺となったら誰かのせいにしたいのはよく分かる。でも、裁判が根拠もなく誰かのせいにして終わりじゃまずくないか。医学的には、脳性麻痺の原因としてお産の関わる割合はわずかだ。「帝王切開をしないからだ」と言われ続けて帝王切開の割合は飛躍的にのびた。でも、いっこうに脳性麻痺は減る気配を見せない。帝王切開をしないから脳性麻痺になる訳じゃないからだ。こんな事、いい加減に判って欲しい。黒石市が控訴へ 黒石病院の医療ミス訴訟 記事:毎日新聞社 【2007年4月11日】 黒石病院の医療ミス訴訟:敗訴、黒石市が控訴へ /青森 黒石市国保黒石病院(村田有志院長)で03年8月に生まれた長男(3)が脳性まひになったのは医師が適切な処置を怠ったためとして、同市内の20代の夫婦と長男が市と医師を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、同市は10日、市などに約1億2000万円の支払いを命じた青森地裁弘前支部判決(3月30日)を不服として、仙台高裁秋田支部に控訴する方針を決めた。 市側代理人の森山満弁護士は「1審判決の過失認定方法は乱暴で到底受け入れられない。長男の容体などについても事実関係を争う」と控訴理由を説明した。 1審判決で地裁弘前支部は「(黒石病院が)早期に帝王切開していれば、脳性まひを発症しなかった可能性が高い」との判断を示した。【太田圭介】 控訴するのは当然だ。今度こそ科学的な視点で判断して欲しい。気の毒だからと言って、事実を曲げてまで補償する必要はないのだ。援助が必要ならば社会保障制度を充実させるべきだろう。
2007.04.15
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最善の 医療でなけりゃ 医療ミス いつでも何処でも誰にでも、最先端の医療のできる国はない。ある国では王侯貴族だけに許された特権であったり、別の国では金でそのようなサービスを買うのだ。日本では、今までは運任せであった。設備の整った専門家の居る施設にたどり着いた人であれば、誰でも最先端の医療を受けられた。でも、そのような施設にすべての患者を送りつけたら、どうなるか判りますよね?加古川市民病院の患者死亡 3900万円、市に支払い命令 記事:毎日新聞社 【2007年4月11日】 損賠訴訟:加古川市民病院の患者死亡 3900万円、市に支払い命令 /兵庫 加古川市民病院で診断を受けた男性(当時64歳)が死亡したのは病院の対応に問題があったためとして、遺族4人が病院を運営する市に慰謝料など計約3900万円の損害賠償を求めた訴訟で、神戸地裁は10日、市に全額の支払いを命じた。橋詰均裁判長は「担当医師の過失と死亡には因果関係があった」とした。 判決によると、同病院は急性心筋こうそく患者への最善の治療法である経皮的冠動脈再建術をする設備がないのに、03年3月30日、同病院の医師が男性を急性心筋こうそくと診断した後、約70分間、設備の整った他病院に転送要請をしなかった。男性は同日、死亡した。判決は医師が転送する義務を怠ったと認定。「経皮的冠動脈再建術を受けることができれば、男性は90%程度の確率で生存していたと推認できる」と指摘した。 同市は「主張が受け入れられず、非常に厳しい判決だと受け止めている。今後の対応は判決を検討のうえ判断したい」とコメントした。【酒井雅浩】 70分の遅れがなかったら90%生存していたという根拠はあるのだろうか。まあ、あるのだとしよう。でも、あったとしても「発症からある時間内に経皮的冠動脈再建術を行った場合の生存率が90%」というものだろう。そのような根拠で今回のケースでも生存率は90%であったと言えるだろうか。 早期に経皮的冠動脈再建術を行った症例の生存率が90%だったとしても、それらの患者が早期に治療を受けなかった場合、すべてが死亡したわけではないだろう。例えば3時間以内に治療すると90%の生存率だったとして、それから70分治療開始が遅れた場合の生存率が60%だったとしよう。すると、今回のケースで70分の遅れがなかったときの生存率はどれくらいだろうか。 100人の患者が居たとして、3時間以内に治療すると10名死亡、90名生存。 70分遅れると40名死亡、60名生存。 今回の症例は「70分遅れると40名死亡」の中にはいる。遅れずに治療を受けていれば40人のうち30名が生存していたことになるから、生存していた確率は75%だ。もちろん条件はすべて架空のものだから、正しいというわけではない。でも、裁判でこのような検証は為されたのだろうか。 bambooは疑わしいと思っている。そもそも治療成績なんて、施設や術者によってばらつきがあって、とてもみんなが合意できるようなものはないのだ。(治療成績の悪いところは発表しないので、公表された成績は実態より良いだろう) 餅は餅屋と言う通り、確かに専門施設に送った方が治療成績は良いだろう。でも、請求額の満額の賠償命令を出すほど酷い医療だったというのだろうか。 この件との関係は不明だが、今、加古川市民病院に循環器科はない。
2007.04.13
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どうすりゃイイのさこの私 夢は夜開く 近頃では手術は失敗しないと思っているようだ。確かに以前と較べたら、技術も道具も進歩しているから、失敗する頻度は減っているだろう。でも、人の身体は千差万別。同じようにやっても余分なところを傷つけることはあるのだ。手術ミス、女性死亡 岐阜県総合医療センター 記事:毎日新聞社 【2007年4月11日】 医療事故:手術ミス、女性死亡----岐阜県総合医療センター ◇県調査会「損傷が原因の可能性」 岐阜県総合医療センター(岐阜市野一色)は10日、同市内の女性(70)に対して昨年8月に行った胃がん手術で門脈と呼ばれる血管を損傷するミスがあり、3日後に女性が死亡していたことを明らかにした。同センターの渡辺佐知郎院長は「死因との因果関係は明確ではないが、あってはならない過失。家族には誠意を持って対応する」と話した。 同センターによると、手術は昨年8月23日に行い、40代の外科医が執刀した。がんが転移している可能性のあるリンパ組織を取り除く際に誤ってハサミで門脈を損傷した。縫合して止血したが3日後に腹腔(ふくくう)内出血があり、緊急手術をしたが助からなかったという。 県は第三者機関の医療事故等調査会を設置して調査した。調査会は▽門脈断裂が腹腔内出血の原因となった可能性がある▽胃がん手術での抗凝固薬の投与が腹腔内出血を助長した可能性がある----などの答申を出したという。【宮田正和】 門脈というのは消化管からの静脈が集まって来る太い静脈で肝臓に入る。癌が転移している可能性のある門脈近くのリンパ節を郭清しようとして傷つけたのだろう。技術が拙くても門脈自体が脆くても起こりうる。一方的にミスと決めつけるのはどうだろう。修復して3日も経ってからの出血というのも腑に落ちない。出血源は明らかになっているのだろうか。 抗凝固薬の関与が取りざたされているが、抗凝固薬は肺塞栓症の予防のために投与されたのだろう。もし投与せずに肺塞栓症で亡くなっていたらどうなったのだろう。たぶんこうなっていたのだろう。遺族が岩手医大を提訴 検査怠り死亡と主張 記事:共同通信社【2007年4月11日】 がんの手術後に肺塞栓(そくせん)で死亡したのは病院が検査を怠ったためだとして、死亡した盛岡市の男性=当時(30)=の母親と妹が10日までに、岩手医大(盛岡市)に慰謝料など約1億円の損害賠償を求める訴えを盛岡地裁に起こした。 訴状によると、男性は2003年4月23日、岩手医大で精巣がんの摘出手術を受けたが、25日朝にけいれんを起こして転倒、頭を強打し同日昼ごろ死亡した。その後の解剖で、死因は血栓が肺に入り肺塞栓を引き起こしたためと分かった。 原告側によると、肺塞栓は手術による組織損傷やがんなどの悪性腫瘍(しゅよう)、肥満などが合併すると発生リスクが高くなるという。 原告側は「男性はがんの摘出手術を受け、しかも肥満体質だった。病院は手術前後に肺塞栓の発症に注意し、検査や観察をすべきだったのに怠った」と主張している。 岩手医大は「病院に責任はないと考えており、全面的に争うつもりで弁護士と相談している」としている。 例えミスなど無くても不幸な合併症は起こるし、すべての医療行為が順調に行われるわけではない。時にはのるかそるかの修羅場をくぐらなければならないのが医療だ。良い結果に終わることも不幸な結果に終わることもある。そりゃ出来るだけ良い結果を望むのは我々も同じだが、我々だって神様じゃない。ファインプレーもすればエラーもする。ファインプレーの時に億という金をくれるのでなければ、エラーの時に億という金を請求するのは阿漕じゃないか?(この事例がエラーだと言っているのではないよ)頼むから、過剰な期待は持たないでくれ。
2007.04.12
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医者ならば 何でも治せ 仕事だろ もうイヤ 急性喉頭蓋炎は恐ろしい病気である。見る見る気道が狭くなり、あっという間に窒息してしまうこともある。実際に呼吸困難が来なければ疑いもしないだろう。初期に診断することは困難だ。「誤診から重度障害に」 甲斐の女性が提訴 07/04/10 記事:毎日新聞社 損賠訴訟:「誤診から重度障害に」----甲斐の女性が提訴 /山梨 甲府市朝日3の社会保険山梨病院(飯田龍一院長)で治療を受けた甲斐市内に住む女性(70)が重度の障害を負ったのは、医師の対応の遅れや診察の誤りが原因として、同病院を運営する社団法人全国社会保険協会連合会(東京都港区)を相手取り約6800万円の損害賠償を求め甲府地裁に提訴した。 訴状によると、女性は03年12月23日午前7時20分ごろ、嘔吐(おうと)の症状を訴え同病院へ診察に訪れた。点滴などの応急処置を受けたが、当直医が交代する間の25分間、医師と看護師が不在となり、交代した別の当直医がCT(コンピューター断層撮影)スキャンで検査した結果、気道が9割ふさがっているのが確認された。女性は耳鼻咽喉科の医師により、のどが腫れる「急性喉頭蓋炎(こうとうがいえん)」と診断されたが、その後、容体が急変。約15分間にわたり呼吸が停止し、全身がまひするなど重度の障害を負った。 女性側は「初診を誤り、医師を不在にさせたために初期治療に遅れを出させたうえ、適切な治療も施さなかった」として病院側の過失を主張。同病院は「医師や看護師が不在だった時間帯はなく、適切な治療をした」と話し、争う構え。【沢田勇】 まず、患者が重度の障害を負った原因は医療じゃない。原因はあくまで病気だ。医療は力が及ばなかっただけだ。力が及ばなければ原因と見なされるのでは、救急医療は出来ない。いつでも、どんな病気や怪我でも、最初から的確な診断が出来、全て治すなんてことは出来ないからだ。 以下は記事からの推測。最初の症状は単なる嘔吐。良くある症状だ。これでいきなり診断がつくわけはない。多分徐々に呼吸困難が出てきたのだろう。それでCTを撮った。そうしたら気道閉塞があったので、耳鼻科医を呼んだ。そこで初めて急性喉頭蓋炎の診断がついた。その時には気道の閉塞は進んでいて、容態は急変した。気管挿管は困難だし、気管切開するにも時間がかかる。残念な結果ではあるが、病院のミスではなく、診断の難しい恐ろしい病気だったと言うことだ。 病院にさえ行けば、何でも治ると思うのは間違いだ。
2007.04.11
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ガス壊疽で 命あったら めっけもの 土の中にはガス壊疽の原因となる嫌気性菌がいることもあるので、農作業中の怪我は怖い。出来るだけ洗い流すことが重要なのだが、そうしたからと言って、必ず防げるわけではない。いつものように結果が悪ければ、みんな医療者側の責任だというのでは納得出来ないだろう。地裁が市に脚切断の男性に330万支払い命令(2006/10/03) デイリー東北 左脚を切断しなければならなくなったのは、八戸市民病院の医師が適切な診断と治療を行わなかったため―として、同市の男性(62)が同病院を管理、運営する八戸市に約七千 万円の損害賠償を求めた訴訟の判決言い渡しが二日、青森地裁八戸支部であった。片岡武裁判長は同病院に注意義務違反があったことを一部認め、市側に三百三十万円を支払うよ う命じた。 訴状によると、男性は一九九九年四月、農作業中の事故で左ひざ下を負傷し、同病院で手術を受けた。術後、男性の家族が「感染症の恐れがあるから調べてほしい」などと訴えた が医師は取り合わず、その後、別の医師がガス壊疽(えそ)に感染していると診断、左脚の切断手術を行った。 原告側が「不適切な治療のために切断を回避できなかった」と主張したのに対し、被告側は「医学的な過失はなかった」と全面的に争っていた。 判決で片岡裁判長は▽ひざの手術時に、血栓形成の原因となりやすい太い縫合糸を使用した▽血行障害の疑いを見過ごし、検査を実施しなかった―の二点について同病院の注意義 務違反を認定。 注意義務違反と切断手術の因果関係は認めなかったが、注意義務を尽くしていれば少なくてもガス壊疽の発生率を低下させ、感染範囲を狭められた可能性があったことを指摘し、 「切断手術をするまでに至らなかった相当程度の可能性が存在する」と結論付けた。 判決後、男性は「主張はほとんど認められなかった。今後の対応は弁護士と相談して決めたい」と話した。同病院は「判決の内容を見てから、控訴も含め検討する」としている。 いつものことだが、報道からは何も判らない。感染症の恐れとは何だろう。通常は傷の化膿のことは感染症とは言わない。でも、文脈からすると傷の化膿のことなのだろう。素人が化膿だと判るようであれば、整形外科医だって判るだろう。別に放っておいたわけではないと思うがどうなのだろう。いずれにしても、太い縫合糸は関係ないだろう。地裁の判断も、いつものことながらあさっての方を向いている。患者側の立場から意見を述べた医者のせいなのだろう。金額が安かったので、病院は控訴せず、患者側が控訴した模様。 次は高裁の判決。八戸市が判決不服、最高裁に上告へ 八戸市立市民病院損賠訴訟 07/04/09 記事:毎日新聞社 八戸市立市民病院損賠訴訟:市が判決不服、最高裁に上告へ /青森 左大腿(だいたい)切断を余儀なくされたのは、八戸市立市民病院の過失が原因として、市内の無職男性(63)が八戸市を訴えた損害賠償請求訴訟で、八戸市は6日、切断と病院側の過失との因果関係を認め、市に3200万円余の賠償を命じた仙台高裁判決(3月28日)を不服として、最高裁に上告する意向を明らかにした。原告男性側は上告しない意向を示している。 同病院の三浦一章院長は「判決は医療に過大な期待と責任を押し付け、医療現場を萎縮(いしゅく)させる。医療専門の裁判官も必要」とのコメントを発表した。【長沢晴美】 何が過失と認められたのか判りませんが、地裁での判断で病院側のミスと認められたことを、より重視したのでしょうか。でもね、汚い傷が感染を起こすことは避けられませんよ。ましてやガス壊疽となれば、たとえ切断に至ったとしても、命だけでも助けたのだから、感謝されこそすれ、訴えられるなんて考えられません。控訴して当然です。
2007.04.10
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絶対安全なのよね? 事故があったら許さないわよ! 訴えるからね! 前のエントリへのコメントで、僻地の産科医さんから次のような記事を紹介して貰った。災害現場でも出来るだけ安全にお産が出来るのは良いことだ。でも、夜間の救急外来でも、昼間と同じような診察や検査が出来ると思いこんでいる患者や裁判官がいることを考えると、大丈夫かという思いをぬぐいきれない。簡易分娩セット:産婦人科医官らが考案 災害時に野外でも出産、1人で運べ準備10分 大地震などの被災地で、妊婦を医療機関に搬送できず、電気、ガス、水道が途絶えた状況でも出産を支援できる簡易分娩(ぶんべん)セットを、自衛隊中央病院(東京都世田谷区)の早田英二郎・産婦人科医官らが考案した。セットを使えば、野外でも助産師1人が周囲の人の助けを借りて出産を介助できるという。1人で持ち運べ、離島や山間部で、医師が不在時の緊急対応にも役立ちそうだ。 胎児の心音モニター装置、鉗子(かんし)類、はさみ、消毒剤、ガーゼなど基本的な装備に、手動式吸引セットや点滴セットなど緊急事態に備えた器材を加え、滅菌パックしてリュックサックに詰めた。分娩台代わりのマットや組み立て式ついたても一緒に携帯する。 陸上自衛隊が災害派遣時に使用している救急医療セットを参考に、開発した。女性でも背負えるように重さは約6キロにとどめた。助産師が現場にたどり着けば、約10分で準備を整えられる。 ただし、産後数時間以内には、産婦と新生児を医療機関に搬送することが望ましい。 兵庫県産科婦人科学会などの調査によると、阪神大震災(1995年)の被災地では、地震当日に約160人、翌日から2週間で約2060人が生まれた。妊産婦からは、「救援の際に優先扱いされず、困ったり不安を感じた」などの声が多く寄せられたという。 早田医官は「妊婦は命を二つ抱えている。簡易分娩セットが、地域の災害拠点病院や救急車に標準配備されるようになってほしい」と話す。 京都市内で14日から開く日本産科婦人科学会学術講演会で発表する。【須田桃子】毎日新聞 2007年4月8日 東京朝刊 当たり前のことだが、いくら良い分娩セットがあろうとも、設備の整ったところでのお産と、安全性は比較にならない。あくまで、緊急時のやむを得ない状況で、安全性を犠牲にした上での処置なのだ。 病院はもちろんのこと、助産所と比べても安全性に劣ることは常識として知っておくべきだ。でも、最近は常識が通じないことが多い。結果が悪ければ訴える人が出て来るというのは冗談でなく、十分可能性のある話だと思う。そして、関わった助産師や医師が敗訴する可能性も、あるんだろうなあ。
2007.04.08
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機械なら 医者にかからず 産めるだろう? 厚労相は、女性は産む機械としてもっと子供を産んでくれと言う。ところが組織としての厚労省は、産科潰しに躍起になっている。つまり、産科にかからず自分で産めと言っているのだね。まあ、機械なんだから、それぐらい出来るだろうと言うわけだ。女性のみなさん、どうします?助産師不足、もう限界…大阪の診療所、産科廃止 「違法」では続けられぬ 記事:毎日新聞社【2007年4月6日】 ◇看護師内診「違法」では 大阪市西成区の診療所「オーク住吉産婦人科」(中村嘉孝院長)が4月から産科を廃止した。それまで、違法とされる看護師による内診を行っており、「看護師の内診が禁止された現状では、患者とのトラブルの多い産科診療は続けられない」との理由。内診を行える助産師の数が少ない現状を背景に起きる看護師による内診を巡っては昨年、横浜市の産婦人科病院「堀病院」が強制捜査を受けるなど、同様の病院は多いとの指摘もあり、議論に一石を投じそうだ。(2面に「医療クライシス」) 内診は分娩(ぶんべん)の際、妊婦の子宮口の開き具合を指で測り、出産の進み具合をみる行為。同診療所の昨年の分娩数は530件で、最近は周辺で産科閉鎖や分娩制限が相次ぎ、増加傾向だった。 同診療所では、医師が妊婦に異常がないか確認した上で、トレーニングした看護師が経過観察中の内診を行っていた。結果は医師に報告し、医師が最終的に対応を判断していた。 日本では、以前から看護師が内診を行ってきたが、厚生労働省が04年、「内診は助産行為にあたり看護師は行えない」と通知。「異常があれば判断が必要になり、看護師の業務を超える」との立場をとっている。 同診療所では、この内診問題に加え、▽患者の理不尽な非難が急増▽産科医療のシステムが崩壊しつつあり、緊急搬送の受け入れ拒否が増加----したことから、「避けられない医療事故であっても、看護師の内診を理由に強制捜査の対象になりかねない」と、産科廃止を決めたという。 中村院長は、「厚労省の通知は実情とかけ離れている。内診は血圧測定と同じようなもの。今はエコーなどの検査で胎児の状態が分かり、昔より内診は重要でなくなっている」と厚労省の立場を批判している。 同診療所は婦人科と不妊診療は続ける。産科廃止までに、検診に来ていた妊婦には、他の病院を紹介するなどの措置をとったが、市外の病院を紹介せざるを得なかったケースもあった。また、産科存続のための助産師増員について「募集しても本当に必要な夜勤が可能な助産師はほとんどいなかった」と説明した。 看護師の内診を巡っては、昨年、出産数が年間約3000人にのぼる全国最大規模の「堀病院」の病院長らが、保健師助産師看護師法違反容疑で書類送検されたが、「産科医療の構造的問題」などの理由で起訴猶予となった。【根本毅】 激務と訴訟に嫌気がさして、産科を希望する研修医はほとんどいない。一方、現職の産科医も、高齢化と逃散で減る一方だ。既に日本の産科医療が崩壊することは間違いない。でも、わざわざとどめを刺すこともないだろうと思う。 厚労省としても、年金のことを考えたら、少子化は困るんじゃないのか。それとも、本気で医療なしでもお産は出来ると考えているんだろうか。一番ありそうな答えは、何も考えていない、だな。
2007.04.07
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こういうの 迷惑なのよねえ 2月は2回にわたってフェンタニルのことを書いた。とても残念なことだが、同業者の麻薬窃盗・不正使用事件であった。今回はレミフェンタニルで、商品名をアルチバという。まだ発売されたばかりの新薬だ。実を言うと、今回は不正使用の心配はしていない。フェンタニルと違ってレミフェンタニルの場合、不正使用するのは、麻酔科医にとっても手強すぎるのだ。 ただし、今回の事件はやはりとても残念だ。bambooの勤務先では、症例毎に薬局にアルチバをもらいに行く。これがとても面倒なのだ。何とか手術室に金庫を設置して、サテライト薬局の運営をして欲しいのだ。でも、こんな事件が報道されたのでは、もう無理だろう。面倒でも、今まで通り毎回症例毎に薬局に行って貰うしかないな。麻薬指定薬を紛失 北九州市立八幡病院 記事:毎日新聞社【2007年4月4日】 北九州市立八幡病院:麻薬指定薬を紛失 手術室の金庫に保管 北九州市立八幡病院(大江宣春院長)は3日、手術室内に保管していた麻薬指定の麻酔用鎮痛剤レミフェンタニル3本(計15ミリグラム)を紛失したと発表した。手術室は関係者以外の立ち入りが困難な上、他の薬剤に異状がないことから、病院側は誤って破棄した可能性が高いとみている。 病院によると、手術室内の二つの金庫に4種類の麻薬指定薬が保管され、鍵は日中は室内に、夜間は当直看護師が保管している。レミフェンタニルは1月に発売された新薬で、手術時の全身麻酔に静脈注射で使う。10本常備し、夕方にその日の使用数を確認して翌朝補充するが、3月30日夕に看護師長が確認すると記録上3本あるはずがゼロだった。28日夜まで記録と残数は一致していたが、29日は使用済みの空き瓶数しか調べていなかったという。 大江院長は「不手際の責任を感じる。残数と空き瓶の両方を確認するマニュアルも守られておらず、職員の研修を通じて再発防止に努めたい」と話した。【古川修司】 うちでは空き瓶だけでなく、使った注射器も回収している。残薬があるなしにかかわらずだ。全部ビニール袋に入れて薬局に返している。記事を読むと、やはりお粗末だと思う。これでどれだけ多くの手術室が迷惑を被ることになるのか、少し考えて欲しいな。事故が起きれば、それだけ規制が厳しくなるのだ。 でも、不正使用を疑う麻酔科医はいないだろう。レミフェンタニルは、シリンジポンプという機械を使って微量持続静注する薬剤なのだ。静注を止めればすぐに効果が無くなってしまう。また、通常使用する量を使えば、呼吸が止まる。とても楽しめる薬ではない。 実を言うと、批判はしたが、同情もしている。うちでもモルヒネが行方不明になったことがあった。麻薬Gメンが来ることになり大騒ぎになって、院長はふるえが来たそうだ。でも、すぐに真相が分かって解決した。看護師が金庫から取り出すとき、別の患者の分を取り出してしまったのだ。使ったはずの患者の分が残っていてめでたしめでたし。八幡病院は相当絞られただろうな。
2007.04.05
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医学部消滅の危機 医療崩壊刻々と しばらく前から大学医学部が危ないと言われていた。やっとメディアも気がついたようだ。講座によっては教授1人しかいない大学もある。崩壊は目の前だ。大学が崩壊すれば、医者も育たない。どのような医療体制になるのか判らないが、しばらくは暗黒時代が続くのだろう。団塊の世代のご同輩、覚悟は良いか!asahicom大学病院も産科医不足 研究・がん治療瀬戸際 本社調査2007年04月02日 子宮がんなどの治療も縮小し、研究も思うようにできない――。朝日新聞が全国80大学の産婦人科医局に実施した調査で、大学病院でも医師不足が深刻になっている実態があきらかになった。夜間の出産への対応に加え、トラブルがあればすぐに訴訟になるといった理由から敬遠傾向にある中、地域の病院に派遣していた医師を引き揚げても補えず、5年間で医師が半減した大学も多い。高度医療と人材育成、治療法の研究を担う大学病院の産婦人科が危機に直面している。 西日本のある私立大の産婦人科医局は07年3月時点で、教授、講師、助手、大学院生の4人しかいなかった。02年度以降、新規入局者はゼロ。病院での診療は、大学院生以外の3人で分担。当直は組めず、夜間の緊急時には教授が駆けつけることもある。 昨年の分娩(ぶんべん)数は約170件で前年の半分ほど。新生児を診る医師も昨年やめ、母子の命にかかわるような危険なお産は受け入れられない。 大学病院の産婦人科は、お産だけでなく子宮がんや卵巣がんなどの治療でも大きな役割を果たしている。だが、この病院では5年間で手術件数が半減。進行がんなどの大きな手術は、教授の出身大学から応援をもらってしのいできた。4月に入り、ようやく医師が3人増えた。 群馬大は、群馬県立がんセンターの婦人科に派遣している医師3人のうち2人を、4月に引き揚げる。残る1人もいずれは引き揚げる予定で、すでに1月から新規の患者は受け入れていない。 県内で婦人科のがんに十分対応できるのは、同センターを含め数施設。中でもセンターの手術件数は年約200件で最多だ。だが峯岸敬教授によると、06年度に20人いた医師のうち6人が4月以降、医局を離れたり休んだりするため、人繰りがつかなくなったという。 富山大の医局は03年以降、14ある関連病院のうち7病院への医師派遣をやめた。それでも体外受精などの不妊治療はできなくなった。 札幌医大は「地域医療への貢献が大学の方針」のため、派遣している医師を引き揚げていない。他大学が医師を引き揚げた病院もカバーしており、02年に33人いた医局員はほぼ半減した。 診療・教育・研究という大学病院の役割のうち、研究に時間をさけなくなった。02年度以前は10題を超えた学会での発表が、最近は4、5題だ。「新しい治療法の導入が遅れ、治療レベルも落ちるのではないか」と斉藤豪教授は心配する。 ◇ 〈調査の結果〉調査は全国80大学の産婦人科医局を対象に調査票を2月に送り、67大学(84%)から回答があった。1月現在、大学本体の医局にいる医師数は平均22.1人。02年の27.1人から5人減った。5年前より医局員数が増えたのは4大学だけだった。 入局者数は、02年が3.9人、03年は3.4人だったが、臨床研修が必修化され、新人医師が2年間に様々な診療科を回るようになった04年は1.1人、05年は0.9人。研修を終えた医師が初めて入局した06年も2.7人と、必修化前の水準には戻らなかった。 4月の新規入局予定者数は平均2.9人。「0人」が7大学、「1人」が15大学あった。 産婦人科、小児科は大学も崩壊するだろう。麻酔科も、大学によってはかなり危ない。結局それらの分野は全国的にかなり縮小しなければならない。困る人が増えるだろうが、実際に困る人が出ないと改善しない国だからあきらめよう。問題は、改善する方法があるのかだが、無いのかも知れない。それは若い人たちで考えて貰おう。多分我々団塊の世代は、医療崩壊の元で早く死ぬことを望まれているのだろうから。
2007.04.02
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