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故意や常識を外れた酷い過失による被害で刑事責任を問われることには異存はないが、調査委員会などでその様な事例ではないことが認められても警察の捜査を受けるのであれば、調査委員会の意義とは何だろう。そもそも、きちんと情報をフォローしている医師は幻想を持たないだろうが、医師会などからの情報を鵜呑みにしている医師達は、調査委員会が悪質な事例として警察に届けなければ捜査を受けないものと思いこんでいるかも知れない。 MRICのメールマガジンより、【国立病院機構名古屋医療センター 産婦人科 野村麻実 先生】の文章を全文引用します。「医療安全調査委員会の第三次試案」についての大変重要な記事です。 今回の記事は転送歓迎します。その際にはMRICの記事である旨ご紹介いただけましたら幸いです。 MRIC(エムリック)田中━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 医療安全調査委員会の第三次試案を、医師の皆さんは調査委員会の結論が出るまでは警察の捜査がストップされると、期待してはおられないでしょうか。そうお考えになるのも当然だと思います。第三次試案を読めば、そのように受け取れる記述があり、また日本医師会もそのような説明を会員にしているからです。ところが、そのような期待は医師側の勝手な解釈であることが、先日の国会質疑で明らかになりました。警察はたとえ調査機関の通知がなくても捜査することを、刑事局長が明言したのです。この答弁で、第三次試案には警察の捜査をストップさせるような法的根拠がまったくない事実を、私たちは突き付けられました。 国会質疑の模様をご紹介しながら、今浮かび上がっている問題点を述べてみたいと思います。 4月22日、決算行政監視委員会第四分科会において、衆議院議員で「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」に参加している橋本岳議員が、第三次試案について国会質疑を行いました。その内容はインターネット上の録画(http://www.shugiintv.go.jp/jp/wmpdyna.asx?deli_id=39012&media_type=wn〈=j&spkid=11744&time=02:39:37.1)で見ることができます。 質疑の相手は、法務省・警察庁の局長であり、主な論点は、厚労省と警察庁あるいは法務省の間で交わされた「文書」の有無です。なぜ文書の有無が論点になったか。それは、第三次試案の記載だけでは、医師が法的に守られるのかどうかが分かりにくく、調査委員会の結論が出るまで警察の捜査がストップされるということが文書で示されているかどうかを、省庁間の明らかな合意を明らかにするのが目的でした。 橋本議員はまず、4月3日の日経メディカルオンラインの記事(http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200804/505980.html)に、「法務局や検察庁などからは、この案の公表について了解する旨の覚え書きを得ている」との記載があったことを基に、省庁間で交わされた文書の有無を確認しました。すると法務省・警察庁は、この第三次試案について一切の文書を取り交わしたことがないと回答しました。 この記事内容そのものは記者会見場での出来事で、私たち現場医師に事の詳細を知ることはできませんし、大した問題ではありませんが、この答弁自体は非常に重要だと考えられます。実はこれまで「文書」の存在を匂わせ、警察の捜査がストップされるような両省の合意があると受け止められる記事が、日本医師会より何度か出されていたからです。 たとえば、日医ニュース第1117号(平成20年3月20日号)の中で木下勝之・日本医師会常任理事の名前で出された「刑事訴追からの不安を取り除くための取り組み ―その4― ―新しい死因究明制度に反対する意見に対して―」と題する記事の中に、文書の存在を示唆する「明文化」「明記」という言葉が2度出てきます。 1カ所目は、質問2の回答部分です。原文では「一方、委員会の判断に基づき警察に通知が行なわれない事例に関しては、訓告結果が調査報告書として遺族に渡って、遺族が警察へ行き刑事罰を主張しても、捜査機関は、調査委員会の医学的な判断を尊重して、原則として捜査を開始しないことが明文化されています」となっています。 2カ所目は、質問3、4に対する回答部分で「繰り返すまでも無く、医療関係者を中心とする調査委員会から捜査機関へ通知される事例は、極めて限定的な「重大な過失」事例だけであり、通知されない事案には、原則として捜査機関は関与しないことが明記されている」と記載された部分です。 このニュースを読んだ医師らは、「厚労省は法務省・警察庁との間で、調査委員会の通知なしには刑事捜査を開始しないという内容の合意の文書なり覚書を作成した」と受け取ります。しかし、このたび法務省と警察庁は合意文書の存在をきっぱり否定したのですから、上記は医師の勝手な希望的観測に過ぎなかったことになってしまいました。 また木下理事は日本医事新報No.4381(2008年4月12日)p11の記事で「故意に準じる重大な過失、隠蔽、改竄、リピーター以外は捜査機関に提出されず、それ以外の報告書も刑事処分には利用しないことを警察庁、法務省も了解済みであることを説明」と明記し、日本医事新報No.4381(2008年4月12日)p12-15においては「報告書は遺族に返すので民事訴訟への使用を制限するのは難しいが、刑事処分には持っていかないことを警視庁、法務省も了解している」と説明しています。これらは、前述した警察庁の答弁とはまったく合致しません。 木下理事の説明は客観的には誤りであると言わざるを得ませんが、これは医師会の責任なのでしょうか。 まさか、医師会が意図的に会員医師らを欺くとは思えず、医師会が厚労省から虚偽の説明を受けて、誤解してしまったとしか考えられません。つまり医師会は騙されたのではないでしょうか。医師会は特に法的な問題点に関して説明を受ける立場にありますが、法務省・警察庁から説明を日医は受けてきたのでしょうか?受けていなければ、関係省庁との調整を行う厚労省の怠慢、いや欺罔だと言ってもいいでしょう。 そもそも、仮に第三次試案の別紙3「捜査機関との関係について」が法務省・警察庁との合意に基づいて発表されたものであるとしても、その内容は実のところ「遺族から告訴があった場合には、警察は捜査に着手することとなる」(別紙3問2の答え)わけで、現状と何も変わらないことを明記してあるだけです。22日の国会質疑においても警察庁米田刑事局長は「遺族の方々には訴える権利があり、警察としては捜査する責務があり、捜査せざるを得ない」「(委員会が通知に及ばないという結論を出した場合にでも)個別の事件の判断で遺族の方々の意思というものがもちろんあるから、捜査するしないについては言及できない」旨の答弁を行っています。つまり別紙3は医師に過剰な期待を抱かせるべく、形式上「文書」にしてあるに過ぎません。 厚労省は「文書がある」と日医には嘘をついてきたはずだと思うのです。だから冒頭の日経メディカル記事の記者会見でわからないなりに「文書」「覚書」なりとにかくそれ風のことを嘘ではないけれどいわねばならなかったのだと思います。さすがに嘘は言わなかったでしょう。しかし勘違いさせることのできる言葉を並べたはずです。言いもしないことが、メモされるはずがないのです。報じられたことそのものよりも重大であったのは現場医師にとって「厚労省は誠意がない」と心から確信できる事実そのものだったと私は考えています。 医療安全委員会に関わる関係省庁は厚労省だけではありません。次回試案からは、法務省・検察庁に加えて、日医も入った形での試案作りをすべきではないでしょうか。でなければ、今後も同様のこと、つまり日医や医師が騙されるような事態が起きる可能性が否定できず、あまりにも危険すぎて論議の対象にさえできません。 医療安全委員会をその理念どおり運用するためには、刑法を改正または特別法を制定して、医療過誤に関する業務上過失致死傷罪[刑法211条1項]を親告罪にするとともに、刑事訴訟法を改正または特別法を制定し、医療過誤案件に関しては、医療安全調査委員会の「刑事手続き相当」の意見がない限り、捜査機関は捜査に着手できず、また検察官は起訴できないようにすることが必要です。法務省・検察庁の協力をオブザーバー程度で終わらせないようにするためにも、また厚労省が「自らの権限拡大を狙っている」と勘繰られないためにも、三者の間で協議をより密におこなうことが課題であると考えられます。 同様に、民事訴訟の乱発抑制のためには、民事訴訟法を改正または特別法を制定して、医療過誤案件に関しては、訴訟提起前に裁判所の民事調停ないし認定ADRの手続きを経ることを義務化し、そこでは医療安全調査委員会の報告書をもとに紛争解決を図るものとすることなど、法的な対策を講じていただきたいと考えております。著者ご略歴平成4年4月 名古屋大学医学部入学、平成10年3月同卒業平成10年 岡崎市民病院勤務平成13年 名古屋大学附属病院勤務平成14年 名古屋大学大学院医学研究科産婦人科学入学平成17年 名古屋大学大学院医学研究科産婦人科学卒業平成17年 津島市民病院勤務平成19年 国立名古屋医療センター勤務産婦人科認定医 医学博士 私も先日パブリックコメントを厚労省に送ったのですが、送る前にこの文章を読んでいたら、もっとまともなことが書けたかも知れない。送信した文章を見て、少し落ち込んでいます。このブログを見ている人は先刻ご承知ですが、文才無いなあ。
2008.04.28
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この国で生きていく以上、権力に逆らいたくない気持ちは分かる。それなりの構成員を預かる団体の役員であればなおさらだろう。そのような観点から、外科学会や日本医師会などは「厚生労働省の医療死亡事故の死因究明制度・第3次試案」に賛意を表明したのだろう。医療を取り巻く諸問題を憂慮する構成員は、さぞかし無念だったと思う。そのような中で、我らが麻酔科学会は不支持を表明した。よくやった。日本麻酔科学会 WGが第3次試案に不支持を答申 慎重検討で理事にも賛否求めることを決定記事:Japan Medicine 提供:じほう 【2008年4月23日】 日本麻酔科学会は18日、常務理事会を開き、厚生労働省の医療死亡事故の死因究明制度・第3次試案について、事故調査に関する同学会のワーキンググループ(WG)から、「医療安全調査委員会の設置には賛成するが、第3次試案での医療事故をめぐる仕組みなどについては不支持」とした答申を受けた。25日までに理事の意見を聴取した上で、最終見解をまとめる方針を決定した。 同ワーキンググループは、第4次試案につなげる継続的検討を求めている。 この答申を受け、常務理事会では、医療安全調査委員会の設置には賛同するが、それをめぐる条件整備など第3次試案のままでは問題が多いとの意見が強かった。このため今週中に理事の意見を聴取した上で、最終見解をまとめる方針を決定した。仕組みづくりに課題 -古家総務委員長 古家仁総務委員会委員長(奈良県立医科大教授)は常務理事会後に本紙の取材に応え、「医療安全調査委員会の設置は反対する者はいない。ただ、それをめぐる仕組み作りで、問題点が指摘され、常務理事会でも納得できる部分が多かった」と説明した。 しかし、古家委員長は、「そのまま学会の見解にするかは、今後さらに検討する。理事の賛否も踏まえ、学会としての総合的判断が必要になる」とし、いち早く理事会で第3次試案の支持を打ち出した日本外科学会などと共同歩調が取れるか、あるいは学会独自の見解を打ち出していくのか、25日までに結論を出したいとしている。 第3次試案の問題点について事故調査に関するワーキンググループは、<1>委員会の調査報告書について捜査機関が使用することを可能にしている。これでは、すべての内容が捜査機関に流れることになり、黙秘権が担保できない<2>第3次試案では院内事故調査委員会から地方委員会への報告が求められているが、院内事故調査委員会で病院と患者・家族が和解できた場合には、地方委員会に報告することは不要とすべき。全事例を地方委員会に届け出るとなると地方委員会の作業量が膨大になる。院内事故調査委員会での事例は、日本医療機能評価機構でのデータバンクを活用していくべき<3>重大な過失の定義が明確でなく、医療者によって判断が分かれる部分があるのに、警察への届け出を行うことは問題<4>行政処分について医道審議会の見直しを行うとしているが、厚労省の権限が強化される懸念がある-などが挙げられている。
2008.04.23
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「管制官も大変だ 」では、どのようなミスであれば刑事罰もやむを得ないかという議論がコメント欄であった。結局は人それぞれの感じ方なのだろうが、私の場合、自分でもやりそうかどうかで決まるのではないかと思う。 私は粗忽者だから、いろいろとミスを犯しそうだ。だからどうしても他人のミスにも甘くなる。その私でも、ぶつかったら命が危ないものを投げるとき、落下点に人が居るかどうかは確認すると思う。まして、人が居ることが分かっているのに投げたりはしないだろう。 まあ、報道が必ずしも正しいとは限らないので、斟酌すべき事情があるのかも知れないが、人が居るのに漫然とハンマーを投げたのだとしたら、やはり責任を問われるべき事例だと思う。振り向いたら目の前にハンマーが飛んできたと言うのは、いくら何でも気の毒だ。ハンマー直撃、高2意識不明 東京都足立区の都立足立東高校の運動場で19日、陸上部の3年男子(17)が投げたハンマー(重さ約6キロ)が約40メートル先の2年男子部員(16)の頭を直撃、部員が頭部骨折と脳挫傷で意識不明の重体になっていることが21日、分かった。警視庁綾瀬署が原因を調べている。 都教育庁などによると、事故は19日午後2時40分ごろ陸上部顧問の男性教諭(54)と部員計4人で練習中に発生。2年部員は自分の投げたハンマーを回収した後、投てきエリア内の現場付近に戻った。「危ない」という声で振り返ったところ頭に当たった。 陸上部では投げる人が「いきます」と大声で声掛けし、周囲の部員は「はい」と合図を返すことになっていた。顧問は注意喚起の声掛けを「聞いていない」と話しているという。 清水頭賢二校長は記者会見で「誠に申し訳ない。1日も早い回復を願っています」と述べた。陸上部は活動を自粛し、同校は23、24両日に保護者説明会を開く。 別の都立高では昨年六月、弓道部の練習中に教諭の放った矢が男子生徒の頭に刺さり重傷を負った事故があり、都教育庁は安全対策を取るよう各校に指示していた。 スポニチ [ 2008年04月21日 17:46 ]
2008.04.23
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やっと厚労省も認めるようになったが、今、医師が不足している。中でも私の専門とする麻酔科は、必要な手術件数と比べて圧倒的に足りない。現状で執りうる手段は次のようなものだろう。1)手術できない患者がいても構わず、手術件数を制限。2)掛け持ち麻酔を容認する。3)麻酔科医以外が麻酔を担当する。 自分が癌になったとき、手術もして貰えないのはイヤだから、1)は認めたくない。私が掛け持ち麻酔をした場合と、私の勤務先の外科医が麻酔をした場合とで、周術期の患者の快適度はもちろん、安全性でも、私の掛け持ち麻酔の方が勝っているだろうという自負はある。だから私は掛け持ち麻酔容認派だ。 掛け持ち麻酔容認派にとって、そばにいれば防げる事故がもっとも怖い。たとえば、人工呼吸管理下での回路の外れだ。どれだけ責められても言い訳のしようもない。その、もっとも怖いことが、起きてしまったようだ。<神奈川県立がんセンター>乳がん手術でミス 患者重体 4月20日21時37分配信 毎日新聞 神奈川県立がんセンター(横浜市旭区)は20日、同センターが16日に行った乳がんの手術で酸素を供給する管が外れるミスがあり、40代の女性患者が意識不明の重体になっていると発表した。 同センターによると、手術は全身麻酔の乳房の部分切除で、16日午前9時15分に開始。約15分後、看護師が血中酸素濃度などを示すモニターが表示されていないことに気付いた。別の手術を手伝っていた担当麻酔医(38)を呼び戻し、麻酔器の管が外れていることが分かった。女性は低酸素状態が続いたため一時、心停止状態に陥った。心臓マッサージなどで心肺機能は回復したが、意識不明となっている。 麻酔医が手術前に確認した際、異常は確認されなかったという。異常を示すアラームが鳴ったかは分からず、同センターは、事故調査委員会を設けて事故原因を調べる。 大崎逸朗・同センター所長は20日夜、県庁で記者会見し、「重大な結果を招き、おわび申し上げます」と謝罪した。【五味香織】 少なくともこれは手術ミスではない。執刀医がこの見出しを見たら歯軋りをするだろう。どうも毎日新聞はこういうところにデリカシーがない。単に悪意があるだけかも知れないが。この記事が正しいとして、確認できることは次の通り。 麻酔導入の後、9時15分に手術開始。9時30分頃 SpO2 が表示されていないことに看護師が気づいた。このとき担当麻酔科医は他の麻酔を手伝っていて不在だった。担当麻酔科医を呼び戻したところ、麻酔器の回路が外れていたことが分かった。患者は呼吸停止状態であったため、低酸素血症となり心停止に至った。蘇生措置を施し心拍再開が認められたが、意識不明の状態が続いている。担当麻酔科医を呼び戻す前の心電図波形や脈拍数、血圧などは記事からは不明。全身麻酔中、麻酔器の管外れ40代女性が重体…横浜 4月20日23時39分配信 読売新聞 神奈川県立がんセンター(横浜市旭区)は20日、乳がんの手術を受けた横浜市内の40歳代の女性患者が全身麻酔中に、酸素を送り込むための麻酔器の管が外れて低酸素状態となり、意識不明の重体になる医療事故があったと発表した。 同センターは事故調査委員会を設置し原因を調べる。 記者会見した大崎逸朗所長によると、16日午前8時55分、男性麻酔医(38)が女性患者に全身麻酔を行い、手術室を離れた後、午前9時15分に手術が始まったが、看護師が約16分後にモニターの異常に気付き、麻酔器本体から差し込み式の管が外れていたことがわかったという。 大崎所長は「管が外れていたのに気付くのが遅れ、モニターで異常をチェックできなかった。患者と家族におわびする」と謝罪した。麻酔医が手術室を離れた点については、「問題はないと思う」とした。 こちらの記事からは、麻酔科医が不在となったのは手術開始の前だったことが分かる。また、麻酔回路が外れたのは、麻酔器との接続部だったようだ。手術中に酸素送る管はずれ女性重体4月21日8時1分配信 産経新聞 神奈川県立がんセンター(横浜市旭区)に入院していた横浜市の40代女性が、乳がんの手術中に麻酔器から酸素を送る管が外れる事故で意識不明の重体になったことが20日、分かった。 センターによると手術は先月16日に行われ、管は最大16分間外れていた。女性は呼吸ができず心停止状態に陥り、心臓マッサージなどで心拍は回復したが、意識は戻っていない。 担当麻酔医は全身麻酔をかけた後、ほかの手術室へ応援に行き不在だった。通常、管が外れるとアラームが鳴るが、聞き逃したか何らかの原因で鳴らなかった可能性があるという。 この記事からは、アラームが鳴ったかどうかも分かっていないようだ。 以上を総合すると、8時55分に麻酔導入。麻酔科医は患者の状態が落ち着いたところで他の麻酔導入の手伝いに行った。その後、9時15分に手術開始。9時30分頃何らかのモニター表示の異常を看護師が発見。麻酔科医が呼び戻され、回路が麻酔器から外れていることが発見されたが、患者は無呼吸による低酸素血症から心停止となり、蘇生措置によって心拍は再開したものの、意識は戻っていない。アラームが鳴ったかどうかは不明。 疑問に思うのは、なぜ回路が外れたのかということと、アラームがあるはずなのに、どうして気が付かなかったのかということ。この点については、是非知りたい。 実は私にも同じような経験があった。麻酔担当医は私の部下。やはり掛け持ち麻酔で、問題の症例は研修医が見ていた。突然麻酔器の低圧アラームが鳴り、研修医は何も対処できず、担当麻酔科医は他の麻酔の導入中。私が駆けつけてみたら、記事の症例と同じく、麻酔器と回路の接続が外れていた。1分も経たないうちの出来事で、患者の容態には何の問題もなかった。 うちの病院では、麻酔器に麻酔回路を取り付けるのは看護師の仕事。以前からきちんとはめ込まず、只申し訳程度につないだだけのことがあり、何度も注意していたが徹底されていなかった。実際に事故が起きてみるまで重要性が理解されなかったのだろう。その事故以来、徹底されたことは言うまでもない。私自身は、麻酔の前に回路の点検はきちんと行っているので、看護師がいい加減なことをしても修正している。 アラームについては、通常麻酔器とモニターの両方が鳴るはずだ。回路が外れれば麻酔器の低圧アラームが鳴るし、更に低酸素になれば、モニターの SpO2 の異常を示すアラームが鳴るだろう。モニターのアラームが鳴ると、何も考えずにアラームをオフにする看護師はいるが、麻酔器の低圧アラームをオフにする看護師はいないと思う。 事故調査委員会を設置して調べるようなので、いずれ報告はあるだろうが、是非公表して欲しい。その際、担当麻酔科医が他の麻酔の補助をしなければならないような体制であったのであれば、その麻酔科医が個人的に責任を問われることの無いよう望みたい。 話は変わりますが、やはりどうしても「麻酔医」なんですね。科の名称として、「麻酔」だけが行為だからなのでしょうか。
2008.04.21
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以下のようなメールマガジンが送られてきました。全文を引用します。 今回の記事は転送歓迎します。その際にはMRICの記事である旨ご紹介いただけましたら幸いです。 MRIC(エムリック)田中━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 平成20年3月13日、呼吸器外科医、心臓血管外科医、麻酔科医それぞれ1名が京都府警により業務上過失致死の疑いで京都地検に書類送検された(1)。このことは我々に強い衝撃を与えた。これまで医療に刑事司法が介入する正当性は、医療者側の自浄作用の欠如が背景と理解されてきた。しかし今回の事例では、医療者側も遅滞なく自主的に、真相解明から被害者との和解に至るまで尽力したにもかかわらず、刑事介入は回避されなかった。 ちなみに私は京都大学の消化器外科医であり、本移植とは無関係である。公表されている事実から、本事件を考察する。 事件の経過を以下に記す。 平成18年3月21日に脳死肺移植のドナーが発生(2)。同21日から22日にかけ、京都大学医学部付属病院で、肺の機能が著しく低下する肺リンパ脈管筋腫症を患った30歳の女性に対し、脳死肺移植が行われた(1)。同病院では5例目の脳死肺移植である(2)。手術は順調に経過したが、術後のCT検査でびまん性の脳浮腫が発生していることが判明。その後、集中治療室にて治療をつづけたが、広範な脳障害(全脳虚血)による意識不明の状態が続き(2)、平成18年10月24日永眠された(3)。 同病院では手術後まもなく関係者による危機管理会議を開催したが、重篤な転帰をたどるに至った原因がはっきりしないため、外部の専門家を含めた事例調査委員会を立ち上げて調査を開始。あわせて肺移植手術の自粛を決定した(2)。 平成18年10月10日、事例調査報告書が病院長に提出された。その中の「全脳虚血」に至った原因についての見解を、京都大学ニュースリリースより引用する。「全脳虚血発生の原因は、一つには特定できないものの、大きく(1)部分体外循環といえる状態での肺換気の停止による非酸素化血の頭蓋内への流入と、(2)体外循環後半に発症した血圧低下、が複合的に関与した可能性が高く、さらに(3)早期の復温や呼吸性アルカリ血症が脳虚血を助長した可能性があると考えられた。また、術中の患者管理に関する指揮命令系統や、診療科間での意思疎通、肺移植チーム全体としての総合力に改善すべき点があった。現に上記(1)(2)(3)は、いずれも全身管理の責任者が不明確となった時間帯に発生しており、そのことが全脳虚血の早期発見の妨げになった可能性がある。」同病院は報告書の内容を患者ご家族に説明し、謝罪を行った。さらに報告書の「再発防止に向けた改善策の提言」を実践していくことを表明(4)。これについては、同病院心臓血管外科が平成18年12月26日から手術を自粛する事態にまで波及した(5)。また、同病院はこの件について川端警察署、左京保健所、京都府、京都市、近畿厚生局ならびに文部科学省への報告等も行っており(4)、その後、時期は不明であるが患者御家族との示談も成立したようである(6)。 にもかかわらず、今回の書類送検である。我々としては納得しようにもどうにも納得できないものがある。 医療事故への対応・解決に際し当事者が目指すものは、真相の究明、被害者救済、再発防止である。これらのうち真相の究明および再発防止を目指す手段としては本来、多様なアプローチが検討されてしかるべきであるが、平成12年以降は刑事処分で対処する事案が目立ってきた。たしかにこれまでは医療者側による自律的制裁処置も行われず、医療者に対する行政処分もそのほとんどが刑事処分の後追いに過ぎなかったため、事故の悪質性にかかわらず刑事司法が介入せざるを得ないと考えられてきた(7)。であるとすれば、医療者側が必要十分な自律的制裁を行う場合は、一部の悪質な事例(隠蔽や故意やリピーターなど)を除き、刑事司法が介入する必要はないはずである。 今回、京都大学は早期から自主的に外部の専門家も交えて原因究明を行い、その結果を公表し、手術を自粛したうえで再発防止に尽力している。さらに患者御家族との和解も成立している。このような現状で、書類送検を行う理由はどこにも見当たらない。ところが実際には冒頭に述べたとおりの顛末となった。すなわち、医療者側による自主的かつ必要十分な処置の欠如を刑事司法の介入の根拠としていたこれまでの理屈は、誤りとせざるを得ない。今回の事件は図らずも、医療事故への刑事司法介入について、その正当性の主張をゆるがすものとなったといえよう。1 asahi.com 2008年3月13日2 京都大学―お知らせ/ニュースリリース 2006年5月2日3 ヨミウリ・オンライン 2006年10月25日 4 京都大学―お知らせ/ニュースリリース 2006年10月12日5 京都大学―お知らせ/ニュースリリース 2007年3月9日6 毎日新聞 2008年3月14日 東京朝刊7 日本医師会医療事故責任問題検討委員会:医療事故に対する刑事責任のあり方について著者ご略歴平成3年4月京都大学医学部入学、平成9年3月同卒業平成10年田附興風会北野病院勤務平成11年京都大学附属病院勤務平成12年日赤和歌山医療センター勤務平成18年京都大学大学院医学研究科消化管外科入学専門は 腹部外科 著者の情報に欠落がありました。以下のように追加させていただきます。この記事の著者は 京都大学大学院消化管外科 水野靖大先生です。
2008.04.16
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人間は誰でもミスを犯す。現場を知らない評論家やお偉いさんは「有ってはならないミスだ」と簡単に言うが、まともな企業なら、単純なミスで大きな損害が起きるようなシステムを放置したりはしない。何か被害が出たとき、ミスをした個人の責任を問うことで済ませ、改善すべきシステムをそのまま放置するような職場には、たいてい行政が絡んでいる。 航空管制官も国家公務員だ。ちょっとした言い間違いが大きな事故の原因となりかねないので、言い間違いをしないような訓練は必要だ。でも、人間に絶対に間違いを犯さないという能力はない。人間に神のような能力を求めるのは、求める方が間違いだ。いつも「ミスは許されない」と言われ続けている医療人として、言い間違いを咎められている管制官に対しては同情を禁じ得ない。<日航機ニアミス事故>管制官逆転有罪…個人に責任、衝撃 (毎日新聞) 「納得していないので上告したい」。日航機同士の異常接近(ニアミス)事故で、東京高裁は11日、管制官2人に逆転有罪を言い渡した。閉廷後に会見した管制官の一人は目に涙を浮かべて判決への悔しさをにじませ、同じ管制業務に携わる職員にも衝撃が広がった。管制トラブルが相次ぐ中、判決は空の安全への警鐘となるのか。 ニアミスで初めて管制官個人が受けた有罪判決。会見で現場への影響を問われた籾井(もみい)康子被告(39)は「管制官に全責任があるのであれば、管制を行う人間に不安や緊張を与えて安全にとって有害になるだけ」と主張。「言い間違いがあっても、その後の対応をきちんとするのが管制官の仕事。『ミスをすればおしまい』となると、人間が行う業務としては無理になる」と訴えた。 同席した米倉勉弁護士も「事故はいろいろな危険要因が重なって生じる。個人のエラーだけを問うのは間違いだという発想が芽生えてきたが、(今回の)判決で歴史が10~20年逆戻りした」と指摘した。 蜂谷(はちたに)秀樹被告(33)は会見に出席しなかったが「判決は1審から積み上げてきた証拠を理解していない。まったく納得できない」と話したという。 「全国の管制官に動揺が走ると思う」。管制部門の幹部の一人は判決への感想をこう漏らした。幹部は「管制の現場は、過密による危険を感じながらも黙々と業務を支えているという意識が強い。判決は、管制官に必要以上の心理的なプレッシャーを与え、日々の運航に影響が出るのではないか」と危惧(きぐ)した。 事故では、負傷者を出した907便が航空機衝突防止装置(TCAS)の指示と違う動きをしたり、管制側の異常接近警報(CNF)が、2機の最接近の直前まで作動しなかったことなど、他にも多くの問題点が浮かんでいる。別の管制官は「どんな問題があるかが見過ごされてしまう。何の問題解決にもならない」と憤った。 一方、国土交通省航空局は鈴木久泰航空局長名で「判決を機に改めて航空の安全を守るべき責任の重大さを認識し、二度とこのようなことがないよう万全を期す」とのコメントを出した。【銭場裕司、窪田弘由記】 ◇やむを得ない判決 航空評論家の青木謙知さんの話 管制官の便名の言い間違いは決してあってはならない単純なミスだ。上司だった籾井被告も訓練生の間違いを見逃しており、有罪判決もやむを得ない。ただ、航空事故が起きた場合に個人の責任ばかりを追及すると、自分の身を守るためにうその証言をする可能性があり、再発防止の教訓を得にくくなる。欧米のように個人は刑事免責にして正直に証言させれば、かえってシステム改善などにつながる。[ 2008年4月12日0時35分 ] 強調筆者 管制業務も少ない人員で過酷な業務を強いられているのだろう。それなのにミスをするなと言われ、じっと耐えている姿が目に浮かぶ。身につまされる話だ。 記事の割合として、多くが被告や現場の管制官の言い分を伝えている。彼らの言い分には全面的に賛成だ。ミスを少なくする努力は必要だが、ミスがないことを前提としたシステムは馬鹿げている。無くなるはずのないミスを罰するのであれば、現場が萎縮し、返ってミスは増えるだろう。隠すようになるから記録上は少なくなるかも知れないが。結局、日本という国は、事故を防ぐよりは誰かを悪者にして罰したい国なんだな。「水戸黄門」が長寿番組として延々と続くのと同じメンタリティーなんだろう。 以上、被告や現場の管制官諸兄には大いに共感するが、一つ納得がいかないのは、毎日新聞だ。これが医療事故だったら、こんなに医師の言い分を書くだろうか。患者側の恨み辛みで記事が埋め尽くされるのがオチだろう。
2008.04.13
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点滴自体は医療行為だが、病気というわけでもなく、経口摂取が可能で脱水状態でもない人に行う点滴は医療と言えるのだろうか。何らかの暗示効果はあるのかも知れないが、医学的に見て、何か意味があるようには思えない。それでも「点滴バー」でググるといろいろなサイトがヒットするので、それなりに商売になっているのだろう。逃散した医師の選択肢の一つなのかも知れない。昼休みに点滴はいかが? 東京・恵比寿にスペース08/04/09記事:共同通信社 お昼休みやデート前のちょっとした時間に点滴はいかが-。疲労解消などのため、病院に行かなくても点滴が受けられる専門スペースが東京・恵比寿にオープン、「健康な人がより健康になるために」と効果をアピールしている。 「TENTEKI 10」。医療関連業務をフランチャイズ展開する東京都内の会社が、「恵比寿ガーデンプレイスクリニック」の全面協力で医師や看護師を常駐させ、医療行為の点滴を行う。点滴終了まで約10分かかるのが名前の由来だ。 肉体疲労やストレス解消に効果のあるビタミン点滴(税込み2000円)が基本で、二日酔い防止や滋養強壮に効く「レッドパック」(同2500円)、日焼けによるしみやそばかすを軽減する成分が入った「ホワイトパック」(同3000円)などオプションを追加できる。 担当者は「体のセルフメンテナンスへの意識が高まっている」と集客に自信を見せる。初回のみ医師による問診があり、初診料は1000円。携帯サイト登録で割引クーポンが携帯メールに届き、「健康メルマガ」配信サービスもある。土・日・祝日休診。問い合わせは03(5458)3128。 点滴バー自体は私でも以前から知っていることなので、今更ニュースバリューがあるとも思えない。それなのに何で記事にしたのかといえば、最後の電話番号がヒントになるだろう。つまり、これは記事の体裁を取ったCMなのだ。報酬を受け取るのが記者なのか共同通信社なのか知らないが、報道機関としては反則だろう。今までに問題記事を何度も書いているとは言え、落ちたものだ。
2008.04.11
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遅ればせながらシッコを見てみた。既にご存じの方が多いだろうが、社会主義国であるキューバはもちろん、カナダやヨーロッパの充実した医療制度と、悲惨なアメリカの医療制度を対比させた映画だ。 初めは保険にも入れないアメリカ国民の悲惨な状況が紹介される。でも、監督のムーアが対象にしているのは彼らではない。たとえ保険に入っていても、保険会社の儲け主義のために必要な医療の許可が下りず、切り捨てられる人々などが対象なのだ。 これは他人事ではない。我が国でも、とりあえず75歳以上を切り捨てる制度が始まった。また、医療自体が、医療費削減、司法の介入、医師の逃散などによって崩壊しつつある。この後に来るものは、混合診療解禁から国民皆保険の実質的な崩壊ではないかと危惧する。どのような経過を取ろうとも、医療費削減を目指す以上、国民皆保険は崩壊するほかない。そうなれば民間保険に入らざるを得ないだろう。そして、今のアメリカの姿が日本でも見られるようになると想像する。 社会主義国であるキューバは、確かに医療費は安いだろうが、貧困や医療レベルに問題がありそうだ。映画を見たからといってうらやましいと思う人は少ないだろう。でも、カナダやヨーロッパについては、うらやましいと思う人は多いのではないだろうか。シッコを見る限り、医療は無料で、患者は長く待たされることもなく、医師の収入も十分のようだ。でも、少なくともイギリスでは、アクセスにかなり問題があったように聞いている。日本と同じように、薬を買う代わりに受診するような状況では無料で医療を提供することは無理だと思うので、何らかのアクセス制限はあるのではないかと思う。それが国民の民度の差によるものだとしたら、日本人としてはとても恥ずかしい。 ヨーロッパの医師の待遇について、高級車や高級マンションを買うだけの収入があることは述べられていたが、勤務態勢については触れられていない。私としては、是非触れて欲しかった部分だ。日本の医師のように、不眠不休で働くことはなく、交代性であることを強調して欲しかったのだが、そんな当たり前のことをわざわざ述べる意味はないのであろう。 現在の日本では、国民皆保険でありながら多くの人が3割負担だ。どうしてヨーロッパのような無料で医療を受けられ、必要があれば治癒するまで有給休暇を取れるような体制がとれないのだろう。すぐに思いつく答えが、私には二点ある。 第一は社会保障費の負担である。税の国際比較を見ると、税金と社会保険料などを加えた国民負担率はヨーロッパでは高い。日本より負担率の少ないのは、自己責任の国アメリカだけだ。そのアメリカでも、GDPに占める社会保障給付費の割合は日本より多い。小泉改革を支持する人は多いようだが、改革によって困っている人を切り捨て、濡れ手で粟の税金泥棒を放置しているように思える私はおかしいのだろうか。税金泥棒に奉仕する気はないが、本当に困っている人を助けるためには、税金が高くなっても私は構わない。 第二は、残念ながら、国民の意識の差ではないかと思う。映画の中でも、大戦後の混沌の中で助け合いの精神がはぐくまれたとあった。本当に困っている人を助けようと言う気概が行き渡っているのだろう。だからこそ、困っている人だけが社会保障制度を利用しているのだと思う。制度にたかる人が多ければ、社会保障制度は成り立たないのだ。 我が国でも、戦後の混乱期には助け合いの精神はあったのだろう。でも、その後は何でもアメリカ追随になってしまった。節度を知っていた国民性から、やったもの勝ちの文化になってしまったように思う。だからこそ、税金などの負担が増えるのは問題外。制度があれば食い物にし、救急車はタクシー代わり、自分の都合だけでコンビニ医療を求め、しかも質を保証しろと言う。堂々と乞食自慢をする者までいる。 それぞれが自分の欲望を少しだけ抑え、その分で本当に困っている人が助かる。そんな世の中の方が良いと思いませんか。
2008.04.11
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私がチェックできていないだけかも知れないが、ここのところ、腹を立てて何か言いたくなるようなトンデモ報道がない。ネタ切れで日記の更新も滞っている。と言うわけで、今日はつまらない私事を書いてみようと思う。 我が家は今までアナログテレビだけで、デジタルテレビを買う気は全くなかった。液晶テレビやプラズマテレビというのは、数十万円するものだと思っていた。ところが、今や10万円程度で37型のデジタルテレビが買えるのですね。思わず衝動買いをして、妻にあきれられてしまった。 すでにデジタルテレビを持っている部下は、民放も地デジで見ている。その部下は県外から通勤しているのだが、私の認識では、私の居住地よりも田舎だ。当然私の居住地では、今までアナログで見ていた放送は、すべてデジタルで見られるものと思っていた。 ところが、何度設定を繰り返しても、NHKとローカル局しか入らない。アンテナは問題ないはずなのに何故だろうと、必死でネットで調べてみた。そうしたら何のことはない。私の居住する県では、民放はデジタルになっていないのであった。民放をデジタルで見たければ、アンテナを県外に向けなければならないのだ。つまり、部下の住む県の中継局に向けるのだ。そうか、我が県の方が田舎なのか。地価は我が県の方が高いのに。
2008.04.09
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頑張って困難な仕事を続けるにはモチベーションが必要だ。給与はモチベーションの一部にはなるだろうが、それが全てではない。私にとって最も大きいのは、必要とされているという実感だろう。 国立がんセンター中央病院の麻酔科医が相次いで辞め、半減した。癌診療の面ではブランド病院だから、給料が安くても勤務したがる医師は多い。技術や知識の習得の面で有利だったり、キャリアとして認められたりするからだろうと思う。でも、麻酔科医にとってはそんなの関係ない。少なくとも、ブランド病院だからといって、麻酔科医としての資質の向上が図られるというわけではない。 ブランド病院が本当に高度な医療を行っているとして、私がモチベーションを保って安い給料で働くとしたら、何が必要だろう。おそらく、本当に患者のためになる手術に参加しているという満足感ではないかと思う。もちろん只単に手術を可能にしていると言うだけでなく、出来るだけ安全に低侵襲の周術期を提供出来ているという自負と、それに対する評価も必要だろう。国立がんセンター中央病院のなかで、麻酔科医に対する評価はどうだったのだろう。麻酔の質には関心が無く、「とにかく手術さえ出来れば良いんだ」という空気はなかっただろうか。 麻酔医、相次ぎ退職 10人が5人に、手術にも支障 国立がんセンター中央病院 記事:毎日新聞社【2008年4月3日】国立がんセンター:麻酔医、相次ぎ退職 10人が5人に、手術にも支障 ◇厚遇求めて転籍 国立がんセンター中央病院(東京都中央区、土屋了介院長、病床数600)で、10人いた常勤麻酔医のうち5人が昨年末から先月までに相次いで退職し、1日の手術件数が2割減る異常事態になった。より待遇の良い病院への転籍などが退職理由で、「がん制圧のための中核機関」を理念に掲げる日本のがん治療の“総本山”に、全国的な医師不足が波及した形だ。【須田桃子】 がんセンター中央病院は常勤医師約150人、1日当たりの外来患者約1000人と、国内でも最大級のがん治療専門施設。これまでは、1日当たり約20件の外科手術をしてきたが、術中の麻酔管理を担当する麻酔科医が半減したことで、3月末から1日約15件しかできなくなった。 手術までの待ち時間も今後、長引くことが予想されるため、特に急ぐ必要のある病状の患者に対しては、都内や患者の自宅周辺の病院の紹介を始めた。院内にも、麻酔医の不足を知らせるお知らせを掲示し、患者に理解を求めている。 関連学会や各地の病院を通じ、麻酔医確保を図っているが、「すぐには解決のめどがついていない」(土屋院長)のが実情だ。 土屋院長によると、退職の主な理由は、待遇の良い民間病院や都立・県立病院への転籍だ。同病院の職員は国家公務員で、30代の中堅医師の場合、給与は年間700万-800万円程度。一方、都立や県立病院は1000万円台、民間病院なら1000万円半ばから数千万円になるという。 日本麻酔科学会が05年にまとめた提言によると、日本では約4000施設で全身麻酔が実施されているが、同学会の会員が常勤でいる病院は約半分にとどまる。手術中の患者の麻酔管理に加え、患者の痛みを除く「ペインクリニック」や「緩和ケア」などに麻酔科医の担当領域が広がっており、全国的な需要も高まっている。 がんセンター中央病院も、「緩和ケア」研修を09年度から全研修医に義務付けることを決めたばかりだった。 土屋院長は「中央病院は、医師が勉強する環境は十分整っているが給料は並以下で、施設の努力で確保するには限界がある。医師の絶対数を増やす政策が不可欠だ」と話す。 乳がん患者団体「ブーゲンビリア」の内田絵子理事長は「国立がんセンターは全国の患者の精神的なよりどころでもあり、医師不足で手術件数が減ることは、患者にとって不安を駆り立てられる話だ。麻酔医不足は、緩和ケアの充実にも悪影響を及ぼす」と懸念する。 ◇医療崩壊のサイン--医師不足問題に詳しい本田宏・医療制度研究会副理事長の話 がん患者にとって最後のとりでとも言える国立がんセンターにまで医師不足の波が押し寄せた。大変憂えるべき状況で、医療崩壊が日本に起こりつつあるというサインだ。 仕事から得るものは給料だけではない。給料以外に得るものの多い職種は安い給料でも人は集まるだろうが、特にその病院でなければならないという理由がない職種にとっては、安い給料に我慢する理由はない。そして、麻酔科医にとって、国立がんセンター中央病院という病院は、特別に得るものの多い病院ではなくなったということだろう。あるいは、元々得るものはなかったが、勤務を強制するメカニズム(医局制度)が破綻したのだろう。 ところで、麻酔医という呼称はどうにかならないだろうか。この記事中にも「麻酔科医」と「麻酔医」が混在しているが、やはり「麻酔医」の方が多い。わざわざ麻酔科だけ「科」を抜く理由は何だろう。麻酔医と呼ぶ人も意識していない、潜在的な悪意があるのではないかと、私は疑っている。医師専用掲示板では、麻酔科医を挑発するために、わざわざ麻酔医と書くバカ医者もいるのだ。
2008.04.04
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