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「妊婦死亡事故」でググルと、この間の墨東病院の事例が沢山ヒットします。でも、多くの医師は、初めから墨東病院が引き受けても結果は同じだったと考えているはずです。患者が亡くなったことは不幸なことではありますが、原因は脳出血という病気であり、何らかの事故によるものではありません。 当事者が不満に思うのであればよく分かります。でも、第三者には正確で冷静な対応を求めたいものです。今回の事例では当事者だけが冷静で、メディアは例によって「妊婦死亡事故」「受け入れ拒否」「たらい回し」のオンパレードです。メディアの論調には疲弊しながらも頑張っている医療従事者への敬意もねぎらいの気持ちもありません。 東京都内で8つの医療機関から救急搬送を断られた妊婦(36)が3日後に脳内出血で死亡したことを受け、彼女の夫(36)が27日に厚生労働省で記者会見を開いた。その会見内容を知った人々が感銘を含め、ネットで様々な意見を述べている。 テレビ等の各種メディアでは、最終的に妊婦を受け入れた都立墨東病院を非難する例が目立っていた。同病院側が一度は受け入れを拒否したことや、「総合周産期母子医療センター」という指定を受けていながらも、産婦人科医の減少のために受け入れ態勢が整っていなかったからだ。また、石原慎太郎東京都知事(76)や舛添要一厚生労働大臣(59)が、責任の所在を互いになすり付けあったことも報道に拍車をかけた。 しかし、当の男性は、病院側を始めとする医療現場や行政を責めるどころか「妻が浮き彫りにしてくれた問題を、力を合わせて改善してほしい。安心して赤ちゃんを産める社会になることを願っている」「何かが変われば『これを変えたのはおまえのお母さんだよ』と子供に言ってあげたい」などとコメント。 また妻が亡くなる日に、医師や看護師が保育器に入ったままの赤ちゃんを妻の腕に抱かせてくれたおかげで、親子水入らずの短い時を過ごせたというエピソードを披露。「墨東病院の医師も看護師も本当に良くしてくれた。彼らが傷つかないようにしてほしい」と話した。 ネットでは、「なんて立派な人なのだろう、こういう人のためなら今から産科目指して勉強し直そう、この惨状を放ってはおけない!」「病院を訴えてやるだの賠償責任だのいう人が多い中で、奥様を亡くされたのにここまで言える方はいないと思います」などと男性の対応を称える声が多く見られた。 また、「医療崩壊は、国民全体で力を合わせて解決すべき問題だと思います」「安心して産める世の中になってほしいです」などと医療現場の改善を願う声も多く見られた。10月29日 08時27分 アメーバニュース たとえ病死だとしても、ご遺族からすれば初めから万全の医療を受けたかっただろうと思います。その無念さはよく分かります。その気持ちを抑え、医療従事者への敬意とねぎらいの言葉すら表し、冷静なコメントを残した患者のご主人には、心からの敬意を表したいと思います。 でも、ご主人の希望とは裏腹に、やはり産科医療は崩壊するでしょう。これだけ大騒ぎになっているのに、無理をしないで済む勤務態勢を構築しようと言う議論にならないようでは終わっています。当直ではなく、交代性勤務にするべく予算をかけなければ解決しないでしょうが、とても無理だと思われます。
2008.10.31
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医療は命を扱うものだから、些細なことで死を招くことがある。一方、人間は誤りを犯しやすい性質を持っているので、きちんとした過誤を防ぐシステム無しには安全を構築できない。こんな事故を見ると、医療安全システムが機能していればと残念でならない。麻酔薬を誤投与 女性患者、意識戻らず 山梨県立中央病院 記事:毎日新聞社 【2008年10月25日】 医療ミス:麻酔薬を誤投与 女性患者、意識戻らず--県立中央病院 /山梨 県立中央病院(甲府市富士見1、山下晴夫院長)は24日、県内に住む50代の女性患者に点滴したところ、薬剤の種類を誤ったため、女性が一時心肺停止に陥ったと発表した。女性は蘇生し、治療を受けているが、意識が戻る可能性は低いという。 同病院によると、女性は10月2日、下腹部の痛みを訴えて診察を受け、虫垂炎と腹膜炎と診断された。翌3日に入院し、虫垂の切除手術を受けた。15日になって腹部の痛みを訴えたため、担当の30代の外科医が鎮痛剤を追加投与しようと麻酔科医に鎮痛剤の名を聞いた際、本来投与すべき「フェンタニル・ドロレプタン」を、手術時の全身麻酔に使う「フェンタニル・アルチバ」と聞き間違えた。病室で使用する薬ではなかったため、薬局が看護師に確認し、看護師も外科医に確認したが、外科医はそのまま投与してしまったという。投与には1年目の研修医も立ち会った。 投与から約20分後に看護師が病室を訪れた時には女性は心肺停止状態だったという。 誤投与された麻酔薬「フェンタニル・アルチバ」は、呼吸が止まってもおかしくない量だったという。山下院長は「薬局でも病棟でも防げなかったことに問題がある。病院全体の責任」と謝罪した。【沢田勇】 アルチバは、麻酔に使用する強力な鎮痛作用を持つ麻薬である。呼吸と循環への抑制効果が強く、血圧は低下し、呼吸も止まる。人工呼吸を行った上で使用する薬だ。術後鎮痛のために病棟で使うような薬ではない。 問題点はいくつもある。まず、言い間違いや聞き間違いは誰にでもある。やはり文書での伝達など、より誤りにくい伝達手段を執るべきだったのだろう。本当はその前に、自分が投与しようとしている薬くらい知っておくべきだが。 また、せっかく薬剤師が気がついていながら、そのまま危険な行為が行われてしまった。医師に意見を言いにくい雰囲気の病院だったのだろうか。私の勤務先であれば、私の処方に問題がありそうなときには、薬局から直接私に電話がかかってくる。重大な誤りがあったことはないが、些細な誤りを正して貰ったことはある。医師に意見を言いやすく、医師の方も他職種の意見を聞く雰囲気があれば防げた事故ではないだろうか。 一番良いのは、このような危険なことが出来ないようなシステムにすることだ。指示はコンピュータ入力により行い、使用する部署や目的なども入力するようにする。問題があるような入力は受け付けないようになっていれば、ミスのしようがない。アルチバは、麻酔科医が手術室で麻酔目的に使う事だけが認められる決まりで支障はないだろう。
2008.10.27
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多くの医師は患者の命を救おうとしている。だから、必要だと思えば、精神的にも肉体的にもボロボロになるまで働いてしまう。第三者がそれに気づいて、強制的に休ませなければ、悲劇の起こることもある。小児科医自殺:遺族が2審も敗訴 東京高裁が請求棄却 毎日jp 99年にうつ病になり自殺した小児科医、中原利郎さん(当時44歳)の遺族が「月8回の宿直など過剰勤務が原因」として、立正佼成会付属佼成病院(東京都中野区)を経営する立正佼成会に賠償を求めた訴訟で、東京高裁(鈴木健太裁判長)は22日、請求を退けた1審・東京地裁判決(07年3月)を支持し、遺族側の控訴を棄却した。 1審は過重労働を否定したが、高裁は「業務が大きな負荷を与えた」として過重労働とうつ病の因果関係を認めた。ただ、病院側の責任については「精神障害を起こす恐れを具体的に予見できず、安全配慮義務を怠ったとは言えない」と判断した。 今年、小児科医になった原告で長女の千葉智子さん(26)は記者会見で、「医師が守られない判決で残念。患者さんの命を守るには医師の心身の健康が必須だと実感している。同じ思いをする家族が二度と出ないように願っています」と語った。川人博弁護団長は「判決はうつ病との因果関係を認めたのに、病院側の責任を否定した。使用者責任が問われず、今後、過重労働が拡大しかねない」と批判した。 中原さんの自殺を巡っては、東京地裁の別の裁判で、労災と認めた判決が確定している。【銭場裕司】 日本では医師を交代性で働かせるシステムはほとんど無く、入院患者への夜間の診療も、救急医療も、昼間普通に働いている医師に丸投げする。日常的に急患を受けている病院では、常勤医が減れば、残った医師は不眠不休で働くことになる。 今回の判決では、病院には医師の労務管理をする義務はなく、勝手にボロボロになるまで働いた医師が悪いと言うことのようだ。でも、医師が「もうこれ以上働けない」と自分の裁量で急患を断れば、どのようなことになるか目に見えている。ぎりぎりの状態で働いているときに、「それでも医者か」と言われるのは、耐えられないだろう。 前回エントリのミラーサイトのコメント欄には、病院や医師を糾弾するブログのURLが紹介されている。いつもどのような状況で救急医療を行っているのか考えたことも無い人たちが、何も知らないまま拳を振り上げるのであれば、逃げるほか無いだろう。一度救急医療を完全に放棄した方が良いと、本気で思う。 裁判は最高裁まで行くのだろう。中原医師のご家族と支援の方々には、心からのエールを送りたい。
2008.10.25
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自衛隊の本業は国土防衛です。災害派遣などの仕事をすることはあるものの、本業の機会は未だありません。それでも多額の予算を費やして、自衛隊は運営されています。 救命救急活動を除いた消防署の消火部門も、自衛隊ほどではありませんが、出動するより待機の方がずっと多いはずです。それでも、やはり税金を使って運営されています。 一方、救急医療は自前で運営しなければなりません。実際に救急医療を担うのは、他の仕事を免除されて救急のために待機している医師ではありません。通常の業務をしながら、休日や夜間は当直という名の救急医療をさせられている医師なのです。 本当に救急医療を充実させたいのであれば、自衛隊や消防署と同じように、救急医療のためだけに待機している医師を配置しなければなりません。当然、それなりのコストがかかります。でも、国防や消火活動に予算を使えるのであれば、救急医療にだって予算をかけられるはずです。脳出血に「対応できぬ」と7病院が拒否し、妊婦が死亡 記事:読売新聞 【2008年10月22日】 脳出血を起こして緊急搬送先を探していた東京都内の妊婦(36)が、七つの医療機関から受け入れを断られ、出産後に死亡していたことが22日、わかった。 いったん受け入れを断り、最終的に対応した都立墨東病院(墨田区江東橋)は、緊急対応が必要な妊婦を受け入れる病院として都の指定を受けていた。都は詳しい経緯を調べている。赤ちゃんは無事 都などによると、今月4日午後6時45分ごろ、江東区に住む出産間近の妊婦が頭痛や吐き気などを訴え、同区内のかかりつけの産婦人科医院に運ばれた。医師は、墨東病院に電話で受け入れを要請したが、同院は「当直医が1人しかいないので対応できない」と断った。医師は引き続き、電話で緊急対応が可能な病院を探したが、「空きベッドがない」などの理由で、同院を含め計7病院に受け入れを断られた。 医師は約1時間後、再び墨東病院に要請。同院は別の医師を自宅から呼び出して対応し、同9時30分ごろから帝王切開で出産、同10時ごろから脳出血の手術をしたが、妊婦は3日後に死亡した。赤ちゃんは無事だった。 墨東病院は、母体、胎児、新生児の集中治療に対応できる「総合周産期母子医療センター」として1999年6月に都が指定。 同センターに関する都の基準では、「産科医を24時間体制で2人以上確保することが望ましい」とされている。しかし、同病院では、産婦人科の常勤医が2004年に定員の9人を割ってから、慢性的に不足しており、現在は、4人にまで減っていた。 そんな中、当直も担当していた非常勤産科医が6月末で辞め、7月以降は土日、祝日の当直医を1人に縮小しており、妊婦が搬送された4日は土曜日だった。 都の室井豊・救急災害医療課長は「搬送までの時間と死亡との因果関係は不明だが、もう少し早ければ、命が助かった可能性も否定できない。産科の医療体制が脆弱(ぜいじゃく)だった点は問題で、早急に対策を取りたい」として、受け入れを断った他の病院についても、当時の当直体制など、詳しい事情を聞いている。◇[解説]産婦人科の「緊急」指定病院なのに… 妊婦の救急搬送を巡っては、奈良県の大淀町立大淀病院で一昨年、出産の際に意識不明になった女性が、19病院から受け入れを断られ、搬送先の病院で死亡した例がある。この悲劇が繰り返された。 読売新聞社は、16日の医療改革提言で、救急たらい回し解消のため、24時間、どんな患者も受け入れる救急病院「ER」(救急治療室)を全国400か所に整備することを求めた。都立墨東病院は、妊産婦や新生児の緊急治療を行う総合周産期母子医療センターに指定されているうえ、ERでもあるが、産婦人科の当直医が1人だけで、1回目の受け入れ要請を断らざるを得なかった。産科の医師不足が影を落とした形だ。 医師不足対策には、病院同士が協力し、医師を拠点病院に集める「集約化」を進めることが重要だ。 大阪府泉佐野市と貝塚市の両市立病院では、ともに産婦人科の当直医が1人体制だった。そこで今春から、夜間は貝塚病院の医師が泉佐野病院に出向き、同病院の当直を2人にして救急体制を強化した。貝塚病院産婦人科は当直医を置かず、婦人科手術を引き受ける。 病院が役割分担し、広域で産科救急を支える仕組みを早急に整えるべきだ。 (医療情報部 山口博弥) 今回の事例を教訓として、どのような対応策をとるつもりなのかで今後の医療の方向が決まるような気がします。体制の不備を反省し、予算をかけて万全の体制を構築すべく努力するのであれば建設的な方向となるでしょう。断らざるを得なかった病院をバッシングして事足れりとするのであれば、お先真っ暗です。 東京でこのような事態が起こるのですから、すでにお先真っ暗と言えるのかも知れませんが。
2008.10.22
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医者が「おひとよし」であったことは間違いないが、そのために奴隷だと思われているようだ。僻地で不便な思いをしながら働く義理はないと思いながら、そこで暮らすひとのことを思えばこそ、頑張って働いてきた。自由経済のもとでのことなのだから、本来なら好待遇で迎えられてもおかしくないのだが、医療だけはガチガチの統制経済なので、待遇は決して良くはない。規模が小さい分、人員も少ないので、休みも自由時間もなく働くことになる。かつては、住民の感謝だけを生き甲斐に留まっていたのだろう。 今では、夜中も休日もなく働くことが当然だと思われている。それどころか、夜中だろうが休日だろうが、何で専門医がいないのだと糾弾される。結果が悪ければ医療ミスだと責められ、場合によっては刑事被告人だ。 医師のモチベーションの続かない環境になれば、医師が僻地から逃散するのは当然のことだ。医師計画配置に前向き…厚労省医療課長「よい規制」 厚生労働省の佐藤敏信医療課長は18日、秋田市内で講演し、医師の計画配置について「結論から言うと、計画配置をする考えはある。よい規制だ」と導入へ前向きな考えを示した。 佐藤課長は、医師の計画配置には、職業選択の自由や官僚統制などを理由に批判があるとしながらも、「今はハコ(病床数)の規制があるのに、人の規制はできない」と現状に疑問を投げかけた。講演後の質疑に答えた。 医師の計画配置を巡っては、読売新聞は16日に発表した医療改革の提言で、医師不足解消を図るため、若手医師を地域・診療科ごとに定員を定めて配置するよう求めている。(2008年10月19日 読売新聞) 16日の記事というのは見ていないのだが、ちょうちん記事を書いて、それを厚労省がヨイショする、下手な芝居のような気がするのだが考えすぎだろうか。 それはともかく、こんな事が上手く行くとはとても思えない。もちろん、国家権力が本気で力任せにやれば、配置までは出来るだろう。でも、若手が役に立つのは、その上の指導医がいるからだ。実際にこんな制度が出来れば、若手医師の教育はおろそかになるし、医師という職業の人気はなくなるし、レベルの低下は免れない。 「レベルなんかどうでも良いから、医師が来てくれるだけでよい」とか、「結果がどうあろうと、決して文句なんか言わない」というような、昔のようなコンセンサスがあるなら、これほどの医療の崩壊はなかっただろう。でも、医師も患者も、もう昔には戻れないよね。 (しばらく更新が滞っていましたが、南の島でリフレッシュしていました)
2008.10.21
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実を言うと、私はこんにゃくゼリーの実物を見たことがありません。スーパーなどで袋に入った製品を見たことはありますが、袋の中身を見たことはなく、もちろん食べたこともありません。そんな私がマンナンライフの肩を持つのを不思議に思うかも知れませんが、理不尽なことを放置することは自分にとってもマイナスだと感じているので、再度取り上げます。 確かに事故で人が亡くなることは悲しいことです。でも、残念ながら、事故で亡くなる事例をゼロにすることは不可能です。リスクを排除するのであれば、利便性や経済に与える影響といった社会的コストと有効性とを勘案し、コスト・パフォーマンスに優れた方策を採る必要があるのではないでしょうか。 目に付いたところを何となく気分で叩くようなことは、井戸端会議ならともかく、国がやってはいけません。こんにゃくゼリー:マンナンライフが製造中止 こんにゃく加工品メーカー「マンナンライフ」(本社・群馬県)は7日、兵庫県の1歳男児が今年7月に食べ窒息死したミニカップ入りこんにゃくゼリー「蒟蒻(こんにゃく)畑」の製造中止を決め、卸売会社に通知した。マ社品質保証室は「警告マークを大きくするなど行政に要請された改善策に応じられないため」と説明している。 マ社によると、製造中止となるのは、蒟蒻畑(25グラム12個入り)の8種類▽蒟蒻畑ライト(24グラム8個入り)の6種類▽蒟蒻畑コンビニ専用商品(25グラム6個入り)の3種類。8日の出荷で販売をいったん終了する。製造再開のめどは未定という。 今回の事故を受け農林水産省は、子供や高齢者が食べないよう警告する外袋のマークの拡大やミニカップ容器にも警告を表示するなどの再発防止策を要請。業界団体は取り組みを表明していたが、マ社は「時間的、物理的に対応が困難で流通に混乱を招く恐れがある」と判断したという。既に流通している商品は「商品が危険だから製造中止にするわけではない」として自主回収せず、テレビCMなどで子供や高齢者は絶対に食べないよう注意を呼びかける予定だ。 国民生活センターの統計では、こんにゃくゼリーによる窒息死17件中3件がマ社の商品で起きている。全日本菓子協会によると、こんにゃくゼリーの売り上げは07年度約100億円で、うち約3分の2がマ社。マ社の売り上げの約9割は「蒟蒻畑」が占める。【柴田真理子、板垣博之】毎日新聞 2008年10月8日 2時30分 業界最大手の主力商品の製造中止というのは結構なコストだと思います。それで13年間に蒟蒻畑による3人の窒息死が免れたとしても、あまりにパフォーマンスは悪いと言えないでしょうか。もちろん、他社のこんにゃくゼリーやあめ玉による窒息死が増えないと言う保証もありません。 前のエントリでも示したように、食物による窒息死は年間4千人に上ります。こんにゃくゼリーによる死亡事故は13年間に17人です。年間1.3人です。原因としては、圧倒的に少数派です。こんにゃくゼリーだけをやり玉に挙げても、事故の減少には結びつきません。まして、マンナンライフの製品での死亡事故は3人です。 シェアから言えば、10人以上の死者が出ていてもおかしくないのですから、マ社の製品は比較的安全であるとも言えます。比較的安全な製品を作っているのに大手だからというだけで叩かれ、製造中止に追い込まれるのであれば、より危険な製品の割合が増えることになります。かえって事故が増える気がするのですがいかがでしょうか。また、こんにゃくゼリーそのものが禁止された場合でも、代わりにあめ玉などが与えられた場合、より安全であるという保証はあるのでしょうか。野田聖子大臣様、お考えをお聞かせ願えますか。
2008.10.10
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マイミクさんの日記やYosyan先生のブログで、こんにゃくゼリーだけの危険性が報道されていることを知りました。今朝の朝日新聞では社説にまでなっています。でも、こんにゃくゼリーの窒息死に占める割合はほんのわずかなのに、こうした反応でよいのだろうか、とても疑問に思います。こんにゃくゼリー―悲劇を重ねないために 2008年10月5日(日)朝日新聞社説 「行ってきます」と玄関を出た息子が、元気な姿で家に帰ってくることはなかった。学童保育所で口にしたこんにゃく入りゼリーをのどに詰まらせ、わずか7歳でこの世を去った。 その無念さと再発防止への思いを、母親が当時の福田首相の前で切々と訴えた。つい先月、東京都内で開かれたシンポジウムでのことだ。 それからひと月もたたないうちに、幼い命がまた失われてしまった。 今度の犠牲者は兵庫県に住む1歳9カ月の男の子だ。凍らせたこんにゃく入りゼリーが原因だった。 小さな容器に入ったこんにゃく入りのゼリーは、歯ごたえがあって根強い人気がある一方で、窒息事故の恐れが以前から指摘されていた。普通のゼリーよりも硬くて弾力性が強く、のみ込む時にのどをふさぎやすい。 90年代に死亡事故が相次いで問題となり、国民生活センターが注意を呼びかけてきた。それでも被害はなくならない。死亡した人は95年以降、わかっているだけで17人になり、病院へ運ばれた人はさらにたくさんいる。とりわけ子どもとお年寄りの犠牲が多い。 なぜ、事故をなくせないのか。 のどに詰まらせやすい子どもとお年寄りに対し、業界団体は「たべないで」と注意する統一マークを決めて商品につけ始めた。だが、危険があることが消費者に十分伝わっているとは言いがたい。見た目は普通のゼリーと区別しにくいため、つい食べさせてしまった保護者もいるだろう。 政府も抜本的な対策をとってこなかった。ゼリーの形や硬さを規制する法的な枠組みがないからだ。 このままではまた事故が起こりかねない。ここは消費者もメーカーも政府も、それぞれの立場で被害を防ぐ努力をすべきだ。 消費者は何よりも、こんにゃくゼリーで命を落とす場合があることを知っておかねばならない。小さな子やお年寄りが絶対に食べないように、親や周りの人が目配りする必要がある。 事故を受けて、野田消費者行政担当相がゼリーをつくった企業の幹部を呼び、「小さな警告マークのみの商品は自主回収してはどうか」と促した。さすがに手をこまぬいているわけにはいかなかったのだろうが、もう一歩対策を進められないものか。 窒息の引き金となる食品は、餅をはじめ、ほかにもたくさんある。だが、こんにゃく入りゼリーはEU(欧州連合)や韓国では販売が禁じられた商品である。そうしたことも念頭に、対策作りに知恵を絞ってもらいたい。 メーカーは包装袋の警告文を増やし、大きな表示もするという。それは当然だが、のどに詰まりにくい安全な商品をつくる工夫を改めて求めたい。それは企業の社会的な責任である。 今回私が驚いたのは、以前からあれだけ騒がれているのに、こんにゃくゼリーによる窒息死が年間一人強だと言うことでした。内閣府食品安全委員会に依れば、以下に示すように、年間4千人が食物による窒息で亡くなっています。食べ物による窒息事故を防ぐために 平成20 年5 月2 日作成平成20 年5 月8 日更新内閣府食品安全委員会 1 乳幼児、高齢者などでは食べ物による窒息がおきやすい乳幼児、高齢者などでは、食べ物による窒息がおきやすいため、その予防や応急手当について知っておくことが必要です。 気道が3~6 分間閉塞されると死亡することもあります。乳幼児で窒息が起こりやすいのは、臼歯がなく食べ物を噛んですりつぶすことができない、また、食べるときに遊んだり泣いたりするなどのためです。また、高齢者では摂食・嚥下(食べ物を口から食道を経て胃に送る)機能が低下しているため、ご飯やパンなど粘りのある食べ物など咀嚼(噛み砕くこと)しにくく大きな塊のまま喉に入って窒息に至ることもあります。 乳幼児で窒息を起こす原因になった食べ物としては、ナッツ類、丸いあめ、ブドウ、プチトマト、もち、ちくわ、たくあん、こんにゃく入りゼリー、生のにんじん、棒状のセロリ、リンゴ、ソーセージ、肉片、こんにゃく、ポップコーン、おせんべいなどが報告されています。厚生労働省の統計によれば、食べ物による窒息の死亡者数は、最近では毎年4 千名を超えています。 (窒息でなくても、食物の誤嚥が引き金になった死亡を含むようです) このような状況で、年間二人にも満たない死因に対するネガティブキャンペーンをするより、リスクを見抜き、未然に事故を防ぐよう啓蒙することの方が大切なのではないでしょうか。内閣府食品安全委員会は以下のような注意点を挙げています。社説を書くのであれば、この程度のことは書くべきだと思います。また、乳幼児などでは、特に以下に注意しましょう。* 誤って気管支に入りやすいピーナッツなどの豆類は3歳になるまでは食べさせない。*急停車する可能性のある車や揺れる飛行機の中では食べさせない。*あおむけに寝た状態や、歩きながら、遊びながら、ものを食べさせない。*食べ物を口に入れたままの会話、テレビを見ながらの食事はさせない。*小さな食べ物を放りあげて口で受けるような食べ方をさせない。*食事中に乳幼児をびっくりさせるようなことはしない。*乳幼児に食べることを無理強いしない。*年長の子どもが乳幼児に危険な食べ物を与えることがあるので注意する。*嚥下障害をもつ障害児では食べ物による窒息がおこりやすく、十分な注意が必要である。 事は食品だけに限りません。柵がなければ崖や池に落ちてしまうように育つより、崖や池の危険性を認識できるように育った方が良いと思いませんか。
2008.10.05
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今までにもフェンタニルの不正使用は何例かあった。ふらつくくらいで多幸感があるようには思えないが、酒の酔い方も人それぞれなので、やめられない人もいるのだろう。もちろん犯罪行為で、許されることではない。 まあそれでも、フェンタニルなら命まで落とす可能性は少ない。でも、レミフェンタニルは別だ。呼吸抑制や循環抑制が強く、患者に投与するときにも微量注入装置を使って1時間あたり数mlという精密な投与方法を採る。投与中は通常人工呼吸を行う。麻酔科医が自分にレミフェンタニルを投与することがあれば、それは自殺するときだと思っていた。 以下の記事を読む限り、どうも常習者らしい。今までにもレミフェンタニルを使ったことがあるのだろうか。それとも、今まではフェンタニルだけだったのだが、レミフェンタニルも試したくなって、その結果死亡したのだろうか。手術中に麻薬持ち出し自ら注射、変死の麻酔医書類送検へ さいたま市見沼区の「東大宮総合病院」(坂本嗣郎院長、317床)で5月に変死した男性麻酔科医(当時42歳)が、死亡直前に医療用麻薬を持ち出して自らに注射していた疑いが強まり、埼玉県警は近く、この医師を被疑者死亡のまま麻薬及び向精神薬取締法違反(治療目的外施用)の疑いで書類送検する。 医師の両腕には多数の注射跡があり、県警は常習的に麻薬を使っていた可能性もあるとみて調べている。 病院によると、医師は5月12日午前、同病院で手術中に行方が分からなくなり、昼過ぎに手術室のトイレで心肺停止状態で発見され、間もなく死亡が確認された。県警の司法解剖の結果、死因は急性循環不全と分かった。 捜査関係者によると、医師の血液からは、当日担当した手術で使った医療用麻薬のフェンタニルとレミフェンタニルが検出された。手術中に一部を持ち出し、腕に注射したとみられる。トイレに落ちていた使用済みの注射器からもレミフェンタニルが検出された。 医師は昨年4月に非常勤として着任。同年9月から週4日勤務の常勤となり、月約30回の手術にかかわっていた。病院には当時3人の麻酔科医がいた。県警は「麻薬の使用と死因との直接的な因果関係は不明」としながらも、麻薬によってショック症状が引き起こされた可能性は否定できないとしている。 病院の説明によると、医療用麻薬は薬剤部が鍵付きの保管庫で管理。麻酔科医は手術の度、使用量や種類を記した処方せんを薬剤部に提出し、薬剤師から受け取る。麻酔後は緊急時に備え、手術に立ち会うか院内に待機。手術後は麻酔科医が使用量などを記録し、余った麻薬は薬剤師が立ち会いの下で廃棄するか、保管庫に戻していた。 病院は「管理体制に問題はなかった」としているが、県警は医師が記録を改ざんし、実際の使用量に自分で使った分を水増しして報告していた可能性もあるとみている。 病院や捜査関係者によると、医師は1991年に医師免許を取得後、東京都内の複数の総合病院に麻酔科医として勤務。昨年10月には埼玉県の「麻薬施用者」の免許を受けていた。(2008年10月2日14時36分 読売新聞) 状況からは常習者であったことは事実と思われる。そうだとすれば、とても残念だ。不正使用そのものも当然あってはならないことだが、レミフェンタニルで楽しくトリップできると思っている麻酔科医が麻酔業務をしていたことも恐ろしい。今日は記事の稚拙さを指摘する元気もない。 こういうことがあると、また仕事がやりにくくなるんだよなあ。
2008.10.04
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伝聞だけで誹謗中傷するのは愚かなことです。更に処分まで求めるとしたら、名誉毀損や誣告罪にあたらないのかと思います。法律については素人なのですが、非難の対象となっている人物が堂々とブログなどでいきさつを説明していることを知っているだけに、八つ当たりもいい加減にしてくれという思いがします。 以下の記事で処分を求められているとされる医師とは紫色の顔の友達を助けたい先生です。リンク先を丹念に読めば、事故の概要が分かります。そして、この先生がどのような仕打ちを受けていたのかを知れば、怒りに胸が震えることでしょう。多くの人がそれぞれの思惑でこの先生のことを鞭打ってきました。たとえ我が子を失ったのだとしても、責任のないこの先生を、さらに鞭打つ権利があるわけではありません。 当時の担当医の処分を要請 手術事故で死亡女児の両親 記事:共同通信社【2008年10月1日】 2001年に東京女子医大病院で心臓手術を受けた女児=当時(12)=が死亡した事故で、父親の平柳利明(ひらやなぎ・としあき)さん(58)が30日、当時、人工心肺装置を担当した医師について「事故隠ぺいのためカルテ改ざんをした疑いがある」として、厚生労働省の医道審議会で行政処分を検討するよう求める申立書を同省に提出した。 平柳さんは「手術にかかわった医師や技師の公判での供述などから情報を得ており、確度は高い」と主張。厚労省医事課は「提出を受けた資料を精査し、医道審の委員とも相談しながら対応を考える」としている。 この医師は業務上過失致死罪に問われたが、東京地裁で無罪判決を受け、検察側が控訴している。カルテ改ざんに関する刑事責任は問われていない。 一方、手術にかかわった別の医師は、証拠隠滅罪について執行猶予付きの有罪が確定。医道審は05年、1年6カ月の医業停止処分とした。 厚労省で会見した平柳さんは「医道審は、刑事罰が確定した事例だけを行政処分の対象としているのが実情。医療倫理上問題があると疑われるケースもきちんと対応すべきだ」と話した。 カルテを改ざんしたと言うのであれば、少なくともどのような改ざんであったのか明らかにすべきです。単なる思い違いの訂正であっても改ざんと言われることもありますので、どの程度悪質なものだったのか分かるような記事を書くべきです。同じ事例で、執刀医はカルテを改ざんして有罪判決を受けています。裁判で改ざんについて問われていないことの意味を考えれば、この医師が悪質な改ざんをしていないと判断することが妥当と思われます。 「手術にかかわった医師や技師の公判での供述などから情報を得ており、確度は高い」という内容を見ると、平柳氏自身も、改ざんと言われるようなものがあったのかどうかも分からないのではないかと思います。ことは1人の医師の名誉に関わる内容ですから、具体的な「改ざん」の事実をつかんでから記事を書くべきですし、事実をつかんでいるなら、その内容を書くべきです。 我が子に死なれた親の気持ちはつらいものでしょうが、だからといって、責任のない人を血祭りに上げて良いわけではありません。
2008.10.02
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