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ご多分に漏れず、私の勤務地近辺も救急医療が崩壊しつつあります。しばらく前に近隣の病院の代表者が集まり、話し合いが持たれました。幹事役の病院の院長が司会進行を行い、冒頭で次のように述べました。「二次救急から撤退する病院も出てきているが、行政は動こうとしない。各病院の現状と、今後の対応を確認したい。医療圏のニーズに応えるために、何が出来るか考えて欲しい」。 各病院の代表者は、後方病院さえ確保できれば出来るだけ救急患者を引き受けると言いました。その後方病院と目されているのは私の勤務先です。確かに24時間どの科の手術でも出来ますが、夜間休日は一度に一例だけです。どんどん送られても対応出来ません。もちろん労働基準法を無視して働く宿・日直医と、無料で待機当番をこなす医師をこき使った上での話です。 と言うわけで、院長代理で代表として出席していた私はこう言いました。「行政が何もしないのに、我々が頑張る必要はないでしょう。我々は出来ることだけをすればいいのです。出来ないことまでする必要はありません。無理をして訴訟や刑事訴追を招く危険に医師をさらすわけには行きません」。 救急医療が崩壊して困るのは、第一には患者です。次には職務怠慢を咎められる行政のはずです。病院は何も困ることはありません。バッシングを受けたからと言ってうろたえず、だったら救急をやめますと、どうして言えないのでしょう。 救急医療は病院が手を挙げてやる建前にはなっていますが、実際には行政から押しつけられているのです。日本で人口当たりの医師数が最も少ない埼玉県の医療事情も、崩壊寸前のようです。押しつけられても、出来ないものは出来ません。無理をさせれば一挙に崩壊するのでしょうね。周産期医療 現場からの報告<上> 疲弊する医師 2008年12月23日 東京新聞 県は新生児集中治療室(NICU)の増床を目指しているが… 「二十四時間、三百六十五日の周産期母子医療センターとは名ばかり。それでも補助金をもらっているのかと問われれば、今すぐにでも県に指定返上願を出す用意はある」 本紙が県内の各周産期母子医療センターに周産期医療の現状をアンケートをしたところ、深谷市の深谷赤十字病院からの回答には悲痛な現場の叫びが書かれていた。同病院は県北地域で唯一、地域周産期母子医療センターに指定されている。当直を二人体制にしたいが常勤医師不足でままならない。「センターとして機能しているのは平日の日勤だけ」という。 県内の周産期医療は、設備が充実しリスクの高い救急医療ができる総合周産期母子医療センターに指定されている埼玉医大総合医療センターと、産科と小児科を併設し比較的高度な医療ができる地域周産期母子医療センター五カ所の計六医療機関が中核を担う。来年度には地域センターが一カ所増える見通しだ。 地域センターでは常勤医師は五人が多く、休日夜間の当直体制は多くが一人で対応している。埼玉医大総合医療センターは四人で当直しているが、それでも「三十六時間勤務はざら」(関博之教授)という。 厚生労働省の二〇〇六年の調査では、県内の産科医は出産適齢人口十万人当たり二七・六人と全国で二番目に少ない。施設面では今年四月一日現在、人口七百万人で総合センター一カ所、地域センター五カ所だが、東京都は人口千二百万人で総合九、地域十三、人口二百万人の栃木県は総合二、地域八。県内の医療資源がいかに貧困かが分かる。 「行政は、新生児集中治療室(NICU)と総合周産期母子医療センターを充足するための対策を放置している。妊婦に『野垂れ死にしろ』と言っているに等しい」と話すのは、埼玉医大病院(毛呂山町)の岡垣竜吾准教授。 県はNICUの増床を目指すが、医師不足で既存のNICUの運営すら厳しいのが現状といい、同病院の板倉敦夫教授は「設備を充実してもマンパワーが追いつかない。医師の養成はお金ではカバーしきれない」と、効果を疑問視する。 関教授は県内の施設、医師数不足を考えると「これまで救急の妊婦の死亡例が県内でなかったのは奇跡だ」と話した。ある関係者はつぶやいた。「厳しい勤務で医師が次々に辞めている。県内六カ所の周産期母子医療センターで、撤退する病院が出てくるかもしれない」 ◇ 全国で周産期医療が崩壊の危機に瀕(ひん)している。もはや、一医師や一病院の努力で患者の命を守ることができる状況は超えており、国全体で医療を立て直さなければならないところまで来ている。一方で、救急搬送で妊婦の受け入れ拒否が各地で問題化するなか、県内では救命が必要な妊婦を原則受け入れる母体救命コントロールセンターが二十四日にスタートするなど、新しい取り組みも始まりつつある。県内の周産期母子医療の現状と課題を探る。
2008.12.29
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医師法21条に「医師は、死体又は妊娠4カ月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」と規定されています。問題は異状とは何かと言うことです。本来は犯罪の可能性のある死を届けなさいという趣旨だったはずなのですが、法医学会の異常死ガイドラインなる物が発表されて、拡大解釈により、医療行為に伴い希に起こる重大な合併症も対象になるかのごとく言われるようになりました。 最近は問題になると困るからと、積極的に医療関連死を届けるようになりましたが、届けられた警察には過失の有無を判断することは出来ません。届けてきたのだから事件なのだろうと捜査を開始することも多いように思われます。事は刑事事件ですから、捜査の対象となった医師は大変です。たとえ費用がかかっても、保険から支払われることもありません。そうした風潮の中、死亡という重大な結果であろうと、やむを得ない合併症は届けないという判断を下した病院があります。過って肝臓刺し失血死 茅ケ崎市立病院、警察に届けず2008年12月28日 朝日新聞 神奈川県の茅ケ崎市立病院呼吸器外科で9月下旬、患者の胸部に特殊な管を差し込む際に過って肝臓を刺し、患者が失血死していたことが病院側への取材で分かった。病院側は「出血は、通常の手術を行った結果、起きた合併症」として過失を否定、警察に届けていなかった。 病院側の説明によると、死亡したのは60代後半の女性で、「気胸」を患っていた。肺の穴から空気が漏れ、肺と肋骨(ろっこつ)の間のすきま(胸腔=きょうくう)=にたまって呼吸が苦しくなる病気で、同病院で春から9月までに3回の手術を受けた。胸腔にウミがたまる「膿胸(のうきょう)」を繰り返していたという。 このため、呼吸器外科の医師が、「ドレーン」と呼ばれる管を胸の表面から挿入してウミを出そうとしたところ、挿入口から血液があふれ出した。ドレーンの先端の針によって肺の下にある肝臓が傷つけられており、4時間後に出血によるショックで患者は死亡したという。死亡は、仙賀裕院長らに報告され、市幹部にも報告された。病院内の医療事故などを扱う安全管理委員会で、「重症の合併症」と判定され、警察に届ける必要はないと決めたという。 失血死を重症の合併症としたことについて、安全管理委員長の望月孝俊・副院長は「担当医からの聞き取りや、カルテを調べた。医療の世界では、今回のような出血は、一般的に行われる医療行為、手術を行った時に起こる合併症とされており、ミスではない。止血の措置もちゃんとやっていた。家族にも原因を説明し、警察に届けないでいいと言われた」と説明している。(松本健造) 記事からは警察の動きは見えませんが、病院の言い分が通ることを望みます。家族との間でトラブルになっているのならともかく、家族が問題にしていない事例まで警察がしゃしゃり出てくる必要はないのではないでしょうか。
2008.12.28
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最近は報道で多少の不満を感じてはいても、頭に血が上るようなことは少なくなったと感じていた。少しは医療に対する認識が改まったのかも知れないと思っていた。でも、そんなことはなさそうだ。続々と腹の立つ報道はある。後出しジャンケンは健在だ。佐賀県、1000万円で和解 腎臓誤摘出損賠訴訟 記事:毎日新聞社【2008年12月25日】 県立病院好生館で手術を受けた際、誤って腎臓を摘出されたとして、佐賀市の女性が県に約2300万円を求めていた損害賠償請求訴訟は24日、佐賀地裁(神山隆一裁判長)で和解が成立した。県が女性に和解金1000万円を支払う。 和解案では「事前に十分な検査をし、十分な説明を行った上で治療法を決定すべきだった」と好生館のミスを指摘したうえで「原告に説明していれば腎臓の全摘出の同意をしたとは考えられず、全摘出したことは過失が認められる」とした。 訴状によると、女性は01年7月、悪性腫瘍(しゅよう)があるとして好生館で右の腎臓の全摘出手術を受けたが、術後、手術ミスを知り、精神的にショックを受けた。 女性は和解後、「医療に携わる人は高い技術や技能、モラルを持って働いてほしい」と話した。【高芝菜穂子】 術前に全例良性か悪性かの判断が付くのならミスと言われても仕方がないが、そんなことは不可能である。悪性の疑いがあれば手術するだろう。実際にどのような説明がなされたのか知らないが、悪性の可能性が高いが良性のこともあり得ると説明の上で手術を見合わせた場合、実際に悪性であれば、説得すべきだったと言われるのだろう。(前回の日記参照) そもそも手術すべきだったかどうかの話なのに、手術ミスというのはどうなのだろう。手術そのものの失敗ではないだろうに。女児死亡で3月高裁判決 1審無罪の手術担当医 記事:共同通信社【2008年12月25日】 東京女子医大病院で2001年、心臓手術中に人工心肺装置の操作を誤り、群馬県高崎市の小学6年の女児=当時(12)=を死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われ、1審で無罪となった医師佐藤一樹(さとう・かずき)被告(45)の控訴審公判が24日、東京高裁(中山隆夫(なかやま・たかお)裁判長)で結審した。判決は来年3月27日。 死亡につながったとされる人工心肺装置のフィルターの目詰まりについて、弁護側は「当時の医学水準として、フィルターが水滴などで詰まる可能性を予見できなかった」とし、あらためて無罪を主張した。 検察側は「十分な配慮をして操作していれば事故を避けられた」と、1審判決の破棄を求めている。 05年の1審東京地裁判決は、フィルターの目詰まりから血液の循環が悪化、女児が重い脳障害となり、死亡したと認めた上で「危険性を予見できなかった」と判断。被告の過失を否定した。 佐藤被告は01年3月、人工心肺装置を不適切に操作し、脳障害で死亡させたとして02年6月に逮捕され、翌月起訴された。 この事例は今までにも取り上げたことがあり、今さらという気もするが、明らかに不当な起訴なので、また取り上げる。被告の佐藤先生は、たまたま問題のあるポンプを操作させられただけで、佐藤先生自体に問題があったわけではない。このことは科学的には検証済みだ。さっさと無罪判決を下して、検察の横暴を糾弾すべきと思う。当然のことながら、佐藤先生は手術担当医ではない。手術担当医と言えば、普通は執刀医のことで、拡大解釈しても助手までだろう。この見出しは何なのだろう。JA関連病院に賠償命令 1億2千万、広島地裁 記事:共同通信社【2008年12月25日】 医師が適切な処置を怠ったため車いす生活を余儀なくされたとして、広島県尾道市の女性(57)がJA尾道総合病院の経営母体に約1億6000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、広島地裁は24日、約1億2000万円の支払いを命じた。 判決理由で野々上友之(ののうえ・ともゆき)裁判長は「初めに診た内科医がすぐ整形外科医に診察依頼するなどしていれば、症状が悪化する前に適切な治療を受けられ、後遺症が現れなかったのは確実」と指摘した。 判決によると、女性は2001年8月23日、背中の痛みを訴え受診。髄膜付近が炎症を起こし、うみがたまる病気と診断され9月4日に手術を受けたが、下半身にまひが残り、自力歩行できなくなった。 背中の痛みを訴える患者は沢山いる。内科的疾患でも、その様な患者は多い。整形外科的な疾患とは限らないのだ。初診から手術まで2週間とかかっていないのに、それで遅いと言われても困る。初めから診断がついていれば、確かに急がなければならない事例だが、それは結果が分かっているから言えることなのだ。更に言えば、急いだからと言って、必ず後遺症が残らなかったという保証はない。 本当のジャンケンであれば、後出しがおかしいことは誰にでも分かる。でも、現実の事例では、様々なバイアスの影響を受けやすい。科学論文を書く際には、最も重要なのはバイアスの排除である。裁判官や報道陣も、後出しジャンケンのようなバイアスを防ぐような訓練を受けている必要があるのではないだろうか。 それにしても、治療さえ受ければ最善の結果を得ることが確実だという誤解は、どうにかならないのかなあ。
2008.12.26
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私はエホバの証人の信者が輸血を拒否していても、輸血以外に救命の方法がないときには輸血しようと思っています。そんな私を批判して、患者の自己決定権の尊重を説く医師もいます。そんな医師に、この事例の感想をお聞きしたいと思います。... 津山の医療過誤 女性遺族と和解 高裁岡山支部 6300万円賠償12/24-12:23-- 津山第一病院(津山市中島)で人工透析を受けていた久米郡美咲町内の女性(当時52歳)が死亡したのは、病院のずさんな管理体制が原因として、遺族が病院を経営する医療法人平野同仁会を相手取り、約1億3千万円の損害賠償を求めていた裁判は、広島高裁岡山支部で和解が成立した。病院は過失を認め、謝罪した上で賠償金6300万円を支払う。和解成立は19日。 女性は人工透析のため01年12月から同病院に通院。02年8月に肺水腫(しゅ)、低酸素脳症から心肺が停止し、05年11月に死亡した。 「ドライウエート」(透析直後の適正体重)を測定するCTR(体内水分量の心胸比)が、02年6月以前は50%未満と正常だったが、以降60%まで上昇。遺族は「透析室に医師が常駐せず、管理がずさんなため、水分過剰で肺水腫を起こした」として04年3月に提訴した。 06年9月の一審判決は「水分過剰から肺水腫に至った」と病院の過失を認め、約5840万円の支払いを命じたが、判決を不服として双方が控訴していた。 岡山日日新聞 一審より値上げしての和解です。裁判所からの強力な和解勧告があったものと思われます。和解を突っぱねれば、勧告案と同じかそれ以上に原告有利な判決を下すという意思表示があったのでしょう。よほど医師のミスがひどかったとの認定がなされた模様です。では、どんなミスだったのでしょうか。一審判決の報道を見てみましょう。 津山第一病院で医療ミス 5800万円賠償命令 津山市の津山第一病院で人工透析を受けた美咲町内の女性=当時(52)=が肺水腫となり死亡したのは、医療ミスが原因として女性の遺族が、病院を経営する医療法人「平野同 仁会」に1億3400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が29日までに岡山地裁津山支部であり、難波宏裁判官は病院側の責任を認め、約5800万円の支払いを命じた。法人 側は判決を不服として控訴した。 人工透析で体内から取り除く水分量を決めるために設けるドライウエート(適正体重)の変更を、患者が拒否した場合の医師の責任が争点となったが、判決は医師の注意義務違反 を認定した。 判決によると、女性は慢性腎不全のため同院に通院し人工透析を受けていたが、平成14年8月、肺に水がたまる肺水腫から植物状態に陥り、17年11月に死亡した。 「ドライウエートの設定を医師が誤ったまま放置したことで、水分過剰状態となり肺水腫が発症した」として医療ミスとする遺族に対し、法人側は「ドライウエートの変更を女性 が拒否していた。患者の同意なしに変更することは困難だった」などとして、注意義務違反はない、と主張した。 難波裁判官は判決理由で「患者が同意しない場合には、家族や第三者に説得を依頼するなども医師の注意義務に含まれる」と指摘し、女性の死亡と注意義務違反の因果関係を認めた。産経新聞 ようするに患者が拒否していようと、何とか説得しなければならないわけですね。このような事例がまかり通るのであれば、輸血を拒否して患者が亡くなれば、説得しなかった方が悪いと言うことになります。患者の自己決定権なんて言っても、現実はこんなものなのでしょう。
2008.12.25
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病院が救急患者を無条件で受け入れるのであれば、受け入れられる立場の患者も無条件で、あらゆる結果を受け入れるのでしょうか。そんなことはないのでしょうね。昭和大病院など3カ所を指定へ=妊婦の救急無条件受け入れ-都協議会 妊婦の搬送体制のあり方を検討している「東京都周産期医療協議会」(会長・岡井崇昭和大教授)は17日、重症妊婦の救急搬送を無条件で受け入れる医療機関として、昭和大病院(品川区)、日赤医療センター(渋谷区)、日大板橋病院(板橋区)の3カ所を指定することを決めた。救急搬送された妊婦が8病院に受け入れを拒否されて死亡した問題を教訓とし、受け入れ先探しで救命処置が遅れる事例の解消につなげる。 3カ所はいずれも都指定の総合周産期母子医療センターで、救急救命センターを備えており、指定されれば受け入れる意向。(2008/12/17-22:25)時事通信 いつでも、どんな患者でも受け入れられるような体制を構築するつもりなら、「無条件」と言う言葉は出てこないでしょうから、結局は現場任せになるのでしょう。既に他の患者の対応で忙しい場合には、どうするのでしょう。目の前の患者を危険にさらしてでも、後から来た患者を診るのでしょうか。 時間的余裕があれば非番のスタッフが呼ばれるのでしょう。安心して休める日が無くなれば、精神的疲労だけでも大変でしょうね。まして、実際に呼ばれて徹夜して、そのまま続けて働かされる人はたまりません。その上結果が悪ければ、何ですぐに来なかったのかと問いつめられ、訴訟沙汰になるようではやっていられないでしょう。 いつでも受け入れるという評判が立てば、近隣の医療圏から続々と急患が運び込まれるようになります。その様にして破綻した救急医療施設は既にあるのですが、そんな教訓は生かされないのでしょうね。既に先は見えています。本気で知恵とコストをかけるのでなければ充実した救急医療は不可能なのですが、行政にも国民にもそんな気はさらさら無いのが悲しいところです。 こういうことは教授にやらせても駄目なのです。だって、多くの教授は、最前線に立って重労働をしたり、対応不可能な状況に直面したりすることはありませんから。どうしても机上の空論になり勝ちなのです。本当に無条件で受け入れることになったら、逃散するのが先か、訴訟の嵐になるのが先か、どちらでしょうか。
2008.12.19
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手術時にガーゼなどを残してしまう事故は、未だに結構な数があるようです。届け出た医療機関がどのような施設なのか分かりませんが、4年間で平均22パーセントの医療機関に「置き忘れ」があったのでは、何らかの対策は必要でしょう。「置き忘れ」については、今までにも何度も書いていますが、やはりエックス線での確認が必要です。体内「置き忘れ」124件 ガーゼやメス、術後事故 記事:共同通信社【2008年12月10日】 日本医療機能評価機構(東京)は9日、全国約550の医療機関からの報告で今年9月末までの過去4年間に、手術後にガーゼや針を体内に残した「置き忘れ」の医療事故が計124件発生していたと発表した。 機構は「使った数を確認するためのルールを検討しなければならない」としている。 機構によると、置き忘れはガーゼが最も多く68件。縫合用の針12件、止血用の綿球10件、鉗子(かんし)類7件、チューブ類4件、メス1件など。発見が退院後になったのが35件あり、20年間もガーゼを体内に置き忘れ、障害が残ったケースもあった。 機構の後信(うしろ・しん)医療事故防止事業部長は「これまでも注意を呼び掛けていたが、置き忘れの件数が減少していない。エックス線撮影でのチェックなど、基本的な動作を徹底すべきだ」と話している。 残したもののうち、エックス線で発見できないものは綿球だけです。それ以外は、術直後にエックス線写真さえ撮っておけば、麻酔覚醒の前に摘出することは可能だったでしょう。導入するまでは面倒な気もしますし、不思議と一番安心したいはずの術者がいやがることが多いのですが、ルーチンに撮ることにしてしまえばすぐに慣れます。遺残物の確認以外にドレーンの位置も分かりますし、色々とメリットはあります。
2008.12.11
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今朝、テレビのニュースを観ていたら、大学生の間でカード詐欺に逢う人が増えているとのことだった。キャッシングカードを作り、渡すだけでアルバイト料を貰えると言われるのだそうな。そんなことをしたら、キャッシングされ放題なことくらい分からないのかと思うが、分からないらしい。 騙される人を見ると、何でこんな手口に引っかかるのかとあきれるが、実際に体験すると騙されてしまうのだろう。未だに振り込め詐欺に引っかかる人も多い。ほとんどの被害者は振り込め詐欺の存在を知っているのに引っかかる。 かなり古いエントリだが、振り込め詐欺に振り回された実体験を綴ったこのブログが臨場感があって面白い。もちろん分かっているのに騙されるのは、上述したように、このブログの著者だけではない。行員の制止振り切って送金 「おれおれ詐欺」被害者の3割 振り込め詐欺のうち「おれおれ詐欺」の被害者の約30%が、金融機関の窓口や現金自動預払機(ATM)で現金を振り込む際、行員から忠告や制止があったにもかかわらず、被害に遭っていたことが12日、警視庁の被害者調査で判明した。 被害者が制止を振り切る際に行員が負傷するケースも多いという。警察庁は「被害者が冷静になるまで根気よく説得を」と指導。「被害ゼロの日」としてATMを集中警戒する今月15日には警察官を大量動員し、利用者への注意喚起を強める。 調査は被害300万円以上の429人が対象。全員が「振り込め詐欺を知っていた」と回答した。368人(86%)は「自分が被害者になるという認識が無かった」が、約10%は「警戒していた」と答えた。 「詐欺を信用した理由」は「親族の声に似ていたため」が352人(複数回答可、82%)。約90%が金融機関の窓口かATMで払い込み、129人(30%)が「行員から注意された(が被害に遭った)」と回答した。2008/10/12 18:15 【共同通信】 俺は騙されないと、被害者を馬鹿にしているだけでは危ないのだろう。我が家では騙される可能性を考慮して、振り込む際の手順を決めた。どのような場合にも例外を認めないことで、少なくとも「オレオレ詐欺」のパターンには引っかからないはずだ。 医師の医療事故をネタにした振り込め詐欺も多いので、ここの読者もご用心あれ。実際に後輩の母上は振り込む一歩手前まで行った。制止を振り切って定期預金を解約するところまで行ったが、振り込む直前に娘の上司に連絡して事なきを得た。母上本人から一部始終を聞かせて貰ったが、パニックになって何も考えられなくなるものらしい。
2008.12.08
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いわゆる「割り箸事故」の件の医師の無罪が確定しました。そのこと自体は嬉しいのですが、未だにこのような記事が出ることにガッカリします。本当は有罪のはずなのだが、いろいろな壁に阻まれて、やむなく無罪になったと言わんばかりです。こうやって救急医療を崩壊させておきながら、実際に受け入れ不能で犠牲者が出ると、また医師を叩く。こんな事がいつまで続くのでしょうか。 共同通信社の医師無罪を伝える記事は2部に分かれています。その後段を引用します。関係者談話 《2》 記事:共同通信社【2008年12月4日】 ▽ただただ無念 杉野隼三(すぎの・しゅんぞう)ちゃんの両親の話 最高裁への上告にいちるの望みを抱いていたが、その望みが断たれ、ただただ無念でならない。裁判員制度の導入など、現在は刑事裁判の転機だが(過失も認めずに無罪と判断した)東京高裁判決は国民感覚や被害者、遺族を守っていく流れからは遠いように感じた。▽遺憾ながら上告断念 鈴木和宏(すずき・かずひろ)東京高検次席検事の話 上告を求める遺族の意向も踏まえて判決内容を慎重に検討したが、適法な上告理由が見いだせず、遺憾ながら上告を断念せざるを得ないとの結論に達した。▽医師として自信回復 根本英樹(ねもと・ひでき)被告の話 無罪確定で、医師として診療する自信が回復し、うれしい。隼三(しゅんぞう)ちゃんが亡くなったことについては、これまで同様、哀悼の意を表します。 両親や検察に取材すれば、当然このような答えが返ってきます。それを大きく報じれば、あたかもそれが世論であるかのようなミスリードが可能です。一応被告医師の発言も載せ、公平を装っていますが、被告は本音を言えないでしょう。本来なら、こんな事で有罪になるのはもちろん、事件になること自体がとんでもないことなのです。 隼三ちゃんが亡くなったこと自体は大変お気の毒なことですが、これはあくまで不幸な事故です。その時点では、私は親の責任だと言うつもりはありません。子供というのはチョロチョロするもので、親が完全に制御できるものではありません。一定の確率で、不幸な事故は起こるものだからです。 でも、その後がいけません。誰の責任でもないとはいえ、どうしても誰かの責任としたいのであれば、やはり親の責任です。その矛先を医師に向け、刑事罰まで求めるのは甚だしい考え違いと言わざるを得ません。 メディアも、救急医療についての何らかの見識をもとに記事を書くのであればともかく、何も分からないのであれば、まずは判決を尊重しましょう。以前、判決を不服とした田母神氏(今は退職)が「そんなの関係ねえ」とやったことで物議を醸しましたが、それを批判したメディアが同じ事をしているようでは一貫性がないのではありませんか。
2008.12.05
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医療の崩壊が誰の目にも明らかになってきています。でも、それを報道するメディアは崩壊を防ぐ気はなさそうです。その証拠に、未だに「受け入れ拒否」という言葉を使っています。 医師が「たらい回し」や「受け入れ拒否」と言う言葉を嫌っていると言うことくらい、メディアは把握していると思います。十分な診療の出来る体制でないときには受け入れたくても受け入れることは出来ません。それでも、受け入れ不能とは書きません。あたかも病院の悪意で受け入れないかのような表現に固執します。以前は無知によるものだと思っていましたが、さすがに今では意図的なものだと感じています。理由までは分かりませんが、この国のメディアは、医療を崩壊させようとしているのでしょう。 時々おじゃましているS.Y.’s Blogさんからの孫引きですが、面白い例えがありましたので紹介します。595 :卵の名無しさん [↓] :2008/12/02(火) 23:56:29 ID:7c8MHkj+010リットルまでの水しか入らないバケツには、11リットルの水は入りきれません。1リットルの水がこぼれてしまった事で、周囲の人間が「なんだこのクソバケツ!」と足蹴にしたら、バケツが凹んで、10リットル入れられたはずの物が、9リットルまでしか入らなくなりました。…っていうのが、今の日本の医療崩壊(ていうか、マスコミによる医療破壊)の現状。教訓とかそういう以前の問題。 ここで教訓というのは、次の朝日の記事のことだと思います。私も読んで違和感を持ちました。札幌未熟児死亡 2病院はNICU持たず、5病院は満床 札幌市の女性が自宅で早産した未熟児が昨年11月、病院に相次いで受け入れを断られ、8カ所目となる搬送先の病院で数日後に死亡した問題で、7病院は、未熟児の治療に必要な新生児集中治療室(NICU)が満床だったり、備わっていなかったりしていたことが分かった。当時、「たらい回し」の末の妊婦や胎児の死が問題化していた。なぜ、教訓は生かされなかったのか。 未熟児の受け入れを断った病院のうち、NICU病床を持つのは5病院(計42床)。 高度医療の中核である総合周産期母子医療センターに指定されている市立札幌病院(NICU9床)は「当日夜は満床のうえ、当直医師も別の新生児の治療中で引き受けられなかった」と説明。翌日になってNICUに空きができ、搬送先となった手稲渓仁会病院に転院を打診したが、「動かせる状態になかった」という。 札幌市内で最多の12床を備える天使病院は「当時の記録は残っていないが、満床で断ったと思う」、札幌医大病院は「満床だったので断った可能性が強い」と話した。北大病院は当日、院内感染対策でNICUを消毒中で、「受け入れ不能の状態だったはず」という。 消防と病院の意思疎通の不足を思わせる事態もあった。 7カ所目の要請先だった道立子ども総合医療・療育センターは、NICUは満床だったが「調整をしてみるので、後で連絡したい」と回答。だが市消防局は「それなら渓仁会に連絡する」とだけ答え電話を切ったという。同センターは「断ったという意識はない。最大限の努力はするつもりだった」と困惑する。 NICUを持たない2病院も要請を受けた。 札幌徳洲会病院は「この症状では当院での治療は無理という判断が当然。設備のある病院で手だてを作ってもらわなければ困る」と説明。KKR札幌医療センターも「毎晩産科医がいるわけではないし、そもそも急患は妊娠34週以降に限っている」と要請自体を疑問視する。 市消防局は、これら7病院への搬送要請について「次々と断られたので範囲を広げるしかなかった」と説明している。
2008.12.04
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3月に書いた日記の事例が起訴猶予になったとのこと。不起訴とは違い、刑事責任がないわけではないが大目に見ようと言うことなので、諸手をあげて喜ぶわけには行かないが、まあ、よしとしよう。只、最後の一言は気になる。記事:毎日新聞社【2008年11月29日】 新潟地検:業過失致死容疑の医師2人を起訴猶予「過失問うのは酷」 /新潟 新潟地検は28日、止血に失敗して患者を死亡させたとして業務上過失致死容疑で今年3月に書類送検されていた40歳と31歳の男性医師=いずれも十日町市=を26日付で起訴猶予にしたと発表した。 2人は04年3月、勤務していた刈羽郡総合病院で、柏崎市の男性(当時28歳)のへんとう腺の手術で、血が止まらなかったため止血手術を行った。その際、胃の中にたまった血を抜くのを怠って、筋弛緩(しかん)剤を投与し、血を逆流させ呼吸不全で死亡させた疑いで書類送検されていた。地検は「(筋弛緩剤を扱う)専門の麻酔医ではなく、二人に過失を問うのは酷な面がある」とした。【畠山哲郎】 ベテラン麻酔科医として、私だったら無事に済んだかと言えば、多分済んだと思う。でも、あくまで多分であって、絶対ではない。麻酔科医だったら罪を問われるのだとしたら、やっぱり恐ろしい。
2008.12.02
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