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昨日は小児科医師中原利郎先生の過労死認定を支援する会の主催するシンポジウム「あなたを診る医師がいなくなる!~過重労働の医師を病院は守れるのか~」に行ってきました。コメンテーターは岩田 喜美枝 氏、伊関 友伸 氏、前村 大成 氏 (元・都立府中病院院長 医師の労働環境問題に取り組んだ経緯あり)、松村 理司 氏の4名でした。いずれもひとりで講演会を開催してもおかしくない論客揃いでしたが、それぞれの持ち時間はわずか10分。もっともっと沢山のことを聴きたかったという思いでいっぱいです。 後半では、患者側の声という事で、「知ろう!小児医療 守ろう!子ども達」と言うグループの代表者の方のお話を聞くことが出来ました。患者の側から小児医療を守るための活動をなさっているとのことで、大変感銘を受けました。話しぶりからも人柄の良さが忍ばれ、このような人が増えてくれれば、医師のモチベーションも上がるだろうと思います。 話は変わりますが、このシンポジウムに参加するために乗った電車で、ちょっとしたハプニングがありました。11時頃の上野駅、品川方面行きの京浜東北線の10号車(最後尾)で気分が悪くなった乗客が出たようです。救護のために少し出発が遅れるとの車内放送がありました。以前なら何も考えずに駆けつけるところですが、何かあれば責任を問われかねない昨今、「損害賠償」とか「業務上過失致死」と言う言葉が頭をよぎります。 でも、ドアが開いた瞬間、やはり体が勝手に動いてかけだしていました。私は先頭車両の1号車に乗っていたので、混雑するホームの端から端まで走ることになります。見れば私の前方にも何人か走っています。野次馬もいるかも知れないけれど、救護に向かっている人もいるのでしょう。結果から言うと、私が到着したときには救急搬送された後で、私の出番はありませんでした。連絡を受けた救急隊が待機していたようです。 免責が保証されない現状では、外出時に医療の依頼があったとしても、絶対に応じないという医師は結構います。私は絶対に応じないとまでは思っていませんでしたが、かなり躊躇すると思っていました。でも、依頼もないのに体が勝手に反応したことに本当にビックリしています。何のかんのと言っても、結局これが医者の性(さが)なのでしょう。強がりを言っている医師達も、実際に病人や怪我人を見たら、手を出すんじゃないかと思います。だからといって免責を保証する必要はないなんて言わないでくださいね。 シンポジウムの後は、某集団のオフ会。九州から長期出張で東京に来ている仲間の歓迎会。とても楽しかったのですが、これはまた別の話。
2008.06.29
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「謝罪」を辞書で引くと「罪やあやまちをわびること」とある。つまり、謝罪するということは罪や過ちを認めることなのだ。でも、「申し訳ない」とか「済みません」と言ったからといって、罪や過ちを認めたとは限らない。たとえば金メダルを期待されているアスリートが敗れたとき、「期待に応えられなくて申し訳ありません」と言ったとしても、何らかの罪や過ちを認めたわけではないだろう。それはただ単に、遺憾の意(残念な気持ち)を表明しているだけなのだ。医師だって、患者が亡くなれば「亡くなったのは私の責任ではありません」などといきなり言ったりはしない。「お役に立てなくて申し訳ありません」とか「大変残念です」などの遺憾の意を表明する医師が多いだろう。法的責任を問われかねない局面では、謝罪と遺憾の意の表明の区別は重要だと思う。医療事故「謝罪マニュアル」 社会保険連52病院で導入へ 全国で52の社会保険病院を運営する「全国社会保険協会連合会」(全社連、伊藤雅治理事長)は、医療事故が起きた際、患者本位の姿勢で対応する方法を示した米国の「医療事故・真実説明・謝罪マニュアル」をグループ病院で実施することを決めた。医療事故の際、患者側に十分な説明をしない病院が少なくない中、大手病院グループが謝罪マニュアルの実施に踏み切るのは初めて。患者側に十分な説明 「謝罪マニュアル」は米国のハーバード大医学部の関連16施設で用いられており、昨年3月に発刊された。日本では同11月に翻訳されている。 同マニュアルは、医療事故が発生した際は、隠さない、ごまかさない、逃げない姿勢が正しいと強調。〈1〉過失の有無が不明な段階でも、分かる範囲で状況を説明し、責任があることを表明する〈2〉遺憾の意を表す〈3〉過誤が判明した時は謝罪する〈4〉再発防止策を示す――などの対応方法を具体的に示している。 マニュアルに従って行動したことで、米国ミシガン大病院と関連施設では、4年間に訴訟やクレームの件数が56%減少し、訴訟費用も300万ドルから3分の1に削減されたという。訴訟になった場合でも、謝罪したことを法廷で医師に不利な材料としないよう州法で定めた州もある。 読売新聞社が先月、52の社会保険病院にアンケート調査したところ、39病院(75%)が既に「読了」し、いずれも「賛同する」と回答。「既に実施」が9、「今後実施する」が29、無回答が1病院だった。実施した際の効果については、以前から同様の方針で患者に対応してきたという病院を含め12病院が「大変効果がある」、15病院が「少し効果がある」と答えた。全社連は9月の各病院の管理者会議などで実施を徹底する。 全社連の今年3月の統計では、1998~2006年度の9年間で計407件の医療事故などが報告され、28件が係争中、87件で患者側と交渉が続いている。 伊藤雅治理事長の話「医療事故の民事訴訟は、患者、病院側双方が納得のいく解決方法にはなりえない。事実を隠さずに伝え、患者側と対話することで決着を目指す医療を進めたい」 謝罪マニュアル 原題は「When Things Go Wrong:Responding ToAdverseEvent」(トラブルが起きた時~医療事故にどう対応するか)。翻訳した埴岡健一・東大特任准教授らのグループは、原著の趣旨をくみ、邦題を「医療事故・真実説明・謝罪マニュアル」とした。(2007年8月14日 読売新聞) この「医療事故・真実説明・謝罪マニュアル」の肝は、責任逃れをせずに、過誤があれば素直に認め謝罪するということだろうと思う。当然のことながら、何ら過誤がない場合には謝罪ではなく、遺憾の意を表明するだけだ。その違いを知らないのか、知っていてもミスリードするつもりなのか、こんな記事を書く新聞社がある。医療事故マニュアル:まず患者に謝罪 過誤判明前でも--全社連採用 全国52カ所の社会保険病院を経営する全国社会保険協会連合会(全社連、伊藤雅治理事長)は、医療事故が起きた際に、過失の有無に関係なく患者側にまず謝罪することを柱とした「医療有害事象・対応指針」を策定し、今月から運用を始めた。責任が明らかになるまで謝罪はしない多くの医療機関とは正反対の対応で、病院グループ全体でマニュアル化した例はないという。全社連は「患者本位の医療への一歩」と説明している。 指針の基になったのは、米国ハーバード大医学部が06年に刊行した「真実説明・謝罪マニュアル」。東京大の研究者グループが翻訳し、全社連が日本の病院向けに修正したうえで大手病院グループで初めて採用した。 指針は「隠さない、逃げない、ごまかさない」が基本方針。過誤の有無が明らかでない段階でも、患者の期待に反した結果になったことへの「共感表明謝罪」をするとしたのが特徴だ。 具体的には、従来は「院内で十分検討した後、病院の統一見解を患者に説明する。親切心や同情で、安易に責任を認めたり補償を表明するのは慎まねばならない」としていた点を、「何が起こったかを直ちに説明し、遺憾の意を伝える」と改めた。最初の説明役についても、「診療科の責任者や病院管理者が複数で」としていたのを「治療を実行した担当医が適任で、担当看護師の出席も患者の助けになる」と変更した。 同様の対応を04年から実践していた社会保険相模野病院(神奈川県相模原市)では、職員からの有害事象(患者に望ましくない事態が発生すること)の報告が倍増し、透明性が飛躍的に高まったという。指針策定の中心になった沖田極・下関厚生病院長は「医療事故の紛争の多くは、最初のボタンの掛け違いが原因。患者と医師の仲立ちをするメディエーターの養成も進め、新たな医療安全文化を育てたい」と意気込む。 「謝罪マニュアル」の普及を進めている埴岡健一・東京大特任准教授は「患者と医療側が同じ目線に立った画期的な取り組み。国立病院機構なども追随してほしい」と話している。【清水健二】毎日新聞 2008年6月25日 東京夕刊 読売新聞の記事は10ヶ月前の記事で、まだマニュアルを採用するかどうかの検討段階のものだから、その後最初から謝罪するように変更になったのかと思った。でも、記事を読み進むと、やはり「遺憾の意」と書いてある。見出しは明らかに「遺憾の意」を「謝罪」にすり替えている。おそらくマニュアル自体は以前と大きな変更はないのだろう。そうすると、「遺憾の意」と「謝罪」を番号まで振って区別しているのに混同したことになる。実際には署名記事でありながらマニュアルそのものを読みもせずに記事を書いているのだろう。読んでいてこんな見出しを付けたのだとしたら、よっぽどの間抜けか悪意の持ち主だと思う。 マニュアルはここで読めます。私には「責任を取る」のニュアンスが英語と日本語ではだいぶ違うのではないかと思われました。また、「過誤」の定義にも違和感があります。
2008.06.27
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昨日のエントリで触れた Mainichi Daily News の WaiWai には、今では謝罪文が載っている。昨日の昼の時点では、単なる告知だった。それがまた火に油を注いだような反応をもたらしたので、あわてて謝罪もしたのだろう。リンク先から全文を引用する。WaiWai Notice and ApologyExplanation and Apology Regarding Mainichi Daily News WaiWai Mainichi Daily News, the Mainichi Newspapers' English language website, contained a corner called WaiWai that attracted criticism for such things as being too vulgar and debauching Japan by sending around the world information that could be misunderstood. In the wake of this criticism, we decided to end this corner. An online news site reported on these developments and inquired with the Mainichi Newspapers about them. The Digital Media Division which operates the information portal Mainichi.jp also includes the Mainichi Daily News and after receiving the criticism of the WaiWai corner, it was taken down from the Mainichi Daily News and a notice stuck in its place.Mainichi Daily News is linked to Mainichi.jp. A detailed explanation of the developments in this case have also been provided in Japanese. The Mainichi Newspapers apologizes for the articles that attracted criticism.OutlineFor several years, WaiWai has taken parts of stories reported in mostly weekly magazines and used these to report on Japanese society and customs. In late May, the Mainichi Daily News editorial department began receiving complaints about the stories in WaiWai being too vulgar and an Internet bulletin board began criticizing the column. The online news site took up this issue and reported on it.Many of the opinions about WaiWai asked the Mainichi about whether it had thought about what effect reporting to the world these stories in English would have, or that these articles would lead to a spread of misinformation about Japan.ResponseFollowing criticism of WaiWai in late May, we decided there was a problem with listing the stories on the Mainichi Daily News site, even though they were transcriptions of articles that had appeared in magazines published in Japan. Stories were withdrawn from the site and we halted access to problematic archived stories. We also asked search engines to prevent past WaiWai stories from being displayed.We then changed WaiWai's editorial policy and drastically altered the standards used in story selection. However, there were problems with how past stories had been presented, so to avoid similar criticism from arising, we decided that we needed to come up with a sound editorial structure. This led to a fundamental re-think about WaiWai and on June 21, the decision was made to cease publishing the corner. On the Mainichi Daily News site, we listed the following notice: Some readers pointed out that various articles published in the WaiWai column were inappropriate content for the Mainichi Daily News. We respond to this criticism by halting publication of this column.While explaining the process in both Japanese and English and apologizing, the Mainichi is poised to severely punish the head of the Digital Media Division, which is responsible for overseeing the site, the manager responsible for the corner and the editor involved with the stories.Mainichi Daily News, and its publisher the Mainichi Newspapers Co., sincerely accepts readers criticism and will work to provide, edit and publish reliable information.--------------------------------------------------------------MDN readers,Some readers pointed out that various articles published in the WaiWai column were inappropriate content for the Mainichi Daily News. We respond to this criticism by halting publication of this column. We plan to start a column with a new concept to replace WaiWai in the future.Thank you for your understanding.Mainichi Daily News 私が昨日の昼に見たのは青い部分だけ。夜になってもう一度見ると、緑の部分が追加されていた。青い部分を要約すれば「不適切だという批判があったので、コラムの配信をやめることで批判に応える」と言うものだろう。そこには自分たちも不適切だと考えたとは書いていないし、当然、謝罪もない。要するに「やめりゃいいんだろ」と言っているに等しい。 こんな対応をすれば火に油を注ぐようなもの。すでにこの「変態ニュース」についてはヤフーニュース でも取り上げられ、多くの人の知るところとなっていた。当然、更に批判の渦は大きくなる。 不祥事があった場合、まず始めに謝罪し、その後の調査を約束するのは鉄則だ。詳しい説明はそれからで良い。いつも不祥事を責め続けている立場なら知っていなければならないことだが、自分たちのことになると別なのだろう。 追加部分の和訳はここで読める。関係者を処分しただけでは収まらないだろうと思う。
2008.06.24
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3大新聞と言われている新聞社の英語のサイトで、根も葉もないエロ記事が配信されているなどと言うことが信じられるだろうか。でも、本当らしい。今は批判を受けて削除したようだが、何ら責任を感じていないようで、謝罪の言葉はない。 また、悲惨な事件を題材にクイズを出すなど、人間性を疑うようなことを日本語のサイト(これも削除済み)でもやっているようだ。今までにも毎日新聞には色々と言いたいこともあったが、要するにこういう新聞社だったのね。まだまだ買いかぶっていたみたい。詳しくは以下のリンク先をごらんあれ。ちょっとあきれて声も出ない。所詮、えぶりでぃ毎日新聞の英語版サイトがひどすぎる まとめ毎日新聞英語版サイト 「変態ニュース」を世界発信「毎日新聞英語版は誰にハックされているのか」 世の中を生暖かく見守るブログ痛いニュース
2008.06.23
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いつもは医療に警察が介入することに批判的なのだが、伊賀の点滴による集団感染については筆も鈍る。そのことを非難する某掲示板での書き込みもあるが、要するに、今回の事件は身につまされないのだ。 福島県の大野病院や、奈良県の大淀病院の事例なら、専門は違っても、自分ならもっと酷い対応しかできなかったかも知れないと思う。また、たとえ致命的な失敗だったとしても、ついうっかりすることは自分にもあることなので、当事者を罰してお終いにするのではなく、うっかりミスが重大な事態にならないようなフェイルセーフシステムの構築を望みたい。 詳しい分析はDr. I 先生の点滴作り置きは、「悪」か?でなされているので、興味のある方はご覧ください。リンク先はシリーズの現時点で一番新しいエントリです。出来れば最初からどうぞ。 当ブログでは、さらっと流す予定ですが、最新の情報では、作り置き以外に清潔操作に重大なミスがあった模様です。残液と消毒綿容器からセラチア菌検出 三重・点滴事故 2008年6月19日13時31分 asahi.com 三重県伊賀市の診療所「谷本整形」(谷本広道院長)で鎮痛薬の点滴を受けた患者が相次いで体調を崩し、1人が死亡した医療事故について、三重県は19日、同診療所で汚染された点滴液による院内感染だったと断定した。15人の患者が出た9日の被害について、患者の血液や使用済みの点滴液の空容器の残液、点滴液の調合の際に使う消毒綿の容器から同じ種類のセラチア菌を検出。消毒綿の汚染と点滴液の長期の室温保管で、点滴液内に菌が増殖したことが原因としている。 県保健環境研究所による検査で、9日に点滴を受けた患者6人の血液、点滴液の容器7パックの残液、消毒綿の容器から、セラチア菌の一種、「セラチア・リクファシエンス」が検出された。 県によると、同診療所では点滴液を調合する際、点滴容器の注入口を消毒綿でふいていた。消毒綿には、アルコールではなく、本来10~50倍に薄めて使う消毒液「グルコン酸クロルヘキシジン」を千倍にして使っており、県は殺菌効果がなかった可能性が高いとみている。消毒綿は日常的に作り置きされ、看護師らは、素手で脱脂綿をつかんで容器の中に入れて作っていたという。不衛生な環境での点滴液の作り置きが常態化していたとみている。 看護師らは作り置きした点滴液が少なくなると追加で調合。診療終了後の余りは捨てずに、日常的に冷蔵庫でなく机の上で保管して翌診療日に持ち越していた。7日以前に作られ、月曜日の9日に持ち越されたのは20本以上あった。ただ、点滴液に調合日の記載がなく、何日に調合されたものか分からないという。 実を言うと、最初にこの事件を知ったとき、朝作った点滴を夕方使用したのだと思っていた。それで敗血症になることがあるとは信じられないと思っていた。麻酔導入に使用するプロポフォールという静脈麻酔剤はとても腐敗しやすいのだが、それでも注射器に詰めてから8時間までは使用可能となっている。特に感染の危険のある高カロリー輸液であっっても、清潔操作を心がければ24時間くらいかけて輸液しても問題ないはずなのだ。 でも、徐々に情報が出てくるに従い、これはとんでもないことが行われているのかも知れないと思うようになった。その後の院長の弁明を見ても、なんだか胡散臭い。「うちには風呂がないんです」と言うのを聞いて、「何だろうこの人は」と思った。 あくまで上で示した報道が正しいという前提だが、この診療所の衛生観念はあまりにも酷い。セラチア菌は何処に出もいる常在菌で、水たまり=セラチア菌 と言っても間違いではないくらいだ。最近は消毒用アルコール綿は単包装になっているものが多いが、作り置きのアルコール綿によるセラチア菌感染が教訓になっている。それがこともあろうに効果がありそうもない濃度の消毒薬内でセラチア菌を繁殖させ、点滴内容を汚染し、更に数日放置して繁殖するに任せたのが事実なら、あまりにも酷い。 と言うわけで、今回の事例はちっとも身につまされない。自分なら決してしないことだからだ。だからといって、警察に任せるべきだと思っているわけでもない。やはり罰するためではなく、真相を究明し、再発防止に役に立つ調査機関が欲しいことに変わりはない。只、今回は声高に言いにくいだけなのだ。
2008.06.20
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今までに左右を取り違える医療ミスは何度もあった。以前は当事者のミスで片付けていたので、何度も繰り返されたのだ。今では多くの病院で取り違えないような工夫をしている。私の勤務先でも、患者に自己申告をして貰うし、マーキングもしている。確認は看護師、術者、麻酔科医(麻酔科が関わる場合)がそれぞれ行っている。これで万全かと思ったが、更に落とし穴があった。左右の目、間違え手術 東大病院、緑内障患者に 記事:毎日新聞社 【2008年6月12日】 医療事故:左右の目、間違え手術 東大病院、緑内障患者に 東大医学部付属病院は11日、緑内障の70代男性患者に対し、手術予定の左目ではなく誤って右目の手術をする医療事故があったと発表した。病院は、原因究明のため、調査委員会を設置した。 病院によると、手術は今月6日に実施。手術部位を間違えないよう、手術前、患者の左のこめかみに黒色のペンで丸印をつけていた。その後、30代の男性消毒担当医は左目を消毒。しかし、右目を露出させて布を置いてしまった。40代の男性執刀医は丸印の確認を怠り、消毒していない右目の手術をした。 患者は両目とも末期の緑内障で、右目も手術を検討していた。7日に左目の手術も行い、両目とも問題は起きていない。消毒担当医は「何でそうなったのか分からない」、執刀医は「つい確認を忘れた」と話しているという。手術翌日、眼帯が右目にされているのを不審に思った患者の妻の指摘でミスが判明した。 同病院の服部雄幸総務課長は「医師の肩書などは明かせない。患者には大変申し訳ない」と話している。【奥山智己】 とにかく消毒まで正しい方に行っていながら、結局間違った方を手術してしまったのですね。どこかで間違えて流れがそうなってしまうと、人間というのは修正が利かないのだろうか。「馬鹿な奴だ」で終わりにすると、また忘れた頃に同じことが起きるのだろう。
2008.06.13
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今朝、秋葉原の事件の逮捕の瞬間を目撃した記者のレポートがあった。警察官は警棒は取り落とすし、手が震えて拳銃は抜けないし、見方によっては情けない有様だった。でも、一生に一度あるか無いかのクリティカルな状況に出会えば、人間なんてそんなものだろう。それは医師も同じだ。 滅多にない病態であれ、医師ならば的確に治療せよとの意見がネット上にも見られるが、やはり未経験の重大な局面ではあわてる。後から見ても最善の対応は不可能だ。その時点で出来るだけの対応をすることで勘弁して欲しい。
2008.06.11
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今日はいつもと違ってスポーツ記事について書いてみる。とは言っても、医療報道と言えないこともない。 一昨日の朝日新聞で陸上競技の絹川選手が原因不明のウィルス感染症にかかっているという記事を読んだ。いつも楽しいコメントをするので好きな選手なのだが、気の毒なことだ。でも、血液検査でウィルス感染症だと分かったらしいのだが、だったらどうして原因不明なのだろう。感染症には詳しくないのだが、ウィルス感染であることは間違いないが、どんなウィルスだか分からないと言う血液検査とは何だろう。そもそも未知のウィルスによる感染症なら、防疫体制も取らずに放置して良いものなのだろうか。 なんて言う疑問を持っていたら、読売新聞のトンデモ記事が見事に爆釣な件(幻影随想)と言うブログや真夜中は別の人と言うブログを見つけた。医療関係者によると思われる「未知のウィルス感染症」のことと言うブログもあった。主治医とおぼしき松元整形外科内科クリニックのサイトにも行ってみた。主治医の松元氏は確かに医師免許を持つ本物の医師のようだが、その主張は普通の医師の受け入れられるようなものではないようだ。有り体に言えばトンデモ。 最初に読んだのが朝日新聞なので、 asahi.com 内で検索してみた。でも、トンデモと気がついたのか、ヒットしない。毎日新聞のサイトではスポニチの記事が載っていた。絹川愛:18歳の女子長距離ホープが謎のウイルスで五輪断念 陸上女子長距離のホープで昨年の大阪世界選手権一万メートル代表の絹川愛=めぐみ=(18=ミズノ)が、北京五輪を断念することになった。原因不明のウイルス感染症のため、選考会を兼ねた日本選手権(26日開幕、等々力競技場)の欠場が決定。宮城・仙台育英高時代から指導する渡辺高夫氏は6日「回避します。回復はしてきたけど、戦えない」と明言した。 2月ごろに左ひざに痛みを訴えた絹川は、通常の外的治療では治らず、痛みの部位も転移。血液検査などでウイルス感染症と診断された。当初は歩くのも困難だった。血清治療を受けて現在は簡単なトレーニングができるまで回復したが、試合出場は厳しい状況だ。絹川はこの日更新した自身のブログで「私としてはやはり戦わずして負けるのは悔しいです」と苦しい胸の内を明かした。(スポニチ)2008年6月7日 読売新聞はこんな感じ。陸上長距離・絹川、五輪出場厳しく…謎の感染症完治せず 昨年の大阪世界陸上女子一万メートル代表の絹川愛(ミズノ)が、今月末に行われる日本選手権を欠場する可能性が高いことが5日、明らかになった。 原因不明の感染症が完治しなかったため。同選手権は北京五輪代表選考会を兼ねており、絹川の五輪出場は厳しくなった。 指導する渡辺高夫監督によると、絹川は昨年12月から今年2月にかけ、右と左の骨盤を疲労骨折。その後、左ひざに痛みが出た。通常の治療で治癒せず、痛みの部位が次々転移したため、4月に放射性同位元素診療と特別な血液検査を実施。通常の血液検査で正常値だった血液に異常が見つかり、ウイルス感染と診断された。 担当医の松元司医師は、「未知のウイルス感染で赤血球と白血球が変形していた。国内では報告のない症例。中国の昆明合宿での感染が疑われる」として、昨年3月の昆明合宿中に感染、潜伏期間を経て発症した疑いを指摘する。7月に英国で開かれる学会で、症例の発表を予定しているという。(2008年6月6日03時07分 読売新聞) 絹川選手本人は何と言ってもまだ子供だ。大人であるコーチ陣がしっかりしなくてはいけないと思う。もちろん報道陣も、トンデモさんの言うことを真に受けて記事にするようじゃ情けない。
2008.06.09
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昨日、全国医師連盟設立集会に行ってきた。これで正式に発足したわけだが、関わったスタッフの皆様には本当に感謝したい。大変なご苦労があったと思う。でも、実際には、立ち上げることよりも継続する方がもっと大変なのだろう。元々医師は自我が強く、群れて戦うことは得意ではない。まとめていくには大変な忍耐がいることだろう。屁の突っ張りほどにしかならないだろうが、協力していこうと思う。 さて、設立集会だが、講演会としても大変面白いものだった。昨日は寝不足だったので、学会の時のように暗くなった瞬間に寝てしまうのではないかと思ったが、結局最後まで興味深く聴いてしまった。 来賓祝辞の 上 昌広氏 はいつもメールマガジンでおなじみだが、実際にお会いするのはこれが初めて。こんなに若い方だとは思わなかったが、話が上手い。途中でプロジェクターの画像が出なくなるというハプニングがあったが、よどみなく話を続けていた。 記念公演の演者は以下の6名。リンク先は関連サイト。佐藤一樹氏川嵜 真氏中原のり子氏江原 朗氏澤田石 順氏木田博隆氏 それぞれに「渦中の人」なので、興味ある話を聴けた。 終了後は懇親会に出席し、いろいろな方とお話しすることが出来た。みなさん、ありがとうございました。酔っぱらって眼鏡を忘れてきたのはご愛敬。そろそろ買い換える時期だし、ま、いいか。
2008.06.09
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手術時に傷つけてはならないところを傷つけることは、残念ながらある。手技が稚拙な場合もあるが、たいていは困難な局面であることが多い。重要な血管の近くにガンがある場合、あきらめれば血管を傷つける恐れはないが、ガンの根治は望めない。頑張って取り切れれば根治の可能性もあるし、根治が無理でも延命効果は大きいだろう。一方、血管を傷つけて致命傷を与える可能性はある。 また、病状が進んでいる場合、組織がグズグズで脆いこともある。通常なら傷つくはずもない操作で、あっさりと千切れることもあるのだ。この場合、再建も難しい。大血管では経験はないが、尿管は何例か見ている。札幌市立病院で手術中に男性死亡 日本内科学会が断定 08/06/02 記事:毎日新聞社 医療事故:札幌市立病院で手術中に男性死亡 日本内科学会が断定 /北海道 札幌市立病院(中央区、吉田哲憲院長)は30日、昨年4月の手術中に60代男性が死亡する医療事故があったと発表した。手術を検証していた日本内科学会が医療事故と断定した。 病院によると、肝腫瘍(しゅよう)を患った男性の患部を切除する手術をしていたところ、執刀医が男性の肝静脈を傷つけて出血。執刀医は止血を試みたが、出血量が多く、男性 は死亡した。 内科学会は医療事故と結論づけたものの、執刀医の過失については判断していない。病院は「医師の手技(しゅぎ)に問題はなかった」としており、病院の過失を主張する男性の 遺族と対立。双方が代理人の弁護士を立てて、見解の相違を解消するために交渉中。【水戸健一】 まず見出しに悪意を感じる。わざわざ断定などと言う言葉を用いる必要もない。あえて断定と言うと、誰かが必死に隠そうとしていたみたいだ。自分の会社の脱税の記事の見出しは「所得隠し」や「脱税」ではなく「申告漏れ」と書くのに、ずるいぞ。 次に何故内科学会なのだろう。何らかの検証チームが調査をすることは不思議ではないが、内科学会そのものだと、なんか違和感がある。 それはともかく、報道するならもう少しいろいろなことが分かってから報道すればよいと思う。何故肝静脈を傷つけたのか分からなければ、情報として意味が無いじゃないか。医師の手技に問題がないことが本当なら、手術の危険性について啓蒙するような内容になるだろうし、手技に問題があるのならそのような証拠を提示すればよい。何も分からないのなら、ただ混乱するだけなので報道しない方が良い。脱税で多くの医師のブログで叩かれたので、その仕返しだったりして。
2008.06.07
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いつも情報源としてお世話になっているロハス・メディカルブログの安心と希望のビジョン会議9から、舛添厚労相の発言を引用する。省益しか考えない官僚にしてみたら、とんでもない発言だと思う。今後どうなるか分からないが、とりあえずは良く言ったと言って良いのではないだろうか。続きはリンク先を読んでください。舛添「次回で最終回になると思う。ここからは矢崎先生おっしゃるように、どうやって現実のものにしていくか、毎日のように議論している。政府の方ももうすぐ骨太の方針が出てくる。私も内閣の一員として全面的の対立するわけにはいかないが、しかし何とかこのビジョンの裏づけをしていきたい。その際に3つの原則を貫きたい。規制強化はダメ、中央集権はダメ、改革の努力を怠ってはダメ、の3つだ。最初のは、要するに金は出すが口は出さないということ。いやしくも、このビジョンが、政府や厚生労働省の権限を強化するものになってはイカン。箸の上げ下げまで厚生労働省が指示していたから、謝るのまで全部厚生労働省がやらされるんであって、後期高齢者医療制度の保険証を送付ミスしたなんてのは本来市町村の責任で恥ずべきことのはずなのに、指示がちゃんと来なかったと開き直られる、そういうのはもう絶対に反対。それから医師会のような利益団体の権益強化にも絶対に反対。要するに国民の視点でやれということに尽きる。私はどこの利益団体の支援も受けていない、まったくのフリー。そういう大臣のもとでしか、こういうことはできない。いやしくもこれを元に一つの団体が自らの利益を図るなんてのは断固反対。というのも、ずっと医師確保の議論をしてきたが、医師数は十分にいる。強制的に離島でも何でも連れていけばいいじゃないかという意見もある。そんなことできますか。すべきでない。権限があるからといって強制するんでなく、インセンティブをつけるのは構わないが、パニッシュメントで強制はダメ。スキルミックスについても、厚生労働省の方針通りにやりなさいというのはダメだ。次に地域に任せるという話は、私もそうだが厚生労働省の中にいて地域の実情が分かるはずがない。現場重視ということ。北海道と沖縄とでは当然やり方が違っていいはず。最低限のことだけ決めて、あとは地域に任せましょう。現場の意見を優先して、役人の声、大臣の声は後回しにするということ。最後のは、これが出たからといって何でもかんでも金がつくと思うなということ。医療費の無駄を省く努力は続けなければならん。たとえばジェネリックをどうやれば使うのかとか、たとえば医療機器が欧米に比べて高いと言うのなら、なぜ高いのか、誰かが途中で何かしているのなら、その規制を緩和すればよい。そういった努力をせずに、ただ金をくれでは通らない。2200億円の枠を外すのにも理解が得られない」(強調は引用者による)
2008.06.02
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医療に対してはバッシングを続ける毎日新聞ですが、やはり売るため金のためなのだろうか。会社自体が脱税をしてまで金に執着する体質であることが、今回明らかになった。いつもは一方的に書くだけだが、今回は書かれる側に回っている。毎日新聞社、4億円所得隠し=東京国税局が指摘 5月30日23時1分配信 時事通信 毎日新聞社は30日、東京国税局の税務調査を受け、2007年3月期までの5年間に法人税約4億5800万円の申告漏れを指摘されたことを明らかにした。このうち約4億円は悪質な所得隠しと認定されたとみられ、追徴税額(更正処分)は重加算税約4200万円を含む約1億8100万円。同社は全額納付する方針。 同社によると、経費処理していた事業推進費や取材費の一部が交際費と認定されたほか、新会計システム構築に伴うコンサルティング費用の一部を経費でなく資産に計上すべきだなどと指摘されたという。 悪質な所得隠しと認定され、重加算税を課されるというのは、意図的なものだったと言うことだろう。中小企業だったら刑事責任を問われかねない事例ではないかと思う。少なくとも正義面して他者を批判する資格はないだろう。
2008.06.01
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もう何度も同じ事を書いていて、いい加減イヤになっているのだが、それでも同じ事が何度も起きるので書かずにはいられない。 世の中には残念ながら死に至る病気がある。医療の介入によって助かることはもちろんあるが、助からないこともあるのは常識ではないのだろうか。また、現状では施設間格差や地域格差も受忍すべきだろうし、発症の季節や曜日や時間帯でも運・不運はある。 助からなかった場合の遺族の無念さは理解できるが、その遺族が訴訟を起こした場合、結論も出ていないのに遺族側の一方的な言い分を報道するだけの価値があるのだろうか。 医療訴訟を報道するのであれば、実際にミスがあったのかどうか取材することは必須であろう。急性妊娠脂肪肝についての事例であれば、急性妊娠脂肪肝がどのような疾患で、どの程度の頻度で発症するのか、今までの救命率はどれくらいか位は明らかにすべきだ。また、原告が主張するような医療体制を可能にするためのコストも調べる必要があるだろう。そもそも原理的に可能なのかも含めて。損賠訴訟:妊婦、胎児死亡で遺族が提訴 医院・市など相手に /静岡 記事:毎日新聞社 【2008年5月30日】損賠訴訟:妊婦、胎児死亡で遺族が提訴 沼津市など相手に /静岡 妊娠中に肝機能障害を起こした下田市内の女性(当時31歳)と胎児が死亡したのは、適切な経過観察をせず処置が遅れたことなどが原因として、女性の両親が29日までに、同市の医院と沼津市立病院を管理する沼津市を相手取り、計約1億300万円の損害賠償を求める訴訟を地裁沼津支部に起こした。 訴状によると、女性は05年12月19日に妊娠の定期検査で高血圧と足のむくみが見つかり、下田市内の医院に入院。同25日に肝臓の検査値が基準の約15倍と分かり、沼津市立病院に緊急搬送され手術を受けたが、同日に胎児とともに死亡した。 原告側は、下田市内の医院は肝臓の異常に気付くのが遅れ、沼津市立病院は手術までに約2時間かかったと指摘。女性は迅速な処置が必要な急性妊娠脂肪肝だったのに、処置の遅れが死亡につながったと主張している。 沼津市立病院は「訴状をよく見て対応を検討したい」とし、医院は「精いっぱいやったが、亡くなってしまったことは残念」と話している。【山田毅】 急性妊娠脂肪肝とはどのような病気か、メルクマニュアル家庭版 から引用する。妊娠中の脂肪肝: 妊娠末期に起こるまれな病気で急性妊娠性脂肪肝ともいい、その原因は不明です。吐き気、嘔吐、腹部の不快感、黄疸(おうだん)などの症状がみられます。急速に悪化して肝不全を起こすことがあります。肝機能検査の結果に基づいて診断され、診断の確定に肝生検が必要となる場合もあります。脂肪肝が発見された場合は、ただちに妊娠の継続を断念するよう勧められることがあります。妊娠中の脂肪肝は母子ともに死亡するリスクが高い病気ですが、生き延びた場合は完治します。通常は、次回の妊娠で脂肪肝が再発することはありません。 要するに希で、原因が分からず、致命的な疾患であることが分かる。確定診断のためには肝生検という侵襲的な検査が必要になることもあるようだが、肝生検自体、肝不全時は時に死に至ることもある危険な検査だ。 亡くなったことは誠にお気の毒だが、やはり医療機関を責めるのは酷な症例だと思う。医療関係者には、もっと詳しい情報の載っている天漢日乗氏のブログをお勧めする。
2008.06.01
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