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松尾芭蕉『おくのほそ道』角川ソフィア文庫俳諧求道の旅日記。総ルビ入りの原文に加えわかりやすい現代語訳、詳細な注釈、豊富な図版が収録されているので、入門編にぴったり。李登輝の影響で『おくのほそ道』を読んだ。冒頭や平泉のあたりは学校で読んだことがあるのだが、通して読むのは始めて。角川のビギナーズ・クラシックシリーズは面白いコラムも収録されているので、素人ながらも楽しめた。公儀隠密説や忍者説は印象に残った。確かにこの脚力は只者ではない。ただ一点、本書の編集に残念な点があった。それは、原文の前に現代語訳があること。古典を楽しむためには現代文は原文の後ろに置いたほうがよいと思う。
2007.07.25
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早坂隆『日本の戦時下ジョーク集(満州事変・日中戦争篇)』『日本の戦時下ジョーク集(太平洋戦争篇)』中公新書ラクレ 大人気!早坂隆の「ジョーク集」シリーズ最新刊。今度のテーマは、戦時下の日本。これまでのシリーズ同様、本書も悲惨な環境でこそジョークが重要な役割を持つというのがコンセプト。一般的に暗くて厳しかったとされる戦時中の日本において流行った数々の傑作ジョークを紹介し、逆境をも笑い飛ばしたたくましさが紹介される。戦時中のすべてを悪とする風潮をようやく乗り越えたいまの時代の空気とも合致し、本書もこれまでのシリーズのようにヒットするだろうと思われる。しかし、一点残念だったことがある。それは、これまでのシリーズで取り上げられてきたジョークは、民衆の間で伝えられてきたジョークがほとんどだったが、本書で紹介されるジョークは漫才師などプロによるジョークが多かった。もちろんプロの作品も世相を反映し庶民の本音や時代精神を体現した笑いである。しかし、民衆が誰とはなしに言い出し広まっていったようなジョークのほうが、よりその時代の民心をストレートに反映していると思われる。本書でそのようなジョークがあまり紹介されていないのは、プロの作品は残りやすいが、自然に出来て広まっていったジョークはあまり残っていないからなのだろう。そう考えると、よく出来た漫才師のネタよりも子供達によって口ずさまれたという軍歌や戦時歌謡などの替え歌などの方が興味深く思われた。
2007.07.22
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斎藤孝『コメント力 「できる人」はここがちがう』ちくま文庫面白くってためになる。数々の名コメントに学ぶ、コメントの要諦。今回はコメントについての本についてのコメント。緊張する。私は何かにつけてコメントしたがるくせに、コメントするのが下手である。私のコメントは、本書でいうところの「意味はあるが面白くない」になりがちだ。また、ダラダラと長くなるのでインパクトに欠ける。今後は簡潔に断定するよう心がけたい。はずしの方は、天然系関西人なのでまあ大丈夫だろう。ただ、はずしすぎないよう空気を読むことを肝に銘じたい。また、なぜ私がコメントするのかや、自分と相手の立ち位置も、意識していきたい。
2007.07.21
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藤崎慎吾/田代省三/藤岡換太郎 『深海のパイロット 六五〇〇mの海底に何を見たか』光文社新書この地球上に宇宙よりも調査が遅れている場所がある。深海の神秘の魅力への水先案内。本書では、日本の潜水調査船、しんかい2000としんかい6500のエピソードを中心に、飽和潜水や世界の潜水調査船開発の歴史などが面白く紹介されている。宇宙開発では大きく遅れをとっている日本も、海洋国家の威信をかけて深海の調査についてはトップを走っている。ただ、あまり国民に知られているとはいいがたい。私は、子供の頃に読んだジュール・ベルヌの『海底二万里』で深海の魅力を知り、しんかい2000のマグカップを愛用しているのだが、恥ずかしながら本書を読むまで具体的な話はほとんど知らなかった。印象に残ったのは、深海に行くことは宇宙に行くのに匹敵するほど困難であるにもかかわらず安全性はかなり高いという話、必ずしもしんかい6500がしんかい2000よりも優秀というわけではなく一長一短があるという話、深海の調査も宇宙開発と同じように科学上の必要性と経費が天秤にかけられ無人の調査船が有人の調査船に取って代わるようになっているという話、それでも有人の潜水調査船でなければならないという話だ。海底資源の絡みも含めて、海洋国家日本にとって深海を調査することの意義は今後ますます大きくなると思う。最近話題の地球深部探査船「ちきゅう」も含めて、今後の調査に注目していきたい。
2007.07.06
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池上永一『レキオス』角川文庫混沌のSFファンタジー。ストーリーに惹かれて読んだのだが、あまりにもキョウレツな登場人物にたじろいだ。ぶっ飛んだ描写が連続し、登場人物の言動に頭が付いていけず、いまいち楽しめなかった。ストーリーは面白いのだが。真面目に読めばいいのか、笑えばいいのか、あきれればいいのか。むちゃくちゃな沖縄の描写に沖縄人が怒るのではないかと危惧したが、作者自身が沖縄人だったので、これが沖縄なのだろう。日本の小説とは一味も二味も違う雰囲気に圧倒されたが、これが沖縄小説だと思えば納得できる。本土と沖縄の違いを見せ付けられた気がする。ぶっ飛んだ内容のSFファンタジー小説ならば、私は明石散人の鳥玄坊シリーズのほうが好きだ。
2007.07.04
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小林英夫『「昭和」をつくった男 石原莞爾、北一輝、そして岸信介』ビジネス社「昭和」の右翼を、「現状破壊派」(井上日召、橘孝三郎、権藤成卿ら)と「新体制構築派」(石原莞爾、北一輝、田中智学ら)に分けて紹介。昭和をつくったというよりも昭和に混沌をもたらしたというイメージが強い昭和の右翼たち。ただ、昭和は動乱の時代、激動の時代と考えると、確かに「昭和」をつくったのは彼らであろう。「昭和の右翼」の姿は、現代の右翼のイメージとはだいぶ異なる。本書では、昭和の右翼を「現状破壊派」と「新体制構築派」に分けて紹介されている。目的達成に向けての行程やビジョンなどは異なっていたが、どちらも日本の現状を憂い何とかしようという志を持って行動していたことは共通している。昭和の右翼たちの理想は、いまの感覚では左翼がかって感じられるのが興味深い。この時代の右派の知識人と左派の知識人の違いについてもっと詳しく見ていきたくなった。また、この時代の左翼から右翼に転向した人の思想遍歴も気になってくる。このころ共産主義も流行したが、主流となっていった講座派の左翼は庶民と乖離しており、庶民の視点に立ち庶民に支持されたのは左翼ではなく右翼だった。彼らは、恐慌で苦しむ農民や労働者の惨状を見て義憤に駆られ、資本主義を破壊して天皇の下で皆が平等な理想の社会をつくろうとした。真逆のはずの右翼と左翼の異同や関係の複雑さを改めて考えさせられる。それにしても、ここに出てくる人物達の個性、主張、行動は過激で強烈である。個々人の性格や、エリートコースをどこかでそれてしまったことなどの諸事情が、彼らの強烈な活動の原動力と成っていることはは確かだろう。しかし、時代精神に上手くのった、時代の波に翻弄されたという側面も強いだろう。積もり積もった矛盾を秘めた社会の鬱積した感情は、きっかけがあれば大きな運動に発展する。一つの時代を破壊し新たな時代をつくる原動力となった彼らも、彼らの力だけではあれだけのことが出来なかった。昭和初期の右翼たちは戦後では悪の権化のように見なされているが、その生き様や主張はそんなに単純なものではない。今後ますます研究が進むにつれ、一般向けの本もこれからどんどん出版されるだろうと思う。
2007.07.02
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