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シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すため、国連では決議草案が作成されているようだ。すでにシリアへは多くの勢力が国外から軍事介入を始めているわけで、決議が採択されれば反政府派が言うように、アサド大統領はリビアのムアンマル・アル・カダフィと同じ運命をたどる可能性がある。何しろ、反政府軍にはリビアでカダフィ体制を倒した武装集団が参加している。 リビアでは、イギリス、フランス、アメリカと手を組み、地上戦を戦っていた主力はアル・カイダ系のリビア・イスラム戦闘団(LIFG)で、カダフィ体制が崩壊した後、一部がシリアへ入っている。昨年11月下旬の段階で、数週間もすればシリアで自分たちの軍事行動が目に見える形になるとリビアの武装集団は語っていた。つまり12月。この予言通りに12月上旬、シリアの都市ホムスで激しい戦闘が始まった。 軍事介入の全体像は不明だが、アサド体制に攻撃を仕掛けているSFA(シリア自由軍)はトルコ政府の庇護を受け、トルコの米空軍インシルリク基地で昨年の4月の終わりから5月の初め以来、アメリカ軍やNATO軍の訓練を受けている。 また、湾岸の独裁産油国、中でもカタールとサウジアラビアはシリアの体制転覆に積極的な姿勢を見せてきた。カタールの首長やサウジアラビアのサウド・アル・ファイサル外相は、シリアにアラブ諸国が軍隊を派遣するべきだと発言している。 カタールはリビアで反政府軍に物資や資金を提供していただけでなく、数百名の戦闘員も派遣したことを同国のハマド・ビン・アリ・アル・アティヤ参謀長が認めている。リビアへ何らかの形で戦闘員を派遣したとしても驚きではない。 シリアと同じように狙われている国がイラン。ホルムズ海峡にはアメリカの空母エイブラハム・リンカーンを中心とする艦隊、イギリスのフリゲート艦アーガイル、フランスのフリゲート艦ラ・モッテピケが配備され、オマーン湾にもアメリカの空母、カール・ビンソンとジョン・C・ステンニスがいる。 さらに、アメリカの原子力潜水艦アナポリスと駆逐艦モムセンがスエズ運河を通過して紅海へ入った。行き先は明らかにされていないが、ペルシャ湾へ向かうと見られている。上陸作戦に使われる揚陸艦ポンセは今のところバージニア州にいるようだが、5月にはホルムズ海峡へ派遣されると見られている。これだけ米英の軍艦が集結すると、偶発的に戦争が勃発する可能性も高まる。 イラン国内では何年も前からCIAやモサドが反政府武装集団と手を組みながら工作を続けてきた。ここにきて、イスラエルのユバール・シュタイニッツ財務相はイランを完全に封鎖するべきだと主張、エフード・バラク国防相はイランをすぐにでも攻撃するべきだと叫んでいる。 昨年から続く中東の動乱で、アメリカ、イギリス、フランス、イスラエル、サウジアラビアをはじめとする湾岸の独裁産油国、そしてアル・カイダの少なくとも一部が手を組んでいることが明確になった。ここで思い出されるのが2001年9月11日の出来事だ。
2012.01.31
シリアでの活動中止をアラブ連盟の監視団が決めた。シリアの体制転覆を目指す勢力としては朗報だろう。政府軍による「住民弾圧の激化」が中止の理由ではない。アメリカ、イギリス、フランス、トルコを含むNATOや湾岸の独裁産油国を後ろ盾とする武装集団の攻勢が激しくなっているのだ。その武装集団にはリビアで体制転覆に成功したアル・カイダ系のグループが含まれていることは何度も本ブログで書いてきた。 リビアやシリアに対する攻撃では湾岸の独裁産油国の中でもカタールとサウジアラビアの動きが目立つ。1月15日にアメリカのネットワーク局CBSが放送した番組の中でカタールの首長はシリアにアラブ諸国が軍隊を派遣するべきだと発言、1月22日にはサウジアラビアのサウド・アル・ファイサル外相も軍隊をシリアへ送り込むように求めている。監視団の目にイライラしていたことがうかがえる。 すでに戦闘部隊をシリアに入れているのはアル・カイダ系の武装集団、「LIFG(リビア・イスラム戦闘団)」。この集団はNATO軍と手を組んでムアンマル・アル・カダフィ体制を倒すことに成功した。カダフィが殺害された後、ベンガジの裁判所にはアル・カイダの旗が掲げられた。自分たちの存在を誇示したのだろうが、彼らの戦闘は場所を変えて続くわけだ。 アル・カイダは新たな戦場へ向かうにあたり、兵士を募集している。兵士だけでなく武器もシリアへ運び込んだという。こうした動きはアル・カイダが一方的に行っているのではなく、シリアの反政府軍と話し合ってのことだ。会談はトルコのイスタンブールで開かれ、トルコ政府の人間も参加したという。 リビアの武装勢力はシリアの反政府軍に資金や武器を提供、兵士の訓練も行うというのだが、SFA(シリア自由軍)の訓練はNATO軍やアメリカ軍が昨年の4月の終わりから5月の初め頃、トルコの米空軍インシルリク基地で開始したとする情報も伝えられている。「平和的抗議活動」が始まった頃だ。トルコ政府がSFAの活動を支援していることは間違いないようだが、レバノンやヨルダンの北部にもSFAの拠点があると言われている。 日本のマスコミがどう伝えているのかは知らないが、こうした事情を西側のメディアも報道するようになっている。それだけ公然と行われている、つまり秘密裏に行う余裕がないのだが、思惑通りに進んでいるとは思えない。ロシアや中国にも揺さぶりをかけているようだが、これも今のところ成功していない。
2012.01.30
シリアが民主的な国家だとは言えないだろうが、西側の有力メディアが伝えている内容には疑問がある。シリア政府を一方的に悪役とする一方、反体制派を民主化勢力であるかのように描くストーリーが事実に即しているとは言えない。自分たちの思い描く世界に合わない情報を排除すれば心地良いのかもしれないが、それでは日本人を地獄へ突き落とした旧日本軍の作戦参謀たちと同じだ。 早い段階からシリアで起こっていることは「民主化運動」でなく、内乱だった。しかも反政府派にはアメリカやトルコなどのNATO加盟国、そしてサウジアラビアやカタールなど湾岸の独裁産油国が関与し、リビアで体制が転覆した後には「トリポリ旅団」のマフディ・アル・ハラティ元司令官をはじめとするLIFG(リビア・イスラム戦闘団)の一部がシリアに入り、戦闘に参加していると伝えられている。しつこいようだが、LIFGはアル・カイダ系の武装集団だ。 現在、シリアの反政府軍は「SFA(シリア自由軍)」が主力のようだが、この武装勢力は昨年の4月下旬か5月上旬のあたりからアメリカ軍やNATO軍からトルコの米空軍インシルリク基地で訓練を受けているとする情報が流れている。 ここにきて、シリアに入っていたアラブ連盟の監視団は活動を中止するとも言われはじめた。反体制派にとって監視団の目があると動きづらいはずで、いわば邪魔な存在。はやく出国してほしいことだろう。湾岸の独裁産油国が派遣していた監視団のメンバーが早々と引き上げるのは象徴的だ。 サウジアラビアやカタールなど湾岸の産油国はシリアよりひどい独裁体制にあり、その独裁産油国がリビア、シリア、イランの反体制運動のスポンサーになっている。その産油国で行われている平和的な抗議活動が暴力的に弾圧されても傍観している国、組織、個人がシリアやリビアの人権を云々するのは奇妙な話なのである。しかも、リビアやシリアではアル・カイダ系の武装集団が反体制運動に深く関与している。 アメリカ国務省がシリアの反体制派に対する資金援助を始めたのは、遅くとも2005年のこと。ジョージ・W・ブッシュ政権の時代。この事実はWikiLeaksが公表した外交文書の中に書かれている。「MEPI(中東協力イニシアティブ)」や「民主主義会議」といった組織を通して資金を受け取っているようだ。バラク・オバマ政権はシリアとの関係を修復しようとしたようだが、その前に内乱が始まってしまった。 シリア情勢はイランを抜きに語ることはできない。シリアでもたもたしていると、イランに対する動きも鈍くなる。そうした展開にイスラエルの閣僚も苛立っているようで、例えば、ユバール・シュタイニッツ財務相はイランを完全に封鎖するべきだと主張、1月27日にはエフード・バラク国防相はイランをすぐにでも攻撃するべきだと語っている。 今のところアメリカ政府はイラン攻撃に消極的で、4月に予定されていたイスラエルとの合同軍事演習「オースティア・チャレンジ12」は延期されたのだが、10月には実施すると伝えられている。10月と言えば大統領選の大詰め。「オクトーバー・サプライズ」としてイランを攻撃する可能性も否定できない。実際、イランの地下施設を破壊するため、国防総省はイラン攻撃用の3万ポンドの「バンカー・バスター爆弾」を開発したようだ。(まだ威力不足だとも言われているが。) しかし、こうした強硬策がアメリカをさらなる苦境に追いやる可能性もある。かつてはアメリカの同盟相手だったはずのパキスタンやサダム・フセイン後のイラクはBRICSに近づいている。アフガニスタンにもBRICSは食い込んでいるようだ。リビアに続き、シリアやイランを破壊したとしても、略奪に成功するとはかぎらない。 ムアンマル・アル・カダフィ体制が崩壊、新体制がスタートしてからアル・カイダ系の武装集団がシリアへ移動しているようだが、その影響なのか、リビアで新たな内乱の兆候が見られる。カダフィが生存中は西側メディアが流していた「幻影」に少なからぬ人が騙されていたが、今では幻術も解けている。新たな内乱に対し、国連がどう動くかは大きな問題になるだろう。再び反カダフィ派、つまりアル・カイダ系武装集団を支援する決議をしたなら、国連が「テロリスト」と手を組むことを宣言するに等しいからだ。
2012.01.29
アメリカ経済は行き詰まり、支配層は大きく3つの勢力に分裂しているようだ。ファシズム化を推進して強欲な仕組みを維持するという勢力、第1勢力と似ているが、イスラエルの利益を第一に考えるという点が大きな特徴である勢力、そして富裕層や大企業に対する規制を強化して資本主義を延命させようとする勢力だ。 第1の勢力は「強欲」を絵に書いたような人びと。その勢力を代表すると言えそうな人物がチャールズ・コークとデイビッド・コークの兄弟。フォーブスが発表したアメリカの富豪ランキングでふたりはそれぞれが第4位で、ふたりを合わせると第2になる。 コーク兄弟は石油関連企業を経営していることもあり、大気汚染にうるさい気象学者を排除しようとしている。気候変動の研究を攻撃するキャンペーンのスポンサーとしても有名だ。要するに環境規制に反対しているわけだが、それだけでなく、富裕層への税率を徹底的に下げ、社会保障は最低限のとどめるべきだとしている。 アメリカのウィスコンシン州知事、スコット・ウォーカーは財政赤字を理由にして、警察や消防を除く公務員の医療保険負担や年金負担を大幅に引き上げ、労働組合の団体交渉権を剥奪しようとして抗議活動に火をつけてしまったが、このウォーカー知事の後ろ盾もコーク兄弟だった。 最近のアメリカを見ていると、イスラエルと一心同体であるかのように見える。その背後には強力なイスラエル・ロビーが存在しているようだが、こうした関係になったのは中東で民族主義/社会主義が影響力を強め始めてからだ。 そうした運動を象徴するのは、エジプトのガマール・アブデル・ナセルとパレスチナのヤセル・アラファトだろう。こうした流れに危機感を抱いたのが欧米諸国、特にアメリカやイギリスの支配層。自分たちの利権が脅かされていると感じ始めたのだ。 そこで接近していった国がイスラエル。イスラエルに近づいていったのは支配層レベルだけではない。ベトナム戦争でアメリカ軍が苦戦するのを見て「神の軍隊」としての幻想が崩れてフラストレーションがたまっていたキリスト教原理主義者は、1967年の第3次中東戦争で圧勝したイスラエルに新たな「神の軍隊」を見たのである。 1970年代の半ば、ジェラルド・フォード政権では親イスラエル派のネオコンがホワイトハウスで大きな影響力を持ち始める。イスラエルと一線を画していたジミー・カーター大統領に対する親イスラエル派の中傷攻撃は凄まじかった。 現在、親イスラエル派の象徴的な存在といえば、ニュート・ギングリッチである。やはりイスラエルと一線を画していたビル・クリントン大統領に対するスキャンダル攻勢でも中心的な役割を果たしていた。 このギングリッチのスポンサーはシェルドン・アデルソン。カジノ業界の大物で、富豪ランキングの第8位。イスラエルと緊密な関係にあり、好戦的なシオニストへ多額の寄付をしていることでも知られている。昨年12月、ギングリッチがパレスチナ人を「捏造された」人びとだと発言して問題になったが、その背景には彼のイスラエル資金が存在していたわけである。 新自由主義から離脱するべきだと考えている支配層もいる。そのひとりが富豪ランキングの第2位のウォーレン・バフェット。富裕層や大企業への課税強化を訴えている人物として有名だ。最近ではジョージ・ソロスも現在の強欲な経済システムが階級闘争を誘発すると懸念している。ちなみに、ソロスは富豪ランキングの第7位である。 階級闘争をファシズム化で乗り切ろうとしているのが第1の勢力。既存メディアに対する信頼度が急低下している現在、情報管理を徹底するためにインターネットを規制するつもりのようだ。日本の支配層はこの勢力に付き従っている。
2012.01.28
アメリカを中心とする軍隊がイラクを先制攻撃したのは2003年のことだった。攻撃が実行される前、計画を「漫画」だと表現し、アメリカ政府の好戦的な発言も口先だけだと鼻で笑っていた「知識人」も少なくない。軍事的な緊張を高めて武器を売りたいだけさと言う人もいた。 その一方、アメリカ軍の力を絶対視、国際紛争を解決する手段として戦争は有効だと信じている人も目についた。ネオコン(アメリカの親イスラエル派)などの好戦派と同じ発想と言える。アメリカで「チキン・ホーク」と呼ばれている類の人びとだ。 アメリカの統合参謀本部の内部でも、イラクへの軍事侵攻は泥沼化すると見通す人が少なくなかったのだが、ワシントンを支配していたネオコンは聞く耳を持たずに押し切っている。日本でも好戦的な雰囲気が蔓延、マスコミも国民を戦争へと煽り立てていた。日本政府は当時の判断を、マスコミは報道について説明する義務があるのだが、いまだに口をつぐんだままである。 そしてイラン。イスラエルのユバール・シュタイニッツ財務相はイランを完全に封鎖するべきだと主張している。シュタイニッツ財務相はジョン・F・ケネディ米大統領がミサイル危機の際にキューバを封鎖した事例を挙げているのだが、当時と今では状況が全く違う。 1950年代からアメリカの軍や情報機関の好戦派はソ連に対する先制核攻撃を準備していた。好戦派としては、自分たちが大陸間弾道ミサイルや長距離爆撃機でソ連を圧倒している間に攻撃したかったということだろう。ソ連は対抗するため、キューバへ中距離ミサイルを持ち込んだわけだ。 アメリカのキューバ侵攻作戦もこうした視点から見る必要がある。キューバへアメリカ軍が侵攻することに反対し、ミサイル危機を話し合いで解決、ソ連との平和共存を訴えたジョン・F・ケネディ大統領が暗殺されたのは1963年11月のことだった。 つまり、「ガザの封鎖」と同じことをイスラエルはイランに対して実行するよう、アメリカに求めている。これは兵糧攻めであり、戦争行為にほかならない。アメリカは破滅へ向かって駆け下りることになる。 CIAを装ったテロ行為やアメリカ大統領暗殺計画など、これまで一部でしか語られていなかったイスラエルの「闇」が広い範囲で話題になり始めている。アメリカの政界では親イスラエル派が目立つが、水面下ではアメリカとイスラエルとの間に流れ込むすきま風が強まっている。アメリカとイスラエルとの間で「力比べ」が始まっているのかもしれない。 イランと友好的な関係にあるシリアもNATO加盟国と湾岸の独裁産油国から攻撃を受けている。この辺の話は何度も書いているので割愛するが、構造はリビアの体制転覆と同じである。英仏米の武力と独裁産油国の資金、そこに「テロリスト」だったはずのアル・カイダが加わる。 新体制に移行したリビアでは拷問と虐殺が無視できな状況になっている。「人道的戦争」に利用されてきたアムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチからも反カダフィ派は批判されてきた。「人道的戦争」の「非人道性」は誤魔化しようがない。
2012.01.27
イランからの原油を7月から輸入しないとEUの外相理事会が決めたことに対し、イスラエルのエウド・バラク国防相は半年の先延ばしを批判している。EUとしては時を稼ぎ、その間に対策を考えようということだったのだろうが、イラン政府はEUに対する石油の供給を停止するための準備に入り、1月29日には必要な法案を国会に上程する予定だと伝えられている。 イランからの石油が入らなくなると、イタリア、ギリシャ、スペインといった地中海に面した国々にとっては深刻な事態。湾岸の独裁産油国がこれに対応できるかどうかは不明だ。状況によってはEUの内部で反米感情が高まる可能性がある。 EUのイラン原油禁輸の決定で石油相場は上昇、北海ブレント原油は111ドル台で取引され、今後も上昇していくと見られている。北海油田の生産量が減り続けて厳しい状況になっているイギリスは一息つけるとも言えるが、経済に打撃を受ける国々からは批判されるだろう。 1951年にイラン議会がイギリス系のAPOC(アングロ・ペルシア石油)を国有化すると決めた際、AIOCは石油の生産と輸送を止めて対抗している。それと並行してイギリスの情報機関MI6(正式にはSIS)はクーデターを計画、1953年にドワイト・アイゼンハワーがアメリカの大統領に就任すると、CIAとの共同作戦になった。このときは石油取引を止められたイランは苦境に陥り、軍事クーデターにつながるのだが、今回はBRICSや非同盟諸国が同調していない。状況が全く違うということである。
2012.01.26
このところイスラエルにとって都合の悪い情報が流れてくる。1月13日にはアメリカで発行されている「AJT(アトランタ・ジューイッシュ・タイムズ)」の発行人がコラムの中でバラク・オバマ米大統領の暗殺に触れ、大きな問題になって辞任に追い込まれたようだ。 2017年には戦争で1万5000発のミサイルがイスラエルの都市に撃ち込まれ、未曽有の破壊と犠牲が予想されるというエルサレム・ポストの記事を前提にしている。イスラエル軍が軍事予算削減に反対する立場から作られた話にすぎず、これを前提にした話はナンセンスだ。 コラムではベンヤミン・ネタニヤフ首相に対し、こうした事態を防ぐための提言をしている。そのひとつがオバマ大統領の暗殺だ。イスラエルにとって非友好的だと思われる大統領をモサドのエージェントに排除させたうえで副大統領を昇格させ、イスラエルの敵を抹殺する政策を命令させるということである。 AJTの発行人はイスラエル政府に対し、アメリカ大統領の暗殺を内部で討議したことはないのかと問いかけているのだが、少なくとも1度、1991年頃にイスラエルはアメリカ大統領の暗殺を計画していたことがあると信じられている。ターゲットになったのはジョージ・H・W・ブッシュだ。 この情報を明らかにしたのは元モサドのビクター・オストロフスキー。カナダの議会関係者に話し、その話を聞いたひとりがアメリカの弁護士で元米下院議員のポール・マックロスキーに伝え、マックロスキーはオストロフスキーに会い、モサドはブッシュ大統領の暗殺も選択肢に入れていることを確認し、シークレット・サービスは警備を強化したようだ。 元米下院議員のポール・フィンドレーによると、イスラエルの政策を決めているのはモサドであり、モサドはブッシュ大統領を嫌い、ダン・クエール副大統領に好感を持っていたとオストロフスキーは説明したのだという。当時、すでにクエールを大統領として受け入れさせるための宣伝をイスラエルとアメリカで始めていたようだ。 本ブログでは何度も指摘しているので食傷気味かもしれないが、1980年代にブッシュはイラクのサダム・フセインをめぐり、イスラエルと対立している。ブッシュたちがフセインを自分たちの手駒だと考えているのに対し、イスラエルやアメリカの親イスラエル派(ネオコンやシアコン)は排除すべき対象だと考えていた。 この対立が「イラクゲート事件」の表面化につながっている。この当時、イスラエルと最前線で遣り合っていた人物がロバート・ゲーツである。1990年代になると、ネオコンは公然とフセインの排除やパレスチナ和平の破壊を提言、その提言を実行したのがジョージ・W・ブッシュ政権である。 ところで、ブッシュ・シニアはエール大学に在学中、CIAにリクルートされた可能性が高く、アレン・ダレスとも近い関係にあった。そうした人脈ということもあり、破壊工作に関係してきたと考えられている。ジョン・F・ケネディ大統領の暗殺で名前が出てきたのも偶然ではないだろう。 1980年の大統領選挙では、CIAから追い出された破壊工作チームがブッシュを支援していた。言うまでもなく、CIAの内部にもブッシュを支援する人びとは残っていたはずである。ブッシュ本人の性格は不明だが、ブッシュの周辺にはモサドに対抗する能力があったと言えるだろう。ブッシュ側もヤワではない。 AJTの発行人はイスラエル系の団体から激しく批判されたようだが、当然だろう。「愚かだ」という評価もあるのだが、意図的だった可能性もないとは言えない。
2012.01.26
ドルを基軸通貨とするシステムが揺らぎ、「金(ゴールド)」が注目されてきた。一時期はユーロがドルのライバルと考えられ、2000年にはイラクのサダム・フセインは石油取引をドルからユーロに変更する姿勢を見せていたのだが、ギリシャの財政問題で輝きが鈍くなっている。 フセインがユーロへの切り替えを口にした2年後、マレーシアの首相だったマハティール・ビン・モハマドは貿易決済に使う通貨として「金貨ディナール」を提唱している。その金貨ディナールを石油取引の決済に使おうとしたのがリビアのムアンマル・アル・カダフィだ。最近ではイランとインドの石油取引に「金」が使われるとも言われ、こうした動きは中国やロシアへも波及する可能性がある。 本ブログでは何度か書いていることだが、EUを苦しめているギリシャの財政問題はゴールドマン・サックスが黒幕的な役割を果たしている。ギリシャが2001年に通貨をユーロに切り替えた際、財政状況の悪さを隠す手法を教え、債務を膨らませたのだ。その実態が明るみに出てEUを揺るがす事態になった。 また、ギリシャの問題を考える場合、ナチス・ドイツの占領、そして米英による支配や内政干渉を無視することはできない。 第2次世界大戦の際にはドイツが占領、1944年にドイツ軍が撤退するとレジスタンスの主力だったEAM(民族解放戦線)が主導権を握るのだが、これを嫌ったイギリスはEAMを弾圧する。 結局、内乱を経てアメリカやイギリスの意向に添う体制、つまり傀儡政権をつくることに成功するのだが、思惑通りに進まない。特に邪魔だった政治家がグリゴリス・ランブラキス。コミュニストではなかったが、平和運動に加わっていた。アメリカの支配層が最も嫌うタイプだ。 そのランブラキが1963年5月に暗殺された。ジョン・F・ケネディ米大統領が「平和の戦略」と呼ばれる演説をしたのはその翌月であり、ダラスで暗殺される半年前ということになる。また、シャルル・ド・ゴール仏大統領の暗殺未遂は1962年8月だった。こうした暗殺/暗殺未遂事件の背後には「NATOの秘密部隊」が存在している。(詳しくは拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を) そして1967年に軍事クーデターがあり、秘密警察のトップだったディミトリオス・イオアニデス准将の軍事政権が成立した。NATO加盟国で軍事クーデターがあったにもかかわらず、アメリカは反応しない。クーデターの背後にアメリカが存在していたということだ。1968年に行われたアメリカの大統領選挙ではギリシャの軍事政権からリチャード・ニクソン陣営に資金が提供されたとも言われている。ギリシャの軍事独裁は1974年まで続いた。 ギリシャの現状を考える場合、こうした歴史を思い起こすことは必要だろう。この歴史を考えなければ、ギリシャ庶民の怒りは理解できない。ドイツの占領が終わった後、ギリシャはアメリカやイギリスに支配され、この2カ国の都合で社会や経済はボロボロにされたのである。そして2001年にはゴールドマン・サックスというアメリカの巨大金融機関によって再びギリシャは大きなダメージを受けた。 ともかくユーロは一時期の輝きを失い、金が注目されている。カダフィやイラン政府だけでなく、ベネズエラのウーゴ・チャベス大統領も金を重要視しているひとり。昨年8月には国外に保有している金、その多くはイングランド銀行、ほかにJPモルガン・チェースやバークレーなどに保管されていたようだが、この金をベネズエラへ運んでくることを決め、違法行為を理由にして金産業を国有化するとも発表している。 金を貿易決済に使うという流れはアメリカにとって都合が悪い。金1オンスを35USドルと決められていた時代もあるのだが、1971年にリチャード・ニクソン米大統領は金とドルの交換を停止してしまった。金の保有量が減ってしまったことが大きな原因であり、金による決済はアメリカにとって好ましくないだろう。基軸通貨を勝手に印刷できる権利をなくしたならば、アメリカは急速に崩壊していく可能性がある。
2012.01.25
7月からイランの原油を輸入しないとEUの外相理事会は決めたという。アメリカ政府の命令にすぐ従った日本とは違い、EUはこれまで「検討」してきたのだが、とりあえずアメリカ側の要求に屈した形だ。 ただ、アメリカ政府がイラン攻撃に突進しているわけではない。バラク・オバマ政権もイスラエル/シオニストに秋波を送っているが、特に最近、イランをめぐる軍事的な緊張を緩和する動きを見せていることも事実。例えば、オバマ大統領やレオン・パレッタ国防長官は好戦的な言動を続けるイスラエルを牽制、マーティン・デンプシー統合参謀本部議長をイスラエルへ派遣している。4月に予定されたイスラエルとアメリカの合同軍事演習「オースティア・チャレンジ12」は夏まで延期された。また、スンニ派の武装勢力「ジュンダラー(アラーの兵士)」を操っているのはCIAを装ったモサドだとフォーリン・ポリシー誌が伝えたのも偶然ではないだろう。EUへの配慮があるかもしれない。 もっとも、イランに対する強硬姿勢を完全に転換したとまでは言えない。ホルムズ海峡を封鎖するというイラン側の脅しに対し、アメリカは部隊をイラン周辺で増強、アラビア海に複数の空母を派遣している。つまりカール・ビンソン、ジョン・ステンニス(現在はアラビア海から離れている模様)、そしてエイブラハム・リンカーンだ。海峡を封鎖すれば戦争の引き金になるという警告なのだろう。 EUが石油禁輸を決めたからといって、イランが追い詰められたとも言えない。BRICSや非同盟諸国などの中にはイランとの関係を強めている国もある。インドは「金」でイランから石油を購入するもようで、中国も追随しそうだ。追い詰められているのは、アメリカの要求を呑むことになったEUや日本だろう。オバマ政権も苦しい立場だ。 ジョージ・W・ブッシュ政権が始めた戦争だとはいえ、アメリカはアフガニスタンやイラクの泥沼から抜け出せないでいる。しかも、リビアでは新体制に移行した後、ムアンマル・アル・カダフィ派の攻撃が伝えられるようになってきた。バニ・ワリドは「親カダフィ派」に制圧されたともいう。「反カダフィ派」も一枚岩ではない。 世界がリビアの反カダフィ派を見る目が変化してきたことも大きい。彼らが「民主化勢力」ではないことに気づいてきたのだ。NATO軍(英仏米軍)が手を組んだ相手はアル・カイダにつながっていた。しかも英仏米は確信犯だ。 リビアの内乱ではNATOやアル・カイダのほか、カタールも重要な役割を演じた。自国のメディア、アル・ジャジーラを使ってプロパガンダを展開しただけでなく、反カダフィ軍を支援するために数百人規模の部隊を送り込み、武器も提供していたのだ。 カタールの首長はアラブ諸国はシリアに軍隊を派遣するべきだと発言しているが、1月22日にはサウジアラビアのサウド・アル・ファイサル外相も軍隊をシリアへ送り込むように求めている。カタールもサウジアラビアも湾岸の独裁産油国であり、今でも市民を日常的に弾圧している。サウジアラビアの独裁体制を維持するため、アメリカの協力で創設したのが治安機関のSANGだ。こんな国が真の意味で「民主化」や「人権」を求めているはずはない。 カダフィ体制が崩壊した後、アル・カイダ系武装集団のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)がリビアで大きな影響力を持つようになり、シリアへも部隊を派遣しているとする情報が伝わっている。
2012.01.24
イランに対してどう行動するのかという点で、アメリカ支配層の内部に対立があるかもしれない。イスラエルやネオコン(アメリカの親イスラエル派)の暴走を抑えようとする動きがある一方、ブレーキを外そうとしている勢力の動きも感じられる。イスラエルの暴走を抑えようとしたアメリカの大統領は再選されないとも言われているが、バラク・オバマ大統領は今のところブレーキを踏んでいるようだ。 中東/北アフリカだけでなく世界的に反米感情が広がっている中、イランを攻撃した場合に戦乱が全世界に広がっていく危険性を指摘する声もある。ホルムズ海峡封鎖という次元の話ではないというのだ。 リビアに続き、シリアやイランへの軍事侵攻を狙うイギリス、アメリカ、イスラエル、湾岸の独裁産油国に対し、ロシアや中国を含むBRICS諸国、こうした国々とも友好的な関係にあるベネズエラなどラテン・アメリカ諸国やサハラ以南のアフリカ諸国などは軍事力の行使に反対してきた。イランに軍事侵攻すればこうした国々は反発する。その反発がどのような方向へ進むかは予想できない。 最近の動きを見ると、スンニ派の武装勢力「ジュンダラー(アラーの兵士)」を操っているのはCIAを装ったモサドだとフォーリン・ポリシー誌が伝えたのに続き、オバマ大統領やレオン・パレッタ国防長官はイスラエルを牽制、マーティン・デンプシー統合参謀本部議長がイスラエルを訪問している。4月に予定されたイスラエルとアメリカの合同軍事演習「オースティア・チャレンジ12」は夏まで延期された。 こうした中、JSOTF-GCC(統合特殊作戦機動部隊・湾岸協力会議)がイランの周辺で活動しているという話が流れている。ただ、この部隊は2009年の中頃から存在しているようなので目新しい話ではないのだが、こうした話が伝えられること自体が興味深い。 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、ジョージ・W・ブッシュ米大統領は2007年、イランに対する秘密工作をエスカレートするために予算を要求、議会は承認している。その段階でCIAやJSOC(統合特殊作戦コマンド)などはイランへの越境工作をすでに実行していたのだが、その規模が大きくなったということのようだ。その延長線上にJSOTF-GCCもある。 アメリカの特殊部隊は歴史的に正規軍よりもCIAの破壊工作部門に近く、カルト的な人間も多いようだ。その代表格が陸軍の特殊部隊「デルタ・フォース」出身のウィリアム・ボイキン中将。ブッシュ・ジュニア政権で国防副次官を務めた人物だ。カルトは人類の死滅さえ厭わない。しかも、アメリカの有力メディアは国内で好戦的な雰囲気を作り上げている。後はイランに「引き金」を引かせるだけ、と考えている勢力もあるだろう。
2012.01.21
フォークランド/マルビナス諸島の領有を主張するアルゼンチンに対し、イギリスのデイビッド・キャメロン首相は1月18日、「植民地主義」だと発言した。さらに、「防衛」を口実として部隊を派遣するとも伝えられている。イギリスは昨年、利権を維持拡大する目的でリビアへの軍事侵攻を主導したわけで、植民地主義のラベルを貼るとしたら、アルゼンチンではなくイギリスだろう。 要するにキャメロン首相の発言はナンセンスなのだが、これを「失言」と表現することはできない。「植民地主義発言」後、当然のことながらアルゼンチン国民は反発しているのだが、こうした雰囲気にすることがキャメロンの目的だったのではないだろうか。 マーガレット・サッチャー政権以降、イギリスを経済面から支えてきたのは北海油田。その石油生産量が2000年頃から減り続けている。利益という点では、1987年頃から減り始めていたという。イギリスにとって新たな油田の開発は支配体制を維持するために急務だった。その油田がフォークランド/マルビナス諸島の下にある。おそらく多くの人は、キャメロン発言の背後にはこの油田があると推測している。 アルゼンチン政府の抗議を無視してイギリスがフォークランド/マルビナス諸島で石油の試掘を始めたのは2010年2月のこと。その後、油田の存在が確認されている。イギリス政府は大規模な海兵隊の部隊を問題の海域に派遣することを計画していると昨年12月に報道された。部隊を派遣するためには、領土問題でイギリスとアルゼンチンが話し合う環境を壊す必要があるだろう。 ところで、フォークランド/マルビナス諸島に初めてイギリス人が住むようになったのは1834年で、それ以来、イギリスが実効支配している。ただ、この諸島がイギリス領だと国際的に認められているとは言い難い。イギリスの主張は弱いと考える人が少なくないのだ。そこで、アルゼンチンは国際的な舞台で話し合おうと提案している。 1982年4月、アルゼンチン軍がフォークランド/マルビナス諸島を攻撃して占領、イギリスと戦争になるのだが、この戦争はイギリスにとって願ってもないことだった。軍事侵攻したアルゼンチンを「悪玉」にすることができるからだ。少なくとも「雰囲気」としてはイギリスの実効支配を正当化できる。 その直前、アメリカ政府が興味深い動きをしている。1980年にダニエル・グラハム元DIA(国防情報局)局長がブエノスアイレスを訪問、南アメリカの軍事政権と南アフリカでNATOのような軍事同盟を結成するという話をしたと伝えられている。翌年にはCIAのバーノン・ウォルタースたちも同じ趣旨の話をしているようだ。 こうした動きがアルゼンチン政府に何らかの影響を及ぼしたのかどうかは不明だが、ともかく戦争は始まった。 ところが、イギリスは簡単に勝つことができない。イギリス軍のティム・コリンズ大佐によると、この戦争でイギリス軍はアルゼンチン軍に対し、白リン弾のような化学兵器を使用している。 それだけでなく、サッチャー英首相はブエノスアイレスを核攻撃するとフランスのフランソワ・ミッテラン大統領を脅したともいう。戦争ではフランス製のエグゾセ・ミサイルにイギリス軍は悩まされたのだが、アリ・マゴーディによると、このミサイルを無力化する暗号をフランス政府から聞き出そうとしたという。この脅しは効果があったようだ。 ともかく、イギリスはフォークランド/マルビナス諸島を実効支配するようになるのだが、これで領土問題が解決したわけではない。イギリスとしては他国の目など気にせず、力で支配を続けるしかない状況だ。
2012.01.21
ギリシャの経済危機ではゴールドマン・サックスが黒幕としての役割を果たしている。この金融機関に触れずに危機を説明することはできない。 2001年にギリシャが通貨をユーロに切り替えた際、財政状況の悪さを隠す手法を教え、債務を膨らませたのがゴールドマン・サックス。その結果として事態は深刻化、少なくとも結果としてユーロ圏を大きく揺さぶっているのだ。ギリシャにおいて、年金制度や公務員の問題などは昨日今日に始まった話ではなく、今回の危機の直接的な原因だとは言えない。 ゴールドマン・サックスは以前にも経済危機で責任を問われたことがある。例えば、サブプライム・ローン(アメリカの低所得者向け住宅ローン)というマルチ商法まがいの仕組みが破綻、その影響で2008年にはリーマン・ブラザーズが倒産(破産法第11条の適用を申請)した際、アメリカの証券取引委員会(SEC)はゴールドマン・サックスと重役のフェイビリス・トゥーレを証券詐欺の容疑で訴追している。ギリシャのケースでは「スキャンダラスだが合法的」だった。 ギリシャの危機で混乱が続く中、ヨーロッパ中央銀行に新しい総裁が就任している。昨年11月のことだ。この新総裁、マリオ・ドラギは2002年から2005年までゴールドマン・サックスの副会長を務めた人物。 ドラギ以外にもゴールドマン・サックスの人脈はEUに浸透している。例えばアイルランドのピーター・サザーランド元司法大臣はゴールドマン・サックス系列のゴールドマン・サックス・インターナショナルの会長であり、1998年から2006年までヨーロッパ中央銀行役員会メンバーだったオトマール・イッシングはゴールドマン・サックスの顧問である。 ギリシャに次いで財政危機が叫ばれているイタリアで新しい首相に選ばれたマリオ・モンティはビルダーバーグ・グループ(アメリカとEUの利害調整機関)のメンバーとして有名だが、ゴールドマン・サックスの顧問でもある。 こうしてみると、EUにとって最大の問題は経済自体というより、ゴールドマン・サックスの影響力、いや支配構造だと言えるだろう。EUを攻撃している勢力がEU経済の根幹を動かすという構造だ。 ギリシャの問題では3月までに処理方法を決めなければならないらしいが、そうした中、ヘッジ・ファンドだけでなく、ゴールドマン・サックスも目一杯の利益を維持しようと蠢いているようだ。リーマン・ブラザーズが倒産した際、AIGも事実上、破綻していたことを思い出す。 言うまでもなく、最終的に負担を押しつけられるのは庶民だが、世界の庶民は自分の意志を持っている。強うそうな人間の命令に唯々諾々と従うのは日本人くらいだ。「1%」の思惑通りになるとは限らない。
2012.01.19
欧米諸国が軍隊を出す場合、間違いなく利権が関係している。単に略奪が目的なのか、あるいは支配構造の維持拡大が目的なのかというような違いはあるが、つまるところ、戦争は「押し込み強盗」。ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、リビアといった国への攻撃も例外ではない。現在はシリアやイランがターゲットになっている。 リビアへの軍事侵攻で中心的な役割を果たしたのはイギリスだった。シリアやイランに対する工作でも名前が出てくる。とにかく、このところ、イギリスの動きが目立つ。 そこで頭に浮かぶのは、北海油田の生産量が大幅に減少していることだ。2011年の第3四半期の生産量は前年の同じ時期に比べて22.7%減少している。昨年の減少は税金の引き上げと関係があるとする意見もあるのだが、生産量の減少は2000年頃から続いている。 マーガレット・サッチャー政権時代のイギリス経済を支えたのは北海油田。原油価格の上昇で利益が出るようになったおかげだ。 本ブログでは何度も書いていることなのだが、この値上げを決めたのは1973年5月にスウェーデンで開かれた「ビルダーバーグ・グループ」(アメリカと西ヨーロッパの利害調整機関)の会合。サウジアラビアで長い間、石油鉱物資源相を務めたシェイク・ヤマニもこの会議について語っている。 エネルギー資源ということでは、ガザ沖の海底も注目されている。2000年にBG(ブリティッシュ・ガス)が発見したのだ。そのガスの権利はBGが60%、CCC(レバノンのゼネコン)が30%、そしてパレスチナ暫定自治政府が10%と決められた。 ところが、この利権にイスラエル政府が首を突っ込んでくる。パレスチナ人に大きな影響力を持っていたヤセル・アラファトが2004年11月に死亡したことが切っ掛けだったようだ。 その後、イスラエル政府はハマスを「テロリスト」だと批判、ガザへの軍事攻撃をを繰り返し、2008年12月には白リン弾のような化学兵器も使ってイスラエル軍はガザに軍事侵攻、破壊と虐殺を繰り広げた。その際、国連の施設まで破壊している。このときに殺されたガザの住民は約1400名とも言われ、その行為は国連でも「戦争犯罪」と見なされた。この侵攻作戦が行われた頃、BGは天然ガスに関してイスラエルと話し合っている。 イギリスやイスラエルが好戦的な傾向を強めている理由のひとつは、この辺にあるのかもしれない。
2012.01.17
1月11日に殺害されたイランの化学者、モスタファ・アーマディ・ロシャンの葬儀に多くの市民が参加している映像が流れている。イランでは反米感情がたかまっているようだ。 イラン政府は14日、殺人の背後にワシントンが存在していることを示す証拠があると主張したという。イラン側の矛先はアメリカだけでなく、イギリスとイスラエルにも向けられている。ただ、その証拠は具体的に示されていない。 この殺人事件への関与をアメリカもイスラエルも否定、真相は明らかでないが、イスラエルの情報機関、モサドが実行したと疑う人は多い。工作に協力した可能性が高いのは、反政府グループの「ムジャヒディン・ハルク」か「ジュンダラー(アラーの兵士)」だろう。 ジュンダラーを操っているのはCIAでなく、CIAを装ったモサドだと伝えたのはフォーリン・ポリシー誌。アメリカ側から情報は流されたようだ。 イスラエル政府はこのレポートを否定しているが、イランを巡る情勢が緊迫化している中、戦争を回避したいアメリカ政府がイスラエルと距離を置き始めたと考えることもできそうだ。CIAとモサドとの間にすきま風が吹き始めているとするならば、その対立は政界にも波及する可能性がある。 現在、アメリカのバラク・オバマ大統領やレオン・パネッタ国防長官はイスラエルにブレーキをかけようとしているようで、今週中にはマーティン・デンプシー統合参謀本部議長がイスラエルを訪問して同国の軍幹部と話し合うと伝えられている。アメリカ軍とイスラエル軍の合同軍事演習「オースティア・チャレンジ12」もアメリカ側の都合で延期されたと伝えられている。もっとも、戦争に備えて部隊は配置しているようだが。 勿論、アメリカとイランとの軍事的な緊張はシリアの内乱とも結びついている。そのシリアへ軍事介入するべきだとカタールのハマド・ビン・ハリーファ・アル・サーニー首長はアメリカで主張している。北アフリカ/中東を混乱させ、支配地図を書き換えようとしているのはどうやらイスラエルと湾岸の独裁産油国で、そこにトルコ、アメリカのネオコン、そしてイギリスが結びついているようだ。
2012.01.15
中東/北アフリカの混乱が続いている。イギリス、アメリカ、フランス、イスラエル、そして湾岸の独裁産油国が力尽くで支配構造を自分たちに都合良く作り替えようとしていることが大きな要因だ。湾岸の独裁産油国の中ではカタールの言動が目立つ。1月15日に放送されるCBSのインタビューの中で、カタールのハマド・ビン・ハリーファ・アル・サーニー首長は、シリア市民を護るためという名目でアラブ諸国は軍隊を派遣するべきだと発言している。 シリアの内乱ではトルコを後ろ盾にしてアメリカ軍やNATO軍の訓練を受けているシリア自由軍(SFA)がシリア政府軍と戦っているほか、リビアの体制転覆で英仏米軍と手を組んでいたアル・カイダ系のリビア・イスラム戦闘団(LIFG)の一部がシリアに入って戦闘に参加しているとも伝えられている。そうした中には「トリポリ旅団」の司令官だったマフディ・アル・ハラティも含まれているという。 リビアにおける戦闘では、ムアンマル・アル・カダフィ体制を倒すためにカタールは傭兵を雇っていたが、それだけでなく、反カダフィ軍を支援するために数百人規模の部隊を送り込み、武器も提供していたようだ。こうした支援を正当化するため、カタールは「市民を守る」ためだと宣伝していた。また、今年1月には、カタールに事務所を設置することが内定したとタリバンは発表している。アメリカとタリバンの仲介役になっているようだ。 一連の体制転覆工作では、アル・ジャジーラが重要な役割を果たしている。今回はプロパガンダに徹しているということだが、このテレビ局とカタール首長一族との関係を考えれば当然のことである。 つまり、この放送局の会長は一族のハマド・ビン・サーメル・アル・サーニーであり、首長のハマド・ビン・ハリーファ・アル・サーニーの意向には逆らえないだろう。カタールが深く関与している「アラブの春」では、アル・ジャジーラを信用してはいけないということである。
2012.01.14
モサド(イスラエルの情報機関)にまんまと騙されていたのかもしれない。イラン国内で破壊活動を続けているグループ「ジュンダラー(アラーの兵士)」はCIAの支援を受けていると言われ、ジュンダラーの兵士自身もそのように説明していたのだが、実際はCIAを装ったモサドが操っていたとする話が出てきたのである。アメリカ支配層の中に、イスラエルの行動がアメリカにとって危険だと考える人が増えているのかもしれない。 ジョージー・W・ブッシュ政権の終わり頃に作成された米情報機関の覚書が情報の根拠で、複数の元米情報機関員にも確認しているという。CIAを装ったモサドの工作員は多額のドル紙幣とアメリカのパスポートを携帯、ジュンダラーの兵士を集めていたとされている。 こうした工作について知ったブッシュ大統領は怒り、政権の内部で議論が起こったというが、結局、何もせずに放置したようだ。何しろ、ブッシュ政権では、イスラエルの利益を第一に考えるネオコンが力を持っていた。イランに対する情報活動でアメリカとイスラエルの関係が弱まるのはバラク・オバマ政権になってからだという。2010年11月に米国務省はジュンダラーを「テロ組織リスト」に載せた。 ジュンダラーのケースとは目的が違うが、1985年にモサドは「偽装テロ」を実行している。ヨルダンの元将校、モハメド・ラディ・アブドゥラを介してアブル・アッバスにアキレ・ラウロ号を襲撃させた。その際、ユダヤ系アメリカ人が殺されている。資金はシチリア島のドンを装ったイスラエルの情報機関員から流れていた。この事件を使い、「パレスチナ人の残虐さ」が宣伝されたことは言うまでもない。 もっとも、アメリカがイランに対する工作を行っていないわけではない。JSOC(統合特殊作戦コマンド)やCIAがイランに潜入して工作していることは否定されていない。本ブログでは何度も書いているが、ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官は2001年に段階でイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンを攻撃する計画を立てていた。 シリアの反政府派に米国務省が資金援助していたことはWikiLeaksが明らかにした外交文書に記載され、2011年の4月下旬か5月上旬の頃からアメリカ軍やNATO軍「SFA(シリア自由軍)」(反乱兵と傭兵の混成軍と言われている)をトルコの米空軍インシルリク基地で訓練し始めたとする情報がある。しかも、選挙が近づくとアメリカの政治家はイスラエルに特段の配慮をする。 リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制を倒す際、英仏米軍はアル・カイダ系武装集団のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)と手を組み、新体制ではアル・カイダの影響力が大きくなっていると見られている。そうした中、アル・カイダのメンバーがリビアへ移動し、戦闘員を集めていると伝えられている。集められた戦闘員はシリアに向かうとも言われている。リビアの次はシリア、その先にはイランがある。
2012.01.14
核開発に関係していた化学者、モスタファ・アーマディ・ロシャンが1月11日、イランで殺された。乗っていたプジョー405にオートバイが近づいて爆弾を取り付け、走り去った後で爆発したようだ。真相は不明だが、イスラエルの情報機関「モサド」がイランの反政府グループ「ムジャヒディン・ハルク」と共同で実行したと疑う人は少なくない。 アメリカ陸軍のウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、アメリカのジョージ・W・ブッシュ政権は2001年9月11日の出来事、つまり航空機にがニューヨークの高層ビルに突入して国防総省の本部が攻撃(いわゆる同時多発テロ)された直後、イランを攻撃することを決めていた。イランのほか、イラク、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンが攻撃予定リストに載っていたという。 言うまでもなく、このリストで最初に攻撃されたのはイラク。そして、アメリカ軍はイラク占領と同時に「怪しい人間」をアブ・グレイブ刑務所に拘束、拷問を繰り返すことになる。拷問の様子を撮影した写真が外部に漏れ、世界的にアメリカ軍は非難されることになった。イスラム世界の外でも反米感情が高まったのは当然だろう。現在、アメリカは単なる「ゴロツキ国家」だとしか見られていない。日本はゴロツキの使いっ走りだ。 イラク戦争では「戦争の民営化」が推進された。刑務所の中にも「民間人」が入り込んで尋問も行っている。そうした仕事を請け負った企業として、CACIやタイタンという名前が挙がっているが、それだけでなく、こうした企業を隠れ蓑に使ってイスラエルの情報機関や軍の人間がイラクで活動している疑いも指摘されていた。 当時、刑務所長を務めていたジャニス・カルピンスキー准将(後に大佐へ降格)によると、多くの民間人は通訳だったが、所長が知らない人間が何人か入り込んでいたという。そうした謎の民間人は通訳を連れていたり、収用されている人物を外に連れ出していたとも語っている。BBCに対しては、イスラエル人が尋問に参加していたとカルピンスキー准将は話している。 この頃、ファルージャではアメリカ軍がイラク市民を虐殺、軍事的な緊張が高まっていた。そうした中、傭兵会社「ブラックウォーター(後のXe、アカデミ)」の兵士4名が軽武装で市内に入り、待ち伏せ攻撃にあって死亡している。イラク側は傭兵がCIAの仕事をしていたと主張している。状況から判断して、4名が襲われることをアメリカ側も予想していた可能性が高く、軍事的な緊張を高めることが目的だったのではないかという見方もある。 2007年になると、アメリカのJSOC(統合特殊作戦コマンド)やCIAなどがイラク南部からイランへ越境攻撃しはじめている。この作戦ではクルドの分離独立派、スンニ派の武装グループである「ジュンダラー(アラーの兵士)」、あるいはMEK(ムジャヒディン・ハルク)も協力関係にある。 そして2009年2月、イギリスのテレグラフ紙は、イスラエルがイランに対する破壊工作を始めると報道、2010年1月にはオートバイに仕掛けられた爆弾でイランの核科学者と見られる人物が殺され、11月にはふたりのイランの科学者が襲われてひとりが死亡。11月のケースは、近づいてきたオートバイがターゲットの自動車に爆発物を取り付け、数秒後に爆発したという。昨年7月にも科学者が射殺された。その間、イランの核開発に関係するコンピュータでウィルスが発見されている。 いずれの暗殺ともモサドの工作員が実行したと言われているが、この推測が正しいなら、なぜ科学者を襲っているのかという疑問が出てくる。イランの科学者を脅し、核開発の続行を困難にするという見方もあるが、核開発に関係する知識を持つ専門家は少なくないわけで、説得力に欠ける。 それに対し、ジャーナリストのロバート・ライトは別の見方をしている。イランを挑発して軍事的な緊張を高め、イランの反発を「挑発行為」と宣伝すれば、イスラエルがイランを攻撃したときの批判を軽減できる。アメリカを戦争に引き込むこともできる。こうしたことが目的ではないかというのだ。 イスラム世界の軍事的緊張を高めるという点では、アメリカ海兵隊の兵士がタリバン兵の死体に放尿している場面とされる映像も無視できない。アフガニスタン政府もアメリカ政府もこうした行為を非難したようだが、このタイミングでこうした映像が流されたのは偶然なのか、故意なのか? アメリカが推進している経済的な「制裁」も軍事的な緊張を高めることになるが、そうしたシナリオに日本の「財務省」は乗った。財務省はあらゆる手段を使って日本人を地獄へ突き落とそうとしているようだ。
2012.01.13
アメリカのイランに対する挑発行為/破壊工作はジョージ・W・ブッシュ政権の時代から続いている。そして現在、アジアやヨーロッパの国々に対し、イランとの石油取引を止めるように圧力を加えている。中国はこうした要求をはねつけ、EUは検討中のようだ。 そうした中、日本の安住淳財務相は12日にティモシー・ガイトナー米財務長官と会談、その後に開かれた記者会見で、日本のイランからの原油輸入を段階的に減らしていくことを財務長官に伝えたと語っている。 中東を訪問中の玄葉光一郎外相に対し、湾岸の独裁産油国でイスラム武装勢力の保護者でもあるサウジアラビアやアラブ首長国連邦は石油を「優先的に供給する」と保証したようだが、石油の供給に余力がなくなれば意味はない。日本国内には、中東の混乱は原発再開にとって追い風になると考えている勢力もいるだろうが、そんなことをすれば、次の大きな地震で日本は壊滅する可能性がある。 現在、湾岸周辺にはアメリカやイギリスが軍艦を出してイランを威圧、イラン側はホルムズ海峡を封鎖するとしている。玄葉外相はイランに対して「挑発的な発言は慎むべきだ」と語ったというが、挑発的な言動を続けてきたのはアメリカとイスラエルにほかならない。 今年に入り、フランスのフィガロ紙はイスラエルの情報機関、モサドがクルド人の居住地域で亡命イラン人を訓練していると伝えている。勿論、破壊活動が目的だ。イスラエルがクルド人を破壊活動の手先に使っていることは有名で、イスラエルのアビグドル・リーバーマン外相はトルコに対し、PKK(クルジスタン労働者党)を使ってトルコを攻撃させると叫んでいる。 アメリカの調査ジャーナリスト、シーモア・ハーシュによると、アメリカのJSOC(統合特殊作戦コマンド)やCIAなどがイラク南部からシリアへ越境攻撃しはじめたのは2007年から。イラン革命防衛隊の特殊部隊、アル・クズのメンバーを拉致して尋問することも工作に含まれていたという。手駒としては、クルドの分離独立派だけでなく、スンニ派の武装組織「ジュンダラー(アラーの兵士)」やMEK(ムジャヒディン・ハルク)も使われている。かつて、アメリカ政府はMEKを「テロリスト」だとしていたが、今では「自由の戦士」だ。 アメリカやイギリスは王制時代、といっても欧米がでっち上げた体制だが、その時代のような自分たちに都合の良い体制を再び築こうとしている。核開発などは単なる口実、イラク攻撃前に叫んでいた「大量破壊兵器」と同じこと。 そもそも、世界有数の核兵器保有国で過去に核攻撃を閣議決定したことのあるイスラエルを放置してイランの核開発を脅威だと叫ぶのは滑稽だ。中東で最大の脅威はイスラエルにほかならない。地震多発地帯に原発を乱立させ、福島第一原発で大事故を引き起こし、世界を放射性物質で汚染、しかも原発を再稼働させようとしている日本がイランの核開発をとやかく言うのも奇妙な話だ。 共和党の大統領候補でただひとり軍事介入に反対しているロン・ポールは1月8日、制裁に反対すると述べている。イラクやリビアの場合と同じように、戦争を始める第一歩になるからだ。逆に、制裁を声高に叫んでいる人びとは戦争を始める第一歩にしようとしている。その先にはイランの資源があることは言うまでもない。破綻寸前の経済、つまり崩壊寸前の支配体制を建て直すため、何が何でも略奪しなければならないということだ。日本が制裁に加担するということは、戦争を後押しすることにほかならない。
2012.01.12
グルジアで病院が新設されていると話題になっている。それだけなら何ら問題はないのだが、アメリカのプロジェクトだと聞くと、途端に焦臭くなる。自国の医療制度を崩壊させ、貧困層から治療を受ける権利を奪っているアメリカという国の政府が他国で病院を建設するのはなぜなのか? グルジアの反政府派は病院建設をイラン攻撃の準備だと主張している。ミヘイル・サーカシビリ大統領がアメリカやイスラエルと緊密な関係あることを考えれば、確かにありそうな話だ。南オセチアをグルジア軍が2008年8月に奇襲攻撃しているが、その前からアメリカやイスラエルはさまざまな支援をしてきた。 2003年11月に行われた議会選挙で不正があったとして自らの勝利を宣言、「西側」の支援を受けて実権を握ったのがサーカシビリ。このいわゆる「バラ革命」のパトロンはバドリ・パタルカツィシビリという富豪だった。 ロシアのウラジミール・プーチンと対立、イギリスのロンドンに逃亡したボリス・ベレゾフスキー(後にプラトン・エレーニンに改名)とパタルカツィシビリは親しく、2003年にはベレゾフスキーもグルジアを訪問している。 後にサーカシビリとパタルカツィシビリは仲違いし、2008年2月にパタルカツィシビリはロンドンで急死している。ちなみに、ベレゾフスキーはウクライナに親米政権を樹立した「オレンジ革命」のパトロンとしても知られている。 2000年にはユーゴスラビア、2003年にはグルジア、そして2004年から05年にかけてはウクライナで「革命」があり、親米政権が誕生している。こうした政変の黒幕がアメリカの「外交官」、リチャード・マイルズだと報じたのはイギリスのガーディアン紙だ。 マイルズは1999年から2002年までセルビアの首都、ベオグラードにアメリカ大使として駐在、2002年から2005年まではグルジアで大使を務め、サーカシビリを勝たせるために同陣営をコーチしている。 実権を握ったサーカシビリはNATOへの加盟を画策している。グルジアに限らず、すでにNATOは旧ソ連圏を侵食しつつあるが、これは1990年にドイツが統一される際にアメリカのジェームズ・ベイカー国務長官がソ連のエドゥアルド・シュワルナゼ外相(サーカシビリが倒した相手)に約束したことに反する。ベイカーはシュワルナゼに対し、統一後もドイツはNATOにとどまるが、東へNATOを拡大することはないとしていたのだ。 NATO拡大の背後には親イスラエル派のネオコン(新保守)がいる。例えば、グルジア政府のロビイストとして活動したランドール・シューネマンはジョン・マケインの顧問。マケインがサーカシビリ政権にとって都合の良い発言をするたびに、シューネマンの懐へグルジア政府からカネが入る仕組みのようだ。このシューネマン、ネオコンが組織したPNAC、あるいはイラク攻撃を熱心に主張していた「イラク解放委員会」でも中心人物のひとりとしても知られている。NATOの拡大にも熱心だ。 2008年8月、サーカシビリはロシアが実効支配する南オセチアに奇襲攻撃を仕掛けた。南オセチアの分離独立派に対話を訴えた約8時間後、深夜近くにミサイル攻撃を開始したのだ。ロシア軍の反撃で侵攻作戦は失敗するが、その一因はアメリカやイスラエルに対する妄信があったようだ。 グルジアへは2002年にアメリカ政府が特殊部隊を含む約40名を派遣、その翌年にはグルジアの軍事パレードでアメリカ国歌が最初に演奏されているのだが、アメリカよりも早くイスラエルが軍事支援に乗り出している。2001年からイスラエルの会社がロシアとの戦争に備え、武器を提供すると同時に軍事訓練を行ってきたのである。 2008年1月から4月にかけてアメリカの教官がグルジアに入って特殊部隊を訓練、侵攻作戦を始める数日前にも訓練のために教官がグルジア入りしたという。グルジア軍を訓練した傭兵会社とはMPRIとアメリカン・システムズだ。 2008年の軍事衝突の後、ロシア軍のアナトリー・ノゴビチン将軍はイスラエルの関与を非難している。2007年にイスラエルの軍事専門家がグルジアの特殊部隊を訓練し、重火器や電子機器、戦車などを提供したとノゴビチンは主張している。 ところで、ロビイストのシューネマンと親しいブルース・ジャクソンは「暫定民主国家プロジェクト」の会長として、また「米NATO委員会」の委員長としてNATO拡大のために活動している。元情報将校のジャクソンは1996年の大統領選挙ではボブ・ドール陣営で活動、97年にはPNACの創設に参加した。2002年まではロッキード・マーチンの副社長だ。 言うまでもなく、ロッキード・マーチンは世界有数の軍需産業であり、ヒラリー・クリントン国務長官のスポンサーとしても知られている。軍事的な緊張を高めて武器を売っているとも言われているが、だからといって戦争が起こらないとは言えない。軍需産業の思惑だけで世界が動いているわけではないのだ。
2012.01.11
スーダンのオマル・アル・バシール大統領が7日、リビアを訪問したと伝えられている。国民暫定評議会のムスタファ・アブデル・ジャリル議長らと会談し、ムアンマル・アル・カダフィ体制を倒したことことに感謝したという。カダフィはスーダンの反政府派を支援、バシールにとっては敵だった。勿論、カダフィ体制を倒したのは暫定評議会ではなく、英仏米軍とアル・カイダ系武装集団の連合軍である。 スーダンでは長い間、内戦が続いてきた。そうした中で起こったダンフールでの殺戮を理由にして国際刑事裁判所(ICC)は2009年、バシールに逮捕状を出している。つまりバシールは「御尋ね者」である。 もっとも、リビアの暫定評議会もICCの「捜査対象」だ。無抵抗だったカダフィをリンチの上に殺害したことなどが問題になっている。リビアの体制転覆で中心的な役割を果たしたNATO軍も市民を虐殺した疑いで「捜査」されているはずだ。 ダンフールでの戦闘で犠牲になった市民はスーダン政府側の主張でも1万9500人、NGOなどは40万人という数字を出している。いずれにしろ、大変な数の犠牲者が出たことは間違いない。 ただ、こうした事実に基づいて、一国の元首をICCが裁くことには疑問もある。アメリカのジョージ・W・ブッシュ政権はアフガニスタンとイラクを先制攻撃して多くの市民を虐殺しているのだが、ICCはブッシュに逮捕状を出していない。しかも、その攻撃は嘘に基づくもの。 アメリカが一方的に始めた戦争による犠牲者数はイギリスのNGO「イラク・ボディ・カウント」が発表した「確実な死者数」でも16万2000人、ジョンズ・ホプキンズ大学とアル・ムスタンシリヤ大学の共同研究によると、2006年7月までに約65万人が死亡したと推計、また、イギリスのORB(オピニオン・リサーチ・ビジネス)が行った調査では2007年夏までに約100万人が戦争で殺されたという。現段階では100万人を突破している可能性が高い。 こうした殺戮行為を犠牲者数で比較することが適切だとは思わないが、バシールが残虐非道の極悪人だとするならば、ブッシュ・ジュニアやリチャード・チェイニー元副大統領やドナルド・ラムズフェルド元国防長官などはバシール以上の極悪人ということになる。ガザ地区などへ軍事侵攻を繰り返し、破壊と殺戮の限りを尽くしてきたイスラエルの支配者たちも同じだ。
2012.01.08
昨年は世界各地で抗議行動が展開された。中東から北アフリカにかけてのイスラム世界では「アラブの春」、アメリカでは「占拠運動」といった具合だ。支配層が明けた財政の大穴を庶民に押しつけようとしているギリシャでも激しい抵抗が見られた。 そうした中、リビアやシリアでも体制を揺るがす動きがあり、リビアに君臨していたムアンマル・アル・カダフィはリンチの上で殺害されている。 リビアの体制転覆を仕掛けたのはフランスとイギリスであり、アメリカが同調する形になっているのだが、地上軍の主力はアル・カイダ系のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)だということが明確になっている。アメリカ政府がテロリストだと「認定」しているだけでなく、LIFG側も自分たちとアル・カイダとの関係を隠していない。カダフィ体制が崩壊した後、ベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられていた。 抗議活動にしろ、民衆蜂起にしろ、それだけ体制に対する不満、怒りが充満しているからこそ起こるのだが、往々にしてある種の権力グループ(しばしば外国の勢力)、特にアメリカの権力者はそうした不満や怒りを利用してきた。 歴史を振り返ると、例えば、1953年にはイランの民族主義政権だったムハマド・モサデク、その翌年にはグアテマラのヤコボ・アルベンス・グスマン政権、1973年にはチリのサルバドール・アジェンデ政権を倒しているのだが、いずれもストライキやデモで社会不安を高め、軍事力を使って倒している。言うまでもなく、この3名を独裁者と呼ぶことはできない。アメリカの巨大企業にとって不都合な政権だったということだ。 その後、アメリカの支配層は「民主化」を思想戦の軸に据える。勿論、ターゲット国を本当に民主化しようというわけではない。「民主化」というフレーズを使って攻撃するというだけの話だ。旧ソ連圏の「民主化」も無関係ではない。 1970年代にイタリア/バチカンでは大規模な金融スキャンダルが発覚、大問題になっていた。イタリアの大銀行、バンコ・アンブロシアーノやバチカン銀行(IOR)が不正融資を行っていたのだが、その資金が流れていった先はポーランドなどの「民主化勢力」。 この時期、非公然結社P2や「NATOの秘密部隊」とも呼ばれている米英主導のテロ組織の存在が明るみに出ている。1980年に結成されたポーランドの自主管理労組「連帯」も資金の受け皿になっていた。 1981年にロナルド・レーガンがアメリカ大統領に就任すると、「プロジェクト・トゥルース」という心理戦プロジェクトを始める。非政府組織と協力関係を築き、「民間」の資金利用することになっていた。すぐに名称は「プロジェクト・デモクラシー」に変更された。1982年にレーガン大統領はイギリス議会で「プロジェクト・デモクラシー」という名前を口にしている。 日本では「左翼」の中にも言葉で簡単に操られる人たちがいて、「民主化」というと本当に「民主化」だと思い込んでしまう。「連帯」などは公然と西側の情報機関と交流していたため、西ヨーロッパの人びとからは冷めた目で見られていたのだが、日本には信奉者が少なくないようだ。 アメリカの支配層はある国の体制/政権を倒すためにストライキやデモを利用してきたことは事実だが、勿論、ストライキやデモが全てアメリカ支配層の陰謀だというわけではない。 2002年にベネズエラでクーデター騒動があった。アメリカの巨大企業にとって都合の悪いウーゴ・チャベス大統領を有力メディアが激しく攻撃、それに呼応する形で労働組合も抗議活動に参加、軍隊が出てきたのだが、その背景にはアメリカのジョージ・W・ブッシュ政権が存在していた。 このケースでもデモは政権を攻撃する戦術として利用されたが、このクーデター計画を挫折させたのもデモ。反チャベス派と親チャベス派のデモが繰り広げられ、死者が出ている。有力メディアはチャベス政権の「弾圧」で死者が出たと主張していたが、実際の犠牲者は大半が親チャベス派だった。チャベス大統領が拘束されると、約5万人のデモ隊が大統領の解放と公務復帰を求めて官邸を取り囲んでいる。 イギリスのオブザーバー紙によると、クーデターの黒幕はジョン・ネグロポンテ、エリオット・エイブラムズ、そしてオットー・ライヒ。アメリカ政府の高官がクーデター計画に関与していた。 ネグロポンテはブッシュ・ジュニア政権で国連大使や国家情報長官を務めた。レーガン政権ではホンジュラス駐在の大使だったのだが、その頃のホンジュラスでは「死の部隊」が反政府派を弾圧、殺戮を繰り返していた。そうした行為をネグロポンテは黙認していたことを覚えている人は多く、国連大使としてなかなか承認されなかった。 エイブラムズはネオコン、つまり親イスラエル派。イラン・コントラ事件では中心的役割を果たしたひとりだ。ブッシュ・ジュニア政権では国家安全保障問題担当副補佐官に就任、中東政策を仕切っていたようだ。 キューバ系アメリカ人のライヒは1986年から89年にかけてベネズエラ駐在大使を務めている。なお、クーデターの最終局面で登場した軍人は、アメリカ陸軍が設置した「SOA(南北アメリカ軍事訓練所、現在は治安協力西半球機関)」を卒業したメンバーが中心だった。 最終的にクーデターが失敗した原因は一般民衆が大統領を支持したことに加え、軍内部の少なからぬ部分がクーデターに反対したことにある。チャベス大統領が拘束されて暫定政権が発足した直後、日本のマスコミは「貧困層重視の主張が空回りして国民全体の支持を失っていた」と報道していたが、事実は違った。
2012.01.07
中東からアフリカにかけての地域で軍事的な緊張が高まり、殺戮も始まっている。アメリカがアフガニスタンに軍事侵攻して以来、この地域は戦乱の時代に入り、戦乱は燎原の火のように拡大している。「人道」や「民主化」を口実にして欧米、特にアメリカやイギリスが火をつけているのだ。 米英両国が「人道」や「民主化」を真剣に考えているとは思えない。人権など認められていない湾岸の独裁国家やイスラエルと友好的な関係にあることを見ても、それは明らかだ。実際の目的は利権の維持拡大にあると言わざるをえない。 自らも資源国であるリビア。この国に君臨してきたムアンマル・アル・カダフィ政権はサハラ以南のアフリカ諸国を欧米から自立させる動きを見せていた。アフリカ諸国が自立してしまったら、欧米は利権を失い、世界の支配システムは崩壊する。 リビアのカダフィ体制を倒すために英仏米軍はアル・カイダ系の武装集団と手を組んだのだが、すでにターゲットをシリアとイランに移している。リビアで兵士を募集しているアル・カイダも部隊をシリアへ移動させるという話がある。 シリアへの軍事介入はイラン攻撃の第一幕であり、アメリカからの自立を模索してイランへ接近しているイラク政府に対する威圧という意味もあるだろう。そうしたシリアへアラブ連盟の監視団が入ったのだが、「人権団体」や「反体制派」が宣伝するような政府による大量殺戮の証拠を見つけられていない。 シリアの場合、アメリカ国務省が反アサド派を支援していたことがWikiLeaksの発表した外交文書でも明らかになっているが、ロンドンを拠点とする「シリア人権観測所」はイギリスの外相とも緊密な関係にあることが判明している。この「人権団体」のスポンサーは西側諸国と湾岸の独裁産油国、特にサウジアラビアだと言われている。資金はドバイ経由で流れ込んでいるようだ。言うまでもなく、サウジアラビアは人権抑圧国家である。 トルコ政府の保護とアメリカ軍の訓練を受けてシリアを越境攻撃している「SFA(シリア自由軍)」(反乱兵と傭兵の混成軍と言われている)の司令官、リアド・アル・アサドは監視団を批判、戦闘をエスカレートさせると発言している。 自分たちに都合の良い情報を提供しない監視団にバシャール・アル・アサド体制の打倒を目指す勢力は不満を持ち、シリアから追い出そうとしている。リビアではアル・カイダ系武装集団を支援する形になった国連はシリアでも「人権団体」や「反体制派」が提供する情報に基づく「推測」をしているのだが、その情報が誇張、あるいは嘘だという可能性を考慮していないのは「お笑い種」だ。 SFAなど「反乱軍」が武装蜂起したのは約10カ月前、「平和的抗議活動」と時期が重なる。本ブログでは何度も書いていることだが、4月の終わりから5月の初め頃にSFAはトルコの米空軍インシルリク基地でアメリカ軍やNATO軍から訓練を受けているとも伝えられている。「平和的抗議活動」の活動家と反乱軍が一体の関係にあるとする報道もある。 シリアやイランへの軍事介入を見通してなのか、イスラエルの軍事演習にアメリカ軍は数千人規模の部隊を派遣するとも言われているが、これをイラン攻撃の準備と理解する人もいる。 そのイスラエルは周辺への軍事侵攻で破壊、略奪、殺戮を繰り返してきた。隠蔽工作も行われているが、隠しきれていない。もし、シリアでは欧米諸国が許せないような弾圧、殺戮が簡単に隠されたのならば、隠しきれない残虐行為を繰り返しているイスラエルを許すべきではない。シリアに対する圧力とは比較にならないような強い力で制裁する必要があるはずだが、そんな話は聞かない。残虐行為であろうと、核兵器の開発と保有であろうと、イスラエルの場合は問題にならず、イスラム諸国は兆候がなくても大問題になる。 現在、アメリカでは大統領選挙が繰り広げられているが、共和党の候補はひとりを除き、好戦派である。軍事介入に反対しているロン・ポールをアメリカのメディアは支持率に関係なく無視、最近は中傷攻撃を始めている。先日、CNNはポール候補を支持するアメリカ兵の発言を機械の不具合ということで途中で打ち切ってしまった。アメリカは戦争に反対する意見が許されない国になっている。日本のマスコミはアメリカよりもひどい状況だ。東電福島第一原発の事故で醜態をさらしたことなど、気にしていない。
2012.01.06
シリアにアラブ連盟の監視団が入り、シリア政府軍は戦闘部隊を撤退させても内戦状態は続いている。別に「デモ弾圧」が原因ではなく、正体不明の「テロリスト」が攻撃を継続しているようだ。 こうした「テロリスト」以外にもトルコ政府の保護を受け、アメリカ軍の訓練を受けた「SFA(シリア自由軍)」(反乱兵と傭兵の混成軍と言われている)がトルコ領からシリア領へ越境攻撃を繰り返している。武器はレバノンから流れ込んでいるという証言もある。すでに本ブログでは書いたことだが、リビアでアル・カイダ系の武装勢力が兵士を募集、戦闘部隊をシリアへ移動させると言われている。バシャール・アル・アサド政権を倒そうとしている勢力は戦闘を止めたいとは思っていないのだろう。 ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、リビアなどへの軍事侵攻で、攻撃の口実を作ってきたのは「人権団体」や「反体制派」。こうしたグループをシリアのケースでもアメリカ政府が資金面で支援してきたことはWikiLeaksが公表した外交文書でも明らかだ。こうした団体や勢力は情報源として信頼性に欠けるということであり、シリアに関する報道でも、外国のメディアではシリア政府側の主張も伝えるようにしているようだ。 日本のマスコミは「民主化を求める市民をアサド政権が弾圧している」という単純な構図で伝えているようだが、CNNもそうした報道は恥ずかしいと思ったらしく、「さまざまな方向から銃声が聞こえ、誰が撃っているのか分からない。」というアラブ連盟のナビル・エル・アラビ事務局長の発言を引用している。 もっとも、CNN日本語版の見出しは日本的だ。英語版は「シリアで殺戮続くとアラブ連盟報告」なのに対し、日本語版では「シリア監視団派遣後も弾圧続く、各地で銃声 アラブ連盟報告」となっている。 昨年の4月、あるいは5月からトルコの米空軍インシルリク基地でアメリカ軍やNATO軍から訓練を受け、シリアへ越境攻撃しているSFA。この武装勢力は戦闘をエスカレートさせるつもりだということを隠していない。 シリアのアサド大統領はロイターに対し、政府軍が戦っている相手は外国から支援を受けた「武装テロリスト」であり、政府軍は戦闘で2000名が殺されていると主張、監視団の求めで政府軍を撤退させた結果、犠牲者は増えているともしている。 アメリカやNATOを後ろ盾とする武装勢力がアル・カイダと連合し、リビアと同じようにシリアの体制を転覆させようとしている可能性が高く、アサド政権は反撃の準備をすることになる。シリアの内乱は拡大すると覚悟しなければならないだろう。シリアの現政権を倒すことに成功したなら、次はイラクをシーア派、スンニ派、クルド人で3分割し、イランを攻撃するという道筋が見える。 ところで、今年10月、イスラエルは「巨大地震」に備えた演習「ターニング・ポイント6」を実施する予定で、その演習にNATO軍も参加するのだという。イスラエルは地震を利用して何かを転換させるつもりなのだろうか?
2012.01.04
英仏米軍とアル・カイダ系のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)が手を組むことでリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制を倒すことに成功したわけだが、その後、アル・カイダのメンバーがリビアへ移動し、戦闘員を集めていると言われている。北アフリカに基盤を作ろうとしているとも考えられているのだが、戦闘部隊がシリアへ移動するという話もある。 シリアでは現在、「民主化運動」ではなく、内戦状態。正体不明の「テロリスト」が活動しているほか、トルコ政府の保護を受けた「SFA(シリア自由軍)」(反乱兵と傭兵の混成軍と言われている)がトルコ領からシリア領へ越境攻撃を繰り返している。そこにリビアからの援軍が派遣されるというわけだ。 アメリカ軍やNATO軍は2011年の4月か5月から米空軍インシルリク基地でSFAを訓練し始め、ヨルダン北西部にあるマフラクにもシリア攻撃の拠点を作ったと言われている。戦闘員のレベルでは「解放戦争」を戦っているつもりのようだが、実際には英仏米が背後にいると考えるべきだろう。 シリアのバシャール・アル・アサド体制を倒せば、イラク西部のスンニ派と連携してシーア派が主導権を握るイラク政府に圧力を加えることができ、イランを攻撃する際にはルートを確保することができる。こうした軍事的な緊張を反映してなのか、アメリカは湾岸諸国に軍隊を駐留させるだけでなく、サウジアラビアにF-15戦闘機を供給するようだ。 アメリカ政府はアル・カイダと手を組んだのに続き、タリバンとの関係を修復しようとしている。アル・カイダを保護したという名目でジョージ・W・ブッシュ政権はタリバンが実権を握っていたアフガニスタンを先制攻撃したのだが、ここにきてアメリカ政府はドイツやカタールでタリバンの代表と会談していると伝えられている。その結果、タリバンの戦闘員5名をグアンタナモの収容所からカタールへ移動させ、タリバンの創設者であるムラー・オマールの名前を「テロリスト名簿」から削除することになったともいう。
2012.01.01
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