森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2025.09.15
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形外先生言行録(62ページ)に開業医の御津磯夫氏の話がある。

​鐘が鳴るかや 撞木が鳴るか 鐘と撞木の間が鳴る​

慈恵医大で私の精神科講義の森田教授の第一声がこれであった。
黒の詰襟の洋服で、明治時代の小学教員か小使さんと思われるばかりのお姿であった。
そして無表情で教室にはいってこられて、教壇の上の椅子に腰を下ろされ、何の挨拶もなく、ただちにこの禅語めいた言葉を吐かれたのであった。
私は面食らって一瞬茫然としたが、この最初の一言が私の一生を支配した・・・。

撞木は鐘を打つ道具である。鐘は撞木によって打たれるものである。
私たちは普通「鐘が鳴った」と認識していますが、正確には撞木が鐘に当たることによって初めて音が鳴っています。
つまり鐘が鳴るというのは、鐘と撞木の相互作用によってはじめて起きた現象です。
鐘だけ、撞木だけでは音はでません。2つがぶつかり合うという「相互作用」や「関係性」の中にこそ、音が鳴るという現象の本質があります。


ですから、私たちが普段見聞きしている現象や出来事を理解するうえで、表面的な部分や一部の要素だけを取り上げて論じるのは間違いのもとになるということです。
その背後にある複数の要素間の相互作用や、全体としての関係性に目を向けることがとても大事になるということになります。

森田理論の中に「両面観」「精神拮抗作用」「不即不離」「主観的事実と客観的事実」などというキーワードがありますが、これらは同じような意味合いがあります。
つまり、物事には対立する2つの側面があり、それが相互に関係し作用しあって、目に見える現象を作り出しているということです。
決して一方の側面から問題が生まれているわけではありません。

森田では自分の主観的な思考、感情や気分、感覚などに対して、客観的事実があるといいます。
誰が見ても客観的で妥当性のある考え方が存在している。
私たちは客観的事実を、常に主観的なフィルターを通して解釈しています。
森田では主観的事実にとらわれると客観的事実が見えなくなり、不適切な行動につながるといいます。
客観的事実が主観に影響を与え、また主観が客観的な行動に影響を与えるという、絶え間ない相互作用の中で私たちは生きています。
森田では、この相互作用や関係性を正しく認識し、主観的事実と客観的事実の調和を図ることを目指しているということになります。


片方を主観的事実、もう片方を客観的事実と見立てて、絶えずバランスをとりながら、しかも慎重に目的地に向かって前進している。
これが森田理論がイメージしている本来の人間の生きる姿だと言えます。





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Last updated  2025.09.15 06:20:04
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分からない歴20年子@ Re[2]:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 森田生涯さんへ  お返事ありがとうござ…
森田生涯 @ Re[1]:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 分からない歴20年です子さんへ コメント…
分からない歴20年です子@ Re:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 森田を知って随分経つのに今だに難しく感…
森田生涯 @ Re[1]:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 長谷川勤さんへ 読んでいただいてありが…
長谷川勤@ Re:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 森田理論学習のすすめ のブログ 本日初…

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