ガレットのお菓子日記

ガレットのお菓子日記

2008.12.29
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カテゴリ: 映画・宝塚・観劇
ミュージカル「 エリザベート 」を 朝海ひかる・山口祐一郎 主演、帝劇で観劇しました。
東京では12月25日に千秋楽を迎え、その後は大阪で2009年1月8日~2月2日に続演です。  梅田芸術劇場「 エリザベート」HP

以下は、思いついたことをメモした 観劇記 。ネタバレありですので、詳しい内容を知りたくない方は読まないで下さいね~。
所々敬称略なのはお許し下さい。又、各役者さんのファンの皆様、もし失礼な記述がありましたらお見逃し下さい。悪意は全くありません。

20081218 帝劇エリザ
2008.12.18 帝国劇場「 エリザベート

宝塚では何度も観た事のある エリザベートですが、東宝での観劇は 一路真輝・山口祐一郎 以来の2回目。二人の歌の迫力に圧倒されたのを思い出します。
山口さんの語りかけるような説得力のある歌声と、特に一路さんの『私だけに』の素晴らしさは強烈な印象があります。

◆ 幕開きは ルキー二 高嶋正伸 さんから。この方の代表作といっていいほどの当たり役ですね。本当に群を抜いて安定感が漂います。
一人で大きな空間を一杯に使い、19世紀ウィーンへ一気に観客を引き込んでしまう力はさすがです。
カーテンコールでトートに次いで男性で2番目なのもうなずけます。(宝塚では2番手男役はフランツ・ヨーゼフ)

ただ前回に比べ、狂気の面よりも語り方のいやらしさ(「H」という意味ではなく「崩している感」というのでしょうか)が増した気がします。“慣れ”が出てしまわないように工夫されている?
女性が演じるルキーニよりも、もっとリアルな息苦しさ…。付け髭ではない現実に無精ひげが生えている感…が、ちょっと出すぎている気もしました。


エリザベート配役12月18日

◆ コムさん( 朝海ひかる エリザベート は、得意のダンスを封印しての難役。美しさは問題ないと確信していたものの、高音の歌声は大丈夫かな~と少し心配しながらの観劇。
思ったよりのびやかな歌声に一安心し、後半に進むにつれエリザと同化していくコムさんに感動。カーテンコールではスタンディングオベーション、私もしっかり立ち上がって思い切り拍手をしました
一路さんの圧倒的な歌唱力とは違いますが、『夜のボート』の歌にはひきこまれるような切なさが。


結婚式のあたりまでその印象が続きます。コムさん、まさか太った?そんなはずは…。これは、エリザベートが段々に美しさにめざめ、痩せていく演出?

また、皇帝との出会いの場面、おもわず握手の手をまっすぐ差し出すのは、いくらなんでもこの時代の貴族の作法としてありえないでしょう。びっくり。
宝塚版のように打ち落とした鹿の角を手に飛び出してくる方が観ていて自然です。

その後、少女時代に感じた違和感は結婚後に急速に薄れ、だんだんエリザベートとコムさんが重なっていきます。ウエストもスッキリ美しく、衣裳に煩わされることなく集中できました。
舞台が進むにつれ役が深まっていく感じ。そうそう、そうでなくては。

メイクは宝塚時代のきりっとした目元とは少し変わって、素顔に近い印象。
肖像画のドレスで登場するシーンは期待通りの美しさ。観に来てよかった~、と幸福感に包まれます♪

前から疑問に思っていた場面が一つ。
2幕のはじめ、姑のゾフィー皇太后から子どもたちを取り返し、全て望みが叶い自信にあふれた絶頂期の歌『私が踊る時』。もう死の方は向かない、生きる目的を見つけたから大丈夫とトートを振り払う強いシシィ。
その後に、精神病院でヴィンディッシュ嬢に訴える強い“孤独”。
宝塚版の様に夫フランツ・ヨーゼフ皇帝の裏切りを知った後ならまだしも、何故、全て思い通りになった直後に孤独?と納得がいかない思いをしていました。

が、今回コムさんエリザを観てなんとなく感じたのは、全てを手に入れ満足したと思ったのも幻想。思い通りになったように見えても宮廷から本当に逃げ出して自由に生きることはできないと知ってしまった深い闇…。姑に勝っても幸せになれないエリザベートの悲哀が、その姿から垣間見えたような。。。深読みしすぎかな。

◆  山口祐一郎 トート はなんといっても歌にはじまり歌に終わる。心を包み込むような深みのある歌声は本当に素敵です。
山口さんが歌いだした瞬間に雰囲気は一変。まるでハメルンの笛吹きにつられて思わずついていってしまうような恐るべき吸引力。
その歌声は、下半身がどっしりしすぎているとかカツラが美しくないとか、そんなことはどうでもよくなってしまう魅力を持っています。
ミュージカルは歌の上手な人の舞台を観るに限る、と思う瞬間ですね。

あ、すみません。山口さんのスタイルが悪いと言っているのではなく、受けた印象が“足が地面からあまり離れないな~”と。宝塚版トートは、動きが軽やかで身軽です。
山口さんの背の高さと堂々とした存在感は特筆すべき点。実に舞台栄えがしますね。

少し気になったのは、エリザベートへの愛情表現の淡白さ。
コムちゃんも淡白な表現のため、エリザベートが死の誘惑に魅入られて思わずそちらの世界に行ってしまいそうになる“ひきずられる危うさ感”は希薄。
宝塚のマリコトートや水トートのような表情豊かな(人間臭い)黄泉の帝王(の表現がよいかどうかは好みが分かれると思いますが)を見慣れていると、初演の一路トートに通じる超越した存在感のため“エリザベートに恋する”という思いから少し引いているように見えました。

◆  皇帝フランツ・ヨーゼフ 石川 禅 さん。
一番印象に残ったのはやっぱり『夜のボート』の二人の歌。どんなに愛しても向かい合おうとしてもすれ違ってしまうどうにもならない思いを切々と歌い上げ、心を打ちます。
マザコンのひ弱さはほとんど感じることなく、育ちのよい皇帝の印象。だんだん年をとっていく役作りは自然でした。

◆  ルドルフ 伊礼彼方 さん。
スッキリとした立ち姿や苦悩するお顔等は覚えていますが、絶対にルドルフは彼でなくては、といった強烈な印象が残っていません。

というのは、自殺に追い込まれる前のダンスでは特に、 トートダンサー たちの怪しく迫力のあるダンスに圧倒されてしまいまして…。
宝塚では 黒天使 。美しくバレエのような動きで“舞う”ところ、東宝では全く違った振り付けで大いに楽しめます。この演出の違いは秀逸。

トートダンサーたちがバッと上半身裸になった時、とっさに
「宝塚ではこれはありえない演出!」
「地を這うような振り付けが面白くていいわ~」
「武田トートなら、一緒に脱いで踊っても違和感なかったりして」などと妄想。更に最も強く思ってしまったのは
「この怪しげな裸トートダンサーに囲まれ思い切り踊るコムちゃんルドルフを観てみたい!」

これだけ余計なことを考えてしまっては、伊礼ルドルフに集中できません。ごめんなさい~。

少年ルドルフ 田川くん のクッキリハッキリとした可愛らしさが印象的。宝塚ではこどもルドルフは娘役がすることもありますが、東宝では本物の子ども!堂々としていてすごいですね~。

それと演出上気になったのは、ハプスブルク帝国の崩壊を暗示する場面で、何故かナチスドイツの大きなハーケンクロイツが舞台にひらめき、ルキーニがヒットラーに扮し群集が「ハイルヒットラー!」を叫ぶシーンがありますが、とても不快。
ウィーン版(未見)にこのシーンが?
エリザ暗殺は19世紀末。帝国の解体でさえ1920年のことですので、ここであえて第二次世界大戦下ドイツを登場させる必要が本当にあったのかどうか。大いに疑問です。

◆  皇太后ゾフィー のイーちゃん( 寿ひずる )。
魔女のような変なメイクや衣裳で作りこむこともなく、気品と迫力ある「宮廷でただ一人の男」ゾフィーを安定感のある演技で好演されていました。
マックス (エリザベートの父)にまさに適役の 村井国夫 さんとのかけあいで“この結婚は失敗だ”と歌うのを聞いているとお二人とも本当にお上手。ミュージカルっていいわ~、と思います。

ただ、死の間際に歌が付け加えられたことにより、ゾフィーの心情が切なく伝わってはくるものの、嫁に対抗するため息子に女をあてがうという暴挙の後では、このシーンに共感するのはちょっと難しい。
特に東宝版で、宝塚版ではぼかされる「皇帝の浮気のせいでエリザベートにまで“いかがわしい病気(フランス病)”がうつった」とはっきりと語られるため、なんだかねぇ…。
(他国の王室のこういった「事実」がミュージカルになるというのも、冷静に考えるとものすごいことですが)

200406カプツィーナ霊廟エリザベートの棺
2004年6月 ウィーン カプツィーナ霊廟エリザベートの棺

東宝版では最後にエリザベートはトートと共に昇天するのではなく、棺に収まってしまうのですね。ちょっと不思議。
ウィーン、カプツィーナ教会地下の霊廟にあるエリザベートの実際の棺は、フランツ・ヨーゼフ皇帝の棺の隣。更に皇帝の隣には皇太子ルドルフの棺が。
エリザベートの魂はどこへ?

つらつらと思いつくままに書いてみました。ミュージカル「エリザベート」は、何度見ても面白い!
曲の魅力はもちろん、配役や演出が変わるたび、細かい所までチェックし、どんどん深く見てしまう自分が怖いですね~。
来年は宝塚月組で瀬奈トート。エリザは誰が?
これからまだまだリピートしそうです。
舞台は生き物、って本当に思います。チケットがあれば何度でも足を運びたい魅力のある公演です。
まだご覧になっていない方で、一度みてみたいな~と思われましたら、ぜひ劇場へ。
…チケットをとるのが難しいかもしれませんが、ぜひ。

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最終更新日  2009.07.18 00:25:15
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