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2017年04月03日
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テーマ: 本日の1冊(3697)

「書く」ことと「売る」ことは"両輪"である

講談社の広報誌「本」を定期購読することにした。その最初の配本(4月号)の冒頭の「特別寄稿」が、この文章だった。

だからといって、私はこの「罪の声」という売れている本を読んで書評をしようとは思わない。文庫で出たならば、買うかもしれないし、買わないかもしれない。その程度だ。では何故取り上げるのか。ここに書かれていることが、「現代」を象徴している、と思ったからである。

かつて彼の本は 「ともにがんばりましょう」 で一回だけ論じたことがある。1979年生まれというから、まだ38歳、作家としては新人の部類だ。社会人2年生ぐらいだ。八作の単行本を出して、編集部も本人も「やっていける」という手応えを持ち始めた頃らしい。「ともにがんばりましょう」で、滅多に書かれたことのない労働組合内部の話を書き切っている処に、彼の本領がある。もとの職場(新聞社)にもある「対象」を決めて充分取材してかかるという姿勢が伺える。あの本は、しかし15年労働組合で中央執行委員をやり、アルバイトで3年専従をした私から見れば荒筋に「無理」があったものだった。でも「その心意気やよし」とは思った。

「罪の声」は、グリコ・森永事件に取材した、本人の勝負作らしい。編集部も書く時から満を侍して書かせている。驚いたのは、作家は書く時から事件発生3月18日の発行日に間に合わせるためにスケジュールを組んで書いているのだ。ところが脱稿したあと編集部の方針が変わる。「大幅に改稿して、発売を8月までに延期」。その場で反発した作家もあとで理解するが、方針が後退したのではなく、もっと大掛かりに売るための段取りのためだった。

5月の新刊説明会での5分のPRに、作家と編集者は成功する。発売一週間後にして三刷、その後彼はまるで映画新作の宣伝で飛び回る有名俳優のように、何回ものインタビューやラジオ出演をこなす。その反響から次から次へとラジオ出演や追記記事、或いはエッセイや講演でも本書をアピール、数珠つながりにイベントに参加する。結果去年の二つの受賞につながる。今年はどうなるか、本屋大賞にもノミネートされている。驚いたのは、作家はそれを当たり前のようにこなしているのだ。「次回作のために、そんなものはしない」などとは決して思っていない。

昔の作家は違ったはずだ。昔と言っても、90年代の宮部みゆきぐらいのイメージしかない。彼らは明確に自らの仕事は「物語をつくるまで」と決めていたと思う。

「本の不況」がもちろん背景にはある。いい本は勝手には売れない。しかし、それだけではない。

物分かりがいいのだ。世の中の流れをいち早く理解している。本人の資質もあるかもしれないが、私は世の中の流れのひとつだと思う。「空気を読む」のに、どうして若者はこんなに長けているのだろう。80年代から次第と高度化して行った、いじめ文化。不況の中で少年時代を過ごし、どっぷり空気を読むことに生きる術を磨いて来た世代の特徴なのか。

そういう人たちが今アラフォーになっている。社会の中枢になっている。彼とは関係ないが、「忖度」が当たり前のように行われる社会もむべなるかなとも思う。





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最終更新日  2017年04月03日 13時40分25秒
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