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2024.03.26
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カテゴリ: 報徳
「二宮翁夜話」 日めくり 
26日 






【126】 をう それ えき 旅舎 はたごや 宿泊 しゆくはく せらる、 とこ に「 ひと つね 菜根 さいこん すなは ち百 すべし」と ける ふく あり、 をう いは く、 菜根 さいこん なに 功能 かうのう ありて、 しか るかと かんが ふるに、 これ 麁食 そしよく になれて、 それ 不足 ふそく おも はざる とき は、 こと みな 成就 じやうじゆ すと こと なり。 うた に「 めし しる 木綿 もめん 着物 きもの 」とよめるに おな じ、 教訓 けうくん なり、 また かたはら に「かくれ ぬま にすむ うを 天伝 あまつた 御影 みかげ にはもれじとぞ おも ふ」とかける 短冊 たんざく あり、 をう いは く、 うた 面白 おもしろ し、 こめ より しやう ずる やう なれども、 もと てん より るに おな じ、 太陽 たいやう 日々 にちにち てん より てら ところ 温気 うんき が、 り、 ちから にて 米穀 べいこく じゆく するなり、 春分 しゆんぶん たがや はじ むる ころ より、 秋分 しうぶん 実法 みの るまでを、 尺杖 しやくぢやう ごと して よ、十 れば十 け、一 つき れば一 つき け、 米穀 べいこく となるべき 温気 うんき りて ゆゑ 仮令 たとひ あひだ 雨天 うてん 冷気 れいき とう ありといへども、 それ まで けは 実法 みの るなり、 しか れども 人力 じんりよく つく さゞれば、 実法 みのり すくな きは、 たがや きの こう おほ ければ、 太陽 たいやう 温気 うんき こと おほ きが ゆゑ なり、 地上 ちじやう 万物 ばんぶつ 一つとして、 天日 あまつひ 御影 みかげ にもれたる もの はなし、 海底 かいてい 水草 すゐさう すら 雨天 うてん 冷気 れいき とし 繁茂 はんも せずと へり、 もあるべし、 うた 歌人 かじん よめ るには めづ らし。  


【126】尊徳先生はある宿場の旅屋に宿泊した。床の間に『人常に菜根を咬み得ば則ち百事做(な)すべし』と書いた掛け軸がかかっていた。先生はおっしゃった。「菜根が何の功能があって百事がなるというのかと考えてみるに、これは粗末な食事になれて、それを不足に思わなければ、行う事は皆成就するという事である。私の歌に『飯と汁木綿着物は身を助くその余はわれを責むるのみなり』と詠んだのと同じだ。よい教訓である。」
またそのかたわらに『かくれ沼(ぬ)の藻にすむ魚も天伝(あまづた)う 日の御影(みかげ)にはもれじとぞ思う』と書いた短冊がかかっていた。先生はおっしゃった。「この歌は面白い。米は地から生ずるようだが、元は天から降るのと同じだ。太陽が日々、天から照らすところの暖かい気温が地に入って、その力にて米穀は熟するのである。春分に耕しはじめる頃から、秋分に実るまでを、尺杖(しゃくじょう)のように図に書いてみるがよい。10日照れば10日だけ、一月照れば一月だけ、地に米穀となるべき温気が入っているから、たとえその間に雨天や冷気等があったとしても、それまで照り込んでいるだけは実るのだ。しかし人力を尽さなければ、実りが少ない。なぜかといえば、耕して鋤ですきかく働きが多ければ多いほど、太陽の温気(うんき)が地に入ることが多いからである。地上の万物は一つとして、天つ日のみ影にもれた物はない。海底の水草ですらも雨天や冷気の年は繁茂しないという。そうであろう、この歌は、歌人が詠んだものには珍らしい。」






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最終更新日  2024.03.26 00:00:25


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