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「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」(原題: Scott Pilgrim vs. the World)は、2010年公開のアメリカのバトルアクション&ロマンティック・コメディ映画です。カナダで爆発的な人気を誇るブライアン・リー・オマリーのコミック「スコット・ピルグリム」を原作に、エドガー・ライト監督、マイケル・セラ、メアリー・エリザベス・ウィンステッドら出演で、愛する彼女の為に元カレ軍団と激闘を繰り広げる様をコミカルに描いています。。「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:エドガー・ライト脚本:マイケル・バコール/エドガー・ライト原作:ブライアン・リー・オマリー「スコット・ピルグリム」出演:マイケル・セラ(スコット・ピルグリム、22歳、バンドのベース、ラモーナに一目惚れ) メアリー・エリザベス・ウィンステッド(ラモーナ・フラワーズ、不思議な宅配人) エレン・ウォン(ナイブス・チャウ、17歳の女子高生、スコットとデートしている) キーラン・カルキン(ウォレス・ウェルズ、25歳のゲイ、スコットのルームメイト) アナ・ケンドリック(ステイシー・ピルグリム、18歳、スコットの妹) マーク・ウェバー(スティーヴン・スティルス、22歳、バンドのフロントマン) アリソン・ピル(キム・パイン、23歳、バンドのドラマー、スコットの元カノ) ブリー・ラーソン(エンヴィー・アダムズ、スコットの元カノ、他のバンドのヴォーカル) ジェイソン・シュワルツマン(ギデオン・グレイヴズ、邪悪な元カレ軍団のラスボス) オーブリー・プラザ(ジュリー・パワーズ、スティーヴンの気に障る元カノ) クリス・エヴァンス(ルーカス・リー、映画スター、邪悪な元カレ軍団の一人) サティヤ・バーバー(マシュー・パテル、邪悪な元カレ軍団の一人) 斉藤慶太&祥太(カイル&ケン・カタヤナギ、邪悪な元カレ軍団の双子の兄弟) ほか【あらすじ】カナダのトロントに住む22歳のスコット・ピルグリム(マイケル・セラ)は、アマチュアロックバンド、セックス・ボブオムのベーシストです。17歳の中国系カナダ人の女子高生ナイブス(エレン・ウォン)と付き合うスコットですが、ある日、夢に見た女性ラモーナ(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)と出会い、恋に落ちてしまいます。バンドはバンドバトルに向けて練習中ですが、恋するスコットは上の空です。ナイブスとデートしている時もラモーナで頭が一杯のスコットは、ついにラモーナと初デートします。バンドバトルの当日、会場にはルームメートのウォレス(キーラン・カルキン)、しっかり者の妹ステイシー(アナ・ケンドリック)、ナイブス、ラモーナらが応援に駆けつけます。セックス・ボブオムの演奏の最中に、ラモーナの最初の邪悪な元カレ、マシュー・パテル(サティヤ・バーバー)が乱入してきます。攻撃を受けたスコットは反撃、マシューを倒し、バンドバトルにも勝利します。しかし、これはほんの始まりに過ぎず、ラモーナと結ばれるためには7人の邪悪な元カレ全員を倒さなくてはなりません。2番目、3番目と邪悪な元カレ軍団が次々と現れ、個性的な技で戦いを挑んできます。スコットはラモーナの協力を得、苦戦しながら勝利を重ねます。やがて6人の元カレを倒したスコットの前に、有名音楽プロデューサーのGマンことギデオン(ジェイソン・シュワルツマン)が現れます。ここでラモーナは心変わりし、ギデオンの元へ行ってしまいます。実は彼こそが邪悪な元カレ軍団のラスボスであり、軍団を組織した黒幕でした・・・。【レビュー・解説】対戦型格闘ゲーム風のアクションを随所に挿入、気鋭の若手俳優を惜しげもなく投入した、可笑しくてテンポの良い、斬新なバトルアクション&ロマンティック・コメディ映画です。「ショーン・オブ・ザ・デッド」(2004年)など、スリー・フレーバー・コルネット三部作で有名なイギリスの監督、脚本家のエドガー・ライトによる作品で、彼女を手に入れる為に7人の元カレと戦う話を対戦型格闘ゲーム風に演出した、とても斬新なバトルアクション&ロマンティック・コメディ映画です。あたかもミュージカルにおける歌と踊りのように、対戦型格闘ゲームを挿入したというユニークな発想のみならず、「JUNO/ジュノ」(2007年)、「スーパーバッド 童貞ウォーズ」(2007年)で一躍注目を浴びたマイケル・セラ「デス・プルーフ in グラインドハウス」(2007年)、「ダイ・ハード4.0」(2007年)、「10 クローバーフィールド・レーン」(2016年)等に出演、スクリーム・クイーンとしても知られるメアリー・エリザベス・ウィンステッド「ルーム」(2015年)でアカデミー主演女優賞を受賞したブリー・ラーソン「マイレージ、マイライフ」(2009年)でアカデミー助演女優賞にノミネート、「ピッチ・パーフェクト」シリーズ(2012年〜)で知られるアナ・ケンドリック「キャプテン・アメリカ」シリーズ(2010年〜)で知られるクリス・エヴァンス本作で一躍知られるようになったカナダ人女優エレン・ウォンなど、気鋭の若手俳優が多数出演しており、エドガー・ライト監督特有のテンポの良い可笑しさとあいまって、ゲームファンならずとも楽しめる作品になっています。マイケル・セラ(スコット・ピルグリム、22歳、バンドのベース、ラモーナに一目惚れ)マイケル・セラは、カナダの俳優。子役としてキャリアを始め、2007年公開の映画「スーパーバッド 童貞ウォーズ」、「JUNO/ジュノ」のヒットにより一躍、注目を集める。 メアリー・エリザベス・ウィンステッド(ラモーナ・フラワーズ、不思議な宅配人)メアリー・エリザベス・ウィンステッドはアメリカ合衆国の女優。彼女は「デス・プルーフ in グラインドハウス」(2007年)、「10 クローバーフィールド・レーン」(2016年)などのホラー映画でスクリーム・クイーンとして知られる一方、「ダイハード4.0」にブルース・ウィリス扮するマクレーン刑事の娘役で出演している。大きな目が個性的で、本作でもその眼差しをフルに活かしている。背が高いため断念したが、かつてバレリーナを志すほど身体能力が高く、本作ではほとんどスタント無しでアクションをこなしている。作中、髪を大胆に染めており、色が赤、青、緑と変っていくが、これはエドガー・ライト監督のスリー・フレーバー・コルネット三部作に因んだもので、「ショーン・オブ・ザ・デッド」(赤)、「ホットファズ -俺たちスーパーポリスメン!-」(青)、「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」(緑)に因んでいる。エレン・ウォン(ナイブス・チャウ、17歳の女子高生、スコットとデートしている)エレン・ウォンはカナダの女優。役柄では17歳の中国系カナダ人だが、彼女の両親はカンボジア系で、撮影時、彼女は24歳。役柄ではスコットの5歳年下だが、実年齢では、セラの3歳年上。これで年下の可愛らしい女子高生を演じきってしまうのが、素晴らしい。アジア系ということで、可愛らしい表情や仕草に親近感を覚える日本人も少なくないだろう。キーラン・カルキン(ウォレス・ウェルズ、25歳のゲイ、スコットのルームメイト)キーラン・カルキンは、ニューヨーク出身のアメリカの俳優。「ホーム・アローン」シリーズ(1990年〜1992年)で有名な幻の子役マコーレー・カルキンの弟で、「ホーム・アローン」にもいとこ役で出演している。幼くして巨万の富を得た兄は俳優を辞めてしまったが、弟のキーランはインディペンデント映画に積極的に出演している。本作では、スコットの同居人のゲイを、独特の存在感で演じている。 アナ・ケンドリック(ステイシー・ピルグリム、18歳、スコットの妹)アナ・ケンドリックはポートランド出身のアメリカの女優。13歳でブロードウェイ・デビュー、史上3番目の若さでトニー賞にノミネートされた。18歳で映画デビュー、2009年公開の「マイレージ、マイライフ」でアカデミー助演女優賞にノミネートされている。本作では、兄のスコットにしばしばチェックを入れる18歳の妹役を演じているが、彼女も実年齢はセラより3歳年上。この映画が縁で、エドガー・ライト監督と三年間、交際していた。マーク・ウェバー(スティーヴン・スティルス、22歳、バンドのフロントマン)マーク・ウェバーはミネアポリス出身のアメリカの俳優。撮影時、ジェイソン・シュワルツマンと並んで、主要キャストの中で最年長の28歳。アリソン・ピル(キム・パイン、23歳、バンドのドラマー、スコットの元カノ)アリソン・ピルは、トロント出身のカナダの女優。映画、テレビ、演劇等で活動し、ブロードウェイの舞台にも出演している。本作では、いつも不機嫌な様子の女性ドラマーを、独特の存在感で好演している。ブリー・ラーソン(エンヴィー・アダムズ、スコットの元カノ、他のバンドのボーカル)ブリー・ラーソンはサクラメント出身のアメリカの女優。フランス系アメリカ人で、幼いころはフランス語で育ったという。本作では、珍しく(?)ツンとした正統派美人を演じているが、びっくりするほど美しい。撮影時19歳で、メインキャストの中では最年少。コメディやインディーズ映画への出演が少なくなく、「ルーム」(2015年)でアカデミー主演女優賞を受賞している。ジェイソン・シュワルツマン(ギデオン・グレイヴズ、邪悪な元カレ軍団のラスボス)ジェイソン・シュワルツマンは、ロサンゼルス出身のアメリカのコメディ俳優。父は映画プロデューサー、母は女優で、フランシス・フォード・コッポラは伯父、ソフィア・コッポラやニコラス・ケイジはいとこ。17歳から演技をはじめ、1998年の「天才マックスの世界」で映画デビュー、以降、ウェス・アンダーソン監督作品の常連となる。撮影時、マーク・ウェバーと並んで、主要キャストの中で最年長の28歳。オーブリー・プラザ(ジュリー・パワーズ、スティーヴンの気に障る元カノ)オーブリー・プラザは、デラウェア州出身のアメリカの女優。 父はプエルトリコ系、母親はイギリス・アイルランド系。コメディエンヌとして様々なインターンからキャリアをスタート、出演時間は短いが本作でも独特の存在感で強い印象を残す。日本未公開の出演作が多いが、アダム・サンドラー主演の「素敵な人生の終り方」(2009年)にジェイソン・シュワルツマンとともに出演している。クリス・エヴァンス(ルーカス・リー、映画スター、邪悪な元カレ軍団の一人)クリス・エヴァンスは、マサチューセッツ州出身のアメリカの俳優。2005年公開の「ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]」のヒューマン・トーチ役で注目され、「キャプテン・アメリカ」シリーズ(2011年〜)の主人公キャプテン・アメリカを演じ、広く知られるようになった。一方で、俳優としてのイメージがキャプテン・アメリカで固定しまうことを恐れている。本作ではダーティなスター俳優を演じており、代役も登場するが、実際のエヴァンスの代役が演じている。サティヤ・バーバー(マシュー・パテル、邪悪な元カレ軍団の一人)サティヤ・バーバーはロンドン出身のアメリカの俳優。本作はライト監督初のアメリカ映画であり、イギリス人俳優は使わない方針であったが、オーディションでイギリス訛を隠して潜り込んだという強者。元カレ軍団のトップバッターで登場するが、インド風味の濃い演技が印象的。斉藤慶太&祥太(カイル&ケン・カタヤナギ、邪悪な元カレ軍団の双子の兄弟)斉藤慶太、祥太は邦画「タッチ」(2005年)で主演を務めた双子のイケメン俳優。本作に出演した頃から、双子役の需要が減り、仕事のない時はトラックの運転手で稼いでいるとのこと。ちょっともったいない。なお、邦題に「元カレ軍団」とありますが、実は元カノが一人登場するので、厳密に言うと「元(カレ/カノ)軍団」が正しいことになります。英語では「The League of Evil Exes」(邪悪な「元」軍団)と表現しており、またスコットが「your exboyfriends」(君の元カレたち)と言う度に、ラモーナが「exes」(「元」たち)と正しています。マシュー・パテル:空中浮遊したり、火の玉を投げる魔力を持つ ルーカス・リー:映画スターになったスケート・ボーダーで強い力を持つトッド・イングラム:念力を持つ菜食主義のベーシシストロクサンヌ・”ロクシー”・リヒター:テレポート能力を持つ女性の忍者カイル・カタヤナギ:召喚能力を持つ双子のミュージシャンケン・カタヤナギ:召喚能力を持つ双子のミュージシャンギデオン・ゴードン・グレイヴス:音楽プロデューサーで軍団のラスボス【撮影地(グーグルマップ)】スコットの住む家ナイブスが通う高校ラモーナの住む家「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」のDVD(楽天市場)【関連作品】「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」の原作本(楽天市場) ブライアン・リー・オマリー著「スコット・ピルグリム」エドガー・ライト監督作品(スリー・フレーバー・コルネット三部作)(楽天市場) 「ショーン・オブ・ザ・デッド」(2004年) 「ホットファズ -俺たちスーパーポリスメン!-」(2007年) 「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」(2013年)マイケル・セラ出演作品のDVD(楽天市場) 「スーパーバッド 童貞ウォーズ」(2007年) 「JUNO/ジュノ」(2007年) 「ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日」(2013年) 「ソーセージ・パーティ」(2016年)メアリー・エリザベス・ウィンステッド出演作品のDVD(楽天市場)「グラインドハウス:デス・プルーフ in グラインドハウス」(2007年) 「ダイ・ハード4.0」(2007年) スマッシュド 〜ケイトのアルコールライフ〜【動画配信】(2012年) 「The Spectacular Now」(2013年、日本未公開) 「10 クローバーフィールド・レーン」(2016年)クリス・エヴァンス出演作品のDVD(楽天市場) 「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」(2011年) 「アベンジャーズ」(2012年) 「スノーピアサー」(2013年) 「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」(2014年) 「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(2016年)アナ・ケンドリック出演作品のDVD(楽天市場) 「マイレージ、マイライフ」(2009年) 「50/50 フィフティ・フィフティ」(2011年) 「エンド・オブ・ウォッチ」(2012年) 「ピッチ・パーフェクト」(2012年) 「ドリンキング・バディーズ 飲み友以上、恋人未満の甘い方程式」(2013年)ブリー・ラーソン出演作品のDVD(楽天市場) 「21ジャンプストリート」(2010年) 「ドン・ジョン」(2013年) 「ショート・ターム」(2013年) 「The Spectacular Now」(2013年、日本未公開) 「ルーム」(2015年) 「エイミー、エイミー、エイミー!」(2017年)
2017年04月30日
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「ドント・ブリーズ」(原題: Don't Breathe)は、2016年公開のアメリカのサスペンス&ホラー映画です。フェデ・アルバレス監督、フェデ・アルバレス/ロド・サヤゲス共同脚本、ジェーン・レヴィ、ディラン・ミネット、ダニエル・ゾヴァット、スティーヴン・ラングら出演で、盲目の老人宅に強盗に入った若者たちが体験する恐怖の脱出劇を描いています。 「ドント・ブリーズ」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:フェデ・アルバレス脚本:フェデ・アルバレス/ロド・サヤゲス製作:サム・ライミ/ロバート・タパート/フェデ・アルバレス出演:ジェーン・レヴィ(ロッキー、強盗をしながら妹とカリフォルニアへ行くことを夢見ている) ディラン・ミネット(アレックス、ロッキーの仲間、父親が警備会社に勤めている) ダニエル・ゾヴァット(マネー、ロッキーの仲間で恋人) スティーヴン・ラング(盲目の老人、古い家で犬と暮らしている元軍人、大金を持っている) エマ・ベルコヴィシ(ディディ、ロッキーの幼い妹) フランシスカ・トローチック(シンディ) クリスティアン・ザヒア(ラウル) カティア・ボーカー(ジンジャー) セルゲイ・オノプコ(トレヴァー) ほか【あらすじ】舞台は経済破綻しゴーストタウン化が進むデトロイトの街で、養育放棄の両親と暮らす不良少女ロッキー(ジェーン・レヴィ)は、強盗で逃走資金を得て、いつの日か妹と街を出ることを夢見ています。ボーイフレンドのマネー(ダニエル・ゾヴァット)から大金を隠し持つと噂される盲目の老人(スティーヴン・ラング)の家の強盗を持ちかけられた彼女は、マネーと友人のアレックス(ディラン・ミネット)の3人で真夜中に盲目の男性の屋敷に押し入ります。しかし、その男は元軍人であり、盲目ながら侵入者の殺害も厭わない恐ろしい人物でした。真っ暗闇の家の中で追い詰められ、怪しげな地下室に辿り着いた若者は、衝撃的な光景を目にします・・・。【レビュー・解説】緊迫感溢れるタイトルの本作は、サム・ライミ監督の流れを汲みながら、流血を少なくし、不気味な超自然現象にも依存せず、サスペンスフルなオリジナル・ストーリーとスリリングな演出で観る者を魅了するホラー映画です。「ドント・ブリーズ」(息をするな)は秀逸なタイトルです。息をするとその音で盲目の老人に居場所がばれて殺されてしまうという緊迫感が伝わってきますが、まさに本作は最初から最後まで緊迫感の連続です。当初のタイトル「A Man in the Dark」(暗闇の男)から、すんなり変更されたといいますが、この変更に文句を言う人はいないでしょう。フェデ・アルバレス監督の前作「死霊のはらわた」(2013年)はサム・ライミ監督の同名スプラッター・ホラー映画シリーズのリメイク/リブートでしたが、アルバレス監督は本作をサスペンスフルなオリジナル・ストーリーにし、流血を少なくし、昨今、安易に使われる傾向のある不気味な超自然現象に依存しない作品にしようと決めたといいます。本作は、その決意どおりに、リアルでスリリングなオリジナルのストーリー展開で、観る者を最後まで惹きつけます。 「死霊のはらわた」(1981年)は、サム・ライミ監督によるアメリカのスプラッター映画で、1980年代のスプラッター・ブームを発生させた作品として知られています。続編として「死霊のはらわたII」(1987年)、「キャプテン・スーパーマーケット(死霊のはらわたIII)」(1993年)があり、これら三部作はカルト映画としても非常に有名です。「死霊のはらわた」(1981年)のリメイクを検討していたサム・ライミ監督は、YouTubeで彼の自主制作映画を観て、リメイクの監督に抜擢します。「マスター(達人、精通者)でなければこの映画を与えたくはなかったんだ。そんな時、「パニック・アタック!」を見て、フェデがとてつもない才能を持つ人間で、すごいエネルギーでもってストーリーを語ることができる人間だということがすぐに分かった。」(サム・ライミ監督)「死霊のはらわた」(2013年)は、サム・ライミ監督よる「死霊のはらわた」(1981年)の設定を一から作り直したリメイク/リブート作品であり、フェデ・アルバレスが初めて長編監督に挑戦、フェデ・アルバレス/ロド・サヤゲス/サム・ライミ/ディアブロ・コーディが脚本、サム・ライミ/ブルース・キャンベル/ロバート・G・タパートが製作、ジェーン・レヴィが主演を務めました。本作もほぼ同じメンバーですが、前作とはかなり趣の異なったホラーを実現しています。ライミ監督の流れを汲みながら、アルバレス監督のカラーがより強く出ている作品です。ジェーン・レヴィ(1989年〜)は、ロスアンジェルス出身のアメリカの女優です。身長157cmと小柄ながらも、学生時代はサッカーチームのキャプテンを務め、ヒップホップダンスのチームにも所属するなど、高い身体能力を有します。本作の終盤で彼女の演じるロッキーが走るシーンがありますが、非常に素早い、素人離れした走りを披露しています。「死霊のはらわた」(2013年)、本作と二作連続でレヴィをいたぶったので、彼女には嫌われていると冗談を飛ばすアルバレス監督ですが、二人は良い友達で、本作の脚本も彼女が最初に見たと言います。脚本を読んだ彼女は出たいと言いましたが、プリプロダクションに入るまでの3〜4ヶ月の間に、別の映画で彼女の予定が埋まってしまい、本作に出演できなくなりました。アルバレス監督はハリウッドの若い女優を片っ端から当たりましたが、誰にも賭ける気になれませんでした。撮影の2週間前になっても、ロッキー役が決まっておらず、スタッフはすくみあがっていたと言います。そんな折、出演を予定していた映画がポシャり、レヴィが自宅にいるのをインスタグラムで知ったアルバレス監督は、早速、連絡します。出演を快諾した彼女が飛行機で駆けつけたのは、撮影開始のわずか7〜8日前でした。撮影現場でスタッフを待たせながら議論することを好まないアルバレス監督は、この短い期間にレヴィと役柄や演技について集中的に議論したと言います。ジェーン・レヴィ(ロッキー、強盗をしながら妹とカリフォルニアへ行くことを夢見ている)盲目の老人役を演じたスティーヴン・ラングは、本作の鍵でした。出来過ぎた話のようですが、彼はスケジュールが合う俳優のリストのトップでした。アルバレス監督は誰かを想定して脚本を書いたわけではないのですが、ラングがまさに老人役にぴったりだと感じ、すぐさま彼に電話し、ラングも脚本が気に入りました。ラングは後日、この役に恐れを感じたので、逆にやりたくなったと語っています。この役は、映画の中で様々な感情を見せながら変化していき、盲目の老人が救われるに足る人物かどうか、観客を惑わします。彼は複雑なキャラクターで、また、目が見えないことを前面に押し出して演じなければなりません。「役に恐れを感じる部分がなければ、勇気を見せる幕がない」とラングは語っていますが、彼にとってまさに挑戦に足る役でした。撮影時、彼は視界の70%を遮るコンタクトレンズをしていましたが、暗い条件下では何も見えず、彼は撮影中、ほとんど盲目を演じる必要がありませんでした。実際に、何も見えなかったのです。セット内を移動する際は、ケーブルに躓かないよう、誰かが手をとって歩かねばなりませんでした。彼は軍人を演じた経験が豊富で、「私は恐怖を受け付けない。私は使命を達する男だ。」と、セット内では役になりきっていました。セット内の彼には鬼気迫るものがあり、他の俳優も恐れを感じたと言います。スティーヴン・ラング(盲目の老人、古い家で犬と暮らしている元軍人、大金を持っている)ディラン・ミネット(アレックス、ロッキーの仲間、父親が警備会社に勤めている)ダニエル・ゾヴァット(マネー、ロッキーの仲間で恋人)1千万ドルの予算で製作された本作の興行収入は、全世界で約1億6千万ドルにも上りました。これまでの作品の興行収入と比べると、カルトと言われたサム・ライミ監督のホラーの系譜を踏みながら、アルバレス監督は自らの才能を開花、より幅広い層に受け入れらる作品に仕上げていることがわかります。アルバレス監督による「死霊のはらわた」のリメイク/リブートの興行収入「死霊のはらわた」(2013年)約1億ドルサム・ライミ監督による「死霊のはらわた」三部作の興行収入死霊のはらわた(1981年)約240万ドル死霊のはらわたII(1987年)約600万ドルキャプテン・スーパーマーケット(死霊のはらわたIII)(1993年)約1200万ドル【関連動画(YouTube)】フェデ・アルバレス監督が注目されるきっかけとなった自主制作映画Ataque de Pánico! (パニック・アタック!)2009アルバレス監督は、ウルグアイの首都モンテビデオを巨大なロボットが侵略するという約5分の短編SF「パニック・アタック!」をおよそ300ドルの予算で自主制作、YouTubeにアップし話題となった。「木曜日に(映像を)アップロードして、次の月曜日にはハリウッドのスタジオからのメールでいっぱいになっていたよ。」(フェデ・アルバレス監督)という。この映像を観たサム・ライミに、「死霊のはらわた」(2013年)の監督に抜擢された。【撮影地(グーグルマップ)】三人が強盗に入った家外観を撮影した家はブエナ・ヴィスタと言う通りに面している。「良い景色」という意味だが、住んでいる老人が盲目であることを考えればちょっと皮肉になっている。なお、外観はデトロイトで撮影しているが、内部はハンガリーのスタジオで撮影している。 「ドント・ブリーズ」のDVD(楽天市場)【関連作品】フェデ・アルバレス監督作品のDVD(楽天市場) 「死霊のはらわた」(2013年)オマージュを捧げた作品(楽天市場) 「クジョー」(1983年)・・・北米版、リージョン1、日本語なし 「羊たちの沈黙」(1991年)サム・ライミ監督「死霊のはらわた」三部作のDVD(楽天市場) 「死霊のはらわた」(1981年) 「死霊のはらわたII」(1987年) 「キャプテン・スーパーマーケット(死霊のはらわたIII)」(1993年)
2017年04月28日
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「君とボクの虹色の世界」(原題:Me and You and Everyone We Know)は、2005年公開のアメリカのコメディ&ドラマ映画です。ミランダ・ジュライ監督・脚本、ミランダ・ジュライ、ジョン・ホークスら出演で、アーティストを夢見ながら高齢者タクシーの運転手をして生計を立てている女性、離婚したばかりで失意のショッピングモールの靴売り場の男性店員ら、年齢や環境の異なる様々な人々の愛したい、愛されたいという想いの交差を、ポップな映像で描いた群像劇風コメディです。カンヌ映画祭をはじめ、各国の映画賞に輝いた、ミランダ・ジュライの監督デビュー作品です。「君とボクの虹色の世界」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ミランダ・ジュライ脚本:ミランダ・ジュライ脚本:ミランダ・ジュライ(クリスティーン) ジョン・ホークス(リチャード) マイルス・トンプソン(ピーター) ブランドン・ラトクリフ(ロビー) カーリー・ウェスターマン(シルヴィー) ヘクター・エリアス(マイケル) ブラッド・ヘンケ(アンドリュー) ナターシャ・スレイトン(ヘザー) ナジャラ・タウンゼント(レベッカ) トレイシー・ライト(ナンシー) ジョネル・ケネディ(パム) ほか【あらすじ】クリスティーン(ミランダ・ジュライ)はアーティストを夢見ながら、高齢者タクシーの運転手をして生計を立てています。ある日、得意客のマイケル(ヘクター・エリアス)と一緒にショッピングモールの靴売り場を訪れた彼女は、店員のリチャード(ジョン・ホークス)に一目惚れします。彼は最近離婚したばかりで、まだ新しい恋に踏み出す勇気がなく、ふたりは素直に一歩を踏み出すことができません。リチャードの息子ロビー(ブランドン・ラトクリフ)とピーター(マイルス・トンプソン)は、チャットで遊んでいるうちに、ある女の人と意気投合し、ロビーは相手の女性から今度会いましょうと誘われます。リチャードの隣家に住むしっかり者の小学生シルヴィーは、嫁入り道具をコレクションしています。ある日、コレクションをピーターに見られたシルヴィーは、未来の夫と娘のために集めていると語ります。内気で女の子が苦手なピーターは、シルヴィーの夢に共感します。仲良しの二人組のヘザー(ナターシャ・スレイトン)とレベッカ(ナジャラ・タウンゼント)は、二人ともボーイフレンドがいません。二人は、たまたま知り合ったアンドリュー(ブラッド・ヘンケ)に声をかけてみたところ、好反応が返ってきます。気を良くした彼女たちが翌日もアンドリューの家に行ってみると、「シャツを脱げ」と張り紙がしてあります。クリスティーンの得意客マイケルは、70歳にしてようやく人生を共に過ごす愛するパートナーとめぐり合えましたが、その愛する人エレンはチューブにつながれており、そう長くは生きられません。そんなマイケルは、思うように制作が進まないクリスティーンに、チャレンジしないと始まらないと励まします・・・。【レビュー・解説】マルチメディア・アーティストでパフォーマーのミランダ・ジュライが監督・脚本・主演を務め、愛を求める人々を女性ならではの視点でポップでオフビート感たっぷりに描いた、コミカルで風変わりながらも、暖かなやさしさが漂う群像劇風コメディです。映画は、クリスティーンが自宅でマルチメディア・アートを制作するシーンで始まります。彼女は詩をワンフレーズずつ暗唱し、架空の恋人にそれを繰り返すように求めます。パートナーとともに、精神の高みを目指したい女性を象徴しています。I'm gonna be free.I'm gonna be brave.I'm gonna live each dayas if it were my last.Fantastically.Courageously.With grace.私は自由になる私は恐れない私は一日一日を生きるあたかも人生最後の日のように最高に素晴らしく勇気を持って気高く他にも、リチャードと並んで歩きながら寸劇風にアプローチしたり、マイケルとそのパートナーを題材にマルチメディア・アートを制作したりしますが、これは自身がアーティストであるミランダ・ジュライ監督の投影です。「クリスティーンの原点は、確実に私。違うバージョンの私、という感じね。今までにアート作品として自分を描く機会がなかったので、初めは恥ずかしかったけれど、避けるよりは良いことじゃないかと思い始めたの。また、クリスティーンを演じるのも恥ずかしいのではないかと思っていたけれど、実際に映像を見る段階になったら、これが結構楽しいの!自分みたいなコを見ることが(笑)。だから、これは良い作品だと感じたわ。」(ミランダ・ジュライ監督)リチャードの別れた妻、パムが着ているTシャツI am a precious wondrous unique divine rare valuable whole sacred total complete entitled worthy and deserving person.(私は素敵、すばらしい、特別、貴重、完璧、神聖、無欠、立派、尊敬すべき人)と左右逆像にプリントしてある。人に読ませるものではなく、鏡に向かった時に自分で読むためのものだと、パムは言う。これは、離婚して自立を目指す女性を象徴している。嫁入り道具を集める少女や、性への好奇心を持つ二人の少女などの子どもたちも、ジュライ自身の投影のようです。「私が子供の頃に持っていた憧れ、将来への憧れ、誰か私を見つけてくれるという憧れ、舞い降りてきて私の人生の全てを変えてくれる魔法への憧れに、この映画は触発されているの。こうした憧れは、素晴らしく希望に満ちたものであることに変わりはないものの、私が大人になるにつれて少しばかり不安で歪んだものになっていくの。」(ミランダ・ジュライ監督)こうした風変わりな登場人物たちが不器用に愛を求める姿を、ジュライ監督は暖かな眼差しで描いています。シルヴィーの嫁入り道具コレクション母鳥になったつもりで子供の鳥たちに餌を与えるシルヴィ靴を自分とリチャードに見立てて、寸劇を演じるクリスティーンミランダ・ジュライ(クリスティーン)アメリカのパフォーマンスアーティスト、ミュージシャン、作家、女優、脚本家、映画監督。ジョン・ホークス(リチャード)アメリカ合衆国の俳優。「ウィンターズ・ボーン」(2010年)でアカデミー助演男優賞にノミネートされている。マイルス・トンプソン(ピーター)ブランドン・ラトクリフ(ロビー)カーリー・ウェスターマン(シルヴィー)ヘクター・エリアス(左、マイケル)ナターシャ・スレイトン(左、ヘザー)とナジャラ・タウンゼント(右、レベッカ)【サウンドトラック】 「Me and You and Everyone We Know」サウンドトラック(輸入版)1. When I Call A Name 2. Goldfish 3. What's That Sound 4. Socks On Ears 5. Signs 6. Cody ChesnuTT - 5 On A Joyride 7. I'm Not Following You 8. Library Chat9. Me And You Shoes 10. Mirror 11. Pete and Sylvie 12. F*** 13. Spiritualized - Any Way That You Want Me 14. Boy Moves the Sun 15. Virginia Astley - A Summer Long Since Passed 16. Heaven in Five【撮影地(グーグルマップ)】クリスティーンの住むアパートクリスティーンとリチャードが並んで歩く道「君とボクの虹色の世界」のDVD(楽天市場)【関連作品】ミランダ・ジュライ監督作品のDVD(楽天市場) 「ザ・フューチャー」(2010年)ジョン・ホークス出演作品のDVD(楽天市場) 「アメリカン・ギャングスター」(2007年) 「ウィンターズ・ボーン」(2010年) 「マーサ、あるいはマーシー・メイ」(2011年) 「コンテイジョン」(2011年) 「セッションズ」(2012年) 「リンカーン」(2012年)
2017年04月25日
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「PK ピーケイ」(原題:PK)は、2014年公開のインドのSFコメディ映画です。ラージクマール・ヒラーニ監督、アーミル・カーン、アヌシュカ・シャルマら出演で、地球の調査を目的としてやってきた宇宙人が女性ジャーナリストに出会い、自身の願いを聞き入れてくれる神を探す為にテレビ番組に出演、地球の宗教やその伝道に関して疑問を抱きながら学んでいく様を、涙と笑いとともに描いてます。コメディやラブストーリーの要素を持ちながらも、宗教問題など世界に共通する社会問題を風刺、全世界の興行収入は100億円を突破し、インド映画歴代最高を記録する大ヒット作になった作品です。 「PK ピーケイ」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ラージクマール・ヒラーニ脚本:ラージクマール・ヒラーニ/アブヒアット・ジョシ出演:アーミル・カーン(PK) アヌーシュカ・シャルマ(ジャグー) スシャント・シン・ラージプート(サルファラーズ) サンジャイ・ダット(バイロン) ボーマン・イラニ(チェリー) サウラブ・シュクラ(タパスヴィー) ほか【あらすじ】裸の人間の姿をした宇宙人(アーミル・カーン)が地球の調査の為に、インドのラージャスターンに到着しますが、宇宙船のリモコンが盗まれてしまいます。宇宙人は泥棒からカセットレコーダーを奪い取りますが、肝心のリモコンを取り戻すことができず、宇宙に帰れなくなります。同じ日、ベルギーのブルージュでは、留学生の女性ジャグー(アヌーシュカ・シャルマ)が、サルファラーズ(スシャント・シン・ラージプート)に出会い、恋に落ちます。しかし、熱心なヒンドゥー教徒であるジャグーの父(パリークシト・サーハニー)は、パキスタン人でムスリム教徒のサルファラーズとの交際に猛反対します。父が相談したヒンドゥー教の導師タパスヴィー(サウラブ・シュクラ)は、サルファラーズはジャグーを裏切るだろうと預言します。ジャグーは預言の嘘を証明すべくサルファラーズにプロポーズし成功しますが、結婚当日に文化の違いの為に結婚をキャンセルしたいという手紙を受け取り、悲しみに浸ります。母国インドへ戻り、テレビの報道局で働くジャグーは、地下鉄の駅で黄色いヘルメットを被り、大きなラジカセを持ち、様々な宗教の飾りをつけ、「神様が行方不明」と書かれたチラシを配る奇妙な男を見かけ、興味をそそられます。彼女は、男が賽銭箱から金を盗んで捕まりそうなところを助け、信頼を得ます。その男は、他の惑星から調査にやって来た科学者であり、自分の星の人間は服を着ることもなければ、宗教を信じることもないよ、彼女に語ります。彼らは握手をすることで意思疎通できる為、会話をすることもないといいます。彼は、カーセックスをしているカップルから衣服と金を盗んでは、人間社会に溶け込みます。うっかりトラックに轢かれた彼は、運転手の楽団長バイロン(サンジャイ・ダット)と仲良くなり、彼の楽団の元に連れて行かれます。宇宙人は街の人々の手を握り意思疎通を図りますが、変態と思われて追い払われます。楽団長に売春宿へ連れて行かれた宇宙人は、売春婦の手を6時間握り続け、ボージュプリー語を習得します。楽団長から泥棒はデリーにいるはずだと教えてもらった宇宙人は、デリーへ出発します。彼の奇妙なふるまいから、人々は彼のことを酔っ払いと思い込み、「PK」(ヒンディー語で酔っ払いの意味)と呼びます。リモコンを見つける手助けができるのは神だけだという人々の言葉を真に受けたPKは、神を見つけるためにインドのあらゆる宗教を実践しますが、願いは叶いません。その後、彼は導師のタパスヴィーが自分のリモコンを持っているのを発見しますが、導師はそれを神からの贈り物であると主張し、返すことを拒みます。ジャグーは、リモコンを取り返し、彼の星へ帰らせてあげるとPKに約束します。タパスヴィーら導師達は神と会話する際に、番号の「かけ間違い」をして、民衆を無意味な宗教儀式に巻き込んでしまっているのだと、PKは推測します。ジャグーは、自分の局へ動画を送ることを民衆に促し、導師の「かけ間違い」を明らかにしようとします。この「かけ間違い」キャンペーンは民衆の間で一気に広がり、タパスヴィーは狼狽します。一方、泥棒を見つけ出した楽団長のバイロンは、泥棒がリモコンをタパスヴィーに売ったことをPKに伝え、PKはタパスヴィーが「かけ間違い」ではなく、人々を騙していることに気づきます。楽団長は、泥棒を連れてデリーへ向かいますが、PKと再会する直前に、タパスヴィーの集団が彼らの神を守るために行ったテロ攻撃に遭い死亡してしまいます。導師のタパスヴィーは、PKとの対決を了承し、ついに二人は生放送の公開討論番組で直接対決することになります・・・。【レビュー・解説】宇宙人の目で宗教を風刺するインドのSFコメディですが、風刺のみならず、ラブストーリーあり、涙あり笑いあり、歌あり踊りありと、映画の楽しさてんこ盛りの娯楽作品です。ラージクマール・ヒラーニ 監督は、子供の頃から、人間はどこから来たのか、死んだらどこに行くのか、我々の存在意義は何なのかといった疑問をずっと持っていました。答えを求めようとすると、神にたどり着きますが、では神はどこにいるのか?という新たな謎が生まれたといいます。如何に生きるべきか、行動すべきかは、人間からしか伝え聞くことができず、神から直接、答えを聞くことができません。また、宗教によっても答えが異なります。彼はそこがよく理解できず、いつか映画にしたいと思ってたそうです。「人々が語る神の存在、神のあるべき姿というものに対して、ちょっと違うのでは?と自分の中で違和感を抱いていて、それを映画にしてみようかなと思ったのが、この「PK ピーケイ」です。たとえば、ヒンズー教の家庭に生まれればヒンズー教の神を信仰し、キリスト教であればキリスト教を崇めるというように、それぞれ違いがありますよね。「神」という存在は一緒なのに、その違いがあること自体がおかしいのでは?と、昔から不思議に思っていたことがテーマなんです。」(ラージクマール・ヒラーニ 監督)主人公のPKは宇宙人で、子供のように純粋です。宇宙船のリモコンを探す彼は、神に聞くように教わりますが、事情がよくわかっていない彼は、人々に神とは何かと問い正すことをしません。言われるままに神を求めていく中で、宗教について不思議なこと、おかしなことに彼が気づいていく形で、物語は展開します。さらに、ラブストーリーあり、涙あり笑いあり、歌あり踊りありと、楽しさてんこ盛りに仕上げているところが、この作品を見応えのあるものにしています。メッセージを伝えすぎると固くなってしまい、足りないと中身がなくなるのでバランスが難しいところですが、ここにはフィクションを作る限りは観客を笑わせたいという監督の思いが込められています。また、メインのストーリーで様々な寺院のロケするだけでなく、サブとなるジャグーのラブストーリーではベルギーの美しい街並みのロケ映像をふんだんに映し出し、旅心も満たしてくれます。インドは非常に多様な国です。北はヒマラヤ山脈、ヒンズークシ山脈を抱え、カシミール州ではマイナス40度を超える極寒の気候ですが、中部のデカン高原は半乾燥地帯で極めて暑く気温は50度にも達します。古代からインドに定住していたと考えられているのはドラヴィダ人ですが、BC1500年前後にイラン高原からアーリア人たちが移住、ドラヴィダ人は次第に南に追いやられます。ドラヴィダ人はアーリア人より色が黒く、背は低いのですが手足が長い身体的特徴がありますが、ボリウッド俳優には色が白いアーリア系インド人が多いようです。また、東からアジア人、モンゴロイド人が入っているインドは、多くの少数民族を抱えています。言語の面でもきわめて多様な国で、英語を話すのは知識人を中心に約2割程度です。英語は連邦レベルの準公用語で、公用語はヒンドゥー語、憲法ではアッサム語、ベンガル語、クジャラート語、パンジャーブ語、タミル語、テルグ語など、州レベルの公用語としてそれぞれ全く異なる21の言語が公認されています。この他にも、500万人を超える話者が存在する言語が14、方言を加えると200余りの言語があると言われています。こうした民族的な複雑さは宗教の多様性にも反映されており、ヒンドゥー教徒:約8割イスラム教徒:約1割(世界第三 のムスリム大国)キリスト教徒、シク教徒、仏教徒、ジャイナ教徒など:残りの約1割といった人口構成になっています。インドの人々は信心深く、神の存在や伝道のあり方を疑問視している本作は受け入れがたいテーマかと思いきや、インド国内では記録的な大ヒットとなりました。経済発展に伴い、一般レベルで宗教の世俗化が進みつつあることが伺われます。その一方で、ヒンドゥー教の一部宗派が映画の公開差し止めの訴えるなどの激しいバッシングがあるなど、大ヒットにもかかわらずインド社会には刺激が強い題材であることに変わりはなく、同じテーマの続編制作は難しい状況のようです。他方、中国や日本など信仰心の薄い地域でもヒットしており、イスラム過激派によるテロなど宗教がらみの問題が世界的な課題になっていること、コメディとして語り口が面白いことが評価されているようです。なかなか一筋縄ではいかないものの、内部に多様性を抱えることは多様な外部世界に対峙する強みにもなりうるもので、多様なインドのパワーを感じさせる作品です。アーミル・カーン(PK)「きっと、うまくいく」(2009年)に続くヒラーニ監督とのコラボ作品。目を見開きまばたきをしない純粋な宇宙人の役柄に誠実に取り組んでいる。鍛えられた肉体と、とても50代の俳優とは思えない若々しいパフォーマンスを見せている。アヌーシュカ・シャルマ(ジャグー)「命ある限り」(2012年)で準主役の現代的で活発な若いインドの女性ジャーナリストを演じ、素晴らしい存在感を示したが、本作ではジャーナリストのヒロイン役を見事に演じている。モデルか、ジャーナリストになりたかったという彼女には、いずれもはまり役だ。当初、女優になるつもりはなかったが、モデル業の為に演技を勉強するうちに、押しも押されぬボリウッドのスター女優になった。スシャント・シン・ラージプート(サルファラーズ)サンジャイ・ダット(バイロン)ボーマン・イラニ(チェリー)サウラブ・シュクラ(タパスヴィー)PKが作った尋ね人ならぬ「尋ね神」のチラシ因みに、現在のインドの人口は12億人強と中国より約1億人 少ない状態ですが、2020〜25年にはこれが逆転し、インドが世界一の人口大国になると予測されています。2050年の時点では、インドの人口は16億6000万人、 中国の人口は14億1000万人と推定されています。また、今後、高齢化が予想される中国と異なり、インドの人口構成は極めて若く、現状で25歳以下の人口が50%を超えている為、今後、7~8%の経済成長を維持、2050年にはGDPで中国、アメリカに次いで世界第3位になると予測されています。映画をのみならず、様々な分野で今後の活躍が期待される国です。【サウンドトラック】Full Songs of 'PK'(YouTube)1 Tharki Chokro by Swaroop Khan 2 Nanga Punga Dost by Shreya Ghoshal 3 Chaar Kadam by Shaan; Shreya Ghoshal 4 Love Is A Waste Of Time by Sonu Nigam; Shreya Ghoshal5 Bhagwan Hai Kahan Re Tu by Sonu Nigam 6 Pk Dance Theme(Instrumental) 7 Dil Darbadar by Ankit Tiwari【動画クリップ(YouTube)】PKとジャグーのダンスシーンモデルでもあるアヌーシュカ・シャルマは、175センチと高身長でスタイルも良く、ダンスが映える。【撮影地(グーグルマップ)】ザグーがサルファラーズに出会った広場(ブルージュ)ザグー詩を読みパキスタン人であることを打ち明けた場所(ブルージュ)ザグーがサルファラーズに追いつき並んで歩く道(ブルージュ)二人が踊る橋(ブルージュ)サルファラーズがコーヒーを片手にザグーと睦み合うバルコニー(ブルージュ)ザグーが婚姻届を出す為にサルファラーズを待つシティホール(ブルージュ)PKが露店で神像、ココナッツと線香を購入する寺院(デリー近郊)PKがココナッツを割ってつまみ出される教会(デリー近郊)PKがワインを捧げようとして追いかけられるモスリムの寺院(デリー)PKがターメリックの粉を浴びる寺院(ムンバイ近郊)PKが願いを叶える為に地面を転がる寺院(ムンバイ近郊)金を借りに来た老人が妻と食事をしていたレストラン(デリー)PKが連絡先にしていた井戸遺跡(デリー)タパスヴィーの別荘(ムンバイ近郊) 「PK ピーケイ」のDVD(楽天市場)【関連作品】ラージクマール・ヒラーニ監督xアーミル・カーンのコラボ作品(楽天市場) 「きっと、うまくいく」(2009年)おすすめインド映画のDVD(楽天市場) 「マダム・イン・ニューヨーク」(2010年) 「マイネーム・イズ・ハーン」(2010年) 「神様がくれた娘」(2011年) 「スタンリーのお弁当箱」(2011年) 「バルフィ!人生に唄えば」(2012年) 「命ある限り」(2012年) 「マッキー」(2012年) 「めぐり逢わせのお弁当」(2014年)
2017年04月19日
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「偽りなき者」(原題:Jagten、英題:The Hunt)は、2012年公開のデンマークのヒューマン・ドラマ映画です。トマス・ヴィンターベア監督・共同脚本、マッツ・ミケルセンら出演で、クリスマスを迎えるデンマークの小村を舞台に、無実の罪を着せられた男の孤独な戦いを描いています。第65回カンヌ国際映画祭で男優賞(マッツ・ミケルセン)を受賞、第86回アカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされた作品です。 「偽りなき者」(2012年、デンマーク)【スタッフ・キャスト】監督:トマス・ヴィンターベア脚本:トマス・ヴィンターベア/トビアス・リンホルム出演:マッツ・ミケルセン(ルーカス、離婚歴のある42歳の幼稚園教師) トマス・ボー・ラーセン(テオ、 ルーカスの幼なじみの親友) アニカ・ヴィタコプ(クララ、テオの娘、ルーカスの幼稚園に通っている) ラセ・フォーゲルストラム(マルクス、ルーカスの息子、別れた妻と同居している) スーセ・ウォルド(グレテ、 ルーカスが勤める幼稚園の園長 ) アンヌ・ルイーセ・ハシング(アグネス、テオの妻、クララの母) ラース・ランゼ(ブルーン、ルーカスの親友、マルクスの名付け親) アレクサンドラ・ラパポート(ナディヤ、ルーカスの同僚で恋人) ほか【あらすじ】離婚と失業の苦難を乗り越え、幼稚園の教師になったルーカス(マッツ・ミケルセン)は、息子のマルクス(ラセ・フォーゲルストラム)と良い関係を保ちながら、ようやく穏やかな日常を取り戻します。親友テオ(トマス・ボー・ラーセン)の娘クララ(アニカ・ヴィタコプ)はルーカスを好いていましたが、贈り物をしても彼が受け取らないのに腹を立て、幼稚園の園長(スーセ・ウォルド)に彼がセクハラをしたと嘘の告げ口をします。クララにとってはちょっとした意地悪でしたが、これが閉鎖的な田舎町で大きな波紋となり、ルーカスは許しがたい変質者と見做されます。町の住人のみならず、親友だと思っていたテオまで幼いクララの証言を信じて疑わず、無実を証明できる手立てのないルーカスに耳を貸す者はいません。仕事も親友も信用も失ったルーカスは、小さな町で孤立してします。彼に向けられる憎悪と敵意はエスカレートし、ルーカスは警察に連行され、嫌がらせは一人息子のマルクスにまで及びます。最終的にクララの告げ口は事実ではないことが明らかになり、ルーカスは釈放されますが、彼に対する悪意は消えず、買い物に出ても店から追い出され、仕事も奪われ、いわれのない近隣からの攻撃に家に閉じこもらざるを得なくなります。無実の人間の誇りを失わぬ為にひたすら耐えることを余儀なくされ、追い詰められたルーカスは、クリスマス・イブにある決意を胸に、町の住人たちが集う教会へと向かいます・・・。【レビュー・解説】児童への性的虐待と冤罪という難しい問題にどう対峙すべきか、マッツ・ミケルセンのじっと耐えるパフォーマンスに深く考えさせられる、示唆に富んだ作品です。トマス・ヴィンターベア監督は、1998年に「セレブレーション」という児童虐待をテーマにした映画を制作、世界的に高い評価を得ます。この時、彼は著名な児童心理学者の訪問を受け、コインの裏側も考えなくてはならないと指摘されます。児童心理学者は、「疑惑的な罪」だけが独り歩きして実際には何も起きていない事例がたくさんあると、話したといいます。「そこからアイディアが浮かんだんだ。そういう要素を反映させて、もっと考えを進めていった作品を作り上げるのも面白いのではないか、と思ったんだ。それと、彼が話してくれたと虚偽記憶の話も非常に興味深いものだった。これはとても恐ろしいことなんだけど、もし子供に何度か同じ質問をするとその子供は、実際にそれが起こったことだと信じてしまうことがあるらしい。例えば、質問者が子供に何度か同じ事を質問する、お母さんが突然泣き出した、お父さんがケンカをする、誰かが刑務所に入った、自分は心理学の医者へ頻繁に行かされた、または誰かが犯罪を犯した、とかね。つまり、子供が犠牲者である、という完璧な妄想だ。そういった子供は、自分が犠牲者だと信じて成長していく。そして同じような問題を抱えて大きくなっていき、身体的に虐待されたと考えるようになる。子供がシステムの犠牲者となってしまうんだ。同時に、過度に子供を守ったり助けたりすることも問題だと思ったんだ。それを、作品として描き出せば、良いドラマになると思ったんだ。」(トマス・ヴィンターベア監督)クララの小さな嘘が元で、主人公のルーカスは村人たちの激しいバッシングにあいます。冤罪が晴れても、一度、破壊された人間関係は、なかなか修復できません。「この映画では話の筋よりも友情のほうが、僕としてはずっと重要なテーマだった。困っている友人に手を差し伸べようとしても、悲しいかな、そこに嘘や噂が入り込んでくる。まるで邪悪なものが外からやってくる、アンデルセン童話みたいにね。人情、友情、村にあったそれらがすべて失われて消えていくという点がこの作品で一番重要なところだと僕は思う。」(トマス・ヴィンターベア監督)原題の「Jagten」は、狩りという意味で、一緒に狩りをする男同士の友情が、冤罪によって脆くも崩れていくことを意識したものと思われます。当初の脚本はルーカスをマッチョな男として描いていましたが、繊細な演技ができるマッツ・ミケルセンに主役が決まり、幼稚園の先生役に脚本を書き換えたと言います。これによって、後述のマクマーティン保育園事件に端を発するモラル・パニックをなぞるような、よりリアリティのある脚本になっています。マッツ・ミケルセン(左、ルーカス、離婚歴のある42歳の幼稚園教師)トマス・ボー・ラーセン(テオ、 ルーカスの幼なじみの親友)アニカ・ヴィタコプ(クララ、テオの娘、ルーカスの幼稚園に通っている)ラセ・フォーゲルストラム(マルクス、ルーカスの息子、別れた妻と同居している)スーセ・ウォルド(グレテ、 ルーカスが勤める幼稚園の園長 )アンヌ・ルイーセ・ハシング(左、アグネス、テオの妻、クララの母)アレクサンドラ・ラパポート(ナディヤ、ルーカスの同僚で恋人)ルーカスへのバッシングは、必ずしも田舎の小さな村だから起きたものとは言えません。実は似たことが世界規模で起きたことがあります。1983年にカリフォルニア州で、マクマーティン保育園の保育士によって自分の息子が性的虐待を受けたと、ある女性が警察に届け出ます。メディアは、1984年の春までに60人を超す幼児の虐待が行われたと報道、これが保育園などで性的虐待が一般的に行われているのではないかという社会的な恐怖を引き起こし、保育園関係者に対する魔女狩り、モラル・パニックに発展、保育園や幼稚園などの施設の経営者や職員らが親たちに相次ぎ告発されました。アメリカに始まったパニックは、カナダ、ニュージーランドやヨーロッパ諸国に広まり、保護者の間や地域社会でヒステリックな告発によって、多くの保育園や託児所が閉鎖に追い込まれました。告発の内容は、職員らが子供たちの性器に触れた、拷問した、性的な行為を強要したなどといったものでしたが、後に児童による虚偽記憶の問題が浮上し、この問題で逮捕されたり、有罪判決を受けた人の多くは釈放されました。特に史上最悪の児童虐待事件と言われたマクマーティン保育園の事件は史上最悪の冤罪事件となり、裁判では親たちが偽の記憶を作ったと非難されました。余談になりますが、有名な映画監督のウディ・アレンにも、養女に対する性的虐待の疑惑があります。1992年、女優のミア・ファローはウディ・アレンと12年間にわたり事実婚の関係にありましたが、彼がファローの養女スン・イー(当時20歳)と交際をしていることを知り、実子一人、養子二人の子供の親権を争う裁判に発展します。この中で、彼女は養女のディラン・ファロー(当時7歳)が、アレンに性的虐待を受けていたと訴えます。しかし、コネチカット州で調査の陣頭指揮を取った医師は、ディランはリハーサルに基づいて話しており、演じたい彼女にミアが虚偽の話を誘導した可能性があるとします。1993年3月、ミアが証拠として提出したディランの証言テープに関して、エール大学・ニューヘイブン病院の心理学専門家パネルは「子供の想像か、誰かの誘導によるもの」という臨床評価報告を提出します。1993年6月、コネチカット州の裁判所は、アレンを「利己的で、信頼できず、無神経な父親」とし、ミアに三人の子供の親権を認めます。さらに、エール大学・ニューヘイブン病院の報告に疑義を呈し、虐待の有無に関わらず、「アレンのディランに対する言動は、極めて不適切」とします。1993年9月、コネチカット州検察は、アレンに性的虐待疑惑は残るが、法廷で証言するというトラウマをディランに味あわせることを避ける為、起訴しないと発表します。1993年10月、ニューヨーク福祉局は14ヶ月間に渡る調査を終え、「ディランが虐待を受けたという信頼に足る証拠はなく、事実無根と結論する」と報告します。1997年12月、ウディ・アレンとスン・イーは、ベネツィアで結婚します。刑事事件にはなりませんでしたが、この問題は禍根を残します。2014年、ゴールデン・グローブ賞で長年のハリウッドへの貢献を表彰されたウディ・アレンに対して、実子のローナン・ファローが「7歳の養女に性的虐待をするような男がそんな賞を?」とツィート、それをミア・ファローが「爆弾発言!」とフォロー、さらにディラン・ファロー自身が、「父ウディ・アレンは幼い養女に性的虐待を犯した男。ハリウッドは彼を蔑んでいい。」という趣旨のアカデミー会員に宛てた公開書簡をニューヨーク・タイムズに発表、社会的制裁を喚起します。一方、もう一人の養子、モーゼス・ファローは「ディランが言っているのはデタラメだ。お母さんであるミア・ファローによって洗脳されて植え付けられた記憶なんだ。」と主張します。ウディ・アレンとミア・ファローの関係は特別でした。事実婚の関係になった後も同居せず、ミアは先に離婚したフランク・シナトラとの関係も続けており、アレンの実子とされるローナン・ファローも実はシナトラの子供かもしれない、彼女が最も愛したのはシナトラだったと、語っています。うまく行っている時は自由な関係で構わないのですが、うまく行かなくなった時は、子供たちを最優先に考える必要があるでしょう。アレンとスン・イーは法的に親子関係になく、スン・イーもアレンを父親と思ったことはないと語っていますが、ミアはスン・イーとアレンの交際を知った時、自殺をほのめかすほどの衝撃を受けたと言います。これを機に、ディランへの性的虐待があったのではないかと疑心暗鬼になっても不思議はありません。しかし、実証できないディランへの性的虐待疑惑を、親権を守りたいが為にあわてて法廷に持ち込んだのは良かったのかどうか、もし、その過程でディランが動搖する母親の鏡となり、偽装記憶を持ったとしたら、それはディランにとって大きな悲劇になります。また、疑いはあるがディランを慮って起訴しないという検察の対応にも、興味深いものがあります。もちろん、児童虐待を肯定するものではありませんが、何を重視して問題解決を図るかは非常に重要です。こうした問題は、子供の記憶が往々にして不確かなものであることとともに、問題の対処にあたっては子供への影響を深慮する必要があることを示唆します。本作も、主人公の冤罪という視点だけではなく、それぞれの登場人物がどのようなスタンスでクララに接しているかという視点で見てみると、非常に興味深いものがあります。【撮影地(グーグルマップ)】ルーカスが買い物を拒否されたスーパーマーケットクリスマス・ミサが行われる教会 「偽りなき者」(2012年、デンマーク)【関連作品】トマス・ヴィンターベア監督作品のDVD(楽天市場) 「セレブレーション」(1998年) 「遙か群衆を離れて」(2015年)マッツ・ミケルセン出演作品のDVD(楽天市場) 「しあわせな孤独」(2004年) 「007 カジノ・ロワイヤル」(2006年) 「アフター・ウェディング」(2008年) 「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」(2012年) 「偽りなき者」(2012年) 「メン&チキン」(2015年)おすすめデンマーク映画のDVD(楽天市場) 「バベットの晩餐会」(1983年) 「モルグ/屍体消失」(1994年) 「プッシャー 」(1996年) 「ゼイ・イート・ドッグス」(1999年) 「ストリングス〜愛と絆の旅路〜」(2004年) 「ある愛の風景」(2006年) 「ビルマVJ 消された革命」(2008年) 「未来を生きる君たちへ」(2010年) 「100,000年後の安全」(2010年)「アクト・オブ・キリング」(2012年) 「ルック・オブ・サイレンス」(2014年) 「アルマジロ」(2015年)「ある戦争」(2015年)
2017年04月17日
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「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」(原題:Song of the Sea)は、2014年公開のアイルランド・ベルギー・ルクセンブルグ・デンマーク・フランス合作の長編アニメーション映画です。アイルランドに伝わる民話や神話を基に、トム・ムーア監督・原案、ウィル・コリンズ脚本で、アイルランドに伝わる妖精、セルキーの母親と人間の父親の間に生まれた少年が、魔女にさらわれた妹を救おうと、魔法の世界で繰り広げる冒険を、絵本のような美しい映像で描いています。第87回アカデミー賞で長編アニメ映画賞にノミネートされた作品です。 「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:トム・ムーア脚本:ウィル・コリンズ原案:トム・ムーア声優:デヴィッド・ロウル(ベン) ブレンダン・グリーソン(コナー、マクリル) フィニュラ・フラナガン(おばあちゃん、マカ) リサ・ハニガン(ブロナー) ルーシー・オコンネル(シアーシャ) ジョン・ケニー(ダン、シャナキー) ほか【あらすじ】小さな島の海辺の灯台の家で、幼いベン(声:デヴィッド・ロウル)は両親と暮らしています。ベンは大好きな母ブロナー(声:リサ・ハニガン)から「あなたは世界一のお兄ちゃんになる」と褒められて、赤ん坊が産まれてくる日を楽しみにしています。優しくて物知りな母は、ベンにたくさんの話や歌を教えてくれます。巨人のマクリルと愛犬の物語、アザラシの妖精セルキーが歌うと妖精が家に戻れる不思議な伝説、古い言葉で綴られる美しい歌などです。ある晩、ベンは母から海の歌が聞こえる古い貝殻をもらい、大事に抱いて眠りにつきますが目を覚ますと母の姿がありません。母は赤ん坊を残して海へ消えてしまったのです。実はブロナーは、海ではアザラシ、陸では人間の女性の姿になる妖精セルキーだったのです。それからと言うもの、ベンと父コナー(声:ブレンダン・グリーソン)の心は傷ついたままで、母がいなくなったのは妹シアーシャのせいだと思い込むベンは、ついつい妹に辛く当たってしまいます。6年が過ぎ、母の命日でシアーシャの誕生日に、祖母が町からお祝いにやって来ます。祖母は、いまだに喋らないシアーシャが心配でたまりません。その夜、シアーシャは美しく不思議な光に導かれ、父が隠していたセルキーのコートを見つけるとそれを着て海へ入っていきます。悲劇の再来を恐れた父はコートを海へ投げ捨て、祖母は嫌がる兄妹をハロウィンでお祭り騒ぎの町へ連れて行きます。居心地の悪い祖母の家から抜け出した兄妹は、愛犬クーと父が待つ家を目指しますが、そんな二人の後を3人組の妖精が追いかけます。彼らはシアーシャがセルキーだと気付き、魔女のマカ(声:フィニュラ・フラナガン)によって石にされた仲間を元通りにしてほしいと頼みます。その時、4羽のマカの手下のフクロウがシアーシャに襲いかかり、妖精たちの感情を吸い取って石に変えてしまいます。兄妹はなんとかその場を逃げ切りますが、ベンが目を離した隙にシアーシャがいなくなってしまいます。妹を探すうちにベンは語り部の精霊シャナキーから、マカの歪んだ愛情が妖精の国とシアーシャの命を消しつつあると教えられます。マカの魔力に勝てるのはセルキーの歌だけで、しかもハロウィンの夜が明けるまでに歌わないと全てが消えてしまうと言われます・・・。【レビュー・解説】アイルランドの伝説を基に、妖精の母を失った少年が連れ去られた妹を探し求めるビタースウィートな冒険談を、トム・ムーア監督が独特の美しいビジュアルとサウンドトラックで慈しむように描いた、心の安らぐ、完成度の高いアニメーション映画です。トム・ムーア監督は本作のみならず、前作「ブレンダンとケルズの秘密」(2010年、日本では2017年公開予定)でもアイルランドの伝説をモチーフにしていますが、こうした民話や神話にモチーフを求めることについて、彼は、「伝説の話には、子供たちがこれから生きていく上で、人生を進んでいくときに役立つことが詰まっていて、それを知ることはひとつのレッスンだと思い、アニメーションで現代的に伝えるのが私の使命だと思っています。」(トム・ムーア監督)と語っています。セルキーはスコットランド、アイルランド、およびフェロー諸島(デンマーク)の民間伝承に見られる神話上の生物で、海中ではあざらしとして生活し、陸にあがる時は皮を脱いで人間の姿になります。様々な伝承がありますが、人間の男性が女性のセルキーが脱いだ皮を盗ってしまうと、彼女は男性の言いなりになってしまい、妻になるしかなくなると言います。女性のセルキーは妻としては完璧ですが、彼女らの本当の住処は海なので、結婚してからも海を眺めていることが多く、盗られた皮を見つけると彼女らは直ちに海に戻ってしまうと言われています。人間の妻となったセルキーが、数人の子供をもうけることもありますが、子供の一人が皮を発見し、セルキーが海に戻ってしまうこともあります。セルキーは人間の夫に再び会うことを避けますが、子供たちに会いに戻ってきて、波の中で一緒に遊ぶこともあると言われています。本作は、こうしたセルキー伝説をアレンジ、脚色したもので、セルキーの妻ブロナーを失った悲しみから娘のシアーシャを溺愛する父コナーと、母を失った悲しみから憎しみの矛先を妹シアーシャに向ける息子ベンが登場します。さらに、マクリル、マカなどの神、魔女や、妖精が登場します。セルキーであるブロナーは超自然的世界を象徴し、また、「姿を消しても歌を通して彼女の精神は生き続ける」という、形而上的な意味が込められています。また、子供たち感情を抑えることばかり強要する大人たちは問題と感じていたムーア監督は、人々の心に宿る怖さや悲しみ、苦しみを奪い取ってビンに封じ込めてしまう魔女のマカのエピソードを、本作のオリジナルとして挿入しています。コナーとマクリル、祖母とマカ、ダンとシャナキーは、それぞれ鏡のような関係で、同じ声優が担当しています。妻を失ったコナーは感情を押し殺し石のようになるが、マクリルは文字通り感情を奪われ岩になる。祖母とマカも、人々にとって何が良いのか、自分が一番よく知っていると思いこんでいる老女である。ダンもシャナキーも案内人で、ダンは人々が海を渡るのを助け、シャナキーはベンが妹に会うのを助ける。セルキー伝説が核の本作ですが、実はセルキーであるブロナーの出番は限られており、代わりに全編を通じてテーマ曲の「Song Of The Sea」が効果的に使われています。これは、音楽を手掛けた映画音楽作曲家のブリュノ・クレのアイディアによるもので、このテーマ曲をうまく使うことにより、姿は見えなくても、母の優しさ、幻想的な海、超自然的力といったブラナーの持つ豊かなイメージが全編を包み込むようになっています。また、ベルギーやフランスのスタッフに、アイルランドの西海岸で3000年前の遺跡や石の彫刻、当時の住居を見てもらい、水性絵具の特性を生かして描いてもらったという、幻想的で独特な雰囲気の風景が、絵本のように美しく印象的です。この背景画と、美しいサウンドトラックが、本作の特徴的なトーンを形作っています。トム・ムーア監督は本作のみならず、前作「ブレンダンとケルズの秘密」でもアカデミー長編アニメ映画賞にノミネートされており、確かな力量を感じさせる作品です。ベン(主人公の少年、コナーのブロナーの息子、シアーシャの兄)コナー(ブロナーの夫、ベンとシアーシャの父)ブロナー(セルキー、ブロナーの妻、ベンとシアーシャの母)シアーシャ(コナーのブロナーの娘、ベンの妹)祖母(コナーの母、ベンとシアーシャの祖母)マカ(魔女、人々の感情を奪う)シャナキー(語り部の妖精、連れされたシアーシャの行き先をベンに教える)妖精(石にされた仲間を救うためにシアーシャを連れ去る)マクリル(感情を奪われ石にされた海の巨神)【サウンドトラック】Song Of The Sea Soundtrack(YouTube)1 Song Of The Sea by リサ・ハニガン2 The Mother's Portrait by ブリュノ・クレ & KiLA3 The Sea Scene by ブリュノ・クレ & KiLA4 The Song by リサ・ハニガン & Lucy O' Connell5 The Key In The Sea by ブリュノ・クレ & KiLA6 The Derry Tune by KiLA7 In The Streets by ブリュノ・クレ & KiLA8 Dance With The Fish by ブリュノ・クレ & KiLA9 The Seals by ブリュノ・クレ & KiLA10 Something Is Wrong by リサ・ハニガン11 Run by ブリュノ・クレ & KiLA12 Head Credits by リサ・ハニガン13 Get Away by ブリュノ・クレ & KiLA14 Help by ブリュノ・クレ & KiLA15 Sadness by ブリュノ・クレ & KiLA16 Molly by Slim Pezin & KiLA17 I Hate You by ブリュノ・クレ & KiLA18 Who Are You by ブリュノ・クレ & KiLA19 The Storm by ブリュノ・クレ & KiLA20 Katy's Tune by KiLA21 In The Bus by リサ・ハニガン22 The Thread by リサ・ハニガン23 Amhrán Na Farraige by リサ・ハニガン24 Song Of The Sea (Lullaby) by ノルウェン・ルロワ25 La chanson de la mer (berceuse) by ノルウェン・ルロワ 「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」のDVD(楽天市場)【関連作品】トム・ムーア監督作品のDVD(楽天市場) 「ブレンダンとケルズの秘密」(2010年)・・・2017年日本公開予定セルキー伝説を描いた映画のDVD(楽天市場) 「フィオナの海」(1994年)・・・輸入版、日本語なし 「オンディーヌ 海辺の恋人」(2010年)
2017年04月15日
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「僕の大切な人と、そのクソガキ」(原題:Cyrus)は、2010年公開のアメリカのヒューマン・コメディ映画です。デュプラス兄弟監督・脚本、 ジョン・C・ライリー、ジョナ・ヒル、マリサ・トメイ、 キャサリン・キーナーら出演で、理想の女性と出会ったバツイチの中年男が、彼女の21歳のマザコン息子による嫌がらせに悪戦苦闘する姿を描いています。 「僕の大切な人と、そのクソガキ」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ジェイ・デュプラス/マーク・デュプラス脚本:ジェイ・デュプラス/マーク・デュプラス出演:ジョン・C・ライリー(ジョン、バツイチ、何かと元妻に頼る) ジョナ・ヒル(サイラス、モリーの息子、マザコン青年) マリサ・トメイ(モリー 、サイラスの母、ジョンの新しい恋人) キャサリン・キーナー(ジェイミー、ジョンの元妻) マット・ウォルシュ(ティム、ジェイミーの婚約者) ダイアン・ミゾタ(ジョンがパーティで出会うアジア系の女性) ほか【あらすじ】7年前に離婚して以来、冴えない毎日を過ごしていたバツイチ男のジョンは、元妻とその夫が開いたパーティで魅力的な女性モリーと出会います。すっかり惚れ込んだジョンは、デートを約束、誰もが驚く中、デートを重ねます。二人は親密になっていき、ジョンは、モリーが21歳になる息子サイラスが同居していることを知ります。歓迎ムードで迎えてくれたサイラスにジョンは安心しますが、ジョンの靴がなくなるという出来事が起こり、友好的に見えたサイラスとの関係が変化していきます・・・。【レビュー・解説】もはや日常的とも言えるアメリカの離婚・再婚の風景の中で起きるちょっとした事件の顛末を描く本作は、豪華なオスカー級俳優が性格俳優の部分で「らしさ」をナチュラル演じた、質の高いヒューマン・コメディに仕上がっています。離婚も多いが、再婚も多く、血の繋がらない兄弟がいる家庭が珍しくないというアメリカですが、マメな男性、モテる男性ならいざしらず、そうではない男性にとって、再婚は決してハードルが低いことではありません。そんなバツイチ駄目男を、ジョン・C・ライリーが演じているわけですが、ジェイ・デュプラス監督は、次の様に語っています。「脚本を書く時に、ジョン.C.ライリーを想像したんだ。知られた俳優で、個人的にも知っているし、何年も注目していて、僕らは大ファンだったんだ。僕らの撮り方からすれば、もし彼が出演できれば、僕らが想像して脚本に書いたすべてのことが、少しずつ可笑しくなり、感動的になり、悲劇的になってと、拡大していくんだ。数ヶ月かけて脚本を書くうちに、ジョンなしにはこの映画を作れないって気持ちになってしまったんだ。」(ジェイ・デュプラス監督)ジョン・C・ライリー(ジョン、バツイチ、何かと元妻に頼る) かくして、「シカゴ」(2002年)でアカデミー助演男優賞にノミネートされたこともあるライリーの出演が実現したわけですが、さらに前妻役に、「マルコヴィッチの穴」(2001年)、「カポーティ」(2006年)でアカデミー助演女優賞にノミネートされたキャサリン・キーナー、新しい恋人役に「いとこのビニー」(1992年)でアカデミー助演女優賞を受賞、「イン・ザ・ベッドルーム」(2001年)、「レスラー」(2008年)でも同賞にノミネートされたマリサ・トメイと、豪華なキャスティングが実現します。これはライリーあればこそのキャスティングで、この強烈な熟年女優二人の相手ができる俳優はそうそういません。マリサ・トメイ(モリー 、サイラスの母、ジョンの新しい恋人) キャサリン・キーナー(ジェイミー、ジョンの前妻)ライリー扮するジョンは前妻のジェイミーと離婚して7年になりますが、未だ独り身です。冒頭、そんなライリーの元にジェイミーがやってきて、婚約したのでパーティに来て欲しいと伝えます。日本では考えにくかもしれませんが、アメリカでは男女としての関係が破綻して離婚しても、困った時にはお互い相談するなど、友人としての付き合いを継続する風潮があります。特に子供がいる場合、離婚しても親としての務めは果たさねばなりませんので、離婚相手とうまくやることは必須になります。また、お互いの新しいパートナーと家族ぐるみの付き合いをすることも珍しくないようです。女性の自立が進み、異性として魅力を感じなくなるとさっさと離婚するが、友人の一人としての関係は続けるという風潮のようですが、片方が独身のままだと座りが悪く、ギクシャクするところがあります。ジェイミーとその新しいパートナーが、ジョンに新しい恋人を見つけるよう奨めるのには、そんな背景があります。ジェイミーに招待されたパーティでマリサ・トメイ扮するモリーに出会い、ジョンにもようやく運が向いてきますが、そこに立ちはだかるのがモリーの連れ子のサイラスです。連れ子がいる場合には一緒に暮らすことになるので、再婚と言っても本人同士の気持ちのみならず、連れ子との相性が重要な問題となります。ジョナ・ヒル演じるサイラスは21歳で、一般的には独立して不思議のない、親は親、子は子と言える年齢ですが、母を奪われたくないマザコン青年で、外面はいいものの、子供のようにジョンの靴を隠したり、二人を仲を邪魔しようと画策したりします。サイラスにパニック障害の既往があることから、母親のモリーもなかなか子離れできません。サイラスを演じたジョナ・ヒルについて、マーク・デュプラス監督は次のように語っています。「ジョナ・ヒルには、多くの人が知らない、暗い面があるんだ。彼は極めて知的で、人間とは何か考えている。公園のベンチに一緒に座り、人々を眺めながら、少しばかり込み入った不思議なことを何時間も話せる人間で、僕らは実際にそうしたし、僕らの映画はそんなところから生まれるんだ。彼は、何か違ったことを僕らと一緒にやりたいと熱心に思っており、チームの一員として張り切っている新人の様だったよ。それは、映画に伝染するんだ。彼は、即興がうまく行かないような困った時でも、きっとうまく行くと信じている、いわば、マスコットみたいな存在だったよ。」(マーク・デュプラス監督)「スーパーバッド 童貞ウォーズ」(2007年)で主役を演じて成功を収めたジョナ・ヒルは、数多くのコメディに出演するようになりましたが、この時期はちょうど新しい可能性を探っており、本作でも安易に笑いを取りに走ることなく、マザコン青年を真剣に演じてみせています。こうした彼の新しい可能性への挑戦は、「マネーボール」(2011年)、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(2013年)で実を結び、いずれの作品でもアカデミー助演男優賞にノミネートされています。ジョナ・ヒル(サイラス、モリーの息子、マザコン青年)他に、ほんの少しの出番ですが、ダイアン・ミゾタという日系アメリカ人が女優が出演しています。彼女は元々はダンサーで、テレビ番組やコマーシャルに出演していましたが、映画「ブギーナイツ」(1997年)など幾つかの映画への出演で頭角を現し、「オースティン・パワーズ ゴールドメンバー」(2002年)、「SAYURI」(2005年)にも出演、テレビの司会者も務めています。ダイアン・ミゾタ(ジョンがパーティで出会うアジア系の女性)邦題の「僕の大切な人と、そのクソガキ」は、ミス・リーディングな気がしないでもないのですが、お馬鹿コメディというよりは、日常的とも言えるアメリカの離婚、再婚の風景を切り取ったヒューマン・コメディで、悲劇的で、可笑しくて、感動的なダメ男を演じるジョン・C・ライリーピュアで可愛らしい熟女を演じるマリサ・トメイちょっと姉御肌で優しい熟女を演じるキャサリン・キーナー外面は良いが暗い内面を持つマザコン息子を演じるジョナ・ヒルという、はまり役のオスカー俳優たちのナチュラルなパフォーマンスやリアクションが見所です。デュプラス兄弟は撮影に当たって俳優による即興を重視しますが、アダム・マッケイ監督とウィル・フェレルのコンビや、ジャド・アパトー監督のコメディのように即興に笑いを求めるのではなく、自然さを求めています。本作のいずれの俳優もお馬鹿コメディを演じられる芸域の広さを持っていますが、本作では性格俳優の部分で「らしさ」をナチュラル演じた、質の高いヒューマン・コメディに仕上がっています。オスカー級俳優のナチュラルなパフォーマンスによる質の高いヒューマン・コメディ2000年代に入ってから、アメリカのインディペンデント映画にマンブルコアという自然主義的な流れが生まれました。低予算でアマチュア俳優を使い、若い男女がいつもいるような場所でいつも通りしゃべるといった、日常のシーンをそのまま描写するのが特徴で、日常会話のようなつぶやく(マンブル)ような話し方からマンブルコアと呼ばれています。デュプラス兄弟はこのジャンルで成功した、タランティーノ監督も注目している逸材で、本作では、そうしたマンブルコアの流れを汲みながら、若い男女の日常をアマチュア俳優を演じる代わりに、離婚・再婚に悩む中年の日常をプロの俳優がナチュラル に演じているのですが、こうした新たな試みにオスカー級の俳優がこぞって出演、質の高いコメディにしてしまうアメリカ映画界の懐の深さに感心してしまいます。 「僕の大切な人と、そのクソガキ」のDVD(楽天市場)【関連作品】デュプラス兄弟監督作品のDVD(楽天市場) 「ハッピーニート おちこぼれ兄弟の小さな奇跡」(2011年)ジョン・C・ライリー出演作品のDVD(楽天市場) 「ギルバート・グレイプ」(1993年) 「ブギーナイツ」(1997年) 「マグノリア」(1999年) 「グッド・ガール」(2002年)「シカゴ」(2002年) 「めぐりあう時間たち」(2002年) 「アビエイター」(2004年) 「今宵、フィッツジェラルド劇場で」(2006年) 「バッドトリップ! 消えたNO.1セールスマンと史上最悪の代理出張」(2011年) 「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(2014年) 「五日物語-3つの王国と3人の女-」(2015年)「ロブスター」(2016年)マリサ・トメイ出演作品のDVD(楽天市場) 「いとこのビニー」(1992年) 「イン・ザ・ベッドルーム」(2001年) 「その土曜日、7時58分」(2007年) 「レスラー」(2008年) 「僕の大切な人と、そのクソガキ」(2010年) 「リンカーン弁護士」(2011年) 「スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜」(2011年) 「ラブ・アゲイン」(2011年) 「人生は小説よりも奇なり」(2014年) 「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(2015年) 「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」 (2016年)キャサリン・キーナー出演作品のDVD(楽天市場) 「アウト・オブ・サイト」(1998年) 「マルコヴィッチの穴 」(1999年) 「40歳の童貞男」(2005年) 「カポーティ」(2005年)「イントゥ・ザ・ワイルド 」(2007年) 「善意の向こう側」(2010年) 「おとなの恋には嘘がある 」 (2013年) 「キャプテン・フィリップス 」(2013年) 「はじまりのうた」(2013年) 「ゲット・アウト 」(2017年)ジョナ・ヒル出演作品のDVD(楽天市場) 「40歳の童貞男」(2005年) 「無ケーカクの命中男/ノックトアップ」(2007年) 「スーパーバッド 童貞ウォーズ」(2007年) 「寝取られ男のラブ♂バカンス」(2008年) 「素敵な人生の終り方」(2009年) 「マネーボール」(2011年) 「21ジャンプストリート」(2012年) 「ジャンゴ 繋がれざる者}(2012年) 「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(2013年) 「ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日」(2013年) 「22 ジャンプ・ストリート」(2014年) 「ヘイル、シーザー!」(2016年)
2017年04月12日
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「スター・トレック BEYOND」(原題: Star Trek Beyond)は、2016年公開のアメリカのSF映画です。映画「スタートレック」シリーズの第13作、J・J・エイブラムスが製作を務める「ケルヴィン・タイムライン」シリーズの第3作である本作は、ジャスティン・リン監督、クリス・パインら出演で、宇宙船エンタープライズ号のキャプテン・カークとクルーたちが、宇宙の最果てにある未知の領域を探索し、自らや惑星連邦の存在意義の真価を問う新たな敵と遭遇する様を描いています。映画公開を目前に控えて亡くなったアントン・イェルチンの遺作となった作品です。 「スター・トレック BEYOND」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ジャスティン・リン脚本:サイモン・ペッグ/ダグ・ユング原作:ジーン・ロッデンベリー出演:クリス・パイン(ジェームズ・T・カーク、エンタープライズ号の艦長) カール・アーバン(レナード・マッコイ、エンタープライズ号の船医) ゾーイ・サルダナ(ニヨータ・ウフーラ、エンタープライズ号の中心的クルー) サイモン・ペッグ(モンゴメリー・スコット、エンタープライズ号の機関主任) ジョン・チョー(ヒカル・スールー、エンタープライズ号の操舵手) アントン・イェルチン(パヴェル・チェコフ、エンタープライズ号の航海士) イドリス・エルバ(クラール、ヨークタウンへの攻撃を企てる異星人) ソフィア・ブテラ(ジェイラ、アルタミット星の住人) ジョー・タスリム(マナス、クラールの右腕) リディア・ウィルソン(カラーラ、保護された異星人) サラ・マリア・フォースバーグ(エイリアン原語部分の声) ディープ・ロイ(キーンザー、モンゴメリー・スコットの相方) メリッサ・ロクスバーグ(シル少尉、エンタープライズの乗組員) ショーレ・アグダシュルー(パリス准将、宇宙基地ヨークタウンの司令官) グレッグ・グランバーグ(フィネガン中佐、宇宙基地ヨークタウンの副官) ほか【あらすじ】ジェームズ・T・カーク(クリス・パイン)は、エイリアンとの話し合いに出向き、エイリアンの遺物の平和利用を訴えますが、交渉は決裂します。カークはエイリアンたちに襲撃され、緊急転送でU.S.S.エンタープライズ NCC-1701に戻っります。遺物の破壊的利用を恐れたカークは、船内のセキュリティボックスに厳重に保管、ワープ航法でエイリアンたちの許を去ります。エンタープライズがファイブイヤーズ・ミッションに就いて3年の月日が流れ、カーク率いるエンタープライズのクルー達は仲間としての絆を育み、エンタープライズは我が家と呼べる存在となっています。そんな中、エンタープライズは物資補給のために宇宙基地ヨークタウンに停泊します。そこで、ヨークタウンに1機の脱出ポッドが到着します。ポッドにはカラーラ(リディア・ウィルソン)という異星人が乗っており、連邦の星図に登録されてない惑星、アルタミット星に、彼女の乗っていた宇宙船が墜落したと救援を求めてきます。救出任務としてエンタープライズはカラーラを乗せてアルタミットに向けて出撃しますが、到着するや否や、正体不明の無数の小型機の襲撃を受け、エンタープライズは大破、戦闘不能に追い込まれます。クラール(イドリス・エルバ)が、エンタープライズに保管されている遺物を狙って艦内に侵入してきます。カークは遺物を乗組員のシル少尉(メリッサ・ロクスバーグ)に託し、総員退艦を命じます。乗組員は脱出しますが、カーク、スポック(ザカリー・クイント)、マッコイ(カール・アーバン)、スコット(サイモン・ペッグ)、チェコフ(アントン・イェルチン)、カラーラの6人を除いて、クラール一味に捕えられ、エンタープライズはアルタミット星に墜落します。単身でアルタミット星に着陸したスコットは、そこでジェイラ(ソフィア・ブテラ)という星の住人に出会います。クラール一味に家族を殺されていたジェイラは、スコットを自分が住んでいる場所に連れていくと、過去に調査任務で行方不明になっていた宇宙艦隊所属のU.S.SフランクリンNX326の修理を依頼します。アルタミット星に不時着したカークはチェコフ、カラーラと合流しますが、カークはカラーラが自分たちに嘘をついて自分たちをここに連れてきたと察っします。実はカラーラはクラール一味の仲間で、墜落したエンタープライズの残骸から通信手段を確保しようとした際に襲い掛かってきます。カークとチェコフはカラーラを倒して乗組員の探索を続け、スコットとジェイラに合流、U.S.Sフランクリンの修理を進め、転送装置を復旧させて、マッコイと墜落時に重傷を負ったスポックを救出します。一方クラールは、ヒカル(ジョン・チョー)やウフーラ(ゾーイ・サルダナ)が発信した救難信号を利用してヨークタウンから艦隊を遠ざけ、シルより遺物を奪うと、それを自分たちの遺物と組み合わせ、アブロナスという兵器を完成させます。クラールは以前から連邦のデータベースにアクセスして情報収集を続けており、アブロナスを用いてヨークタウンを攻撃するのが彼の目的です。カークはそれを阻止するべくジェイラ、スポック、マッコイらと共にクラールの基地を襲撃します。カークは乗組員らを救出しますが、クラールは一足先に大部隊を引き連れてヨークタウンへ向かいます。カークはU.S.Sフランクリンを復旧させて離陸、追撃します・・・。【レビュー・解説】「宇宙大作戦」のキャラクターを踏襲、勧善懲悪のクラシカルな設定ながら、開始三十分で母艦が墜落するという大胆なプロットと、個性的なキャスト、息もつかせぬアクションの連続で、観る者を魅了する優れたリブート作品です。カーク艦長を演じるクリス・パインのみならず、スポックを演じるザカリー・クイント、マッコイを演じるカール・アーバン、スコットを演じるサイモン・ペッグ、スールーを演じるジョン・チョー、チェコフを演じるアントン・イェルチンと、個性的な面々で、観る者を退屈させません。本作ではあまり活躍の場はありませんが、ウフーラを演じるゾーイ・サルダナも存在感があります。クリス・パイン(ジェームズ・T・カーク):エンタープライズ号の艦長ザカリー・クイント(スポック):エンタープライズ号の副長、ヴァルカン人と地球人のハーフ。カール・アーバン(レナード・マッコイ):エンタープライズ号の船医。 サイモン・ペッグ(モンゴメリー・スコット):エンタープライズ号の機関主任。ジョン・チョー(ヒカル・スールー):エンタープライズ号の操舵手。アントン・イェルチン(パヴェル・チェコフ):エンタープライズ号の航海士。ゾーイ・サルダナ(ニヨータ・ウフーラ):エンタープライズ号の中心的クルー。悪役のクラールなど、異星人のキャラクターも魅力的です。また、ウフーラを除いて鍵となる女性キャラがすべて異星人というのも、興味深い設定です。ジェイラを演じるソフィア・ブテラは、アルジェリア系フランス人のダンサー、モデル、女優です。アルジェリアにに生まれ、5歳からクラシックバレエを習いはじめ、10歳でフランスに移住、新体操のフランス代表チームに所属していました。「ストリートダンス2」(2012年)に出演している他、「キングスマン」(2014年)では、両足が義足の殺し屋を演じています。本作では、高い身体能力を活かし、見事な表現力を見せています。イドリス・エルバ(クラール):エイリアンの遺物を回収、ヨークタウンの攻撃を企てる。ソフィア・ブテラ(ジェイラ):アルタミット星の住人。リディア・ウィルソン(カラーラ):保護された異星人。メリッサ・ロクスバーグ(シル少尉):エンタープライズの乗組員。「スタートレック」は、元々、アメリカのSFテレビドラマ・シリーズで、1966年の放映開始以来、これまでに5本のドラマ・シリーズ、1本のアニメ作品、13本の劇場映画版が制作されています。最初のシリーズである「宇宙大作戦」(1966年〜69年)から、理想の未来像を描きつつ様々な社会問題をSFの形で提示しています。「新スタートレック」(1987年〜94年)以降のシリーズでも、現実社会の複雑化を反映することにより、今日に至るヒットに結びつき、最新シーリズ「スタートレック:ディスカバリー」が、2017年5月から配信される予定という長寿シリーズです。1977年に映画「スターウォーズ」がヒットし空前のSF映画ブームが到来した為、「宇宙大作戦」の直接的な続編として企画されていたテレビドラマ・シリーズの企画を急遽、劇場版に変更、公開されたのが「スタートレック」(1979年)です。以降、「宇宙大作戦」のメンバーが中心となった作品が計6本、公開されます。1994年には、「新スタートレック」のメンバーを中心とした「ジェネレーションズ」が公開され、以降、計4本が公開されます。その後、再び「宇宙大作戦」のメンバーが中心となった作品「スター・トレック」(2009年)、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」(2013年)、「スター・トレック BEYOND」(2016年)が公開され、「ケルヴィン・タイムライン」シリーズと呼ばれています。「スター・トレック」、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」は、J・J・エイブラムスが監督を手がけていましたが、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(2015年)の監督を務めた為に本作の監督に手が回らず、「ワイルド・スピード」シリーズでのアクションで話題を呼んだジャスティン・リン監督に依頼します。子どもの頃、小さなレストランを経営する両親が毎晩9時に閉店、10時に帰宅して家族揃って夕食を取り、11時からテレビで「スター・トレック」を観るのが生活の一部だったリン監督は、テレビ番組のエッセンスを取り入れつつ、新しい冒険を生み出そうと決意します。エイブラムスに「君自身の作品を作ってほしい」、「思い切ってやれ」と言われたリン監督は、脚本のサイモン・ペッグとダグ・ユングに、「スタートレックを脱構築(筆者注:古い構造を破壊し、新たな構造を生成すること)しよう、エンタープライズ号をバラバラにするんだ」と伝えます。かなり不満そうな顔をしたペグですが、話し合いを重ねていくうちに、ただ人を驚かせたくてエンタープライズ号を破壊するのではなく、「スタートレック」というものを本当に脱構築していくんだということを理解してくれたと言います。かくして、本作ではエンタープライズ号が開始三十分で墜落してしまいます。【動画クリップ(YouTube)】無数の小型機に攻撃されるエンタープライズ号【関連作品】主な「スタートレック」シリーズ作品のDVD(楽天市場) 「スタートレックII カーンの逆襲」(1982年) 「スタートレックIII ミスター・スポックを探せ!」(1984年) 「スタートレックIV 故郷への長い道」(1986年) 「スタートレックVI 未知の世界」(1991年) 「ファーストコンタクト」(1996年)「スター・トレック」ケルヴィン・タイムライン・シリーズ(クリス・パイン主演) 「スター・トレック」(2009年) 「スター・トレック イントゥ・ダークネス」(2013年)ジャスティン・リン監督作品のDVD(楽天市場) 「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT 」(2006年) 「ワイルド・スピード MAX」(2009年) 「ワイルド・スピード MEGA MAX」(2011年) 「ワイルド・スピード EURO MISSION」(2013年)クリス・パイン出演作品のDVD(楽天市場) 「アンストッパブル」(2010年) 「最後の追跡」(2016年)
2017年04月09日
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「11:14」(原題: 11:14)は、2003年公開のアメリカのサスペンス&ダーク・コメディ群像劇映画です。グレッグ・マルクス監督、ヒラリー・スワンク、パトリック・スウェイジら出演で、夜の11:14に錯綜する5つの事件の連鎖を描いています。 「11:14」のDVD(Amazon)【スタッフ・キャスト】監督:グレッグ・マルクス脚本:グレッグ・マルクス出演:ヒラリー・スワンク(バジー) パトリック・スウェイジ(フランク) レイチェル・リー・クック(シェリー) ヘンリー・トーマス(ジャック) バーバラ・ハーシー(ノーマ) コリン・ハンクス(マーク) スターク・サンズ(ティム) ベン・フォスター(エディ) ショーン・ハトシー(ダフィ) クラーク・グレッグ(ハナガン保安官) ほか【あらすじ】午後11:14。ジャック(ヘンリー・トーマス)は深夜の国道を車で走行中に、突然衝撃を受けます。おそるおそる車を降り確認すると、車の前に顔が潰れた男性の死体があります。急いでトランクへ死体を隠しますが、丁度通りかかった中年女性によって警察へ通報されてしまい、ジャックは慌てて逃げようとします・・・。午後11:09。ティム(スターク・サンズ)は友人たちとふざけながらドライブをしています。調子に乗った仲間のエディが車の窓から放尿した瞬間、道路を横断する人をはねてしまいます。呆然としていると、そこへ現れた見知らぬ男が車に向け発砲します。一行は命からがら逃げ出しますが、ある大切なものを落としてきたことに気づき、現場に戻ることになります・・・。午後11:04。フランク(パトリック・スウェイジ)は、犬の散歩の途中に立ち寄った墓地で、男性の死体を発見します。死体の横には娘のキーホルダーが落ちており、娘が殺人を犯してしまったと思ったフランクは、車のトランクに死体を積みま、事件を隠蔽しようとします・・・。午後10:49。バジー(ヒラリー・スワンク)が雑貨店で働いていると、そこに訪ねてきた友人のダフィ(ショーン・ハトシー)から、恋人の中絶費用を稼ぐための狂言強盗を持ちかけられます。渋るバジーが、ダフィの拳銃を玩んでいるうちに誤って発砲、ガラスケースを割ってしまいます。あとに引けなくなったバジーは現金を山分けすることで共犯を受け入れ、さらに真実味を増すためダフィに自分の腕を撃つように要求します・・・。午後10:54。シェリー(レイチェル・リー・クック)が近所の墓地で浮気相手とセックスをしていると、突然、墓石が倒れ、相手が即死してしまいます。あわてて帰宅する途中にティムと出会ったシェリーは、ダフィがバジーの店にいることを知ります。彼女はダフィに罪をかぶせるべく、バジーの店に行き、隠蔽工作を図りますが、現場に戻ると死体が消えています・・・。【レビュー・解説】真夜中の20分余り時間に起こる5つの事件の連鎖を、サスペンスフルに、かつ、わかりやすく描き切った見事なプロットと編集、プロデュースも務めたヒラリー・スワンクのコミカルなパフォーマンスが際立つ、ブラック・コメディ仕立ての群像劇です。様々な出来事を緩く統合する群像劇はそれほど珍しくありませんが、タイトに連鎖する5つの事件をサスペンスフルに、かつわかりやすく描くというのは容易なことではありません。冒頭の事故から少しずつ時間を遡りながら、一見、無関係と思われる様々な事件を徐々に連鎖させていく本作のプロットと編集が見事です。ヒラリー・スワンクというと、アカデミー主演女優賞を受賞した「ボーイズ・ドント・クライ」(1999年)や「ミリオンダラー・ベイビー」(2004年)のシリアスな演技を思い浮かべますが、本作では雑貨屋の店員バジーをコミカルに演じています。もともとこの役は男性でしたが、本作で初めてプロデュースを手掛けた彼女が、脚本を女性役に書き換えてもらい自ら出演したもので、デンタル・ブラケット(歯科矯正装置)を装着しての気合の入ったコミカルな演技は、同じくオスカー女優のフランシス・マクドーマンドを連想させます。また、雑貨屋のシーンで、恋人に騙され狂言強盗を持ちかける冴えない男を演じるショーン・ハトシーとの掛け合いも絶妙で、互いが互いを引き立ていている印象、大女優の芸の幅を感のみならず、巧みなリードを感じさせます。ヒラリー・スワンク(バジー)ショーン・ハトシー(ダフィ)フランクを演じるパトリック・スウェイジは、「アウトサイダー」(1983年)、「ダーティ・ダンシング」(1987年)、「ゴースト/ニューヨークの幻」(1990年)などで有名なアメリカの俳優ですが、膵臓がんの為、2009年に惜しまれつつ亡くなりました。パトリック・スウェイジ(フランク)シェリーを演じるレイチェル・リー・クックは、ぱっとしない高校生が綺麗に変身してゆく青春映画「シーズ・オール・ザット」(1999年)のヒロイン役で一躍有名となり、「ポスト ウィノナ・ライダー」とも言われましたが、有名になることよりも家族との時間を大切にしたいという本人の意向から、インディーズ映画の出演が多い女優です。どちらかと言うと清楚な役が多いのですが、「プッシーキャッツ」(2001年)のように過激な女性ロッカーの役や、本作のようにセクシーなシーンもこなす、芸域の広い女優です。レイチェル・リー・クック(シェリー)【撮影地(グーグルマップ)】フランクがシャツを燃やし、妻と出会う場所 「11:14」のDVD(Amazon)【関連作品】ヒラリー・スワンク出演作品のDVD(楽天市場) 「ボーイズ・ドント・クライ」(1999年) 「インソムニア」(2002年) 「ミリオンダラー・ベイビー」(2004年) 「ホームズマン」(2014年)パトリック・スウェイジ出演作品のDVD(楽天市場)「ダーティ・ダンシング」(1987年) 「ゴースト/ニューヨークの幻」(1990年) 「ドニー・ダーコ」(2001年)
2017年04月07日
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「オマールの壁」(原題:عمر、英題:Omar)は、2013年公開のパレスチナのクライム・サスペンス&ドラマ映画です。ハニ・アブ・アサド監督・脚本、アダム・バクリら出演で、分離壁を越えて恋人と会っていたパレスチナの青年がテロ容疑でイスラエルの秘密警察に捕まり、一生を獄中で過ごすか、スパイになるかの選択を迫られ、葛藤する姿を描いています。第66回カンヌ国際映画祭で特別審査員賞を受賞、第86回アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされた作品です。 「オマールの壁」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ハニ・アブ・アサド脚本:ハニ・アブ・アサド出演:アダム・バクリ(オマール、パン職人、ナディアの恋人、結婚を夢見て貯金) サメール・ビシャラット(アムジャド、オマールの幼馴染、ナディアに横恋慕) エヤド・ホーラーニ(タレク、オマールの幼馴染、イスラエル攻撃のリーダー格) リーム・リューバニ(ナディア、タレクの妹、オマールの恋人) ワリード・ズエイター(ラミ) ほか【あらすじ】パレスチナ自治区、思慮深く真面目なパン職人の青年オマール(アダム・バクリ)は、監視塔からの銃弾を避けながら分離壁をよじ登り、幼馴染みのタレク(エヤド・ホーラーニ)、アムジャド(サメール・ビシャラット)と連絡をとってはイスラエル政府軍に対抗する為の武器を調達、射撃訓練を行なっています。その一方で、タレクの妹であるナディア(リーム・リューバニ)との間に愛を育み、結ばれる日を夢見てパン屋の稼ぎを貯め込んでいます。ある日、分離壁を超えたオマールはイスラエル兵に嫌がらせを受け、幼馴染とともに報復するかのようにかねてから計画していた銃撃をしかけます。イスラエル兵殺害容疑で捕えられたオマールは、自白を拒んで無罪となるはずでしたが、イスラエル秘密警察の捜査官ラミ(ワリード・ズエイター)の策略により、一生囚われの身になるか、仲間を裏切ってスパイになるか選択を迫られ、葛藤します。その一方で、仲間たちの間には裏切り者の情報が錯綜、オマールもアムジャドを疑います。アムジャドはナディアと禁断の関係を持ち、それをラミに脅迫されたと告白、三人が揉め合う中、銃の暴発でタレクは絶命します。やむを得ず、オマールはタレクの遺志と偽り、アムジャドとナディアの結婚を認めますが、2年の時を経て、オマールはアムジャドの嘘を知ります・・・。【レビュー・解説】テロを仕掛けた為に、イスラエルの反テロ諜報活動に翻弄される若者たちの愛と友情、信頼と裏切りをリアルな設定で描く、稀有で見ごたえのあるパレスチナ製のクライム・サスペンスです。パレスチナという言葉を耳にしたり、ニュース映像を見ることはあっても、どんな人たちが、どんな生活をしているのか、我々が目にすることはほとんどありません。本作は、スタッフ全員がパレスチナ人、撮影もパレスチナで行ったという、設定がリアルな稀有で見ごたえのある作品です。政治的なメッセージを発する社会派ドラマというよりは、クライム・サスペンスの色彩が濃く、テロを仕掛けた為に、イスラエルの対テロ諜報活動に巻き込まれ、翻弄されるパレスチナの若者たちの愛、友情、信頼や裏切りを描いています。若者を演じる4人はいずれもパレスチナ人の新人俳優で、フレッシュながらも個性的で生き生きとしたパフォーマンスを見せています。アダム・バクリ(オマール)パレスチナ人の新人俳優。純朴でナディアと相思相愛の青年オマールが、葛藤し、精悍になっていく様子を見事に演じている。 パレスチナ人の新人俳優。唯一、ひょうきんな面をもつオマールの幼馴染で、ナディアに横恋慕するアムジャドを演じている。エヤド・ホーラーニ(タレク)パレスチナ人の新人俳優。オマールの幼馴染で、好戦的なイスラエル攻撃計画のリーダー格、タレクを演じる。リーム・リューバニ(ナディア)パレスチナ人の新人俳優。オマールと相思相愛の慎ましやかで可愛らしいタレクの妹を初々しく演じる。ワリード・ズエイター(ラミ)パレスチナ系アメリカ人の舞台俳優、プロデューサー。カリフォルニアに生まれ、クウェートで育つ。イスラエル秘密警察の諜報員を巧みに演じている。パレスチナは地中海東岸シリア南部の歴史的な地域名称で、19世紀以降、各地で民族自立が促されると、ユダヤ人もオスマン帝国領のパレスチナに入植し始めます。第一次世界大戦でオスマン帝国が崩壊し、シオニズム(イスラエルの地(パレスチナ)に故郷を再建しようとするユダヤ人の運動)に押された大英帝国と列強は、「ユダヤ人の母国をパレスチナに確立する」としてイギリス委任統治領パレスチナを国際連盟で決議します。さらに、第二次世界大戦後、ホロコーストで同情を集めたシオニズムに押され、国際連合でパレスチナ分割決議を採択され、イスラエルが建国されます。これに反発したアラブ諸国とイスラエルとの間で第一次中東戦争が勃発、イスラエルが勝利し、パレスチナの8割を占領します。中東戦争はその後も断続的に続き、1967年の第三次中東戦争では、イスラエルは東エルサレム、ガザ地区、シナイ半島、ヨルダン川西岸、ゴラン高原を占領しますが、その後、エジプト、シリアに反撃を受け、緊張関係が続きます。teleSUR一方、イスラエル国内でも、イスラエルとパレスチナ人の間で暴動が頻発するようになります。1993年に、ヨルダン川西岸地区とエジプトに接するガザ地区からなるパレスチナ自治区が設立され、パレスチナ解放機構 (PLO) が母体となったパレスチナ自治政府が統治するようになりますが、自治政府内の勢力争いもあり、イスラエルを標的にした自爆テロやロケット砲攻撃が行われるようになり、イスラエル政府がこれに反撃するなど緊張関係が続いています。本作は基本的にフィクションですが、事実に即したリアルな設定になっています。映画の冒頭、主人公のオマールが分離壁を超えるシーンが出てきます。これは、イスラエルがヨルダン川西岸地区との境界付近に建設している分離壁です。イスラエル政府は分離壁の建設を自爆テロ防止のためと説明、分離壁(スラエル政府は「セキュリティ・フェンス」と呼ぶ)により自爆テロ事件は大幅に減少したとしており、分離壁の大部分が完成する前後の統計を見ると、2002年には47件の自爆テロが発生し238人のイスラエル市民が犠牲となったのに対して、2008年には自爆テロ2件、犠牲者1名まで減少しています。一方で、分離壁はユダヤ人入植地を囲むために1949年停戦ラインより内側に入り込んでおり、さらに分離壁そのものがパレスチナ人の生活を分断して大きな影響を与えていることから、国際司法裁判所はパレスチナ人の民族自決を損なう不当な差別に該当し、国際法に反するという勧告的意見を2004年に出しており、国際連合総会でも非難決議がなされています。ヨルダン川西岸地区の分離壁オマール、アムジャド、タレクの三人の幼馴染は、武装組織エルサレム旅団の予備軍で、銃の訓練後、イスラエル兵を銃撃しますが、宗教的な描写はほとんどありません。アサド監督は現在のパレスチナの若者を「消費文明の餌食」になった表現しており、宗教的対立というよりは、分離壁や秘密警察によるイスラエル(ユダヤ人政府)の支配と、それに反発するパレスチナ人という対立の構図で現状を捉えています。オマールをイスラエル兵銃撃の容疑者として捕え、尋問する秘密警察は、イスラエル公安庁(通称シャバク)で、アサド監督は、何年か前に政府職員から秘密の個人情報を楯に協力を要請された友人の話を聞き、そうした状況が若者たちにどんな影響を及ぼすのか、いろいろ考えてこの映画の筋書を完成させたと言います。シャバクは、テロ活動や暴力革命により治安を乱そうとするものに対する公安業務テロ容疑者の尋問、テロ組織の摘発ヨルダン川西岸地区とガザ地区における反テロ活動のための諜報活動などで、尋問とエージェントによるヒューミント(人間を媒介とした諜報活動で、合法活動や捕虜の尋問等も含む)でこの目的を遂行します。シャバクはその地区の情報提供者を使い、攻撃計画や指導者に関する情報を収集します。ハマースやイスラーム聖戦のような急進的パレスチナ組織の指導者を標的に圧倒的な成功を収め、急進的パレスチナ組織がシャバックに協力していると疑いをかけた者を殺し始めるほどのインパクトを与えました。シャバクは容疑者への尋問からも情報を引き出し、暴力的な尋問も行われていました。イスラエルの裁判所は拷問に目を光らせており、また、シャバックも現在は心理的な手法でのみ尋問を行っているとしていますが、アムネスティ・インターナショナルなどの人権組織は国際的基準では拷問となるものが依然として日常的に行われているとしています。欧米諸国はテロ対策に手を焼いています。アメリカは、9.11から15年以上経った今日でもテロ対策に決め手を欠いており、また、テロの標的になっているフランスのマニュエル・ヴァルス元首相も「フランスは今後長いあいだ、テロとともに生きていかなければならない」と語っています。しかしながら、長い間、テロ対策に腐心してきたイスラエルには「人権を神聖化するな、絶対視するな」という考え方があり、テロ対策に成果を出してきました。自由や人権は横に置き、まず人命を最優先して対策を立てるべきだという強硬な意見です。本作で描かれている分離壁や、シャバックのやり方は、そうした考え方の反映とも言えますが、テロ対策に成果を出す一方で、国際世論の反感を買っているのは前述の通りです。ハニ・アブ・アサド監督は、オランダ、パレスチナの映画監督、脚本家で、イスラエルのナザレで生まれ、19歳のときにオランダに移住、エンジニアリングを学び、航空エンジニアとして数年働いた後、テレビ、映画界に関わるようになり、1998年に映画監督としてデビューしました。2005年に制作した「パラダイス・ナウ」は、自爆テロに向かう2人のパレスチナ人青年を描き、アカデミー外国語映画賞にノミネートされています。本作は、政治的メッセージを発する社会派映画というよりは、テロ行為とその代償を描くクライム・サスペンス的な位置づけですが、アサド監督はインタビューで彼の政治的立場や、本作の人間の描き方を次のように説明しています。イスラエルによる占領に強く反対する消費社会が地球の文化に優劣を付けている人間は善悪が混在するグレーな存在だが、西洋文化圏は権力を保持する為に物事を白か黒で見るアメリカ文化は復讐を賛美するが、復讐したい気持ちとどう付き合うかが重要暴力も選択肢だが、代償を伴うクライム・サスペンス的な映画とは言え、本作は、世界がパレスチナ問題に関心を持つ、ひとつの契機になり得るものと思われます。欧米の列強主導で行った国連のパレスチナ分割が、アラブ民族の反発を招き、現在に至るまで禍根を残しているわけですが、世論の反発を受けたイスラエル政府が、今後、人権を優先しテロ対策の手を緩めていくのか、世界がパレスチナ問題をどのように解決されていくのか、興味深いところです。 【関連作品】ハニ・アブ・アサド監督作品のDVD(楽天市場) 「エルサレムの花嫁」(2002年) 「パラダイス・ナウ 」(2005年) 「歌声にのった少年」(2015年)イスラム世界を描いた映画のDVD(楽天市場) 「マルコムX」(1992年)「ビフォア・ザ・レイン」(1994年) 「運動靴と赤い金魚」(1997年) 「少女の髪どめ」(2001年) 「アフガン零年」(2003年)「ペルセポリス」(2007年) 「灼熱の魂」(2010年) 「壊された5つのカメラ パレスチナ・ビリンの叫び」(2011年) 「別離」(2011年) 「少女は自転車に乗って」(2012年)
2017年04月04日
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「アイルトン・セナ 〜音速の彼方へ」(原題:Senna)は、 2010年公開のイギリスのドキュメンタリー映画です。かつてのF1の名ドライバー、アイルトン・セナの生誕50年を記念して、慈善団体である「アイルトン・セナ財団」の公認を得て製作された作品で、アシフ・カパディア監督、アイルトン・セナ、アラン・プロストら出演で、セナの誕生からレーサーとしてのデビュー、F1で3度のワールドチャンピオンに輝き、1994年のサンマリノ・グランプリで事故死するまでの34年間の彼の生涯を、肉親・関係者の証言や秘蔵映像などで振り返っています。2011年のサンダンス映画祭において、ドキュメンタリー部門の観客賞を受賞した作品です。 「アイルトン・セナ 〜音速の彼方へ」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:アシフ・カパディア脚本:マニッシュ・パンディ出演:アイルトン・セナ アラン・プロスト ほか【あらすじ】アイルトン・セナは、1960年、裕福な地主でもありブラジル国内で有数の経営者の父親ミルトン・ダ・シルバの長男としてブラジルの最大の都市、サンパウロに生まれます。4歳の時に、父親からレースカートを与えられたセナ少年は、生まれつきレースの才能に恵まれており、すぐにレースに夢中になります。天才的なドライビング・テクニックと「誰よりも早く走りたい」という闘争心で、セナは1984年、若干24歳でF1デビューを果たします。ロータス、マクラーレン、そしてウィリアムズと名門チームを渡り歩き、瞬く間に世界の頂点へと登り詰め、3度もワールドチャンピオンに輝きます。1994年のサンマリノGPで衝撃的な事故死を遂げたセナの34年の生涯を、レース映像や貴重なプライベート映像を交えながら振り返り、華々しい経歴の陰で起きていた、宿命のライバル、アラン・プロストとの確執や、FISA(国際自動車スポーツ連盟)会長の政治的圧力に苦悩する日々を、本人へのインタビューやチーム関係者、家族らの証言を通して明らかにしていきます。【レビュー・解説】世界最速とも言われる果敢な走りのみならず、誰よりも早く走ることを愛し、政治や金の影響を嫌ったセナの人間的側面を浮かび上がらせる本作は、レースファンならずとも心揺さぶられる、優れたドキュメンタリーです。数字から言えば、歴代のF1レーサーの中で圧倒的に強いのはミハエル・シューマッハですが、イギリスの雑誌「F1レーシング」でシューマッハやライバルだったアラン・プロストを抑えて「世界最速のF1ドライバー」、「世界で最も偉大なF1ドライバー」のトップにランクされるなど、アイルトン・セナの人気には未だに根強いものがあります。そんなセナの世界最速とも言われる果敢な走りのみならず、誰よりも早く走ることを愛し、政治や金の影響を嫌った彼の人間的側面を浮かび上がらせる本作は、残した記録以上に人々の記憶に強く残り、レースファンならずとも心揺さぶられるセナの魅力を余すところなく描いたドキュメンタリーです。順位ドライバー活動期間ドライバーズ・チャンピオン優勝回数ポール・ポジション1ミハエル・シューマッハ17年7回91回68回2ファン・マヌエル・ファンジオ8年5回24回29回3アラン・プロスト12年4回51回33回セバスチャン・ベッテル10年〜43回46回5ジャック・ブラバム16年3回23回13回ジャッキー・スチュワート19年27回17回ニキ・ラウダ13年25回24回ネルソン・ピケ17年23回24回アイルトン・セナ10年41回65回ルイス・ハミルトン10年〜53回62回時代や規制、車の違いなどがある中で、誰が一番早いかと議論するのは難しいのですが、一部、映画で紹介されているように、1985年2戦ポルトガルGP、1988年第2戦サンマリノGP、同第6戦デトロイトGPで、いずれも3位以下を周回遅れにするという、圧倒的な速さを見せた。既に2度のタイトルを獲得していたプロストとコンビを組んだマクラーレン時代、プロストと同じ車に乗りながら、ラップで最大2秒近い差をつけていた。コンピューター解析によると、セナは、コーナーでアクセルを小刻みに煽る、通称「セナ足」という独自のテクニックで100 - 300回転ほどの差を付けており、また、シフトアップのタイミングを遅らせ、高回転域を使い切っていることがわかった。エンジン破壊の原因となる部品の不具合を事前に察知した、コースの各位置におけるエンジンの回転数を50回転単位で記憶していた、壁との間をわずか2センチで走り抜けるなど、車両の状態に関する感受性が頭抜けており、メカニックは彼と一緒に仕事をすることを喜んだ。同じ車両で走るとプロストが早いかもしれないが、セナのセンス通りセッティングをすればセナが確実に早くなると言われた。1988年第3戦モナコGPでは、圧倒的な速さを見せ、充分なマージンを築きながらトップを走行するも、果敢に攻めることを止めず、67周目にガードレールにクラッシュ、リタイヤした。1988年第15戦日本GPでは、スタートに失敗、1コーナーを14位で通過するも、オープニング・ラップで8位まで挽回、次々にオーバーテイクしながら、27周目に首位のプロストを捉え、次の1コーナーで追い抜き、そのまま首位でチェッカーフラッグを受けた。1993年第3戦ヨーロッパGPでは、1コーナーを5位で通過するも、2コーナーでシューマッハを、4コーナー手前でベンドリンガーを、7コーナーでヒルをオーバーテイク、10コーナーでプロストを抜き去り、オープニングラップで首位に立った。予選でのタイム差や抜かれたドライバーたちの顔ぶれから、その凄さが伺われるこのラップは「雨のドニントン」と呼ばれ、「下手に付いて行かない方がいいと直感した」、「F1史上最も記憶に残るレース」、「オープニングラップですべてのドライバーの戦意を喪失させた」などと、歴代のチャンピオンや当時のドライバーたちが驚嘆した。ことなどから、特に雨などの車の性能がフルに発揮できない悪条件下で見せる、セナの伝説的な速さが伺われます。その速さや技術の高さが評価されている一方で、果敢な走りに対する批判もあります。映画でも紹介されていますが、先輩格のF1レーサーであるジャッキー・スチュワートは、セナへのインタビューで事故が多いことを指摘しています。これに対しセナは、「あなたのような経験豊かなチャンピオンドライバーの発言として驚きだ。我々F1ドライバーは2位や3位になるためにレースをしているのではない。優勝をするために全力でレースを闘っている。レーシング・ドライバーならば、僅かな隙を突くべきだ。僕には僕の思ったことしかできない。」と反論、誰よりも早く走ることへのセナの執念が伺われます。また、シューマッハが「皇帝」、プロストが「プロフェッサー」と呼ばれ、冷徹で無愛想なイメージがつきまとうのに対して、「天才」、「魔術師」、「貴公子」などと呼ばれたセナは、プロストとのライバル関係や FISA の政治的な圧力に抵抗する姿に人間味が感じられるのも、彼の人気の秘密でしょう。プロストとのライバル関係で最も有名なのは、1989年、1990年の日本GPをめぐる確執です。セナがタイトルを獲得するためには勝たねばならず、プロストはセナがノーポイントであればタイトル獲得が決まる1989年第15戦日本GPで、プロストに先行されたセナは、47周目のシケインでプロストのイン側に飛び込み、意図的に切り込んだプロストと激突、2台のマシンは停止し、プロストはマシンを降りたが、タイトル獲得には勝つしかないセナは、マーシャルにマシンを押してもらい、シケインをショートカットする形でレースに復帰する。トップでチェッカーを受けるが、レース終了後、失格処分を受け、プロストのタイトル獲得が決定する。プロストがノーポイントであればセナのタイトル獲得が決まるという、前年とは逆の立場で迎えた1990年第15戦日本GP、スタートで出遅れたセナは、1コーナーでアウトから切り込むプロストにインを譲らず、2台のマシンは接触してグラベルに弾き出され、共にリタイア、セナのタイトル獲得が決定する。前年のプロストとの接触に対するセナの報復行為として非難を浴びた。これは単にセナとプロストのライバル関係だけの問題ではなく、政治や金が絡み、またメディアに煽られての問題という側面もあります。セナは、カート時代の金や政治が絡まない純粋なレースを理想としており、日本GPにおける彼の行動には、そうしたものへの怒りの発露と捉えることができます。圧倒的な速さと、プロストのライバル関係でF1を沸かせたセナですが、プロストが引退した翌年の1994年第3戦サンマリノGPで、事故の為、命を落としてしまいます。ペレ、ジーコと並ぶブラジルの国民的英雄だったセナの事故に関して、イタリア政府はブラジル政府に配慮する形で裁判で事実を明らかにする道を選びます。チーム・ウィリアムズ、FIA関係者、イモラ・サーキット関係者が起訴され、「改造されたステアリングの金属疲労が事故原因」として過失致死罪を問われますが、証拠不十分により無罪となります。映画では、「セナがタンブレロでミスをするわけがない。マシンに問題があったんだ。パワステの故障か、タイヤ温度が上がらず滑ってしまったのか、今でも謎だ。」「原因は一体、何だ。個人的にはステアリングコラムが壊れ、制御不能に陥ったと考える。」「とにかく決定的だったのは、壁に衝突した角度が悪くてサスのシャフトが飛び、ヘルメットを突き破ったことにある。運が悪かったんだ。彼の体に骨折はなく、打撲傷もなかった。飛んだパーツが上下に15センチずれていれば、彼は歩いて戻れただろう。」という証言が紹介されています。事故当時、ウィリアムズのデザイン・エンジニアとして被告となり、現在レッドブルのチーフ・エンジニアを務めるエイドリアン・ニューウィは、未だにこの映画を見ることができないと言います。「あのあと、わたしの少ない髪の毛は全部抜けてしまった。だからわたしは肉体的に変わってしまった。恐ろしかった。パトリック・ヘッドとわたしは、レーシングを続けたいのかどうか自問したよ。自分たちがつくったマシンで他人が死ぬようなスポーツにわたしたちは関わりたいのだろうか? さらに、この事故は設計ミスによって故障した部品が原因だったのだろうか? それから裁判が始まった。」「裁判は気がめいるような頭痛の種で、余分なプレッシャーだった。でもF1に関わりたいのかという疑問をもつことはなかった。本当に重要だったのは非難よりも反省だった。」「チーム全体にとって、とても難しい時期だった。レースの翌日は銀行休業日の月曜で、わたしたち数人はデータを探して何が起きたのかを解明しようとした。暗い数週間だった。」「正直なところ、正確に何が起きたのかは誰にもわからないだろう。ステアリング・コラムが故障したのは間違いないが、事故で故障したのか、故障が事故の原因になったのかはわからない。疲労亀裂があったので、どこかの時点で壊れたのかもしれない。設計が非常にまずかったのは間違いない。しかしあらゆる証拠は、コースアウトの原因がステアリング・コラムの故障ではなかったことを示している。」「右リア・タイヤがおそらくトラック上の破片を拾ってパンクしたため、マシンのリアがぶれた。最も可能性の高い原因をひとつ挙げろと言われたら、これになるだろう。」(エイドリアン・ニューウィ)事故当時のオンボード映像やデータを見てみましたが、様々な原因を憶測することはできても、特定することは難しい印象です。ウィリアムズが車体の電子制御を規制されたこの年、思うように仕上がらない車体にセナは苦労していました。また、事故が起きた高速コーナーは車が跳ねやすく、セナはその危険性を指摘していました。そんな中で事故に見舞われるわけですが、ひとつ明確なのは、異常を検知してから壁に激突するまで約一秒余りの間に、セナはシフトダウンし、300キロを超える速度を200キロまでに減速させていたことです。映画にもあるのように、壁へ当たる角度さえ良ければ、彼は死ぬことは無かったと思われます。F1ドライバーの頂点にありながら急逝してしまったセナに、ライバルだったプロストは、次のように語っています。「事故から3か月たった今でも、ほとんど毎日セナのことを考えています。彼がいなくなったことで、僕のF1での大切な思い出が消えてしまいました。セナはレースでやる気を起こすためにはライバルが必要だという事に気付きました。セナには僕が必要だったのです。「僕」を倒すために彼は燃えたのです。でも、我々の間にはお互い尊敬の気持ちがありました。一年間レースをやめていた時でも、セナとはよく電話で話をしました。セナは、僕がいないとやる気が起きないと言っていました。「今年のセナはもうレースへの情熱を持っていない」と感じました。彼は、いつまでも挑戦者でいたかった。しかし、守る立場に立たされてしまったのです。若いレーサーを相手にトップの座を守らなければならない、それは非常に難しいことだったでしょう。セナが僕を一番魅了させたのは 「レースで100%集中していたこと」。簡単に100%と言うけれど、実際に100%集中するのはとんでもないことです。僕には家庭もあるし、休暇もある。ゴルフや自転車、スキーにも夢中になります。ですから、僕の場合、95%、いや98%くらいレースに捧げていると思っています。しかし、セナの場合、大切なものはレースだけなのです。また僕の乗るマシンに何らかのトラブルが生じた時、僕ならすぐにピットに入ると思います。でも、セナは違いました。彼は本能で走ろうとするのです。今となっては、セナと共に走ったこと、それが僕にとって一番大切な思い出です。」(アラン・プロスト)セナの死は、シューマッハにも大きな影響を与えました。事故の際、セナを追い上げ、プレッシャーをかけていたシューマッハは、セナが病院に搬送された後に再開されたレースで優勝しますが、彼の死を聞いて、モーターホームに閉じこもって泣き続けたと後に語っています。彼に責任は無いのですが、あたかも彼がセナを死に追いやったように捉えられたシューマッハは、ブラジル国民に目の敵にされ、葬儀にも参列できず、後にひっそりと墓参りをしています。2000年のイタリアGPでセナに並ぶ通算41勝目を挙げ、レース後の記者会見でその感想を質問されると、彼は突然カメラの前で号泣しはじめました。シューマッハはその理由について語ることはありませんでしたが、英雄セナを死に追いやった男として汚名を着せられた彼は、セナを超える記録で自らが英雄になるしか自分を正当化できないという、重い十字架を背負ったのではないかと思います。その後、誰もが超すことができない圧倒的な記録を作り、引退したシューマッハですが、スキー中の事故で麻痺と言語及び記憶障害が残り、車椅子での生活を余儀なくされ、人前に姿を現すこともできないのは、強烈な運命の皮肉のようでもあります。アイルトン・セナアラン・プロスト ロータス 99T ホンダ F1 1987 アイルトン・セナ(楽天市場) マクラーレン ホンダF1 1988 アイルトン・セナ(楽天市場) ウィリアムズ ルノー F1 1994 アイルトン・セナ(楽天市場)【撮影地(グーグルマップ)】セナが激突したイモラ・サーキットのタンブレロ・コーナー正面の事故現場にブラジル国旗などが飾られている。 「アイルトン・セナ 〜音速の彼方へ」のDVD(楽天市場)【関連作品】F1を描いた映画のDVD(楽天市場) 「グラン・プリ」(1966年) 「ウィークエンド・チャンピオン ~モンテカルロ 1971」(1972年) 「アイルトン・セナ 〜音速の彼方へ」( 2010年) 「ラッシュ/プライドと友情」(2013年) 「1: Life on the limit」 (2014年) 「McLaren: The Film」(2017年)・・・未公開
2017年04月02日
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