全9件 (9件中 1-9件目)
1
![]()
「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」は、2014年公開のオランダのドキュメンタリー映画です。新興の映画会社向けに新たな資金調達システムを編み出し、900本もの作品の製作をサポートしたオランダの銀行家フランズ・アフマンの娘、ローゼマイン・アフマンの監督・脚本で、映画配給会社に対し作品の配給権を作品完成前に販売することでその対価を制作費に充当することができる「プリセールス」というシステムを開発、これにより、新興の映画会社による映画製作が盛んとなり、1970年代半ばから90年代にかけて、「コンドル」、「キングコング」、「ターミネーター」、「プラトーン」といった優れたインディーズの作品群の実現を可能にした父の足跡を、自伝の代わりに撮影したという死期の近づく父が思い出を語る映像や、ケビン・コスナー、オリバー・ストーン、ポール・バーホーベンら数多くの映画人の証言により構成された作品です。「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ローゼマイン・アフマン 脚本:ローゼマイン・アフマン出演:フランズ・アフマン アンニャ・アフマン ローゼマイン・アフマン ケビン・コスナー ガイ・イースト デレク・ギブソン ヨーラン・グローバス メナハム・ゴーラン ピーター・ホフマン アーノルド・コペルソン マーサ・デ・ラウレンティス スティーブン・ポール ミッキー・ローク ピエール・スペングラー オリバー・ストーン ポール・バーホーベン ほか【あらすじ】ロッテルダムの銀行員だったアフマンは、イタリア出身のプロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスの知己を得て、ともに「プリセールス」というシステムを開発しました。これは、映画配給会社に対し作品の配給権を作品完成前に販売することでその対価を制作費に充当することができるシステムで、この方法を利用してアフマンは新興映画会社に次々と融資を行い傑作を生みだしていきます。アフマンのもとに参じたのはデ・ラウレンティスを筆頭に、キャノンを率いるイスラエル人メナハム・ゴーランとヨーラム・グローバス、カロルコ・ピクチャーズのレバノン人出身マリオ・カサールとハンガリー出身のアンドリュー・G・ヴァイナをはじめとする映画会社トップから資金集めに奔走するプロデューサー、監督に至るまで多岐に及びます。アフマンがカンヌをはじめとする国際映画祭に顔を出すと、面会を希望する映画人が跡を絶たなかったといいます。1987年に開催された第59回アカデミー授賞式では、アフマンが資金提供を手がけた「追想のかなた」、「眺めのいい部屋」、「プラトーン」が8つのアカデミー賞を受賞するに至ります。「プラトーン」のプロデューサーであるアーノルド・コペルソンは授賞式で「本当に必要とする時にフィリピンのジャングルに資金を用意してくれた」と、普段は表に出ることのない銀行家フランズへの感謝の意を表しました。本作は、かくしてアメリカ映画界を陰で支えたアフマンの波乱万丈の軌跡を、自伝の代わりに娘のローゼマインが撮影した、死期の近づく父が思い出を語る映像や、ケビン・コスナー、オリバー・ストーン、ポール・バーホーベンら数多くの映画人の証言により、描き出しています。【レビュー・解説】80年代のインディーズ・ブームの原動力となった銀行家フランズ・アフマンの軌跡を追った本作は、インディーズ映画の資金調達の仕組みを解き明かす稀有な作品であるだけではなく、客観的でしっかりとした構成をとりながらも亡き父の自伝代わりにと監督・脚本を務めた愛娘と父の絆を感じさせる優れたドキュメンタリーです。アメリカの映画は、ウォルト・ディズニー・カンパニー系ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント系20世紀フォックス系パラマウント映画(バイアコム傘下)系ユニバーサル・スタジオ (NBCユニバーサル傘下)系ワーナー・ブラザース・エンターテイメント (WB、タイム・ワーナー傘下)系のメジャー系制作会社による作品と、独立資本やアートハウス系製作会社の作品、即ちインディーズ映画に大別されます。メジャー系制作会社は大規模予算を組みやすい反面、意思決定プロセスが複雑で、作品の内容が制作者の思い通りにならない場合があります。一方、インディーズ映画は一般に小規模予算ですが、映画制作者の意図を忠実に反映する卓越した内容やスタイルの作品が少なくありません。しかし、小規模予算と言っても映画制作には莫大な費用がかかります。インディーズ映画がどうように制作費をかき集めるのか、日頃から疑問に思っていましたが、本作は80年代に「プリセールス・システム」を開発し未曾有のインディーズ・ブームの原動力となった銀行家フランズ・アフマンの伝記を通して資金調達の仕組みを解き明かしてくれる、稀有なドキュメンタリーです。 フランズ・アフマンと幼い頃のローゼマイン本作のもうひとつの魅力は、アフマンの愛娘ローゼマインが監督・脚本を務めていることです。晩年、膵臓がんに侵されたフランズとともに過ごす為、ローゼマインはアメリカから父のいるオランダに戻ります。フランズは自伝を書くことを希望していましたが、もはや時間がないことを見てとったローゼマインは父に向けてカメラを回し、父は娘の向けるカメラに向かって思い出を率直に語っていきます。父亡き後、ローゼマインはゆかりの映画人を訪ね、父の軌跡を補強して制作したのが本作です。身内による制作となると手前味噌になりがちですが、本作はフランズが巻き込まれた収賄疑惑も扱うなど、ドキュメンタリーとしての客観性を保つ一方、エンディングのポール・バーホーベン監督のインタビューでは、カメラを挟んでのローゼマインとの感動的なやりとりが、この優れた作品が父と強い絆を持つ娘の手によるものであることを強く印象づけます。 80年代のインディーズ映画や、映画業界の裏舞台に興味のある方にお勧めのドキュメンタリーです。フランズ・アフマン(プリセールス・システムを開発したオランダの銀行家)アンニャ・アフマン(フランズの妻)ローゼマイン・アフマン(フランズの娘、本作の監督)ケビン・コスナー(映画俳優)オリバー・ストーン(映画監督)「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」のDVD(楽天市場)【関連作品】銀行家フランズ・アフマンが手がけた主な作品のDVD(楽天市場) 「コンドル」(1975年) 「スーパーマンII」 (1980年) 「ターミネーター」(1984年) 「眺めのいい部屋」(1985年) 「勝利への旅立ち」(1986年) 「プラトーン」(1986年) 「ロンリー・ブラッド」(1986年) 「ロンリー・ハート」(1986年) 「ドライビング Miss デイジー」(1989年) 「恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ」(1989年) 「恋人たちの予感」(1989年) 「ダンス・ウィズ・ウルブズ」(1990年) 「トータル・リコール」(1990年) 「ターミネーター2」(1991年)「L.A.ストーリー/恋が降る街」(1991年)
2017年08月29日
コメント(0)
![]()
常時電源オンで使っているタワー型のデスクトップパソコンがとうとう、起動しなくなった。電源投入するも、起動ディスクを読み込めない様子で、ビープ音がせず、ディスプレイにも何も表示されない。これまでも、電源ランプは点灯、ファンも回るが、ディスプレイに何も表示されず、キーボードやマウスにも反応しないという不具合があり、電源を抜いて、バックアップ用の電池をはずし、電源ボタンを数回押して、放電させる。新しい電池に入れ替えて電源を入れ、BIOS設定画面を表示、デフォルトを読み込む。起動ディスクをチェックして修復。メモリ診断テストを実行して、メモリに異常がないことを確認。 電源管理の省電力設定を解除。することにより、だましだまし使っていたのだが、セーフモードで起動ディスクを修復できない。ハードディスクそのものは生きているので、データの一部を増設済のHDDに移動した。使用頻度の低いパソコンなので急がないが、近くのPC DEPOTで無料診断してくれるということで、別途、予約して持ち込む予定。サーポート終了のVISTAマシーンなので、マザーボード+DSP版ウィンドウズへの交換を考えたいところ。この場合、アプリ用の既設ボードとアプリが互換かどうかがひとつのポイント費用がかさむようなら既設ボードとアプリを諦め、安価なPCを購入、既存データを吸い上げ活用するメインの Mac も十年選手で、買い替え時期が迫っているだけに、悩ましいところ・・・壊れたパソコンは今は亡き、emachines の J4509。 類似機種:emachines J3206(楽天市場)関連記事スリープから復帰できなくなったパソコンのトラシュー
2017年08月23日
コメント(0)
![]()
「その名にちなんで」(原題:The Namesake)は、インド・アメリカ合作のドラマ映画です。新人作家としてきわめて異例なピューリッツァー賞を受賞しているインド系米国人女性作家ジュンパ・ラヒリがインドから米国に移民した家族を描いた2003年発表の同名長編小説が原作に、インド出身のミーラー・ナーイル監督、イルファーン・カーン、タッブー、カル・ペンら出演で、ロシア人作家のニコライ・ゴーゴリの名前から、ゴーゴリと名づけられたインド系二世米国人として育つ息子の名前をめぐる物語を軸とし、インドから移民した両親の伝統的価値観と、米国ニューヨークに生まれ育った子どもたちのアイデンティティとの葛藤を描き、親子の愛情、家族の絆、そのすれ違いや関係修復への努力を描いています。 「その名にちなんで」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ミーラー・ナーイル脚本:ソーニー・ターラープルワーラー原作:ジュンパ・ラヒリ「その名にちなんで」出演:イルファーン・カーン(アショケ・ガングーリ、一家の父、列車事故で九死に一生を得る) タッブー(アシマ・ガングーリ、アメリカに留学中のアショケに嫁ぎ、一男一女を生む) カル・ペン(ゴーゴリ・ガングーリ、アショケとアシマの長男) ジャシンダ・バレット(マクシーン、ゴーゴリの恋人、白人女性) ズレイカ・ロビンソン(モウシュミ、ベンガル女性、アシマが紹介しゴーゴリと結婚) サヒラ・ナイール(ソニア、ガングーリ家の長女、白人男性と結婚する) ほか【あらすじ】1974年。コル力タの学生アショケガングリー(イルファーン・カーン)は、ジャムシェドブルに住む祖父を訪ねるため、列車で旅に出ます。道中、親しくなった老人から、「海外に出て経験を積め」と進められますが、その直後に列車が転覆、夜の闇の中に放り出されたアショケは、手に握りしめていた本の切れ端が目印となり、奇跡的に救出されます。彼の命を救った本のタイトルーーそれは、ニコライ・ゴーゴリの「外套」でした。3年後の1977年、老人のアドバイスに従ってアメリカの大学で工学を学んでいたアショケは、コルカタで親のすすめる相手と見合いをします。相手のアシマ(タブー)は、料理と英語が得意な美しい娘だった。「家族や友達と離れ、アメリ力でひとりになっても大丈夫か?」と問うアショケの父に、「ひとりじゃなく、ふたりでしょう?」とアシマは答えます。数週間後、家族や親戚に祝福され、盛大な結婚式をあげたふたりは、アメリカへと旅立ちます。アシマにとってニューョークでの新生活は、お湯の沸かし方から買い物の仕方まで、日常のすべてを学ばなくてはいけない日々でした。夫が優しい先生となり、アシマもアメリカでの生活に慣れ、やがて二人に男の子が生まれます。二人は正式な名前が決まるまで子供を愛称で呼ぶ故郷の慣習に従うつもりでしたが、産院から出生証明書に名前が必要だとせかされ、とりあえず息子をゴーゴリと名付けます。アショケにとって、子供の誕生は列車事故を生き延びたことに続く2番目の奇跡でした。アシマは頼る人のいない異国での子供育てに不安を感じ、インドに帰りたいと願いますが、チャンスの国アメリ力で育つことが子供の為になると言うアショケに従います。やがて娘のソニアが誕生、一家は郊外に一軒家を購入して移り住みます。ゴーゴリが小学校にあがるころ、ガングリー夫妻は息子の正式な名前をニキルに決めますが、ニキルよりもゴーゴリのほうがいいと本人が主張、「この国では子供が決める」とアショケは笑い、息子のわがままを許します。そんなゴーゴリ(カル・ペン)も、高校生になる頃には、自分の名前を嫌うようになります。「よりによって、超変人の口シア人作家と同じ名前だなんて!」名前に不満いっぱいの彼は、高校の卒業祝いに、父から「ゴーゴリ短編集」を贈られても、嬉しくありませんでした。その年、家族と出かけたインドでタージ・マハルを見学したゴーゴリは、大学で建築を専攻します。ついでに名前をニキルに改めようと決めますが、アショケは「アメリカ流に好きにすればいい」と言っただけでした。数年後、ゴーゴリは建築家として自立。マンハッタンのアパートに住み、恋人のマクシーン(ジャシンダ・バレット)と自由に愛しあう日々を謳歌します。ある日、オハイオの大学で教鞭をとることになったアショケの単身赴任が決まり、ゴーゴリはマクシーンを連れて両親を訪ねますが、両親は生活習慣の異なるマクシーンに戸惑います。ゴーゴリをドライブに誘い出した父は、ゴーゴリの名前の由来になった列車事故のことを話します。「僕を思うたびに事故を思い出す?」という息子の問いに、「むしろそれ以降のすべてを思い出す、その後の毎日が天の恵みだ」と答えます。しかし、それはゴーゴリと父との最後の会話になってしまいます・・・。【レビュー・解説】移民一世と二世、それぞれにとってのインドとアメリカを繊細な内面描写で描く本作は、肯定的で成熟した印象を与える爽やかなドラマ映画です。見合い結婚したインド人の男女がアメリカで新婚生活を送り、子供が二人生まれて、子供が大きくなり巣立っていくまで、さして大きな事件もないままに淡々と描いた作品です。原作者も監督も女性で、日常的なシーンやさりげない言葉が移民の内面や心情を反映する、穏やかで美しい作品です。アショケ:気分はどうだい。回復するのに数日かかる。地球を半周して飛んできたんだ。行って休みなさい。紅茶を持っていくよ。行って。アメリカ流だよ。さあ、行って、行って、休んで。アシマ:行きたくない。アショケ:わかった。じゃ、座って、座って。ガスは24時間、来ている。見て、これをひねるんだ、ガスはね。お湯と水もだ。蛇口がふたつある。間違えちゃ駄目だよ、火傷するから。蛇口の水はそのまま飲める、沸かさなくていいんだ。通りをちょっと行った所にコインランドリーがある。家に戻ったら案内する。落ち着いたら、職場に連れて行って、教授を紹介するよ。信じられないよ、この国じゃ、教授より行商人のほうがましな格好をしている。アシマ:国に帰りたい。ここで一人でゴーゴリを育てたくない。アショケ:ゴーゴリの将来を考えてごらん。ここは機会の国だよ、アシマ。ゴーゴリは何でもなりたいものになれる、勉強したいことを勉強できる。選択肢は無限だ。ゴーゴリにそれをあげたいと思わないか?アショケ:この国では、子供たちが決める。ミラおばさん:イェール大学にはあなたをつかまえようとたくさんの女の子が待ちかめているわ。大いに楽しみなさい。でも・・・ミラおばさん、ゴーゴリ:(声を合わせて)結婚はベンガル人と!(笑)アシマ:アメリカ人みたいに、「愛している」と言って欲しい?ゴーゴリ:君に知っておいて欲しいことがある。キスも手も握るのも駄目。君の両親と違う。僕は両親が触れるの見たことがない。異国で生活することは楽ではありませんが、暗黒大陸から輝く新世界にやって来たという悲壮感、勇壮感はありません。変った名前をからかわれるシーンはありますが、差別で惨めな思いをするシーンもなければ、一攫千金を狙うギラギラ感もありません。インドを否定してアメリカを肯定する、或いはその逆もありません。程度の違いや葛藤こそあれ、一世にとっても二世にとっても二つの国はどちらも大切なものという肯定的なスタンスが本作の特長です。30年にわたる移民の人生模様を優しく俯瞰する原作者、監督の成熟した視線が感じられます。インドのタジ・マハールを訪れたガングーリ一家原作者のジュンパ・ラヒリ(1967年〜)は、デビュー作の短編集で新人としては異例のピューリッツァー賞を受賞した、才能あふれるインド系アメリカ人の小説家です。彼女はベンガル系インド人移民の娘としてロンドンンに生まれ、3歳の時に家族とともにアメリカに移住しました。彼女は自身をアメリカ人と考えており、「アメリカで生まれたわけではありませんが、生まれたも同然」と語っています。本作でも一家がカルカッタを訪問するシーンがありますが、ラヒリの母親は子供たちにベンガル人としての遺産を知って育つことを望み、一家はカルカッタの親族をしばしば訪れたと言います。彼女の幼稚園の先生は、ニランジャナ・スデシュナという彼女の出生名よりも発音しやすいという理由で、彼女をジュンパと呼びました。彼女は、「自分の名前にはいつも困惑させられます。自分自身であることが誰かに苦痛を感じさせているように感じるのです。」と、回想しています。ラヒリが自身のアイデンティティに感じている愛憎相反する両面価値は、風変わりな名前をめぐる本作の着想に繋がっています。もともとのひらめきは、変った名前に悩まされる少年についての小説を書くことでした。この本を書きながら、彼が自分の名前を受けいることは、とても重要で、避けられないことであることに気がつきました。親に与えられたものは捨てることが出来ないのです。この本は名前そのものに関するものではありません。むしろ、考え方、価値観、遺伝子など、誰もが親から受け継ぐ、様々なものを描いています。如何に自分の人生を作り上げ、自分が欲しいものを手に入れようとも、祖先から逃れることは難しいのです。(ジュンパ・ラヒリ)https://bookpage.com/interviews/8215-jhumpa-lahiri ラヒリの著作の特徴は、平易な言葉遣いと登場人物にあります。彼女の著作の登場人物たちはしばしばインド系アメリカ移民の第1世代で、異国の地で家族を持とうとする苦闘や、子供たちをインドの文化・伝統になじませ、成長後も、両親と子供たち、孫たちがひとつ屋根の下に暮らすインド流の大家族とのつながりを保つよう、子供たちを近くにおこうとする努力でした。しかし、異国の地に築かれた世界に育ち、アメリカ文化に同化した移民2世や3世を描くようになって、彼女の小説は個人に焦点を移し、出自にこだわる親たちから離れていきます。本作はちょうどその端境期で、子供たちへのプレッシャーは強くないものの故郷のインドを懐かしむ母親と、生まれ育ったアメリカの世界に巣立っていく子供たちの両方が描かれています(ラヒリ自身も、ギリシア・ガテマラ系アメリカ人のジャーナリストと結婚、二人の子供がいます)。ミーラー・ナーイル監督は、インドからアメリカに戻る機中で原作小説を読みました。ちょうど、実母のように慕っていた義母を突然亡くすという悲しい経験をした直後で、深く沈み込んでいた彼女は原作がより心に響き、同じように理解してくれる人に出会えたと安らぎを感じたと言います。親の遺骨は故郷に返すべきとジュンパが考えていることに衝撃を受けました。私にとってそれが本作の核心であり、この本は私の慰めとなりました。私は、次作を探していた訳ではありませんでした。二作を制作することになっていましたが、この作品は私が語り、私が作ることができる、誰もができないように作ることができる作品で、それは私が自分の人生をどう行きていくのか理解する方法でもあったのです。それに、コルカタ(カルカッタ)から始まってニューヨークにたどり着く女性の物語は、私が歩んできた道とほぼ同じでした。これは、他国で暮らすために故郷を離れ、古いものと新しいものを組み合わせることの本当の意味を学ぶ、私たちのような人間の深い物語だと思いました。(ミーラー・ナーイル監督)https://bookpage.com/interviews/8215-jhumpa-lahirihttp://eiga.com/movie/53125/interview/ 本作は、若者が文化や名前、アイデンティティーに揺れ、自分自身を発見していく様も描いていますが、ナーイル監督にとって最もパーソナルな作品だと言います。私にとってこの物語は、見合い結婚をしてから恋に落ちたアショケとアシマのラブ・ストーリーです。現代的な愛ではなく、手で触れられない、周囲には分からない種類の、深い情熱です。上品な覆いの中に、現代の若者のような情熱がほとばしり、ユーモアと気まぐれが詰まった愛です。私たちの親の世代のその種のラブストーリーなのです。(ミーラー・ナーイル監督)http://eiga.com/movie/53125/interview/本作に故国を捨てるメランコリーや喪失によるカタルシスはありません。本作のスタンスはポジティブで、誰もインドを捨てないし、失わないのです。一世も二世も、それぞれにインドの文化とアメリカの文化の中で行きていきます。それは舞台となる2つの都市、ニューヨークとコルカタ(カルカッタ)の描写にも反映されています。面白いのは、コルカタとニューヨークのエネルギーがとても似ていることです。橋が多く、文化の懐が深く、エネルギーに満ちていることなど、2つの都市は多くの点で共通しています。この2つの都市をフィルムに収めたいと思いました。移民は、気持ちの上では同じ場所に留まっていると感じているけれど、その実、足場は常に2カ所、3カ所にあるのだと最初から分かっていたし、視覚に訴えるものになると思ったからです。この映画を観て、世界を旅し、心を高揚させ、映画の最後に自分の人生における人間のつながりが最高であることを感じてもらいたいと思います。それは望みすぎかもしれませんが、私はそんな思いでこの映画を作りました。人生は一度しかなく、時々立ち止まって人生が投げかける問題を考えなければ、意味のない、ただ障害を乗り越えるだけの人生になってしまうからです。ですから、登場人物が経験したこと、実際の人生の一部分、特定の人々でなく誰にでも起こりうることを、観客が共有できる映画を作りたいのです。(ミーラー・ナーイル監督)http://eiga.com/movie/53125/interview/ <ネタバレ>父アショケ亡き後、ゴーゴリとマクシーンはお互いの喪失感を理解できないまま別れます。母アシマが知り合いのベンガル女性を紹介し、ゴーゴリはデートを重ねて結婚します。妹のソニアも結婚が決まり、肩の荷が下りたアシマを家を売ってインドに帰る決意をします。しかし、ゴーゴリが結婚したベンガル女性に別の男がいることがわかり、ショックを受けたアシマはアメリカに残ると言い出します。ゴーゴリは今まで感じたことがない自由を感じているとアシマを説得、彼女をインドに帰します。かつて父から贈られたゴーゴリの短編集を列車の中で読むゴーゴリに、「枕と毛布を持って旅に出ろ、世界を見ろ、絶対後悔しない、ゴーゴリ」という亡き父の声が聞こえてきます。インドでシタールを手に民族音楽を謡うアシマの声では幕を閉じます。<ネタバレ終わり>イルファーン・カーン(アショケ・ガングーリ、父、列車事故で九死に一生を得る)イルファーン・カーン(1967年〜)は、インドの俳優。イスラムの家系に生まれる。1980年代後半からテレビドラマの脇役など俳優としてのキャリアを積み、90年代からは映画にも進出するが、しばらくは注目されなかった。2000年代に入ってその演技力が評価され始め、本作以降、国外での評価も高まり、アメリカやイギリスの映画にも出演している。タッブー(アシマ・ガングーリ、アメリカに住むアショケに嫁ぎ一男一女を生み育てる)タッブー(1970年〜)は、インドの女優。おば、姉も女優。15歳で映画デビュー、インドで多くの賞を受賞し、2007年にはハリウッド映画の本作に出演。「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2012年)にも出演している。カル・ペン (1977年〜 )は、ニュージャージー出身のアメリカの俳優。インド系アメリカ人。カル・ペン (1977年〜 )は、ニュージャージー出身のアメリカの俳優。インド系アメリカ人。【サウンドトラック】 「その名にちなんで」オリジナル・サウンドトラック(楽天市場)インド風あり、叙情的な曲あり、コミカルな曲あり、ラップありと、変化に富んだ、センスの光るサウンドトラックです。1 Shoes to America (OST) 2 The Namesake - Opening Titles (OST) 3 First Day in New York (OST) 4 Jhiri Jhiri Choyetali 5 Flight IC408 6 Airport Grief (OST) 7 Mo's Affair (OST) 8 Farewell Ashoke (OST) 9 Ashima Becomes a Widow (OST) 10 Aftermath (OST) 11 Ye Mera Divanapan Hai12 Baul Song 13 Taj Mahal (OST) 14 The Chosen One 15 Max Arrives (OST) 16 Boatman's Song 17 Postales 18 Amra Reformed Hindus 19 The Namesake Reprise (OST) 20 The Same Song 21 Falling (OST) 【撮影地(グーグルマップ)】アシマがゴーゴリの出産の為に入院する病院撮影当時の建物は取り壊され、病院は他の場所に移転している退院時、アシマがゴーゴリを抱いて三人で写真を撮った場所一家で訪れるインドのタジ・マハールゴーゴリがベンガル人の妻と歩く道 「その名にちなんで」のDVD(楽天市場)【関連作品】「その名にちなんで」の原作本(Amazon) ジュンパ・ラヒリ著「その名にちなんで」(楽天市場)ミーラー・ナーイル監督作品のDVD(楽天市場) 「サラーム・ボンベイ! 」(1988年)・・・北米版BD、日本語なし 「モンスーン・ウェディング」(2001年) 「Queen of Katwe」(2016年、日本未公開)イルファーン・カーン x タッブー共演作品のDVD(楽天市場) 「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」(2012年) 「Guilty (Talvar)」(2015年)・・・輸入版、英語字幕イルファーン・カーン出演作品のDVD(楽天市場) 「The Warrior」(2001年、日本未公開)・・・輸入版、 「スラムドッグ$ミリオネア」(2008年) 「めぐり逢わせのお弁当」(2013年) 「シッダルタ」(2013年)タッブー出演作品のDVD(楽天市場) 「Fanaa」(2006年、日本未公開) 「Haider」(2014年、日本未公開)
2017年08月22日
コメント(0)
![]()
「幸せなひとりぼっち」(原題:En man som heter Ove、英題:A Man Called Ove)は、2015年公開のスウェーデンのコメディ&ドラマ映画です。フレドリック・バックマンの同名小説を原作に、ハンネス・ホルム監督・脚本、ロルフ・ラスゴード、イーダ・エングボルら出演で、愛する妻に先立たれた悲しみに暮れる偏屈で頑固な老人が、近所に越してきた隣人一家の母親が持ち込んでくる問題にうんざりしつつも、次第に心を開くようになり、やがて妻との思い出を隣人に語り始める様を描いています。第89回アカデミー賞で、外国語映画賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされた作品です。 「幸せなひとりぼっち」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ハンネス・ホルム 脚本:ハンネス・ホルム原作:フレドリック・バックマン「幸せなひとりぼっち」出演:ロルフ・ラスゴード(オーヴェ、孤独で偏屈で頑固な老人) イーダ・エングヴォル(ソーニャ、オーヴェの亡き妻) バハー・パール(パルヴァネ、オーヴェの向かいの家に越して来た移民一家の母) フィリップ・バーグ(若い頃のオーヴェ) カタリナ・ラッソン(アニタ、オーヴェの古くからの隣人の妻) ほか【あらすじ】愛する妻ソーニャ(イーダ・エングヴォル)を亡くした頑固で偏屈な老人のオーヴェ(ロルフ・ラスゴード)は、かつて町内の自治会長を務めたこともある、規律に厳しい人間とです。年齢を重ねてからは気難しさに拍車がかかり、いつしか鼻つまみ者の厄介な老人と化しています。地域の秩序を守る為、共同住宅の監視役を買って出ていますが、数年前に自治会選挙で落選、誰からも望まれていない見回りを日課とする毎日を送っています。オーヴェは43年間、鉄道局の職員としての仕事を全うしてきましたが、突如、解雇されてしまいます。亡き妻の思い出が詰まった自宅で孤独に耐え切れなくなった彼は、天井にロープをかけ首つり自殺を図りますが、その時、向かいの家に引っ越してきたパルヴァネ(バハー・パール)の一家の騒がしい声が耳に飛び込んできます。一家の車がオーヴェの家の郵便受けにぶつかり、自殺どころではなくなったオーヴェは外へ飛び出すと、烈火のごとく怒り、自ら車を駐車場に停め、文句を言いながら家に戻ります。翌日、迷惑をかけたと思ったパルヴァネが、お詫びにサフラン・ライスを届けに来ます。生き方も考え方も違うオーヴェとパルヴァネですが、この美味しい手料理をきっかけに、思いがけない友情が芽生えていきます。頑固な態度は相変わらずですが、近隣との暖かい交流にオーヴェの心は溶きほぐされていきます。やがて、オーヴェは妻ソーニャとの出会い、妻と自分の人生を一変させた出来事について、パルヴァネに語り始めます・・・。【レビュー・解説】偏屈で頑固な時代錯誤的老人のラブ・ストーリーを核に、近隣の人々との関わりを絶妙なシリアス vs ユーモラスのバランスで描き、幅広い層に支持されたスウェーデンのコメディ&ドラマ映画です。地域のコミュニティや隣人とのつきあいの中で、偏屈で頑固な時代錯誤的老人をユーモラスに描く話はよくありますが、何を隠そう、本作はそんな老人が愛する妻と一生、添い遂げるというラブ・ストーリーが核になっており、忘れていた大事なことを思い出させてくれます。さりげなく織り込まれた移民、高齢者介護、性的少数派といった社会問題に物語の深みを感じられ、シリアスになりすぎず、悪ふざけにもならないドラマとコメディのバランスが絶妙で、一種独特のリアリティを醸し出しています。老人が主人公である為、40代〜50代とその上の世代が主な観客とハンネス・ホルム監督は予想していましたが、蓋を開けてみると、主人公が若い時代の妻とのシンプルで美しいラブストリーが若い世代にも受け入れられ、幅広い層に支持されたといいます。少子化、非婚化、離婚、不倫・・・と、人間不信、恋愛不信、結婚不信に陥りがちな昨今です。私自身もこうした風潮を、文明が高度化すれば、種の保存よりも自己実現が優先し、少子化は必然となる人間は生物学的には乱婚であり、一生、一人の相手に縛られるのは不自然であるなどと解釈していましたが、この映画のシンプルなラブ・ストーリーにガンと頭を殴られたような気がしました。地域のコミュニティや隣人とのつきあいの素晴らしさも感じさせてくれる作品で、これらは紛れもなく昔はあったが、今は廃れてしまったことです。ノスタルジックになったり、センチメンタルになったりしないように、本作は注意深く描かれていますが、我々がこうした時代に戻るのは恐らく難しいでしょう。しかし、現代人の唯物論的個人主義だけでは片手落ちで、何かしら自分以外に信ずるもの持つこと、夢の持てる社会を実現することは、いつの時代も大切なんだろうと気づかせてくれる作品です。 「ウォルター少年と、夏の休日」(2003年)、「グラン・トリノ」(2008年)、「ヴィンセントが教えてくれたこと」(2014年)など、偏屈で頑固な老人が登場する映画は少なくありません。彼らは決まって、若い人や子供たちに何かしら伝えたり、教えたり、残したりします。いわば、目に見えない形で命をつないでいるわけですが、これは年老いていく人間にとってひとつの希望かもしれません。ホルム監督は「もしスウェーデンの首相になったら、老人ホームと幼稚園を一緒にして触れ合う機会を増やす」などと言っていますが、本作のエンディングには粋なシーンが登場します。ところで、本作を観る人は主人公が若い頃からのラブ・ストーリーを知ることで親近感を覚えていきますが、周囲に心を開くようになるものの、偏屈で頑固な老人の性格が変わることはありません。先に挙げた映画に登場する老人たちは、若い頃にそれぞれ中東の戦争(フランスの外人部隊)や朝鮮戦争、ベトナム戦争に参加、それが物語のひとつの鍵になっています。これはちょっと面白いと思います。つまり、人はある日、突然、老人になるのではなくて、若い頃から自分の「老人」を(恐らくは無意識のうちに)作り込んでいることになります。スウェーデンは250年以上も戦争をしていない為、本作では戦争ではなく、ラブ・ストーリーが鍵になったのかもしれませんが、戦争やラブ・ストーリーに限らず、その時代、その時代を一生懸命に生きることが、将来の素敵な老人を作り上げるのかもしれませんね。ホルム監督はコメディを得意とするスウェーデンの映画監督・脚本家で、200万部も売れた原作の映画化を持ち込まれた際、人々の間にイメージができてしまったベストセラー本の映画化は難しいと一旦は断りましたが、原作を読んでラブ・ストーリーに心を動かされ、引き受けたと言います。原作に忠実になろうとすると失敗するので、原作を離れて自分の言葉で脚本を書いたそうです。フレドリック・バックマンの原作がコメディで、主演のロルフ・ラスゴードがシリアス系の俳優な為、「コメディにシリアス系の俳優を起用するのか?」と物議を醸したそうですが、コメディ系の監督とシリアス系の俳優が調和し、良い結果をもたらしています。イーダ・エングボルが演じるソーニャは、明るくポジティブで可愛らしく、本作をキュートに締めています。主人公の向かいの家に越して来る移民一家の母を演じるバハー・パールは、実際にイランからの移民です。イランではまだ、地域のコミュニティや隣人とのつきあいが色濃く残っており、監督はそんな彼女といろいろと議論したそうですが、こうしたキャスティングがうまく本作に生かされています。原作にも登場する猫はさして重要でないと、製作会社に削るように言われたとか。ホルム監督はこだわって猫を入れましたが、彼がこだわった理由は何か、考えてみると面白いかと思います(答:猫は、主人公と周囲の関係の変化を予兆する役割を担っているようです)。エンディングも素敵です。<ネタバレ>周囲に心を開くようになったのも束の間、オーヴェは心臓麻痺で亡くなってしまします。これだけだと悲しいのですが、亡くなった彼は思い出の場所で愛する妻に再会します。オーヴェにとってソーニャは人生の全て。物語を通してオーヴェはずっとソーニャに会いたがっているので、最後は会わせてあげたかったんだ。物語をどう終わらせるか、ものすごくディスカッションしたけど、原作とはまた違う結末を用意できたし、素晴らしいラストになったと思うよ。(ハンネス・ホルム監督)主人公が亡くなるのにハッピー・エンド?と感じさせるほど、素晴らしい演出がエンディングに待ち受けています。<ネタバレ終わり>父から初めての愛車を譲り受けて以来、オーヴェの愛車はスウェーデンの名車サーブ Saab 92 のミニカー (楽天市場)ロルフ・ラスゴード(オーヴェ、孤独で偏屈で頑固な老人)ロルフ・ラスゴード(1955年〜)は、スウェーデンの俳優。マルメ演劇アカデミーにて演技を学んだ後、劇団に参加、シェイクスピア劇に出演して評価される。その後、自身で劇団を設立、舞台俳優としてキャリアを重ねる。1990年代初頭に映画デビュー、第72回アカデミー外国語映画賞にノミネートされた「太陽の誘い」(1998年)などに出演。スザネ・ビア監督の「アフター・ウェディング」(2006年)にも出演している。イーダ・エングヴォル(ソーニャ、オーヴェの亡き妻)イーダ・エングヴォル(1985年〜)はスウェーデンの女優。2009年に女優としてデビュー、テレビや舞台で活躍するとともに、15本以上の映画に出演する実力派。バハー・パール(パルヴァネ、オーヴェの向かいの家に越して来た移民一家の母親)バハー・パール(1979年〜)は、イラン出身のスウェーデンの女優。10歳の時にスウェーデンに移住、28歳で女優として本格的にデビュー、舞台と映画で活躍している。近年では、映画監督としても活躍、テレビ番組の脚本も書いている。フィリップ・バーグ(若い頃のオーべ)フィリップ・バーグ(1986年〜)は、スウェーデンの俳優。【撮影地(グーグルマップ)】オーヴェの住む住宅サーブの工場があった街の文化住宅で撮影、色々なタイプのサー ブを博物館から借りることができた。監督自身もかつてこうした住宅に住んでいたという、1960年代に政府がスタートした「100万戸プログラム」で作られた集合住宅。政府の政策には近所づきあいを促す狙いもあり、近隣でお互いに招き合って食事をするなどの近所づきあいが盛んに行われたが、今では廃れてしまったという。そこに移民のパルヴァネが越してきて、コミュニティにかつての近所づきあいが復活する。オーヴェの住宅の駐車場オーヴェが働いていた鉄道局 「幸せなひとりぼっち」のDVD(楽天市場)【関連作品】幸せなひとりぼっちの原作本(楽天市場) フレドリック・バックマン「幸せなひとりぼっち」ロルフ・ラスゴード出演作品のDVD(楽天市場) 「アフター・ウェディング」(2006年)老人と若い世代の関わりを描いた映画のDVD(楽天市場) 「アバウト・シュミット」(2002年)「ウォルター少年と、夏の休日」(2003年) 「グラン・トリノ」(2008年) 「カールじいさんの空飛ぶ家」(2009年) 「ヴィンセントが教えてくれたこと」(2014年)
2017年08月20日
コメント(0)
![]()
「パニック・フライト」(原題:Red Eye)は、2005年公開のアメリカの心理サスペンス&アクション映画です。ウェス・クレイヴン監督、レイチェル・マクアダムス、キリアン・マーフィーら出演で、ダラス発マイアミ行きの深夜フライトでテロリストによる政府高官暗殺計画に巻き込まれる女性ホテル・マネージャーの恐怖と闘いを描いています。 「パニック・フライト」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ウェス・クレイヴン脚本:カール・エルスワース原案:カール・エルスワース/ダン・フース出演:レイチェル・マクアダムス(リサ・ライザート、マイアミの高級ホテルのマネージャー) キリアン・マーフィー(ジャクソン・リップナー、リサを政府高官暗殺計画に巻き込む) ブライアン・コックス(ジョー・ライザート、リサの父親) ジェイマ・メイズ(シンシア、ホテル従業員、リサの部下) ジャック・スカリア(チャールズ・キーフ、政府高官) コルビー・ドナルドソン(キーフの警護員) ローラ・ジョンソン(ブロンドの女性) ロバート・パイン(ボブ・テイラー) ベス・トゥセイント(リディア・キーフ、チャールズ・キーフの妻) アンジェラ・ペイトン(ダラスの空港でリサと話す女性) ほか【あらすじ】マイアミの豪華ホテルでマネージャーとして働くリサ(レイチェル・レイチェル・マクアダムス)は、郷里テキサスで祖母の葬式に出席した後、フォートワース空港でマイアミに行きの深夜フライトにチェックインします。悪天候により出発時間が遅れた深夜便に搭乗したリサは、チェックイン時に知り合ったジャクソン・リップナー(キリアン・マーフィー)と隣同士になります。リップナーは実は暗殺グループの一員で、離陸後、リサの父親の命と引き換えに、標的の政府高官一家が泊まる予定の部屋を変更するようリサを脅迫します。リサは抵抗しますがうまくいかず、ついに部下のシンシアに高官の部屋の変更を指示します。ホテルに到着した高官一家は変更された部屋に通されます。沖合では釣り船に偽装した暗殺グループが待機しています。夜が明け、深夜フライトはマイアミ空港に着陸、リサはその直後に予め他の乗客から盗んでいたボールペンでリップナーの喉を刺します。リップナーの携帯電話を奪い、開いたばかりの飛行機の扉をすり抜けたリサは空港ビルへ逃げ出し、喉を刺され声の出なくなったリップナーがそれを追いかけます・・・。【レビュー・解説】インディーズの心理描写とハリウッドのアクションの融合を狙ったという脚本、複雑なキャラクターを熱演する二人の成長株の主演俳優、閉空間の恐怖のタイトな演出が光るサイコスリラー&アクション映画です。インディーズの心理描写とハリウッドのアクションの融合を狙ったという脚本は、およそ半分が航空機の中で狭いスペースに座った主役二人の会話で構成され、閉空間の中での恐怖と人物描写に優れています。前作を取り終え、一年ほどゆっくり過ごすつもりだったウェス・クレイヴン監督は、脚本の人物描写とスリルに惹かれ映画化を決断、「エルム街の悪夢」や「スクリーム」シリーズで得た称号「マスター・オブ・ホラー」を返上すべく、サイコスリラーに挑戦することにしたといいます。主演のレイチェル・マクアダムス、キリアン・マーフィーも脚本に惚れ込み、マーフィーに至っては結婚式の二日前にイギリスからアメリカに飛んでクレイヴン監督に会い、出演を熱望したといいます。カール・エルスワースは本作が初めて脚本ですが、共同脚本家がつくことなく一人で担当、これはハリウッドでは異例のことで、いつクビになるかとビクビクしていたと言いますが、無事、最後まで一人でやり通しています。マクアダムスも、マーフィーも私の好きな俳優ですが、本作はほとんどが二人の絡みで構成され、二人の魅力をフルに堪能できます。マクアダムスは、2004年公開の「ミーン・ガールズ」、「きみに読む物語」で大ブレーク、ハリウッドから出演依頼が殺到しますが、彼女は「自身の声を聞く」為に2006年〜2007年の間、休業します。2008年以降、活動を再開しますが、出演作を慎重に選びながら、マイペースをキープ、パフォーマンスをしっかりとコントロールしている印象です。本作は彼女の休業直前の作品で、1日12時間の機内のシーンの撮影だけでも1ヶ月半かかったというにもかかわらず、彼女は最初から最後まで出ずっぱりです。「ミーン・ガールズ」とも「きみに読む物語」とも異なる役柄にどっぷりと浸っている印象で、彼女のファンにはたまらない作品ではないかと思います。レイチェル・マクアダムス(リサ・ライザート、マイアミの高級ホテルのマネージャー)レイチェル・マクアダムス (1978年〜)は、カナダの女優。12歳から演技を学び、1998年に映画デビュー、2004年に「ミーン・ガールズ」、「きみに読む物語」でブレイクする。「スポットライト 世紀のスクープ」(2015年)で、アカデミー助演女優賞にノミネートされている。どういうわけかタイムトラベルものに縁が深く、「きみがぼくを見つけた日」(2009年)、「ミッドナイト・イン・パリ」(2011年)、「アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜」(2013年)、「ドクター・ストレンジ」(2016年)と、タイムトラベラーの恋人、婚約者、妻、元恋人役を演じている。本作出演に先駆け、5週間ほどでアメリカ訛をマスターしたというキリアン・マーフィーも素晴らしいです。心理描写の為のアップの撮影が多い中、クレイヴン監督して「彼の目が役を勝ち取った」と言わしめた彼の青く美しい眼をフルに堪能できます。また、搭乗前の優しく紳士的な男から、テロリスト、そしてサイコっぽい男への変化も取ってつけたようなわざとらしい極端さがなく、豊かな表情の中にも連続した一貫性と自然さが感じられます。役名のジャクソン・リップナーは、イギリスの連続殺人事件「ジャック・ザ・リッパー」(Jack the Ripper:切り裂きジャック)を意識したものです。ジャクソンの愛称はジャクですが、本編の中でジャックと呼ばないでくれというくだりがあります。本作に出演する前、彼はアメリカでは無名でしたが、本作、「ダークナイト」三部作(2005年〜2012年)、「麦の穂をゆらす風」(2006年)で、一気に評価を高め、知名度を上げました。脚本は主役にショーン・ペンとロビン・ライトを想定していたと言いますが、監督が20代半ばの成長著しいこの二人に思い切って変えたのは大成功だったのではないかと思います。キリアン・マーフィー(ジャクソン・リップナー、リサを政府高官暗殺計画に巻き込む)キリアン・マーフィー(1976年〜)は、アイルランド出身の俳優。独特な青い瞳の持ち主として知られ、英語、アイルランド語、フランス語、ゲール語を話す。1996年から地方の劇団に参加、舞台で主役を演じ注目を集める。1990年代後半~2000年代前半にかけてアイルランドやイギリスの映画、舞台などで活動。主役に抜擢されたイギリス映画「28日後…」のヒットとにより国際的に名前が知られるようになり、「コールド・ マウンテン」(2003年)でハリウッド映画に進出。本作、「ダークナイト」三部作(2005年〜2012年)、カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作の「麦の穂をゆらす風」(2006年)で一気に評価を高める。 機内の撮影は、乱気流の揺れを再現する流体装置の上に作られたセットで行われています。およそ半分にも及ぶ機内のシーンが単調にならぬよう、セットはリアルで変化に富んだカメラワークが可能になるように作り込まれています。セット撮影に1ヶ月半もかけ、100人を越えるエキストラも毎日、同じ服を着て同じ席に座ったという密度の濃い演出と、顔や眼のアップを含めた巧みなカット割が連続する緊迫感を実現しています。俳優よりの監督と言われるクレイヴンは、狭いスペースで会話劇を演技する二人の俳優の才能を、こうした演出でフルに引き出しています。また、空港でのチェイス・シーン、ホテルの爆破シーンや、リサの実家での対決シーンなど、アクションの部分もスリリングで見応えがあります。スリリングなアクション・シーンもあるなお、原題の「Red Eye」は、夜間フライトのくだけた言い方で、なかなか寝つけなくて目が赤くなることに由来します。また、リサがジャクソンに脅されて眠るどころではない状況であることを暗示しています。邦題は航空パニック映画を連想させますが、描かれているのリサの内面の恐怖です。ブライアン・コックス(ジョー・ライザート、リサの父親)ブライアン・コックス(1946年〜)は、スコットランド出身のイギリスの俳優。14歳から舞台に立ち、ローレンス・オリヴィエ賞を二度、受賞している。1970年代からテレビドラマ・映画にも出演、「ボクサー」(1997年)、「オールド・ルーキー」(2002年)、「ボーン・アイデンティティー」(2002年)、「アダプテーション」(2002年)、「X-MEN2」(2003年)、「ボーン・スプレマシー」(2004年)、「ゾディアック」(2007年)、「英雄の証明」(2011年)、「猿の惑星: 創世記」(2011年)、「her/世界でひとつの彼女」(2013年)などに出演している。悪役を演じることが多い。2002年に大英帝国勲章を受勲している。ジェイマ・メイズ(シンシア、ホテル従業員、リサの部下)ジェイマ・メイズ (1979年〜)は、バージニア出身のアメリカの女優。2004年にテレビドラマ・デビュー、以後、「HEROES」(2006年〜2010年)、「アグリー・ベティ」(2006年〜2010年)、「glee/グリー」(2009年〜2015年)などのテレビシリーズに出演している。本作では、上司がいなくてナーバスになっているホテル従業員を、コミカルな味を出しながら好演している。【サウンドトラック】 Red Eye - Music From the Motion Picture 輸入版(楽天市場)1. Main Title Sequence 2. Arriving At The Airport 3. A Friendly Gesture 4. Waiting For The Flight 5. Takeoff 6. Changing Focus 7. No Back-Up Plan 8. Things That Go Bump In The Night 9. Bathroom Interlude10. A Stolen Pen 11. Landing 12. The Pen Is Mightier Than The Sword 13. Rocket Fishing 14. Arriving At Home 15. Jack's Back 16. End Credits 17. EXTRAS: Arriving At The Airport, Pt. 1 - Alternate 18. Jet Lag Gestures【撮影地(グーグルマップ)】リサの働くホテル(外観)リサが搭乗する空港設定はダラス・フォートワース国際空港だが、撮影はカナダ・オンタリオ国際空港で行っている。リサが到着する空港(マイアミ国際空港) 「パニック・フライト」のDVD(楽天市場)【関連作品】ウェス・クレイヴン監督作品のDVD(楽天市場)「エルム街の悪夢」(1984年) 「スクリーム」(1996年)「スクリーム2」(1997年) 「パリ、ジュテーム」 (2006)・・・短編オムニバス、「ペール・ラシェーズ墓地」レイチェル・マクアダムス出演作品のDVD(楽天市場) 「ミーン・ガールズ」(2004年) 「消されたヘッドライン」(2009年)「ミッドナイト・イン・パリ」(2011年) 「誰よりも狙われた男」(2014年)「スポットライト 世紀のスクープ」(2015年) 「ドクター・ストレンジ}(2016年)キリアン・マーフィー出演作品のDVD(楽天市場) 「28日後...」(2002年) 「バットマン ビギンズ」(2005年) 「麦の穂をゆらす風」(2006年) 「ダークナイト」(2008年) 「インセプション」(2010年) 「ダークナイト・ライジング」(2012年) 「ダンケルク」(2017年)
2017年08月18日
コメント(0)
![]()
「人魚姫」(原題:美人魚、英語題:The Mermaid)は、2016年公開の中国のSFファンタジー&コメディ映画です。チャウ・シンチー監督、ダン・チャオ、リン・ユンら出演で、美しい自然が残る香港郊外の青羅湾に住む人魚族と、この湾のリゾート開発プロジェクトのトップである若い実業家やそのパートナーとの運命的な関わりを描いています。公開11日後に中国の歴代興行収入の第1位を記録、アジア映画歴代興行収入の記録も塗り替え、世界で1億人以上の観客を動員した作品です。 「人魚姫」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:チャウ・シンチー脚本:チャウ・シンチー/ケルヴィン・リー/ホー・ミョウキ/ツァン・カンチョン ルー・ジェンユー/アイヴィ・コン/フォン・チーチャン/チャン・ヒンカイ出演:ダン・チャオ(リウ・シュエン) リン・ユン(シャンシャン、人魚姫) キティ・チャン(ルオラン) ショウ・ルオ(タコ兄) ツイ・ハーク(リー氏) ジェン・ジーン(ジェン社長) ファン・シュージェン(人魚の長老) クリス・ウー(ロン・ジェンフェイ) ほか【あらすじ】美しい自然が残る香港郊外の青羅湾。若き実業家リウ(ダン・チャオ)は、この美しい自然保護区域を買収。リゾート開発のために海中に設置した超強力ソナーで海洋生物を湾から排除し、埋め立て許可を取り付けます。そんな中、環境破壊のために行き場を失い難破船に逃げこんだ人魚族は、絶滅の危機に瀕しています。幸せな日々を取り戻すため、リーダーのタコ兄(ショウ・ルオ)の指揮のもと、一族はリウ暗殺作戦を決行します。可憐な人魚シャンシャン(リン・ユン)を人間に変装させ、リウへの急接近を試みますが、あえなく失敗してしまいます。しかしリウは、傲慢な女性投資家ルオラン(キティ・チャン)へのあてつけにシャンシャンをデートに誘い、やがて純真なシャンシャンに心癒され、急速に惹かれていきます。カネだけが愛の対象だったはずのリウと、なぜか彼を殺す気になれないシャンシャン。募る思いとは裏腹に、人魚族は欲に駆られた者たちによる激しい武力戦に巻き込まれていきます・・・。【レビュー・解説】現代のおとぎ話とも言えるSFファンタジーに拝金主義の戒めと環境保護へのメッセージを込め、公開11日で中国の歴代興行収入第一位を記録、全世界で1億人以上の観客を動員した、世界に通用するチャイニーズ・コメディです。笑いにはお国柄が出ますが、中国のコメディはアクが強く、見る人を選ぶ印象があります。本作も導入部が中国風ナンセンス・コメディですが、本編は特にこうしたものに理解がなくてもフルに楽しめる、世界に通用するチャイニーズ・コメディになっています。また、中国が抱える大きな社会問題へのメッセージがしっかりと込められており、感心してしまいます。かつてのイメージを覆し世界に通用するインド映画がコンスタントに製作されるようになりましたが、地場に世界最大の市場規模を持つ中国映画にも世界に通用する作品が続くことを期待させる作品です。目覚ましい経済発展を遂げ、日本のGDPを追い越してアメリカに継ぐ第二の経済大国となった中国ですが、GDPに占める不動産投資額の比率は二割を超えると言われています。GDPの1%にも満たない日本の不動産投資額に比べて異常に大きく、不動産投資に依存する中国経済の成長が懸念されています。本作でも自然の残る美しい青羅湾の買収、リゾート開発計画が描かれていますが、さらに中国は約14億人と世界一の人口を抱えながら、排出規制や廃棄物収集などの制度面が追いついておらず、生活ゴミも都市化とライフスタイル変化に伴い質的・量的変化に大きく変化していると言われています。こうした中国の不動産バブルや環境破壊は世界の関心事となっていますが、本作のように、拝金主義への戒めと環境保護へのメッセージが込められた映画が中国人自身によって制作され、内外の観客をこれまでになかったほど動員している状況は感慨深いです。チャウ・シンチーは「少林サッカー」(2001年)、「カンフーハッスル」(2004年)など、コメディを得意とする香港出身の中国の映画監督ですが、本作は中国が抱える大きな社会問題を背景に、まさに時宜を得た作品です。また、人魚姫をモチーフにしたおとぎ話風のSFファンタジーを、彼が得意とするコメディ仕立てで面白可笑しく楽しんでいるうちに、観客は拝金主義の戒めや環境保護へのメッセージを受け取ることになります。結果、本作は公開11日後に中国の歴代興行収入の第1位を記録、アジア映画歴代興行収入の記録も塗り替え、世界で1億人以上の観客を動員するという偉業を成し遂げています。人魚姫は現代都市で起きるおとぎ話で、現実的な面とファンタジー的な面の2つの面がありますが、根本的にはラブストーリーです。僕はおとぎ話が好きで、僕の作品は実はすべておとぎ話です。おとぎ話には“善人は報われる”、正義は勝つという大原則があり、僕はそれを信じているからです。僕は映画を作るときはいつも観客に喜んでもらえるかどうかを気にしています。観客が一番大切です。もし地球上に1滴もきれいな水がなく、一口分のきれいな空気もなかったとしたら、いくらお金があっても何の役にも立たない”と僕は信じています。我々は地球の環境を大切に守っていかなくてはなりません。(チャウ・シンチー監督)https://movie.jorudan.co.jp/news/inter_161222_01/ヒロインのシャンシャンを演じたリン・ユンは、オーディションで12万人の中から抜擢されましたが、12万人という規模感がいかにも中国です。彼女には独特のセンスがあり、またコメディの才能もあって、シンチー監督のヒロイン像と一致したといいます。リウ・シュエンを演じるダン・チャオもコメディのセンスが高く、また、洞察力に優れ、監督とともに演技の為のディスカッションやリサーチを重ねたといいます。予算が7千万ドルと決して多くない為か、あまりリアルでないCGも散見されますが、ナンセンス・コメディ的なテイストも併せ持った本作では、さしてマイナス要素になっていないように見受けられます。演出するときはいつでも困難にぶち当たるものですが、CGは演出意図に基づいて使用しています。どんなCGやセット、ギャグもすべて映画の外装であり、最後に残るのは情の一文字です。深いエモーションがなくて成功している映画を僕は知りません。(チャウ・シンチー監督)https://movie.jorudan.co.jp/news/inter_161222_01/ダン・チャオ(リウ・シュエン)ダン・チャオ(鄧超、1979年〜)は江西省出身の中国俳優。妻は女優の孫儷。「王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件」(2010年)などに出演している。リン・ユン(シャンシャン、人魚姫)リン・ユン(林允、1996年〜) は、浙江省出身の中国の女優。ほとんど演技経験のないまま、オーディションでチャウ・シンチー監督に抜擢され、「人魚姫」に出演する。ど監督の他の作品にも出演している他、2017年公開予定のディズニー制作の初の中国語映画「The Dreaming Man ( 假如王子睡着了)」にも出演する。キティ・チャン(ルオラン)キティ・チャン(張雨綺、1987年8月8日〜)は、山東省出身の中国の女優。中国徳州生まれ。夫はワン・チュアンアン監督。チャウ・シンチー監督に見出され、「ミラクル7号」(2008年)のヒロインに抜擢されてデビュー、本作が9作目。ショウ・ルオ(タコ兄)ショウ・ルオ(羅志祥、1979年〜) は、台湾の歌手、俳優、タレント。歌、ダンス、ドラマ、映画、司会と幅広い活動で中国を代表するマルチアイドル。ファッションブランドも手がける。1996年にユニット「四大天王」の一員としてデビュー、その後、様々な活動を経て2003年にソロデビュー。映画「西遊記〜はじまりのはじまり〜」(2013年)などに出演している。 「人魚姫」のDVD(楽天市場)【関連作品】チャウ・シンチー監督作品のDVD(楽天市場) 「少林サッカー」(2001年) 「カンフーハッスル」(2004年)
2017年08月16日
コメント(0)
![]()
「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」(原題:En kongelig affære)は、2012年の公開のデンマーク・スウェーデン・チェコ合作の伝記ドラマ映画です。18世紀のデンマーク王室の最大のスキャンダルと言われる史実をもとに、ニコライ・アーセル監督、 マッツ・ミケルセン、アリシア・ヴィキャンデル、ミケル・ボー・フォルスゴーら出演で、王クリスチャン7世と王妃カロリーネ・マティルデ、侍医ヨハン・フリードリヒ・ストルーエンセの運命的な三角関係を描いています。第62回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(ニコライ・アーセルに脚本賞、ミケル・ボー・フォルスゴーに男優賞)を受賞、第85回アカデミー賞では外国語映画賞にノミネートされた作品です。 「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ニコライ・アーセル脚本:ニコライ・アーセル/ラスマス・ヘイスターバング原作:ボーディル・スティンセン=レト「Prinsesse af blodet」(2000年)出演:マッツ・ミケルセン(ヨハン・フリードリヒ・ストルーエンセ、デンマーク王の侍医) アリシア・ヴィキャンデル(カロリーネ・マティルデ王妃、英国王室出身) ミケル・ボー・フォルスゴー(クリスチャン7世、精神を病むデンマーク国王) トリーヌ・ディルホム(ユリアーネ・マリーエ王太后、先王の二番目の妃) デヴィッド・デンシック(オーベ・ヘー=グルベア、ストルーエンセと対立する政治家) トーマス・ガブリエルソン(ランツァウ、ストルーエンセを利用し復活を狙う貴族) サイロン・ビョルン・メルヴィル(ブラント、ストルーエンセの側近) ベント・マイディング( ベルンストルフ、枢密院議長) ハリエット・ウォルター(オーガスタ、キャロラインの母、英国王太子妃) ローラ・ブロ(ルイーセ・フォン・プリセン、女官、後にキャロラインの親友に) ほか【あらすじ】絶対王政末期の18世紀後半、野心家のドイツ人ヨハン・フリードリヒ・ストルーエンセ(マッツ・ミケルセン)は、精神を病んだデンマーク国王クリスチャン7世(ミケル・ボー・フォルスガード)の侍医に就きます。王の唯一の理解者であり親友となる一方、ストルーエンセは孤独な王妃カロリーネ・マティルデ(アリシア・ヴィカンダー)の心も虜にし、禁断の恋に落ちていきます。やがて啓蒙思想を信奉するストルーエンセは、国王の言動を操り、事実上の摂政として数々の改革に乗り出していきますが、不満を募らせた保守派貴族たちは密かに政変を起こそうと画策します・・・。【レビュー・解説】デンマーク王室の史実に基づき、三角関係、社会改革、政治といった普遍的テーマを、インデペンデントとは思えないほどの豪華かつリアルに味わい深く描き、世界的な共感を得た時代劇です。ユニークで個性的な3人の関係18世紀後半、デンマーク国王クリスチャン7世とカロリーヌ王妃、待医ストルーエンセの三角関係は、デンマークの学校で教えられるほど有名な話で、これまでオペラ、書籍、バレエなどが作品化されています。この三人は王室や政治中枢の内部からの変革を起こし、現代のデンマーク民主主義の礎を作った、いわば革命家であることに、ニコライ・アーセル監督は興味を惹かれたと言います。この三人はそれぞれ実に個性的で、その三角関係もユニークです。ストルーエンセ:非常に現代的な考えを持った医者で、心を病んでいる国王に聡明さ、繊細さを見出し、二人の間の真の友情が生まれる。国王クリスチャン7世:ストルーエンセが心の支えになるが、必ずしも王妃を愛しておらず、ストルーエンセとカロリーヌ王妃が愛しあうようになっても、ある意味彼らを許す。カロリーヌ王妃:イギリス王室よりデンマーク王室に嫁ぐも、民衆の悲惨さや国王の寵愛が得られないことに心を痛めており、ストルーエンセが心の支えになる。三人の関係は愛憎の三角関係と言うよりは小さなファミリーのような絆で、本作はその絆が壊れていく物語でもあります。ユニークな三角関係がひとつのテーマ人物描写と現実感を重視した演出こうした関係に心を奪われたアーセル監督は脚本を書き、4年かけて資金を集めています。本作の制作費は約700万ドルですが、その半分をデンマーク政府、残りをドイツ政府、ドイツのテレビ局、スウェーデンの民間の基金から得ています。衣装、セット、儀式の再現など、時代劇はコストがかかりがちで、700万ドルの予算は決して多いとは言えません。アーセル監督は、10年来の気心の知れたスタッフとともに徹底的に予算配分を詰める一方、40日とインデペンデントにしては長い撮影期間を確保しています。さらに舞踏場の3シーンを一晩で撮影するなど、密度の濃いプランニングにより、700万ドルの予算とは思えない仕上がりを実現しています。また、衣装やセット、儀式などにこだわり、華美一辺倒に時代を描くのではなく、あくまでもキャラクターを主体にリアルに描いています。さすがに当時の病気や不潔さなどの描写は抑えていますが、彼は時代を客観的に捉えており、古めかしいシーンや、埃っぽく、むっとするようなシーンも登場します。一方、キャラクターを表現するのに必要と思える部分、即ち、衣装、かつら、馬などにはお金をかけ、また、時代劇には通常使用しない、ハンディカメラを多用しています。人口約500万と小国のデンマークで、限られた予算でこのような優れた映画が作られた背景には、こうしたストイックな制作姿勢があったわけです。ここには、厳しい制約を設けることにより虚飾を排し、ハンディカメラで時系列に刻々と現在を切り取っていくなど、映画本来の伝統的価値へと立ち返るデンマークの運動「ドグマ95」の流れが脈々と生きているのではないかと思います。俳優陣の活躍本作には侍医と王妃の不倫の愛というメロドラマ的要素もあり、この部分はアーセル監督にとって初挑戦でした。「風邪と共に去りぬ」(1939年)が好きというロマンティストのアーセル監督は、演出意図をきちんと実現してくれる優れた俳優たちによって、これを乗り切ることができたと言います。王妃役のアリシア・ヴィキャンデルは撮影時23歳、侍医役のマッツ・ミケルセンは46歳でしたが、年齢差を感じさせることなく、見事に二人の関係を演じています。期待を裏切らないマッツ・ミケルセンは元より、2010年にスウェーデン映画で長編映画デビューし、ローカルに注目され始めたばかりのヴィキャンデルも女性の持つ情熱を見事に表現しています。国王のクリスチャン7世を演じるミケル・ボー・フォルスゴーも注目に値します。本作が長編映画デビュー作ですが、心を病みながらも聡明で繊細な国王を見事に演じています(実在の国王は聡明で才能に恵まれていたが為政者として十分な教育が成されず、枢密院に脅され統合失調症のような感情障害を患っていたとされる)。まだ演劇学校の学生だったフォルスゴーをアーセル監督が抜擢された彼は、見事、期待に応え、ベルリン国際映画祭で銀熊賞(男優賞)を受賞しました。これは異例のことで、身に余る栄誉と思ったのか、これを辞退しようとした彼は、映画祭の審査委員長に「お前は本当に気違いか?」と言われたそうです。ともあれ、優れた俳優が発掘されたことは事実で、彼はその後も順調に長編映画に出演、第89回アカデミー賞外国語映画賞のデンマーク代表となった「ヒトラーの忘れもの」(2015年)にも出演しています。マッツ・ミケルセン(ヨハン・フリードリヒ・ストルーエンセ、デンマーク王の侍医)マッツ・ミケルセン(1965年〜)は、コペンハーゲン出身のデンマークの俳優。デンマーク語、英語、スウェーデン語に堪能。俳優になる前は体操選手、プロダンサーだった。国立演劇学校で学び、1996年に長編映画デビュー、「しあわせな孤独」(2004年)など多くのデンマーク映画に出演、「キング・アーサー」(2004年)でハリウッド進出し、「007 カジノ・ロワイヤル」(2006年)で国際的知名度を得る。「アフター・ウェディング」(2008年)、「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」(2012年)などアカデミー外国語映画賞ノミネート作品に出演する一方、「偽りなき者」(2012年)でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞している。アリシア・ヴィキャンデル(カロリーネ・マティルデ王妃、英国王室出身)アリシア・ヴィキャンデル(1988年〜)は、ヨーテボリ出身のスウェーデンの女優。「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」(2012年)、「戦場からのラブレター」(2014年)、「エクス・マキナ」(2015年)などに出演、「リリーのすべて」(2015年)でアカデミー助演女優賞を受賞している。「イングリッド・バーグマン〜愛に生きた女優」(2016年)では、イングリッド・バーグマン役でナレーションを務めている。ミケル・ボー・フォルスゴー(クリスチャン7世、精神を病むデンマーク国王)ミケル・ボー・フォルスゴー(1984年〜)は、デンマーク出身の俳優。映画デビュー作の本作で第62回ベルリン国際映画祭銀熊賞(男優賞)を受賞している。その後も長編映画に出演、第89回アカデミー賞外国語映画賞にデンマーク代表として出品された「ヒトラーの忘れもの」(2015年)にも出演している。歴史的な事実本作は、基本的に史実に基づいており、そのポイントはストルーエンセはフランス革命より先に社会改革を始めた改革はトップダウンという珍しい形で進められたこれは啓蒙主義者の平民が侍医という形で宮廷に入り込むことにより実現した一方で、王妃との不倫、検閲の再開など、権力を持ったが故の堕落もあった不倫は国王との関係を壊すものではなく、むしろ三人は小さなファミリーだったといった点にあります。<ネタバレ>結局、王妃との不倫が宮廷内に知られることになり、反ストルーエンセ勢力がこれを大衆操作に利用、ストルーエンセを失脚、処刑に追い込みます。議会は王の同意なく処刑を執行でき、恩赦という形でしか影響力を行使できない王には処刑日を知らせぬままに、処刑を実行したもののと考えられています。デンマーク国立図書館には、「ストルーエンセとブラント(ストルーエンセの側近)を救いたかった)」と書き込まれたクリスチャン7世の手書きの絵が保存されています。王妃はドイツに追放され、子供たちに会うことも許されませんでした。反ストルーエンセ勢力はストルーエンセが行った数々の社会改革を元に戻しますが、クーデターに成功した国王の息子が20年〜30年かけてストルーエンセが行った改革、さらに進んだ改革を実現します。本作では一通に集約されていますが、王妃は秘密裏に何通もの手紙を子供たちに書いていたことが知られています。息子がストルーエンセの社会改革を実現したのは単なる偶然ではなく、王妃からの手紙に影響を受けてと考えるのが自然かもしれません。クリスチャン7世の手書きの絵(デンマーク国立図書館蔵)「ストルーエンセとブラント(ストルーエンセの側近)を救いたかった」と書き込まれている。<ネタバレ終り>普遍的な社会問題本作では、格差などの当時の社会問題、社会福祉と財源、反動勢力、政治抗争、メディア(壁新聞)による大衆操作などが描かれていますが、300年たった現在も人間社会の本質は変っていないとアーセル監督は言います。例えば、カロリーネ王妃の手紙に「宗教と疑惑が支配」という一節がありますが、これは現在、中東で起きていることと同じと彼は言います。また、国民皆保険制度の導入など、オバマ元米大統領は格差是正の為に社会福祉に尽力しましたが、反動勢力の抵抗にあい、実質、骨抜きにされたとも言われています。オバマ元米大統領、先の米大統領選のクリントン候補は、それぞれアフリカ系米国人、女性とマイノリティ、多様性の受容を推進するリベラルでしたが、大統領選では差別的発言を繰り返す実業家出身のトランプ候補が勝利しました。こうした揺り戻しがある点も、300年前も変っていません。しかし、こうした揺り戻しも一概に悪いとは言えないかもしれません。ストルーエンセが権力を握って堕落の兆候が見られたとの同様、主流になりつつあったアメリカのリベラルにも知らず知らずのうちに何かしら驕りが入り込んでいた可能性もあるのではないかと思われます。余談:日本の社会変革を阻むもの余談になりますが、日本では長期化する安倍政権に対し、森友学園、加計問題に端を発する一連の問題に内閣支持率が急落しています。これも揺り戻しと言っていいかもしれません。ただ、モリ・カケ問題は本質的な問題ではないと私は感じています。例えば、日本最大の社会問題のひとつである少子高齢化は簡単に予見できたものですが、これをうまく揺り戻すことができない社会構造に大きな欠陥があると感じています。それは恐らく、短期的で模倣的、均質的な単一民族的思考組織横断的な連携性、柔軟性、機動性に欠ける硬直化した縦割り行政といった社会の変革を阻むものですが、これを意識的に修正していかないと、防衛問題など、少子高齢化に匹敵するほどの大問題を抱え込むことになるかもしれません。【サウンドトラック】 "A Royal Affair" soundtrack 輸入版(楽天市場)1 Caroline's Theme 2 King's Arrival 3 Summer Castle 4 Inoculation 5 Caroline's Idea 6 Love Scene 7 Hope Theme 8 Queen's Chamber9 King of Prussia 10 We Are a Family 11 Revolution 12 Christian Signs 13 Execution 14 Journey of the Letter 15 Adagio【撮影地(グーグルマップ)】冒頭、カロリーヌが歩く川沿いの道王宮へ向かう王妃が馬車から見降ろす下町ランツァウ邸(ストルーエンセを利用し復活を狙う貴族の館)王と侍医がフェンシングの練習をする場所夏の王宮 「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」のDVD(楽天市場)【関連作品】ニコライ・アーセル監督作品のDVD(楽天市場) 「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(2009年)・・・脚本 「特捜部Q キジ殺し」(2014年)・・・脚本 「特捜部Q Pからのメッセージ」(2016年)・・・脚本マッツ・ミケルセン出演作品のDVD(楽天市場) 「しあわせな孤独」(2004年) 「007 カジノ・ロワイヤル」(2006年) 「アフター・ウェディング」(2008年) 「偽りなき者」(2012年) 「メン&チキン」(2015年) 「ドクター・ストレンジ」(2016年)アリシア・ヴィキャンデル出演作品のDVD(楽天市場) 「戦場からのラブレター」(2014年) 「エクス・マキナ」(2015年) 「リリーのすべて」(2015年) 「イングリッド・バーグマン〜愛に生きた女優〜」(2015年)ミケル・ボー・フォルスゴー出演作品のDVD(楽天市場) 「ヒトラーの忘れもの」(2015年)その他おすすめデンマーク映画のDVD(楽天市場) 「バベットの晩餐会」(1983年) 「モルグ/屍体消失」(1994年) 「プッシャー 」(1996年) 「セレブレーション」(1998年) 「ゼイ・イート・ドッグス」(1999年) 「ストリングス〜愛と絆の旅路〜」(2004年) 「ある愛の風景」(2006年) 「ビルマVJ 消された革命」(2008年) 「未来を生きる君たちへ」(2010年) 「100,000年後の安全」(2010年) 「シージャック」(2012年)「アクト・オブ・キリング」(2012年) 「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」(2012年) 「ルック・オブ・サイレンス」(2014年) 「アルマジロ」(2015年) 「遙か群衆を離れて」(2015年)・・・北米版、日本語なし 「ある戦争」(2015年)
2017年08月14日
コメント(0)
![]()
「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(原題: Trumbo)は、2015年公開のアメリカの伝記ドラマ映画です。ブルース・クックの評伝「Dalton Trumbo」を原作に、ジェイ・ローチ監督、ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、ヘレン・ミレンら出演で、冷戦下のアメリカで行なわれた赤狩りの標的となり、ハリウッドで仕事を失いながらも、偽名を使ったり、格安のギャラでB級映画の脚本を手がけるなど懸命に創作活動に続け、「ローマの休日」、「スパルタカス」などの名作を手がけた脚本家、ダルトン・トランボを描いています。第88回アカデミー賞で主演男優賞(ブライアン・クランストン)にノミネートされた作品です。 「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ジェイ・ローチ脚本:ジョン・マクナマラ原作:ブルース・クック「Dalton Trumbo」出演:ブライアン・クランストン(ダルトン・トランボ) ダイアン・レイン(クレオ・トランボ、ダルトンの妻) ヘレン・ミレン(ヘッダ・ホッパー、影響力を持つゴシップ・コラムニスト) ルイ・C・K(アーレン・ハード、複数の実在の脚本家を複合した架空の作家) エル・ファニング(ニコラ・トランボ、ダルトンの娘) ジョン・グッドマン(フランク・キング) マイケル・スタールバーグ(エドワード・G・ロビンソン、追放された俳優) アラン・テュディック(イアン・マクレラン・ハンター、脚本家) アドウェール・アキノエ=アグバエ(ヴァージル・ブルックス) ディーン・オゴーマン(カーク・ダグラス、出演作にトランボをクレジット) スティーヴン・ルート(ハイミー・キング) ロジャー・バート(バディ・ロス) デヴィッド・ジェームズ・エリオット(ジョン・ウェイン 、赤狩り組織の一員) ピーター・マッケンジー(ロバート・ケニー) ジョン・ゲッツ(サム・ウッド、ハリウッドの赤狩り組織の一員) ダン・バッケダール(ロイ・ブリューワー 、ハリウッドの赤狩り組織の理事長) リチャード・ポートナウ(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー創始者) クリスチャン・ベルケル(オットー・プレミンジャー、監督作にトランボを起用) メーガン・ウルフ(ミッツィ・トランボ) ミッチェル・サコックス(クリス・トランボ) ほか【あらすじ】1940年代にハリウッドの脚本家として華々しい成功を収めていたダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)は、アメリカ共産党の党員でした。第二次世界大戦後、アメリカにマッカーシズムが吹き荒れ、共産主義排斥活動「赤狩り」が猛威を振るまいます。その理不尽な弾圧はハリウッドにも飛び火し、トランボは議会での証言拒否を理由に投獄され、アメリカ映画界から追放されてしまいます。やがて出所し、最愛の家族の元に戻ったものの、赤狩りでハリウッドでのキャリアを絶たれた彼には仕事がありません。しかし、密かに友人に脚本を託した「ローマの休日」がアカデミー賞に輝いたトランボは、脚本家として復帰するべく、偽名を使ってB級映画の脚本を書きながら、自らを排斥したアメリカ政府と映画製作会社に立ち向かっていきます・・・。【レビュー・解説】赤狩り旋風の中で理不尽なハリウッド・ブラックリストに載せられ、激しい弾圧に受けながらも信念を持って戦い抜き、アカデミー脚本賞を二度も受賞した聡明な作家を讃える作品です。本作は、トランボの戦いを中心に、ジョン・ウェインやヘッダ・ホッパーなど共産主義をハリウッドから駆逐しようとする勢力失業、離婚、家を手放すなど悲惨な運命を辿る脚本家の仲間たち脚本家たちを支援しながら、裏切らざるを得なかったエドワード・ロビンソントランボの復活に手を貸したカーク・ダグラスやオットー・プレミンジャー妻や娘達、トランボの家族の協力と不和 などを絡めて描いています。トランボの人物像の描き方が見事で、トランボを演じるブライアン・クランストンを始め、ダイアン・レイン、ダイアン・レイン、ヘレン・ミレン、ジョン・グッドマン、デヴィッド・ジェームズ・エリオット、クリスチャン・ベルケルらの助演が光ります。娘ではエル・ファニングもさることながら、メーガン・ウルフが存在感があり、可愛らしいさが際立ちます。ローチ監督初のコメディ以外の作品ですが、シリアスになりすぎない様、コメディ要素が混ぜており、トランボの妻を演じるダイアン・レインがジャグリングをするブライアン・クランストン演じるトランボがバス・タブで原稿を書くB旧映画制作者を演じるジョン・グッドマンがバットを振り回すシーンなど、効果的なスパイスにとなっています。ジェイ・ローチ監督は、防衛関係の仕事をする父親が保安の為に定期的に身辺調査を受けていた関係で、子供の頃から家族で政治思想に関して話し合う機会がありました。また、大学時代の先生にハリウッド・テンの一人がいたこともあって、こうした問題に関心が高ったと言います。そんな中、ローチ監督は、ブラックリストの対象者をトランボに集約したような脚本に出会いました。魅力的な物語だと思ったし、政治に関する私の問題意識と通じるものがありました。特に重要なことに、本作品は思想の自由について語っていたことです。それはつまり、人はどの政党を選ぼうと自由ということです。私はたちまち夢中になりました。脚本家やマイケルと何ヵ月もやり取りを重ねた末、主演のブライアン・クランストンを加えて製作を始めた。 私を触発したのは、正義と公正さを求めて戦っている人々を破滅させるブラックリストという悪魔のようなシステムを、作家がその力を使って無力化したことです。それはまるで、ダビデとゴリアテ(小さな男が巨人を倒した聖書の話)のようです。脚本家達の生活は破壊されました。彼らは仕事を失い、離婚し、家を失いました。家族の面倒を見れなくなったのです。トランボは単なる犠牲者になることに甘んじませんでした。彼は書くことにより、文字通りそこから活路を見出したのですが、それは象徴的でもあります。彼はアカデミー賞を二度、受賞、「スパルタカス」や「エグゾダス」を書いて、ブラックリストの無力化を後押ししたのではないか?それは如何にもアメリカらしい話だと思います。(ジェイ・ローチ監督)ダルトン・トランボの名を知る人は少ないと思いますが、映画「ローマの休日」の脚本を書いた人で、アカデミー脚本賞を二度、受賞しているというと大体のイメージは掴めるかと思います。トランボは、アメリカ政府の赤狩りの中で、ハリウッドの対象者の筆頭格として激しい弾圧を受けましたが、ハリウッド・テンと呼ばれるこの事件はアメリカの中でも記憶が薄れつつあるようです。映画で最も脚光を浴びるのは俳優、そして監督ですが、その重要性の割には脚本家が陽の光に当たる機会は限られています。待遇も決して良くなく、2007年から2008年にかけて全米脚本家組合がストを決行しました。四大ネットワークの人気トーク番組が次々と収録中止に追い込まれ、人気テレビドラマシリーズや大作映画の製作が次々と延期されました。ストは3ヶ月以上に及び、制作会社は社員を一時解雇、契約する脚本家やプロデューサーを次々と放出しました。テレビ番組や映画の製作が集中するロサンゼルス郡が被った経済損失は、20億ドルとも30億ドルとも言われています。その後、全米脚本家組合は和解しましたが、2017年に契約更新を控え、本作は、普段、目に触れることの少ない脚本家のプレゼンスを広く世に知らしめる効果もあったのではないかと思われれます。自由と民主主義の国、アメリカで、ハリウッド・ブラックリストのような思想弾圧があったことには非常に興味深いです。即ち、自由と民主主義が必ずしも弾圧や冤罪がないことを保証するものではありません。赤狩りは共産主義に対する国民の恐怖が引き起こしたものですが、9.11同時多発テロを契機としたテロへの恐怖は、イスラム教徒やイスラム国家への恐怖に拡大し、プリズムのような市民の監視システム、共謀罪・愛国者法による数々の冤罪、アメリカの法律の及ばぬアブグレイブ刑務所の虐待、拷問、対イラク戦争正当化の為の大量破壊兵器のでっち上げなどを生み出しました。テロの脅威が増加する中、日本でも共謀罪(テロ等準備罪)が成立、施行されました。脅威に対して怠りなく準備することは必要ですが、赤狩りのような過剰反応がないように注意しなければなりません。なお、本作公開の後、コーエン兄弟監督・脚本で同時期のハリウッドを描いたコメディ「ヘイル・シーザー」(2016年)が公開されました。この作品は製作会社視点で描かれていますが、ハリウッド・テンを風刺したと思われる脚本家たちも登場します。本作と対比して見ても面白いのではないかと思います。ブライアン・クランストン(ダルトン・トランボ)ブライアン・クランストン(1956年〜) は、ハリウッド出身のアメリカ国の俳優、声優、演出家。父、母、妻、娘も俳優。テレビ、映画等で活躍、テレビ・ドラマシリーズ「ブレイキング・バッド」(2008年〜2013年)でエミー賞を受賞、映画では本作でアカデミー主演男優賞にノミネートされている。ダイアン・レイン(左、クレオ・トランボ、ダルトンの妻)ダイアン・レイン(1965年〜)はニューヨーク出身のアメリカの女優。幼い頃から舞台に立ち、14歳でローレンス・オリヴィエと共演した映画デビュー作「リトル・ロマンス」(1979年)での演技が絶賛され、様々な雑誌のカバーを飾るなど一時は大変な人気になりました。その後フランシス・フォード・コッポラに出会い、彼の作品の常連となりますがヒットはせず、19歳で映画から遠ざかります。 3年後にカムバックするもののしばらく低迷、2000年頃から再び注目されはじめ、2002年「運命の女」で第75回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、以降、大人の女優として活躍しています。ヘレン・ミレン(左、ヘッダ・ホッパー、影響力を持つゴシップ・コラムニスト)ヘレン・ミレン(1945年〜)は、ロンドン出身のイギリスの女優。父はロシア革命で亡命したロシア貴族、母はイギリス人。舞台女優としてキャリアを始め、その後、映画・テレビなどで活躍、「第一容疑者」(1991-2007年)でエミー賞を3回受賞、「キャル」(1984年)、「英国万歳!」(1994年)でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞、「英国万歳!」と「ゴスフォード・パーク」(2001年)でアカデミー助演女優賞にノミネート、「クィーン」(2006年)で同主演女優賞を受賞、2015年には舞台でトニー賞演劇主演女優賞を受賞している。2003年、大英帝国勲章を受勲、デイムの称号を授与されている。ルイ・C・K(アーレン・ハード、脚本家、複数の実在の脚本家を複合した架空の人物)ルイ・C・K(1967年〜)ワシントン出身のアメリカのコメディアン、脚本家、映画監督、俳優、声優、映画編集者。メキシコ系アメリカ人で、7歳までメキシコシティに住み、最初に覚えた言語はスペイン語で、今もメキシコ市民権を持っている。テレビ、映画などで活躍、エミー賞に25回ノミネートされている。エル・ファニング(ニコラ・トランボ、ダルトンの娘)エル・ファニング(1998年〜)は、ジョージア出身のアメリカの女優。姉は女優のダコタ・ファニング。2歳8か月の時に演劇を開始、「アイ・アム・サム」(2001年)に出演する。以降、数多くの映画にコンスタントに出演し、「SUPER8/スーパーエイト」(2008年)、「ジンジャーの朝 〜さよなら、わたしが愛した世界」(2012年)、「20センチュリー・ウーマン」(2016年)などに出演している。ジョン・グッドマン(フランク・キング、B級映画の制作者)ジョン・グッドマン(1952年〜)はミズーリ出身のアメリカの俳優。オフ・ブロードウェイの舞台に立った後、テレビにも出演するようになり、1983年に映画デビューする。「バートン・フィンク」(1991年)、「ビッグリボウスキー」(1998年)と、コーエン兄弟監督作品で有名になる。「カーズ」(2006年)、「モンスターズ・ユニバーシティ」(2012年)など、アニメ作品への声の出演も少なくない。マイケル・スタールバーグ(エドワード・G・ロビンソン、赤狩りで追放された俳優)マイケル・S・スタールバーグ(1968年〜)は、カリフォルニア出身のアメリカの舞台、映画、テレビ俳優。大学卒業後、舞台俳優として活動し、トニー賞にノミネートされる。その後、テレビ、映画に活動の範囲を広げ、映画「シリアスマン」(2009年)で初主演を務める。以降、「ヒューゴの不思議な発明」(2011年)、「ブルージャスミン」(2013年)、「スティーブ・ジョブズ」(2015年)、「メッセージ」(2016年)、「ドクター・ストレンジ」(2016年)などに出演している。ディーン・オゴーマン(カーク・ダグラス、俳優、出演作にトランボをクレジット)ディーン・オゴーマン(1976年〜)は、オークランド出身のニュージーランドの俳優・フォトグラファー。主にニュージーランド国内のテレビ、映画でキャリアを重ね、2011年に「ホビット」三部作のフィーリ役に抜擢されている。クリスチャン・ベルケル(オットー・プレミンジャー、監督作にトランボを起用)クリスチャアン・ベルケル(1957年〜)はベルリン出身のドイツの俳優。1976年にイングマール・ベルイマン監督作品でデビュー。数多くのテレビ・ドラマ及び映画作品に出演する傍ら、90年代はじめからドイツ各地の劇場で舞台俳優としても活躍している。「ヒトラー 〜最期の12日間〜」(2004年)、「誰がため」(2008年)、「イングロリアス・バスターズ」(2009年)、「エル ELLE」(2016年)などに出演している。【動画クリップ(YouTube)】ジョン・グッドマンがバットを振り回すシーンダイアン・レインのジャグリング・シーン 「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」のDVD(楽天市場)【関連作品】「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」の原作本(楽天市場) ブルース・クック著「Dalton Trumbo」(トランボ ハリウッドに最も嫌われた男)ジェイ・ローチ監督作品のDVD(楽天市場) 「オースティン・パワーズ」(1997年) 「ミート・ザ・ペアレンツ」(2000年)ブライアン・クランストン出演作品のDVD(楽天市場) 「すべてをあなたに」(1996年) 「プライベート・ライアン」(1998年) 「リトル・ミス・サンシャイン」(2006年) 「リンカーン弁護士」(2011年) 「ドライヴ」(2011年) 「コンテイジョン」(2011年) 「アルゴ」(2012年)ダイアン・レイン出演作品のDVD(楽天市場) 「コットンクラブ」(1994年)「オーバー・ザ・ムーン」(1999年) 「マイ・ドッグ・スキップ」(2000年) 「運命の女」(2002年)ヘレン・ミレン出演作品のDVD(楽天市場) 「としごろ」(1968年)・・・輸入版、日本語なし 「熱く長い週末」(1980年) 「エクスカリバー」(1981年) 「キャル」(1984年) 「コックと泥棒、その妻と愛人」(1989年) 「英国万歳!」(1994年)・・・輸入版、日本語なし 「ゴスフォード・パーク」(2001年) 「クィーン」(2006年) 「消されたヘッドライン」(2009年)「アイ・イン・ザ・スカイ」(2015年)
2017年08月08日
コメント(0)
![]()
「灼熱の魂」(原題:Incendies) は、2010年公開のカナダのミステリー&ヒューマン・ドラマ映画です。レバノンからカナダに移住した劇作家ワジディ・ムアワッドの戯曲「焼け焦げるたましい」を原作に、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督・脚色、ルブナ・アザバル、メリッサ・デゾルモー=プーランら出演で、アラブ出身の母が残した謎の遺言に従って中東を訪れた双子の姉弟が紐解く、知られざる母の壮絶な過去と衝撃の事実を描いています。第83回アカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされた作品です。 「灼熱の魂」のDVD(楽天市場)スタッフ・キャスト監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ脚本:ドゥニ・ヴィルヌーヴ原作:ワジディ・ムアワッド「焼け焦げるたましい」出演:ルブナ・アザバル(ナワル・マルワン) メリッサ・デゾルモー=プーラン(ジャンヌ・マルワン 、ナワルの娘) マクシム・ゴーデット(シモン・マルワン、ナワルの息子、ジャンヌの双子の弟) レミ・ジラール(ジャン・ルベル、公証人、ナワルを秘書として雇い、家族同様に接した) アブデル・ガフール・エラージズ(アブ・タレク、監獄の拷問人) アレン・アルトマン(マダッド、レバノンの公証人、ジャンヌらの父と兄探しを手伝う) モハメド・マジュド(ワラット・シャムセディン、孤児院襲撃を指揮、兄の行方を知る) ナビル・サワラ(ファヒーム・ハルサ、学校の用務員、監獄でナワルを監視した) バヤ・ベラル(マイカ、看護婦、監獄でナワルの出産を手伝った) ほかあらすじ初老の中東系カナダ人女性ナワル・マルワン(ルブナ・アザバル)は、世間に背を向けるようにして生き、実の子である双子の姉弟ジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)とシモン(マキシム・ゴーデット)にも心を開くことがありませんでした。そんなどこかしら普通とは違う雰囲気を持つ母親は、謎めいた遺言と二通の手紙を残してこの世を去ります。その二通の手紙は、ジャンヌとシモンが存在すら知らされていなかった兄と父親に宛てられていました。遺言に導かれ、初めて母の祖国を訪れた姉弟は、母の凄絶な過去を探り当てていきます・・・。レビュー・解説レバノン内戦下、異教徒の恋人を家族に殺され、生まれた子供を里子に出されたクリスチャンの女性の凄絶な半生を双子の姉弟が辿る姿を、カナダと中東を舞台に現代と過去の同時進行で描き、スケール感溢れるリアルな映像、衝撃的な展開、感動的なパフォーマンスが際立つミステリー&ヒューマン・ドラマです。母、ナワルの遺言映画の冒頭、母のナワルは、公証人ルベル氏へ棺には入れず、祈りもなしに裸で埋葬して欲しい。世の中に背を向け、うつ伏せの状態で。墓石はなし、私の名はどこにも刻まないこと。約束を守れぬ者に墓碑銘はない。ジャンヌとシモンへジャンヌ、ルベル氏があなたに渡す封筒はあなたの父親宛です。彼を見つけ、封筒を渡して。シモン、あなたにも封筒があります。あなたの兄宛です。彼を見つけ、封筒を渡して。二つの手紙が相手に渡されれば、あなたたちの手紙が沈黙を破り、約束が守られる。その時初めて私の墓に墓石が置かれ、名前が刻まれる。と、謎めいた遺言を残して亡くなります。 ナワル(母)ー・ ・ー ? (兄) ・ーー・ージャンヌ(双子の姉) ? (父)ー・ ・ーシモン(双子の弟)中東が舞台、実在の女性がモチーフ中東部分はヨルダンで撮影されています。我々は中東を舞台にした映画を観る機会が少ないのですが、ナワルの心象を表現したという中東の荒涼とした光景が見事です。因みに映画でも戯曲でも明示されていませんが、話の舞台はレバノンです。原作戯曲「焼け焦げるたましい」の作者ワジディ・ムアワッドはレバノン出身のカナダ人で、レバノンの活動家サウハ・ベックハラの自伝に触発されて、原作戯曲を書いています。ベックハラはレバノン共産党員だった20歳の時に、エアロビクスのインストラクターになりすまして南レバノン軍のアントワーヌ・ラハド准将の自宅に潜入しました。暗殺を企てますが、捕えられて刑務所に収監され、10年間にわたり拷問と虐待を受けた後に、解放されました。中東の紛争というとイスラム教徒対キリスト教徒の宗教戦争と捉えがちですが、この事件はクリスチャンであるベックハラがキリスト教右派のラハド准将の暗殺を企てたものです。9.11以降、宗教的な壁もあり欧米人はテロを試みるアラブ人の気持ちをなかなか理解できませんでしたが、クリスチャンである彼女の自伝は欧米人にも理解しやすいものとして注目されました。激しく揺さぶられるひとりの女性レバノン内戦やサウハ・ベックハラをモチーフとしながら敢えてそれを明示しないのは、宗教や政治視点のではなく、あくまでも家族の視点で描く為です。ベックハラは共産党員でしたが、本作のナワルは一介のクリスチャンで、政治的背景はなく、一族の恥と、異教徒の恋人を家族に殺され、生まれた子供は里子に出される恋人を失い絶望する中、愛する息子を必ず探すと誓う内戦が勃発し、息子を探して南部に向かうが心当たりの孤児院は破壊されている女子供をも殺戮するキリスト教右派の暴虐を目の当たりにするもはや失うものはない、痛みには痛みをと、右派のリーダー暗殺を企てる捕えられて刑務所に送られ、激しい拷問、虐待の辱めを受ける釈放され、収監中に生んだ双子とともに国を出るが、世間に背を向けて暮らすと、家族の愛と憎の間で激しく揺さぶられるひとりの女性の話に書き換えられています。また、女子供が乗ったバスを右派の民兵が襲撃する場面など、戦闘シーンもストーリー展開に必要最小限なものに抑えられています。その後、ナワルは息子が生きていることを知り、激しい衝撃を受ける必ず探すと誓った息子に会う事が唯一の救いだが、もはやその気力はない自らの救済を双子の姉弟に宛てた遺書に託して憤死する母の過去を全く知らなかった双子の姉弟は、母の故郷を旅して凄絶な過去を知るというのが本作の構造であり、冒頭の一見、不可解な遺書の背景となっています。激しい愛と憎の物語男女の双子というのは珍しい設定です。これは、ナワルがその間で激しく揺さぶられた人間が持つ愛と憎という二面性を、双子の男女のキャラクターに分けたものと思われます。4時間近い戯曲を圧縮する為、映画は母ナワルと娘のジャンヌ中心に描かれていますが、愛する母の遺言を守ろうとするジャンヌ(女)に対して、シモン(弟)は亡き母を気違い女と罵ります。また、息子に関する描写もほとんどありませんが、孤児院から連れ去られた息子は凄腕のスナイパーになり、鬼のように殺戮を繰り返した事が明らかになります。<ネタバレ>凄腕のスナイパーに育て上げられた息子は、母に写真を見てもらおうと殉教することを志願しますが、願い叶わず、一人で南部で向かいます。そこで殺戮を繰り返した息子は、右派に捕えられ、洗脳をされ、拷問人としてナワルがいた刑務所に送り込まれます。息子は母とは知らず、ナワルをレイプし、生まれたのが双子の姉弟だったという衝撃の展開になります。ナワル自身も死の直前に自分を孕ませた拷問人が実は息子だったと知り、激しい衝撃を受けたのですが、もはや会う気力が残っていなかった彼女は、遺書で拷問人と息子の宛てた手紙を双子の師弟に託したのでした。双子の姉弟が遺言を実行してくれれば、どんなことがあっても愛し続けるという息子への約束を果たすことが出来、自身の忌まわしい拷問人への怒りを解くことが出来るのでした。双子の姉弟は拷問にだった息子に手紙を届けた後に、母の気持ちを綴った最後の遺言書を開け、生前、決して開くことのなかったナワルの心を知ります。ナワルの墓には遺言通り、墓碑銘が刻まれます。ここで、双子が自らの出生の秘密を知るのが果たして良かったのか?という疑問が生じます。親子の場合、子供が障害を持って生まれる可能性が非常に高くなりますが、双子が障害を持たずに生まれたのは大きな幸運です。出生の秘密を知るのは当事者だけなので、後は口をつぐみ、今後のことを考えればいい。実は、ナワルは子供たちが真実を知る代わりに、家族として共に生きていくという選択肢を与えているのです。ナワルは兄と双子に宛てた手紙に、「共にあることは素敵なこと」と書いています(父に宛てた手紙には書いておらず、沈黙を示唆している)。双子は兄がどこの誰かは知っていますが、兄は双子がどこの誰かは知らず、選択肢は実質、双子が握っています。移民が親戚もいないカナダで生きていくのは大変です。家族が一人でも多いことは、心強いはず。出生の秘密はショックですが、共に生きることは我々が想像する以上にメリットのある選択肢と思われます。愛と憎の間で激しく揺さぶれたナウルの人生ですが、最後の愛憎のマネジメントには舌を巻きます。<ネタバレ終わり>際立つ女優陣のパフォーマンスこの世の地獄を生きるナワルを演じるルブナ・アザバルのパフォーマンスと、母の過去を知って驚愕を隠せない無垢な娘ジョアンを演じるメリッサ・デゾルモー=プーランの対比が見事です。ナワルに関しては、当初、年齢に応じて2〜3人の女優が必要と考えられましたが、ルブナは一人でこのアラブ女性を見事にこなしています。ルブナ・アザバルにいくつかの手紙を朗読してもらったんだ。彼女の実年齢は30歳だったけど、18歳くらいに見えた。メイクをすれば、カナダ時代の老いたナワルにすることができる。私はすぐに彼女と芸術の恋に落ちた。彼女は、ナワルそのものだった。彼女は普通の女優ではない。生まれついての強さがある。ナワルの聖なる火だ。ルブナはナワルそのものだ。双子のキャスティングは難航した。長いキャスティング・プロセスの終盤に、ようやくメリッサ・デゾルモー=プーランを見出すことができた。(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)カナダはアメリカ同様、移民の国ですが、彼らの中には母国で凄絶な経験をした移民が少なくありません。彼らはショックを与えぬようにと幼い子供たちには話しませんが、そのまま機会を失い、子供たちが成人した後も知らないままということが少なくないそうです(日本でも、第二次世界大戦時の戦地での悲惨で経験を家族に語らない帰還兵が少なくなかった)。平和裏に育ったジャンヌが、想像を絶する母の過酷な運命を初めて知って驚愕する背景がここにあります。因みに、主人公がキリスト教徒とは言え、アラブ視点の本作は、特に9.11以降、反アラブ感情が強いアメリカでは制作しにくい作品です。一方、原作者のワジディ・ムアワッドが移住し、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の出身地でもあるケベック州は、フランス語圏でアメリカへの対抗意識が強く、本作のような作品が生まれる地盤となっています。第三者の関わり本作には、公証人が登場し、遺言を預かるだけではなく、自ら中東に赴いて双子が遺言を実現するのを後押しするという、重要な役割を果たします。また、本作の冒頭には、髪を刈り上げられる子供たちがじっとカメラを凝視するシーンがあります。彼らは兵士に育てる為に孤児院から連れて来られた子供たちなのですが、その凝視には「観客のみなさん、証人になってもらいます、しっかり見て下さい」という意味が込められているそうです。紛争地域で繰り広げられる悲劇に対して、観客が証人になることにより、第三者として関わりうることを示唆する、監督のメッセージです。ルブナ・アザバル(ナワル・マルワン)ルブナ・アザバル(1973年〜)は、ブリュッセル出身のベルギーの女優。父はモロッコ人、母はスペイン人。英語、フランス語、アラビア語で演技する。「パラダイス・ナウ」(2005年)で名を知られるようになり、素晴らしい存在感を示した本作で数々の主演女優賞を受賞している。メリッサ・デゾルモー=プーラン(ジャンヌ・マルワン 、ナワルの娘)メリッサ・デゾルモー=プーラン(1981年〜) は、フランス系カナダ人の女優。ルブナ・アザバルとは母娘の役柄だが、実年齢は8歳しか違わない。過酷な人生を送ってきた母とは対照的に平和裏に育った無垢な娘を見事に演じている。マクシム・ゴーデット(シモン・マルワン、ナワルの息子、ジャンヌの双子の弟)マクシム・ゴーデット(1974年〜)はケベック州出身のカナダの俳優。父親はホッケー選手。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「静かなる叫び」(2009年)でカナダのジニー賞助演男優賞を受賞している。ルブナ・アザバルとは親子の役柄だが、実年齢は1歳しか違わない。レミ・ジラール(ジャン・ルベル、公証人、ナワルを秘書として雇い、家族同様に接っした)レミ・ジラール(1950年〜)は、カナダの俳優で、ケベック州の元テレビ元司会者。「みなさん、さようなら」(2003年)などに出演している。カナダのジニー賞に最も多くノミネートされている俳優。アブデル・ガフール・エラージズ(アブ・タレク、監獄の拷問人)アブデル・ガフール・エラージズは、主にモロッコ、フランス、カナダの舞台で活躍する俳優。アレン・アルトマン(左、マダッド、レバノンの公証人、ジャンヌらの父と兄探しを手伝う)アレン・アルトマンはカナダの俳優。「ジャッカル」(1997年)、「トリコロールに燃えて」(2004年)、「デッド・サイレンス」(2007年)などで、ハリウッドのビッグ・ネームと共演した経験を有する。サウンドトラック冒頭の戦士に育てる孤児たちの髪を刈るシーンで、「誰を連れてくるんだ、取り巻きを連れてやってくるのか、やれると思うならやってみろ、神聖ローマ帝国め、幽霊の馬に乗って迎え撃ってやる」と、甘く幻想的な歌が流れます。映画のオリジナルではなく、レディオヘッドの「You and Whose Army?」という曲ですが、状況にマッチしていると評判になった曲です。4. You And Whose Army?〜レディオヘッド「Amnesiac」(楽天市場)撮影地(グーグルマップ)ナワルとジャンヌが訪れるプールナワルが住んでいた集合住宅 「灼熱の魂」のDVD(楽天市場)関連作品原作の戯曲(楽天市場) Wajdi Mouawad "Incendies"(フランス語)原作が触発された自伝(楽天市場) Souha Bechara "Resistance: My Life for Lebanon"(英語)ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品のDVD(楽天市場) 「プリズナーズ」(2013年)「ボーダーライン」(2015年) 「メッセージ」(2016年) 「ブレードランナー 2049」(2017年)ルブナ・アザバル出演作品のDVD(楽天市場) 「パラダイス・ナウ」(2005年) 「英雄の証明」(2011年)レバノン内戦、パレスチナ紛争を描いた映画のDVD(楽天市場) 「西ベイルート」(1998年)・・・輸入版、日本語なし 「ボーフォート -レバノンからの撤退-」(2007年) 「戦場でワルツを」(2008年) 「レバノン」(2010年)レバノンの異なる一面を描いた映画のDVD(楽天市場) 「キャラメル」(2007年)
2017年08月01日
コメント(0)
全9件 (9件中 1-9件目)
1


![]()