全31件 (31件中 1-31件目)
1
「白雪姫」(1937) SNOW WHITE AND THE SEVEN DWARFS監督 デヴィッド・ハンド製作 ウォルト・ディズニー原作 グリム兄弟 脚色 テッド・シアーズ オットー・イングランダー音楽 フランク・チャーチル リー・ハーライン ポール・J・スミス声の出演 ハリー・ストックウェル、エイドリアーナ・カセロッティ ビリー・ギルバート、ルシル・ラ・ヴァーン 本編83分 総天然色 スタンダードサイズ 108円(税込み)のDVDを買っての鑑賞です。 著作権が切れているとのことで格安DVDが各種発売されていて、私が買った108円のものは紙製のケースに入っている。画質に不安があったものの、78年も昔の作品だと思えばまったく問題なく、日本語吹替え音声も入っていて、100円だったらお買い得といえるものでした。 ウォルト・ディズニーが1937年(昭和12年)に製作した初のカラー・アニメーション劇場用映画です。 日本での初上映は1950年(昭和25年)だそうですが、私が見たのは1990年頃か?、娘が小学生の時で、夏休みに学校から割引券をもらってきて、この当時は毎年の夏休みにディズニーの有名どころのアニメ映画がリバイバル上映されていて、その時に娘といっしょに見ました。(「シンデレラ」「ピーターパン」「ピノキオ」「眠れる森の美女」「101匹わんちゃん大行進」「わんわん物語」など代表的な作品はすべて、娘といっしょに見たリバイバル上映です) で、約20年ぶりに見たアニメ映画「白雪姫」。さすがに映画史に記録されている名作だけに、これは素晴らしい作品です。 美しさを妬んだ継母に毒のリンゴを食べさせられて死んだ王女白雪がガラスの棺に保管されているのを、王子様がキスすると生き返り、二人は結ばれてめでたしめでたし。 魔女の継母は危機を聞いた7人の小人たちが追い詰めて、崖から転落死する、ここはグリム童話とは変えられています。 森の中の小人たちの家に居候する白雪姫。「掃除も洗濯も、お料理もしてあげるから、ここにおいてほしい」とお願いする白雪姫に7人の小人たちは、それならおいてあげようと。 おもしろいのは、白雪姫にとって小人たちは恩人なのですが、それが主客転倒、小人たちを従えてしまうことです。「まあ、汚い手。いつから洗ってないの、手を洗ってこないとご飯をたべさせませんよ!」と。 男は可愛い女の子には弱く甘いものなのか?、それとも白雪姫の持って生まれた威厳なのか? 白雪姫が小人たちとフォークダンスを踊る場面の、動きの素晴らしさは芸術的ともいえるものです。
2015年03月31日
コメント(0)
「月光仮面 絶海の死斗」(1958)監督 小林恒夫原作 川内康範脚本 川内康範撮影 星島一郎美術 進藤誠吾音楽 小川寛興 出演 大村文武、柳谷寛、若水ヤエ子 宇佐美淳也、峰博子、佐々木孝丸 小宮光江、須藤健、長谷部健、山本麟一 本編52分 モノクロ シネマスコープサイズ 劇場版「月光仮面」第2作で、「どくろ仮面」の解決篇。 昭和33年(1958)8月初旬の公開で、前作の公開から1、2週間しか間がない上映です。 先に「幽霊党の逆襲」のところで、「リアルタイムで見たのは母に連れて行ってもらった第1作のみ(ドクロ仮面の手下が高い建物から落ちる場面をおぼえている)」と書きましたが、思い違いで、私が50年以上も昔に見たのはこの第2作目だったようです。 妹ユリ(小宮光江)を消す命令に背いたため裏切り者としてナイフで刺されたタイガー(長谷部健)はどくろ仮面に命を狙われたことで、祝探偵(大村文武)にどくろ仮面の正体を暴露しようと決心する。 その時、病室の窓から撃たれるタイガー。祝探偵は撃った男を追跡する。男は病院のらせん状になった廊下を屋上へ向かって逃げる。祝探偵は男を屋上に追い詰めるのですが、男は飛び降りてみずから命を絶ってしまいます。 私が憶えていたのはこの場面でした。 全6本ある劇場版映画では、この第1作、2作の「どくろ仮面」が最もよくできています。最初なので力が入っているのか、監督の手腕なのか、出演者がいいのか? 第1作では祝探偵の助手 五郎八(柳谷寛)が意外な活躍を見せ、機密書類が入ったカバンをどくろ仮面一味に渡すまいとスクーターで逃げる。月光仮面に助けられるのですが、柳谷寛さんは三枚目として親しみ感のある脇役俳優だけに、この助手役はさすがに上手です。(カボ子の若水ヤエ子は要らないけれど) 月光仮面が大型オートバイで疾走する場面や、爆破された橋をオートバイが飛び越える場面とか、ヘリコプターで蒸気機関車を追跡する場面、躍動感があって胸躍るものがあるし、クライマックスの警官隊とどくろ仮面一味の銃撃戦もいい。次回につづく、となるつなぎ方もうまいですね。 月光仮面は腰のベルトの左右に2挺拳銃のホルスターを着けていて、オートバイで走りながら両手を離して2挺拳銃を撃つ。時代劇を思わせるような月光を浴びての登場シーンもナイスです。 この第2作の解決篇では、機密書類が隠された洞窟がある島へどくろ仮面たちが船で向かう。その一味に紛れ込んだ祝探偵。 洞窟には月光仮面が先回りしていて、駆けつけた警官隊も加わって銃撃戦になる。 一人になったどくろ仮面を、月光仮面が断崖上に追い詰める。 どくろ仮面が「お前は誰だ!」というのに、月光仮面がサングラスをとって正体を見せる場面があります。 その顔を見たどくろ仮面が「あっ!おまえは!」と驚いてあとずさると、崖から転落して死んでしまう。 中山博士の娘 あや子を演じるのは峰博子という女優さんです。「おとうさま」というのが良い感じで。 月光仮面から「危険せまらば、この箱あけよ」と書かれたオルゴールを渡される。 どくろ仮面に拉致されて車で逃走し、後部座席から後ろを振り返ると月光仮面のオートバイが追ってくる。「あっ、月光仮面!」と驚く一味。その時、「幽霊党」の山東昭子さんは「あっ、月光仮面のおじさん!」と年少者でもあるまいに妙な台詞を言ったけれど、峰博子さんのあや子さんは黙ってほほえむだけです。このほうが自然ですね。
2015年03月30日
コメント(0)
「月光仮面」(1958)監督 小林恒夫原作 川内康範脚本 川内康範撮影 星島一郎美術 進藤誠吾音楽 小川寛興 出演 大村文武、柳谷寛、若水ヤエ子 宇佐美淳也、峰博子、佐々木孝丸 須藤健、小宮光江、長谷部健 本編51分 モノクロ シネマスコープサイズ 劇場版「月光仮面」の第1作で昭和33年(1958)7月公開。2部構成になっていて、解決篇は「月光仮面 絶海の死斗」として同年8月に公開。 テレビで「月光仮面」(大瀬康一 主演、船床定男 監督)が放送されたのは昭和33年(1958)2月から翌34年7月まで。全130回で、第1部「ドクロ仮面」は第1回のみ30分、2回目以降は10分間で月~土に放送。全5部あり、第2部から毎週日曜日に30分間となる) 私が小学校に入学する前後の頃で、まだ一般家庭にテレビが普及していない時代。我が家もそうですが、テレビを見ることができる家庭は限られていました。(余談として、月光仮面が原付に乗っていたと言って、笑って馬鹿にする人がいるけれど、ホンダの250CCなので原付ではない。劇場版では「陸王」に乗り、350CC、750CC、1200CCのどれかは不明) 宇宙科学研究所の実験場で中山博士(宇佐見淳也)が開発した「HOジョー発爆弾」の爆発実験がおこなわれ、成功を収めます。 大気中を一瞬で真空状態にし、動物も植物もみな窒息死させてしまうという世紀の発明「HOジョー発爆弾」を博士は平和利用の目的で開発したのだが、その機密書類をめぐって国際スパイ団のどくろ仮面一味が暗躍する。 中山博士宅に秘密をさぐるために女中として潜入していたどくろ仮面配下のユリ(小宮光江)が祝探偵(大村文武)に見破られて警察に捕らえられる。 松田警部(須藤健)に尋問されるが、固く口を閉ざすユリ。 どくろ仮面は「捕らえられた以上はユリを許さない、それがスパイ団の掟だ」と言って、ユリの兄であるタイガー(長谷部健)の手でユリを殺すよう命令する。妹を殺すことに躊躇するタイガーを裏切り者として一味は消してしまおうとする。 祝探偵事務所に養われている戦災孤児の木の実ちゃんがどくろ仮面に拉致され、中山博士の前で天井から吊して炎の中に下ろしてゆく。この子を助けたければHOジョー発爆弾の機密書類を隠した場所を白状しろと博士に迫ります。 さすがに小さな女の子が痛めつけられるのを見せられては耐えきれず、中山博士は娘 あや子(峰博子)が首に下げているロケットの中だと白状する。 月光仮面が現れ、博士と木の実ちゃんを確保するとともに、そのどくろ仮面一味のアジトに警官隊が殺到して銃撃戦になる。逃げ出すどくろ仮面たち、背景に「ど~この誰かは知らないけれど、誰もがみ~んな知っている♪」と主題歌が入って追跡する月光仮面。 いいところで次回につづく、と。昔の連続活劇映画ならではの味わいがあります。 月光仮面とは何者なのか?、映画の中ではまったく説明がなく、いきなり登場しても誰も不審に思わない。月光仮面という正義のために働くヒーローを誰もがみんな知っているのが前提になっているんですね。 この当時のヒーロー物に登場する悪役たち。国際陰謀団とか国際スパイ団とか、何々団、何々党など、白いトンガリ頭巾や黒頭巾や黒マントとかを着ていて、一目見て怪しい感じで悪役丸出しの扮装です。 今作のどくろ仮面一味は、首領と同じどくろの面と黒マント、あるいはトレンチコートにソフト帽と黒覆面。今見ると、目立ってはならないスパイ団としては、これではまずいのではないかと思ってしまうけれども、当時はまったくそんなこと考えもしなかった。このような悪人たちのコスチュームをカッコ良いと思ったし、あこがれたりしたものです。
2015年03月29日
コメント(0)
「月光仮面 悪魔の最後」(1959)監督 島津昇一原作 川内康範脚本 織田清司撮影 西川庄衛音楽 小川寛興 出演 大村文武、柳谷寛、若水ヤエ子 清水一郎、成瀬昌彦、岡譲司 ハロルド・S・コンウェイ、増田順司 山東昭子、梅宮辰夫 本編60分 モノクロ シネマスコープサイズ 劇場版「月光仮面」の第6作であり、最終作になります。 公開は昭和34年(1959)8月。 実業家の岡本が乗った車が家の前で電柱に激突し、おどろいて五郎八(柳谷寛)が駆けつけると、息絶えた岡本の背中に「白髪鬼」と記された紙が貼ってあった。 翌日、祝探偵事務所に東条という男が保護を求めに来て、その場で何者かに殺される。その死体には岡本と同様の「白髪鬼」の紙が。 ある夜、怪しげなクズ屋の後をつけた祝探偵(大村文武)は、とある屋敷裏の防空壕跡で戦時中に南海で死んだとされる毒物学者の白上博士(清水一郎)と出会います。白髪鬼とは白上博士だと看破した祝探偵に博士は毒蜘蛛を投げつける。 白上博士は戦時中に軍属として息子の鉄也(梅宮辰夫)と助手 北川(成瀬昌彦)と、南海の無人島に軍人の西川中尉(岡譲司)、岡本、東条らとともに漂着した。 その島で白上博士は川で砂金を発見したのだが、欲に眼がくらんだ西川中尉は岡本や東条と組み、博士の息子を殺し、博士と助手 北川をも手榴弾で殺害をはかる。そして悪辣な3人は再び砂金をとりにくるつもりで島を離れた。 九死に一生をえた博士は砂金を隠し、復讐の鬼と化して日本に舞いもどった。 白上博士は復讐の鬼「白髪鬼」と名乗って、まず岡本、東条を毒蜘蛛で殺し、次に西川を狙うのですが、西川は博士が持っている砂金のある無人島をしめした地図を手に入れんと、国際ギャング団と結託して博士を狙います。 前作「幽霊党の逆襲」が昭和34年7月末に公開、直後の8月初旬にこの「悪魔の最後」が公開されていて、この2本は同時期に撮影されたと思われます。 監督・脚本・撮影・音楽などスタッフが共通しているだけでなく、たとえば、白上博士の助手 北川を演じている成瀬昌彦さんは、「幽霊党の逆襲」では鈴木博士の助手 藤田を演じて、関東第一病院に入院するのですが、その同じ病院が出てきて、同じように入院する。病室もまったく同じだし、病室前の廊下も同じ。ベッドに横たわる彼に質問する祝探偵と松田警部も、まったく同じような場面です。 殺された東条の娘役は山東昭子さんだし、同時に2本を撮ったのではないでしょうか。 松田警部(増田順司)以下の刑事たち、出動する武装警官を満載した警察のトラック。 刑事たちの行動や、警官隊がワッと出動する場面など、私の小学生時代、こんな場面が大好きでした。
2015年03月28日
コメント(0)
「月光仮面 幽霊党の逆襲」(1959)監督 島津昇一原作 川内康範脚本 織田清司撮影 西川庄衛 音楽 小川寛興 出演 大村文武、柳谷寛、若水ヤエ子 佐々木孝丸、岡譲司、増田順司、成瀬昌彦 山東昭子、藤里まゆみ、香山光子 本編61分 モノクロ シネマスコープサイズ 昔テレビで「月光仮面」を放送していたのは知っているけれども、家にテレビがなかったし、まだ小学校に入学する前後の年齢だったのでほとんど記憶がありません。 ただ月刊誌「少年クラブ」の連載をなんとなく覚えていて、姉に買ってもらった単行本(100円だった)を何度も繰り返して読んでいました。桑田次郎さんの画で、何巻にあたるのか知りませんが「幽霊党」の話。 昭和34年(1959)7月に公開された「月光仮面 幽霊党の逆襲」はシリーズ第5作です。 私がリアルタイムで見たのは母に連れて行ってもらった第1作のみ(ドクロ仮面の手下が高い建物から落ちる場面をおぼえている)で、この「幽霊党」や「サタンの爪」は街角に貼ってあった宣伝ポスターでしか知らないものです。 雨が降る深夜、とある大学の地質学研究所で鈴木博士(斎藤紫香)と助手 藤田(成瀬昌彦)は時間が遅いからと仕事を終えようとしていた。そこへドクロの仮面を着けた怪しい男と、一つ目を描いた黒いトンガリ頭巾の数名の部下たちが侵入してくる。 鈴木博士は殺害され、助手の藤田は行方不明に。翌朝、警察の藤田警部(増田順司)と祝探偵(大村文武)が駆けつけ、事件の捜査を開始します。「藤田が怪しい」とか言っているところに、現場に残された電話番号をメモした紙が発見され、さっそくその電話番号の主を調べることに。 それは大岡鉄蔵(佐々木孝丸)という男で、訪問したところ、彼は山師で、かつては鈴木博士に掘り当てた石の鑑定を依頼していたが、今回のことには関係がないといい、博士が殺されたと聞いて驚く。 祝探偵が、大岡鉄蔵の娘はる子(山東昭子)に「ゆうべお父さんは電話はしなかったか」と聞くと「11時頃に博士と嬉しそうに話していた。自分が最初に電話に出たので間違いありません」と答える。「知らぬ存ぜぬ」の大岡を残し、松田警部は祝探偵は大岡屋敷を後にするのですが、はる子から聞いた情報では、大岡が鈴木博士に何かを依頼し、その鑑定が成功だったらしいと推測。事件の鍵は大岡と博士の助手 藤田が握っているらしいと。 やがて行方を断っていた藤田が自宅に帰って来たと知らせが入り、彼は異常な状態のため病院に運ばれたとのことで、松田警部と祝探偵は入院先の関東第一病院へ向かう。 殺害された鈴木博士が鑑定依頼されたのは「ウラン鉱石」であり、そのウラン鉱をめぐって「幽霊党」が暗躍する話です。 山師の大岡鉄蔵の娘 はる子の役で、のちに国会議員になった山東昭子さんが出演している。 幽霊党が彼女を拉致して車で逃走するのは、毎回お約束のシーンであるようで、リアウインドウを振り返ると月光仮面のオートバイが追ってくるのを見た悪党どもが驚き、捕らえられていた女の子が「あっ、月光仮面のおじさん!」と言う。 今作の山東昭子さんでは、年齢的に「月光仮面のおじさん!」と言うのは変な感じがします。前作の「魔人の爪」では松島トモ子さんだった。 幽霊党の首領がドクロの仮面を着けているのですが、もっと工夫が必要だったのでは?これでは「ドクロ仮面」と変わらない。子分どもの一つ目を描いたトンガリ頭の黒装束はいい感じです。 幽霊党の紅一点 おりん(藤里まゆみ)。看護婦に化けていて、入院している藤田助手を毒薬の注射で口封じしようとするが祝探偵に正体を見破られる。そのあとは最後まで一味として行動し、月光仮面との銃撃戦まで演じる。なかなか美しい女優さんです。
2015年03月27日
コメント(0)
「サルタナがやって来る 虐殺の一匹狼」(1970) UNA NUVOLA DI POLVERE... UN GRIDO DI MORTE... ARRIVA SARTANA監督 ジュリアーノ・カルニメーオ製作 エドゥアルド・ブロチェロ ルチアーノ・マルチーノ脚本 ティト・カルピ エルネスト・ガスタルディ エドゥアルド・ブロチェロ 撮影 エミリオ・フォリスコット フロリアーノ・トレンケル音楽 ブルーノ・ニコライ出演 ジャンニ・ガルコ、ニエヴェス・ナヴァロ、ピエロ・ルリ ブルーノ・コラッツァリ、マッシモ・セラート、サル・ボージェス 本編96分 総天然色 シネマスコープサイズ 500円(税込み)DVDです。昨日の「荒野の復讐」にガックリして、その口直しにと鑑賞したのですが、これは面白かったです。荒唐無稽は大いにけっこう、マカロニ西部劇はこうでなくては。 ジャンニ・ガルコ扮する主人公サルタナ。黒い帽子とオシャレなネクタイとベストに黒のスーツを着てインパネスコートを羽織って颯爽と、でも何を考えているのかさっぱりわからない一匹狼。 1970年作品ですが、これ以前にサルタナを主人公にした作品は3本あるそうで、本作は第4作目にあたるとか。すべて日本では公開されず、日本でDVD化されているのはこの第4作目だけだそうです。 主人公の行動や雰囲気は「西部悪人伝」(70)「西部決闘史」(72)のサバタ(リー・ヴァン・クリーフ)に似ているけれども、こちらが元祖的な位置にある。 1970年あたりになるとマカロニ西部劇もそれまでのヒゲ面の主人公ではない、本作のようなスーツをビシッと着こなした、復讐よりも金儲けが目的といった内容の、何を考えているのか不明な男が主人公になったのか。 ジョンソンという悪党がおなじ悪党の50万ドルの金貨と2000万ドルの偽札を交換する仲介をするのだが、そのジョンソンが裏切って悪党を射殺し金貨も偽札も独り占め。しかしそのジョンソンも何者かに殺され、その罪を着せられたフル(ピエロ・ルリ)という男が刑務所に入れられている。 50万ドルの金貨と2000万ドルの偽札は行方不明になっていて、一儲けを企んだサルタナ(ジャンニ・ガルコ)は悪徳保安官3人を殺してすすんで刑務所に入ると、見張りを倒して、50万ドルの隠し場所を知っている唯一の男フルを連れて脱走する。 50万ドルと2000万ドルの偽札のことは嗅ぎつけて悪徳保安官や山賊集団の将軍(ホセ・ハスペ)、ジョンソンの未亡人(ニエヴェス・ナヴァロさん)などが狙っている。彼らをサルタナが知恵と秘密兵器で出し抜いていく痛快娯楽作です。 予告編はこちら。 見所は、町に押し寄せてきた山賊集団をトンデモ秘密兵器「オルGUN」で迎え撃つクライマックス場面。 パイプオルガンに機関銃と大砲を仕込んであり、パイプが銃身になっていて、鍵盤の正面にあるふいごを押すと発射するしくみ。 バリバリ、ドカン、ドカン、バリバリと山賊どもを皆殺し。照準も狙いもなくムチャクチャだけれど、マカロニは何だって許されてしまう。 悪徳保安官や町の顔役みたいな男や未亡人や山賊集団やら、敵が多すぎて、誰が誰だか混乱気味なのが惜しいところ。 ブルーノ・ニコライの音楽がカッコいいです。
2015年03月26日
コメント(0)
「荒野の復讐」(1981)COMIN'AT YA監督 フェルディナンド・バルディ製作 トニー・アンソニー ブラッド・タルボット、スタン・トルキア 原案 トニー・アンソニー脚本 ロイド・バチスタ、ステバン・クエンカ・セビラ ウルフ・ローウェンタール、モン・プラナ・カステル ジーン・クインターノ撮影 フェルナンド・アリバス音楽 カルロ・サヴィーナ出演 トニー・アンソニー、ジーン・クインターノ ビクトリア・アブリル、リカルド・パラシオス ルイス・ゴードン 本編93分 総天然色 シネマスコープサイズ スカパー!の洋画専門チャンネル「イマジカBS」で放送された時に録画したものを鑑賞。 とっくの昔にブームが去った1981年のマカロニ西部劇で、日本未公開作。 主人公ハート(トニー・アンソニー)は結婚式の最中に妻アビリーン(ビクトリア・アブリル)をパイク(ジーン・クインターノ)とポーク(リカルド・パラシオス)のトンプソン兄弟に拉致されてしまう。 トンプソン兄弟は付近の村々を襲って女たちをさらい、娼婦としてメキシコに売り飛ばそうとしている。 ハートは途中で出会ったスコットランド人の老人の協力を得て、仇のアジトに乗り込み、捕らえられていた女たちを逃がすことに成功しますが、自身は油断をしたために捕まってしまいます。 隙を突いてポークを殺し、脱走に成功したハートだが、逃げた女たちは追ってきたパイクによってアビリーンを残して皆殺しにされてしまう。パイクはアビリーンを人質に、町の大通りに彼女を縛り付けてハートを待ち受ける。 主演のトニー・アンソニーの原案により、自ら製作にあたっています。 1981年当時の3D映画として撮られていて、このイマジカBSの放送は5.1chサラウンド。マカロニ西部劇でこんなのは初めて見ました。 カメラ(観客の目)の方へ向かって銃口や赤ちゃんのお尻や焼けた棒が突き出されたり、3Dを意識したアングルがいささかわずらわしく、真下に置いたカメラに袋から木の実をバラバラと落としたり、金貨を落としたり。こんな3Dになんの意味があるのか、まったくのナンセンス。あげくにカメラに向けて槍や矢が飛んで来たりの、あまりのしつこさに「いい加減にしろ!」と言いたくなります。 マカロニ西部劇には目のない私ですが、この「荒野の復讐」にはガックリ。主人公のカッコ良さがまったく感じられず、登場人物に魅力がないのが致命的。作り物と一目でわかるコウモリに、捕らえられている女たちが「キャーキャー」の場面は噴飯ものです。 DVD化されていない、珍しい作品として、それだけの価値しかないようです。
2015年03月25日
コメント(0)
「月光仮面 怪獣コング」(1959)監督 相野田悟原作 川内康範脚本 織田清司撮影 飯村雅彦音楽 小川寛興出演 大村文武、山本麟一、柳谷寛 若水ヤエ子、松本克平 、白河通子 増田順司、加藤嘉、須藤健 本編50分 モノクロ シネマスコープサイズ 劇場版「月光仮面」の第4作です。公開は昭和34年(1959)4月。実のところ、第1、2作のドクロ仮面や第3作サタンの爪、第5作の幽霊党などは何度か見て知っているのですが、この「怪獣コング」は初めて見ました。「怪獣」というから大きなのが出るのかと思ったら、「ジキルとハイド」みたいに薬の作用で怪力の獣人みたいに変身するだけで、身長は人間の大きさです。 暴風雨の夜、8人の死刑囚が脱獄。非常線が張られた頃、祝探偵事務所に警視庁の松田警部(須藤健)から電話があり、原子抗素体学者 山脇博士が誘拐されたと云う。 駆けつけた祝探偵(大村文武)に「祝十郎に告ぐ、この事件に手を出すな、怪獣コング」と書かれた警告状が残されていて、ガラス窓に奇怪な男の影が写る。 死刑囚を脱獄させたのは国際暗殺団で、死刑囚を仲間に入れて山脇博士を始めとする日本の10人の重要人物を暗殺せんと謀っていた。 暗殺団は怪獣コングを使って政府の高官を襲い、さらに警視総監を狙う。箱根に向っていた総監は暗殺団一味と怪獣コングに襲撃されるが、月光仮面が現れて総監を救う。 失敗した一味は、病院に入院した総監を時限爆弾で狙う。一味に化けて潜入していた祝探偵はそれを知らせようとするが発覚し、捕らえられていた山脇博士と同じ牢獄に入れられてしまう。 国際暗殺団は不死身の怪獣コングを使って、日本の重要人物10人を暗殺せんと企て、警視総監がコングや一味に狙われて時限爆弾を仕掛けられたりするのを月光仮面が現われて助ける話です。 国際暗殺団の首領(加藤嘉)が、山脇博士の発明した薬でコング(山本麟一)に変身する。タイトルが「怪獣コング」だから勘違いしてしまいます。 ストーリーは相変わらず他愛のないものだけれども、音楽入りで颯爽と現れる月光仮面がカッコいい。 この当時のテレビや映画など、マンガ本でもそうですが、時限爆弾がよく使われましたね。出動した警官隊が敵のアジトにワッと飛び込んでいくと時限爆弾があって、「爆弾だ、急いで避難しろ!」というような場面がよくあったものです。時代劇なんかでも火薬の樽があって導火線に火が着けられて、という場面が。「月光仮面」などでは時限爆弾は定番のアイテムだったように覚えているのですが。
2015年03月24日
コメント(0)
「月光仮面 魔人(サタン)の爪」(1958)監督 若林栄二郎原作 川内康範脚本 川内康範、織田清司撮影 星島一郎美術 藤田博音楽 小川寛興 出演 大村文武、柳谷寛、若水ヤエ子、須藤健 月丘千秋、松島トモ子、松本克平、植村謙二郎 本編62分 モノクロ シネマスコープサイズ まだテレビがアナログだった頃に東映チャンネルでの放送を録画してあったものです。 劇場版の「月光仮面」は全6作品あって、「魔人の爪」はその第3作。昭和33年(1958)12月公開。 深夜、アフナリア・シャバナン殿下という人が、屋敷に現れたサタンの爪(植村謙二郎)と名乗る怪人に殺害されて、パラダイ王国5千億円の秘宝の在りかを示す地図が奪われます。 秘宝の隠し場所を知るには、地図だけではなく「アラーの眼」という宝石が必要であり、宝石を持っているのはシャバナン殿下の横浜に住む愛人で浅川という母娘。その浅川母娘(娘のほうが松島トモ子さん)を守って、月光仮面がサタンの爪と戦う。 前半は日本国内、後半はパラダイ王国(もちろん国内で撮影)に舞台が移って、スケールが大きいと言いたいのですが、そうはならず、いかにも低予算映画です。 当時の子供たちは喜んで見たのだろうと思うのですが、現在の目で見るとストーリーに伏線も貼られていないし、出たとこ勝負のやっつけ仕事みたいなもの。祝十郎ってほんとに名探偵なの?と思ってしまいます。松田警部(須藤健)に対しても態度がでかいし。 助手の袋五郎八、カボ子の脇役レギュラー2人ですが、五郎八の柳谷寛さんは東映時代劇でよくお顔を拝見し、さすがと思わせるのですが、カボ子の若水ヤエ子さんはズーズー弁にわざとらしさがあってイヤミな感じで、頂けない。 時代劇の同心や岡っ引きが主人公の場合、必ずといっていいほどに脇に三枚目の子分役がいる。この「月光仮面」だけでなく、当時のヒーローものでも同様で「まぼろし探偵」も「七色仮面」も助手は三枚目が務めています。 財宝が隠された洞窟が崩壊して、欲にくらんだサタンの爪が仮面だけを残して身体は埋もれ、仮面の上に土砂が降り注ぐラスト、ここだけはちょっと良い感じ。 パラダイ王国に舞台が移って、ここでも月光仮面が現れるのですが、ジープも通れない密林と山岳の土地でオートバイに乗るのはいかがなものか?、どうやって日本から運んできたの?とケチをつけたくなるのは野暮か。
2015年03月23日
コメント(0)
最近はDVD映画鑑賞そっちのけで横溝正史さんの小説ばかり読んでいます。「本陣殺人事件」(角川文庫)収録の「黒猫亭事件」を読み終えました。「黒猫亭事件」は昭和22年(1947)12月に「小説」という雑誌に掲載された作品。 金田一耕助が居候している割烹旅館松月のことや、後援者の風間俊六(土建屋の親分)との関係などが描かれ、興味深いものがあります。 昭和22年3月20日、午前零時ごろ。 G町の盛り場の裏手、墓地や寺がある、まだ戦災の焼け跡が残る暗く淋しい裏坂を巡回していた長谷川巡査は、坂下の通り角に面した「黒猫」という酒場にさしかかる。 ざくっざくっと土を掘るような音を聞いて不審に思った巡査がその「黒猫」の庭に入って見ると、崖の上の蓮華院の日兆という若い僧侶が庭を掘っていた。 穴の中を覗いた長谷川巡査は仰天。 懐中電燈を向けて穴のなかを見ると半分土でおおわれた女の屍体がよこたわっていた。 その裸の死体は、腐乱していて顔が崩れていて判別不能。 検死の結果、後頭部を強打されたのが死因で、死後3週間ほど経っていることが判明。「黒猫」の経営者夫婦は、1週間ほど前に店をたたみ売り渡してどこかへ引っ越していったという。 警察は、「黒猫」で働いていた女性たちに話を聞くことにします。 探偵小説のトリック分類上での「密室の殺人」「一人二役」「顔のない屍体」など、この「黒猫亭事件」は「顔のない屍体」もので、それに「一人二役」が加えられている。「顔のない屍体」は、殺された被害者であると信じられていた人物Aは被害者ではなくて犯人であり、行方をくらました犯人であると思われているBが屍体の当人である被害者であった、とされるものです。 この「黒猫亭事件」はそのような定石というかトリックに真っ向勝負の作品だそうで、短編ながらも一気に読ませる面白さがありました。 内容はここでは触れないことにしますが、物語とはまったく関係のないことについて。「黒猫」には3人の女性が働いていて、お君という住み込みの17歳の娘のほかに自称23歳の加代子、おなじく22歳の珠江。 横溝先生は彼女たちの描写に、「二人とも負けず劣らずどぎつい化粧をして、負けず劣らず国辱みたいな洋装をしていたが、珠江のほうが、食糧不足はどこの国の話かと、いわぬばかりの肉付きをしているのに反して、加代子のほうはきりぎりすのように痩せて」と書いています。「きりぎりすの加代子がこんなことをいった」とか「食糧不足そこのけの珠江も」など、終戦後2年の昭和22年らしさというか、その時代特有の言い回しに、可笑しみを感じました。
2015年03月22日
コメント(0)
横溝正史さんの「本陣殺人事件」(角川文庫)収録の「車井戸はなぜ軋る」を読みました。 昭和24年(1949)に「読売春秋」という雑誌に掲載された作品。エンディングに金田一耕助が少しだけ登場しますが、初出時には登場せず、のちに書き加えたものだそうです。ヒロイン鶴代が兄 慎吉に宛てた手紙によって構成されていて、小説としてはちょっと異色。 K村に旧幕時代に年番で名主を務めたという家柄の本位田、秋月、小野の三家がある。 しかし明治の世となり名主の職をうしなって以来、秋月、小野の両家は微禄してゆき、本位田家のみが昔以上に栄えたという。昭和8年ともなると三家の立場ははっきりと分かれていた。 小野家は村を去り神戸に移住。 秋月家は村に残ってはいたもののかつての勢いはなく、本位田家から金銭の援助を受けているような状態であり、当主 善太郎は生活無能力者である。 善太郎は本位田の当主 大三郎の前ではへりくだっていたが、裏では大三郎のことを口を極めて罵倒している。その善太郎と大三郎の妻が同時期に見ごもり、同時期に男児を生んだ。 ところが善太郎の妻が産んだ子 伍一は本位田大三郎の目と同じように瞳孔が二重になっていたことで、村民は公然と伍一が大三郎との不義の子であると噂し、それは誰が見ても頷けた。 屈辱と絶望に耐えかねた善太郎は車井戸に飛び込んで自殺。1年後には善太郎の妻が同じく車井戸に飛び込んで命を絶った。 不遇の身となった伍一は姉 りんとともに水呑み百姓として野良仕事をしなければならない。 一方の本位田大三郎の子は大助と名づけられ、不自由なく育てられた。 やがて戦争が始まり、伍一と大助は応召し、同じ部隊に属した。戦地では旧怨を忘れて二人は仲が良かったというが、伍一は戦死し、大助は戦場で両目を失ってしまう。 戦争が終わり、盲目となった大助はガラスの義眼を嵌めて復員。 本位田家には夫の帰りを待つ大助の妻 梨枝、大助の妹 鶴代、大助と鶴代の祖母 槇(まき)と下働きの鹿蔵の4人が暮らしていて(他に病気療養中の次兄 慎吉がいる)、そこに大助が復員してきたのである。 兄の帰還は喜ぶべきことだが、ヒロイン鶴代には、うつろな義眼であらぬ方を見つめ、性格も陰気で無口になった兄 大助が恐ろしく感じる。陽気で明るかった昔の大助とは別人のようで、大助と伍一が入れ替わっているのではないか、それは伍一の復讐ではないか、と考えるようになってゆく。大助の妻 梨枝もはっきりとは言わないが、同じ思いを抱いているようだ。 そして惨劇が起きる。暴風雨の夜、梨枝が斬殺され、大助が車井戸の底から胸をえぐられた死体となって発見されたのである。 物語は鶴代が肺を患って療養所にいる次兄 慎吉に宛てた手紙で構成され、盲目となった兄 大助が別人(秋月伍一)ではないかとの疑惑を訴える内容で展開します。 戦死したのは兄の大助のほうで、伍一は両目をつぶして(瞳孔が二重という特徴があるため)大助になりすまして復員し、本位田家を乗っ取ろうと企んでいるのではないか。 兄が出征するときに奉納した手形と比較して別人かを確認しようという、鶴代の考え。人物入れ替わりと奉納手形で指紋を比べるというのは「犬神家の一族」と同じですね。長編「犬神家の一族」の前には、このような短編でその案が使われていたようです。 同じ屋根の下で生活している人物がまったくの別人であり、害意を抱いているのではないかという恐怖。 ヒロインが心臓に病気を持つ17歳の少女であるという設定が効いていて、彼女の推理で犯人が判明します。 表題作の「本陣殺人事件」よりも、この短編「車井戸はなぜ軋る」のほうが面白かった。シンプルで凝ったトリックもなく、最後の逆転劇。これは傑作だと思います。「本位田」という名字は岡山県か兵庫県に多いのでしょうか?、吉川英治さんの「宮本武蔵」にも本位田又八という人物がいるし。 画像は「本陣殺人事件」自作カバーです。
2015年03月21日
コメント(0)
横溝正史さんのミステリ小説「本陣殺人事件」(角川文庫)を読みました。「本陣殺人事件」が約190ページ、「車井戸はなぜ軋る」が約77ページ、「黒猫亭事件」が約125ページ。全3編が収められています。 先日、「江戸川乱歩傑作選」を読んだあとなので、横溝正史さんの文章にふれると、やはりこちらのほうが好みにあっていて、いいな、と。「本陣殺人事件」は昭和21年(1946)に雑誌「宝石」4月号~12月号に掲載。「車井戸はなぜ軋る」は昭和24年(1949)に「読売春秋」という雑誌に掲載。「黒猫亭事件」は昭和22年(1947)12月に「小説」という雑誌に掲載。 (「宝石」「読売春秋」「小説」がどんな雑誌かは不明)「本陣殺人事件」は金田一耕助が初登場した作品です。 アメリカに渡っていた金田一耕助が麻薬中毒になって在留日本人界の持てあまし者になっているところを久保銀造という人物と出会い、彼の後援で麻薬中毒を脱し、心を入れ替えて勉学につとめカレッジを卒業する。 昭和11年頃、帰国した金田一は久保銀造の援助で探偵事務所を開設します。 金田一耕助シリーズ第1作だけに、このような人物解説がなされているのが特徴でもあり、作中で世界の探偵小説談義がなされるのも特徴的です。 その恩人である久保銀造の姪 久保克子が岡山県のとある本陣の末裔である一柳賢蔵と婚礼をあげた夜に新郎 賢蔵とともに斬殺される事件が起こる。 犯行がおこなわれた離れ屋は内側から雨戸が閉め切られ、降り積もった雪の地面には足跡がなく、何物も離れ屋から外へ出た形跡がない。 密室殺人事件というわけで、県警の磯川警部(金田一耕助とはなじみになる)が出馬するが、久保銀造は独自に金田一耕助を呼び寄せます。 密室殺人事件の、琴糸と水車を利用したトリックは、そんなにうまくいくかな?と思わせるし、犯行動機もなにか納得がいかない感じがする。 昭和初期の時代が背景なので雰囲気はあるけれども、ミステリ作品としてはそれほどの傑作とは思えないものです。作品的には「黒猫亭事件」のほうが良くできているのでは。 余談ですが、この「本陣殺人事件」は映画化が2度なされていて、「三本指の男」(47)では片岡千恵蔵が、1975年の「本陣殺人事件」では中尾彬さんが金田一耕助を演じています。 この中尾彬さんの「本陣殺人事件」は来月、4月11日、30日に「日本映画専門チャンネル」で放送されるようです。
2015年03月20日
コメント(0)
「ロボコップ」(2014)ROBOCOP監督 ジョゼ・パヂーリャ製作 マーク・エイブラハム エリック・ニューマン脚本 ジョシュア・ゼトゥマーオリジナル脚本 エドワード・ニューマイヤー マイケル・マイナー撮影 ルラ・カルヴァーリョ音楽 ペドロ・ブロンフマン出演 ジョエル・キナマン、ゲイリー・オールドマン マイケル・キートン、アビー・コーニッシュ、ジャッキー・アール・ヘイリー サミュエル・L・ジャクソン 本編117分 総天然色 シネマスコープサイズ 映画「ロボコップ」(1987)は1988年2月に日本公開されて大ヒット。続編として「ロボコップ2」(90)「ロボコップ3」(92)が作られました。 2014年3月公開の本作は続編でもリメイクでもなく、もう一度新しく最初から出発というリブート(再起動)作品といえるようです。 ポール・ヴァーホーヴェン監督の「ロボコップ」(87)が傑作だっただけに、どうしても比較してしまって、見る前からどうせオリジナル版にはかなわないだろうと先入観を持ってしまう。なので、あまり期待せずに見たせいか意外におもしろく見ることができました。「ロボコップ」(87)は傑作、「ロボコップ2」(90)は大嫌い、「ロボコップ3」は案外イケる、この最新版「ロボコップ」は「ロボコップ」(87)には劣るけれども「健闘している」といった位置付けになります。 2028年。巨大企業オムニ社がロボット開発で世界最先端の技術を誇っている。 同社のロボットが世界各地で軍事利用される中、アメリカではロボット配備規制法が可決されようとしており、アメリカ国内での販路拡大を目指すオムニ社は、議員の買収やテレビ番組を利用して世論を誘導し、規制法の廃案を画策する。 デトロイト市警のアレックス・マーフィ(ジョエル・キナマン)には愛する妻と息子がいて、彼は追求中の組織によって車に爆弾を仕掛けられ瀕死の重傷を負う。 オムニ社のノートン(ゲイリー・オールドマン)博士による最先端ロボット技術を駆使した手術が施されて一命を取り留めたマーフィはサイボーグ警官「ロボコップ」として復活します。 オムニ社の社長セラーズ(マイケル・キートン)はこのロボコップを広告塔として利用すべく、マーフィを現場に復帰させる。ロボコップとなったマーフィは、その驚異的な捜査能力で街の治安維持に貢献していくのだが。 1987年のオリジナル版との大きな違いは「家族の絆」が描かれることです。 オリジナル版ではマーフィーは死んだことにされ、妻と子に捨てられてしまうのですが、今作は彼の妻子が重要な役になっている。夫の身体が機械になってしまっても愛せるのか。ロボットの身体になった父を息子は愛することができるのか。 マーフィの奥さんクララ(アビー・コーニッシュ)の役は前作にはなかったもので、夫婦愛、家族愛が描かれるのは現代の娯楽映画としては正統派なのでしょう。このほうが救いがあっていいですね。 奥さんが重要な役で出てくるためか、相棒のアン・ルイス巡査(ナンシー・アレン)の役が男性に変更されている。前作ではロボコップになった相棒を健気に支援する女性警官がいて私のお気に入りでもあったのですが、女性が2人になるとバランス的におかしなものになると思われ、相棒の性別変更は仕方のないところでしょう。 最大のテーマは、ロボット兵士やロボット警官を採用することの可否ですね。 ベトナムやイラクやアフガニスタンで多くのアメリカの若い兵士が死に、犯罪多発都市では多くの警官が殉職している。それらをロボットに置き換えることで人間の生命を失わずにすむだろうというのは当然の論理ですが、感情のないロボットを兵士や警官にして、かれら機械に人間の生命財産の安全をゆだねるのはいかがなものか?と。
2015年03月19日
コメント(0)
新潮文庫の「江戸川乱歩傑作選」を読み終えました。 大正12年から昭和4年にかけて発表された9篇を収めた短篇集です。「二銭銅貨」 大正12年(1924)「二廢人」 大正13年(1924)「D坂の殺人事件」 大正14年(1925)「心理試験」 大正14年(1925)「赤い部屋」 大正14年(1925)「屋根裏の散歩者」 大正14年(1925)「人間椅子」 大正14年(1925)「鏡地獄」 大正15年(1926)「芋虫」 昭和4年(1929) 昨日、江戸川さんの作品をもっと読みたいと書きましたが、「鏡地獄」を読んでいるあたりで食傷気味になりました。 犯罪嗜好癖と登場人物たちの変態性を強く感じるようになり、満腹状態というか、もうこれでいいといった感じに。私の好みでは江戸川乱歩よりも横溝正史さんのほうが合っているようです。 この短編集でおもしろかったのは、「心理試験」と「屋根裏の散歩者」、すごいと思ったのはやはり「芋虫」です。「心理試験」は「罪と罰」を思わせるようなもので、学資欲しさに大金を隠し持つ老婆を殺害した青年を主人公にした作品。「屋根裏の散歩者」は有名な作品で、屋根裏の散歩と覗き見。天井板の節穴から毒薬をたらして下の部屋に眠っている男を殺害する。人生に倦怠した主人公が遊戯として殺人をおこなうものですが、人生に倦怠して犯罪に刺激を求めるというテーマはこの短編集において強く感じます。「芋虫」は、 戦争で両手両足を失い、顔面にもひどい傷を受け、耳が聴こえず、口もきけない。 そんな夫を介護する妻 時子の物語です。彼女の無抵抗な夫への嗜虐心が描かれます。 まさに「芋虫」のごとく毛布にくるまって、「肉塊」と化した夫を三年にもわたって献身的に介護している時子は、周囲から貞淑の誉れのように言われるのですが、心は疲れきっていてサディスティックな行為にでてしまう。 発表当時は反戦小説として受け取られたそうですが、江戸川先生はそんな意図で書いたのではなく、苦痛と快楽と惨劇を書きたかったのだと言っているそうです。 そんなわけで、江戸川乱歩先生の作品は、この「江戸川乱歩傑作選」一冊で満腹、お代わりはもういいや、です。
2015年03月18日
コメント(0)
先日来、横溝正史さんの「女王蜂」「悪魔の手毬唄」「八つ墓村」「犬神家の一族」(角川文庫)を連続して読んで、久しぶりの読書の楽しさを味わっています。 最近はDVDで映画を見るよりも本ばかりを読んでいますが、横溝作品は一時休止として、いまは「江戸川乱歩傑作選」(新潮文庫)を読んでいます。「二銭銅貨」「二廢人」「D坂の殺人事件」「心理試験」「赤い部屋」を読み終え、「屋根裏の散歩者」を読んでいるところ。 このあとは「人間椅子」「鏡地獄」「芋虫」と、全部で9篇の短編集です。 この新潮文庫の「江戸川乱歩傑作選」は息の長い本で、初版発行が昭和35年12月24日。いま読んでいるのは平成25年6月10日の99刷です。 時代と共に消えていった文学作品が多いなかで、この文庫本は2015年現在でもふつうに書店の棚に見られるし、毎年夏に書店に並ぶ恒例の「新潮文庫の100冊」にも入っています。 私が横溝正史さんの作品を知ったのは角川映画「犬神家の一族」の公開時に大ブームになった時ですが、それ以前には江戸川乱歩さんのほうに馴染んでいました。 というより恥を忍んで言えば、当時は横溝正史さんを知らなかったけれど、江戸川乱歩は小学校の図書室での読書時代から知っていました。図書室にあったポプラ社の「少年探偵団」「怪人二十面相」などや「鉄塔の怪人」「妖人ゴング」「青銅の魔人」など少年向けの作品によってですが。 その後、角川文庫から江戸川乱歩作品集として次々と代表的な作品が刊行された時に全巻をそろえて夢中になって読んだものです。 昭和48年(1973)から昭和50年にかけて全部で20冊ばかり刊行されたかと思うのですが、宮田雅之さんの切り絵画による青い表紙の文庫本。青と黒を基調にした、不気味でありながら、美しくて幻想的な表紙カバーでした。「陰獣」「黒蜥蜴」「蜘蛛男」「悪魔の紋章」などの表紙が特にすばらしく、これらの本は現在は絶版になっていて、処分してしまった軽率が大いに悔やまれます。 そんなわけで、いまはDVDの映画鑑賞より横溝さんの金田一耕助にはまり、再び江戸川さんの作品を読んでみようかと思っているところです。
2015年03月17日
コメント(0)
英国のテレビ映画「秘密指令S」。 数年前のまだアナログ時代にスカパーの「スーパー!ドラマTV」チャンネルで放送されたさいに録画した第1話と第2話を鑑賞しました。 国際刑事警察機構インターポールから秘密指令を受け、一見不可思議な事件を捜査する3人組の探偵物語。 ミステリ作家のジェイソン・キング(ピーター・ウィンガード 声:久松保夫)、行動派のスチュワート・サリバン(ジョエル・ファビアニ 声:広川太一郎)、コンピュータープログラマーのアナベル・ハースト(ローズマリー・ニコルズ 声:池田和歌子)の3人が、「フリンジ」のような不可思議な事件に挑んでゆく。第1話「怪奇ロンドン空港」 イギリスのヒースロー空港に旅客機が無線で誘導着陸を求めて来て、降りてみると乗務員も客も誰一人乗っていなかった。この不思議な事件の解決にあたるのが、キング、サリバン、アナベルの3人組。その問題の飛行機に、自由諸国一番と評判の高いボス工業の社長ラルフ・ボスが乗っていたことが分かり、この大物が事件に関係しているとキングはにらむ。第2話「謎の闇から来た男」 ある夜、ロンドンの裏通りでアベックが車の中で愛をささやいていると、目の前に宇宙服姿の男が現れ、そのまま死亡する。宇宙服内の酸素がなくなった窒息死と判明。男が着ていた宇宙服はアポロ計画の宇宙服でアメリカから借りたものだった。この難事件を解決するため、キング、サリバン、アナベルの3人組がかり出される。 金沢で放送されたのを覚えているし、この番組は毎週見ていました。水曜夜8時の放送。記憶では石川テレビ(ITC)だったと思うのですが、もしかすると北陸放送(MRO)かもしれない。 1969年4月1日に石川県で民放テレビ局の第2局めにあたる石川テレビの放送が開始されました。それまでの民放局は北陸放送しかなかったので、この民放第2局放送開始は石川県のテレビ放送環境では画期的なできごとでした。それまでのテレビはVHF受信専用だったので北陸放送とNHKしか見ることができず、UHFの石川テレビを受信するにはテレビにコンバーターを取付けないとならなかった。だから放送開始当初はまだ見られない家庭が多かったのですが、その後、オールチャンネルTVが発売されてVHFもUHFも視聴可能になりました。「秘密指令S」はそんな1969年頃だったかに放送されて、なので石川テレビだと思うのですが・・・(北陸放送かも?自信なし) 映画では「007シリーズ」や「沈黙部隊」「破壊部隊」などマット・ヘルムの「部隊シリーズ」、「電撃フリント」シリーズ。テレビでは「0011ナポレオン・ソロ」や「スパイ大作戦」「プロ・スパイ」などがあって「スパイもの」が大ブームだった頃の「秘密指令S」です。 この番組の特徴はやはりジェイソン・キングの日本語吹替えでしょう。久松保夫さんですが、「御身は」とか「何をしておられる」「異存はござらん」など武家の殿様ことば。サリバンの広川太一郎さんとアナベルの池田和歌子さんのギャグをかました台詞のやりとりなど、英語の原語にはない独自の世界を創り出しています。 いま見ると、他愛のない内容であり、懐かしいだけの価値かもしれないけれど、昔はこんなTVドラマもあったということで。
2015年03月16日
コメント(0)
チャールズ・ブロンソン主演のテレビ映画「カメラマン・コバック」のDVDボックスを買いました。 コスミック出版の製品で定価1980円が1780円(税込み)。20日30日は5%オフということで1691円です。 DVD10枚組で、1枚に2話ずつ入っていて全20話、各話約26分。日本語吹替えはなくて英語と字幕です。 原題は「MAN WITH A CAMERA」、「カメラを持つ男」ですが、邦題の「カメラマン・コバック」のほうがいい感じがする。アメリカのABC局で1958年から1960年にかけて放送されたそうで、日本ではいつ放送されたのか?、金沢で放送されたのかも不明です。 1958年といえば、映画の「荒野の七人」が1960年だから、それ以前のまだほんとうのチョイ役俳優だったころのチャールズ・ブロンソンさん主演のテレビ映画「カメラマン・コバック」です。 主人公のマイク・コバックは元従軍カメラマンで、いまはフリーとして特ダネ写真を目的に事件を追っている。毎回事件に巻き込まれながらもカメラを武器に解決してゆく。 これまでブロンソンさんの若いときのテレビ主演作としてタイトルは聞いていたけれど、見るのはまったくの初めてです。 とりあえず1枚めに入っている「不屈のボクサー」と「危険な情報提供者」、2枚めの「殺人犯の横顔」「カメラマンの醍醐味」を鑑賞。「不屈のボクサー」 コバックがタイトル戦を間近に控えた幼馴染みのボクサーを取材にいく。 ボクシング試合の八百長計画を暴く話で、悪徳プロモーターが、これまでの試合に勝たしてやったので今度は負けろとボクサーを脅迫する。コバックは八百長の関係者が集まっている現場写真を撮ろうとするのですが。「危険な情報提供者」 電話で呼び出されたコバックは、ギャングの見せしめのための殺人現場写真を撮らされる。 コバックが警察の頼みで囮となってギャング一味を捕える話。写真館を開いている父親がギャング団に捕まってしまう。「殺人犯の横顔」 友人が新聞社をしている町にやってきたコバックは、偶然に銀行強盗の場に居あわせ、人質として連れ去られてしまう。強盗が自己顕示欲の強い異常者で、コバックが撮った犯行現場写真を新聞社に送らせ、新聞に載った自分の写真を見て有名人になったと喜ぶ。コバックは彼が次に襲う場所を写真の中にヒントとして残す。「カメラマンの醍醐味」 コバックが火災現場の野次馬を撮影したネガと写真を街のチンピラに奪われる。 その理由をつきとめてチンピラたちから老ギャングを救う話。写真に写っていた女性(アンジー・ディキンソン)は老ギャングの娘で、彼女を捜すために父の写真館にある何枚もの女性ポートレイトの目鼻を切り貼りしてモンタージュ写真を作る。 第4話にはアンジー・ディキンソンさんがゲスト出演しています。映画「リオ・ブラボー」(1959)の前年くらいにあたるのでしょうか。 一話が26分くらいなのでテンポ良く展開し、見やすい。この当時のテレビ映画は外国のも日本のも30分枠が主流で、西部劇も探偵ものも時代劇も全部30分でしたね。
2015年03月15日
コメント(0)
3月14日、北陸新幹線の長野-金沢間(延長228.1キロ)が開業し、東京まで一本の動脈でつながりました。 北陸新幹線は1973年に整備計画が決定したのですが、時の政治がからんだり、旧国鉄の経営悪化などで着工が先送りされるなど、構想から開業まで50年を要しました。富山県と石川県人にとって念願の新幹線開業です。 これまで金沢から東京へは特急「はくたか」で越後湯沢まで行き、上越新幹線に乗り継ぐしかなかったのですが、これからは長野経由で東京まで直通で行くことができるようになりました。所要時間もこれまでより約1時間20分早い最短2時間28分に。金沢-長野は1時間5分です。 ただ単に乗り継ぎがなくなって楽になっただけではないし、新幹線が開通したという物理的効果だけではなく、精神的効果のほうがより大きいのでしょう。 金沢市民にとっては鉄道が福井方面から金沢まで開通し、金沢駅が営業を始めた明治31年(1898)4月1日いらいの画期的なできごとだと思います。 鉄道が金沢まで開通した明治31年(1898)4月1日は激しい雨降りだったそうです。開業を祝う行事(踊りや太鼓、相撲)が中止されたとか。 117年前のその日に比べると、北陸新幹線開業の2015年3月14日は好天にめぐまれ、金沢にお迎えするお客様に最高のおもてなしができたことと思われます。 私の場合は東京へというよりも、まずは長野へ行きたいと思っています。1時間で長野まで行くことができるなんて素晴らしいことです。なによりも長野県が身近になりました。
2015年03月14日
コメント(0)
「ロストワールド ジュラシック・パーク」(1997) インジェン社の社長がハンターたちを雇って、ヘリコプターで大がかりな装備を持ってソルナ島へのり込みます。 ハンターたちがジープに分乗して恐竜たちを追い回して網や麻酔銃を使って捕獲するシーン。 これはどこかで見たようなと思ったら、ハワード・ホークス監督の「ハタリ!」(1962)でジョン・ウェインたちがトラックとジープでアフリカの野生動物を追いかけて捕獲するシーンですね。 スティーブン・スピルバーグ監督が「ハタリ!」を見ていないはずがないだろうし、ハワード・ホークス監督を尊敬していてもおかしくないでしょう。きっとホークス監督へのオマージュ的シーンなのでは? 野生動物を保護する人とハンターのように猛獣狩りの獲物として見る人との対立は、野生動物を恐竜に置き換えても成立すると思われ、この「ロストワールド ジュラシックパーク」のテーマもそういう所にあるのでは。 だからといって、捕獲されて檻に入れられた恐竜たちを主人公たちが錠を壊して逃がすのはいかがなものかと。逃がすだけならそれですんだのですが、逃げ出した恐竜がキャンプ内で暴れ回ってハンターたちを踏みつぶしたり車を破壊し大混乱におとしいれて死者が出ることになる。その結果インジェン社のハンターたちは車も機材も通信機も失うことになって、このあとの惨劇へとつながってゆく。 数学者マルカム博士(ジェフ・ゴールドブラム)とその恋人の動物学者サラ(ジュリアン・ムーア)、いっしょに島に着た2人の仲間。マルカム博士と古いつきあいがあるらしいエディ(リチャード・シフ)が崖に宙づりになったマルカムとサラを救おうと一人で奮闘するけれどティラノサウルスの夫婦に二つに食いちぎられてパクリと食われてしまう。 彼が死んだのは、サラたちが脚を骨折したティラノサウルスの仔をトレーラーに連れてきたことで親ティラノサウルスを怒らせたから。動物保護というより自己満足にすぎない身勝手で無責任な行動で仲間を死なせてしまう。その無責任行動を本人たちはまったく自覚せず反省の色もない。 このサラという女性、野生動物の行動にくわしいといいながらも、仔を連れてきたら親が取り戻そうと追ってくると考えなかったり、仔恐竜の血が付着した上着をずっと着ていて「湿気があるので乾かないの」とか呑気なことを言う。その血のニオイが親ティラノサウルスを引きつけていると気づかない馬鹿さかげん、ほんとうにアナタは動物学者なんですか?と言いたくなります。 この映画がおもしろくないのは、主人公たちが無責任でバカな奴に思えてしまって感情移入できないからです。 インジェン社の社長たちはティラノサウルスの雄親とその仔を捕獲し、貨物船でアメリカ本土のサンディエゴへ連れてくる。サンディエゴには「ジュラシック・パーク」が建設されている。 その貨物船が港に近づいてくるのだけれど速度を落とさない。貨物船でなにかが起こっている。何があったのか?桟橋に激突して停まった貨物船に乗り込んだ人たちが見た物は食いちぎられた乗組員の死体の残骸(画面には映らないけれど)。 乗組員を食って無人にしたのは船倉にいるティラノサウルスの仕業ではないですね。おそらくヴェロキラプトルが船内に侵入していたのだろうけれど、映画にはその説明がありません。それがあれば「エイリアン」のような恐ろしい場面になっただろうに。 クライマックスは大都会のサンディエゴでティラノサウルスが暴れて、車やバスが衝突したり大破して、逃げ惑う人々で街はパニックにおちいる。 大都会に連れてこられた怪獣が暴れるというのは「キング・コング」(1933)ですね。夜の大都会で恐竜が暴れるのはスピルバーグ監督が撮りたいと希望したそうです。
2015年03月13日
コメント(0)
1997年外国映画興行成績です。 金額は配給収入。1位「インデペンデンス・デイ」 66億5000万円2位「ロスト・ワールド ジュラシック・パーク」 58億円3位「スピード2」 20億円4位「フィフス・エレメント」 16億円5位「スリーパーズ」 14億5000万円6位「身代金」 13億円7位「デビル」 13億円 8位「デイライト」 12億9000万円9位「101」 11億円10位「スター・ウォーズ特別篇」 10億円 1993年7月に公開(金沢グランド劇場)されて大ヒットした「ジュラシック・パーク」(93)の続編(97年7月公開)です。 マイクル・クライトンの原作小説はハヤカワ文庫から出ていて、こちらもベストセラー。その映画化ですが、前作ほどの面白さはありません。「ロスト・ワールド ジュラシック・パーク」(1997) THE LOST WORLD: JURASSIC PARK監督 スティーヴン・スピルバーグ製作 コリン・ウィルソン ジェラルド・R・モーレン製作総指揮 キャスリーン・ケネディ原作 マイクル・クライトン(早川書房刊)脚本 デヴィッド・コープ撮影 ヤヌス・カミンスキー特撮 インダストリアル・ライト&マジック特殊効果 スタン・ウィンストン音楽 ジョン・ウィリアムズ出演 ジェフ・ゴールドブラム、リチャード・アッテンボロー ジュリアン・ムーア、 ピート・ポスルスウェイト、ヴィンス・ヴォーン アーリス・ハワード、アーリス・ハワード 本編129分、総天然色 ビスタサイズ コスタリカ沖合いの孤島イスラ・ソルナ。そこにはイスラ・ヌプラル島での「ジュラシック・パーク・リゾート計画」に必要な恐竜をクローン生産させるための「サイトB」と呼ばれる研究拠点があり、前作での事件後パークは閉鎖されたが、無人のソルナ島では野放しになった恐竜たちが滅ぶことなく繁殖を続けていた。「ジュラシック・パーク」建設をおこなったインジェン社のハモンド(リチャード・アッテンボロー)は社長の座を退き会長となっている。彼は恐竜たちの野生のままの生態を研究することで過去の償いと名誉回復をめざし、前作での生存者である数学者マルカム博士(ジェフ・ゴールドブラム)に調査隊に加わってほしいと依頼する。一度は断ったマルコムだが、恋人の動物学者サラ(ジュリアン・ムーア)がすでに危険なソルナ島へ出発したと聞かされ、彼女を連れ戻すために調査隊と共にソルナ島へ向かうことになる。 インジェン社の新社長ルドロー(アーリス・ハワード)は会社の経営を立て直すためにソルナ島の恐竜を生け捕ってきてアメリカ本土にジュラシック・パーク建設を計画。腕利きのハンターたちを雇って大量の最新機材とともにソルナ島へ送り込む。 「ロストワールド ジュラシック・パーク」(97)予告編です。 第1作では古生物学者を演じたサム・ニール(アラン・グラント博士)とローラ・ダーン(エリー・サトラー博士)がとても良く、姉弟2人の子役も好演していました。 それが続編の今作では脇役の数学者マルカム博士は別として、その周囲の人々、登場人物たちにまるで魅力が感じられない。マルカム博士の恋人の動物行動学者サラでさえ他人の迷惑をかえりみない自分勝手な人間として描かれている。マルカム博士が養女としている黒人の女の子でさえもが自分勝手な嫌な子供で可愛げが無く、見ていてイラッとしてしまう。 原作とはずいぶんちがった映画化になっていて、キャスティングが悪いのか脚本がだめなのか、前作が傑作だっただけに、格段に内容が落ちる作品になっています。これではスピルバーグ監督である必要がないのでは。 特撮でリアルに動き回り走り回り飛び回る恐竜たちは、これだけはお見事。どうやって撮ったのか不思議なくらいです。 第2作である「ロストワールド ジュラシック・パーク」ですが、これに比べると評判よくない第3作「ジュラシック・パークIII」(2001)の方が、私はずっと面白いと思うし、好きですね。
2015年03月12日
コメント(0)
犬神佐兵衛の遺言は、野々宮珠世が佐清、佐武、佐智の3人のうち誰かと結婚し、その2人に全事業の権利と全財産を譲るというもので、珠世がこの3人と結婚しないときや3人が死んだ時にはその分与分の財産は最終的に青沼静馬に渡ることになっている。 簡単にまとめると、「犬神家の全財産、ならびに全事業の相続権を意味する三種の家宝「斧、琴、菊」は次の条件のもとに野々宮珠世に譲る。 野々宮珠世はその配偶者を犬神佐兵衛の三人の孫、佐清、佐武、佐智の中から選ぶこと。 その選択は野々宮珠世の自由であるも、もし珠世が肯んじず、他に配偶者を選ぶ場合は、珠世は斧、琴、菊の相続権を喪失する。 野々宮珠世が相続権を失うか、死亡した場合は、犬神家の全事業は佐清が相続し、佐武と佐智は佐清の事業経営を補佐するものとする。 犬神家の全財産は公平に五等分され、五分の一ずつを佐清、佐武、佐智に与え、残りの五分の二を青沼菊乃の一子青沼静馬に与えるものとする。 佐清が死亡した場合、犬神家の全事業は共同者の佐武、佐智に譲られ協力して事業を守り育てること。ただし佐清の受くべき遺産の分与額は青沼静馬にいくものとする。 佐武、佐智が死亡した場合は、その遺産分与額は同様に青沼静馬にいくものとする。 三人のうち何人が死亡してもその分与額は必ず青沼静馬にいくものとする。 佐清、佐武、佐智の三人とも死亡した場合は犬神家の全事業、全財産はすべて青沼静馬のものとなり、斧、琴、菊の三種の家宝は彼のものとする」 本文中にも、「翁(犬神佐兵衛)は松子、竹子、梅子の三人のあいだに血で血を洗うような葛藤の、起こることをのぞんでわざとあのような奇怪な遺言状をつくったのではなかろうか」とありますが、この遺言状が発表された時から、犬神家の一族に血の惨劇が起こってゆきます。 本来ならば相続人は松子、竹子、梅子と青沼静馬の4人ですが、松子竹子梅子はこの遺言状では完全に無視されています。現在の民法では遺留分の請求などできるようであり、この物語が昭和2×年を背景にしているからこそ通用するのでしょう(雑誌「キング」に連載されたのは昭和25年~26年)。 法律的に佐兵衛の遺言状が有効かはおいといて、この「犬神家の一族」は横溝正史さんの代表作であり、もっとも知名度の高い作品だけあって面白いミステリ小説です。 写真は角川文庫の旧版「犬神家の一族」で表紙は杉本一文さんのイラストです。 現在、この杉本一文さんのイラストが見られなくなったのはちょっと寂しいですね。 日本のミステリ小説界において金田一耕助は名探偵の代表格です。 しかし日本ミステリ小説上、あるいは世界の探偵推理小説に登場する名探偵の中でも、殺人を事前に防げないという不名誉を与えられた探偵でもあるようです。 最後にはきっちりと事件の真相と謎解きをしてくれますが、そこへいくまでに何人も何人も殺される。この景気良く連続殺人を許してしまう探偵というのが、横溝正史さんの金田一耕助シリーズの面白さでありましょう。 横溝正史さんのミステリ小説は、地方の因習や血縁関係の因縁など、人間が生み出す愛憎のドラマであり、その事件に関係する人物たちを細密に描写する事に主眼が置かれていて、それが物語に深みを与えています。 金田一耕助は主人公ではなく、事件の傍観者でしかない。 もしもその金田一耕助が、登場人物たちの愛憎劇の中にしゃしゃり出て当事者の犯罪計画を妨害?(阻止)したとしたら、そんなものを誰が好んで読むものか。気前よく展開される連続殺人事件こそ横溝正史さん作品の醍醐味なんだから。
2015年03月11日
コメント(0)
1976年日本映画の興行成績です。 金額は配給収入。1位「続人間革命」 16億700万円2位「犬神家の一族」 15億6000万円3位「男はつらいよ 葛飾立志篇」 11億9100万円4位「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」 9億7400万円5位「絶唱」 9億1800万円6位「風立ちぬ」 7億9200万円7位「トラック野郎 爆走一番星」 7億7700万円8位「嗚呼!! 花の応援団」 6億4000万円9位「不毛地帯」 5億4400万円10位「トラック野郎 望郷一番星」 5億4300万円 1976年11月公開の角川映画「犬神家の一族」(配給は東宝)は、それまでの日本映画にはなかった(と思う)角川春樹さんの大がかりな宣伝によって大ヒットした当時、片町の金劇(金沢劇場)の前に大きな看板や広告ポスターが出ていました。 映画公開にあわせて横溝正史さんの金田一耕助シリーズやミステリ小説が角川文庫から次々と刊行されて、本屋さんの棚には黒い背の文庫本がズラリと並んでました。 表紙は杉本一文さんによるおどろおどろしいイラストで、若い女性が買うには抵抗があるような物凄いのもありましたね。 怪奇性や猟奇性の強いものから芸術性の強いものまで、自分的には「本陣殺人事件」や「獄門島」「夜歩く」「三首塔」「仮面舞踏会」などのイラストが好きだったのですが、現在は新しいカバーに変更され、杉本一文さんの表紙ではなくなりました。 1976年末に公開された市川崑監督の映画「犬神家の一族」(石坂浩二 主演)を私も当時やはり角川商法に乗せられて見に行ったくちですが、この映画が面白かったとすれば、それは横溝正史さんの原作小説に負っています。「女王蜂」「悪魔の手毬唄」「八つ墓村」を読んで、いま「犬神家の一族」を読み始めました。 何度も読んだ本なのに、やはり細部を忘れているせいか、読み始めると夢中になってしまう面白さ。金田一耕助シリーズとして「八つ墓村」が異色作とすれば「犬神家の一族」は正統派ですね。 昭和2×年、那須湖畔の屋敷で製糸業で莫大な財産と権力を築き上げた犬神佐兵衛(いぬがみ・さへえ)3人の娘(松子、竹子、梅子)を前に息をひきとります。 遺産の配当や事業相続者を記した遺言状は、長女松子の一人息子佐清(すけきよ)が戦地から復員するのを待って公表されることとされていて、犬神家一族は佐清の帰りを待っている。 佐兵衛には正妻がなく、それぞれ母親の違う娘3人と、それぞれに夫と1人ずつ息子(佐清、佐武、佐智)がいて、お互いが憎みあい、猜疑しあい、反感を持っている。 金田一耕助は、犬神家の顧問弁護士を務める古館恭三の法律事務所に勤務する若林という者から、「犬神家に容易ならざる事態が勃発し、放置したら大惨事に発展するるやもしれず、未然に防ぎたいので、ご調査を願いたい」との手紙を受け取り、那須湖畔のホテルに宿泊したのだが、その会いたいと言ってきた若林が早々に何者かによって毒殺されてしまう。 やがて佐清が戦地で顔に大怪我を負ったためとして黒い頭巾とゴムマスクで顔を隠した姿で帰ってきた。佐兵衛の遺言状は古館弁護士によって耕助の立ち会いのもと公開される。 その遺言とは、「犬神家の全財産、全事業の相続権を意味する犬神家の家宝「斧(よき)、琴(こと)、菊(きく)」を、野々宮珠世(佐兵衛の終世の恩人たる野々宮大弐の孫娘)に譲るものとする。珠世はその配偶者を佐清、佐武、佐智の3人の中から選ぶものとする。珠世がそれを肯んじない場合はその相続権を失うこととする」というものです。 3姉妹の仲は険悪となり、3人の息子たちは珠世の愛を勝ち得んとしての争う。 顔を隠した佐清が偽者ではないかと疑われ、手型を採って確認を迫られる。そして佐武が惨殺され生首を菊人形として飾られて発見されたことを発端に犬神家の一族に連続殺人が起きることになる。 長くなるので、つづく。
2015年03月10日
コメント(0)
横溝正史さんの「八つ墓村」(角川文庫)を読んでいます。 全494ページの、いま406ページまで読んで大詰めに入ろうというところです。「女王蜂」「悪魔の手毬唄」を連続して読み、「八つ墓村」と。久しぶりに読む横溝正史ミステリですが、細部を忘れているせいか、面白くて夢中にさせてくれます。 現在、書店にある「八つ墓村」の文庫本は、なぜか表紙カバーが他のとはデザインが異なっています。他のは黒地または白地に大きくタイトルから採った一文字をデザインしたものなのに、「八つ墓村」だけが無粋なイラスト(失礼)が入ったものになっている。 描かれている金田一耕助のつもりらしい人物の線描イラストが私の好みにあわず、カバーを自分で作ってしまいました(写真)。 鳥取県と岡山県の県境にある山中の一寒村。戦国の永禄の頃、戦に敗れた8人の落武者が住み着くのですが、彼らが隠し持つ三千両の黄金に目のくらんだ村人たちが襲いかかって8人を惨殺。武者たちは欲深い村人たちの裏切りに「七生までこの村を祟ってみせる」と叫んで死にます。 その後、落武者たちの祟りか、村には怪異があい次ぎ、半年後、落人襲撃の発頭人 田治見庄左衛門が家族や村人を斬り殺して、自らの首をはねて死ぬという事件が起きる。この事件の死者が8人だったことから村人たちは恐怖し、落武者の怨念を恐れ、埋めておいた8人の死骸を掘り出して八つの墓をたて、八つ墓明神として祟めた。以来この村は「八つ墓村」と呼ばれるようになったという。 その数百年後、大正×年。田治見庄左衛門の子孫 田治見要蔵が突然発狂して32人の村人を虐殺し、行方不明となる凄惨な事件が起こる(大正6年の津山33人殺傷事件がモデルになっているそうな)。 そして二十数年が経ち、戦後数年後の昭和20何年、田治見の家を継ぐために都会から八つ墓村に戻った主人公の青年 寺田辰弥の周囲で連続殺人事件が。 金田一耕助も岡山県警の磯川警部も登場しますが、物語は主人公 寺田辰弥の視点からの「一人称」で語られます。金田一耕助は脇役の一人になっている。 なので、この映画化作品である松竹の「八つ墓村」(1977)で渥美清さんが金田一探偵を演じたのは違和感がないし、けっしてミスキャストではなく、暖かみがあって飄々としたキャラクターは渥美清さんならではのものです(映画は大したものではないけれど)。 金田一耕助シリーズの一作とすれば異色作といえるのでは。「八つ墓村-おお、思い出してもゾッとする。なんといういやな名前だろう。なんといういやな村だろう」と文中にあるけれども、戦後すぐの、まだまだ田舎には因習や迷信、人々に扇動に乗せられやすい無知と無教養が残る時代で、周囲を山々に閉ざされた山村の暗く重苦しい生活を背景にして、陰惨な連続殺人事件が起きます。 犯人捜しのミステリ小説ではなく、主人公寺田辰弥が次々に襲いかかる危難を克服し、彼を一途に慕う「典子(のりこ)」との恋を成就させる冒険小説でもあるようです(典子さんがなかなか勇敢。「典ちゃん」という呼び方がいい)。 田治見家の屋敷から地下道が通じ、鍾乳洞へとつながる。迷路のように入り組んだ暗闇の鍾乳洞を提灯(ちょうちん)持って進むのが雰囲気を盛り上げて、こういう「迷路」もののミステリはいいな。
2015年03月09日
コメント(0)
「シンドバッド七回目の航海」(1958) THE 7TH VOYAGE OF SINBAD監督 ネイザン・ジュラン製作 チャールズ・H・シニア製作補 レイ・ハリーハウゼン脚本 ケネス・コルブ撮影 ウィルキー・クーパー特撮 レイ・ハリーハウゼン編集 エドウィン・ブライアント、ジェローム・トムス音楽 バーナード・ハーマン出演 カーウィン・マシューズ、キャスリン・グラント トリン・サッチャー、リチャード・エヤー 本編88分 総天然色 ヨーロピアンビスタサイズ シンドバッド船長(カーウィン・マシューズ)の船が食料と水を求めてある島に上陸すると、そこには一つ目の巨人(サイクロプス)に追われる魔術師ソクラ(トリン・サッチャー)がいた。 ソクラは一つ目巨人から「魔法のランプ」を盗もうとしていたのだが、彼を救けて船は一路バクダットへ。 シンドバッドはバクダットの王子で、船には近隣国の王女パリサ姫(キャスリン・グラント)を同行している。彼女と結婚することで両国間に平和同盟を結ぼうというのですが、腹黒い悪人の魔術師ソクラの陰謀でパリサ姫を10センチくらいに縮小させられてしまう。 ソクラの仕業だと気づかないシンドバットは彼に助けを求めます。ソクラは姫を元の姿に戻すには例の島に住むロク鳥(双頭の巨鳥)の卵の殻が必要だという。シンドバットは足りない乗組員を死刑囚から無実にすることを条件に募集し、島を目指すことに。 航海の途中で死刑囚たちが叛乱を起こしたりするが、なんとか目的地の島にたどり着く。 その島でシンドバッドと乗組員たちは一つ目巨人や巨鳥、ドラゴン、魔術師ソクラが出現させたガイコツ剣士との戦いが始まり、シンドバッドはソクラが狙う魔法のランプを手に入れ、愛するパリサ姫を元の姿に戻すことができるのか。「猿人ジョー・ヤング」(1949)「原子怪獣現る」(1953)「水爆と深海の怪物」(1955)「世紀の謎・空飛ぶ円盤地球を襲撃す」(1956)「地球へ2千万マイル」(1957)「シンバッド七回目の航海」(1958)「ガリバーの大冒険」(1960)「SF巨大生物の島」(1961)「アルゴ探検隊の大冒険」(1963)「H.G.ウェルズのS.F.月世界探険」(1964)「恐竜100万年」(1966)「恐竜グワンジ」(1969)「シンドバッド黄金の航海」(1973)「シンドバッド虎の目大冒険」(1977)「タイタンの戦い」(1981)「ダイナメーション」と命名された、人形を少しずつ動かして一コマ一コマ撮影し、アニメーションのように動かし、実写映像と合成したレイ・ハリーハウゼン先生の特撮映画です。「千夜一夜物語」を題材にした「シンドバッド七回目の航海」(1958年12月、劇場公開時の題名は「シンバッド七回目の航海」。SINBADだからこちらが正しい発音?)で、このあと「黄金の航海」(73)と「虎の目大冒険」(77)と、シリーズは3作あります。「黄金の航海」と「虎の目大冒険」は劇場公開時に見て以来、テレビやDVDなどで何度も見ているのですが、この「七回目の航海」はずっとまえにレンタルビデオで見た時にあまり面白いと思わなかったために、これまで避けてきた作品。 今回、あらためての再見です。それなりに楽しい特撮映画だけれども、やはり「黄金の航海」と「虎の目大冒険」に比べると出来ぐあいは落ちるようです。 一つ目巨人や双頭の巨鳥、ドラゴン、ガイコツ剣士とのチャンバラなど、レイ・ハリーハウゼン先生の特撮は力が入っていて見ものだが、主人公シンドバッドがおバカなのか、魔術師が悪人なのに見抜けない。愛するパリサ姫を縮小させたのが魔術師だと自分の敵を見極められないヒーローで、こんな頼りない人が船長では部下は付いてけないかも。 魔法のランプをこすりながら呪文を唱えるとランプの精が現れて危機を救ってくれます。煙とともに現れるランプの精が少年というのは、子供たちが見ると楽しいのでは。怪物なども子供に見せたいとは思うけれど、今時の子供が見たらどうでしょうか? レイ・ハリーハウゼン先生がインタビューで語っていて、「A級作品でも廃れてしまうのに、私の作品が50年間も支持されるのは嬉しい」と。 根強いファンがいて今でも熱く語られるレイ・ハリーハウゼン先生の特撮映画は、一コマ一コマ丁寧に作った、手作り感のある特撮が魅力的だからですね。現在のコンピューターグラフィック製の特撮はもっとリアルな動きを見せて迫力もあるだろうけれど、それらが50年後、60年後もファンに支持されて残っているだろうか?
2015年03月08日
コメント(0)
昨日の1977年日本映画興行成績トップ10には東映の「トラック野郎」が2本と、松竹の「男はつらいよ」が2本入っています。 第3位の「八つ墓村」も松竹で渥美清さんが金田一耕助の役をしています。この時期、渥美清さんがいかに日本映画に貢献していたか、いかにマネーメイキング・スターであったかです。 8位の「泥だらけの純情」と9位「春琴抄」は山口百恵さんの人気ぶりがうかがえます。 そして第10位の「悪魔の手毬唄」(1977)は横溝正史さんの探偵小説金田一耕助シリーズの映画化。 監督は「犬神家の一族」につづいての市川崑さん。主演は石坂浩二さんです。 そして実質的ヒロインというか主役は岸惠子さんですね。青池リカの役ですが、磯川警部の若山富三郎さんとともに他の出演者を圧倒して印象に強く残ります。 青池リカの「青池」はどう読むのでしょうか?、映画では「あおち・リカ」と言ってましたが、横溝正史さんの原作小説(角川文庫)にはフリガナを振ってないのでなんと読めばいいのかわからない。「あおいけ」か?、映画と同じように「あおち」でいいのか、私はかってに「あおち」と読んでいます。 ストーリーや内容に関してはこれまでにたくさん書かれたものが出ているので省略。 青池リカの昭和7年に殺されたという亭主 青池源治郎は青柳史郎という名前の弁士だったという。(角川文庫新版212ページ)“恨みの「モロッコ」”の章で書かれているのですが、リカと金田一耕助と磯川警部が映画「モロッコ」の話をします。それまではサイレント映画(無声映画)だったのがトーキーになった。映画に音が入り、俳優の声と音楽が入るようになったということで、映画史での画期的な転換点です。 青池リカが言うには「あの映画が神戸で封切られたのが昭和6年ですけんど、あれを見たとき、うちの主人もわたしも、もうこれで完全にあかんと思いましたなあ」と。「パラマウントさんがあれではじめて、スーパー・インポーズちゅうのんをおやりになったんですん。それまではトーキーはト-キーでも、音を小そうしておいて、やっぱり弁士が説明していたんよ。それがあの『モロッコ』の大当たりでございまっしゃろう。パラマウントさんはいうにおよばず、ほかの会社もぞくぞくとスーパー・インポーズをお作りんさる。それで弁士ちゅう職業が完全にあがったりになってしまいましたん」と青池リカさんが言います。 サイレントからトーキーになった時代の悲喜こもごもの話はミュージカル映画の傑作「雨に唄えば」(52)で描かれていますが、トーキーになってもしばらくは音を小さくして弁士が解説していた、というのは今まで知らなかったことです。 日本でスーパー・インポーズ(字幕スーパーのこと)が初めて採用されたのが「モロッコ」だそうで、これで弁士が完全に廃業へと追い込まれることになる。 映画ファンには興味のある歴史的できごとを、横溝正史さんの「悪魔の手毬唄」で教えてもらいました。 映画にも「モロッコ」のラストシーンが使われています。「悪魔の手毬唄」の1977年公開時には、まだ私も若かったし、1930年の「モロッコ」という古い映画は、そのタイトルだけは知っていたけれど見たくても見られないものでした。 あれから約38年経った現在では、「モロッコ」は著作権切れとなって格安DVD(200~500円)で売られているし、いつでも見られる時代になりました。
2015年03月07日
コメント(0)
1977年の日本映画興行成績です。 金額は配給収入。1位「八甲田山」 25億900万円 2位「人間の証明」 22億5000万円 3位「八つ墓村」 19億8600万円 4位「トラック野郎 天下御免」 12億8200万円5位「トラック野郎 度胸一番星」 10億9600万円 6位「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」 10億8600万円 7位「泥だらけの純情」 9億8500万円 8位「春琴抄」 8億8400万円 9位「男はつらいよ 寅次郎と殿様」 8億4900万円 10位「悪魔の手毬唄」 7億5500万円 1976年10月に角川映画第1作として「犬神家の一族」(市川崑監督 石坂浩二主演)が東宝系で公開され大ヒット。横溝正史さんの原作小説も大ベストセラーになりました。 当時のことをおぼえていらっしゃる方も多いと思いますが、私もすっかり角川春樹さんの「読んでから見るか、見てから読むか」のフレーズに乗せられて映画館へ足を運び、角川文庫の原作小説に熱中したくちです。 翌年の1977年。日本映画の興行成績トップ10は以上のとおりですが、第2位の「人間の証明」は森村誠一さんの推理小説の映画化で、これも角川映画です。 ところが第10位の「悪魔の手毬唄」(1977年4月公開)は、いままで角川映画だとばかり思っていたのですが、東宝の製作であって、角川文庫が原作でも角川映画ではないんですねぇ。 1976年、1977年頃には横溝正史さんの原作小説が映画の大ヒットとともにベストセラーとなり、その作品が次々と角川文庫として刊行されました。 ところが映画化となると、興行成績トップ10の第3位「八つ墓村」(1977年10月公開)は角川映画ではなくて松竹映画です。野村芳太郎監督、渥美清主演。 いままで勘違いしていた石坂浩二さんの金田一耕助シリーズ「悪魔の手毬唄」以降の「獄門島」も「女王蜂」「病院坂の首溢りの家」も角川映画ではなく東宝映画。角川文庫を夢中になって読んでいたのでてっきり角川映画だとばかり思っていました。 映画のことから書いてしまったけれども、いま「悪魔の手毬唄」を読んでいます。 映画公開時に読んで、10年くらい前にも読んで、これで3度目?。 昭和30年、金田一耕助は旧知の岡山県警の磯川警部を訪ねます。 できるだけ辺鄙な田舎で静養をしたいと希望する金田一耕助に磯川警部は岡山と兵庫の県境にある鬼首村を紹介する。 23年前にその鬼首村で起こった殺人事件が迷宮入りしていて、警部は金田一耕助にその解明をひそかに期待していたのです。 磯川警部の紹介状を持って鬼首村の「亀の湯」に逗留することになった金田一耕助。 23年前の迷宮事件というのは、昭和7年、「亀の湯」の女将 青池リカの亭主 源治郎が顔を焼かれて識別不能の状態で殺害され、犯人とされる詐欺師恩田幾三が逐電したまま行方を断っているという。 金田一耕助は、お庄屋さんの法庵さん、鬼首村の有力者である仁礼嘉平と出会い、一方の大地主であり戦後は零落している由良家の後家 敦子、八十三媼の五百子。そして青池リカの息子である歌名雄、妹の里子。仁礼家の文子、由良家の泰子、らを知ることになる。 人気歌手の大空ゆかりが村に錦を飾って里帰りして来るというので大騒ぎの鬼首村。 世捨て人のようなお庄屋さんの法庵さんが行方不明となって、殺されたのか生きているのか? 続いて由良家の泰子が絞殺死体となって発見され、仁礼家の文子も殺される。 そして、この連続事件が鬼首村の古い手毬唄の歌詞、「枡ではかって漏斗で飲んで」「大判小判を秤にかけて」をなぞっていることがわかります。 ゆっくりと静養を望んでいた金田一耕助ははからずも磯川警部とともに鬼首村で連続殺人事件にまきこまれることに。つづく。
2015年03月06日
コメント(0)
横溝正史さんの「女王蜂」を読み終えました。 角川文庫で464ページ。月曜に買って読み始めたので4日間かかったのですが、私としてはこれでも早いほうです。 前にも何度か読んだ作品でありながらも内容はまったく覚えていなかったので新鮮な面白さがあった。 横溝正史さんの作品では「犬神家の一族」や「悪魔の手毬唄」「獄門島」「八つ墓村」など代表的なものに比べるとちょっと劣るのかと思うけれども、久しぶりに読んだ横溝ミステリとしてはたいへんに面白く読むことができて、前に読んだ時よりも楽しい読書でした。 伊豆半島南方の海上7里にある、地図にも載っていない小さな島 月琴島。 その月琴島の旧家に育った大道寺智子は、18歳になったら父の大道寺欣造の住んでいる東京に引き取られることになっている。 その欣造に新聞の切り抜きで作られた脅迫状が届きます。「島から智子を呼び寄せてはならない。19年前の惨劇が繰り返される。あの娘のまえには多くの男の血が流されるだろう。彼女は慕いよる男を死にいたらしめる女王蜂である」というような事が書かれていました。 欣造は知人の弁護士を通して金田一耕助を雇い、月琴島へ智子を迎えに行ってもらいます。 智子には東京へ行く前にどうしても見ておきたい場所がある。亡くなった母 琴絵のお墓で見つけた鍵があり、それが19年間「開かずの間」とされている部屋の鍵だと思われ、開かずの間に入ってみたかったのです。 智子がその開かずの間で見たのは、テーブルの上に血と思われるおびただしい染みと、置かれていた壊れた月琴にも同じような血の染みが付いていたのだった。 島を出た智子は、同行する祖母と家庭教師 神尾秀子とともに伊豆の修善寺のホテルで休憩を兼ねて泊まったのですが、そこには父 大道寺欣造が選んだ3人の婚約候補者(その3人は遊佐、駒井、三宅)が待っていて、その他にも何者かがこっそりと智子に合わせようとしている多門連太郎なる男も来ていました。 智子が入浴していたとき、脱衣所の鏡にまたもや「島へ帰れ」という内容の脅迫文が口紅で書かれていた。そしてその夜、3人の婚約候補者の1人遊佐が屋上にある時計の機会室で撲殺死体となって発見される。そしてその現場には多門連太郎がいたのだった。「キング」という雑誌の昭和26年(1951)6月号から翌年5月号まで連載された作品。 特に高い評価をされているわけでもないようですが、かといって角川映画が製作した5本の金田一耕助シリーズの映画〔「犬神家の一族」(76)「悪魔の手毬唄」(77)「獄門島」(77)「女王蜂」(78)「病院坂の首縊りの家」(79)〕になっているのをみても、けっして低評価というわけでもないようです。「八つ墓村」や「悪魔の手毬唄」「獄門島」など閉ざされたような空間が舞台になっているのでなく、初めと最後は月琴島という孤島ですが、すぐに舞台は修善寺のホテルと東京になります。 おどろおどろしい雰囲気は薄いけれど、家庭教師の神尾秀子先生が主人公と言ってもいいくらいに印象に残って、彼女の哀しみが伝わるエンディングは感動的でもありました。
2015年03月05日
コメント(0)
「笠智衆」りゅう・ちしゅう 1904年5月13日生まれ、1993年3月16日没 熊本県出身 日本映画で私が最も好きな俳優は渥美清さんと笠智衆さんです。 小津安二郎監督作品では「晩春」(49)「麦秋」(51)「東京物語」(53)「秋刀魚の味」(62)しか見ていないのですが、笠智衆さんの演技がとてもいいですね。 ほとんど棒読みのような感じもする台詞は、それが持ち味なのでしょうが、見ていて気持ちがいいくらいのユッタリ感です。 日本のお父さん、日本のおじいさん、といった感じの、これほどゆったりと落ち着いた安心感を与えてくれる俳優が他にいるでしょうか?「東京物語」は1953年作品だから、この時の笠さんはまだ49歳でしかない。それなのにすごく年老いた感じをじょうずに表現しています。これにはちょっとビックリ。 渥美清さんの寅さんの「男はつらいよ」シリーズでは1969年の第1作からずっと常連で、1992年の第45作まで御前様の役を演じていてお馴染みになっています。
2015年03月04日
コメント(0)
1953年日本映画の興行成績です。 金額は配給収入。1位「君の名は 第二部」 3億2万円2位「君の名は 第一部」 2億5047万円3位「太平洋の鷲」 1億6318万円4位「地獄門」 1億5179万円5位「金色夜叉」 1億4669万円6位「花の生涯」 1億3990万円7位「戦艦大和」 1億3601万円8位「東京物語」 1億3165万円9位「叛乱」 1億2642万円10位「家族会議」 1億2554万円「晩春」(49)と2枚買って500円のDVDでの鑑賞です。 これもずいぶん前にNHK教育テレビで見たのが初だったのですが、136分もあるせいか「晩春」ほどには回数を見ていないです。「東京物語」(1953)監督 小津安二郎 製作 山本武 脚本 野田高梧、小津安二郎撮影 厚田雄春美術 浜田辰雄衣裳 斎藤耐二編集 浜村義康音楽 斎藤高順出演 笠智衆、東山千栄子、原節子 杉村春子、山村聡、三宅邦子、香川京子 東野英治郎、中村伸郎、大坂志郎、十朱久雄 本編136分 モノクロ スタンダードサイズ 周吉(笠智衆)、とみ(東山千栄子)の老夫婦が尾道から二十年振りに東京に出てきます。 途中大阪では三男(大坂志郎)に会えたし、東京では長男(山村聡)の一家も長女(杉村春子)の夫婦も歓待してくれて、熱海へまでやってもらいながらも、何か親身な温かさが欠けているようで居心地が悪い。それと云うのも、医学博士の肩書まである長男も長女の美容院も、それぞれの生活を守ることで精一杯で、両親にかまっている余裕がなかったからです。 いつでも遊びに来てくださいよ、と言いながらもいざ来られると困る。じゃまだから熱海へやるとすぐに帰って来てしまって「もう帰って来たの、もっとゆっくりしてくればいいのに、ほんとにもう」となるのです。 周吉は同郷の老友との再会に慰められ、とみは戦死した次男の嫁だった紀子(原節子)の変らざる心遣いが嬉しかった。紀子は会社を休んで親切に2人を東京見物に案内してくれたのです。 結果として騒がしい都会には2人が落ち着ける場所はなく、老夫婦は寂しい気持ちを抱いたまま尾道に帰って行きます。老夫婦を心からのおもてなしをもって迎え入れてくれたのは、戦死した次男の嫁だけだった。「ハハキトク」。老夫婦が帰国してまもなく、尾道で同居している次女 京子(香川京子)が送った電報が東京のみんなを驚かす。 とみは脳溢血で静かにその一生を終える。駆けつけたみんなが悲嘆にくれたのも一時、葬儀がすむとあわただしく東京に帰ってゆく。京子は兄姉達の不人情を憤るのですが、紀子は若い京子に大人の生活の厳しさを言い聞かせます。 紀子も自分自身いつまで独り身で生きていけるか不安を感じている。東京へ帰る日、紀子は心境の一切を周吉に打ちあけます。周吉は上京した際に紀子が優しくしてくれたことに感謝し、妻の形見だといって時計を渡すと紀子は「私おっしゃるほどのいい人間じゃありません。わたしはずるいんです」と言って号泣する。 京子は紀子が乗った上り列車を小学校の教室の窓から見送り、周吉は誰もいなくなった家で一人身の孤独を感じるのでした。「老いの孤独」を描いていて、これは「晩春」も同じかと思うのですが、こういう映画は若い人には実感もないだろうし感情移入もできないかもしれない。 そういう実感や感情移入ができなければ、ただの退屈な映画になってしまうのでしょう。 熱海の海沿いの堤防の上を歩く老夫婦の姿。笠智衆さんのあとを東山千栄子さんが歩く2人の「寂しい気持ち」が表れた何とも言えない場面です。立ちくらみがしてうずくまる東山千栄子さん。年老いた両親の心の寂しさを思いやることができる人ならば、この場面は涙なくして見られないのでは。 自分が親に対してどんな態度をとってきたか、親になって初めて親の気持ちがわかる。この「東京物語」の評価もそういうことで分かれるのかもしれないですね。
2015年03月03日
コメント(0)
「晩春」(1949)松竹監督 小津安二郎脚色 野田高梧、小津安二郎原作 広津和郎製作 山本武、渡辺大撮影 厚田雄春美術 浜田辰雄編集 浜村義康音楽 伊藤宣二出演 笠智衆、原節子、月丘夢路、杉村春子 青木放屁、三宅邦子、三島雅夫、宇佐美淳、桂木洋子、坪内美子 本編108分 モノクロ スタンダードサイズ 小津安二郎監督の名作映画「晩春」。 ずいぶん前にNHKの教育テレビだったか?で見て以来、私の大好きな作品で、もしかすると日本映画でいちばん好きかもしれません。 近所の書店で買った格安DVDです。「東京物語」(53)と2枚買って500円。画質も悪くないし、これはいい買い物をしました。 鎌倉を舞台に、妻を早くに亡くした大学教授の父 周吉(笠智衆)と27歳になってもそんな父を一人残して嫁に行く気になれない娘 紀子(原節子)。 周吉は娘の紀子と質素な二人暮しをしているのですが、いつまでも自分の世話をさせていては婚期を逸してしまうと心配する。 二人のことが気が気でなく何かと世話を焼く叔母(杉村春子)。 父と娘の親子愛を中心に二人の周囲の人たちの人間模様を描いた作品です。 縁談を持ってきた叔母はなんとかして紀子に承知させようとするが、首を縦にふらない紀子です。「私が結婚したらお父さん困るじゃないの」という紀子を結婚させようと、周吉は自分も再婚すると言い出す。 この場面で紀子はすごく怖い顔をしますね。 叔母に縁談を承諾した紀子は、父周吉と京都旅行に出かけ、宿で父と二人になった時、心を迷わせる。「結婚なんかしたくない、今のままじゃいけないの?このままお父さんといっしょにいたい」という娘に周吉は、「お父さんの人生はもう終わりに近いが、お前はこれから自分の人生を作っていくんだ。結婚したから幸せになるってものじゃない。幸せは自分たちで築くものなんだよ、それが夫婦なんだよ。お前は良い夫婦をつくっていけると思うよ」と諭します。 紀子が嫁いだ晩、家に一人になった父周吉の孤独。「ああでも言わなければ紀子は結婚せんからね」・・・・お父さんはつらいな。 この映画は1949年作品で、太平洋戦争の敗戦からまだ4年しか経っていません。 ヒロインの紀子が北鎌倉から東京へ電車で出るシーンなど、その沿線の風景や銀座の風景など、その復興の早さに驚かされます。 昭和24年の日本のリアルタイムでの風景が映画に記録されていて、その当時を知らない私のような者には貴重なもので、まだ生まれる前なのに、何か懐かしい感じがするのは不思議なものです。 結婚式の当日に花嫁姿の紀子が父の笠智衆さんに「お父さん、今までお世話になりました」と挨拶する場面。 いつかこの場面をテレビで見ていて、娘に「お父さん、泣いてるん」と笑われたのですが、「ばかもんっ」娘を持つ父親がこの映画を見たらきっと泣くだろう(若い人には理解できないかもしれないけども、ある年齢に達していて泣かない人がいたら、その男は鈍感者だ)。 原節子さんいいね。笠智衆さんも最高。小津安二郎監督の作品ではこの「晩春」がいちばんです。
2015年03月02日
コメント(0)
2月17日に朝日新聞社から書店販売の「横溝正史&金田一耕助シリーズDVDコレクション」が創刊されました。 新聞広告を見ると、創刊号は「犬神家の一族」でサービス価格799円(税込)となっていて興味津々。 さっそく書店へ行ったのですが、創刊号は「犬神家の一族」の「上」で全5話のうち2話しか入っていない。残り3話が入った第2号からは1790円になり、これでは買う気がなくなって、買わずに帰って来ました。 このDVDシリーズに収められているのは1977年4月からTBS系テレビで放送された連続ドラマで、全47作品。全部で何回の放送になるのか数えないとわからないですが、主演の古谷一行さんが良い感じで、この連続テレビシリーズは東宝映画の市川崑監督、石坂浩二さんのものとはちがった雰囲気が感じられて面白いです。 今回創刊されたDVDシリーズがもう少し安ければ買ってもいいのに、1790円は高すぎる。いまの時代に旧作を収めたDVDが1790円はないだろうに。 横溝正史さんの原作小説がベストセラーになったのは角川映画として「犬神家の一族」(1976年10月、東宝配給)が公開された時ですね。角川文庫から続々と横溝正史さんの小説が刊行され、私も夢中になって読んだものです。 DVDを買うのはやめましたが、小説をむしょうに読みたくなって、どうせなら内容を忘れている作品のほうがいいかと、選んだのが「女王蜂」です。 現在、約3分の1くらいの160ページばかり読んだところ。遅読なので読み終えるのに3、4日はかかるかもしれない。「女王蜂」は「キング」という雑誌の1951年6月号~1952年5月号にかけて連載された作品で、私が生まれる前から生まれた頃の時代です。 このような昭和の古い時代を感じさせてくれる横溝正史さんの金田一耕助シリーズに、なぜか惹かれる私です。 写真は「女王蜂」(新しい本)と、ブックオフで買った108円の「悪魔が来たりて笛を吹く」。 現在は杉本一文さんの表紙絵が使われていません。
2015年03月01日
コメント(0)
全31件 (31件中 1-31件目)
1