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「鼠」 城山三郎著 文春文庫読了。鈴木商店・・・・・大正時代の三井・三菱と並ぶ大商社として名を馳せ、消え去った企業。米騒動時に諸悪の根源のごとく目の敵にされ暴徒により焼き討ちに合う。その盛衰を、丹念に取材して描いたのが本書。面白かったですね、色々な意味で。大阪朝日新聞の異常なまでの反鈴木商店の攻勢は、公正なマスコミとは思えないのだが、今もそうだが、この頃から朝日新聞は異常な体質だったんだなぁと納得。大番頭・金子直吉あってこそ伸し上がった鈴木商店だが、彼の意固地さが鈴木商店の発展を結果的には妨げてしまう。もし、彼が耳を傾けていたならば、もし、鈴木商店が存続して国際企業へと進化を遂げていたとしたら、と思うと、歴史は面白い。日本は変わっていたかもしれない。
2011.09.21
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「セレブレーション」 作 : ハロルド・ピンター 訳 : 広田敦郎 演出: 岡本健一 美術: 朝倉 摂 新・港村ホール 19;30-去年、今年とハロルド・ピンターの戯曲に岡本健一さんが取り組んでいる。場所が面白いところです。横浜港の新・港村。赤レンガ倉庫の近くです。こういう場所、大好きです。しかし、日の落ちた頃に、伊勢佐木町からとことこ歩いて向かったところ路に迷いそうになりました。まず、女優さんがとても魅力的で、いいです。よく集めた(集まった?)ものです。ピンターのこの作品は、ファッショナブルな人たちのパーティーが舞台なので、そう、鼻もちならないウッディ・アレンの映画の一幕のような、生活感のない、恰好だけは洒落た人々の短いストーリー。去年のピンター作品で試みた演出を今回も採用。複数の人間が同じ役を演じる。面白いとは思うのだが、なにか物語がぼやけてしまう感じだ。なんだろう、へたをするとパフォーマンスになっちゃうんだよね。もちろん、これは僕の好みの問題なのかもしれない。でも、ピンターのこの戯曲には、もっと、皮肉と、風刺が込められていたのではないのか?と思ってしまうのだ。しかし、他の芝居も是非見てみたいですな、この魅力的な女優陣で。
2011.09.19
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「ラスト・チャイルド」 ジョン・ハート著 早川書房読了。ジョン・ハート作品はこれが初めて。面白いです、この本。秀作といっていいでしょう。物語のテンポ、展開もよく、飽きさせることなく一気に読んでしまいます。ハヤカワ・ポケット・ミステリ版で450ページ(文庫版もでてますが、上下2巻の分冊)。十分楽しめます。13歳の少年。1年前に双子の妹を誘拐される。事件後、父親は失踪し、母親は薬に溺れる。少年の家庭は崩壊する。近隣の犯罪歴のある人間を、危険を冒しながらも監視する。ひたすら、妹の無事と家族の再生を思いながら・・・・・・。少年を取り巻く人間模様、少年時代の友情、物語は膨らみと深みを持って展開する。早川書房創立65周年&ハヤカワ文庫40周年記念作品
2011.09.10
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「大と小」 tpt79回公演 作:ポート・シュトラウス、 演出:手塚とおる 上野ストアハウス 14:00-6月にオープンしたばかりの劇場 上野ストアハウスで上演。JR上野入谷口から5分程度の裏通りにある、小さいがいい劇場。好きですね、こういう劇場、僕は。ポール・シュトラウスはtptで「時間ト部屋」という作品を上演したことがあるのだが、当時の僕には趣味が合わなかったのと、ぜんぜん訳が判りませんでした、物語の。で、この作品も判りづらいです。主人公の女性ロッテ。このロッテの精神的な旅が描かれているのだけれど、彼女の、夫や友人たちとの経験にもとづいた内なる精神の物語だから、ロールプレイングゲームのようには単純にしてわかりやすくは展開しない。判りににくいのは当然なのだ。でも、だとしたら、そういう物語を舞台という作品にしようとするとき、手塚さんの今回の演出が適していたかどうかというと、正直にいって疑問に思う点もある。もちろん、これは素人の僕の考えで、深い洞察があっての演出かもしれないが・・・・・。ロッタ役の宮本裕子さん、蜷川さんの舞台で以前に何度か観ましたが、久しぶりかも。とても、うまい、いい女優さん。冒頭のシーンを含め、独白のシーンが3か所ぐらいあるのだけれど、うまいですね、さすがだと思います。
2011.09.04
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「文盲」 アゴタ・クリストフ著 白水社読了。7月27日にアゴタ・クリストフさんが亡くなられた。アゴタ・クリストフさんの「悪童日記」に衝撃を受けた人は多いと思う。僕もその一人で、「何かすごいものを読んでしまった」との思いが走った。3部作はもちろん、翻訳されたものはすべて読んでいたが、この自伝は未読のままだった。もし自分の国を離れなかったら、わたしの人生はどんな人生になっていたのだろうか。もっと辛い、もっと貧しい人生になっていただろうと思う。けれども、こんなに孤独ではなく、こんなに心引き裂かれることもなかっただろう。幸せでさえあったかもしれない。確かだと思うこと、それはどこにいようと、どんな言葉でであろうと、わたしはものを書いただろうということだ。(本文より)20世紀の傑作は、20世紀の悲劇が生んだ亡命作家の手により書かれた。イタリア映画で、彼女の小説を映画化した「風の痛み」という作品がある。これも彼女ならではの物語だ。
2011.09.03
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「ダメージ シーズン3」 DVDにて鑑賞。 グレン・クローズが巨額訴訟で名をはせる弁護士役に扮したシリーズの最新作。dvdは全6枚。二晩で観てしまった。このシリーズは異なる時間の出来ごとを描き、その時間とストーリーの空隙を物語の進行とともに埋めていくというスタイルを取っている。本シリーズも現在と6カ月後の未来の出来事が描かれ、現在の物語は6カ月後の未来にどう結びついていくか、そして現在の物語と同時進行で6カ月後の未来の出来事が少しづつ詳しく描かれて行く。 3シリーズの中で、本作が最もバランスよくまとまっていると思う。グレン・クローズは当然ながら、役者陣が非常にいいです、このシリーズは。脚本は盛り込みすぎが少しマイナス。シーズン1から続いていたエレンの恋人が殺された事件も解決し、フロビシャー事件もフロビシャーの再逮捕で幕を閉じる。しかし、パティ(クローズ)の長年のパートナーのトムが本作で死んでしまう。パティと息子の亀裂も決定的となったが、さて、第4シーズンは作られるのだろうか?クローズも年齢的はちょっと限界か? しかしこの作品、映画化しても面白いと思える現在唯一の米TV作品だと、僕は思う。
2011.09.02
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「チェスの話 ツヴァイク短篇選」 シュテファン・ツヴァイク著 みすず書房読了。今年5月に亡くなられた児玉清さんについて、日経新聞のコラムに筆者が児玉さんに教えてもらった「チェス話」というツヴァイクの小説のことが書かれていた。アタック25の司会者、品のいい人でしたが、読書家として有名な方だったということをそのコラムで知った僕なのだが、なによりも、そのコラムで紹介された「チェスの話」が読みたくなってしょうがなかった。うれしいことに、その本が、(このコラムの影響も大きかったと思うのだが)みすず書房から復刊された。ナチス圧政下、監禁され尋問される男。精神的に追い詰められていくのだが、ある日、彼は尋問官の外套から本を盗む。それはチェスの本だった。期待はずれの本だったが、やがて彼は本にのめりこんでいく・・・・・・・・・・・・。表題作をはじめ、四篇の作品が収録。面白いですぞ、これは!
2011.09.01
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