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风起西州 Weaving a Tale of Love II第30話「都督からの頼み」龍朔(リュウサク)2年。裴(ハイ)府では今日も阿霓(アゲイ)が薬を煎じていた。顕慶(ケンケイ)元年の大病から毎年12月になると決まって調子を崩す庫狄琉璃(コテキルリ)。この6年の間に阿成(アセイ)に嫁いだ小檀(ショウダン)は2人の子に恵まれ、韓四(カンシ)と安三娘(アンサンジョウ)の間にも子が生まれていた。小檀は琉璃だけ未だ子を授からないと心配していたが、阿霓は琉璃が本来の調子を取り戻せば子に恵まれるという。「今や婦人の病の名医となった阿霓姉姉がそう言うなら安心だわ」狩りへ出かけていた裴行倹(ハイコウケン)が帰って来た。阿成(アセイ)は露台に裴行倹が狩った獲物の毛皮を並べて琉璃に披露していたが、そこへ阿史那雲伊(アシナウンイ)が駆けつける。「姉姉!私の狩った黒豹を見てちょうだい」「珍しいわね」「この毛皮に相応しいのは西州で姉姉だけよ?」琉璃は麴崇裕(キクスウユウ)の側室になった雲伊を心配していたが、驚くほど寵愛されてると知って安堵していた。琉璃は麴智湛(キクチタン)の側室・祇(キ)氏から明日の茶会に招待されていた。琉璃が参加すると聞いた裴行倹は雲伊に一緒に行って欲しいと頼む。以前、張(チョウ)夫人が来訪した時には妾を取らせる気がないか琉璃に探りを入れて来た。琉璃が断ったため、今度は宴に呼んで大勢で囲い込むつもりなのだろう。実は雲伊も祇夫人から令嬢の側室を迎えて家政を任せるべきだと説得されたことがあった。「姉姉、私が付き添うわ」琉璃は麴家の問題ならまだしも、なぜ裴家の跡継ぎ問題にまで祇夫人が口を出すのか分からなかった。すると裴行倹は都督(トトク)・麴智湛(キクチタン)の体調が悪いせいだと明かす。高昌(コウショウ)国だった頃、敦煌(トンコウ)の張家と祇家が権勢を振るい、麴家を含む3家で縁組みして来た。麴智湛の目の黒いうちは西州の大氏族は安泰だが、万一を考えたのだろう。「知っての通り蘇海政(ソカイセイ)が再び要職を得た これを知って張家と祇家は西州を私に奪われそうだと心配したのだ 司馬を丸め込むことができず、次に君が標的にされたのだろう」琉璃は確かに跡継ぎという寄る辺のない自分には付け入る隙があると卑下してしまう。しかし裴行倹は琉璃を傷つけまいと、体調が整えば子を授かることができると励ました。翌朝、安三娘が都護府に穀物の目録を届けてくれた。西州には10万石もの余剰分があったが、裴行倹は念のためさらに5万石を買い付けている。すると麴崇裕が高句麗(コウクリ)との戦がまだ終わらないと報告に来た。大きな争いに発展しないものの、西域を狙う吐蕃(トバン)との小競り合いは絶えない。「今年も西域から兵を出すだろうか?」「決めるのは蘇海政だ」戦になれば糧秣や絹の調達、財物や人の略奪まで好き放題、蘇海政も今さら帰京する気はないだろう。今回、行軍大総管に任命され、恐らく最初に西州で力を振るうはずだ。「玉郎(ギョクロウ)、蘇南瑾(ソナンキン)の活躍を阻める確率はどれくらいだ?」(  ̄꒳ ̄)<…10割そこへ麴智湛の使いが長史を呼びにやって来た。氏族夫人の茶会に参加した琉璃には雲伊のほかにも麴鏡唐(キクキョウトウ)という強い援軍がいた。すると早速、張夫人が庫狄夫人と違って自分たちは日々のやりくりに頭を抱えていると嫌みをいう。焦った祇夫人は夫人たちが琉璃を羨ましがっているという意味だと釈明し、情に訴えた。「このままずっと都督の恩恵にあずかれたらいいけれど… 無理ならこれから先は兄夫妻や甥たちに頼ることになるわ」祇夫人は実子がいないと行く末が安泰ではないと嘆き、琉璃を牽制した。しかし琉璃は人生に浮き沈みがあるのは当然だと諌め、人を案じているように見せかけて私欲に走る人ほど嘆かわしいとぼやく。「琉璃、慌てて飲んだので酔いが回ってしまったようです、これで失礼を…」一方、裴行倹は麴智湛から張敏娘(チョウビンジョウ)を押し付けられていた。張敏娘の父は敦煌(トンコウ)張(チョウ)氏の子息で麴智湛の盟友だったが、貞観(ジョウガン)14年に戦死したという。「私の体はもう長くは持たぬ、恐らく西州の重積はそなたの肩にかかるだろう」この8年、西州に尽くし、財政を潤して民心が安定したのは裴行倹の功績だった。しかし西州氏族はよそ者の裴行倹を認めようとせず、何とか籠絡しようと躍起になっている。そこで麴智湛は氏族たちの警戒を解くため、張敏娘を娶るよう提案した。「晴れて身内になれるのだぞ?敏娘は私の娘も同然、誰かに面倒を頼みたい それでこそ私の心は安らぐ、敏娘が子を産んでくれたらそれに越したことはなかろう?」裴行倹はたとえ周りを敵に囲まれても姻戚を必要としないとはね付けたが、恩人の頼みを無下にもできなかった。「都督、張娘子の平平安安が恩返しとなるならお受けします」(^ꇴ^)そうか~!「よろしければ私の義妹として引き取りましょう」( ゚д゚)お、おうその時、回廊で様子をうかがっていた張敏娘は側室を断られたと知り、深く落胆していた。裴行倹が戻ると琉璃が麴嵩裕と雲伊と3人で待っていた。「都督から美女をあてがわれたの?」「当たりだ、義妹として迎えることにした」「義妹?誰?私が知っている人?」「…張敏娘だ」雲伊は苦手な張敏娘だと知って憤慨した。麴嵩裕も何か問題が起こりそうだと懸念したが、裴行倹は恩人の都督を安心させるため引き受けてしまったという。翌朝、張敏娘は義妹として裴府を訪ねた。自慢の茶を入れたり、琉璃に手作りの笛を贈ったり、自分の優位性を見せつけたい張敏娘。雲伊はそんな張敏娘にうんざりしていたが、琉璃は至って冷静だった。「昼までに片付けることがあるの…もし暇なら待っていてくれる?」琉璃の用事は雲伊の姿絵を完成させることだった。「いいわ、雲伊、見てみて」雲伊は自分と生き写しの姿絵を見て大喜びだった。「素敵ね!玉郎(ギョクロウ)もきっと喜ぶわ!」すると琉璃の画才を目の当たりにした張敏娘が素直に絵を称賛してくれる。「気に入ったのなら描いてあげる、絵なら若くて美しい姿をずっと残せるから」「阿嫂、良いのですか?!」しかし面白くない雲伊が遠回しに邪魔した。「じっとしているのは退屈よ?張娘子は忙しいからそんな暇ないでしょう?」「とんでもない、暇なら持て余しています」つづく(・Д・) 急に端折って来た!w
2025.08.30
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第29話「月夜の再会」裴(ハイ)府に王君孟(オウクンモウ)と張敏娘(チョウビンジョウ)が訪ねて来た。対応に出た阿霓(アゲイ)は珍しい組み合わせだと驚いたが、王君孟は司馬から長史への差し入れだと酒を渡して早々に帰ってしまう。張敏娘はちょうど中院に現れた阿史那雲伊(アシナウンイ)を捕まえた。「何をしに来たの?仲違いさせたいの?それとも流言をばらまく?」雲伊は嫉妬で嫌がらせする張敏娘にへき易、麴崇裕(キクスウユウ)が好きなら気持ちを伝えるべきだと助言した。しかし張敏娘は司馬との縁談なら親族の希望だと否定、そもそも司馬は誰の夫にもなれないという。「司馬には長安に正妻がいるの、名家の出で長安の麴氏一族を取りまとめているわ 司馬から敬愛され、他の女子は娶らないと約束されているの」張敏娘は雲伊の恋心をくじくつもりだったが、むしろ司馬は誠実な夫だと感心されてしまう。「添い遂げられない人だと教えてあげたのよ?」「んーでも私と出会う前の話でしょう?すでに起こったことで悩む必要がある?」曲水(キョクスイ)坊からの帰り道、張敏娘は浮かない顔だった。もはや雲伊の気持ちがどうであれ、司馬が届けさせた酒を見れば雲伊への思いが分かる。あの美しい浮き彫りの酒瓶は北部の酒だった。回復した庫狄琉璃(コテキルリ)は外出を許してもらえず暇を持て余していた。すると朝の診察でようやく韓四(カンシ)が外へ出ても大丈夫と太鼓判を押してくれる。しかし過保護な裴行倹(ハイコウケン)は少しずつだと厳しかった。そこで琉璃は久しぶりに厨房に立ち、阿霓や小檀(ショウダン)と昼餉の準備を始める。久しぶりに話がはずむ3人。その時、安三娘(アンサンジョウ)が長安からの土産を持ってやって来た。「あの人ったら琉璃は快癒したと言いながら、静養が必要だとも言うし、訳が分からないわ」「″あの人″って誰のことですか〜?ふふ」小檀がからかうと安三娘も負けていない。「ふん、阿成(アセイ)ではないわね」おお〜(*´・ω)(ω・`*)おお〜「ふふ、婚姻は年長者が先なので早く決めてくださいね」「はいはい、参ったわ~」( ̄▽ ̄;)男主と女主がなおざりになりつつあるw琉璃は雲伊の夕餉に司馬から届いた酒を出した。故郷の酒だと気づいて喜ぶ雲伊。しかし琉璃は麴崇裕の気持ちに気づいて見過ごすことができなくなった。「雲伊、数日前に司馬の正妻のことを張敏娘が話したそうね? 彼女は悪意で教えたけれど事実よ、司馬とは添い遂げられない… 司馬は約束を守る人だから正妻を裏切ることはないわ あなたの心がいつか悲しみに押しつぶされてしまわないかと心配なの 司馬は他の女子に興味がないから静観していたけれど…間違っていたみたい」「それは私を好きだってこと?!ふふ 姉姉、司馬が正妻の待つ長安に独りで戻るとしても気持ちは変わらない 添い遂げられなくてもそばにいて支えたいの、それだけで十分、後悔なんてしない」そんなある夜、裴行倹が帰宅したかと思うと小檀にすぐ柳如月(リュウジョゲツ)を呼びに行くよう頼んだ。実は軍営を離れて行方が分からなくなっていた従兄・方烈(ホウレツ)が見つかったという。驚いたことに方烈は西州にやって来た阿史那弥射(アシナビシャ)の配下の1人だった。阿史那弥射と言えば唐に友好な安撫(アンブ)大使。琉璃は何も問題ないと思ったが、複雑な事情があると知る。方烈は上官を人質にして軍営から逃亡した後、上官を殺していた。当初、裴行倹は方烈の罪が非常に重いと考えていたが、問題があったのは殺された上官だと分かったという。ならば移住者の多い西州で名を変えて新たな戸籍を作ればいいと思ったが、まさか数年のうちに阿史那弥射の腹心となって舞い戻り、もはや隠れることも難しい。何より本人が誇り高く、妥協しない性分だった。「確かに少しでも妥協できる人なら今頃、大きな子供がいるはずね…」琉璃は従兄を一途に思い続ける柳如月に同情したが、愛する2人の再会を素直に喜んだ。離ればなれになっていた許嫁が月夜のもと再会を果たした。方烈は顔に大きな傷があったが、何年も前に仲間たちとふざけている時、刀の切っ先がかすめただけだという。「楽しく暮らしている、大将軍に付き従い狩りをしては酒を飲み、肉を食う日々だ 独り身の気ままな暮らしも悪くないと思えたが、王(オウ)皇后が廃されたと聞いて案じていた 戦が終わり次第、君を探しに長安へ戻るつもりだった、まさか西州にいたとは」方烈は如月のため、やはり長安へ戻ろうと決意した。戦功を立てて恩赦に浴すれば堂々と如月を娶ることができる。しかしそう簡単に戦功を立てられるはずもなく、如月はもう待てなかった。「私は長安と決別した、私があなたについて行く」( ̄▽ ̄;)この話まだ続いていたのねw方烈と柳如月が数日後に西州を発つことになり、急ぎ婚礼を挙げることになった。慌ただしく準備が進む裴家。すると北部から急報が届き、泥孰(デイシュク)部の首領、つまり雲伊の父親が亡くなったと分かる。琉璃は戦が間近でも雲伊を今すぐ帰らせたいと言ったが、裴行倹は帰そうにも通れる道がなく、仮に通れたとしても、到着した頃にはもう埋葬され、最後の対面は果たせないと言った。仕方なく2人は方烈と柳如月の婚儀が終わってから雲伊に訃報を伝えて送ると決めたが、その話をちょうど琉璃を訪ねて来た雲伊が門の前で聞いてしまう。方烈と劉如月の婚礼はささやかながら親しい人たちが集まり、賑やかで楽しい祝宴となった。しかし雲伊は地味な衣装で大好きな踊りにも参加せず、やがてこっそり屋敷を出て行ってしまう。麴崇裕は急に雲伊の姿が消えたことに気づき、慌てて探しに向かった。すると橋の欄干に座って独りで泣いている雲伊を見つける。「父親の話を聞いたのだな?」麴崇裕は雲伊の隣に座り、自分が送って行くと申し出た。感激した雲伊は思わず麴崇裕の胸に飛び込み、泣き崩れてしまう。これまで自制していた麴崇裕だったが、雲伊の肩を抱いて優しくなだめた。「姉姉と姉夫の話を聞いてしまったの…柳姉姉の婚礼が終わったら私を帰してくれるって その言葉を聞いて決めたわ、私はもう帰らない だって帰ったとしても父親は土の下にいる、2度と会えない」麴崇裕は意外だった。雲伊のこと、訃報を知ったら一目散に帰ると思ったという。「そんなことをしたら姉姉と姉夫が慌てて追いかけて来る 柳姉姉の婚礼まで台無しにしてしまうわ、優しくしてくれた人を悲しませたくなかったの」「雲伊、これからは私を頼ればいい、私に守らせてくれ」↓( ̄▽ ̄;)誠実でなくなった玉郎…それから6年後の龍朔2年裴行倹は師匠の蘇定方(ソテイホウ)を助けて北部を平定、道や駅站を作って貧民を助けたそして裴行倹の統治の下、北部10部族は謹んで唐に帰順した…つづく( ๑≧ꇴ≦)でたっ!きみまろ方式!「あれから〇〇年」
2025.08.28
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第28話「隠し事と優しさ」性懲りも無く庫狄琉璃(コテキルリ)の見舞いと称して裴(ハイ)府にやって来た張敏娘(チョウビンジョウ)。雲伊(ウンイ)はさっさと追い払うはずが、張敏娘の挑発に乗って自ら素性をばらしてしまう。「庫狄夫人の実の妹妹はもう亡くなったと聞いたわ あなたは従妹?それとも再従姉妹?…裏表のないあなたがなぜ姓を隠すの?」「ピキッ!姓は阿史那(アシナ)よ!何よ、北部で悪い?爹爹も哥哥も朝廷に従ってる」「そうでしょうね、そうでなければ長史夫妻が西州でかくまうはずがない、ふふ」一方、琉璃は夢の中で極寒の雪山にいた。これからどうすればいいのか分からず、寒さに震えながら途方に暮れる琉璃。その時、どこからともなく声が聞こえてくる。「琉璃、琉璃…」裴行倹(ハイコウケン)が呼びかけていると、ついに昏睡していた琉璃が目を開けた。「誰か!琉璃が目を覚ました!韓四(カンシ)を呼んでくれ!」麴智湛(キクチタン)は張敏娘から裴府に北部の間者がいると聞いた。しかもその女子が麴崇裕(キクスウユウ)に言い寄っているという。「私は庫狄夫人と親しく、夫人のそばにいるあの者を不審に思って探っていました 西州と司馬のためにお伝えしたのです 捕らえて詮議するか、早く西州から追い出すべきでは?」麴智湛は張敏娘の令嬢らしからぬ振る舞いにいささか戸惑っていた。一方、口を滑らせた雲伊は病み上がりの琉璃に相談するわけにいかず、柳如月(リュウジョゲツ)を頼った。「張娘子に素性を知られたわ、今頃、司馬も聞いているはず…司馬は私を疑うかしら?」確かに今は唐と北部の反乱軍が開戦間近、柳如月は何とも返事し難い。「とにかく長史夫妻に相談しましょう」「でも優しい2人を巻き添えにはしたくない…司馬と話してくる!」すると雲伊は柳如月が止めるのも聞かず出て行ってしまう。麴智湛は早速、麴崇裕に話を聞いた。すると麴崇裕はすでに娘の素性を調べたと明かし、泥孰(デイシュク)部の首領の娘だと教える。実は裴府に娘を預けたのは蘇定方(ソテイホウ)で、これも戦略上の便宜なのだろう。「やはりな、抜かりないお前が北部の間者と親しくなるはずがない」「間者?彼女は裴府で家族同然です、長史夫妻が怪しい者をそばに置くでしょうか? そもそも親しいとは?」「分かっておる、お前が公務に私情を挟むはずない」麴智湛は笑ったが、息子の言葉の端々に雲伊をかばう気持ちが感じ取れた。「ついにお前の心にも女子を大切に思う気持ちが芽生えたのか?」「わっ私は本心を述べたまで、彼女に間者が務まるとも思えません」麴崇裕は動揺を隠せなかったが、父に余計な詮索をさせたのが張敏娘だと知った。麴氏の工房に突然、麴崇裕を訪ねて雲伊がやって来た。すると雲伊は自分の素性を知ったのに捕らえないのかと訝しむ。「何の話かと思えば…君が裴府に来た時から素性は知っていた」「間者だと疑わないの?」「その性格では間者は務まらないだろう?君の純粋さは貴重だ、そのままでいい 安心して裴府に住め、約束する、君が西州にいる限り私が守ると」司馬の言葉を聞いた雲伊は感激して思わず涙がこぼれた。麴崇裕は雲伊を気遣い手巾を差し出したが、自分らしからぬ行動に我ながら照れてしまう。「本当に守ってくれるの?」「とっ当然だ…ぁ~ずいぶん薄着なのだな」麴崇裕は自分の毛皮のついた外套を雲伊に着せると、門まで見送ることにした。麴氏別院の前では雲伊を心配して追いかけて来た柳如月が待っていた。すると雲伊が嬉しそうに飛び出してくる。「大丈夫だったの?」「帰ったら話すわ…行こう!」麴崇裕は思わず通りまで出て雲伊の背中を見送ったが、はたと自分の振る舞いに驚いて狼狽した。裴行倹の献身的な看病の甲斐あって琉璃は快方に向かっていた。そんなある日、蘇定方が琉璃の見舞いにやって来る。蘇定方は自分の目で琉璃の無事を確かめ安堵、静養の邪魔をしないようすぐ寝所を出た。しかし裴行倹の様子がどこか気にかかる。「私に何か隠しておらぬか?私は琉璃の義父、ごまかすことは許されぬぞ?」「実は医者から言われたのです、琉璃はもともと虚弱でしたが、子を産むのは難しいと…」蘇定方は胸が痛んだ。琉璃を裏切ることなどあってはならないが、かと言って跡継ぎを残さぬのは最大の不孝でもある。すると裴行倹は一族に男子が多いため、いざとなれば養子を迎えると言った。「琉璃さえいれば私は何も望まない、このまま琉璃が回復してくれることが唯一の望みです」「…そうか、心が決まっているならもう言うまい、琉璃を頼む」琉璃が元気になると屋敷にも絶えず笑い声が聞こえるようになった。裴行倹は阿霓(アゲイ)が韓四から鍼灸を習うことになったと琉璃から聞いてにわかに信じられない。鍼灸の術は医家の秘伝のため他家には伝えないはずだ。しかし安三娘(アンサンジョウ)の鶴の一声で韓四は承諾、裴行倹は2人の親密さを知る。「その件で相談があるの…」琉璃は阿成(アセイ)のように阿霓と小檀(ショウダン)も賤籍から抜きたいと頼んだ。2人はこのまま屋敷で働くことを望んでいるため、他の侍女を雇うつもりはないという。裴行倹は自責の念に駆られた。阿霓が鍼灸を習いたいと頼んだのも自分の至らなさのせいだという。実は琉璃の背中には灸の跡が残り、自分が灸を据えた下腹は火傷してやっと治ったところだった。「やはり素人だった…」そこで裴行倹は自分も阿霓と一緒に鍼灸を学ぶと決めた。( ˶´꒳`˵ )お似合い♡琉璃はすっかり元気になったが、外出できず暇を持て余していた。そこで裴行倹は書物を読み聞かせることにしたが、開いた竹簡の間から過所(カショ)が出て来る。安三娘の通行証だと気づいた裴行倹はすぐ届けようと焦ったが、琉璃が笑って止めた。「もっとよく見て」「ん?紙が違うぞ?…まさか」琉璃は軍営に物資を届けるために自分が書いた過所だと明かした。しかし紙が変わったことを思い出して書き直し、書籍に挟んでおいたという。「なんてこった!公文書を偽造するとは!人に知られたらどうする?!」裴行倹は背筋が寒くなるほど恐ろしくなったが、琉璃は悪びれる様子もない。「あなたさえ気づかないのよ?ふふふ♪ そうだ、あなたは城門を通る時、銅製の騶虞(スウグ)を見せるわね?」「あれは伝符だ、官吏は伝符と叙任状があれば城門を通り、駅站(エキタン)に泊まれる」「そうなの?それじゃ今度は伝符を作ろうっと!いやちょっと言ってみただけよ」裴行倹は冗談だと聞いて胸を撫で下ろしたが、琉璃は麴崇裕に頼んで作ろうと企んでいた。張敏娘は3日と空けずに庫狄夫人の見舞いに出かけた。訪ねても相手にされず、面会さえ許されないが、それでも足しげく通い続けるには訳がある。実は張敏娘は情勢を読んで動いていた。今や西州は民心を得た裴行倹と、彼の師匠で伊麗道(イレイドウ)行軍大総管の蘇定方の天下と言っても過言ではない。すると裴府の前で偶然、酒瓶を持った王君孟(オウクンモウ)と出くわした。つづく( ߹꒳ ߹ )ぁぁぁぁぁ…琉璃…
2025.08.27
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第27話「目を覚ませ」張敏娘(チョウビンジョウ)に陥れられ、司馬の誤解を解きたい阿史那雲伊(アシナウンイ)。しかし麴崇裕(キクスウユウ)が無条件で雲伊を信じると断言し、結局、庫狄琉璃(コテキルリ)の出番はなかった。季節がめぐる頃、皇帝の沙汰が下った。程知節(テイチセツ)は敵を追撃しなかった罪で免官、王文度(オウブンド)は詔書の偽造により長安で極刑に処されるという。しかし周智度(シュウチド)と蘇海政(ソカイセイ)は管轄地域の軍営に戻された。結局、大唐にとって不名誉となる怛篤(ダツトク)の虐殺について皇帝は触れなかったという。大総管と副総管に重罰を科して武将らを退役させ、その代わり蘇定方(ソテイホウ)が大総管代行を任され、三軍を統制することになった。皇帝はまだ阿史那賀魯(アシナガロ)の討伐を考えているのだろう。裴行倹(ハイコウケン)は師匠が練兵や戦術に長けていても後方部隊や兵士の統制に関しては無頓着なところがあると心配した。「琉璃、これからは軍営にいることが多くなる、今夜から荷物をまとめて軍営に行くよ 君はゆっくり休んでくれ」琉璃は少し咳き込みながら、心配ないと笑顔で答えたが…。 竈神を祭る季節、裴府に麴崇裕が綿布工場の配当金を届けにやって来た。実は里正(リセイ)たちがお世話になった長史への挨拶に都護府を訪ねたが、不在だと知って夫人に会いたいという。雲伊は琉璃の体調が悪いと明かして断ったが、琉璃は都護府までの距離なら問題ないと出かけることにした。しかし無事に挨拶を受けて帰ろうとした時、正門で倒れてしまう。麴崇裕は念のため韓四(カンシ)の他にも名医を3人ほど集めた。脈診した医者たちは意見が割れてなかなか治療法が決まらなかったが、独り考え込んでいた韓四がようやく口を開く。「恐らく庫狄夫人は傷寒です、高熱から悪寒を経て夜には体の冷えが悪化するはず まずは経脈を通じ、悪寒を散じるのが先決です」韓四は安三娘(アンサンジョウ)に間違いがあれば責任を取ると約束して処方箋を渡した。すると韓四の見立てに反対した医者たちは怒って帰ってしまう。実は韓四は今まで同じ症状の患者を3人ほど診たことがあった。しかし長くもちこたえた患者で3日だったという。その夜、責任を感じた麴崇裕は裴府の中庭に留まった。司馬に気づいた雲伊は何かあれば知らせるので帰るよう促したが、麴崇裕は治る兆しが見えるまで安心できないという。「先生が言ってた、今日の外出がなくてもいずれは倒れたって、自分を責めないで」「私に気を使わせてしまうとは…ありがとう、だがやはり待たせてもらう」仕方なく雲伊は琉璃から聞いた話を教えた。「姉姉は昔、毒を盛られ、そのせいで陽虚になったの」するとちょうど安三娘が通りかかった。「その通りです、宮中にいた頃、琉璃は曹(ソウ)王の陰謀で毒に侵されました その時、何月も寝込んだのです、長史が見つけた薬草で助かりました」それ以降は医者にもかからず養生することもなかったが、韓四はそれがかえって裏目に出たという。「何度か軽い病にかかっていれば大事には至らなかった 張り詰めていた気力がいったん緩めば病にあらがえなくなってしまう」琉璃はわずかな薬を飲むのがやっとだったが、翌朝まで何とかもちこたえた。しかし韓四はこれ以上、冷えが広がれば危険だという。鍼灸なら体を温め、推拿(スイナ/按摩)を施せば薬を飲めるようになるが、施術するには服を脱がせる必要があった。「今は礼節より命の方が大事でしょう?!」雲伊は即断したが、その場にいた誰もが口をつぐんでしまう。その時、知らせを聞いて夜通し馬を駆けて来た裴行倹が現れた。裴行倹は迷わず韓四に灸を試して欲しいと頼んだ。そこで自ら琉璃をうつ伏せにして背中をあらわにする。韓四は準備ができたと聞いて背中の穴位に灸を据えた。次は下腹にある穴位だったが、さすがに韓四が触れることははばかられる。「韓四、位置を教えてくれ、私がやる」裴行倹は韓四の指示を聞きながら見よう見まねで灸を据えた。すると次第に琉璃の手足に暖かみが戻ってくる。裴行倹は琉璃を抱き起こして早速、薬湯を飲ませてみると、琉璃はやっとしっかり飲み込んだ。そんなある日、張敏娘が裴府にやって来た。ちょうど見舞いに来ていた柳如月(リュウジョゲツ)が対応し、琉璃は眠っているため面会できないと断ってくれる。張敏娘はまるで蚊帳の外、劉如月まで琉璃の姉妹のようだと嫌味を言った。「そう言えば雲伊娘子は庫狄夫人の妹妹と聞いたけれど、実の妹ではないわよね?」「なぜそんなことを?」「羨ましいの、私も雲伊娘子のように庫狄夫人と親しくなりたいわ」「裴府の事情だから私は何も言えない」雲伊は張敏娘を上手く追い返してくれた劉如月に感謝した。しかし劉如月は張敏娘の目的が見舞いではなく、雲伊の素性を探ることだと教える。「関わらない方がいいわ、あなたは素直だから気をつけるのよ」「分かった!」その夜、裴行倹は琉璃に付き添いながら、ひたすら話しかけた。「君が喜びそうな書物があるぞ?長安から取り寄せたんだ、君に贈るために… 琉璃、早く目を覚ませ、面白い話だぞ?毎晩、寝る前に読んでやろう、どうだ?」しかし琉璃の返事はない。実はその頃、琉璃は夢の中で極寒の雪山にいた。…ここはどこ?私は誰?これから私はどこへ行けばいいの?…翌日も張敏娘は懲りずに裴府にやって来た。侍女では追い返すわけにいかず、困った阿霓(アゲイ)は雲伊に対応を頼む。つづく( ๑≧ꇴ≦)あ~あった!あった!猛毒ねー←今ごろw
2025.08.27
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第26話「 万民の思い」米大郎(ベイタイロウ)を連行するため魚符まで示した蘇南瑾(ソナンキン)。庫狄琉璃(コテキルリ)は正当な理由があるなら公文書を持って出直すよう迫ったが、その時、米太郎が急に苦しみ出し、韓四(カンシ)の手当ても虚しく動かなくなってしまう。「このまま死なせては駄目、まだ聞きたいことがあるのに…」琉璃の落胆する様子を見た蘇南瑾はほくそ笑み、これで口封じの手間が省けたとばかりに引き上げた。…王文度(オウブンド)は欲に目がくらみ怛篤(ダツトク)城で商人を虐殺しかし蘇定方(ソテイホウ)と裴行倹(ハイコウケン)は略奪に関わらなかった王文度は蘇定方を従わせるべく米大郎を間者に仕立て、また糧秣の不足を理由に裴行倹を拘束し、身柄を西州に移して麴(キク)家に始末させようとした…糧秣を届けてくれた安三娘(アンサンジョウ)が白三(ハクサン)と一緒に急いで帰郷した。白三から拘束された裴長史が丁重に扱われていたと聞いて安堵する琉璃。ともかく協力してくれた2人に身体を休めるよう勧め、小檀(ショウダン)に見送りを任せた。すると正門まで見送りに出た小檀が白三を呼び止める。「…阿成(アセイ)は無事?」白三は阿成と小檀の関係に気づき、阿成なら裴長史のそばで元気だと教えた。「ありがとう( ˶´꒳`˵ )」武(ブ)皇后からの聖旨はまだ届かなかった。琉璃はこのまま手をこまねいていられず、裴行倹の釈放を求めて血書の請願書をしたためる。すると裴長史が拘束されたと知った民が屋敷の前に集まり、長史を救うため協力したいと申し出た。琉璃は請願書を運ばせ、もし署名してくれるなら嬉しいという。しかしこの請願書はいずれ長安に送られ、朝廷の目に触れるのは必至だ。「裴長史を陥れた悪党に名を知られたら恨みを買ってしまうかも… 家族や自分の身が気がかりならよく考えて、無理強いするつもりはないわ」麴智湛(キクチタン)は裴長史の釈放を願う″万民書″を口実に翌日、裴行倹を釈放した。これに憤った蘇南瑾は麴家に乗り込んだが、麴智湛からすぐ軍営へ報告に戻るよう勧められてしまう。「何なら庫狄夫人を捕まえればいい、だが私は従えぬ 今やこの万民書の存在は誰もが知っている、もし庫狄夫人を捕らえようものなら…」麴智湛は名前を口にするのもはばかれると上を指差し、それでも通じないと5本指で合図した。しかし蘇南瑾は意味が分からず苛立ちを隠せない。「5(ウー)?それが何だ?」麴崇裕(キクスウユウ)は静観していたが、鈍い蘇南瑾のため親切に説明した。「辺境に長くいたせいで知らぬのだな 庫狄夫人は武(ウー)皇后と近しい、だから大長公主の魔の手もかわせたのだ」もし庫狄夫人が万民書を長安へ送っていたら、今頃は皇后の目にも触れているだろう。すると焦った蘇南瑾は報告に戻ると言って逃げるように引き上げた。一方、裴府は長史の帰還を喜ぶ民たちが集まり、賑やかな祝宴となった。阿成と再会した小檀も幸せそうだったが、阿史那雲伊(アシナウンイ)はお目当ての司馬の姿が見えず落胆する。その夜、露台では裴行倹が久しぶりに愛しい人を抱きしめていた。しかし琉璃が危険も顧みず血書をしたためたことを知り、胸を痛める。何よりこの件が知れ渡れば唐軍の名声が傷つき、最悪の場合、西州の民心が朝廷から離れたかもしれない。「私一人のためにここまでする必要はない、琉璃、2度と軽率な行動はしないでくれ」「守約(シュヤク)、軽率でも何でもないわ 私にとって名声や故国や陛下よりあなたが大切なの あなたが苦しむ姿は見たくない、何度だって助けるわ」すると裴行倹は琉璃の深い愛情に触れ、思わず笑顔になった。裴行倹が釈放されても結局、軍営から何の音沙汰もなかった。その後、薬舗の納屋で身を潜めている米大郎(ベイタイロウ)はすっかり退屈しているらしい。裴行倹は琉璃から韓四が治療で肉を削いだり、骨を接ぐ時に使用する睡眠薬を米大郎に飲ませたと聞いた。良く観察すれば生きていると分かるが、韓四が鍼を深く刺すふりをして反応がないと見せかけ、蘇南瑾は死んだと思い込んだという。「でも子牛と同じ量を飲ませたせいで2日も眠り続けたの、多過ぎたのねw そうそう、阿姉が開いた薬舗で医者を探していたから韓四を推薦したわ それで2人の距離がぐっと縮まったの」ほとぼりが覚めた頃、麴崇裕が裴家にやって来た。阿霓(アゲイ)から司馬が来ていると聞いた雲伊は急いで駆けつけたが、麴崇裕はすぐ席を立って帰ってしまう。「司馬!聞きたいことがあるの!」雲伊は麴崇裕を追いかけ、引き止めた。「何だ?」「その〜司馬って男色なの?!張敏娘(チョウビンジョウ)に聞いたの」(´-ω-`).oO(張敏娘コイツッ!だが私には好都合か…)「そうなんだ、女は苦手でね」屋敷に戻った雲伊はどこか上の空、琉璃は心配して何があったのか尋ねた。「司馬を追いかけて何を話していたの?」「…司馬は女子に興味がないって言うの」「(´゚艸゚)∴ブッ!バカね、誤解よ」琉璃は司馬がかつて長安で令嬢たちに追いかけ回され、男色を装って面倒を避けていたと教えた。実は自分たち夫婦と出会った時もわざと従兄に好意を示し、牽制してきたという。純粋な雲伊はそれが張敏娘の悪意とは夢にも思わず、彼女にも真実を教えることにした。しかし張敏娘が雲伊を避けていたせいで会うことができない。そんなある日、雲伊は大仏(ダイブツ)寺で偶然、張敏娘を見かけ、声をかけた。無視したいのはやまやまだが、面目を気にして笑顔で対応する張敏娘。「何かしら?」「あなたは司馬が男色だと言ったでしょう?あれは誤解よ」回りの視線に気づいた張敏娘は慌てて帰ろうとしたが、雲伊は腕をつかんで引き止めた。「張娘子、村であなたが言ったのよ?でも司馬の名誉に関わるから言わない方が…」すると焦った張敏娘は自分から転倒し、雲伊に突き飛ばされたと騒ぎ立てた。事情を聞いた琉璃は都護の親戚である張敏娘に礼を尽くすため、韓四も同行して見舞いに行くと決めた。雲伊は面白くないが琉璃は自分に任せろという。その頃、侍女から知らせを聞いた麴崇裕も張府に駆けつけた。しかし張敏娘はただのかすり傷、大騒ぎした侍女に呆れてしまう。すると琉璃たちが現れた。雲伊は司馬に言いつけた張敏娘に怒り心頭だが、琉璃は真偽よりまず張敏娘の怪我の手当てをすべきだという。「なぜ後回しにするの?!必ず真実を明らかにして司馬に信じてもらう!」「…君を信じるよ」麴崇裕は無条件で雲伊を信じると言った。そもそも張敏娘は大した怪我ではなく、手当ても必要ないという。司馬が雲伊をかばったことから張敏娘も仕方なく謝罪した。「私が騒いだせいで司馬や庫狄夫人を驚かせてしまいました」つづく( ๑≧ꇴ≦)えーっ!韓四の相手はてっきり阿霓だと思ってたw
2025.08.26
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第25話「人買いの悪事」軍営での経験で一回り成長して戻った麴崇裕(キクスウユウ)。高昌(コウショウ)へ帰ると早速、庫狄琉璃(コテキルリ)の協力のもと綿布の普及に乗り出した。武城(ブジョウ)郷では多くの娘たちが集まり、柔らかい綿布に興味津々。琉璃は自ら織り機の使い方を伝授していたが、その頃、同行した阿史那雲伊(アシナウンイ)はなぜか独りで草を刈っていた。琉璃たちが休んでいると男衆の雑役の割り当てが終わった麴崇裕が戻って来た。そこで張敏娘(チョウビンジョウ)は高昌から持参したお茶を入れて出そうとしたが、雲伊に先を越されてしまう。「肺を潤す地楡(チユ)を煎じたの、さっき咳き込んでいたでしょう?」しかし神経質な司馬が他人の入れた怪しい薬など飲むとは思えず、張敏娘は鼻で笑った。琉璃もさすがに得体の知れない草の水を司馬に飲ませるわけにいかなかったが、その時、驚いたことに麴崇裕が地楡水を飲み干してしまう。昼餉が終わると琉璃は麴崇裕を連れ出した。「まさかあなたが地楡水を飲むとは意外だったわ」「情に流されたのです」麴崇裕はかつて自分も異郷に身を置いたことがあるが、雲伊のように明るく振る舞うことはできなかったという。一方、張敏娘は麴崇裕に馴れ馴れしい雲伊が癪にさわった。「あなた司馬を慕っているの?」「そうなの」「いとも簡単に答えるのね?」「好きなものは好き、隠すことないわ、あなたも好きなの?」張敏娘は面食らったが、実は家族が数年前に司馬と自分の縁談を決めたと教えた。「ただ…司馬が好きなのは美少年なの」(*°ㅁ°)ぽかーんそんなある日、裴府に突然、怪我を負った米大郎(ベイタイロウ)が逃げ込んだ。未だ米大郎を許せない雲伊は懲らしめようとしたが、駆けつけた琉璃に止められてしまう。「私が話を聞くわ」「姉姉、聞かなくていいわ、どうせ嘘よ だって″怛篤(ダツトク)で唐軍が商人たちを虐殺した″っていうのよ?」実は米大郎は一儲けしようと唐軍に紛れ、怛篤の知り合いの家を訪ねた。しかし唐軍が略奪して商人たちを虐殺。米大郎は酷く荒らされた知人の家の中で呆然としていたが、甕の中に隠れて助かった娘を発見した。少女は酷く怯え、米大郎を見ると安心したのか急に抱きついて号泣したという。するとその声を聞いた兵士が現れ、米大郎は仕方なく兵を倒して逃げた。米大郎は蘇定方(ソテイホウ)に助けを求め、軍営へ身を寄せた。そこで怛篤の虐殺が副総管・王文度(オウブンド)の仕業だと知る。すると王副総管は目撃者の米大郎を怛篤の間者に仕立て、目障りな蘇将軍を排除するため利用しようとした。米大郎は蘇将軍を巻き込まぬよう後方部隊の裴行倹を頼った。話を聞いた裴行倹は朝廷に知らせるべきだと考え、米大郎を裴府へ逃すことにする。『琉璃なら必ず陛下に知らせる術を考えてくれるはずだ』実は唐軍の兵糧は底をつきかけていた。すでに兵士の食事の量は半分になり、馬の餌はもっと足りないという。「正規の軍馬はまだましですが、歩兵が使う私有の馬の多くが餓死し、兵士は恨んでいます」琉璃は王文度が私腹を肥やすだけでなく、兵をなだめるために略奪したと分かった。琉璃は糧秣の不足で裴行倹が責められることを恐れた。そこで一晩かけて麴智湛(キクチタン)の通行証明書を偽造する。この過所(カショ)を使って安家の商隊の力を借りれば、軍営に物資を届けることができるだろう。琉璃は麴崇裕に使いを送っていたが一足遅かった。その朝、ようやく城内に戻った麴嵩裕は兵士を帯同、使いは接触できず、使用人に言づてを託したという。実は王副総管から″怛篤の間者″の捕縛を命じられたのは蘇南瑾だった。麴智湛と麴崇裕は唐軍がすでに凱旋し、裴行倹が糧秣の不足や間者をかくまった罪で拘束されていると知る。「しかし裴長史は西州の官吏のため処断は都護にお任せすると、数日後に身柄が移されます 恐らく間者は裴府に逃げ込んだのでしょう、ご協力願えますか?」蘇南瑾はこれからすぐ捕まえに行くと言ったが、麴崇裕は時間を稼ぐため、まず自分が裴府の様子を探らせると申し出た。琉璃は誣告された米大郎が軍に連行されることを心配した。そこで米大郎を手当してくれた韓四(カンシ)に瀕死を装う薬がないか聞いてみる。「そういうことでしたらいい薬が…」「お願いするわ、あとで段取りを説明するわね」麴崇裕はやっと琉璃からの伝言を聞いて曲水(キョクスイ)坊へ駆けつけた。すると琉璃はかくまっている米大郎を引き合わせ、詳しい経緯を説明させる。怛篤の間者の捜索としか聞いていなかった麴崇裕は呆然、何より怛篤の商人が虐殺されたと知って激しい衝撃を受けた。しかし唐軍に楯突いたとなれば麴家は終わる。そこで琉璃は武(ブ)皇后に書いた書簡を差し出し、長安へ届けて欲しいと頼んだ。「何があろうと麴家に累は及ばないと約束します、あなたの忠誠心も示せるわ」麴崇裕は琉璃の自分への信頼に応えて書簡を受け取った。「必ず長安へ届ける、しかし米大郎の身柄はどうするつもりだ?」麴崇裕が別院へ戻ると蘇南瑾がいらいらしながら待っていた。そこで麴崇裕は裴府に間者などいなかったと報告、いたのは米大郎という西州の人買いで、深手を負ってうわ言を叫んでいたという。「怛篤で虐殺が行われ、自分は口封じに殺されるとな 裴府では庫狄夫人が医者と祈祷師を呼んでいた 物見高い民が集まり黒山の人だかり、こんな所で米大郎が間者だと言えるか? 本当に商人を全て殺したのか?」「…数人だけだ、抵抗されてやむを得ず」麴崇裕は米大郎の証言が事実だと確信、別院の岩肌にそびえる神像の前でへたり込んでしまう。「米大郎は裴府の中院にいた、捕えるなら自分で行くがいい 民は米大郎が口封じで捕らわれたと思うだろう 麴家は西州を治めてきた一族、私は麴家の名誉を守らねばならぬ 手は貸せない、行ってくれ」裴府では民が見守る中で祈祷が終わった。しかし韓四は米大郎がいよいよ重篤になったと伝え、自分が引き取って様子を見たいという。そこで早速、米大郎を韓四の家に移したが、ついに蘇南瑾が現れた。因縁の再会となった琉璃と蘇南瑾。「庫狄夫人…お久しぶりです」「蘇参軍」蘇南瑾は民の批判をかわすため、米大郎を悪事を重ねた人買いとして捕らえることにした。実は米大郎が伊(イ)州で良民を奴婢にしたという。「…では令状を見せてください」「急いでいたため持っていない…だがこれがある」蘇南瑾は自慢げに軍中大総管の魚符を示した。どうやら父の蘇海政(ソカイセイ)が軍功を認められ昇格したらしい。琉璃は心中おだやかでなかったが、強気な態度を崩さなかった。「なぜ伊州で悪事を働いた者を捕えるために軍中大総管が軍令を? もしや米大郎は軍中大総管の家族を奴婢にしたのかしら?」「軍中大総管を愚弄するか?!」「公文書ではなく軍の令牌を出したのはあなたですよ? たかが人買いの悪事をここまで追求するなんて…もしやうわごとが真実だとか?」「黙れ!でたらめだ!殺すために連行するはずなかろう!」「それを聞いて安心しました、では米大郎の回復を待ち、公文書を持って出直してください そうすれば民にも誤解されずに済みます」つづく(屮゚Д゚)屮<リピートアフターミー!カモーン!″公文書を持って来ます!″ナザもここまで振り切って欲しいwww
2025.08.25
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第24話「父の数珠」買い物から戻った阿史那雲伊(アシナウンイ)が部屋に閉じこもって出てこなくなった。阿霓(アゲイ)の話では数珠を買うため銭袋を取りに戻ったところ、その間に売れてしまったという。庫狄琉璃(コテキルリ)は門を叩きながら何度も呼びかけたが、雲伊は返事もせず、ずっと泣いていた。そこで琉璃は小檀(ショウダン)に付き添いを頼み、数珠の買主を探すことにする。一方、張敏娘(チョウビンジョウ)は麴崇裕(キクスウユウ)が工房に向かったと聞いて慌てて屋敷を出発した。実は麴崇裕の動向を知ろうと屋敷に人を配したが、この一月で皆が暇を出されている。「私を警戒しているのかも…」すると司馬が張敏娘の出入り禁止を命じたせいで麴府別院を門前払いされてしまう。憤慨した張敏娘は無視して工房に乗り込んだが、麴崇裕の視線は冷たかった。「どうやって私の綿布を手に入れた?」司馬が怒っている理由を知った侍女・娜娜(ナナ)は主をかばい、自分が勝手に綿布を手に入れたと答えた。「勝手にだと?もう一度やったら手足を失うと思え」焦った張敏娘は司馬の機嫌を直そうと、綿布の織り方の普及に携わりたいと申し出た。「…いいだろう、工房で織り方を習うといい」張敏娘は何とか切り抜けたが、心中穏やかではなかった。その夜、麴智湛(キクチタン)と麴崇裕が夕餉を終えた頃を見計らって祇(キ)夫人が薬を差し入れた。麴智湛は恐ろしく苦い薬を嫌がったが、祇夫人は必ず飲ませて欲しいと麴崇裕に頼んで引き上げる。「お前の庶母は医者の言葉を信じ切っておる 玉郎(ギョクロウ)、やはりお前ももう1人、妻を娶ったら…」「勘弁、女子に家を仕切られたくありません…私が薬を飲ませましょうか?」「…自分で飲む」翌日も琉璃は数珠探しに奔走した。軍営から戻った裴行倹(ハイコウケン)は小檀から事情を聞いていたが、そこへちょうど琉璃が帰ってくる。「数珠なら見つかったわ」数珠を買ったのは若い漢人の男で、店でたくさんの装身具を買い求めていた。長安では異郷趣味の貴族に西域の装身具が高く売れるため、琉璃は買い手が商人だと気づいたという。そこで長安の商人たちが泊まる客桟を回ったところ、数珠を買った商人らしき夫婦を見つけた。知らせを聞いた雲伊は喜んだが、裴行倹はその前になぜその数珠に執着するのか聞きたいという。実は雲伊が露店で偶然、見つけた数珠は生き別れた父の品だった。その数珠は戦で何度も父を勝利に導いてくれた聖品だったが、雲伊が狩りへ持ち出した際、失くしてしまったという。するとまもなく父が大敗を喫し、泥孰(デイシュク)部は阿史那賀魯(アシナガロ)に滅ぼされた。雲伊は自分が一族を滅ぼしてしまったと責任を感じ、独り苦しんできたという。琉璃と雲伊は数珠を買った商人を訪ねた。雲伊はついに父の数珠を見つけたが、商人は妻への贈り物として買った数珠のため譲れないという。数珠が夫から妻への愛の証しだと知った琉璃は、銭ではなく他の宝物と交換はどうかと交渉した。「今から持って来ます…雲伊、少し待っていて」すると琉璃は急いで屋敷に戻り、裴行倹に事情を説明した。これまで夫婦が肌身離さず持っていたお揃いの玉、しかし裴行倹は快く差し出してくれる。「とても貴重な玉だが、これがなくても私たちの愛は変わらない 人のためになるなら徳行だ」( ๑≧ꇴ≦)またイチャエピw琉璃は商人に婚礼の祝いで武(ブ)皇后から賜った佩玉を差し出した。「もしお気に召したら交換を…お二人の愛の証しにぴったりですよ」「こんな貴重なものを…お心遣いに感謝します」武皇后の下賜品など民の目に触れることはない。夫婦は喜んで数珠と交換、雲伊は自分のために尽くしてくれた琉璃に深く感銘を受けた。そんなある日、琉璃は麴家の工房に呼ばれた。実は夏になってから綿を上手く紡げる日もあれば、上手くいかない日もあり、原因が分からないという。職人たちの話を聞いた琉璃は湿気が関係していると考えたが、まだ確信はなかった。そこで帰り際、麴崇裕に細布が普通の綿布ように簡単に織れるようになったらどうするのか聞いてみる。麴崇裕は細布の織り方を広めるつもりはなく、大規模な工房を造って織らせると答えた。「それなら良い方法があるわ、風水の良い場所に工房を建てれば細布を織れるはず 確かなことはまだ分からないからまた改めて…実は司馬にお願いがあるの」琉璃は工房の黎(レイ)大匠たちを借りたいと頼んだ。すると麴崇裕は琉璃も工房を開くつもりだと邪推、そのため工房に適した場所を具体的に教えてくれないのだと誤解してしまう。「製法が漏れては困る、分かって欲しい、工房ができたら利益を差し出す 工房を建てるのに適した場所を教えてくれないか?」「谷よ、風と水がある場所がいいの、試しに簡単な小屋を建てて試してみたら? それで大匠たちはいつ借りられる?」麴崇裕は庫狄夫人がまだ諦めてくれないと知って困惑した。「まだその話を…職人たちに何をさせるんだ?」「司馬、どういう意味?阿姉から椅子が欲しいと言われて作ってもらいたいだけよ?」「椅子?ぁぁぁぁ…いつでも好きな時に使ってくれ」軍営から戻った裴行倹は元気がなかった。実は師匠の蘇定方(ソテイホウ)が西征軍で補給を担っていたという。西征軍には西州の精鋭3万人が所属、蘇将軍は前軍総管とは言え配下が私兵の精鋭の数百人のみ、権勢が弱かった。恐らく蘇海政(ソカイセイ)は蘇将軍に戦場で手柄を上げさせない魂胆だろう。琉璃は百戦錬磨の義父なら戦場に出れば必ず力を発揮すると信じていたが、後方での任務のはずの裴行倹が自ら糧秣を軍営に届けに行くと聞いて困惑した。「心配するな、全て順調だ、様子を見てくる」裴行倹は司馬が同行してくれると安心させた。…蘇定方は裴行倹たちを伴って鷹娑(ヨウサ)川に至り、4万の敵軍を発見した裴行倹が敵を引きつけ蘇定方は後方に回り、夜になってから糧秣の一部に火をつけて撤退を装うそこに唐軍が奇襲をかけたため、北部軍は壊走した蘇定方と裴行倹は大部分の糧秣を守り抜き、敵の増援も遅らせることに成功するこれは唐軍にとって大きな助けとなった…裴行倹が出征して1ヶ月。先に高昌へ戻った麴崇裕は裴行倹から預かった書簡を届けに琉璃を訪ねた。…私はしばらく師父を助け、帰るのは12月になる、何かあれば麴司馬に相談するといい…琉璃は義父と裴行倹が無事だと聞いてひとまず安堵した。すると麴崇裕は来年から民が綿布を税として納められるよう、各村に綿繰り機と綿打ち弓を届けるつもりだという。琉璃はならば自ら使い方を教えに行きたいと申し出て準備を頼み、門まで司馬を見送りに出た。その時、偶然、出かけていた雲伊が帰ってくる。「司馬、私の妹妹の雲伊です、雲伊、麴司馬よ」その時、麴嵩裕は雲伊があの時の娘だと気づいて目を丸くした。雲伊は麴崇裕を珍しい生き物を見るような目で見送った。「司馬って男らしい容貌なのに、絹を売る女子みたいな話し方ね?」するとちょうど門を出るところだった麴崇裕はうっかり敷居につまずいてしまう。琉璃と阿霓は思わず失笑したが、雲伊はすっかり司馬が気に入った。工房に戻った麴崇裕は王君孟(オウクンモウ)に雲威邸(ウンイテイ)で見かけた女子が裴府にいたと教えた。「赤い衣の女子か?」「庫狄夫人はなぜか自分の妹妹だと紹介した、素性を調べてくれ」その夜、麴智湛は息子の無事な帰還を喜んだ。しかも2万もの敵軍に遭遇しながら、蘇将軍と裴行倹の知略で乗り切ったという。「私は自分を守るだけで精一杯でした、守約(シュヤク)には感服しました、私は敵わない」すると麴智湛が急に息子の手を握りしめた。「玉郎(ギョクロウ)、こたびは確かに手柄を上げることはなかった だが自分の力を見極めることができたな 私は信じている、お前なら西州に再び繁栄をもたらせると…」つづく
2025.08.23
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第23話「強気な令嬢」裴行倹(ハイコウケン)は穀物を量る官吏が慣例として2割ほど上前をはねると知り、今回も蘇南瑾(ソナンキン)が同じ手口で自分を追い詰めるつもりだと分かった。そこで″計量を担う者″として白羽の矢が立ったのが大仏(ダイブツ)寺の僧侶たち。すると当日、覚玄(カクゲン)法師は約束通り練兵場へ穀物を買う資金を届けにやって来た。意外な人選に怪訝そうな顔をする蘇南瑾。しかし覚玄法師が大仏寺の上座であり西州の仏門の長、玄奘(ゲンジョウ)法師とも親交が深いと聞いて急に殊勝になってしまう。玄奘法師と言えば先帝の代に最も敬われた仏門の尊者であり、今では仏教界の頂点にいた。裴行倹は2度手間にならないよう、資金を捻出してくれた大仏寺が商人から穀物を買い付け、それをそのまま軍倉に入れると説明した。こうして皆が見守る中、僧侶たちによる計量が終わり、無事に12万石が集まる。裴行倹は蘇南瑾に軍倉へ収める前に改めるか聞いたが、蘇南瑾は法師を信頼していると答えるしかなかった。「つまり…大仏寺の升に間違いはないのだな?」「当然だろう?」「それならいい、誰か!量り終えた粟1袋を軍の升に入れろ!」ヒイィィィ!!(゚ロ゚ノ)ノ@子玉案の定、軍の公定升は満杯にならなかった。呆気なく罪を暴かれた蘇南瑾、しかし、裴行倹は矛先を計量していた兵士に向ける。「不正で商人を苦しめ、私腹を肥やそうとは… 法師がお見えにならなければ、蘇参軍が民を思わねば、欺かれていたところだ!」焦った蘇南瑾は兵士ではないとかばったが、そのせいで覚玄法師から自分たちの善意を疑うのかと迫られてしまう。蘇南瑾は損得を天秤にかけた。確かに升の不正が公になるのはまずい。しかし皇帝は信徒、もし高僧たちを捕らえようものなら自分がどうなるか想像に難くない。すると裴行倹は法師の面目を守り、軍紀を乱さぬためにも兵士を厳罰に処すよう蘇南瑾を説得した。「子玉(シギョク)、見逃せば民は貴殿の指示ではないかと疑う、事態を軽く見て父君の名を汚すな」(  ̄꒳ ̄)教育って大事wその夜、麴智湛(キクチタン)と麴崇裕(キクスウユウ)は配下から練兵場での結末を聞いた。蘇南瑾は計量していた下仕官に棒打ち50回を命じ、その場で刑を執行したという。武将たる者、冷酷でも横暴でも構わないが、配下を守る器は持たねばならない。麴智湛はこれで部下の信頼を失った蘇南瑾が軍営で頭角を現すことは難しくなったと言った。庫狄琉璃(コテキルリ)は露台で豪華な夕食を準備して夫の帰りを待っていた。今日は2人の結婚記念日。すると裴行倹が帰ってくる。裴行倹は何の日か忘れたふりをしながら、琉璃の名前にちなんだ″琉璃釵(ルリサイ)″を贈って驚かせた。「私からも贈り物があるの」琉璃は自分で彫った玉印を渡した。「″守約(シュヤク)の印″と″人間(ジンカン)四月″か…美しい印だ」裴行倹はこれからも出会った頃のように愛し続けると誓い、琉璃も共白髪まで添い遂げると約束した。( ๑≧ꇴ≦)またかっwそんな幸せな夫婦とは対照的に張(チョウ)府からは令嬢の寂しい琴の音が響いていた。張敏娘(チョウビンジョウ)は都護から息子の側室に望まれていたが、麴崇裕には全くその気がないと知っている。これまで麴崇裕に釣り合う相手になろうと努力を続けながら、気がつくと婚期を逃していた。今さら引き下がれない張敏娘は必ず麴家に嫁ぎ、愛を勝ち取ってみせると自分を鼓舞する。「私が麴家の宗婦であり、西州の女主人だと知らしめるわ」張敏娘は今日も工房で甲斐甲斐しく麴崇裕の世話を焼いていた。その日は麴崇裕と職人が綿打ち弓を試していたが上手くいかず、琉璃の到着を待っている。すると知らせを聞いて琉璃が駆けつけた。張敏娘は大きな弓など使い物にならないとぼやいたが、琉璃は気にする様子もなく、工具の中から適当な重さの金槌を手にする。「武器を作ったと噂になるより壊した方がいいわね」失敗作だと誤解した張敏娘は嘲笑ったが、琉璃は黙って金槌で綿花を叩き始めた。「これはいい!繰り綿がほぐされていきますな!」職人は琉璃の機転に関心し、すぐ作り直すと言った。「これで問題は解決ね、ではこれで」麴崇裕に気に入られようとでしゃばり、面目を失った張敏娘。そんな張敏娘には目もくれず、麴崇裕は琉璃を門まで見送りに行ってしまう。麴嵩(キクスウ)の帰京が迫って来た。そこで麴智湛は麴嵩が発つ前に張敏娘を呼んで食事でもしないかと麴崇裕に提案する。麴崇裕が西州に戻って3年、嫁の慕容儀(ボヨウギ)は長安を離れられず、麴智湛は息子に側室を迎えようと決めていた。張敏娘は長年、麴崇裕を慕っており、名家の令嬢のため息子の後ろ盾になる。しかし麴崇裕は誰であろうと側室を娶るつもりはないと断った。そんなある日、裴家に奴隷商人の米大郎(ベイタイロウ)が訪ねて来た。 朝餉中だった裴行倹は琉璃を連れて正殿に向かうと、見覚えのある娘が一緒にいる。彼女は確か西州へ向かう途中の客桟で助けた娘・阿紅(アコウ)。あの時、裴行倹は米大郎に阿紅を蘇(ソ)府へ送るよう頼んだが、それが縁で米大郎は今回、軍の案内人として戻ったという。「裴長史、蘇将軍から文です… それからあの娘子は姓を阿史那(アシナ)、名を雲伊(ウンイ)と言います 蘇将軍が娘子を庫狄夫人にお任せするようにと」そこで裴行倹は琉璃に雲伊を部屋に案内するよう頼んだ。「あの男に従うつもりはないけれど、蘇夫人からあなたたちは良い人だって聞いた 夫人は信用できるから従ったの」「率直な人なのね、気が合いそうだわ」「雲伊と呼んで」阿史那雲伊は西北の泥孰(デイシュク)の首領の娘だった。泥孰部と阿史那賀魯(ガロ)は戦が絶えず、昨年、泥孰部が大敗を喫し、女子は捕虜になったという。米大郎が阿紅を買ったのはちょうどその頃で、長安の蘇府に届けた際に本当の身分を知ったのだった。蘇将軍が西征に雲伊を伴わせたのは、泥孰部の者の所在が分かれば部族のもとに返したいという意向だという。それで北部に盟友を得られれば西征にも利があるからだ。「さすが師父だ…」麴鏡唐(キクキョウトウ)は麴嵩を長安まで送り届けることになった。その夜、王君孟(オウクンモウ)は妻のため念入りに旅の支度を整えたが、麴鏡唐が急に泣き出してしまう。「本当は私と離れられて嬉しいのね!」「とんでもない!誤解だ!(はっ)私と離れたくないのか?」すると意地っ張りだった麴鏡唐がようやく素直になり、夫に抱きついた。一方、麴智湛は張敏娘からもらった襪(ベツ)を息子に自慢していた。麴崇裕は興味がなかったが、張敏娘が自分の工房で精練した綿布で作ったと聞いて困惑する。「お前の分も作ってあるそうだ、手渡すのが恥ずかしいから祇(キ)氏に預けてあるそうだ」麴崇裕は深夜だというのに工房に王君孟を呼び出した。「張敏娘はまだ売っていない綿布をどこで手に入れた?」「私が知るはずがない」とは言えはたから見れば張敏娘は未来の麴崇裕の側室、頼まれたら誰も断れないはずだという。「…2度と工房に入れるな」翌朝、裴行倹が寝殿を出ると雲伊が待っていた。雲伊は部族の敵討ちのため、一緒に軍営に行って蘇将軍に会いたいという。しかし琉璃が現れ、雲伊を引き止めている隙に裴行倹は出かけてしまう。琉璃は雲伊におとなしく屋敷で待つよう言い聞かせ、買い物へ出かけようと誘った。「身分を明かさない方がいいわ、ここでは私の妹ということにしてね」「一人で行く」すると雲伊は飛び出して行ってしまう。琉璃は阿霓(アゲイ)に雲伊の後を追うよう頼んだ。すると雲伊は露店で見覚えのある数珠を見つけ、これが欲しいという。しかし急いで屋敷を飛び出した阿霓は銭袋を忘れていた。「…すぐ戻るわ、誰にも売らないでね!」雲伊は慌てて引き返したが…。つづく( ̄▽ ̄;)面倒くさそうなメンバーが2人も…
2025.08.23
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第22話「足りない兵糧」約束通り麴崇裕(キクスウユウ)の妻子を解放し、麴嵩(キクスウ)の帰省を叶えた庫狄琉璃(コテキルリ)と裴行倹(ハイコウケン)。安西(アンセイ)都護・麴智湛(キクチタン)は恩人に心から感謝し、宴は和やかな雰囲気に包まれた。これまで矢面に立たされていた王君孟(オウクンモウ)は疎外感を感じていたが、裴行倹はこれも最初の襲撃で助けてくれた王君孟のおかげだと献杯してくれる。麴崇裕もこれからは妹婿ではなく本当の兄弟だと告げ、感激した王君孟は号泣しながら杯を空けた。( ๑≧ꇴ≦)王君孟wこうして名実ともに西州長史と認められた裴行倹。そんなある日、兵糧集めに奔走する裴行倹のため、安三娘(アンサンジョウ)が都護府にやって来た。安三娘は穀物を10万石ほど押さえたと報告し、どの倉もほぼ満杯なので軍倉に移したいという。感謝した裴行倹は半月後に倉を開けると伝え、商人にまず銭の半分を払い、軍倉まで運んできた時に残りの半分を払うと約束した。しかし安心したのも束の間、伊(イ)州の葱山道(ソウサンドウ)行軍総管・蘇海政(ソカイセイ)が西州に息子を派遣、都護府に蘇南瑾(ソナンキン)がやって来る。裴行倹の企みで伊州へ追いやられた蘇父子。内心では怒り心頭の蘇南瑾だったが、笑顔で裴行倹との再会を喜んだ。実は軍に関する事柄を検分するため西州に来たという。裴行倹は兵糧が5万石しか集まらなかったと嘘をついた。すると蘇南瑾は呆れ顔で、程(テイ)大総管が父に下した軍令によると西・庭・伊の3州は1人につき3石を集めねばならないという。「え?!じゃあ西州は12万石も?!」「焦らずともよい、300人の精鋭を率いてきたゆえ、集まらなければ兵士に徴収させる」裴行倹はさすがに民に負担がかかると困惑したが、蘇南瑾は集まらなければ裴行倹が罰せられると脅した。裴行倹は早速、安三娘に相談した。穀物倉庫の備蓄と公田の収穫量を合わせれば何とか1万石になるが、あと1万石、足りない。すると安三娘が意外な秘密を教えた。実は実際に集めた穀物は全部で11万石あるという。しかし軍倉で穀物を量る官吏が上前をはねるため、その量を考慮して10万と報告したのだ。「実際の量より2割少ないと言われるの、正しく図ってくれれば11万石なのに…」その夜、麴家でも麴智湛と麴崇裕が何とか穀物を集められないか思案していた。一方、裴府では蘇南瑾が高昌に来たと知り、琉璃は不安を隠せない。涼(リョウ)州では長史夫人を殺したと思い込ませたが、この通り自分は生きている。しかも裴行倹を弾劾したせいで帰京が遠のき、いくら愚かでも罠だったと気づいただろう。「蘇南瑾が西州に来たのは私たちに復讐するためだわ」しかし裴行倹は兵糧の件なら考えがあると安心させた。翌日、裴行倹は覚玄(カクゲン)法師に協力を仰ぐため、参拝と称して琉璃と大仏(ダイブツ)寺へ出かけた。するとちょうど都護の参拝と一緒になり、麴智湛が同席させて欲しいという。実は裴行倹は寺の財物に目をつけ、民のため善行を施して欲しいと嘆願した。麴智湛は仏像の涙の理由を盾に脅すつもりかと苦言を呈したが、法師は裴行倹が隠しているのは気遣いだと承知している。確かに理由を知るのは簡単だが、もし知ってしまえば嘘をつくことはできない。かと言って真実を明かしてしまえば、寺の神聖さを失ってしまう。裴行倹は法師が板挟みに苦しまぬよう配慮していた。麴智湛は誤解だと気づいたが、それでも兵糧の問題を解決するのは官吏の仕事、世俗を離れた僧に頼るべきではないと反対した。しかし覚玄法師は西州の民に関わる以上、慈悲深い仏に倣い大仏寺も責任を負うべきだという。「この半年に信徒から受け取った4万貫の浄財を穀物を買う資金として供出しましょう」その夜、麴智湛は息子に裴行倹が兵糧の問題を大仏寺に解決させたと教えた。「…阿爺、今も大仏寺に?」「行くべきではないのだが…どうにも心が… 私は半生を無駄にした… 才知と計略ではお前の祖父に遠く及ばず、風采と人望ではお前の伯父に遠く及ばぬ お前の父はただ単に負ける術を心得ているだけだ」しかし麴崇裕は父が負けることで麴家の存続と民を守ってきたことを知っていた。何より負ける術を習得できなかった自分のために父が火中の栗を拾い続けてくれたのだろう。すると麴智湛は息子の言葉に胸が熱くなり、涙が込み上げた。「西州が幸せならいい、玉郎(ギョクロウ)が幸せなら…」突然、蘇南瑾が都護府にやって来た。実は裴行倹から兵糧を集め終えたので明日、倉に入れると連絡があり、自分にも立ち会って欲しいという。蘇南瑾はてっきり都護が手を回したと思ったが、麴智湛は全く関わっていないと否定した。「裴長史が終わったと知らせたなら、終わったのだろう」「そういうことなら分かりました、では」蘇南瑾は玉郎(ギョクロウ)も見物に来るよう勧めたが、麴崇裕は公務で忙しいと断った。練兵場で穀物の倉入れが始まった。すると張二(チョウジ)こと張遠山(チョウエンザン)の穀物が2割足りないと発覚する。張二は少ないはずがないと反発したが、蘇南瑾は官吏を欺いたとして棒打ちの刑を言い渡した。しかし張二が武騎尉(ブキイ)で名家の子息のため、西州の参軍からたやすく罰せられないと止められてしまう。仕方なく蘇南瑾は穀物を追加しろと指示したが、怒った張二は4石だけ渡し、残りは持ち帰ると言い放った。「怒らないで!私たちは味方よ!」安三娘は裴行倹の立場を考え張二をなだめた。蘇南瑾も確かに全員が穀物を持ち帰ったら自分が面目を失うと気づく。そこで精鋭たちを呼んで商人たちを包囲し、誰も逃すなと厳命した。蘇参軍の脅しに商人たちは騒然となった。しかし遅れて裴行倹が到着、事態を収拾することにする。張二から経緯を聞いた裴行倹は公定升の大きさを定めたのは朝廷で、もし細工した升を使えば指揮官が罰せられると説明した。「蘇参軍が軍法を犯すはずがない」「あの公定升は軍倉で保管され、代々、使われて来た物だ よって非難した無知な民には厳罰を下す 兵糧を渡さぬというなら軍法によって罰するぞ?」蘇南瑾は軍法を振りかざし強気だったが、裴行倹にはある妙策があった。裴行倹は商人を罰したら穀物が集まらないと訴え、自分はもちろん蘇南瑾も責任を免れないと警告した。焦った蘇南瑾はならば全て裴行倹に任せると押し付け、唐軍が到着したら是非を争うという。「今はとにかく商人たちが穀物を売る気になるよう、正しく量るべきでは? 実は今日、我々の出る幕はない、担うべき者が来たら量をごまかせる者などいないだろう」「誰のことだ?」「…間もなく到着する頃だ」つづく“(ノ*>∀
2025.08.21
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第21話「仏像の涙」大仏(ダイブツ)寺の僧侶・義照(ギショウ)に財物を奪い取られたと主張する姜大郎(キョウダイロウ)。義照は母子と面識がないと否定したが、裴行倹(ハイコウケン)はひとまず訴えを最後まで聞くことにした。仏の啓示を受けた義照は姜大郎の奇病の原因が母・孔(コウ)氏にあると伝えた。この世は因果応報、かつて孔氏が溺れた子供を見殺しにしたせいで、身代わりに息子が罰を受けたという。実は20年前、孔氏は川で溺れた子供を見かけた。しかし駆けつけた時には子供はぴくりとも動かず、泳げないうえ身重だった孔氏は助けられなかったという。御仏にしか明かしていない秘密を言い当てられ孔氏は驚愕、義照の勧めで翌朝一番に大仏寺を参拝した。すると数年に一度と言われる霊験が現れ、仏像の目から流れる涙を見た孔氏は卒倒してしまったという。孔氏はこの一件で義照に傾倒していった。義照は事あるごとにお布施を求め、やがて孔氏は息子の診療代もままならなくなってしまう。すると義照は孔氏に医者の韓四(カンシ)を紹介した。姜大郎は韓四の薬を数回ほど飲んだだけで病状が改善し、孔氏はすっかり義照を信じてしまう。しかしそんなある日、久しぶりに外へ出た姜大郎は驚くべき光景を目にした義照が付近を気にしながら寡婦の家に入ったかと思うと、母がお布施したかんざしを寡婦の髪に挿していたという。姜大郎の訴えを聞いた義照は激怒、妄言だと一喝した。そこで裴行倹は証人として寡婦の李(リ)氏を召喚したが、李氏も高僧と密会などあり得ないと否定する。すると傍聴席にいた韓四が証言した。姜大郎の治療で家を訪れた時、孔氏が義照に金品を渡しているのを見たという。そもそも姜大郎の病は癭腫(エイショウ)と呼ばれる首のこぶで、確かに珍しいが治療すれば治る病だった。韓四の証言により義照の疑惑は深まった。しかしここで思わぬ事実が発覚する。実は義照には双子の弟・孟二(モウジ)がいた。先日、偶然にも弟と再会し、覚玄(カクゲン)法師の許しを得て寺に泊めたという。「孔氏の家を訪れたのは私ではなく孟二だったのでしょう 孟二を連れてくれば潔白を示せますか?弟はまた寺に私を訪ねて来るはずです」「もちろんだ、孟二が来れば一件落着する」そこで裴行倹は白三(ハクサン)たちに見張りを頼み、慣例を破って義照を寺に帰すことにした。あれから数日経っても義照から音沙汰はなかった。しかし焦る様子のない裴行倹を見て、麴崇裕(キクスウユウ)は勝算があるのだと気づく。実は裴行倹は義照が双子だと知っていた。裁きの前に小六(ショウリク)と三痩(サンソウ)を大仏寺へ遣わし、義照を探っていたという。「あらかじめ成りすましを疑っていたのだな?」そこへ白三(ハクサン)が慌てて駆けつけた。「孟二が死にました」義照が覚玄法師たちと一緒に孟二の亡骸を都護府へ運び込んだ。義照の話では昨夜、山洞に隠れていた孟二が自分を訪ねて来たという。そこで都護府へ出頭するよう説得したが、孟二は夜明けまで考えたいと言い残し、出て行った。すると朝方、亡骸が発見されたという。義照は自害した弟に泣きすがったが、裴行倹は義照に成りすました孟二が兄を殺したと疑った。そこで亡骸が孟二かどうか寡婦に確認させるという。韓四は先日、裁きの場に現れた李氏を見て身ごもっていると気づいた。その話を聞いた麴崇裕は李氏を呼んで詰問、すると李氏は腹の子の父親が孟二だと認める。そこで麴崇裕は都護府で亡骸を確認するよう命じ、正直に証言すれば罪に問わず、新しい身分と銭を与えると約束した。翌日、李氏は審議で孟二の足にはあざがあるが、骸にはなかったと証言した。白三は早速、義照の左足を確認、すると李氏が言ったとおり赤いあざが現れる。ついに正体が暴かれた孟二。すると財物を騙し取っただけなら重罪には問われないはずだと開き直る。義照は夜陰に紛れて山洞まで会いに来てくれたが、足を滑らせ崖から落ちたというのだ。裴行倹は裁きの前に山を捜索させたが孟二は見つからなかったと明かした。孟二は恐らく三月前に李氏と関係を持ち、兄に成り代わろうと手にかけたのだろう。しかし孟二は義照が死んだのは2日前だと訴えた。「調べれば分かります!」そこで裴行倹は検視人を呼んだ。確かに遺体の腐敗が進んでおらず、死後三月とは思えないという。裴行倹は孟二を収監したが、捜査は行き詰まった。その夜、麴崇裕は証拠探しのため大仏寺を訪ねた。裴行倹は屋敷で知恵を絞り、白三を介して麴崇裕と情報を交換しながら解決を図ることにする。すると本堂の大仏が空洞で、後ろに職人が鋳造した時に作った扉があると分かった。しかし僧侶たちは交代で掃除するため、これが秘密とも言えないという。麴崇裕は中に入ってしばらく調べてみたが、今夜は寺に泊まりたいと頼んだ。「義照が使っていた部屋に泊まりたい」義照の部屋は不思議と涼しく快適だった。夕餉を運んできた弟子の話では床下が氷室のため、大仏寺の中で最も涼しい部屋だという。「義照が氷室を管理していました、入り口はあそこです」すると隙間から冷気が上がり、机の足に水滴が付いていた。翌朝、裴行倹は小檀(ショウダン)が差し入れてくれた果実を何気なく手に取った。その時、果実が濡れていることに気づき、慌てて小檀に銅壺に井戸の冷たい水を入れて持ってくるよう頼む。やがて銅壺の周りに水滴が着き始めた。「銅の仏像もこうなるはずだ」すると大仏寺から戻った麴崇裕が裴行倹を訪ねた。「進展があった、孟二が泊まっていた部屋は床下が氷室で入り口があった もし三月前に殺しても骸を氷室に隠せば腐敗を遅らせられたはず… それから仏像が涙を流す理由も分かった」しかし裴行倹が銅壺ですでにからくりを見破っていたと知って悔しがる。「また先を越された(ボソッ」「真相が分かった、これで明日、解決する」裴行倹は裁きの場所を大仏寺に移した。孟二は仏像が自分の無実を示してくれると強気だったが、裴行倹はならば大仏が孟二の罪を嘆いて涙を流せば認めるかと迫る。そこで孟二はひざまずいて指を立て、仏像が泣いたら罪を認めると誓った。裴行倹は手を合わせ、義照が孟二に殺されたのなら涙を流すよう懇願した。すると覚玄法師たちや信徒たちが見守る中、大仏の目から涙が流れる。一方、麴家は孫を迎える準備で慌ただしくなった。しかし予定が早まり、すでに庫狄琉璃(コテキルリ)の馬車が高昌城に入ったと知らせが来る。麴智湛(キクチタン)は孫が城内にいると聞いてすっかり舞いあがり、急いで部屋を整えるよう命じた。裴行倹は見事、孟二の罪を暴いた。すると琉璃が戻ったと聞いて慌てて官服のまま裴府に駆けつける。琉璃の元気な姿を見た裴行倹は思わず駆け寄り、愛しい妻を抱きしめた。「そろそろ離れて、何日も湯浴みしていないのよ?」「構うものか、この玉の肌は1年、湯浴みせずとも香しい」( ̄▽ ̄;)まさかの風呂キャンセル界隈w麴家には久しぶりに笑い声が絶えず、平穏な夜を迎えた。麴智湛は裴行倹と琉璃を宴に招き、改めて麴家のために尽くしてくれたことに感謝する。つづく(  ̄꒳ ̄)うーん…このエピいる?wそう言えば麴鏡唐が挨拶していた僧だよね?てっきり彼女の証言が決め手になるのかと思ったら違ったw
2025.08.20
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第20話「因縁の決着」裴行倹(ハイコウケン)の暗躍を警戒し、人を集めておくよう命じた臨海(リンカイ)大長公主。そんなある日、麴崇裕(キクスウユウ)の妻・慕容儀(ボヨウギ)と息子が乗った馬車に突然、窓から包みが投げ込まれた。驚いて外を見たが、付近に人影はない。包みの中には書簡と麴家の族印が入っていた。…麴智湛(キクチタン)は息子が妻子を残して西州に戻ったことを嫁に詫びたしかし慕容儀は幼なじみの麴崇裕の志が西州にあると承知しているという『約束しよう、将来、その子が麴家の全てを受け継ぎ、麴家の主と共に西州の王になると』麴智湛は麴家の族印を示し、いずれ手渡すと約束した…慕容儀は投げ込まれた印が確かにあの時の族印だと分かった。大長公主が最近、今までより親しく接するのは思惑があってのことだろう。自分たち母子は麴家を従わせるための人質なのだ。息子を守るためには自分が養女になるしかないと思ったが、一歩間違えれば悲惨な目に遭わされる。すると書簡には待ち合わせ場所が書いてあった。…松竹亭で待つ…翌日、慕容儀は松竹亭へ出かけた。しかし待っていたのは義父ではなく、死んだと噂されている庫狄琉璃(コテキルリ)だと知る。「あなたに会うために一芝居打ちました」「…あなたが大長公主を恨んでいるのは知っている、でも力になれない」慕容儀は自分とは無関係だと誤解して帰ろうとしたが、琉璃は止めた。「あなたは何もする必要はありません、ただ大長公主に従わないでください 武(ブ)皇后の権勢は大長公主に勝る、だから麴都護も私に族印を預けてくれたのです」慕容儀は琉璃が自分たちを助けに来たと知って態度を軟化させた。「私は何をすれば?!」その時、突然、河東(カトウ)公府の私兵が現れ、涼亭を包囲した。すると楼閣の露台に大長公主と世子妻・崔(サイ)氏が現れる。「琉璃ィ~また私の邪魔をしに戻ってくるとはね ここは人も訪れない寂しい場所、誰かが殺されても気づかれないわ」一方、高昌では裴行倹(ハイコウケン)自ら琉璃が戻るまでの人質になっていた。裴行倹と一緒に過ごしながら妻子の無事を祈るしかない麴崇裕。しかし裴行倹は琉璃が口にしたからには勝算があるはずだと安心させた。崔氏は琉璃を始末するよう命じた。焦った慕容儀は琉璃を見逃すよう訴えたが、息子を盾にされ断念する。「ごめんなさい、ごめんなさい…」「琉璃、あなたのお気持ちだけ頂きます」実は琉璃には切り札があった。琉璃は大長公主が麴智湛に当てた2本の箋封(センプウ)を示した。「日が暮れても私が戻らなければ義父が文を陛下にお渡しします 陛下は河東公府をどうするかしら?」崔氏は激しく動揺し、大長公主もさすがに琉璃に手が出せなくなった。しかしふと麴智湛の疑り深い性格を思い出し、琉璃を独りで寄越したのは裴行倹が人質になっているからだと気づく。「母子に何かあれば守約(シュヤク)の命もそれまでなのね?ふふ 明日、文を持って河東公府に来なさい」琉璃は足下を見られ、結局、慕容儀は河東公府に戻ってしまう。一方、麴崇裕は危険を承知で庫狄夫人を長安へ送ってくれた裴行倹に感謝していた。裴行倹は麴崇裕が心を開いてくれたことを喜び、自分たちの努力も無駄ではなかったという。「守約(シュヤク)、君を朋友と呼ぶには遅すぎるだろうか?」「司馬、そもそも敵同志でなかった、これまでも、これからも…」その夜、屋敷に戻って冷静になった大長公主は琉璃の嘘に気づいた。唐軍が近々、西疆北部との戦で出征するが、麴家の忠誠は勝敗を握る鍵となる。自分が大事な麴家の母子に手を出せないと分かっているだろう。そもそも琉璃の手にある2通の文が本物なら、武皇后に渡せば一撃で自分を倒せるはずだ。恐らくあの箋封は空、そこで大長公主は麴家の母子を誰にも知られない場所へ移すよう命じた。「麴智湛父子が痺れを切らして裴行倹を始末するまでね、そうなれば庫狄琉璃など敵ではない」琉璃は松竹亭に大長公主が現れることなど織り込み済みだった。西州での噂を聞いても麴智湛から知らせがなければ大長公主も安易に自分の死を信じないだろう。疑いを持てば麴崇裕の母子を見張らせるはず、容易に自分との密会も分かったはずだ。翌日、琉璃は約束通り書簡を持って河東公府に現れた。しかし慕容儀と麴嵩(キクスウ)の姿がなく、解放しないなら渡せないと拒む。大長公主は2人が出かけてしまったとごまかしたが、琉璃はならば用はないと帰ることにした。すると守衛たちが駆けつけ立ちふさがる。崔氏は琉璃が持っている書簡を奪い取れと命じたが、その時、思いがけず宮中から王(オウ)内侍が来たと知らせが届いた。「陛下が庫狄夫人をお召しのため、すぐ帰すようにと…」大長公主は琉璃のはったりではなかったと知り驚愕、守衛たちを下がらせた。琉璃が持って来た書簡は2通のうち1通だけだった。そこで本物だという証しに文を示し、母子の引き渡しと自分たちを害さぬ誓約書を書くよう迫る。「いい気にならないで…」「それなら陛下にお話しするだけです」大長公主はなかなか決心がつかなかったが、王内侍から急かされた使用人が再びやって来た。「これ以上、待てないと仰せです」「もう1通は義父が持っています、私が無事に戻ればすぐ届くでしょう」「筆と墨を…」大長公主は河東公府を守るため、ついに観念した。琉璃は王内侍の馬車で河東公府をあとにした。実は昨夜、蘇定方(ソテイホウ)が内密に王内侍を屋敷へ案内。王内侍は琉璃と再会を果たし、事情を知って琉璃に協力していた。「陛下も皇后もご心配です、参内しては?」「琉璃もお会いしたいのですが、この件が解決したらあらためて拝謁を願います」一方、裴府では裴行倹と麴崇裕が酒を飲んでいた。麴崇裕はこれまでの嫌がらせを謝罪し、常に天下と民を第一に考えている裴行倹に献杯する。「唐の官吏が皆、貴殿のようであれば人が争い、国が乱れることを憂う必要もないのに」「恥ずかしい話だがかつては酒に溺れていた、見かねた恩師が戦へ連れ出したのだ あの年の戦は激しく悲惨だったよ…屍だらけの戦場で恩師が酒を渡して問うた 酔って命を落とし、屍の仲間入りをするか、酒を捨てて生まれ変わるかと」「大長公主が荘園を奪うため、裴行倹の家族を殺して前途を阻んだと…その頃の話か」「死後も思いがあるなら、あの世で祖先に面目が立たぬ、だから酒を捨て荒野で眠った 目覚めると朝日が昇るのを見たよ、何もかも新しく見えた」裴行倹は西州に貢献して来た麴崇裕とは違うと笑った。すると麴崇裕は裴行倹が別院に置いて行ったままだった剣を返してくれる。しかし裴行倹は受け取った剣を麴崇裕に贈った。「生涯、変わることのない友情の証しとして」琉璃は麴崇裕の妻子を無事に保護した。しかし武皇后は麴嵩の帰省を認めたものの、慕容儀は長安に留まらねばならない。その頃、大長公主は人質の解放で手に入れた文が偽物だと気づき、逆上していた。巧みな偽筆だったせいで琉璃が示しただけでは見抜けなかったが、よくよく見れば自分の筆跡を判別できないはずがない。確かに河東公府で育った裴行倹なら偽筆など容易だった。「おのれ裴守約…憎き庫狄琉璃め!偽文を使って誓約書を盗み取るとは…」すると大長公主は憤怒から頭に血が上り、激しく血を吐き倒れてしまう。一方、都護府では裴長史による注目の案件の審議が始まった。訴訟を起こしたのは姜大郎(キョウダイロウ)。西州の名刹たる大仏(ダイブツ)寺の僧・義照(ギショウ)に財物を騙し取られたという。姜大郎は幼くして父を亡くし、母と支え合って生きて来た。しかし数年前に奇病を患い、母は大仏寺へ日参して息子の平癒を願ったという。そんなある日、義照が家にやって来た。義照は夢枕に仏様が立ち、この家の息子の病のわけを伝えてきたという。実は病の原因は母にあるというのだ。つづく( ˙꒳˙ )え?高昌に帰れるわけじゃないんだ…
2025.08.19
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第19話「長史の沙汰」武城(ブジョウ)郷へ税の徴収にやって来た裴行倹(ハイコウケン)。すると村人たちはかつて喬(キョウ)都護が荒野や砂漠まで耕地として分配したせいで、実際の田地は成人男子1人あたり10畝(ホ)あるかないかの中、100畝の税を払わされていると嘆いた。参軍の話では安西(アンセイ)都護・麴智湛(キクチタン)がこの実情を鑑みて3割しか税を徴収せずにいたが、兵糧の調達が急務となった今、滞納を放置することはできないという。「兵糧がなければ将士たちが空腹で戦うことになる 長史が咎を受け、民も厳しく取り立てられるでしょう」村人たちは確かに今回、見逃してもらっても結局、徴収されると気づいて絶望し、長史への怒りが再燃した。殺気立つ民衆の様子を見てほくそ笑む張懐寂(チョウカイジャク)。その時、裴行倹がついに沙汰を下した。「誰か!帳簿を焼け!…武城郷だけでなく西州中の滞納の証しを燃やす!」張懐寂は目の前で燃えている帳簿を見て呆然となった。しかし裴行倹は自分が責任を持つと安心させる。張懐寂は軍が到着した時に民の身を守れるのかと迫ったが、裴行倹は本末転倒だと声を荒らげた。「軍は民を守るために戦うのだ!軍を迎えるために税を取り立てれば民の大半は家財を失う 軍は民を苦しめに来るのではない! 大唐が均田制は敷いたのは民に等しく田を与え、身を立てさせるためだ 10畝しかないなら10畝分の税を納めよ!」村人たちは長史の英断に心から感謝し、その場で拝礼した。裴行倹が民衆からの支持を集めている頃、高昌(コウショウ)の裴府には危険が迫っていた。尚賢郷から急いで戻った小六(ショウリク)・三痩(サンソウ)・長生(チョウセイ)は長史夫人の警固についたが、ついに正門が破られ、暴徒がなだれ込んでくる。そこで守衛が抵抗している間に長史夫人を裏門から脱出させたが、暴徒に見つかってしまう。すると運良く武城郷から戻った白三(ハクサン)が現れ、琉璃は難を逃れた。琉璃たちはひとまず都護府へ逃げることにした。しかし暴徒たちに挟み撃ちにされ、取り囲まれて身動きが取れなくなってしまう。その時、麴鏡唐(キクキョウトウ)が衛兵を率いてやって来た。暴徒たちは騒然、すると物陰に隠れていた胡人の男が飛び出し、混乱に乗じて琉璃の腹を刺してしまう。「女が刺されたぞ!」すると焦った暴徒たちは我れ先に逃亡した。麴鏡唐は琉璃を韓四(カンシ)の家に運ぶよう頼み、暴徒を平定した。一方、韓四は手を尽くしたものの琉璃の傷は深く、あとは運を天に任せるしかないという。その頃、麴智湛と麴崇裕(キクスウユウ)は王君孟(オウクンモウ)から庫狄夫人が重傷を負って生死不明だと聞いていた。武城郷から駆けつけた裴行倹は琉璃と対面した。白三たちは何と声を掛けたら良いのか分からないまま外で待っていたが、その時、裴行倹が出て来たかと思うと剣を抜いて黙って出て行ってしまう。焦った白三は長史を追いかけ、足にしがみついて止めた。「長史!いけません!落ち着いてください!どうか!」「…阿成(アセイ)、邪魔をさせるな」裴行倹は単身、都護府に乗り込んだ。「麴智湛!麴崇裕!出てこい!」すると2人が疑安院から出て来る。「捕らえよ!」麴崇裕の号令で衛兵たちが裴行倹に襲いかかり、ちょうど通りかかった民たちは何事かと都護府の中をのぞき込んだ。裴行倹は何十人という衛兵相手に孤軍奮闘したが、ついに外へ放り出された。すると麴崇裕と麴智湛が門まで出て来る。「長史による税の徴収が民を怒らせたのだろう、麴家に何の非がある? 剣を抜いて麴家に闖入(チンニュウ)したのは都護と私の命を奪うためか?」「裴長史も悲憤に駆られて正気を失ったのだろう 夫人が重傷を負った災難に免じて見逃そう だが再びこのような不敬を働くなら2度と容赦はせぬ」傷だらけの裴行倹は悔しさのあまり怒号を響かせると、民衆が見守る中、去って行った。西州の民の間でこの事件はあっという間に広まった。それから1ヶ月後、西州の商隊により長安にも裴行倹の暴挙が知れ渡ることになる。河東(カトウ)公府でも噂は臨海(リンカイ)大長公主の耳に届いた。しかしぬか喜びに終わらぬよう、大長公主は麴智湛からの知らせを待つことにする。一方、蘇(ソ)府では于(ウ)夫人が養女の琉璃を案じていた。そこへ侍女が客人の来訪を知らせにやって来る。「自分の目が信じられず…直接、お確かめください」蘇定方(ソテイホウ)と夫人はともかく正殿に向かったが、驚いたことに元気な琉璃の姿があった。「私は不孝者です、ご心配をおかけして」「無事ならいいの…よく戻ったわね」すると安堵した于夫人が急に立ちくらみを起こし、慌てて蘇将軍と琉璃が椅子に座らせた。実は于夫人は琉璃が刺されて生死不明という噂を聞いてから心を病み、水も喉を通らなかったという。その夜、琉璃は死を装ってまで長安に戻った事情を養父母に明かした。実は大長公主に弱みを握られた麴都護に命を狙われ続けていたという。琉璃は麴鏡唐の助けで麴智湛父子と話し合いの場を持ち、武(ブ)皇后に頼んで人質を解放してもらうと持ちかけた。しかし当初、麴智湛は裴行倹が武皇后の冊立を反対したことから琉璃の提案に懐疑的だったという。琉璃は武皇后と裴行倹の間にわだかまりはないと訴えた。裴行倹は都護の信頼を得るためにも正直に確執はあると認めたが、琉璃から思わぬ事実を知らされる。実は琉璃は長安を発つ挨拶で武皇后を訪ねた際、独断で裴行倹の誓約書を渡していた。『誓約書?いつ私が?』『私の偽筆よ… ″武皇后を支持しないが排除もしない、麴家を手中に収めたら西州は武皇后に従わせる″と…』琉璃はともかく武皇后と裴行倹にわだかまりはないと断言した。蘇将軍と夫人は琉璃の偽筆と聞いて驚いた。裴行倹の気性を思えば決して許さないだろう。琉璃は確かに屋敷に戻ってから裴行倹に追及されたと明かした。『琉璃、分からぬのか?己を偽ってまで生きるつもりはない』『いいえ、死んでは駄目、大唐のため、陛下のため、そして私のためにも 死を選ぶなど許されない』琉璃は武皇后の権勢と野心がいかに強大か知っていた。病弱な皇帝は発作の回数も増え、このままではいずれ武皇后が朝廷を治めることになる。『国に尽くすための命を今、守らなければ、その時、誰が陛下のために武皇后を制するの? 死ぬのは簡単だけれど、陛下と天下への裏切りになる、私への裏切りにも…』『…夫人の言葉でやっと目が覚めたよ、感謝する』蘇将軍と夫人は琉璃の見識の高さに感心し、しみじみ良妻を得た裴行倹の幸運を喜んだ。しかし武皇后の権勢だけで麴父子が納得するはずもなく、琉璃は一晩かけて説得し、裴行倹は皇帝の西州に対する意向まで伝えたという。すると誠意が通じたのか、麴父子は琉璃と裴行倹が自分たちの敵ではないと信じた。麴崇裕は琉璃の本来の姿に触れ、ようやく粗野な庫狄夫人が演技だったと知ったという。「後の暴動騒ぎは麴父子と相談済みです 刺客は司馬が手配した偽物、血糊を仕込んだ短剣で刺されたふりをしたのです それから柳(リュウ)娘子からもらった薬を飲んで死んだと見せかけ皆を欺きました 医者の協力もあって真実味が増しました」「まったく…なんて狡猾な夫婦なの?」于夫人は失笑したが、ふと武皇后に頼るのが難しいと気づいた。長安でも大長公主が麴族のある母子を気に入っているという話は有名だった。大長公主は母親を養女に迎えると公言しているという。母子は確かに河東(カトウ)公府にいたが、軟禁されたり脅されているわけでもなく、むしろ大切にされていた。良好な関係なら武皇后が懿旨(イシ)を下して帰らせる理由がないという。一方、大長公主も西州での暴動の続報を聞いていた。裴行倹が税を取り立てたことが発端で、憤った民が裴府を襲ったという。多くの民が琉璃の刺される様子を見ており、各方面に確かめたところ間違いなかった。しかし肝心の裴行倹は都護府に闖入したものの、税の滞納の証しを焼き払って暴動を治めたという。大長公主は悔しがった。確かに琉璃は忌々しいが、裴行倹こそが最大の敵である。「やっと見えてきたわ…西州への左遷は陛下と守約の芝居だったのよ 長安に戻ったら必ず朝廷で力を持つ…荘園の献上は仇討ちの第一歩だったのね 守約が生きて戻れば私たちの天下も終わりを迎えるわ 守約が今まで耐え忍んできたのは、この時を待っていたのよ! …何かがおかしい気がする、人を集めなさい、今に使う時が来るわ」つづく( ̄▽ ̄;)大長公主…まだ荘園荘園言ってるw
2025.08.18
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第18話「相いれない仲」都護の息のかかった参軍・張懐寂(チョウカイジャク)は税の取り立てを武力をもって厳しく行い、滞納者には倍にして納めさせるよう進言した。長史は下策をあっさり受け入れてくれたが、思いがけず徴収役を押し付けられてしまう。(  ̄꒳ ̄)<ではこの件は張参軍に任せよう( ゚д゚)<はあ?裴行倹(ハイコウケン)は名家の出で録事参軍を務める張懐寂なら自分より人脈も広く、成算があって意見を出したのだろうと畳み掛け、有無を言わさず正殿から追い出した。「では武城(ブジョウ)郷へ向かい、税の徴収に当たれ、よろしく!」ε ≡( 「ε:)ノ都護の思惑通り、西州の民は唐の役人が来たせいで強引な税の取り立てが始まったと不満を募らせた。裴行倹は腹心となった白三(ハクサン)たちと対応を話し合っていたが、従者の阿成(アセイ)が我慢できず口を挟んでしまう。「麴(キク)家が郎君へ向ける悪意は明らかです、せめて夫人のことを顧みては…」「私は西州長史としてなすべきことをなすだけだ、それは長史夫人も同じ」しかしその頃、都護の命令で裴家の警護が撤収されていた。張懐寂が落馬で負傷し、明日は武城郷へ行けないと連絡して来た。白三から知らせを聞いた裴行倹はわざとだと分かったが、その時、阿霓(アゲイ)が慌ててやって来る。「郎君!麴司馬の配した護衛が引き上げました!」その頃、取り立てに激怒した民たちが裴家に押し寄せていた。琉璃は堂々と民衆の前に立ち、裴長史が必ず問題を解決させると説得する。しかしある男がすでに取り立てが始まっていると煽り、裴家も道連れにしようと怒号を響かせた。すると興奮した民が裴府に雪崩れ込み、止めようとした琉璃は突き飛ばされてしまう。そこへ知らせを聞いた裴行倹が官兵を連れて駆けつけ、民は慌てて逃げ出した。( ˙꒳˙ )琉璃の外套が可愛い裴行倹は韓四(カンシ)を呼んで琉璃の治療を頼んだ。運良くかすり傷と捻挫で済んだ琉璃。裴行倹は麴智湛(キクチタン)がまさか意図的に反乱を起こさせるとは予想外だったが、この難局を打開する方法を見つけたと安心させた。しかし琉璃は麴崇裕(キクスウユウ)の妻子が人質である限り、これからも命を狙われ続けると懸念する。「守約(シュヤク)、私は長安に戻る、試してみる価値はあると思うの」果たして琉璃の計画とは…。その夜、白三が麴家の工房に潜入、麴崇裕に接触した。「裴府から護衛が撤収し庫狄夫人が民に襲われました、ここは兵が包囲しています」何も知らなかった麴崇裕は工房を出たが、護衛が駆けつけ、司馬の足にしがみついてまで制止した。「司馬!お戻りください!司馬を外に出せば命はないと厳命されました!」すると麴智湛が現れた。「玉郎(ギョクロウ)、何日か工房に籠るだけだ、情勢が落ち着いたらどこへ行こうと止めぬ」麴崇裕は改めて裴行倹を害せば麴家に災いが及ぶと説得したが、父は生かしておく方が災いだと訴えた。「もう何も言うな」そこへ麴鏡唐(キクキョウトウ)の侍女が慌てて駆け込んできた。実は麴鏡唐と王君孟(オウクンモウ)が喧嘩になり、怒った麴鏡唐が自害すると大騒ぎしているという。仕方なく麴智湛は麴崇裕と一緒に娘の様子を見に行ったが、待っていたのは裴行倹と庫狄琉璃だった。「なぜここに?」麴鏡唐は父と兄が部屋に入ると外から鍵をかけた。「阿爺!阿兄!琉璃も裴長史も麴家に危害を加えません! 双方の誤解が解けるまで話し合っては? これも麴家のため、話が終わるまで鍵は開けません!」麴崇裕はようやく臨海(リンカイ)大長公主が自分の妻子を人質にして父を脅していたと知った。激怒した麴崇裕は激しく門を叩いて鍵を開けるよう要求したが、父に止められる。「こうしてお前が暴走するから黙っていたのだ」「相手が誰であろうと妻子を救う!」「愚か者!麴家を滅ぼすつもりか!」すると琉璃が自分に策があると切り出した。琉璃は武(ブ)皇后が圧力をかければ大長公主も人質を手放すはずだと説明した。しかし麴智湛は嫁と孫の命に関わる大事のため、簡単には信じられないという。確かに琉璃と武皇后が懇意なのは承知していたが、武皇后が自分の冊立に反対した裴行倹を助けるとは思えなかった。「あと数日、生かしてやる、裴長史は引き続き税を徴収せよ 別の策を思いついた時にでもまた話そう」雪の舞う中、琉璃と裴行倹は屋敷に戻った。「明日はもっと着込んでね、心配せずとも私は己の身を守れる」「だが君は私と離れ…」しかし琉璃は裴行倹の言葉を遮るように抱きついた。( ̄▽ ̄;)またしても差し込まれるイチャエピw武城郷での税の徴収の日。白三は老四(ロウシ)と王小仙(オウショウセン)の3人で武城郷へ入り、小六(ショウリク)・三痩(サンソウ)・長生(チョウセイ)には尚賢郷の監視を任せた。民たちの反発は必至、すでに武城郷では張参軍が責任逃れのためわざと落馬し、代わりに裴長史が自ら来るらしいといきり立っている。白三は警護のいない裴府に残った長史夫人の身を案じ、兄弟たちに長史を任せて高昌に戻ることにした。小雪の舞う中、裴行倹が武城郷にやって来た。同行の馬車から3人の参軍が降りて来たが、村人は1人が落馬した張懐寂だと気づく。一方、武城郷より高昌に近い尚賢郷では白三が恐れていた通り、村人たちが裴府を襲おう声を上げていた。監視していた小六たち3人は長史夫人を守るため、急いで高昌に戻ったが…。裴行倹は取り立てを始める前に村正(ソンセイ)と里正(リセイ)を前に呼んだ。「分からぬことがあるゆえ教えてほしい、皆は勤勉で真面目に見えるが、なぜ滞納している?」ザワザワ…ʕ•̫͡•ʕ*̫͡*ʕ•͓͡•ʔ-̫͡-ʕ•̫͡•ʔ*̫͡*ʔ-̫͡-ʔ…ザワザワするとある村正が税が多過ぎるせいだと訴えた。「長参軍、武城郷に課された税が多過ぎるようだが?なぜ報告しない?」「恐れながら今の税は喬(キョウ)都護が決めたものです、てっきり長史はご存知かと…」「私が聞いていなかったのは税を取り立てれば民が家を失うということだ!」「ですが喬都護の在任中には滞納はありませんでした」その頃、武器を持った民衆が裴府に迫っていた。琉璃は使用人たちを地下室に避難させたが、阿霓と小檀(ショウダン)は琉璃のそばを離れないという。「分かったわ、なら民は何をしたいのか、ここで一緒に見ましょう」裴行倹は確かに喬都護の退任後、7年も経たないうちに滞納するようになったと村人を非難した。村人は騒然、すると村正は多くの民が身代を潰してまで徴収されたせいだと明かす。次の郭(カク)都護は財産を記録させたものの税を徴収できる状況ではないと知り、滞納を許していた。4年前から麴都護のおかげで銭や米を蓄えられるようになったが、各戸の財産を調べれば分かることだという。「誰もが税を納めるために牛や田地を売っています」俺たちは努力している!>ʕ•̫͡•ʕ*̫͡*ʕ•͓͡•ʔ-̫͡-ʕ•̫͡•ʔ*̫͡*ʔ-̫͡-ʔ<そうだそうだ!そこで裴行倹は知らないふりをしてわざと尋ねた。「西州は養蚕に敵さぬ地で調を納めるのも厳しいと聞いた だが田100畝(ホ)につき粟4石を納めるのが難しいか?」すると村人はほとんど砂漠だと反発、実際はせいぜい10畝しかないと訴えた。つづく
2025.08.17
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第17話「牛泥棒の正体」裴行倹(ハイコウケン)が子牛がらみの案件で関心を集めている間に王君孟(オウクンモウ)から内情を聞き出すことにした庫狄琉璃(コテキルリ)。「なぜ私を襲わせたの?」「ピキッ!悪い冗談を…手落ちは認めますが私は無関係で…」「では麴(キク)都護の指示?それとも大長公主?」( ꒪ͧ⌓꒪ͧ)・・・一方、張二(チョウジ)こと張遠山(チョウエンザン)の証人たちは裴行倹からそれぞれ別室で当時の状況を書くよう迫られていた。すると4人は偽証罪に問われることを恐れ、話を聞いただけで実際には売買の現場を見ていないと告白する。焦った張二は遊牧民から子牛を買ったのは事実だと訴えたが、墓穴を掘った。「とても興味深い供述だ… 北部で反乱が起きているこの時に北部の遊牧民が来たら騒ぎになるはず だが誰も見ていないというなら人目を盗んで会っていたのか? 子牛を買うために相当な便宜を図ったに違いない、事は重大ゆえ私の一存では裁けぬ 軍の本営で申し開きしてもらおう、軍は北部との内通者を探している」琉璃は王君孟に腹を割って話し合おうと提案した。しかし王君孟は麴家の婿でしかない自分に聞くのは御門違いだという。「私は何も知りません、ではこれにて…」「私が麴司馬と話してもいいのね?」王君孟はただの脅しだと思ったが、琉璃に確信をつかれてしまう。「麴家は大長公主に弱みを握られ、それを司馬に隠しているのでしょう? あなたが協力できないのなら司馬に聞くしかない ″麴都護は大長公の命に従っている、息子にさえ隠す弱みとは何かしら″って?」一方、張二は軍で裁かれると聞いて驚愕し、内通者ではないと釈明した。しかし今さら親戚の子牛を奪ったとも言えず、口ごもってしまう。すると裴行倹が子牛の仕入れ先を言えないのは盗んだからだと迫り、子牛20頭の盗難の犯人は張二だと主張した。「( ゚ロ゚)え?!違います!」「私は子牛泥棒を捕まえた、ここへ」すると足を折られて血まみれになった男が引っ張り出された。琉璃は皇帝が麴家の忠誠心を疑い、調べさせるために自分達を送り込んだと嘘をついた。「武(ブ)氏の皇后冊立に守約(シュヤク)が反対したって話も本当だと? もし本当なら楊(ヨウ)夫人の助けを借りて朝廷に財産を献上なんてできないわ 当初は麴家が西州をよく治めているから陛下の疑念を払拭するつもりだった まさか大長公主と組んで私たちの命を狙うとはね、本当にがっかりよ 今日はちょうど皆が集まっているから、麴家が唐と陛下を敵に回したと公表するわ」「お待ちを!」王君孟はその場にひざまずき、ついに真相を明かした。「誤解です!私たちは従うしかなかった…」実は大長公主は麴崇裕(キクスウユウ)の妻子を人質にして裴行倹夫妻の暗殺を命じていた。麴崇裕の気性では事実を知れば激怒して長安に乗り込むはず、そうなれば麴家にも西州にも累が及んでしまう。麴都護は西州の安寧のためにもこうするしかなかったというのだ。事情を知った琉璃は武皇后に文を書いて妻子を救ってもらうと約束し、司馬にも秘密にすると安心させたが…。子牛20頭を盗んだ男は張二に渡したと証言した。突然、濡れ衣を着せられた張二は呆然、仕方なく子牛は喬六(キョウリク)こと喬其雨(キョウキウ)から預かった牛から生まれたと白状する。「その子牛を私が奪いました、こやつの証言は偽りです! 子牛を喬六に返します、どうかお許しください」するといるはずのない喬六に裴行倹が声をかけた。「…喬六!どのような決着を望む?」喬六の姿を探す張二や傍聴者たち。その時、子牛を盗んだ男になりすましてひれ伏していた喬六が起き上がり、ぼさぼさの髪をかき上げた。「ご明察です、裴長史!私は路銀と薬代を返すためやむなくおじを訴えました 約束通り子牛10頭さえ手元に戻ればおじへの罰は望みません!」裴行倹は張二に子牛20頭を全て返すよう命じた。また罰は免じたものの、自費で水利工事を進め、故郷のために善行を積むことで償わせることにする。偽証の4人にはそれぞれ6貫ずつ出させ、喬六の路銀と薬代を肩代わりさせることにした。ただし保長(ホチョウ)と里正は罷免されてしまう。民衆は裴行倹の見事な裁きに拍手を送った。これで一件落着かと思われたが、結局、高昌の各地で子牛を盗んだ犯人が見つかっていない。すると裴行倹は恐らく犯人が傍聴に来ているはずだと指摘、ちょうど皇太子の冊立を祝って大赦が施されたことから、3つ数えるうちに名乗り出るなら懲罰を免ずると約束した。「いー!あー!さn…」その時、韓四(カンシ)こと韓景之(カンケイシ)が現れ、ひざまずいた。子牛を盗んだ犯人は獣医の韓四だった。しかし子牛は全て死んだという。実は村人は家畜の具合が悪くなったと言っては韓四を呼びつけ、元気になると治療ではなく自然に治ったと言い張って治療代も薬代も払ってくれなかった。しかも十数軒の家が数年間も支払いを拒否すれば生活もままならず、我慢の限界だったという。裴行倹は約束通り罪には問わないと言ったが、子牛の値段と薬代の差額を返すよう命じた。「誰か、書記をここへ、事の次第を紙に書き記せ 加えて支払いを怠った者の名も書き連ねて門前に張り出せ、西州中の人々に知らしめるのだ!」すると滞納していた村人は名を晒されてはたまらないと慌てて声を上げた。「銭はいりません!」(  ̄꒳ ̄)お互い任務完了裴行倹に助けられた韓四は白三(ハクサン)たちと一緒に長史の書斎を訪ねた。白三は韓四を助けてくれた長史に心から感謝し、司馬に命じられて見張っていたことを認めて謝罪する。「今までの無礼をお許し下さい…長史のお裁きは胸に刻みました」すると白三は兄弟たちと一緒に拝跪して長史に忠誠を誓った。一方、韓四は父を継いで医師になると決意、裴行倹に何かの時はすぐ駆けつけると約束した。「ところで…なぜ子牛を盗んだ?」「薬効を調べるためです、家伝の古い薬の処方は奇妙なものが多く、人に使えるか心配で」その時、白三はようやく自分も実験台にされたと分かった。「でもなぜ子羊ではなく子牛を?」「それは…牛の方が…美味しいので…」は?>ʕ•̫͡•ʕ*̫͡*ʕ•͓͡•ʔ-̫͡-ʕ•̫͡•ʔ*̫͡*ʔ-̫͡-ʔ<あぁ…その頃、岳父に朗報を伝えた王君孟は安西(アンセイ)都護・麴智湛(キクチタン)から厳しく叱られていた。「庫狄琉璃の出まかせを信じたのか?! 北部への出征を控える唐軍は西州で兵糧の調達が必要になる 今、麴家を切り捨てるはずがなかろう! 朝廷により一族の多くが長安に留め置かれている 人質を取られているのになぜ陛下が忠誠心を疑う必要があるのだ!」「ごもっともです…」「まんまと騙されおって!」麴智湛は孫を守るため、もはや一刻の猶予もないと焦った。その夜、裴行倹は琉璃から事情を聞いた。琉璃は都護に孫の帰郷を皇帝に請うと約束して懐柔しようと提案したが、裴行倹は麴智湛が信用するとは思えないという。しかし手をこまねいているだけでは麴智湛の襲撃は免れない。「策は考えるが相手が動くのを待つ、相手が動けばどこかに隙ができる」長安では麴嵩(キクスウ)が河東(カトウ)公府で元気に遊んでいた。臨海(リンカイ)大長公主は麴崇裕の妻・慕容儀(ボヨウギ)に自分の養女にならないかと提案、慕容儀から断ることもできず、半ば強引に決まってしまう。一方、琉璃は麴鏡唐(キクキョウトウ)に完成した絵を見せながらそれとなく探りを入れた。「私、司馬に毛嫌いされているみたい…」「ふふ、阿兄は女子に冷たいの、でも嫂嫂にはすごく優しいわ もし嫂嫂と我が子に何かあったら阿兄は長安に乗り込むでしょうね たとえ相手が陛下だろうと…あ、ともかく阿兄は怒ったら何をするか分からないの」琉璃は王君孟の話が本当だと分かった。裴行倹に秘密を知られた都護が早速、動き出した。裴行倹が知らないうちに長史の名前で滞納している税を全て納めるよう告示が張り出され、民たちを騒然とさせる。何も知らなかった麴崇裕は父の思惑を探ろうとしたが、麴智湛の逆鱗に触れた。「失敗しすればかえって反乱でも起きるのではと心配で…」「もし起きたら唐のせいだっ!唐が西州の民を追い詰めたのだからなっ!」柳如月(リュウジョゲツ)は久しぶりに琉璃を訪ねた。琉璃はすっかり痩せてしまった柳如月を心配したが、柳如月は笑顔を見せる。「従兄の行方が分からなくても縁があればまた会える 縁がなくても来世で…で、今日は取り立ての噂を聞いて来たの…」そこで柳如月が宮中に伝わる秘薬を渡した。「これで数日は仮死状態になれるわ、裴長史の役に立てるかも」琉璃は病を装っても一時しのぎにしかならないと言ったが…。( ˶´꒳`˵ )モフモフ~♡一方、裴行倹は都護府で改めて滞納の多さに驚いていた。すると張(チョウ)参軍がかつての喬都護のように武力を使うべきだと助言する。「思い切った手段を取らねば唐軍に兵糧を供給できず、長史が罪に問われてしまいます」「もっともだ、ではこの件は張参軍に任せよう」( ゚ロ゚)え?私?!つづく( ๑≧ꇴ≦)張参軍www
2025.08.16
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第16話「消えた子牛」手がかりのない子牛の盗難事件と子牛を巡って親戚に告発された張二(チョウジ)こと張遠山(チョウエンザン)。2つの案件は一見、無関係に見えたが、報告書に目を通した裴行倹(ハイコウケン)は盗難の犯人も張二だと判断した。王君孟(オウクンモウ)は安易に結びつけないよう諌めたが、裴行倹は張二を少し脅せば白状するはずだと自信を見せる。その時、黙って聞いていた司馬の麴崇裕(キクスウユウ)がようやく口を開いた。「…長史なら何日で落着できる?」「私なら明日、告示を行う、3日後に裁きを開き、張二に罪状を認めさせるとな」すると麴崇裕は早速、告示を張り出すよう命じた。そうとは知らず、張二は配下を従え、韓四(カンシ)こと韓景之(カンケイシ)の家に乗り込んでいた。使いを何度、送っても韓四は牛の診察に現れず、今日こそ力ずくで連れて行くという。実は張二は2年も治療費を滞納していた。韓四は治療費を清算したら行くと断ったが、横暴な張二は配下に韓四を捕えろと命じる。その時、家の中から張二と犬猿の仲である白三(ハクサン)が現れた。しかし白三は松葉杖に包帯姿、張二は失笑して懲らしめようとしたが、運悪く白三の兄弟たちが現れる。「喧嘩なら付き合うぞ?」張二も使い手の弟分たち相手では白三に手を出せず、仕方なく退散した。一方、庫狄琉璃(コテキルリ)は麴都護が自分をつけ狙う理由を探るため、麴崇裕を揺さぶることにした。そこで麴鏡唐(キクキョウトウ)経由で麴家別院の工房に綿繰り機の製作を依頼、すると問題点を見つけた職人が行き詰まり、司馬に相談する。麴崇裕は図面を書いたのが庫狄琉璃だと聞いて驚いた。「これで種が取り除けるのか?」「そのようです、ただこれでは完全に取り除けず、改良が必要かと… 細布を折る″鍵″はこの綿繰り機にあるのでは?」実は琉璃はわざと不完全な図面を渡していた。亡き母の願いを叶えたい麴崇裕なら必ず″鍵″を知りたいはず、すると案の定、麴崇裕が裴家にやって来た。(  ̄꒳ ̄)よく分からないけれど突然、差し込まれるイチャイチャエピw麴崇裕は琉璃の案内で露台に上がった。するとすでに試作品の綿繰り機があり、机に図面が広がっている。「綿繰り機ができても夾雑(キョウザツ)物が残って綿は硬くなる、それでは細布は織れないわ この綿を使うには別に綿打ち機がいるの、綿を叩いて均一に柔らかくするのよ」「その綿打ち機の図面もあるのか?!」「まだ頭の中で考えている段階よ」麴崇裕は工房で手伝えることがあったら協力したいと申し出たが、琉璃はまず頼んだ綿繰り機が見たいと言った。麴崇裕にとって粗雑な庫狄夫人の相手は何より苦痛だったが、これも細布のためと我慢した。すると琉璃は麴崇裕が図面から改良を重ねて作ったという綿繰り機を見て、回転軸を同じ太さにして細い鉄棒を使うよう助言する。「種を取った柔らかい綿は貴重品、私も尚服局でしか見たことがな…あ、河東(カトウ)公府で見たわ 司馬も長安では大長公主と親しかったとか?」「阿爺の関係で世話になったが、親しくはない」「あら、都護も大長公主と交遊があるのね?ふっ、納得したわ」麴崇裕はうっかり口を滑らせ、仕方なく父をかばった。「…なぜ大長公主が庫狄夫人を恨み、命を狙うのかは知らぬ だが阿爺は大長公主の命など聞かぬし、麴家が大長公主の顔色を見る必要もない 私がいる限り夫人の身の安全は保証する(キリッ」「そう願うわ、ではこれで」しかし麴崇裕が引き止めた。「夫人は綿打ち機が完成したらどうするつもりだ?私は都護府で管理すべきだと思う 民には使わせるが製法は知らせぬ、希少さは価値だ 耕地が少ない西州にとって民の暮らしは細布にかかっている ほかの地に広まることの利害は夫人にも分かるはずだ」琉璃は郷や村に配るつもりだったが、司馬の訴えに納得し、従うと答えた。「裴長史と相談せぬのか?」「もともと私の考えたことだもの」(´◔_◔)我慢中の司馬wその夜、琉璃は裴行倹に麴都護が大長公主と通じていると報告した。しかし麴崇裕はやはり何も知らないらしい。「これで辻褄が合うな」「でも都護はどうして大長公主の命に従うのかしら?何か弱みでも握られているのね 恐らく麴崇裕に関することよ、だから息子には隠しているんだわ」「言いなりになるからには深刻な問題なのだろう」「手配したのは王君孟ね」琉璃は事情を詳しく知っている王君孟を追求するため、明日の審議を利用することにした。張二の案件は都護府の中院で公開審議となった。正門前に多くの野次馬が集まる中、獣医の傍聴が許されたとあって裁きの場には韓四の姿がある。その頃、麴崇裕と王君孟は書斎で裁きが始まったと連絡を受けていた。王君孟は様子を見に行かないのか聞いたが、麴崇裕は長史に任せた以上、顔は出さないという。「張二が騒ぎを起こすのを待とう」確かに張二は無能な男だが、それでも敦煌(トンコウ)張氏の嫡子、敵に回せば裴行倹は痛い目を見るだろう。被疑者の武騎尉(ブキイ)・張遠山の審議が始まった。喬六(キョウリク)こと喬其雨(キョウキウ)の訴えによると科挙で家を空ける際、張二に牛40頭を預け、1年後に生まれた子牛20頭は折半する約束だったという。しかし喬六が帰郷すると張二は子牛20頭なら天候のせいで死んだと説明、この20頭は自分が買った子牛だと言い張り、さらに放牧代1年分を要求した。落第したうえ父親が病に倒れ、路銀や薬代の借金を抱えた喬六はやむなく張二を告発したという。麴崇裕の部屋に琉璃がやって来た。先日の誘拐のせいで王君孟は琉璃の仕返しを恐れていたが、頼みの綱の麴崇裕はさっさと出ていってしまう。「私もお裁きの様子を…」王君孟は慌てて逃げようとしたが捕まった。「王明府?」Σ(꒪꒫꒪ )ハッ!「あなたには聞きたことがあるの」∑(⊙∀⊙)ヒャーーー!裴行倹は20頭の子牛を買ったという証拠があるか張二に聞いた。張二の話では昨年の秋、たまたま郷を通りかかった遊牧民から買ったという。すると証人として郷の保長(ホチョウ)や里正たちが召喚された。4人は確かに張騎尉が遊牧民から子牛を買ったと証言。裴行倹は唐律に従い3人以上の証言があれば確かな証拠だと認める。張二は長史の賢明な判断に安堵したが、その時、裴行倹が張二に子牛を買った経緯を詳しく書き出すよう命じた。「いつ、どこで、誰から買ったのか、売り手の年頃、容貌、名前もだ 書けたら指印を押して一件落着だな」裴行倹は張二の供述書を確認すると、証人4人を別々の部屋に案内するよう命じた。目撃した時の事情を詳しく書かせ、張二の供述と合致するか確認するという。驚いた証人はその場にひれ伏し、実は話を聞いただけで現場を見ていないと白状した。「証言を頼まれ引き受けただけなんです!」つづく
2025.08.15
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第15話「誰の仕業か」麴鏡唐(キクキョウトウ)に誘われ大仏(ダイブツ)寺へ出かけた庫狄琉璃(コテキルリ)。琉璃は自由奔放な麴鏡唐が意外にも信心深いことに驚いたが、麴鏡唐には叶えたい願いがあった。若くして王君孟(オウクンモウ)と婚姻した麴鏡唐。当時は焦る必要もなかったが、なかなか子に恵まれず、やがて王家は側室を迎えさせようとした。麴鏡唐も夫が望むならと受け入れることにしたが、王君孟はあらゆる縁談を断ったという。「そんな一途な夫だなんて…見る目が変わったわ」「できることは試したけれど一向に効き目がないの」実は大仏寺の仏像は数年に1度、霊験を現すことで有名だった。麴鏡唐にとって最後の希望が仏像の奇跡だという。(^ꇴ^)今日も金太郎タイプw祈願を終えて寺を出た琉璃と麴鏡唐。その時、ちょうど寺に戻ってきた僧侶・義照(ギショウ)が麴鏡唐に気づいて声をかけた。「お久しぶりです、お元気でしたか?」「今日は説法で外出していたのですか?」琉璃は先に馬車に乗り、侍女たちは外で麴鏡唐が乗るのを待った。しかし突然、御者が馬に鞭を入れ、琉璃を独り乗せたまま走り出してしまう。麴鏡唐は慌てて馬車を追った。するとちょうど市場で馬を発見、郊外へ出た馬車に何とか追いつく。琉璃は御者を止めようと背後から顔を引っかいたが、突き飛ばされて意識を失ってしまう。その時、麴鏡唐が馬車に飛び移って御者を蹴り落とし、危ないところで馬を止めた。その夜、裴行倹(ハイコウケン)は知らせを聞いて慌てて屋敷に戻った。「すまぬ、君を危険な目に遭わせないと誓ったのに…」「自分を責めないで、私もこれからもっと気をつけるわ」一方、麴鏡唐は夫・王君孟(オウクンモウ)の仕業だと気づき、追及していた。「今日、急に御者を替えたのは事前に企んでいたからね?」「夫人、誤解だ…私ではない!」すると麴鏡唐は部屋にあった弓に矢をつがえて構えた。麴崇裕(キクスウユウ)が屋敷に戻ると中院で裴行倹が待っていた。すると裴行倹は剣を抜いて丸腰の麴崇裕に投げ渡し、鞘だけで襲いかかる。2人の激しい攻防が続いたが、やがて裴行倹は麴崇裕の剣を跳ね除け、首に鞘を突きつけた。「貴様らが何をしようと最後まで私が付き合う だが再び琉璃を害することがあれば官服を脱ぎ捨て麴家に乗り込む」「裴長史、私の仕業ではない、暗殺は私の流儀に反する」「そう願おう」しかし裴行倹は信じていないのか、怒りに任せて鞘を投げ捨て帰って行った。٩( ᐛ )و yeah!一方、麴鏡唐は夫を父の屋敷の中庭まで追いかけ回していた。その様子を上階の露台からこっそり安西(アンセイ)都護・麴智湛(キクチタン)が息を殺して見ている。王君孟は岳父に目配せして助けを求めたが、麴智湛は駄目だと合図した。「夫人、私は麴家に婿入りして以来、己を麴氏と思ってきた 私は麴家で生まれ、死ねば麴家の霊となり…」王君孟は情に訴えかけようと必死だったが、その時、運良く麴崇裕が現れ、解放された。「あいつはバカだ、痛めつけてもっとバカになったらどうする?」「阿兄!」「この件は終わりだ」麴崇裕は庫狄琉璃を襲わせた黒幕が父なのは百も承知だった。しかし麴智湛は自分も王君孟も無関係だと認めない。「誰が命じたにせよ覚えておけ、麴家とは関係ない、裴行倹が調べようと何も証拠がない」麴崇裕は今回もまた何もなかったふりをする父に深く落胆した。「阿爺、裴行倹と対峙すべきです、だが我々は高昌(コウショウ)王族、卑怯な手を使ったりしません」「もちろんだ…この件はこれで終わりに」実は麴智湛は王君孟に琉璃の暗殺を命じていた。『岳父大人、今は裴行倹に手出しせぬとおっしゃったのに…』『状況が変わった』…6月の令孫の生誕で宴席を設けた、長安は安全とは言え令孫が前日に風邪を引いた、ちゃんと看病したので安心せよ 大長公主…実は人質として皇都に残った麴崇裕の妻と長子が大長公主の手に落ちていた。裴行倹が屋敷に戻ると琉璃が自分を探していた。「どこへ行っていたの?」「麴崇裕の所だ」「守約(シュヤク)、独りで全て背負わないで」「最愛の妻を守るのは夫である私の役目だ、君を傷つける者は誰であろうと許さぬ」「私のために傷つくのは許さないから」「分かった」翌日から阿霓(アゲイ)、小檀(ショウダン)、阿成(アセイ)は琉璃から決して目を離すまいと神経質になった。おかげで琉璃は食事中も見張られているようで喉を通らず、落ち着かない。「誰もついてこないで」一方、都護府では王君孟が長史の機嫌を取っていた。「実は柳(リュウ)娘子の従兄・方烈(ホウレツ)の行方を調べさせました 6年ほど前、西州に来た勇壮な弓の名手でしたが、上官を怒らせ、不当に扱われたとか 3年前の秋、風の強い日に上官が方烈に難癖をつけ、2頭の馬を見つけるよう命じました 怒った方烈は上官を人質にして軍営を離れたあと、そのまま姿を消したそうです」結局、2人がその後、どうなったのか分からないという。「調べに感謝する」裴行倹は直ちに柳如月(リュウジョゲツ)に知らせるよう阿成(アセイ)命じた。「まだ何か?」「…いえ、あ!もう1つありました!(^_^;)」王君孟は庫狄夫人の件で責任を感じているが、無関係だと訴えた。「無関係なのだな?他には?」「ありません、では失礼します」麴鏡唐は裴府へ琉璃の見舞いにやって来た。「危険な目に遭わせてごめんなさい、でもあなたを害する気はなかった 私の家族もあなたを害する気はないの」「あなたを疑うものですか、あなたが助けてくれたのよ?もうこの話は終わり」琉璃は麴鏡唐を門まで見送った。その時、急に門衛が増えていると気づく。迎春の話では麴司馬が警固を手配してくれたらしい。琉璃は昨夜、裴行倹が麴崇裕を訪ねたことを思い出し、司馬は無関係だと分かった。麴鏡唐が家族をかばったところをみると、おのずと自分を狙った黒幕が分かる。…都護と王君孟ね…一方、裴長史に忠誠を誓った白三(ハクサン)は韓四(カンシ)こと韓景之(カンケイシ)の家で静養していた。韓四はめったに人の治療はしなかったが、白三のおかげで新薬の効能を試すことができる。しかしその日、赤蛙を使った薬湯を飲ませたところ、白三は炎症反応を起こして唇が真っ赤に腫れ上がった。( ˙꒳˙ )<何だか…唇がしびれるんだが…٩(¨ )ว=͟͟͞͞ <気のせいだ…医書を調べてくる!裴行倹をすっかり怒らせてしまった麴崇裕と王君孟は何か面倒な案件を押し付けることにした。そこで解決していない子牛がらみの事案を任せることにする。ひとつは手がかりが見つかっていない子牛20頭の盗難、もうひとつは親戚と子牛を巡り争っている張二(チョウジ)の事案だ。実は張二は名家の息子で武騎尉(ブキイ)。もし張二を罰すれば西州の大氏族を敵に回し、罰しなければ民心を失う。すると麴崇裕は王君孟にひと足先に張二と接触して事情を把握してから助けるよう指示した。報告書に目を通した裴行倹は2つの案件がどちらも張二の仕業だと判断した。すると王君孟が解決を急がないよう諫める。張二は親戚の喬六(キョウリク)から牛を預かったところ子牛が生まれたというだけ、各郷で子牛を盗むのとはわけが違うという。「では盗まれた子牛20頭はどこにいると?やっと手がかりが見つかったのに張二をかばうのか?」「共に子牛が消えている事件だからといって結びつけるのは性急かと…」「慎重すぎるのも良くないぞ?」つづく( ๑≧ꇴ≦)ようやく裴行倹の見せ場がw
2025.08.14
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第14話「紙の使い道」不要になった黄麻紙で経典を作ることにした裴行倹(ハイコウケン)。問題は手間がかかり過ぎることだったが、ちょうど霓彩(ゲイサイ)衣装店を通りかかった庫狄琉璃(コテキルリ)が妙策を思いついた。安三娘(アンサンジョウ)は何も知らないまま大量の黄麻紙を買い付けて帰郷した。すると城門で司馬の麴崇裕(キクスウユウ)から経費削減のため必要なくなったと聞かされる。そこへ裴行倹が駆けつけた。麴崇裕はひとまず都護(トゴ)府で紙を引き取り、解決案がなければ長史の案を撤回するよう父に掛け合うという。これで裴行倹も自分に頭を下げるしかないと思われたが、裴行倹は都護と司馬の名声に傷をつけるわけにいかないと自分が引き取ると断った。( ತ _ತ).oO(いざという時には気概を見せる男なのだな@🦚裴行倹は安三娘と一緒に屋敷へ戻った。「阿姉、ご心配なく、紙の使い道はすでに決まっている、人に知られぬよう黙っていた」裴行倹が安三娘を中庭へ案内すると、作業場で墨だらけになった琉璃が出迎えた。「阿姉、あと数日で全部、彫り終わるわ」実は先日、衣装店を通りかかった琉璃は夾纈(キョウケチ)染めの手法を思い出した。夾纈は二枚の板に同じ文様を彫り、その間に布を挟んで染め上げる。これほど複雑な模様を彫ることができるなら文字も彫れるはずだと気づき、達筆の裴行倹が書写した文字を彫ってもらったところ上手くいったという。そこで伯父の店から彫り師を借り、さらに家具や陶器の彫り師も集めて木片を彫らせていた。試し刷りを見た安三娘はその出来栄えに目を輝かせ、必ず経典を全て売り切ると自信を見せる。しかし少し目を離した隙に裴府を偵察していた白三(ハクサン)に試し刷りした経文を盗まれてしまう。麴崇裕は裴行倹が自分に助けを求めなかった理由を知った。「使い道が決まっていたのか」しかし王君孟(オウクンモウ)は経典に使うにしても数万枚も書き写すには多くの人手が必要だと訝しむ。「書いていない、印だ…」麴崇裕は印章のように字を彫った木版で刷れば手間が省ける上、大儲けできると説明した。「思いついたのは恐らく庫狄琉璃だ…ひとまず安三娘を呼んでくれ」裴行倹は琉璃と安三娘に恐らく麴崇裕の手下が経文を盗んだと明かした。切れ者の麴崇裕のこと、琉璃が考えた策だと見破るはずだろう。裴行倹は麴家が琉璃を脅威に感じ、また命を狙われるのではないかと恐れた。麴崇裕は平然と盗んだ経文を持って安三娘の前に現れた。( ー̀ωー́ ).oO(やっぱり盗んだんだ…ボソッすると麴崇裕は経文の字がきれいに揃っていることを訝しみ、作り方を知りたいという。実は木片に字を彫って紙に刷ってみたが、こつがつかめず上手く印刷できなかった。「板に逆さ文字を彫る技法と印刷に堪えうる木の種類を教えてくれぬか? 教えてくれたら報酬として100金、商売には口を挟まぬと約束しよう」「100金?!…ただ印刷は従妹が考え出したのもので私は知りません」「ふっ、なら戻って庫狄夫人とよく相談してくるのだな」琉璃は技法を教えて報酬を受け取った。しかし分からない点があると工房に呼び出され、これも麴家の警戒を解くためと出向くことにする。「100金も受け取れば説明に来るしかないでしょう?」相変わらず横柄な琉璃の態度に麴崇裕は不満を募らせたが、技法を知るまでは我慢するしかなかった。「木の板を幾度も水に浸して良く乾かすとか…確かに1つもらった木で上手く彫れた、なぜだ?」「そう言われても私は知らないの…ただ夾纈の木版の工程だってことは知ってる 衣装店ではお決まりの綺麗に彫るコツよ?理由なんて誰も気にしないわ」麴崇裕はようやく庫狄琉璃がかつて絵師として衣装店にいたと知った。つまり技法は琉璃が考え出したわけではなく、夾纈染めを応用して字を彫ったところ上手くいっただけだという。「私は衣装店から木をもらっただけ、他の木ではダメだなんて知らなかったわ〜 まさかこんなことに100金も払うなんて…でもあなたたちが勝手に払ったのよ?返さないわ はぁー工房って臭いのね、早く帰りたいわ」(^ꇴ^)金太郎タイプ、可愛い一方、都護府では裴行倹が白三を牽制していた。「白三、気をつけたほうがいいぞ?足を滑らせれば命を危険にさらす」白三は失笑、20年以上も鍛えた足は未だ滑り知らずだと自慢した。そこで裴行倹は銅銭を3枚出して占い、3日のうちに命を危険にさらすことになるという。「賭けないか?予言が外れたらお前は給金をもらいながら好きに過ごせ だが当たったら、なぜ命を落としかけたのか経緯を詳しく述べよ」「いいでしょう、ここにいる兄弟が証人だ 俺が命を落としかけたら、それがたとえ罠であろうとなかろうと今後は裴長史に従います」その夜も裴行倹の監視のため裴府へ忍び込む白三。まさか油をいれた甕が置いてあるとも知らず、いつものように塀から飛び降り、甕に落ちてしまう。白三は慌てて脱出したものの全身が油まみれで滑ってしまい、うまく立つこともできない。その様子を阿成(アセイ)が笑いをこらえながら見ていた。「何者だ?!…誰か?!賊を取り囲め!」逃げ遅れた白三は棒打ちにされ、隙を見て壁に登るも足を滑らせ落下、外で待っていた老四(ロウシ)が背負って逃げたが、阿成の放った矢が白三の尻に突き刺さった。老四は白三を連れて韓景之(カンケイシ)を頼った。「韓四!怪我人だ!」「人は見ない、牛だけだ」すると白三は仕方なく牛の鳴き真似をした。「モォォォォォ~!」( ๑≧ꇴ≦)白三wwwwwww翌日、白三は全身包帯姿で都護府に現れた。裴行倹は約束通り原因を説明するよう命じたが、白三もまさか裴府に潜入したとは言えない。「それは答えられん!だが賭けは裴長史の勝ちだ…これからは裴長史に従う!」裴行倹はともかく自宅で休めと命じたが、白三は首を斬られようと勤めを終えてから死ぬと訴えた。「俺が約束を守らないとでも言いたいのか?!」「親切心で忠告しただけだ、あんな賭けを間に受けるな」「いいや!借りは返す!分別ならある!」「なら私の言うことに従うのだろう?自宅で静養せよ」( ๑≧ꇴ≦)″メリーに首ったけ″のワンコみたいw琉璃は約束通り麴鏡唐(キクキョウトウ)の屋敷で鷲の図柄を描き、皇都の化粧を教えた。喜んだ麴鏡唐は琉璃がまだ大仏(ダイブツ)寺に参拝していないと知り、一緒に行こうと誘う。「じゃあ明日で決まりね!」そんな2人の話を使用人が立ち聞きしていた。裴行倹は西州の名簿を調べては城外に出かけていた。そこで王君孟は裴行倹と一局、指しながら、柳如月(リュウジョゲツ)の従兄探しだけが目的なのかと探りを入れる。すると偶然にも柳如月が訪ねてきたと知らせが来た。「ほら、毎日せっつかれているんだ、できれば駐屯軍の兵の名簿も見せてもらえないか?」「お安いご用です、では私はこれで」王君孟は仕方なく席を外したが、そこへ使用人が駆けつけた。「…阿仁(アジン)を呼べ」その夜、王君孟は美しく着飾った夫人を絶賛した。麴鏡唐は喜んで琉璃に化粧してもらったと教えたが、王君孟は累が及ばぬよう琉璃と距離をおくべきだと助言してしまう。これに麴鏡唐は激怒、裴行倹と敵対するのは勝手だが、琉璃を傷つけたら許さないという。「今夜は出ていって!」すると王君孟は布団を持たされ、追い出されてしまう。( ・᷄-・᷅ )、翌朝、麴鏡唐は裴府まで琉璃を迎えに行った。琉璃は大仏寺へ向かう道すがら、麴鏡唐が信心深かいとは意外だと笑ったが…。つづく( ๑≧ꇴ≦)面白くなってきた〜ドリフネタでw
2025.08.14
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惜花芷 Blossoms in Adversity第40話皓月仙師(コウゲツセンシ)は天寿節の宴で皇帝・顧成燾(コセイトウ)の命を狙った。しかし暗殺計画を知っていた皇帝により失敗に終わってしまう。「捕らえよ!」皇帝は余裕の表情、その時、思いがけず皓月も号令をかけた。「かかれっ!」実は儀式を手伝っていた宦官は全て皓月の配下だった。宴席は騒然となった。長青(チョウセイ)は禁軍が応戦している間に皇帝を連れて逃げることにしたが、今度は給仕の女官が短剣を抜いて襲いかかって来る。咄嗟に皇帝をかばった長青は背中を切りつけられ、ついに皇帝は孤立無援。その時、袖箭(シュウセン)の矢が女官に命中し、顧晏惜(コアンセキ)が現れた。司使と共に会場に雪崩れ込んだ七宿(シチシュク)司が謀反を制圧、皓月はその場で拘束された。「皇伯父、禁足を破った私に罰を…」「イエンシー、罰など与えるものか、七宿司のおかげで火球を見つけ、撤去できたのだ」皇帝は期待に違わず自分を救いに来た甥に顔をほころばせたが、顧晏惜は火球を見つけたのが花芷(カシ)だと明かした。「お前だったとは…皆、死んで当然の者たちなのに!」花芷の仕業だと知った皓月は憤り、皇帝への積年の恨みをぶちまけた。皓月は昭(ショウ)国の間諜だった。苦水河の戦いで父や兄たちが戦死。母はまだ幼い娘を連れて戦場へ赴き、家族の遺体を探し回ったという。しかし見つけられないまま母は餓死した。天涯孤独となった皓月は流民に紛れて都へ行き、懐(カイ)王に仕えて間諜として育てられたという。「家族の仇を討てるなら何でもできる!@ボンバイエ 私の仲間も次々と大慶にやって来たのに、その大半が七宿司に人知れず消されたわ でも私は生き残った、あと1歩でお前を殺せたのに!」皇帝は皓月を身の程知らずだと蔑んだ。しかし皓月から鼻で笑われてしまう。「そうかしら?顧晏惜が助けに来なければお前はとうに死んでいた、本当は怖かったのでは? 大慶の皇帝とはどんな勇猛で恐ろしい男かと思ったら、ふっ… ただの弱くて疑り深い年寄りじゃないのっ! 臣下の非難におびえ、己の兄弟や子供まで恐れた、孤独をかこつあまり顧晏惜まで遠ざけ 怪しげな私を利用するしかなくなったくせに!知ってるの?お前の息子も…ウッ!」その時、突然、惠(ケイ)王・顧晏睿(コアンエイ)が落ちていた剣を拾い、いきなり皓月を刺し殺してしまう。「それこそ世継ぎのあるべき姿だ」皇帝は珍しく惠王を褒めた。皇帝は自分を憎んでいるはずの花芷がなぜ自分を救ったのか聞いた。すると花芷は皇帝だけでなく、混乱が起きて両国の民が犠牲になってしまうからだと上奏する。皇帝は相変わらず正論を振りかざす花芷に嫌気が差し、下がらせろと命じた。「なぜ功績者を罰するのですか?!」驚いた顧晏惜は花芷を守ったが、その時、皇帝の顔色がみるみる青くなり、激しく喀血してしまう。実は顧晏睿は美しい天枢使に惑わされ、皓月から皇帝に毒を盛るようそそのかされていた。『占いによると殿下は天子になる運命…すぐ玉座に就けるでしょう 皓月、喜んでお仕えいたします この碧真(ヘキシン)という毒を飲ませれば1刻も経たずに死にます』 顧晏睿は慌てて父の元へ駆け寄り、咄嗟に七宿司が謀反を起こしたと濡れ衣を着せた。わけが分からず呆然と立ちすくむ顧晏惜、しかし長青がある証拠を思い出す。「違います!陛下は恵王の杯しか口にされていません!」「宦官ごときが皇子を疑うとは!」顧晏睿は激怒して長青を切りつけると、顧晏惜が対峙する七宿衛と衛兵をなだめた。「落ち着け!陛下はまだご存命だ!逆賊は恵王かもしれぬ!」「黙れ!」すると皇帝と同じ酒を飲んだ顧晏睿も激しく喀血、ようやく皓月に騙されたと気づいた。「あの女…」『解毒薬を渡しておきます、口に含めば碧信の毒は解けます』顧晏睿は自暴自棄になり、皇帝の首に剣を突きつけた。「下がれ!近寄るな!」しかし毒が回り始めた顧晏睿は再び血を吐き、その隙に顧晏惜の放った袖箭が命中、顧晏睿は絶命してしまう。顧晏惜は皇帝を寝宮へ運び込み付き添った。「皇伯父、逆賊を全て捕らえますのでご安心を…」しかし虫の息となった顧成燾は声を出す力もなく、かろうじて甥に手を伸ばす。顧晏惜は伯父の手を握りしめながら、何を訴えようとしているのか察した。「皇伯父、私は少しも恨んでなどいません、幼い頃から父のように思っていました 北地にいた時も頭から離れることはなかった いつか必ず皇伯父がそばに呼び戻してくれると信じていました」顧成燾は涙し、顧晏惜の手を弱々しく握り返した。「斉如海(サイジョカイ)に誣告させたのは私が皇伯父や国に必要な存在だから 私は皇都に戻る運命だった…ご安心ください 七宿司がある限り、私は皇伯父と大慶を守る刀であり続けます」顧成燾は顧晏惜の許しでようやく真心を知ったが、そこで息絶えてしまう。「イエン…シィ…」それが皇帝の最後の言葉になった。皇帝の崩御を知らせる鐘の音が響き渡った。承露(ショウロ)宮の前に駆けつけた臣下たちは悲しみに暮れながら、皇家の世継ぎがいないことを憂慮する。「いずれ噂が広まり、天下は大混乱に陥るだろう」その時、皇太后が到着した。「皆の者、心配はいりません、顧家の跡取りはまだいます…」皇太后が手を差し伸べると、まだ幼い六皇子・顧晏昭(コアンショウ)がその手を取った。花家の男たちが赦免された。採石場で聖旨を受け取った大郎・花平宇(カヘイウ)は俄かに信じられず呆然。実は皇帝が代替わりし、皇都へ戻れることになったという。「早く支度しよう!父親に知らせねば!」その時、これまで不遜だった官兵が急に態度を一変させ、家族に文を届けて欲しいと懇願した。花平宇は確かに官兵たちも家族に会えずにいるのだと気づき、引き受けることにする。すると他の罪人たちも一斉に家族への文を頼んだ。新帝・顧晏昭は顧晏惜と一局、手合わせしながら気もそぞろだった。「イエンシー哥哥、花家の男たちはそろそろ皇都に着く頃だろうか?」「陛下…」顧晏惜は答えようとしたが、そこへちょうど仕官した沈淇(シンキ)が現れる。「ちょうどいい、碁は苦手だ、交代してくれ」「急いでどこへ行く?」「聞いてないのか?花家の男たちを出迎える」「花芷からは何も聞いていない」「あ、沈大人は家族じゃないからな、ではこれで」(  ̄꒳ ̄)沈淇はイエンシーより大人w万勝(バンショウ)門では花家が男衆の帰りを今か今かと待っていた。すると顧晏惜が馬を走らせ駆けつける。「一緒に待つよ」花芷は笑顔で顧晏惜を迎え入れた。今なら愛する人を祖父に紹介できる心の準備ができている。その時、ついに祖父たちを乗せた馬車が見えて来た。門衛が馬車に気づいて門を開くと、待ちきれずに花芷たちが一斉に走り出し、ついに家族の再会が叶う。花屹正(カキツセイ)は花芷の元気そうな姿を見て安堵したが、その時、顧晏惜が現れた。黙って顧晏惜の手を握りしめる花芷。花屹正は花芷にも運命の人が現れたのだと分かった。( ;∀;)アアアアア~感動!屋敷へ戻った花屹正は花芷と顧晏惜と一緒に霊廟を訪ね、林婉(リンエン)に帰京を報告した。「婉R、戻ったよ、直言が天子の怒りを買い、花家は災いに遭った 当初は悔やまぬつもりだったが、しかし… 婉R、すまない、あの日の別れが最後になるとは… 幸い遠くないうちに私も朽ち果て、そなたの元へ行ける、その時は好きなだけ罵ってくれ」すると花屹正は花芷たちに祖母へ報告するよう促した。花芷と顧晏惜はひざまずき、それぞれの想いを林婉に告白した。「祖母、当時の私は愛についてまだ何も分からなかった あの時、本心をさらすのが怖くて、彼の名前を言えませんでした でも今は何の迷いもない、ご安心を、私はもう孤独ではありません」「老夫人、私の答えは全て花芷に伝えました あの時、背中を押されながら私はためらい、花芷を傷つけてしまった 結果、多くの時を無駄に…これからは2人の時間を何より大事にします」花屹正は顧晏惜と2人で花園に出た。かつて自分が厳しく糾弾し、花家の没落のきっかけとなった七宿司、その司使が孫娘の相手となるといささか不安になる。実はあの時、顧晏惜は花公の諫言を聞いていた。「あれからやむなく司使になりました しかし花公の言葉を胸に刻み、今の七宿司はもう″腫れ物″ではなくなりました …お疑いならどうぞお調べください!」「はっはっはっ!無用だ、芷Rが選んだ人なら間違いない、ここ数年の評判も耳にしておる」花屹正は少し顧晏惜をおどろかせただけだった。「ただ約束して欲しい、芷Rをずっと大事にすると」「必ず」花芷と顧晏惜の婚儀当日。顧芍薬(コシャクヤク)が屋敷の飾り付けを手伝っていると、久しぶりに沈煥(シンカン)がやって来た。実は身分を回復して和楽(ワラク)郡主となった芍薬に相応しい相手になろうと、科挙を受けることにしたという。「合格したら…その~…してから言うよ」「じゃあ不合格だったら私を娶れないの?!私が本の虫を好きだと思う?! 哥が言っていた、思い合っていれば婚姻を結べる、それ以外のことは大した問題じゃないって」「うん、分かった」婚儀は花芷の希望で皇家ではなく民間のしきたりに従って花府で行われることになった。すると顧晏惜が正殿で待たずに花芷の控室まで迎えに来てしまう。その時、思いがけず賓客が現れた。「陛下っ!」「今日は阿撿(アケン)だと思って楽にして欲しい」しかし早速、顧晏惜からお忍びでの外出は感心しないと諫言されてしまう。「贈り物を届けに来ただけだ、すぐ帰る」皇帝は顧晏惜に摂政王の印章を授け、花芷には女子用に仕立てた太傅(タイフ)の官服を贈った。「それからこれは祖母に教わって作った同心結びだ、出来は良くないが受け取ってくれ では行くよ」「あ、陛下!お返しにこれを…」花芷は返礼の代わりに昔のように飴を渡した。「菓子は禁止ゆえこっそり食べる、長青にも分けよう」吉時となり花芷と顧晏惜は家族に見守られる中、拝礼の儀を済ませて夫婦となった。しかし翌朝、2人は印章と官服を残して旅に出てしまう。花芷が留守にしても三夫人・夏金娥(カキンガ)がいれば花記は安泰だった。孫(ソン)家の女当主となった花琴(カキン)もやり手の迎春(ゲイシュン)に帳簿を任せ、左団扇で暮らしている。帳場ではあの泣き虫だった念秋(ネンシュウ)が2人の侍女にそろばんを教えていた。その厳しさはかつての夏金娥を彷彿とさせる。すると拂冬(フツトウ)が夫・白銘夏(ハクメイカ)に子供を任せ、決算報告を持ってやって来た。実は沈煥が考案した飲み物が良く売れているという。沈煥の昔の道楽も無駄ではなかったらしい。今や精力的に仕事に取り組み、昼は人形劇や一座を運営していた。こうして久しぶりに顔を揃えた四季の侍女たち。どうやら一番、幸せなのは抱夏(ホウカ)のようだ。姉妹たちが仕事で忙しい中、昼寝していた抱夏は楽しい夢でも見ているのか笑っていた。花芷の母・朱盈貞(シュエイテイ)は夏金娥に届いた花霊(カレイ)からの手紙を借りて夫に聞かせた。鄭知(テイチ)が皇都に転勤になるため、もうすぐ夫婦で戻れるという。花平宇はやはり皇都が1番だと言ったが、朱盈貞はそうとも限らないと反論した。実は四房の花平陽(カヘイヨウ)と呉玉娘(ゴギョクジョウ)が幼い花鳶(カエン)を連れて旅に出たのは娘を花芷のように育てたいからだという。花平宇は呆れたように茶を飲んだが、朱盈貞の入れた茶が不味かった。「邱(キュウ)氏はどうした?邱氏を呼んでくれ」その時、怒った朱盈貞が茶を捨ててしまう。「気に入らないなら自分で入れて!」花平宇は妻の変わりように目を丸くしたが、その時、花柏林(カハクリン)が慌てて回廊を走ってきた。「柏林?!どうした?」「祖父の書が発刊されて大人気です!やっと1冊、買えたので祖父に見せたくて!」「行きなさい!」朱盈貞は夫に花芷が守ってくれた原稿だと話した。「芷Rに感謝だな…」すると花平宇は自分が悪かったと茶の件を素直に謝った。花府の学堂は孤児にも開放された。学堂を任された二夫人・斉蕙蘭(サイケイラン)は花柏礼(カハクレイ)への執着を手放し、忙しい毎日を送っている。花平源(カヘイゲン)も妻の変わりように驚きながら、斉蕙蘭に頼まれて答案を子供たちに返しに行った。すると一人娘を失って失意の底にいた長房姨娘・邱氏が楽しそうに孤児たちと遊んでいる。その様子を見た花平源は妻たちの生き生きとした姿に感銘を受けた。宮中では太医院の仕事を終えた芍薬が皇帝を訪ねていた。ちょうど沈淇と一局、手合わせしていた皇帝だったが、花芷から手紙が届いたと聞いて大喜びする。「花姐姐は今どこにいるの?!」その頃、花芷は幼い頃の夢を叶え、顧晏惜と一緒に航行で各地を巡っていた。「このまま進めば天地の果てまで行ける?この先はどんな所かしら?」「分からない、だがどこへ行こうと私たちは永遠に離れない」おわり(^ꇴ^)ノシ″ タイタニックでお別れで~す!あああああああ~終わってしまった( ߹꒳ ߹ )話数がカットされたのか後半は急ぎ足で雑になってしまいましたが、やはり家族の再会は涙涙でしたいや~長青が生きていて本当に良かった!←え?そこ?w久しぶりにハマりました!楽しかった!銀河さん、放送してくれてありがとう!″重紫″もお願いします(人-ω•`)✨
2025.08.14
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惜花芷 Blossoms in Adversity第39話愛し合いながらも顧晏惜(コアンセキ)と引き裂かれてしまった花芷(カシ)。天文(テンモン)院の奉天女(ホウテンニョ)と言っても、実際は天枢使・皓月仙師(コウゲツセンシ)の身の回りの世話をする侍女でしかなかった。しかし暇を持て余していたある時、顧晏惜が軟禁されている慎(シン)閣が北の方角にあると分かる。そこで花芷は四叔の真似をして凧を作り、愛しい人へ想いを届けることにした。『南風知我意 吹夢到西洲』…イエンシー、この凧は壁に隔てられた皇宮の中でもあなたを思っている証しよ…すると日がな一日、窓から外の様子を眺めていた顧晏惜が花芷の凧を見つけた。…ファジー、君と夢で会えることを夜ごと願っている…皓月はまともに茶も入れられない花芷に苛立ちを隠せなかった。裕福な家の令嬢にとっては屈辱なのだろうが、そもそも花家には手綱を握る男はいないのか。すると花家には婦女子しかおらず、実は男衆が三白(サンハク)城にいると知った。「三白城?!…家族を流刑に処されて恨みはないの?全て忘れて金儲け?」「銭を稼いだのは家族の半分を養い、半分を買い戻すためです 望みは果たせませんでしたが、運河の水を清くできた、農民を救えたので後悔はありません」「…あなたが羨ましいわ」花芷は皓月がなぜ三白城に反応したのか分からなかったが、側仕えを免じられ、書写を任されることになった。一方、陳情(チンセイ)は皓月の侍女たちが買い付けている品を調べ上げ、司使に報告に向かった。町中の胡(コ)人の店を調べたところ、どの店主も通関前、何者かに託された荷を皓月に届けているという。しかしほとんどは実用性のない法器で、西域の薬材もあったが、特に効能はなかった。「ただ1つだけ用途不明の怪しい赤い粉がありました」そこで顧晏惜はその粉を芍薬(シャクヤク)に調べさせることにした。陳情が花府にやって来た。抱夏(ホウカ)は中庭にいる芍薬のもとへ案内したが、芍薬は食事も睡眠も取らず、花芷と兄の帰りをひたすら待っているという。そこで陳情は顧晏惜からの用事で来たと芍薬に伝え、珍しい赤い粉を渡した。芍薬にも赤い粉の正体は分からなかったが、判明すれば2人が戻ってくると聞いて喜び、早速、凌王(リョウオウ)府へ出かけてしまう。( ತ _ತ)<嘘ついた( ̄꒳ ̄)<違う、希望を持たせたんだすると今度は抱夏が急に泣き出し、陳情は慌てて自分の手巾で抱夏の涙を拭った。皓月は花芷が書写した冊子を受け取り確認した。すると″月が二つ″という文言が削除されている。「花芷姑娘によれば霞が原因で起きる幻像に過ぎないからだと… 陛下に追及されないよう訂正したそうです」その夜、花芷が露台にある天球儀を動かしていると皓月が現れた。「これは七星(シチセイ)楼の天球儀とそっくりですね、夢渓(ムケイ)先生の技法に倣い作ったのですか?」「夢渓先生を知っているの?!」夢渓と言えば三月あまり北極星を観察し、大きな星図を描いている。「もちろん、随筆も全て読みました」「だから誤りに気づいたのね」驚いたことに花芷は星図上の1460の星を全て覚えていた。しかし皓月は書ではなく、幼い頃から両親と共に航行し、実際に空を見ながら牽星板(ケンセイバン)を使って学んだという。「私は子供の頃、祖父と船で瓊(ケイ)州に行きました、海原の波は壮大でした」「南方で感動したなら氷海は見たことないのね?そびえ立つ氷塊が海面を覆っているの 波が立つと氷が割れ、まるで天地が砕けたかのよう 夕方になれば夕陽を受けて輝く、水晶のように…でも、もう2度と見られない」「(はっ!)やはりあなたは北方人なのね?」「黙って!」皓月はうっかり口を滑らせ、慌てて余計な詮索をするなと釘を刺した。「お前の敵は承露(ショウロ)宮にいるあのお方であろう?」その時、花芷は月に笠がかかっていることに気づいて知らせた。「天気が変わる…」皓月の予想通り皇都は久しぶりに雨になった。皇帝は雨乞いに成功した皓月を呼び、褒美は何が良いか聞いた。すると皓月は降る予兆があっただけだと謙遜し、それより5日後の皇帝の天寿節で花火を上げて再び雨を乞いたいという。こうして天文院は侍女が総出で花火の準備を始めた。火薬は皓月自ら調合していたが、様子を見に行った花芷は硫黄の匂いに気づく。そこで花印の凧を上げて合図を送り、顧晏惜に伝わることを願った。その夜、花芷が物陰で待っていると七宿(シチシュク)司の李猴(リコウ)が天文院に忍び込んだ。「花姐姐、本当にいらっしゃった!」「イエンシーの命で来たのね」すると花芷は皓月が密かに準備した花火が爆薬だと教え、ある策を講じた。一方、芍薬は凌王府の離れで一睡もせず医書を読みあさっていた。沈煥(シンカン)も一緒に調べ物に付き合ったが、朝になって止明(シメイ)楼の仕事に出かけることにする。「じゃぁ、行ってくる!」「早く帰って来てね!」芍薬は沈煥を送り出すとまた続きを読み始めたが、その時、西域にある″赤信石(セキシンセキ)″という赤い粉が喘息を治す薬だと分かった。(  ̄꒳ ̄)<なお雄黄(ユウオウ)で焼くと碧信(ヘキシン)になる…か皓月の侍女たちが薬舗に雄黄を買いに来た。するとちょうど今、全部、売れてしまったという。驚いた侍女が振り返ると、芍薬が薬材を受け取って店を出て行くところだった。娘の指が赤いことに気づいた侍女は芍薬を追跡、凌王府に入るのを見る。「指に赤信石がついていた、もしや計画に気づかれたのかも…消さなくては」しかし凌王府で殺しがあれば皓月が疑われると考え、事故に見せかけ始末しようと決めた。離れに戻った芍薬は陳情からもらった赤い粉と雄黄を混ぜながらあぶってみた。すると書物にあったとおり緑色になる。「これが碧信なのね…」しかし碧真の作り方の最後に思わぬ秘密があった。「はっ?!″劇毒″?!」驚いた芍薬はすぐ知らせに行こうとしたが、その時、いつの間にか忍び込んだ黒装束の賊に襲われ卒倒してしまう。芍薬が目を覚ますと辺りは火の海だった。芍薬は恐ろしさで身動きできなかったが、ちょうど仕事から戻った沈煥が飛び込んで来る。しかし沈煥は芍薬を助けようとして倒れた柱の下敷きになってしまう。「芍薬!早く逃げろ!」芍薬は沈煥の姿と母の姿が重なり、幼い頃に巻き込まれた火事の記憶が蘇った。すると芍薬は母を助けられなかった後悔を思い出し、今なら沈煥を助けられると奮起する。水甕に帳を浸し、沈煥と一緒にかぶって燃え盛る部屋から飛び出した芍薬。そこへちょうど赤い粉の件で芍薬を訪ねた陳情が駆けつけた。陳情は芍薬と沈煥を急いで馬車に乗せた。「芍薬…俺は役立たずだな、英雄のように救いたかったのに」「それは違う、とても勇敢ですごい人よ…」「ありがとう」「火が怖くてたまらなかった、母を奪った火が…だけどあなたが倒れている姿を見て思ったの 一番、怖いのはあなたまでいなくなることだって、あなたを好きな気持ちが恐怖より勝った」「今、何て?俺を好きだって?」馬を御しながら2人の話を聞いていた陳情はこれが愛だと喜んだ。しかし鄭虎(テイコ)は笑っている場合ではないと焦る。「七宿司へ行くか?」「ダメだ、陛下に監視されている…花家だ」六皇子は顧晏惜に勧められ、中庭で走りながら暗唱していた。そこへ偶然、沈淇(シンキ)が通りかかる。「何をしている?」「イエンシー哥哥がこうすれば眠くならず鍛えられると」「なるほど」すると内院の裏門を叩く音がした。沈淇が訝しみながら門を開けると陳情が現れ、弟を背負って芍薬を抱きかかえた鄭虎が入ってくる。「もう限界だ、とにかく寝かせる場所を…」↓(  ̄꒳ ̄)今回の1番の見どころw芍薬は事情を説明し、誰かに殴られて火を放たれたと訴えた。実はその前に例の赤い粉の秘密に気づいたという。「あの赤い粉は赤信石で、雄黄で焼くと碧信っていう劇毒になるの!」陳情は焦った。今夜、宮中では天寿節の宴が催される。報告したくても七宿衛では宴に近寄ることもできず、花家と近しい皇太后の善化(ゼンカ)寺も警備が厳しかった。すると思いがけず六皇子が自分なら会えると訴える。「皇祖母は僕を知っているから」「私も一緒に皇祖母に会うわ」記憶を取り戻した芍薬はようやく自分の身分を理解した。垂拱(スイキョウ)殿前の広場で天寿節の宴が始まった。惠(ケイ)王・顧晏睿(コアンエイ)は風が出て来たので父に外套を勧めてみたが、顧成燾(コセイトウ)は寒くないという。「…朕を案じるとは意外だ」珍しく父の優しい顔を見た惠王は自分の卓から酒瓶と杯を持って来た。「父皇、R臣が一献、捧げます」すると皇帝も息子が注いでくれた酒を黙って飲み干した。一方、陳情と鄭虎は六皇子と芍薬を連れて善化寺に到着した。門衛はやはり七宿司の令牌では通してくれなかったが、運良く六皇子が顔見知りの衛兵に気づく。「六皇子・顧晏昭(コアンショウ)が挨拶に参ったと伝えてくれないか?」「これは殿下!」皇太后は死んだと思っていた六皇子の訪問に驚愕した。しかし再会の感動に浸っている時間はなく、顧晏昭はともかく芍薬の話を聞いて欲しいと懇願する。皇太后は″芍薬″と聞いてすぐ孫娘だと気づき、思わず抱きしめた。「皇祖母…私が分かるのですか?」「王妃の生前、会ったことがある、王妃にそっくりね」吉時が近づき、天枢使の雨乞いの儀式が始まった。侍女たちが祈りを捧げ、花芷が鳴らす太鼓の音に合わせて舞を披露する皓月。するとついに吉時を迎え、皓月がたいまつに火をつけた。その火は導火線を伝って花火を積んだ荷車へ、その時、一斉に花火が打ち上がり、臣下たちは見事な演出に感嘆の声を上げる。一方、皇太后は陳情に令旨を渡して先に行かせ、孫たちを連れて皇宮に向かうことにした。皓月は計画の失敗に呆然となった。「どうした?火薬の効果が期待外れで驚いたか?」皇帝は皓月の計画を知っていた。硝石(ショウセキ)と硫黄と鉱砂を詰めた火球があったことは調査済み、これを点火すれば爆発して甲冑を着た肉体も吹き飛び、戦車さえ衝撃を防げなかっただろう。「かつて昭(ショウ)国と苦水(クスイ)河で一戦を交えた時、敵が使った武器だ 朕の軍は多大な損失を被った、何年、経とうと忘れられぬ お前は薬を作る名目で原料を運び込み、朕の足元で火薬を作っていた 七宿司が入れ替えていなければ朕は着火を許さなかった」花芷は皇帝が花火の中身を取り替えたと知っていたことに驚いた。つづく∑(⊙∀⊙)ヒャーーー!皇帝、飲んだぁぁぁぁぁ!※【南風知我意 吹夢到西洲】″西洲曲″の一節から、恋しい人を思う切ない気持ちを表す「南風が私の思いを知り、夢を吹いて西洲に届けてくれる」
2025.08.12
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惜花芷 Blossoms in Adversity第38話正殿に机を運び込み、寄付金の集計を始めた夏金娥(カキンガ)と念秋(ネンシュウ)。花芷(カシ)は家族と共に固唾を飲んで見守ったが、結局、まだ20万も足りなかった。しかしその時、突然、孝衣姿の花琴(カキン)がやって来る。実は花琴の夫で豪商の孫襄(ソンジョウ)が急死、当主を引き継いだのが花琴だった。「いくら足りないの?」(๑•̀ㅂ•́)و✧<金ならある!@琴R花芷は運河補修費用を工面し、顧晏惜(コアンセキ)と一緒に参内した。皇帝は花屹正(カキツセイ)以上に癪に触る者が現れたと苦笑い。すると花芷は工事費用の帳簿管理を任せて欲しいと嘆願し、全財産を投げ打った見返りに昔の家に戻りたいと懇願する。「いいだろう、願いは叶える」約束を取り付けた花芷はすぐ下がったが、その時、顧晏惜まで一緒に出て行こうとした。「イエンシー?どこへ行く?」「今日から工事が始まりますので…」皇帝は初めて自分に逆らった甥の姿に動揺を隠せなかった。花家総出で運河の補修が始まった。夫人たちはもはや身なりなど気にする暇もなく、労働に明け暮れる毎日。それでも家族が揃っていれば何もいらないと実感し、笑い声が絶えなかった。顧晏惜も暇を見つけては花芷を手伝いに来たが、以前より花芷が楽しそうに見えるという。「今までになく気楽なの、銭や商売の心配もなく、よく働きよく食ベて疲れて眠る… あのすくい出した泥で豊かな農地を作り、皆が懸命に運ぶ石や木材で運河の堤防ができるのね 完成が楽しみだわ」「…完成したら皇祖母に君を妻にすると告げてもいいかい?」花芷は突然の求婚に驚いたが、わざと茶化した。「でも無一文でしょう?」「ふっ、君もだろう?」「私にはこれがあるもの」すると花芷は腕輪を見せびらかした。花芷は働き手の民の子供たちが学びたくても学堂に行けないと知った。そこで仕事が終わってから子供たちを集めて字を教え始めたが、これまで学業と無縁だった親たちも参加するようになる。すると阿撿(アケン)こと六皇子が自分も教えたいと花芷に頼んだ。「哥哥に聞いたんだ、僕が字を学べるのは他の子と出自が異なるからだって 民の支えあっての僕だ、だから責任があると思う」そこへ顧晏惜がやって来た。「小六(ショウリク)、お前の責任じゃない」「でも哥哥、花姐姐、僕にやらせて」(  ̄꒳ ̄)やはり天子の器?そんなある日、突然、現場に鄭知(テイチ)がやって来た。花霊(カレイ)は喜んで駆けつけたが、仕事だと聞いていささか落胆する。「それとは別に君に大事な話がある、その~銭もたまったし、おばの承諾も得た」すると鄭知は結納品の箱を見せた。「よければ私と…ぁ、嫌なら…」「申し入れならまず母親か姐姐に…順番が違うわ(クスッ」(^ꇴ^)笑うと可愛い霊Rその夜、鄭知は花霊と一緒に教え子だった小六の授業を参観した。花芷は顧晏惜と学堂の様子を眺めながら、新たな夢が見つかったと明かす。「また稼いでここより大きな学堂をたくさん建てたい」一方、宮中では惠(ケイ)王・顧晏睿(コアンエイ)が父への挨拶のため承露(ショウロ)宮を訪ねていた。しかし長青(チョウセイ)から皇帝は忙しいと断られてしまう。惠王は仕方なく引き上げることにしたが、その時、謁見を終えた皓月(コウゲツ)が出て来た。「殿下にはご機嫌麗しゅう…」皓月はすれ違いざまに上目遣いで皇子を見上げると、惠王は妖艶な天枢使にすっかり心を奪われてしまう。皆が寝静まった頃、花芷と顧晏惜は高台にあるあずま屋で肩を寄せ合い、2人だけの幸せな時間を過ごした。眼下には工事で汗を流した民たちの家を照らす灯火が星のように輝いている。「以前は自分の部屋と窓、そして机とろうそくの火…それが私の世界だった でも今は書を読む暇もないのに、世界が広がった」「以前は花家大姑娘だったが、今は大慶朝の花娘子だからな」「あの頃はあなたと出会えるなんて思ってもみなかった」「…工事が終わったら一緒に北地へ行き、暮らすのはどうだ?」「一家で船に乗って運河を北上するのね?」「花芷、運河が完成したら夫婦(メオト)になろう、いいね?」((( *´꒳`* )))ポワワーンあれから皓月は天象を読んで雨乞いを成功させていた。皇帝は顧晏惜が公務の報告でしか顔を出さなくなり、不満が募る。そして花芷たちはついに1年かけて運河の補修を終わらせた。花芷たちが堤防の完成を祝っていると、皇帝の側仕え・長青が現れた。長青は聖旨を持って輿から降りたものの、良心が痛む。実は皓月は花芷が皇帝を批判して民を扇動するため運河補修に乗り出したと讒言、今や民意を得るため学堂設立まで企てていると報告した。激怒した皇帝は命を取るのが最善の策なのか迷ったが、ある妙策を思いつく。「…花芷姑娘、聖旨を受けよ、皇帝の命である 花公の孫娘・花芷はその富で運河を建設し、民の救済に貢献した その徳をたたえ奉天女(ホウテンニョ)に任命する、ただちに天文院に入るように」花芷はその意味を悟ったが、家族に心配かけまいとした。「娘、天文院は宮中の官署よ、奉天女は天象を見る天文院の女官のこと 私の好きなことができるのよ?」夫人たちは花芷の出世を喜んだが、ふと女官なら宮中で暮らすことになると気づく。しかし詳しい事情を聞く間もなく花芷は長青に急かされ出発した。花芷は沐浴して身を清めてから垂拱(スイキョウ)殿で皇帝に謁見した。「天文院に入れば白髪になるまで出られぬ、分かっているか?」「覚悟はできています、もうここから出られないと… しかし陛下、まさか私をここへ閉じ込めれば晏惜が物分かりの良い甥に戻るとでも?」「心とは愚かなもの、七宿(シチシュク)司は大慶朝の刀であり、晏惜は朕にとって何より大切な刀だ」「陛下、あなたは心の使い方を間違えている、君主でも心は交換できません」「ギギギ…ふぁんすー(放肆)!お前は祖父にそっくりだ!よかろう! その身体を引き裂いて心とやらを見せればよい!」「陛下、私は自害などしません、1年前、陛下とここで謁見しましたね あの時、気づいたのです、陛下は私と晏惜のような関係を永遠に築けないと… 宮門を1歩も出ずとも私と晏惜は同じ空の下で同じ星を見ている! たとえ100年後、共に塵となっても心は互いを惜しみ続けるでしょう! 宮中の壁ごときで私たちの心を引き裂けるとでも思ったのですか?!」 (๑و•̀ω•́)و <畳み掛けて来たぁぁぁぁぁぁっ!一方、七宿司にいた顧晏惜はしばらく独りで考え込んでいた。しかしついに仮面を外し、七宿衛を集合させる。「今日から鄭虎(テイコ)と陳情(チンセイ)に七宿司を率いてもらう」その時、陳情は司使が佩剣を握りしめる様子に気づき、何か大変な事態になると気づいた。七宿衛は司使に付き従うと拝跪したが、顧晏惜は私事に家族がいる部下たちを巻き込めないという。「七宿司と大慶国を守る者が必要だ、忘れるな、お前たちは男として堂々たる道を歩め」皇帝に啖呵を切り、逆鱗に触れた花芷。その時、慌てて長青が駆けつけ、世子が垂拱殿に乗り込んだと報告した。「ふっ、お前も朕と共に見るがいい、朕の可愛い甥がどこまで耐え得られるのかを…」花芷が皇帝と殿門から出ると、顧晏惜はたった独りで衛兵と戦っていた。顧晏惜は何度も斬りつけられながら、垂拱殿へ続く長い石段を登った。宦官に拘束され、ただ見ていることしかできない花芷。その時、すでに満身創痍だった顧晏惜は立ちはだかった衛兵に斬りつけられ、階段を転げ落ちてしまう。「イエンシー!放して!放して!」するとついに花芷は宦官の手を振り払い、顧晏惜の元へ駆けつけた。「星を見るのに…算木を忘れてどうする…宮中の物は使い慣れぬだろう?」顧晏惜は花芷がいつも使っていた算木を渡した。「ゥッ…バカね…」しかし2人の強い絆を目の当たりにした皇帝は激怒、顧晏惜は花芷と引き裂かれ、衛兵に引きずり出されてしまう。皇帝は衝撃を受けた。まさか顧晏惜が切り刻まれる痛みも顧みず、花芷にただの木片を届けに来ようとは。「花芷よ、やるではないか、朕の司使をそこまでそそのかすとは!」( ߹꒳ ߹ )私のイエンシーががが…顧晏惜は慎(シン)閣で軟禁された。すると長青が皇帝から賜った薬を持って駆けつけ、手当してくれる。「長青…知らせてくれてありがとう お前のおかげで花芷に一目会えた、死んでももう悔いはない」「あきらめないでください、生きていれば必ず会える日が来ます」その言葉が傷ついた顧晏惜の心を慰めてくれた。一方、花芷は天文院で皓月と再会した。皓月は垂拱殿の前が血まみれだったと聞き及び、顧晏惜が花芷に会いに来たのだと気づく。「不思議でならない、ごく平凡なあなたのどこにそれほどの魅力があるのか」「使君にも分からないことがあるのですね?」花芷にやり込められた皓月は憮然とし、ともかく己の立場を理解して自分に仕えるよう命じた。実はこの1年で3回の雨乞いに成功、晧月は褒美として侍女を戻してもらい、宮中への出入りもできるようになったという。療養していた顧晏惜が床を離れた。すると窓から偶然、天枢使の侍女たちが宮道で荷物を運び入れる様子を目にする。そこで陳情を呼ぶよう頼んだ。「司使!ご無事でしたか!」陳情は安堵すると早速、司使から密命を受けた。「あの箱の模様は胡(コ)国のものだ、宮中に何を頻繁に運び入れているのか調べてくれ 皓月の一挙一動から目を離すな」「何かあれば報告します、くれぐれもお気をつけて」「はお」つづく
2025.08.09
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惜花芷 Blossoms in Adversity第37話花芷(カシ)と復縁し、皓月仙師(コウゲツセンシ)を護送するため一足先に皇都へ戻った顧晏惜(コアンセキ)。しかし皇帝が参内を命じたのは顧晏惜ではなく皓月だった。顧晏惜は仕方なく皓月を宮中まで連行して承露(ショウロ)宮の前で待ったが、長青(チョウセイ)から信じられない報告を聞く。「陛下は皓月姑娘を天枢使とし、天文(テンモン)院に住まわせるとお命じに」顧晏惜が珍しく慌てた様子で皇帝に謁見した。「子供でもないのになぜ焦る?」「せめて捜査を終えてからご任命を…」「イエンシー、皇都に戻る途中、田畑の様子を見たか?」大慶(ケイ)は長い干ばつによる不作が続き、このままでは民の不安が増して一揆は免れない状態だった。そこで皇帝は皓月の″人を惑わす才″を利用し、民衆の怒りの矛先を変えるという。「今、殺しても得にはならぬ、これから毎日、皓月が祭壇に登り雨乞いする 運良く雨が降れば民はその神通力を信じ、降らなければ皓月を殺して民衆の溜飲を下げる」(  ̄꒳ ̄)さすが皇帝なのw一方、花府では夫人たちが孫(ソン)家に嫁いだ秦二桂(シンジケイ)の娘・花琴(カキン)を案じていた。夫の孫襄(ソンジョウ)は相変わらず色欲に溺れ、次々と側女を買っているという。しかし花琴は諌めもせず、話を聞いた秦二桂は気もそぞろだった。「でもいくら孫掌柜が健康でもこれじゃ身体を壊すわ~最近よく病にかかるらしいし」「だから反対したのに…」すると花芷が皇都へ戻ったと知らせが届く。「もう近くまで来たの?連絡してくれればいいのに」夫人たちは喜んで門まで迎えに出たが、花芷が連絡したくてもできなかった理由を知ることになった。花容は無言の帰宅を果たした。悲しみに打ちひしがれる花家、中でも一人娘を失った邱(キュウ)氏の衝撃は計り知れない。「あなたなしで私はどう生きればいいの?」花芷は悲嘆に暮れる家族を静かに見守っていたが、仕事のため出かけることにした。花芷は人々が急いでどこかへ向かう様子を見かけた。迎春(ゲイシュン)の話では皇帝が封じた天枢使が神通力を使って数日おきに雨乞いをしているという。「たおやかで美しい方のため、みんながこぞって見物に」…どこかで聞いた話ね…そこで花芷は迎春を先に酒楼へ行かせ、祭壇を見に行くことにした。花芷の嫌な予感が的中、天文院の天枢使に封じられたのは皓月だった。その時、空に黒い雲が広がり始め、天枢使の力に驚いた人々がその場にひれ伏して崇める。しかしたった独りだけ立っている者がいた。「あれは…ふん、なぜひざまずかぬ?」「雨は降らないからよ」すると皓月は儀式を邪魔したとして花芷を捕まえてしまう。一方、陳情(チンセイ)は花芷が連行されたと知り、急ぎ司使に報告した。結局、花芷の言った通り暗雲が垂れ込めるも雨は降らなかった。皇帝は皓月から雨乞い失敗の原因が花芷だと聞き及び、直ちに花芷を引っ立てる。「邪魔をした理由は?…答えないなら天枢使のところで罰を受けろ」花芷は不服そうな顔で下がろうとしたが、顧成燾(コセイトウ)は因縁ある花家の孫を止めた。「待て…お前の気性を変えたのは何だ?もしや朕の甥Rか?」一方、知らせを聞いた顧晏惜は承露宮に駆けつけた。しかし外で控えていた長青に止められてしまう。「入らぬ方が良いかと…」花芷は皇帝に挑発され我慢できず、ついに堂々と意見した。「陛下は君主でありながら民の苦痛や災害から目を背け、民を惑わす鬼神に頼ったのです」皇帝は花芷にかつての花屹正(カキツセイ)の姿が重なり、怒りが再燃した。「お前が何を目指してきたか知らぬとでも? 銭を稼いで貯め込んでいるのは贖銅(ショクドウ)法のためであろう ならば苦労せずに済むよう勅命を出してやる…花家の男は永久に赦免せぬとな」(# ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ バンバン!<皇帝コイツッ!公衆の面前で花芷が捕らわれ、その知らせはすぐ花家に届いた。夫人たちは花芷を助けるため晏先生を頼ろうと考えたが、正体を知らない朱盈貞(シュエイテイ)にはぴんとこない。その時、顧晏惜に付き添われて花芷が帰って来た。夫人たちは安堵して中院に飛び出したが、花芷はまるで魂が抜けたような表情で立ちすくんでいる。「一体、何があったの?」朱盈貞は生気のない娘の様子に困惑したが、花芷は何も言わずにふらふらと奥へ歩き出してしまう。しかし急に花芷が走り出すのを見た顧晏惜たちは慌てて追いかけた。花芷は帳場に駆け込み、これまで稼いだ銭をかたっぱしから床にぶちまけた。いつも冷静沈着な花芷の思わぬ行動に夫人たちが唖然とする中、顧晏惜は危険を感じて花芷を捕まえる。「来ないで!全部あなたのせいよ!あなたと出会っていなければ… もうみんな帰って来られないのよっ!」すると花芷は卒倒してしまう。その時、宮中の使者の声が聞こえた。「聖旨である!」宮中の使者は花芷をすぐ呼ぶよう命じた。朱盈貞は娘が倒れたので代わりに受け取ると申し出たが、使者は規則のため倒れていても運んでこいという。その時、花芷を休ませた顧晏惜が現れた。ヒイィィィ!!(゚ロ゚ノ)ノ <世子!どうしてここに?夏金娥(カキンガ)たちはすでに晏先生の正体が七宿司使だと知っていたが、その上、皇族だと分かった。( ತ _ತ)<早く読み上げぬか(´ ▽ `)ノ<はいっ!皇帝は自分の前で民を憂いた花芷の言葉尻を捕らえ、勅命を下した。「運河の堆積により良田は失われ民が流浪の身に… 花芷は国難を救うため財を投げ打って泥をさらい、家門の過ちを拭い、君恩に報いんと請う 特別にこれを許すゆえ、10日以内に必要な資金を全て揃えよ、ちんつー」わけも分からないまま聖旨を受け取った夫人たち。顧晏惜は困惑する夫人たちに皇帝が花家の男衆を永遠に赦免しないと言ったと伝えた。夫人たちは花芷がおかしくなったのも当然だと気づき、なぜここまで皇帝に目の敵にされるのか分からず動揺が広がる。秦二桂は皇太后を頼ろうと提案、朱盈貞は世子なら皇帝に会えるはずだと顧晏惜に泣きついたが、夏金娥(カキンガ)は無駄だと気づいた。「陛下はわざとだもの、きっと誰も説得できない 私たちの銭が貯まったのを見計らって全て奪うなんて…私たちが悲しむ姿を見たいだけよ!」顧晏惜は涙に暮れる夫人たちに手を差し伸べることもできず、激しい憤りを覚えた。顧晏惜が芍薬(シャクヤク)が煎じてくれた薬を届けに行くと花芷は目を覚ましていた。「顧晏惜、どうしたらいいの?あの人の一言でみんなの努力が水の泡になった 財を投げ打ったら家族が路頭に迷うことになるわ」「だがそうしなければ君が罪人になってしまう…改めて道を探そう」「実は…もう決めてあるの」( ˙꒳˙ )え?また破局かと思いきや違ったw花芷は家族を集め、北地で暮らそうと提案した。一家で余生を暮らす資金は十分、辺境まで逃げれば流石に追っては来ないという。「考えもしなかったわ…確かに北地に行けば息子に会える!」夏金娥は目から鱗だと喜び、子供たちも極寒の地に行ってみたいと沸いた。しかし四婶の呉玉娘(ゴギョクジョウ)は花芷の真意に気づいてしまう。「私たちが愚かだと?命に背いて私たちが北地に行けば役人があなたを待っている…」すると家族は花芷が最初から一緒に行くつもりはなかったと分かった。花芷は仕方なく家長の席の前に立つと、祖母から託された印象を示す。「花家の印象をもって命じる、全員、従ってもらいます 三婶は銅線43箱を金塊にして皆に配って、直ちに出発よ、背けば罰する」その時、夏金娥が花芷の手から印章を奪い取り、床に投げ捨てた。銭を稼いだのは花芷ひとりの力ではなく家族全員の努力、使い道は全員で決めるべきだという。「紙と筆を…寄付に賛成なら紙に◯、反対なら白紙よ」こうして顧晏惜が立会人となって花家の投票が始まった。開票の結果、白紙は花芷の1枚だけ、あとは全て◯と判明する。花芷は家族の決断に感極まったが期限はあと10日、それまでに皇帝が要求する莫大な資金を調達しなければならなかった。( ๑≧ꇴ≦)素早く印章を拾う四婶止明楼では花家の船のおかげで助かった酒楼の店主たちが寄付を申し出てくれた。花府には花芷に助けられた農民や職人たちが駆けつけ、かき集めた銭を差し出してくれる。すると沈(シン)家からも老夫人の使いが寄付を届けに来た。人々との縁と優しさに勇気づけられる花芷。そんな中、凌王府の全財産を持って顧晏惜が戻って来た。「それからこれは皇祖母から…これで私は全て失ったぞ?ふっ」「お互い様よ」「これだけは残した、もう一度つけてくれるかい?」顧晏惜は腕輪を花芷の手首にはめた。善意の資金が集まった。期限は明後日、その日、花芷は家族と一緒に夏金娥と念秋(ネンシュウ)の集計が終わるのを待つ。つづく(꒪ꇴ꒪〣)ここに来て不幸のズンドコへ…
2025.08.08
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惜花芷 Blossoms in Adversity第36話投獄された皓月仙師(コウゲツセンシ)は顧晏惜(コアンセキ)を懐柔しようとして失敗。思い通りにならないと分かると態度を一変させ、暴言を吐いた。「皇帝の犬め!全ての敵が滅びたら取って食われるわよ!」「震えて眠れ!」←とは言ってないw顧晏惜はその夜のうちに七星(シチセイ)楼の賭場を全て閉鎖、関係者を金陽府署に収監した。残党が悪あがきする前に護送し、尋問は皇都で行うという。「あの者たちは貨物として船に積み込め、金陽(キンヨウ)での商談はこれで完成した」「了解です!陸(リク)掌柜」一方、曽銘(ソウメイ)は七宿司とは別の追っ手に狙われ、一晩中、逃げ回っていた。しかし翌朝、つい裏道に追い詰められてしまう。曽銘は命乞いしても無駄だと知るや、帳簿の写しを預けてあると明かし、自分が死んだら全て白日の下にさらされると脅した。驚いた刺客は一瞬ひるみ、その隙に逃げようとした曽銘と揉み合いとなってうっかり短剣で刺してしまう。刺客は馬車の中で待っていた主の元へ駆けつけた。主は曽銘が死んでも問題ないと言ったが、実は帳簿の写しがあると知る。「皓月が捕まってから曽銘が誰に会い、何を渡したか調べよ、相手は全て殺せ」実は刺客の主は花容(カヨウ)の夫・蒋徴之(ショウチシ)だった。すると曽銘が昨日、波止場で花芷(カシ)に木箱を渡していたことが分かる。蒋徴之はやむなく花芷の暗殺を命じた。「…箱を取り戻せ、事故を装ってロンRに疑われないようにな」Σ(꒪꒫꒪ )え?!蒋徴之が帰宅すると正殿で転運使の父が待っていた。そこで蒋家と七星楼の関係を知る曽銘を始末し、事情を知る者も全て口封じすると安心させる。しかしそんな息子の言葉も慰めにはならなかった。転運使は絶望し、息子がまだ事の重大さに気づいていないという。「お前は七星楼の実態と捜査に来た者の正体を知らぬのだな」実は金陽で潜入捜査していたのは皇帝の次に権力を持つと言われる七宿(シチシュク)司使だった。あの七星楼に襲われても司使は無傷、司使を殺すことは天に昇るより難しいだろう。「これが昨夜、届いた司使の絵姿だ」すると似顔絵を見た蒋徴之は愕然となった。「彼が?!彼は容Rの知り合いです!」「なっ!何だってぇぇぇ!…いいか、容Rを利用して奴を殺せ」「それはなりません!父親!」「蒋家の滅亡が眼前に迫っているんだぞっ!」ヒイィィィ!!(゚ロ゚ノ)ノ蒋徴之は家職と一緒に花容の閨房を訪ねた。実は偶然、晏先生と出くわし、これから船で帰京すると聞いたという。「波止場にいたよ?見送らなくていいのか?」「えーっ!もちろん行くわ!」すると家職がすでに準備しておいた土産があると重箱を渡した。「これは金陽の名物で皇都にはありません 少夫人も嫁いだ頃、少郎君が自ら食べ方をお教えしたでしょう? 晏先生に会ったらふたを開けて食べ方を教えて差し上げてください」花容は中身を確認しようとしたが、家職は咄嗟に止めた。「到着するまで開けてはだめです、こぼれますから」「うん、じゃあ行って来る!」しかし蒋徴之は愛する妻と離れがたくなり、急に一緒に行くと決めた。( ꒪ͧ⌓꒪ͧ)・・・一方、蒋徴之の配下は客桟の花芷の部屋に押し入っていた。しかし花芷の姿はなく、木箱も見つからない。その頃、沈淇(シンキ)は明日の帰京を前に阿撿(アケン)を町に連れ出した。「金陽はどうだった?」「嫌いです、確かに皇都より賑やかで栄えているけれど、貧富の差があまりに酷い 先生、分かりました、″寡(スクナ)きを患(ウレ)えずして均(ヒト)しからざるを患う″でしょう?」「お、物知りだな?」すると役人が慌てて走って来た。道の先には人だかりができている。沈淇が通りすがりにのぞいてみると、曽銘が刺されて死んでいた。(  ̄꒳ ̄)君子の片鱗を示す六皇子沈淇は阿撿を連れて急いで花芷を探しに向かった。その時、ちょうど商品を受け取りに行く花芷の馬車と出くわす。「何かあったの?」「曽銘が殺された」驚いた花芷は預かっていた木箱を車の柱に叩きつけて錠を壊した。すると箱の中に七星楼と蒋家の取り引きの帳簿が入っている。「かなりの額だわ…早く逃げなくては、蒋家もこの帳簿の存在に気づいたはずよ」すると花芷は沈淇に帳簿を預けて車から降りてしまう。「すぐ城外へ脱出して!」一方、波止場に向かった花容はいつになく無口な蒋徴之を心配した。「徴之?疲れているの?私なら独りで大丈夫よ?」「どこへ行くにも一緒だった…何より今日は…知人と会う君をちゃんと見送りたい」「晏先生はいい人よ?早く姐夫になって欲しい!それはそうと私も実家に帰りたいな 子供が生まれたら里帰りしない?みんなが大喜びするわ」花容の幸せそうな顔を見た蒋徴之は良心が痛み、居たたまれなくなって花容を抱きしめた。「どうしたの?みんなが見てるわ」「…君は歩くのが遅くて出港に間に合わない、やはり私が届けに行くよ」「分かった、じゃあ酸っぱいお菓子を買って来てくれる?」∑(⊙∀⊙)ヒャーーー!ジェンヂー!その頃、花芷は急ぎ蒋府に花容を訪ねた。しかし門番が花容なら友人の見送りで波止場へ行ったと教える。「波止場?…はっ!」一方、蒋徴之は愛する妻の身代わりになると決意、ちょうど桟橋にいた顧晏惜を見つけた。「晏先生!蓉Rが送別の品として金陽の名物を贈りたいと…身重なので私が代わりに来ました」蒋徴之は顧晏惜に重箱を差し出したものの、なかなかふたを開ける勇気がなかった。そんな蒋徴之の様子を顧晏惜は不審に思っていたが、その時、花芷の叫び声が波止場に響き渡る。「イエンシィィィィィィィィィィィィッ!」すると焦った蒋徴之は意を決し、怒号を響かせながらふたを開けてしまう。重箱に仕込んであった火薬が爆発、桟橋が火に包まれた。花芷は巻き込まれずに済んだが、爆風で倒れてしまう。やがて激しい煙が散った時には顧晏惜の姿はなく、花芷が贈ったお守りだけが桟橋に落ちていた。「イエンシー!」矢も盾もたまらず花芷は海に飛び込んだが、顧晏惜を見つけられぬまま溺れてしまう。首の皮1枚つながって一安心の転運使と家職。その時、なぜか息子ではなく嫁が帰って来た。「…なぜお前が?!」すると通りから事故を知らせる声が聞こえて来る。「大変だ!波止場で爆発が起きて死人が出ている!」花容は驚いて戻ろうとしたが、義父の命令で捕まった。豹変した義父の姿に花容は困惑、わけも分からず閨房に放り込まれ、引っ叩かれてしまう。「お前が殺した…私の息子を…徴之はお前を溺愛していた、それなのによくも見殺しにしたな? 疫病神め!お前を守るため徴之は私も母親も捨てたのだ! 良心が残っているならせめて蒋家のために子を産め!」義父は閨房を出ると門に錠をかけた。そこに家職が慌てて駆けつける。「老爺!波止場に花芷姑娘もいたそうです、海に飛び込んで行方不明だとか 溺死したでしょう」花容は自分のせいで愛する夫と姉が死んだと知り、悲しみに打ちひしがれた。花芷は空き家で目を覚ました。部屋には誰もいなかったが、庭で濡れた衣を乾かしている顧晏惜を見つける。花芷は思わず顧晏惜の元へ駆け出し、2人は固く抱き合った。「生きていたのね!」実は溺れた花芷を助けたのは顧晏惜だった。顧晏惜は蒋徴之の様子を見て裏があると察し、先に海に飛び込んで助かったという。「城外に流れついたところで君を引き上げたんだ」すると花芷はお守りを顧晏惜に渡した。「あなたを水中で見失った時、死にたいほど後悔したの あなたと別れてしまったこと、客桟への帰り道、後ろにいると知りながら振り返らなかったこと 七星楼の前で会った時、話さなかったこと…」「つまり…」「沈んで行く時、少しも怖くなかった、死さえ恐れないなら怖いものなんてない もうあなたと離れるのはいや」「はお!」顧晏惜は花芷の手を握りしめ、肩を抱き寄せた。顧晏惜は七星楼と蒋家の関係を知った。そこで転運使を捕らえ、花容を救い出すためにも城内へ戻ろうと決める。すると偶然、空き家の前を陳情(チンセイ)たちの馬車が通りかかった。「司使?!」「どうしてここへ?」「司使は行方不明だし、町中に花芷姑娘の人相書きが 危険を感じて城外に出たところ偶然、六…いや沈大郎と一緒になって 実は我ながら良い仕事したんですよ?」実は陳情は皓月を逃さないよう拘束して馬車に乗せていた。一方、転運使は未だ帳簿が見つからず、家職に探させていた。するといつの間にか正殿に七宿司使の姿がある。「一度だけ尋ねる、花容はどこだ?」花芷は蒋府の前で花容を待っていた。しかし蒋家が次々と官兵たちに連行される中、いつまで経っても花容が出てこない。その時、顧晏惜が現れた。「ねえ、容Rはどこ?」「…残念だ」花芷は金陽府署で無縁墓地に捨てられていた花容の亡骸と対面した。「困った子ね、こんなに汚して…これから綺麗にしてあげる 聞いたわ、かんざしで首を刺したって…痛かったでしょう?姨娘が悲しむわ」その時、手を拭いていた花芷は花容の袖の中から文を見つけた。…娘、皇都が恋しくてたまらない金陽では独りぼっち、優しいのは徴之だけよ食事も口に合わないの、徴之が買ってくれる物を必死に飲み込み、気に入ったふりをしてる本当はどれも好みじゃないけれど、徴之が好きだから安心して、徴之は私を本当に好いてくれてるでも私のせいで死んでしまった、芷姐姐も私に会いに来たせいで災難にごめんなさい、このまま望みもなく生きて、悪人に子供を渡したくない徴之が待ってる、会いに行くわ花容 絶筆…「容R、家に帰りましょう」(´༎ຶོρ༎ຶོ`)その夜、七星楼と与していた転運使と黄(コウ)知州が牢獄で殺された。陳情の報告では叫び声を聞いた者さえいなかったという。「…助けが来たと思って叫ばなかったのだろう、どうやら黒幕は金陽の外にいるらしい だがなぜ皓月だけは無事だった?」実は皓月の監獄の明かり窓から小さな丸めた書き付けが放り込まれていた。…証人は口を封じた、大事を忘れるな…皓月は咄嗟に書き付けを口に放り込み、月明かりを見上げた。「もうすぐね」翌朝、顧晏惜は陸路で皓月を護送することになった。水路の花芷とは一緒に帰れず、そこで護衛に李猴(リコウ)を置いて行くことにする。「気をつけて、皇都で待っている」「あなたも…」すると顧晏惜は後ろ髪を引かれる思いで先に出発した。顧晏惜が帰京して早々、七宿司に皇帝の側仕え・長青(チョウセイ)が訪ねて来た。「参内せよとの命か?」「陛下が皓月仙師をお召しです」つづく※寡きを患えずして均しからざるを患う論語より「不患寡而患不均」少ないことより不平等を心配する孔子が富の量より分配の公平さを重視するよう説いた言葉
2025.08.07
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惜花芷 Blossoms in Adversity第35話金陽(キンヨウ)で商売する時は必ず皓月仙師(コウゲツセンシ)にお伺いを立てると知り、花芷(カシ)も地元名士の夫人たちと一緒に法会へ参加することになった。「三つ星が月と並んだ、大災害の前兆だ、汝らのため神のご加護を祈願しよう」ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ<感謝します仙師!「予言を求めるものは?」すると信者が順番に祭壇の前に出てお布施を渡し、予言を請う。多くは出航の日程などたわいないことだったが、ある男は重病の母のため全財産を差し出した。その時、祭壇に煙が立ち上ったかと思うと護符が発火、皓月仙師はこれを水につけて薬と称し、男に施す。一方、顧晏惜(コアンセキ)と陳情(チンセイ)は神殿の外で法会の様子をうかがっていた。陳情の報告では賭場の銭は毎夜、七星(シチセイ)楼に届けられ、岳(ガク)財神という男が町中の賭場を仕切っているという。恐らく皓月仙師を表看板にして銭を詐取しているのだ。いよいよ花芷の順番が回ってきた。花芷はお布施と一緒に書き付けを差し出し、それを読んだ皓月仙師は花芷を祭壇へ上がらせ話を聞くことにする。…松脂(マツヤニ)、燐火(リンカ)…「これは何?」「霊薬なら銭は必要ないはずでは? 三星は自然現象なので吉凶は関係ない、さっきの煙は松脂を燃やしたもので護符は隣で点火した あの薬に効果はない、お布施を返して医者に診せるよう忠告してください さもなければ全てバラします」皓月仙師は詐欺を認めなかったが、結局、男に銭を返した。法会からの帰り道、花芷は後をつけてきた男に襲われた。しかし危ないところで顧晏惜が現れ、花芷を救う。「なぜ金陽に?」「任務がある」「助かったわ…任務の邪魔をしたわね、じゃあこれで」他人行儀な花芷に落胆を隠せない顧晏惜。しかし夜道を独りで帰る花芷を案じ、倒れた刺客を陳情に任せて客桟までこっそり花芷を見送ることにする。花芷は顧晏惜がいることに気づいていたが、意地を張って一度も振り返らずに客桟へ入った。( ߹꒳ ߹ )イエンシー…早く元気になって自分の客桟に戻った顧晏惜は船で偶然にも手に入れた花印の手巾を眺めていた。すると刺客を尋問した陳情が駆けつける。「仙師に無礼を働いたから″仕置き″したと…」「仕置き?殺そうとしていたのに?…詐欺だと暴露されれば金づるを失うからか」「ご明察です」実は皓月仙師は商いに関することは全て七星楼に行けと助言していた。おかげで七星楼は巨万の富を築き、岳財神は今や金陽一の富豪だという。「皆が天罰を恐れて仙師の言うなりだとか」「花芷の商売は困難を極めそうだな」案の定、皓月仙師を怒らせた花芷は豪商たちとの取り引きが白紙になった。夫人たちは花芷と距離を置くようになり、七星楼が全ての店に花芷と取り引きしないよう通達したせいで小さな商店でさえ物を売ってくれない。抱夏(ホウカ)は蒋(ショウ)家を頼るよう勧めたが、花芷は花容(カヨウ)にだけは迷惑をかけたくなかった。すると客桟の給仕が友人からの届け物だと言って書き付けを部屋まで持って来てくれる。花の形に折られた書き付けを見た花芷は一瞬で差出人が顧晏惜だと分かった。…七星楼の岳財神が仙師を利用して百姓たちを騙し金を集めている…そこで花芷は起死回生の一手に出た。清風(セイフウ)亭に白いもやがかかったかと思うと蓬莱(ホウライ)仙師が現れた。蓬莱仙師の天象予言は当たると評判、しかも天象だけを告げて銭は取らないという。噂を聞いた陳情は早速、清風亭に駆けつけたが、仙師の正体は花芷だった。顧晏惜は岳財神との接触を試みたが、よそ者とあってか難航していた。陳情の話では岳財神はめったに姿を現さず、本人と会えた者もわずかだという。「では先に蓬莱仙師を訪問しよう」「花芷姑娘に?」一方、蒋徴之(ショウチシ)は花容が具合が悪いと聞いて閨房に駆けつけた。「食べ過ぎたのか?医者を早く!」「医者なら今、帰ったわ、バカね、父親になるのよ?」花容は身ごもっていた。「君と初めて会った時、思ったんだ こんな可愛らしい人と添い遂げられるなら、この生涯、君ひとりに捧げてかまわないと… それが子にも恵まれるなんて…ゥッ…」感激もひとしおの蒋徴之、そこでつわりに苦しむ花容のため、好物を買って来ることにした。すると花容も一緒に行きたいという。花容は露店で懐かしい山査子飴を見つけ、夫に買ってきて欲しいと頼んだ。その時、偶然にも清風亭に向かう顧晏惜を見かける。「晏先生!」「金陽に嫁いだと聞いていた、まさか会えるとは」「芷姐姐も来ているの知っている?」「ああ…別々に来たんだ」「私はてっきり2人が結ばれるんだと…とても幸せそうだったから、残念ね」そこへ山査子を持って蒋徴之がやって来た。花容は夫に晏先生を紹介したが、姉に晏先生の話はしないよう頼む。「芷姐姐が悲しむから」「分かった」( ゚д゚).oO(デカッ…人だかりができている清風亭に陸(リク)と称して顧晏惜が現れた。顧晏惜は岳財神を真似て八風楼を建て、そこに蓬莱仙師を祭って富を得たいという。「私に便乗して岳財神に会いたいの?(コソッ」「公務なんだ、同行させてくれ(コソッ」清風亭を取り囲んでいた民衆は騒然、するとその中の1人が慌てて走って行った。「では場所を変えてお話を…」花芷が顧晏惜の案内で町を歩いていると、これまで逃げ回っていた曽銘(ソウメイ)が大慌てでやって来た。「所用で金陽を離れておりまして…」すると曽銘は岳財神からの招待状を2人に渡した。「その金箔の冊子を見たものは町中探しても片手で数えるほどしかおりません いやぁ~お2人とも皇都からお越しなのでいつかお引き合わせしようと思っていたら 私が一席、設ける前に知り合われたのですね?」「確かに見ず知らずの2人が巡り会うのは広い皇都でも簡単ではない」顧晏惜はそう言って意味ありげに花芷を見た。七星楼は商いの場と言うより厳かな宮殿のようだった。すると曽銘が従者は帰し、花芷と顧晏惜だけ上階に案内して花芷が先に部屋に入るよう促す。しかし顧晏惜は自分も花芷の商売に興味があると断り、勝手に門を開けて花芷と一緒に部屋に入ってしまう。岳財神の部屋には花芷の興味を引く機器や書物があった。「天球儀だわ、水と水銀を利用して球体を動かし、天体の運行と合わせるの」すると花芷の説明に感心しながら岳財神が現れた。花芷は誤解があったと謝罪、岳財神が後ろ盾なら天象の予言だけは正しかったようだと認める。「ここで観測していたのなら詐欺とは言えませんね」しかし花芷は窓際の長椅子のそばにある机に手鏡や櫛があることに気づき、顧晏惜にそれとなく目配せした。花芷は岳財神に和解を申し入れた。岳財神も花芷の目的があくまで商売だけだと分かり、金箔の冊子を見せれば何でも買えると安心させる。「その代わり仙師に扮するのはやめていただきたい」「感謝します」しかし陸という男の目的は全く違った。「こんな童謡を聞いたことはありますか? ″無能な君主、不吉な天変、3年雨が降らず穀物は枯れてしまう″」すると岳財神はひとまず花芷だけ先に帰すことにした。「気をつけて」花芷は帰り際、こっそり顧晏惜に警告して出て行ったが、すでに七星楼は民に紛れた七宿衛が包囲していた。顧晏惜は花芷が見ていた調度品から本当の主が女子だと分かった。「全ての黒幕はお前ではなく皓月の方だろう?主を呼べ」その時、皓月仙師が現れた。「聡明な郎君ね…でもさっき花姑娘と目配せしていたわね、元から知り合いでしょう?」皓月は花芷に放った刺客が行方知れずになった理由が分かった。陸という男は恐らく朝廷の間諜、その振る舞いから察するに高貴な身分だろう。「役所まで御足労願おう、無実と分かれば釈放する」「ここから生きて出られるとでも?…皆さん!やっちゃってください!」「殺ーっ!」しかし驚いたことに顧晏惜はたった独りで数十人の敵をばったばったと倒していった。顧晏惜は隙を見て窓に向かって照明弾を放った。待機していた陳情と李猴(リコウ)は七宿衛を引き連れ一斉に七星楼へ雪崩れ込み、上階の顧晏惜と合流する。驚いた皓月はからくり扉から逃げようとしたが、顧晏惜が放った剣が扉に命中、逃げ道を塞がれてしまう。こうして顧晏惜は皓月を捕縛、外で待っていた花芷を見つけて目配せすると出発した。翌日、花芷が波止場で船荷をあらためていると曽銘がやって来た。すると曽銘は木箱を差し出し、1日だけ預かって欲しいという。「よろしくお願いします、では用があるのでこれで」木箱には頑丈な錠が掛けられ、中に何が入っているのか花芷には分からなかった。一方、皓月は護送されるまでの間、ひとまず金陽府署に収監された。すると自分を捕まえた陸という男がやって来る。「皇帝の甥で凌王世子の顧晏惜が容貌を傷つけて七宿司使となり、皇位を争わないと約束したとか …あなたのことね?」「皇都の事情にも詳しいのだな、天象を見るだけでなく皇都に内通者が?」「童謡について説明してあげましょうか?」皓月は顧晏惜の身体にそっと触れ、やがて手を握った。「顧晏惜、あなたさえ良ければ皇位に就けるよう七星楼が全力で支えるわ …あなたに命を捧げてもいい」しかし顧晏惜に一蹴されてしまう。「皇都の七宿司で罪の重さを思い知るといい」つづく( ˶´꒳`˵ )花容、幸せそう〜ふふ
2025.08.06
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惜花芷 Blossoms in Adversity第34話皇都の物価が急上昇、止明(シメイ)楼でも食品が手に入らず、品書きを変えざるを得なくなった。白銘夏(ハクメイカ)が調べたところ、干ばつで水運が滞り、食材が腐っているせいだという。花芷(カシ)は移動中の馬車で子供たちが″干ばつが3年続く″と歌うのを聞いたことを思い出し、店はもちろん民の食べ物がなくなると心配した。花芷は止明楼で船を購入し、作物が豊かで水運が発達している南方まで買い付けに行こうと思いついた。そこで酒楼の店主たちを招待して資金を募ったが、店主たちは水運の素人である花芷を信用できない。しかし花芷は幼い頃、祖父と国中を旅して海洋船にも乗り、その際、何度も嵐を経験したと話した。「支援いただけるなら初回は私が乗船して取り引きをまとめてきます (ヾノ・∀・`)イヤイヤ~無理にとは言いません、別に船を買うお金はありますから(ウソw) でも買い付けた食材の売値は私に決めさせてもらいますけど何か?ʕ•̀ω•́ʔ✧」ザワザワザワ…ʕ•̫͡•ʕ*̫͡*ʕ•͓͡•ʔ-̫͡-ʕ•̫͡•ʔ*̫͡*ʔ-̫͡-ʔ「船を買う資金は私たちが6割(本当はそれしかない)決して損はさせません╭( ・ㅂ・)و ̑̑」七宿(シチシュク)司では顧晏惜(コアンセキ)が花芷からもらったお守りを眺めていた。すると陳情(チンセイ)が駆けつけ、台所係が米が高騰して買えずに帰ってきたと報告する。「怒って暴れた客までいたとか」「そんな業者、襲われる価値もない、殺せ」( ー̀ωー́ )何かと殺気立つイエンシー顧晏惜は結局、捕らえた穀物業者に見せしめの罰を与え、次はないと脅して解放した。しかし物価高の原因が業者だけではなく、不穏な噂のせいだと分かる。…無能な君主 不吉な天変 3年雨が降らず穀物は枯れてしまう…顧晏惜は早速、元凶を突き止めることにした。花芷は多くの支援を受けて船を購入し、船員も自ら面接して雇った。白銘夏と拂冬(フツトウ)はひとまず近場の渚(チョ)州が安全だと言ったが、花芷は花容(カヨウ)の嫁ぎ先でもある金陽まで下りたいという。一方、七宿司はあちこちで子供を手なづけ、流言を歌わせていた男を見つけた。しかし男はろくに字も読めず、到底、歌を作れるとは思えない。実は歌の出どころは金陽だった。顧晏惜は皇帝に報告書を献上した。「イエンシー、また遠出してもらうことになるな」「私の本分です…」「そう言えば花芷姑娘は大したものだ、船を買って水運を始めるそうではないか」「長く会っておらず、最近の様子は知りません…」「恋慕の情など時が経てばおのずと消える、まあいい、行ってこい、気晴らしになるだろう」「はい、お気遣いに感謝します」←嫌み?wこうして顧晏惜は奇しくも花芷と同じ金陽へ向かうことになった。(´゚艸゚)∴ブッ!やだぐうぜ~ん!w出発前夜、家族はそれぞれ花容へのお土産を準備、邱(キュウ)氏は娘のために縫った衣を託した。花芷は沈淇(シンキ)へ報告に向かったが、ちょうど阿撿(アケン)の暗唱に付き合っている沈淇を見つける。まさか花芷が自ら船に乗るとは知らず、驚いた沈淇は同行したいと申し出た。「助かるわ、表に出にくい時は代役をお願い」すると花芷が遠くへ出かけると聞いた阿撿がまた不安になってしまう。「僕も行きたい」沈淇は確かに花公も読書と経験が心と視野を開かせると言っていたと思い出し、阿撿にも外の世界を見せるべきだと勧めた。こうして水路で金陽へ旅立った花芷。すると甲板で風に当たり過ぎたのか、急に咳き込んでしまう。花芷は慌てて手巾を取り出したが、突風が吹いて手巾が飛ばされた。その手巾は風に乗り、偶然にも後方にいた顧晏惜の船の綱に引っかかる。顧晏惜は手巾の花印に気づき呆然、その時、陳情が前を行く船を見つけた。「司使!旗に花家の印があります!花芷姑娘の船です!」「…彼女はやると決めたら必ずやり遂げる」(*°ㅁ°)ハッ‼花のマーク!その夜、抱夏(ホウカ)と阿撿は砂滑(スナメリ)の群れを見て大興奮だった。しかしこの穏やかな船旅が後方にいる七宿司のおかげだとは知る由もない。実は顧晏惜は花家の船を襲おうとしていた水賊を捕らえ、密かに花芷たちを守っていた。すると急に風が強くなり、雲行きが怪しくなる。花芷はもうすぐ嵐だと気づき、阿撿たちを船室に返して帆を下すよう頼んだ。「後ろの船にも教えてあげて」そこで船員は灯りを大きく回して帆を下げるよう合図、嵐が来ると伝えた。花容(カヨウ)は姉の到着を待ちきれず、夫と埠頭まで迎えに来ていた。(」≧ꇴ≦)」<じぇじぇ~っ!(^ꇴ^)ノシ <ろんR!姉妹は抱き合って再会を喜んだが、花容は晏先生の姿がないと気づく。しかし花芷が何も言わないため、花容もそれ以上は聞けなかった。花容は姉に金陽の町を案内することにした。蒋(ショウ)家は花家よりも大きな屋敷で、義父母もあまり顔を見せることもなく花容は自由だという。義妹も優しい性格だが、嫁いでしまったのであまり会えなかった。花芷は幸せそうな妹の姿を見て喜んだが、花容は姉にも早く良い人を見つけて欲しいという。その時、ちょうど町を視察していた顧晏惜は花容が花芷を呼ぶ声を耳にして足を止めた。「芷姐姐!こっち!」顧晏惜は花芷の姿を探したが、結局、すれ違ってしまう。む~みん一方、阿撿は沈淇と町を散策していた。すると流民の子供を見かけ、せっかく買った揚げ餅をあげてしまう。「僕も君と同じだった、でも今は抜け出せたから君もあきらめないで」「君はツイていただけだよ」阿撿は自分の小遣いを子供に全て渡して沈淇の元へ戻った。世の中には同じような子供が沢山いるはずだと気づいたが、簡単に助けることは難しい。「彼らを幸せにする方法はないのでしょうか?」「自分で救う道もある、君にはその可能性があるぞ?」沈淇は民を憂う阿撿の姿に皇子の素質を見ていた。蒋徴之(ショウチシ)は花芷に金陽の豪商の1人・曽銘(ソウメイ)を紹介した。「うちは商売には疎い、彼なら顔が広く頭も切れるので力になってくれます」すると曽銘は地元名士の夫人たちが集まる茶会に案内してくれた。「皆さんに取り入れば注文をいただけますよ」中でも夫が海産物卸しの陳(チン)夫人と穀物店の周(シュウ)夫人は中心的存在だという。しかし夫人たちの話題はもっぱら皇都での流行りの化粧や髪型。花芷の苦手分野だったが、そこは抱夏がうまく取りなしてくれた。曽銘は花芷を夫人たちに任せ、早々に酒楼へ向かった。そこで待っていたのは陸(リク)と名乗る皇都から来た富豪。「金陽で商機を探している」「資金があるなら率直にお話ししましょう、ここで最も稼げるのは物品ではない 少ない元手で大きく稼げる方法があります」曽銘は陸という男がまさか七宿司使だとは知らず、賭場に案内してしまう。花芷は抱夏のおかげで夫人たちから止明楼一月分の稼ぎに匹敵する注文を受けた。しかも陳夫人は夫に食材の卸し先を花芷優先でと頼んでくれるという。すると周夫人が注文を書き留めている沈淇に目をつけた。「郎君は婚姻しているの?私には18の妹がいるの、よければ紹介するわ 嫁荷の支度も済んでるの、あとは良いお相手だけなのよ」驚いた沈淇は目を白黒させながら花芷に助けを求めた。花芷は失笑しながら、沈淇も両親の許可がなければ婚姻を決められないと助け舟を出す。一方、顧晏惜と陳情は賭場にいた。用心棒は手だれ揃い、ここで手を出せば面倒なことになる。そこで賭場の主人を調べることにした。その夜、花芷は沈淇と夜市に出かけた。水の都は夜もにぎやか、すると2人は水路の近くで売っていた灯籠を見つけ、一緒に流すことにする。そんな花芷と沈淇の後ろ姿を偶然、顧晏惜が見ていた。2人の仲睦まじい様子を見た顧晏惜は意気消沈、まさか花芷が顧晏惜との思い出を胸に灯籠を流していたとは知る由もなく、深く傷ついてしまう。( ;∀;)もう戻れないの?花芷は夫人たちの茶会に出かけた。「あら?今日は1人なの?沈郎君は?」「すっかり怯えてしまいました」夫人たちは失笑し、花芷を今夜の法会に誘った。実は金陽には天候や吉兆を占ってくれる皓月仙師(コウゲツセンシ)と呼ばれる天女がいるという。水運や商売の先行きも良く当たると評判で、陳夫人も船旅の多い夫の無事を祈って毎年10万も供えていた。「会ってみたいです」「うーん、その格好じゃだめね、芷妹妹」一方、顧晏惜は曽銘から七星(シチセイ)楼の話を聞いていた。七星楼には3年前に迎えられた皓月仙師という神仙がいて、金陽で商売する時はまずお伺いを立てるという。「冠婚葬祭の日取りから商売や出世に関することまで、仙師に聞かねば安心できません そうそう、年初には干ばつを予言していました、大当たりでしょう?」その夜、夫人たちに着飾ってもらった花芷は法会にやって来た。参拝者がひれ伏す中、花芷は謎の仙師が気になってちらちら見てしまう。すると予言を求める最初の信者が前に出てお布施を渡した。つづく(  ̄꒳ ̄)花火、打ち上げ過ぎ問題
2025.08.05
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第13話「失われた技術」裴行倹(ハイコウケン)が赴任早々、経費削減の任務を押し付けられたと知った庫狄琉璃(コテキルリ)。官吏たちの少ない俸禄を削る以外にも支出を減らす策はあったが、裴行倹はいずれにせよ麴崇裕(キクスウユウ)が自分を悪役にするつもりだと分かっていた。「琉璃、商隊の荷の中に紙や墨はなかったか?」「あったわ、阿姉は益(エキ)州の黄麻紙(コウマシ)を一番、心配していた なぜ大量の紙を何千里も越えて運ぶのか不思議だった…あっ」すると屋根で夫婦の会話を盗み聞きしていた白三(ハクサン)はそこで引き上げた。都護府は以前、敦煌(トンコウ)から紙を仕入れていたが、司馬が工房を開いたおかげで紙代は削減されていた。しかし慣例により今も公文書だけは益州の黄麻紙を使っている。これに目をつけた裴行倹は黄麻紙を粗麻(ソマ)紙に変えて墨の質を落とし、下書きの交換回数を減らせば300貫程度は削減できると説明した。王君孟(オウクンモウ)は裴行倹が自分たちの掘った穴に自ら飛び込んだと上機嫌だった。裴行倹が官吏たちの俸禄を守るため文具の質を落とす案は織り込み済み、しかしそれでは姻戚の安家の財源を断つことになる。王君孟はこれも白三に裴行倹を見張らせたおかげだと喜んだが、麴崇裕は事がうまく運び過ぎると訝しんだ。…白三の報告では私の思惑に気づいているはず、裏で動いているに違いない、西州で私に隠れて動くことは決して許さぬ…裴行倹を尾行していた白三が工房へ報告にやって来た。裴行倹は女子と碁を打っていたが、人探しを頼まれていたという。「明日は城外へ人探しに出かけると…」実は裴行倹は白三に気づいていた。そこで麴崇裕を欺くため柳如月(リュウジョゲツ)を訪ね、城外に出かける口実をわざと耳に入れる。一方、琉璃は市場に出かけた。ちょうど店先に出ていた綿花を見つけて手に取ってみたが、綿の質は悪く、種も取り除かれていない。さらに布にしたものは長安の絹織物よりはるかに高かった。店主の話では綿布を織るのは難しく、西州では身分の高い者だけが愛用する特別な布だという。琉璃はとにかく店内で見せてもらうことにしたが、皇宮で使っていた綿布とはまるで違った。「なぜこんなに織りが粗いの?火麻布(ヒマフ)よりは柔らかいけれど…もっと上質な物は?」「これより上なら細布(サイフ)ですね、でもずいぶん前に技術が途絶えました 司馬が亡き母上の願いを叶えるため織り手を探していますが見つからないとか 今でも細布が見られるとしたら長安の皇宮だけでしょう」実は司馬の工房にも西州に残った唯一の細布があった。そもそも細布の織りの技術は高昌(コウショウ)の秘伝の技、しかし凄惨な戦で貴重な技術が失われてしまう。麴崇裕はまだ幼い頃、母から織りの技術があれば西州の民の暮らしが楽になると聞いていた。折しも母の命日が近づき、麴崇裕は未だ母の願いを叶えられないと涙してしまう。麴崇裕は父を訪ね、命日に母の墓参りに行こうと誘った。しかし麴智湛(キクチタン)は自分が行っても喜ばないと断ってしまう。そんな父を麴鏡唐(キクキョウトウ)は未だ許していなかった。琉璃は約束通り麴鏡唐の屋敷を訪ねた。しかし長らく待たされた挙句、侍女は済まなそうにまだ庫狄夫人の訪問を伝えられずにいると報告する。「実は厨房でひどくお怒りで…老夫人の命日が近づくといつもこうなのです 味が悪いからお怒りなのではありません、子供の頃の忘れられない味を求めておいでです でも老夫人も料理より武術が得意だったとか」麴鏡唐は粥を作らせては気に入らないと床に叩きつけていた。その時、様子を見に来た琉璃に気づき、ばつが悪そうに部屋に戻ってしまう。「機嫌が悪いの、帰って」裴行倹は柳如月の従兄探しを口実に外出、武城(ブジョウ)郷を視察した。すると皇帝が施政の成果に大喜びする陰で西州の民が苦しんでいたと知る。確かに初代の安西(アンセイ)都護を務めた喬師望(キョウシボウ)は唐(トウ)制を厳格に推進したが、功を立てようと荒野や砂漠まで公田としていた。均田制は寛郷(カンゴウ)と狭郷(キョウゴウ)の区別があり、田が小さい狭郷なら当然、税も少ない。しかし喬師望のせいで西州は寛郷とみなされ、農民は実際には十数畝(ホ)前後しか任されていないにも関わらず、100畝の税を課されていた。一方、琉璃は厨房を借りて粥を作り、麴鏡唐の部屋に届けた。「余計な真似を…」「料理はできるけれど腕は良くないわ」麴鏡唐は父や兄が庫狄琉璃を警戒する理由が分かったと冷笑したが、琉璃がふたを開けると表情が一変した。実は琉璃も幼い頃、病になると母が作ってくれた粥が好きだったという。母の粥の秘密は西州の肉蓯蓉(ニクジュヨウ)と伊貝母(イバイモ)の粉末だった。「阿娘の故郷は西州なの、私が大きくなったら西州で自由に暮らそうって… 私は自由になったけれど阿娘はいない…もう阿娘のお粥も食べられないの」まさに母の味だと感涙にむせぶ麴鏡唐、こうして奇しくも幼い頃に母を亡くした2人は心を通わせた。西州では耕地自体がわずかだった。そこへ貞観(ジョウガン)年間から辺境軍や流民が押し寄せ、さらに分配が困難になったという。また西州では桑の栽培や養蚕も難しく、他から高価な綿布を買って調に充てることもあった。実は西州では租の滞納以上に調の滞納が深刻だという。喬都護の時代に滞納がなかったのは厳しい罰を恐れて家や土地を売っても納めていたせいだった。しかし麴都護が着任してから税を3割も減らし、工房を作って商隊を広く受け入れ、支出を減らすことでかろうじて回っているという。麴鏡唐は粥が縁で琉璃にすっかり心を開いた。そこで念のため父や兄に気をつけるよう警告しておく。西州では誰も父や兄の思惑を止めることなどできず、裴長史がどんなに有能でも口出し無用だという。「分かってる、謝謝」「雪が降りそうね、急いで」一方、裴行倹は集落で腕の良い獣医を見かけた。獣医の名は韓景之(カンケイシ)、農民たちは韓四(カンシ)と呼んでいるという。西州では名の知れた男で、医家に生まれたが両親を亡くし、今は獣医をしていた。医術の腕が優れていながら変わり者で赤貧の暮らしをしているという。独り身で身なりも構わず、人付き合いもしないとか。人の治療を頼まれても滅多に診ないが、相手が貧乏人なら来てくれるという。確かに韓四は新しい長史を紹介されても、にこりともせず帰ってしまう。その夜、琉璃は雪見酒の準備をして夫の帰りを待っていた。屋敷に戻った裴行倹は妻の美しい横顔をしばし眺めていたが、ふと琉璃が裴行倹に気づく。「阿娘から草原の話は聞いていたけれど、極寒だとは聞いていなかった」「琉璃、済まなかった、最初に岳母の弔いをすべきだった」「阿娘なら分かってくれるわ…守約(シュヤク)、阿娘は西州に来たことを喜んでいるかしら?」「もちろん、君の無事と幸せがお望みだった」翌日、琉璃が買い物していると偶然、市場を視察している裴行倹と出くわした。そこで裴行倹は琉璃を連れて文具の店に行き、目をつけた経典を手にする。しかし経典の価は3貫からと高かった。何でも上質の細麻紙に書写したもので、書が得意な学者が1文字ずつ写すため高くなってしまうという。裴行倹は経典を1冊だけ買って店を出ると、琉璃に従姉の荷にある紙は経典に使おうと提案した。「そういうこと〜でも1巻に十数枚必要だわ…一月で写し終えるには20人は必要よ? 何か策でもあるの?」「そのうち思いつくさ」やがて2人は霓彩(ゲイサイ)衣装店を通りかかった。つづく( °◊° )え?孔雀って良い人なの?
2025.08.05
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风起西州 Weaving a Tale of Love II第12話「お手並み拝見」西州に到着した裴行倹(ハイコウケン)を過剰にもてなす安西(アンセイ)都護・麴智湛(キクチタン)。一方、庫狄琉璃(コテキルリ)は別院で女たちの宴席に招かれ、都護の祇(キ)夫人たちから歓待されていた。夫人はすでに琉璃のことを調べたようで、嫁ぐ前は尚服局の大家(タイカ)で裁縫や刺繍の達人だと紹介する。するとそこへ狩りから戻った麴鏡唐(キクキョウトウ)が現れた。妹を宴に送り込んだのは麴崇裕(キクスウユウ)だった。麴鏡唐は兄を怒らせた琉璃の顔を一目見たいと宴に乗り込んだが、想像と違うという。「鬼の面相かと思ったら普通の女子なのね、でもその美貌はこの場の誰にも勝るわ」すると麴鏡唐は大長公主に命を狙われてもなぜ無事だったのか聞いてしまう。「何を言うの?!でたらめはよしなさい!」祇夫人は驚いて声を荒らげると、麴鏡唐はそこで退散することにした。「あなたのこと気に入ったわ、今度、屋敷に来て都の化粧を教えて… この雉はあなたにあげる」別院に裴行倹が泥酔して寝殿に戻ったと知らせが来た。宴を引き上げた琉璃は寝台で酔い潰れている夫を介抱することにしたが、突然、裴行倹が抱きしめる。「1人ずつ乾杯させられて1斤以上は飲んだ、これ以上、飲んだら潰れる 西州での最初の夜を酔っ払いと過ごしたくないだろう?」すると裴行倹は起き上がって酔い覚ましを飲んだ。琉璃は甘い夜を過ごすより都護の歓待には裏があると怪しんだが、裴行倹も別院で問題がなかったか心配する。「孔雀の妹が来ただけよ、ふふ」「わがままな上、横暴なじゃじゃ馬で誰もが避けると聞く」「確かに厄介そう、でも私は気に入られたみたい、大丈夫よ…」その時、裴行倹が琉璃の唇をふさいで話を遮った。翌朝、身支度を整えた琉璃は客室を出て回廊から景色を眺めた。その時、ちょうど美しい鳥が鳴きながら飛んで行くのを見る。実はその鳥は麴智湛の下に戻った。すると娘婿の王君孟(オウクンモウ)が朝餉の準備が出来たと呼びに来る。娘はまた父の誘いを断ったのだろう。「どう思う?私は今の平和を守りたいだけだ」「しかし西州を守るためには唐朝の力が必要です」「ひとまずあの男を殺すなと?」「玉郎(ギョクロウ)@孔雀の考えです… 恐れながらここは高昌(コウショウ)国ではありません、もはや西州なのです」麴智湛は王君孟の諫言に従って様子を見ることにしたが、いずれ殺さなければならないと言った。琉璃と裴行倹が朝餉を終えた頃、麴崇裕が訪ねてきた。麴崇裕は住まいをどうするか尋ねたが、琉璃はすでに曲水(キョクスイ)坊に家を買ったので今日にも移るという。「ぁ…もしや司馬が用意してくれたの?ご厚意を無駄にしたわね でもこれで賊が入っても司馬が疑われずに済むわ、ふふ そうだ、一緒に家を見に行かない?お詫びに手作りの昼食をご馳走したいの 昨夜、妹さんから血の滴る雉をもらったから」すると焦った麴崇裕は遠慮して逃げるように帰ってしまう。「この悪人め、仕返しされるぞ?」「ふん、仕返しなんて怖くないわ」実は裴行倹も琉璃が家を買ったとは初耳だった。琉璃は当初、裴行倹と暮らすつもりがなかったため、市場の近くに買ったという。新しい家はすでに整えられ、何(カ)家職が使用人と一緒に待っていた。琉璃は昼餉の後に親戚回りに出かけると伝え、先に贈答品を届けておいて欲しいと頼む。裴行倹は安家への挨拶には一緒に行くと言ったが、琉璃はそれより夫の公務が心配だった。西州とは言え、元は麴氏高昌だった地をまた麴氏が治めている。麴氏と大氏族のつながりも侮れず、琉璃は気が気でない。「君が心配せずとも心得ているさ」こうして琉璃と裴行倹は2人の家を手に入れ、やっと陰謀や企みのない安心できる場所を得た。「ここが我が家ね」琉璃は侍女たちと一緒に市場へ出かけ、足りないものを買い揃えた。すると霓彩(ゲイサイ)衣装店に気づき、琉璃は懐かしそうに眺める。その時、人混みなどお構いないに疾走する馬が現れた。馬に乗っていたのは麴鏡唐だった。麴鏡唐は注文した挿屏(ソウヘイ)の図案を見に来たが気に入らず、店に飾ってある絵の絵師を呼べという。しかし店主は絵師は長安にいるため呼べないと断った。その時、思いがけず庫狄琉璃が現れる。「こちらは長安安家のご商売?…あら麴夫人」「また会えたわね、名前で呼んで」すると店主は庫狄琉璃こそこの絵を書いた絵師だと教えた。「この店は命拾いしたな」麴鏡唐は琉璃に約束通り近いうち屋敷に来て欲しいと頼んで引き上げた。朝から庫狄琉璃にやられっぱなしで不機嫌な麴崇裕。王君孟は工房の書斎で不貞腐れている麴崇裕を見つけ、都護を説得しておいたと報告した。「ひとまず裴行倹は殺さぬそうだ、でどうする?奴は明日、着任だろう?」「明日、議事の際にそこの文書を裴行倹に渡せ」 軍資の徴収に向け都護府も支出を減らす必要がある、お手並み拝見といこう」翌日、王君孟は裴行倹に都護府から選んだ6人を下僕として渡した。中でも白三(ハクサン)は手柄を立てて賎民から解放された都護きっての使い手だという。…玉郎はまさにうってつけの男を選んだな、裴行倹を困らせてやれそうだ…麴崇裕は早速、裴行倹に来年の支出を300貫ほど減らす任務を任せた。官吏たちはわずかな俸禄をさらに減らされるとぼやき、あからさまに裴行倹を牽制する。ただでさえ西州の官吏の俸禄は朝廷の官吏の半分、臨時手当も朝廷の基準以下だった。確かに経費削減は必要だが、度を越せば人心が離れてしまうという。日が暮れる頃、白三たちは都護府の露台で飲み比べに興じていた。すると司馬が現れ、白山を呼ぶ。一方、屋敷に戻った裴行倹は長安からの知らせを琉璃に伝えていた。一月前に王(オウ)皇后と淑(シュク)妃蕭(ショウ)氏が廃され、一族も嶺南(レイナン)へ流刑になったという。「もう武皇后と呼ぶべきだな」「なぜわざわざ知らせてきたのかしら?」「私が長安へ戻る日は来ないと伝えるためだろう」「孔雀コイツッ!」裴行倹はかえって琉璃とゆっくり過ごせると笑い、早速、司馬に難題を押し付けられたと教えた。司馬に命じられた白山は裴府に忍び込み、夫妻の閨房の屋根で聞き耳を立てた。「配下の少ない俸禄を削るのが最初の仕事なんて…自分の首を絞めるわ、考え直したら?」「難しいな、司馬が私に一任したからにはこれ以外の策は取らせないだろう」つづく
2025.08.03
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惜花芷 Blossoms in Adversity第33話七宿(シチシュク)司に連行される沈(シン)家を呆然と見送る花芷(カシ)。その時、捜査を終えた仮面の司使が出てきた。顧晏惜(コアンセキ)は鋭い視線を向ける花芷に気づいたが、そのまま通り過ぎて引き上げてしまう。実は次の行き先は花府だった。花家は屋敷に乗り込んできた七宿司に騒然、すると静養していた沈煥(シンカン)が引きずり出されて行く。「ひどいわ!沈煥を返して!」芍薬(シャクヤク)は自分の兄だと知らず、腹いせに仮面の司使に向かって石を投げてしまう。投獄された沈中行(シンチュウコウ)父子は顧晏恭(コアンキョウ)に取り入るため沈淇(シンキ)に書かせた招待状が災いを招いたと知った。しかし沈家を救えるとすれば榜眼(ボウガン)の沈淇だけ、そこで弟の沈煥に身代わりを頼む。沈煥は祖父と父の仕打ちに愕然としながらも、家のため犠牲になるしかなかった。一方、家族と引き離され、独り監獄にいた沈淇は弟のうめき声で拷問に気づいた。そこへ思いがけず馴染みの顔が現れる。「晏兄?(はっ!)七宿司使だったのか?花芷は知っているのか?!」顧晏惜は黙って頷き、沈煥が顧晏恭への文を書いたと自白したと教えた。驚いた沈淇は文を書いたのが自分だと訴え、筆跡で証明して弟を救う。実は顧晏恭の件を尋問しているのは皇帝の密使だった。顧晏惜も手をこまねいていたが、その時、鄭虎(テイコ)が駆けつける。「司使、花芷姑娘がお越しです」顧晏惜は花芷が沈家の件で自分を責めていると分かっていた。「ここには来るな…陛下を裏切ることはできない、君も家族を裏切れないだろう?」「沈家の大郎はいい人よ?二郎は芍薬の朋友だわ、無実の一家だと分かっているはず」「分かっている、だが私には他の選択肢がない」「知ってる、あなたが沈家を思ってかばったこと、これはその罰なのね」花芷は皇帝の意図を察し、自分と顧晏惜が一緒にいることで再び皇帝が罰を与えることを恐れた。「イエンシー、沈家は始まりに過ぎない、これからも多くの人が私たちの犠牲になる 私にも他に選択肢はない」「時間をくれ!」顧晏惜は花芷の選択の意味に気づいて激しく動揺したが、花芷は黙って腕輪をはずした。「ごめんなさい」すると花芷は腕輪を顧晏惜に返して帰ってしまう。。・゜・(ノД`)・゜・。翌日、顧晏惜は憔悴したまま皇帝に謁見した。「イエンシー、どうした?浮かない顔をして?花芷と喧嘩でもしたのか?」「…彼女とは別れました」「早かったな、そうか、では沈淇を釈放してやれ、沈家父子以外は全員だ」顧晏惜はこれが花芷を愛したことへの報復だと改めて思い知らされ、ただ呆然とたちすくんだ。花府に釈放された沈淇と沈煥がやって来た。芍薬は仮面の司使を激しく罵倒したが、花芷から司使は悪くないと叱られてしまう。「どうして?」その理由を知っている沈淇は話題を変え、実は沈煥が芍薬に無事を知らせたいと言うので連れてきたと説明した。「私はこれで…」「待って、ちょっとお邪魔してもいい?」花芷は財産を没収された沈家に当面の食料と薬を差し入れた。しかし老夫人は宝物の箱に気づき、これを受け取るわけにはいかないという。「誰もが沈家と距離を置きたがる中、訪ねてくれた気持ちは黄金にも換えがたいものよ」「老夫人、借用書をお忘れですか?」かつて林婉(リンエン)が沈家との退婚を申し出た時、沈家の結納品が没収されて返せず、借用書を渡していた。花芷は当時、自分たちの状況を知って破談を言い出せずに帰った老夫人の優しさに感謝しているという。「今日はその時のご恩をお返ししたまで…くれぐれもご自愛ください」( ;∀;) イイハナシダナー花芷は沈淇に花家の学堂を任せることにした。一方、沈煥も一念発起、自立して家族を養える仕事を探すことにする。すると沈煥の手当をしていた芍薬は一緒に止明(シメイ)楼へ行こうと提案した。「そんな銭はもうない…」「稼ぎに行くのよ、阿撿(アケン)も授業後に働いて給金をもらってる、あなたにもできるはず!」蒋徴之(ショウチシ)との縁談がまとまった花蓉(カヨウ)は嫁ぐ前夜、母と一緒に寝ることにした。すると邱(キュウ)氏がこれまで貯めた銭や装飾品を娘に持たせたいという。花容は母を心配し、嫁荷なら花芷が準備してくれたと断ったが、邱氏は受け取って欲しいと訴えた。「母としては心配なの、粗相のないようにね…」邱氏はまだ幼い娘が名家に嫁ぐ怖さを知らず、いつか夫の心が離れた時のために居場所を作るよう忠告した。「ひどい扱いをされたら離縁すればいいわ、芷姐姐なら許してくれる、ふふ」こうして花容は愛しい人と共に皇都から遠く離れた金陽(キンヨウ)へ旅立った。花芷は昼も夜も働き詰めだった。流石に今夜は抱夏(ホウカ)が強引に寝台で寝かせたが、目を閉じると顧晏惜との幸せな思い出ばかりが蘇ってしまう。結局、花芷は寝台を出て窓から月を見上げた。顧晏惜もどこかで同じ月を見ているだろうか。その時、顧晏惜は七宿司の矢倉で月を眺めながら、花芷から戻ってきた腕輪を見つめていた。翌日、顧晏惜は芍薬を花府の外へ呼び出し、凌王府へ戻ると伝えた。「哥哥、行かないで、あの仮面の悪党が来た時だって、哥哥がいなくて抵抗できなかったの」「芍薬…すまない」一方、花芷は四叔の酒と豪華な寝台を運び出し、全て北の倉庫に移した。娘の婚姻を楽しみにしていた朱盈貞(シュエイテイ)は花芷に何も聞けず、自分の早合点だったと落胆してしまう。沈煥は昼も夜も身を粉にして働いた。花芷は沈煥が迎春も感心するほど勤勉だと知り、月末に賞与を出すと決める。そんなある日、かつての悪友たちが止明楼にやって来た。3人は沈煥が玄関番になってぺこぺこ頭を下げていると笑ったが、沈煥は接客に徹し、心づけの銭もありがたく受け取って席に案内する。悪友たちは拍子抜けしたが、その様子を芍薬が見ていた。芍薬は3人の馬の鞍に針を仕込み、知らずにまたがった3人は尻に針が刺さって絶叫してしまう。その夜、沈煥がくたくたになって沈府に帰ると、まだ兄の部屋に明かりがついていた。「こんな遅くまで授業の準備?」「生徒は質問好きなんでね」すると沈煥は疲れてもう1歩も歩けないと寝台に横になってしまう。「今夜は一緒に寝ていいだろう?」思いがけず災いが降りかかった沈煥。ずっと気楽な日々が続くと思っていたが、永遠に自由でいられないと分かったという。「生きるのは大変なことだね」「私がいるだろう?」「今後は2人で頑張っていこう…俺が楽させてあげる…ムニャムニャ…」沈淇は弟がすっかり大人になったと知り、疲れ果てて眠り込んだ沈煥に布団をかけてやった。鄭知(テイチ)は沈淇の体面を考え、花家が準備した祝宴を断り、故郷の桂渓(ケイケイ)に出発することにした。花霊(カレイ)は花芷と見送りに出かけたが、自分の気持ちを伝えられぬまま別れを告げる。すると鄭知はその場で恩人に叩頭し、再会を願って馬に乗った。花芷と顧晏惜が別れたことは明らかだったが、花家でも七宿司でも誰もその話題に触れることができなかった。鍛錬場で無敵だった顧晏惜は鄭虎(テイコ)に投げ飛ばされる始末。陳情(チンセイ)は司使を励まそうと花記(カキ)の菓子を差し入れるが、逃げるように引き上げる。一方、花芷は独りで凧揚げを楽しむことにした。しかしうわの空で紐から手を離していたせいで戻せなくなり、そのまま手放してしまう。そんなある日、皇都の物価が急上昇した。止明楼でも食品が手に入らず、品書きを変えざるを得なくなってしまう。つづく(:3[__]
2025.08.02
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惜花芷 Blossoms in Adversity第32話望まぬ婚姻と芍薬(シャクヤク)とのすれ違いに苦悩し、兄を頼った沈煥(シンカン)。沈淇(シンキ)は許嫁を好きになれないという弟に想い人がいると気づいた。「自分だって花(カ)姑娘が好きなのに、明日、別の女子を娶れと言われたらどうする?」「…他者を騙せても自分の心は騙せぬ、私なら想いを貫く」その言葉で沈煥の心が決まった。翌日、無事に縁談がまとまった沈家は屋敷に蒋(ショウ)家を招いた。しかし沈煥が会食の席で酒をあおって無礼を働き、怒った蒋家に破談にされてしまう。目論見通り縁談を壊した沈煥。激高した父から杖罰を命じられたが、芍薬の手作りの″卒″の駒を握りしめて激痛に耐える。実は″卒″の文字の裏には笑顔の印が彫られていた。「分かってる、これは私の顔なんだろう?不細工だな…ふっ」一方、七宿(シチシュク)司では憲(ケン)王府の調査が終わっていた。顧晏恭(コアンキョウ)と結び、謀反を企てた家門が2戸、武器などを提供した家門が7戸、袖の下で取り入ろうとした家門が26戸、その26戸の中に沈家がある。顧晏惜(コアンセキ)は親の罪が子に及ぶことから、口実をつけて皇帝への報告を引き延ばすことにした。「制裁を行えば朝堂に激震が走る…郷試が終わった頃に再度、罪の重い家門を調べよ」罰で深手を負った沈煥は寝所で静養していた。すると思いがけず沈家に結納品を返しに来た蒋徴之(ショウチシ)がこっそり訪ねてくる。「想い人いるんだろう?あそこまでやれば気づくさ、下策に出た訳を教えてくれ」「想い人がいると断れば君の姐姐に恥をかかせる、蒋家の顔も潰れるだろう? ろくでなしの振りをすれば僕が恥をかくだけで済む… だが想い人と一緒になれるか分からない でも己の心は騙せない、蒋姑娘の一生を壊すわけにもいかないから」蒋徴之は沈煥の心意気に敬服し、自分たちは友でいたいと拝礼した。「それで彼女には破談になったと伝えたのか?妻を娶ったと思って泣いているやも?」蒋徴之は禁足の沈煥を自分の馬車に乗せて花府へ駆けつけた。蒋徴之に支えてもらいながら芍薬を探す沈煥、その時、花園の涼亭でぼんやりしている芍薬を見つける。「シャオヤオ!」「シェンファン!…また怪我をしたの?!いつも傷だらけなんだから!」「君に伝えたいことが…婚姻は中止した」「本当?!じゃあまた会えるの?…あれから私、ずっと考えていたの あなたは哥哥や花姐姐たちと違う、あなただけが私を特別扱いしないからぶつかり合える だから私も…私もあなたに情がある…(*´・∀・)*´-∀-)ウン」芍薬の告白を聞いた沈煥は感激し、思わず芍薬を抱きしめた。( ๑≧ꇴ≦)芍薬、良かったの!沈煥の恋が実ったのを見届けた蒋徴之は黙って帰ることにした。しかし広い花府の中で帰り道が分からなくなり、回廊で立ち止まってしまう。そこで偶然、邱(キュウ)姨娘の娘・花蓉(カヨウ)と出会い、2人は急速に惹かれ合うのだった。そんなある日、花芷(カシ)は顧晏惜と一緒に買い物に出かけた。すると止明(シメイ)楼に置く家具を探している時、顧晏惜が豪華な寝台に目をつける。店主の話では金陵(キンリョウ)産の寝台で皇都でも置いているのはここだけ、ただ高価過ぎて売り手がつかないという。顧晏惜は花芷に彫刻入りの寝台は皇都の嫁入り道具だと教えた。「なら自分で買うわ」「よそよそしいな」「持ち帰ったらまた笑われるもの」その頃、蒋徴之は花家で療養している沈煥の見舞いと称して花府を訪ねた。すると目当ての花容が中庭にいると気づき、厠を借りたいと頼んでこっそり接触する。2人はそのまま町へ出かけ意気投合、別宅に戻った蒋徴之は帰郷する前に求婚したいと両親に頼んだ。花容に転運使の蒋家から結納品が届いた。名家で年も若い郎君からの求婚だけに母親の邱氏は天にも昇る心地だったが、花芷はあまりに突然のことで本人から意見を聞きたいという。すると花芷に呼ばれて花容がやって来た。自分の縁談だと聞いた花容はまだ嫁ぎたくないと訴えたが、相手が蒋家と聞いて急に笑顔になる。「えっ!蒋徴之?!…嫁ぐわ!求婚を受ける!」(^ꇴ^)ロンロン可愛いw翌朝、科挙の最終試験、殿試の結果が発表された。沈淇は第2位の榜眼(ボウガン)に、また花家の学堂で教えていた鄭知(テイチ)は第18位の二甲で合格する。一方、蒋家と破談になった沈家の頼みの綱は沈淇だけになった。しかし殿試は狭き門、そこで性懲りもなく重臣たちに袖の下を送ろうと考えたが、もはや会ってくれる人などいない。その時、息子が次席で合格したと知らせが届いた。「上位3名は陛下が指名する、我が家は見放されていなかったのだ!」花家にも鄭知の合格の知らせが届いた。夫人たちは花家から5人目の進士が出たと喜び、子供たちも羨望の眼差しで先生を見ている。鄭知はこれも穆承之(ボクショウシ)の教示のおかげだと感謝し、回廊から静かに見守っている花霊(カレイ)と密かに目を合わせた。殿試の上位3名は参内のため町を練り歩きながら皇宮へ向かっていた。花芷が大街で沈淇の晴れ姿を見守っていると、馬に乗っていた沈淇が花芷に気づいて挨拶に来てくれる。「毎月、物資を届けてくれたそなたの気持ちを無駄にせずに済んだよ」「では華を添えさせて」花芷は沈淇の烏帽子に高価な花飾りをつけて見送った。すると物陰にいた顧晏惜が現れる。「お祝いを言えば良かったのに」「君だけの方が喜ぶと思ってね」皇帝は自分が決めた殿試の上位3名と接見した。今回の題目は皇帝自ら決めたが、これまでは花屹正(カキツセイ)が作成していたという。そこで皇帝は花屹正の一件に関して見解を聞きたいと言った。状元(ジョウゲン)と探花(タンカ)の合格者は皇帝にへつらって花屹正を非難したが、沈淇は一歩間違えれば死が待っていると知りながら、やはり花屹正をかばってしまう。「私が長年、苦学をしてきたのも陛下をお支えするため、忠臣は君主を戒めるもの だからこそ私は花公への罰を憂い、陛下が非難なさらぬよう願っています 花公の忠心に免じ、どうかあの日の諫言をお許しください」沈淇は忠義を貫いて嘆願した。「沈淇、そちの許婚は花屹正の孫だったな?」「既に婚約は破棄しました、花家との縁はとうに切れており、先程の言葉も情とは無縁です」「ふっ、言われた事はないか、沈中行(シンチュウコウ)とまるで似ておらぬと…」「意味が分かりかねます」結局、顧晏惜は高価な寝台を購入した。そこで懐から書き付けを取り出し、他に必要な物がないか確認する。「一生の大事だ、きちんと準備しなくては」「ますます豪気ね」花芷は思わず失笑したが、顧晏惜は沈家より豪華な結納品を送ると約束する。「実は沈家のことだが…」顧晏惜は花芷に事情を話しておくことにしたが、そこへ司使を探し回っていた陳情(チンセイ)が現れた。「司使!陛下が…参内を!」皇帝はなぜ憲王府の捜索が終わっていながら名簿を今まで見せなかったのか聞いた。顧晏惜は事が重大で関わる者が多く、冤罪を生まぬよう時間が必要だったと取り繕う。すると皇帝がこれみよがしに沈家の名簿を手にした。「皇伯父、沈父子は謀反の一派というほど罪は犯していないかと…」顧晏惜は咄嗟に沈家を庇ったが、これが皇帝の逆鱗に触れた。「イエンシー、生まれて初めて朕を欺こうとしたな?残念でならぬ」驚いた顧晏惜はその場で拝跪した。「沈家は九族もろとも家財を没収、男は収監し、女子供は売る!異論は?」「ありません」花芷は皇太后に菓子を献上するため再び参内した。一方、顧晏惜は急ぎ花府を訪ねたが、迎春(ゲイシュン)から花芷が皇太后のお召しで出発したと聞く。慌てて引き返した顧晏惜は鳳翔(ホウショウ)宮に駆けつけた。しかし祖母は花芷を呼んでいないという。顧晏惜は驚愕、急いで花芷を助けねばならないと席を立った。その時、皇太后が咄嗟に止める。「イエンシー!…今、会いに行ったら芷Rへの想いを認めるようなもの あなたの想いを知った陛下が彼女をどうすると?」皇太后の名を使って花芷を参内させたのは皇帝だった。すでに顧晏惜と花芷の仲を承知していた皇帝、そこで自分の経験を話して戒めとする。「朕もかつて名門の娘と将来を誓い合ったことがあった 即位後、朕は約束通りその娘を宮中へ迎えた だか父親が立場もわきまえず朕の前で暴言を吐き、一族は皆殺しに、その後、娘は自害した …花芷、帝王家の者なら至高の権力を前に犠牲にできぬものはない だが北地から戻ったイエンシーが日々、苦労していることは朕も知っている 時に甘味を取って疲れを癒すのもよい良い、優しくしてやってくれ 心地よく過ごせれば朕のための務めがはかどる、話は終わりだ」しかし憤慨した花芷は思わず口答えしてしまう。「陛下、罪人たる私がイエンシーと一緒にいてもよいと?」「朕がお前の罪を問うたか?祖父や父親と同じで思い上がりも甚だしい 全員、取るに足らぬ存在に過ぎぬ」「しかし陛下の取るに足らぬ言葉で災いを受けるのです 花家だけでなく王家、李家も取るに足らぬ存在なのでしょう?」恐れ知らずの花芷は堂々と皇帝に諫言した。「見事な女子だ、イエンシーが気に入るのも分かる かくも賢ければ分かるだろう、一緒にいてもイエンシーを害するだけだと… 沈家の大郎と親しいようだな? 朕に忠実で公正なイエンシーが何の縁もない沈家をかばった、お前のために 従って朕が沈家を罰したとて恨まれる筋合いはない 家財没収ほどの罪ではなかったがな…言っておくが沈家は手始めだ 何事もイエンシーの忠心を妨げることは許さぬ、妨げるものがあれば打ち捨てるだけだ」(,,Ծ‸Ծ,,)皇帝コイツッ!花芷は帰りの馬車の中で悶々としていた。その時、捜査に向かう七宿司の一行が馬車を追い抜いて行くのが見える。「追いかけて!」御者が七宿司の後をついて行くと、やはり行き先は沈府だった。沈家もかつての花家ように突然、仮面の司使が現れ、家財を没収され、一族が捕まってしまう。花芷は群衆をかき分けて前に出ると、ちょうど沈家の老夫人が連行されるところだった。つづくo(`ω´ )o<こんなことなら針抜くんじゃなかったぁぁぁぁぁ!
2025.08.01
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