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奈良時代末期から平安時代初期、大和朝廷軍の坂上(さかのうえの)田村麻呂を迎え撃つ東北の民を率いるアテルイ。ぼくが学校で日本史を習ったころアテルイの名は語られず、もっぱら征夷大将軍・田村麻呂に光があたっていた。いまはその反動もあって蝦夷(えみし)のアテルイは、アイヌのシャクシャインと並んで注目される先住民ヒーローだ。そのアテルイにまつわる人間模様を描く。舞台を観ながら、シラノ・ド・ベルジュラックを重ね合わせていた。洋楽ミュージカルの楽しみに加えて、舞台両翼で連打する勇壮な和太鼓と、習練を積んだ剣舞・殺陣がきりりとして、ひと晩でふた粒、三粒の楽しみだ。原作の高橋克彦 『火怨』 (平成12年に第34回吉川英治文学賞を受賞) は、アテルイが坂上田村麻呂と竹馬の友であったとの設定。 (史実である必要はないが、まさかひょっとして?)これを原作とした わらび座ミュージカル 「アテルイ」 は、悲劇のなかにもさわやかさが流れる友情と恋のさやあて、けだかい心意気の物語に仕上がっている。平成16年 『月刊ミュージカル』 誌の作品部門で10位に入り、タキナ役の丸山有子さんは小田島雄志賞を受賞した。(今回、丸山有子さんは別の役で出演。)*この公演のことを知らせてくれたのは、わらび座の看板女優の碓井(うすい)涼子さんでした。碓井さんとのご縁は、愛媛県松山市近郊の坊っちゃん劇場で碓井さん主演のミュージカル 「鶴姫伝説 ―瀬戸内のジャンヌ・ダルク―」 を観たのがはじまりですが。碓井さんのことをぼくは 「わらび座の新妻聖子」 と呼んでいます。昨年夏から碓井さんは、わらび座ではミュージカル 「おもひでぽろぽろ」 で主演・タエ子の役で活躍していて、今年にはいってはミュージカル 「アトム」 の地方巡業に加わっています。ぼくが新宿文化センターに 「アテルイ」 を観に行った2月23日は 「アトム」公演のない日で、なんと碓井さんと客席ホールでお会いできました。「アテルイには出ないので、裏方でみんなの舞台衣装のお洗濯をしています」 と話す碓井さんでした。「アテルイ」 の 新宿文化センター 公演は、あと3回。きょう2月25日 (土) が13時と17時半開演、あす2月26日 (日) が13時開演。長年の習練で完成度の高い舞台に仕上がっています。当日券もあります。
Feb 25, 2012
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いまだにこれを超える設定のサイボーグはいないと思われるのが 「エイトマン」 だ。ぼくはエイトマンが好きで、テレビアニメは欠かさず見たし、学生のころ飲み会での唄はエイトマンの主題歌だったし (もちろん振り付けつきで) 、その後 原作漫画の復刻版が出たときも狂喜しながら買った。実写版のエイトマンもビデオで観た。ブレードランナーのような暗さが合っていた。ハリウッドでもっと予算をつけてリメイクしたら確実にブレークするヒーロー。エイトマンの動力は胸部の小型原子炉で、ということは胴体は小型発電所だったわけ。超スピードのエイトマンが受ける外部衝撃にも堪えるタービン発電機をつくるのは、技術者にとって大きな試練だ。IHI (=かつての石川島播磨重工業) が自走ロボット用の電源にも使える超小型ガスタービン発電機を開発したという記事を読んで、エイトマンにまた一歩ちかづけたような気がして、うれしくなった。日刊工業新聞 平成24年2月17日≪IHI は12月16日、手のひらサイズの超小型ガスタービン発電機を開発したと発表した。試作タイプで発電実証運転に成功した。世界最小・最軽量のガスタービンを使い、同程度の大きさの発電機や燃料電池を上回る出力・連続使用が可能。災害・救難時の携帯用電源をはじめ、自走ロボット用電源などへ採用を見込む。同発電機は超小型ガスタービンに高速発電機を組み込んだ。直径8センチメートル、長さ12センチメートル、重さ1.2キログラム。定格出力400ワットで定格回転数は毎分40万回転。潤滑油を使用しておらず、燃料にはプロパンや軽油、灯油などを利用できる。試作した発電パッケージでは、発電機内蔵ガスタービンに冷却ファン、消音器、燃料タンク、電装系・補機類、エンジン起動用電池などを組み合わせた。連続運転時間は3時間で、起動時間は約30秒、冷却停止まで約2分半と起動性も高い。≫出力400ワットだから、ヘアドライヤーも動かせないけれど、でもうれしい。起動時間が約30秒というのがすごい。毎分40万回転、毎秒約6,700回転のタービンを、自走ロボットの衝撃にも堪えられるように作るのは高度な技術だ。IHI のサイトを見たら、創業の嘉永6年(1853年)12月5日は 「水戸藩 徳川斉昭が幕命により江戸・石川島の地に造船所を創設した日」 とある。石川島播磨重工業が、まぶしく見えた。
Feb 23, 2012
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ひび割れをゆっくり開け あおいあおいあなたのためのみずうみがある 東 直子(ひがし・なおこ) 『十階 短歌日記2007』 (ふらんす堂)帰宅後にたまたま読んだこのうたが作品と響きあった。坂口健さん (昭和48年長野県生まれ) と1年ぶりに再会し、念願の作品をわけていただきました。青手彩掻落ぐい呑(あおてさいかきおとしぐいのみ)、青手彩掻落徳利青手彩掻落ぐい呑は、今回の作陶展のDM葉書にも掲載された作家入魂の作品。二度焼きして窯変の妙を植えた作品の微妙なゆがみが、こうして並べて写真にしてみると、まるでセザンヌの静物画のように異なる視点が混在する絵になります。入魂といえば、どれからも作家の心が立ち上るのが坂口健作品ですが、昨年2月に買ったのはこちらでした。白化粧掻落ぐい呑そのときのことをブログに書いています:坂口健 作陶展 @ 日本橋高島屋6階 妖しい ぐい呑みを買った(平成23年2月28日)アイヌ紋様を思わせる、土からたちのぼる声をつなぎとめた風紋が、こちらの香炉にも。陶器にはまると茶器にはいってゆくのでしょうが ぼくなどは、もし資産家だったら香炉のほうにのめりこむでしょうね。香炉のふたを開けるのが、美女を脱がすみたいじゃないですか。白化粧掻落香炉紋様といえば、これをご覧ください。土の表面にこころおもむくままに小さな押し型で紋様を植えて、乾いたところで白土(しろつち)を塗り重ねて掻き落とすと、押し型でつくった紋様に白土がのこる。見た目は白土の紋様がごつごつ浮き出ているようですが、触らせていただくと表面はつるっとしています。東御土風紋三島鉢(とうみつちふうもんみしまばち)東御(とうみ)は、作家が築窯(ちくよう)した長野県東御市のこと。2月15~28日の会期中ずっと会場に控えてお客さまに声をかける坂口健さんのファンは多く、日本橋高島屋でじつに7回目の個展。「7回目なら、すこし遊ばせてもらってもいいかな」といって作った新境地の作品がこちら。陶形(とうぎょう)/月疾風怒濤をくぐり抜けた作家にも、昨年はとてもいいことがあったのです。9月にベビーご誕生の由、おめでとうございます。「坂口健作陶展」 は2月28日まで日本橋高島屋6階美術工藝サロンで。百貨店ですが、お手ごろな価格でいい作品と出会えます。
Feb 21, 2012
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米国出張の楽しみのひとつは、新聞が日本の元旦号みたいに毎日100ページ近くの大盛りなこと。ニューヨーク・タイムズの日曜版など、別刷りが盛大について枕のように分厚かった。昨年末と今回、ロサンゼルスに10年ぶりの米国出張だったのだけど、新聞のサイズが横幅をぐっと縮めてコンパクトになり、しかもページ数が減っていて、広告収入激減の厳しさを察した。数年後に比べてみるために、平成24年2月16日号のページ数を記録しておこう。Los Angeles Times (売価: 1ドル) 全64ページ本体 16ページLAT Extra ローカルニュース 8ページBusiness 8ページSports 10ページCalendar エンターテインメント 16ページFood 6ページThe New York Times, National Edition (売価: 2.5ドル) 全72ページカリフォルニアで印刷の全国版なので高い本体 28ページ (International が全面広告ページも入れて10ページにわたっており、さすが)Business Day 14ページThe Arts 8ページHome 10ページThursday Styles 12ページサイズが小さくなったことも考えれば、日本の新聞の朝刊+夕刊セット並みに減量してしまった。広告が相当減ったので、本文の量はさほど減っていないのかもしれないけど。
Feb 17, 2012
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大柄のウェイトレスさんたちの姿は、半世紀前のコミックスで見たかも。皿運びのひとというより、レストランを演出する女優たち。定番になっている Prime Rib Dinner をたのむと、鉄人28号の胴体のような銀色のカートが客席へ推されてきて、胴体をぱこっとひらくと巨大な骨付き胸肉のかたまりがいくつか、カリッとローストされて縦置きにしてあります。焼き加減と希望のサイズを伝えると、料理人が肉塊からローストビーフを厚切りにしてグレービーソースをかけ、マッシュポテトや付け合せ野菜とともに出してくれる。ロサンゼルスにある事業投資先の社長が「きょうは肉を食べにいきますから」というので、てっきりビーフステーキかと思っていたら、きらきらとしてやわらかなローストビーフだったのでした。Lawry’s Roasted Prime Ribs of Beefぼくが食べたのはさすがにこれより小ぶりの標準サイズ (Lawry Cut) で、焼き加減はもっとレアなところでお願いしました。Prime Rib Dinner は、この 「ローストビーフ+付け合せ (マッシュポテトなど)」 にサラダとヨークシャープディング (卵たっぷりの付け合せの焼きパン) がついてきます。Lawry Cut のセットで 39 ドルですから、良心的な価格です。写真にある大ぶりのローストビーフはたぶん Diamond Jim Brady Cut で 49 ドルのでしょう。37 ドルの English Cut なら、薄切りローストビーフ 3 枚で 37 ドルとなります。ぼくらを連れていってくれたひとは「ステーキが続くときは、これくらいがちょうどいいんです」と言いながら English Cut をたのんでいました。食べやすそうでしたね。Lawry's Original Spinning Bowl Salad昭和13年創業以来の定番 Spinning Bowl Salad とはこれいかに。巨大な銀色のボウルをさらに大きな氷水入りのボウルに浮かべて、くるくるくるっとスピンさせるのですね。ボウルのなかはレタスのざく切りでいっぱい。赤いビーツの細切りやゆで卵のみじん切り、クルトンなども載っている。半世紀前のウェイトレス姿の “女優” さんたちが、このボウルをくるくるさせながら、シェリー酒入りのドレッシングを頭上高くから たらたらりと垂らし、さくさく混ぜて出来上がりです。この写真くらいが1人分となっております。ローリーズが誇るサラダ作りの儀式は、肉切りの儀式に先立って行われ、お客たちは “女優” さんから前菜のたっぷりサラダをサーブされたあと、食べ終わったころにようやくまた “女優” さんが来て肉のサイズ・焼き加減・付け合せを聞かれるのですね。付け合せのベークト・ポテトは大ぶりのじゃがいも。ここでまた “女優” さんとのやりとりが。バターやかりかりベーコンみじん切り、青ねぎのみじん切りをかけるかと聞かれます。「ベーコンとねぎ」 と隣の御仁が言うと、“女優” さんは手早くじゃがいもを切り広げ、大きな匙に山盛りのベーコンと山盛りの青ねぎをかけ、さっさっさとじゃがいもに混ぜ込んでサーブしてくれるのであります。こちらのサイトで雰囲気が写真でご覧になれますLawry’s The Prime Rib, 100 N. La Cienega, Beverly Hills, CA 90211ダウンタウンにあるオフィスからラッシュアワーに移動するとずいぶん遠かったので、じつは「アメリカでステーキ食うのに、わざわざこんな遠出しなくてもいいんじゃないの?」という思いがあったのですが、来た甲斐ありと大いに納得させられたのでした。ぼくらを連れていってくれた皆さんに感謝をこめて、詳報させていただきました。
Feb 17, 2012
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米国の街路のなかには、ロマンティックで小粋(こいき)な名前がついた、こんな地名があるんですって:Rose Road (薔薇通り)Lovers Lane (恋人通り)Valentine Road (ヴァレンタイン通り)Darling Road (ダーリン街)Love Street (ラヴ街)さて、このなかで合計の長さがいちばん長い通りの名前はどれでしょう。(USA Today 平成24年2月14日号より)
Feb 16, 2012
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13年前の映画だが、全日空のロサンゼルス行き便で 「ガタカ」 を観た。遺伝子工学が進んで、遺伝子組替えで生まれた人間が上層階級を形づくる統制社会でもがく、宇宙飛行士志望の青年のドラマ。平成9年の米国映画だが、ソ連映画 「惑星ソラリス」 の肌触りなのは、服装やインテリア、車などのデザインをいかにも1960年代の最先端ふうにまとめたせいだろう。「プロデューサーズ」 の Uma Thurman や 「ホリデイ」 の Jude Law が助演しているのも、うれしい。宇宙開発施設内のアナウンスで flugoj al la luno (月への飛行) というエスペラントが聞き取れたので、「あれ?」 と思ってあとで調べたら、異質社会を環境表現する小道具としてまさにエスペラントを使っていたことがわかった。YouTube: エスペラントが使われている場面 Bonvenon al Gataka-Urbo. La gataka horo estas dek kvin post la sepa.(ガタカ・シティへようこそ。ガタカ時間、7時15分をお知らせします)というアナウンスが流れるシーン。YouTube 画像の前半の字幕に、Atentu la virinan vochon. La sono estas mallauta. Tiu chi peco estas la sola parto en Esperanto dum la tuta filmo.(低いですが女性の声をよく聞いてください。映画で唯一のエスペラントの部分です)とあるが、これはもちろんまちがい。YouTube のあとのコメント応酬にも、「La spacoshipo destinata al Marso aliras je la deka. (火星行き宇宙船は10時出発です) というアナウンスもあった」と書き込みがある。
Feb 13, 2012
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≪才能というのは、妙なもので、世の中が認めて初めて才能となるわけで、ピアニスト、音楽家というのもそうですし、あるいは歌手、タレントになるというのも才能かもしれない。あるいは文章を書いて、ベストセラーを書くのも才能かもしれないし、学者になって政府のいろいろな諮問機関に入るのも才能かもしれない。いろいろなスポーツにおいても才能がある。才能というのはいろいろな形であるのです。でも、そういう才能は、レピュテーションの世界なの。名声の世界、社会で持て囃されるということなの。言ってみれば社会が認める虚栄の世界なの。だから才能があって有名になるということは、すべての人間に求められるはずがありません。だって1億人全部歌手になったら、誰が聴くんですが。1億人全部が作家になって、村上春樹みたいになったら、誰が買うんですか。それはごく選ばれた才能のある人間が、自分の才能でもって社会的に有名になるということでしょう。そんなのは虚栄の世界なんです。≫ (239ページ)渡辺京二×津田塾大学・三砂ちづるゼミ 『女子学生、渡辺京二に会いに行く』 (亜紀書房、平成23年刊)引退したフツウの大学教授かと思っていたら渡辺京二さんって、自分の「好き」を突き通したひと。不器用に突き通して、客観的にみると苦労しておられるけど、さわやかに生きてきたひと。宝石のようなひとだ。この本、渡辺京二先生の語り口がつくづくいいですが、とくにさいごの50ページあまり、「無名に埋没せよ」 という語りは千鈞。冒頭に引いたのはそこから。人間が志を果たすというのはどういうことなんだろうと、最近考えるわけですね。ひとりの人生の圧倒的部分は齷齪(あくせく)の積み重ねであって、それがふつうのこと。でも幸か不幸かそれを悟れずに図体が大きくなった人間が権力を志向するんだろうね。あ、京二先生の語りのこのくだりも好きだな。≪だから一人の男にとって女とめぐり会って、その女を味わう、味わうなんて言ってごめんね、だけど、これ、味わうわけだね (笑)。自分がつきあっている女を十分味わっているかどうかが問題ですよ。≫ (247ページ)*この本の読後感想は、こちらにも書きました:蒸発したい」 (平成24年2月8日)
Feb 12, 2012
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昆 夏美(こん・なつみ)さんの無防備なオフィーリアに感動した。都会的な洗練を知らない無垢な娘。次の瞬間にひょっとしたら猿のように暴れ回るんじゃないかしらという緊迫を秘めながらも愛らしい。ハムレットの疾風のようなことばに翻弄される小舟のようなオフィーリア。気が飛んで野摘みの花々を配る姿は、土でやや汚れた白いブラウスだけ。何を求めてか、歌いながら舞台上手(かみて)の階段をおどるように上る素足がうつくしい。やがて舞台奥に身をおどらせ、暗転して逆巻く水の映像がながれる。オフィーリアでこれ以上の感動をぼくは死ぬまでに体験することができるだろうか。*ガートルード王妃は、図らずも道をはずれたが慈しみもある美しきひととして、あたたかく描いてあるように思われた。鬼婆の臭いはなくて。演じる涼風真世さんが、以前にもまして一段ときれいになられた。30代後半の女性のセクシーさを感じてしまった。これほど美しければクローディアスも欲情せずにはいられまいという納得感さえ与えてくれる。村井國夫さんのクローディアスが、ダンディ。これまた、極悪人に見えない。その意味で、身近にいそうな人物。この上演の人物像は、至極われわれに近い。井上芳雄さん演じるハムレットは、プレッシャーに負けそうになる自分と闘う青年。わかりやすい。山路和弘さんのポローニアスも、宮廷役人ぶらず、道化たおやじだ。ソン・ハさんのホレーショーは、世間ズレして多弁な男で、ハムレットに世間の流儀を説く。全2幕、1時間45分とスピーディーなロックミュージカル。阿部 裕(ゆたか)さん演じる先王の亡霊も、冒頭ではなく第1幕の中ほどで登場する。*「ハムレット」 はいろいろ見てきた。平成19年2月にシアター1010で見た安寿ミラさん主演のハムレット。平成22年6月、劇団四季自由劇場の北京人民藝術劇院中国語版公演も印象深い。平成22年8月には東劇でフランス語オペラの 「ハムレット」 MET公演を映画で見て、その換骨奪胎の構成におどろいた。しかし、シアタークリエのロックミュージカル版がいま、心のなかで明るく輝く星になった。そのまま帝劇の大舞台を務められる一流のキャストを、小劇場のシアタークリエの5列目で観たのはじつに贅沢だった。お礼に、スタンディング・オヴェーションはぼくがリードさせていただいた。(東京・シアタークリエで2月22日まで。そのあと2月25~28日が梅田藝術劇場シアター・ドラマシティ、3月3~4日が名古屋・中日劇場。)
Feb 9, 2012
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≪男の親で、家族を捨てて蒸発したいと思ったことがないやつは一人もおりません。僕の亡くなった嫁さんのお父さんというのは非常に立派な人で、夫婦仲もよろしかった。お義父さんは当時の日本人としてはスマートな、非常に理解のよろしい立派な人でした。うちの嫁さんには自分の親父が第一の恋人だったんじゃないかなあと思って、私は嫉妬しておりました。そんな人でも、すべて捨てて一人になってどっかに行きたいと思うことがあった。うちの嫁さんがある日お父さんの日記かなんかを読んだら、そう書いてあったと、これはショックだった、と言っていました。≫ (41~42ページ)渡辺京二×津田塾大学・三砂ちづるゼミ 『女子学生、渡辺京二に会いに行く』 (亜紀書房、平成23年刊)御年80歳の碩学歴史家・渡辺京二さんの語りを読んでいるところですが、冒頭に引いたところでグッときた。ぼくも 「水戸あたりに一晩消えよう」 と思ってカバンを引っさげて家を出たことがあった。あのときは、うちの彼女が自転車に乗って猛然と追いかけてきた。仕方なく家に帰ったら、いつもそっけない長女が涙をぼろぼろ出して 「行かないで」 と泣いた。フーゾクの時間も、家出みたいなもんだな。*この本の読後感想は、こちらにも書きました:渡辺京二先生の媚びるところのない小気味よさ 才能って? 男女って? (平成24年2月12日)
Feb 8, 2012
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勤務先でOB会の立食パーティーがあって、20年前の上司に会った。親しみをこめて 「悪代官」 の異名もあったが、本質をすばやく見抜く有能なひとだった。十数年ぶりにお会いし挨拶をしたら、中国商売の懐古談となり、こんなアドバイスをくれた。「お前の性格はね、いろんなことをいっぺんにワァーっと言い過ぎるんだよ。そうすると相手が引いちゃうだろ。そうじゃなくて、さいしょはゆっくりなごませて、相手の気持ちがこっちに向いて開いたところで、言いたいことをズバッと言うと伝わるんだよ。……と言ってみても、まぁ、人間は変わらないよな、ハハハ」「いろんなことをいっぺんに言おうとしすぎる」 というのは、やはり十数年前に別のひとからも言われた覚えがある。たぶんそういう短所を直そうとしてか、いまはぼくの話し方も少し変わって、「いろいろありますけど、短く言えばコレコレしかじかですねぇ」と、言いたいことをワンフレーズで言おうとすることが多い。ひとは十の話を聞いても脳に残るのはせいぜい二つか三つ。それなら最初から二つか三つ話して終りにすればいい。ところが、これをまた前口上なしにズバッと言うものだから、必要以上に辛辣に聞こえる。若いころは、自分の言うことにいろいろと条件や注釈や背景説明を付け加えて、自分を守ろうとしたのだと思う。いまは、人間がふてぶてしくなって、「これが分からなきゃ、あんた、バカだよ」と、腹のなかで達観しながら喋っているから話が短くはなったが、話相手の心を開く必要をもっと意識したほうがいいのだろう。
Feb 6, 2012
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兎年のうちにとりあげようと思いながら果たせなかった、中国の社会批判アニメをご紹介します。 中国・山西省生まれ、40歳。 北京でアニメプロダクションを経営する皮三(ひ・さん)さんが昨年1月につくった4分弱のアニメ。 題して“新年賀ka 小兎匡匡” 「年賀カード 小ウサギ匡匡(きょうきょう)」 (“匡” は正しくは 「口へん」 が付く)。 まずはとにかくご覧ください:(中国語だけのもの)http://www.youtube.com/embed/GSt50M73XEw(アニメ上の中国語表示を英訳してあるもの)http://www.youtube.com/embed/uQIn6DRxy0Q かなりドぎつくナマナマしい描きかたで、風刺がテンコ盛りとなっております。■ 中国人の 0.2%が見た…? ■ もちろん、いまの中国でフツウの人たちがこの YouTube 画像を見ることはできません。 作者の皮三さんは、この思い切ったアニメをインターネットに流す前、さすがに気が落ち着かず、占い師に運勢をみてもらった由。 (平成23年10月26日、ニューヨーク・タイムズ・マガジンの Brook Larmer 記者の記事より) 決行の日、夜中にいくつかの小規模のウェブサイトにアップし、2時間で7万のアクセスがあった。 次から次へとインターネット上で転載されたものの、2日後に当局が削除を徹底化。 皮三さんの推定では、削除されるまでに3百万~4百万人が見たはずと。 まぁ、中国の人口の 0.2% に過ぎません。一夜の夢。 皮三さんは、こんな人です:「百度百科」 サイト・顔写真つき■ 風刺の詰め合わせセット ■ 兎は虐げられた人民、虎は調和社会の建設を標榜する共産党幹部ら。 「寅年よ去れ、世は兎年だ」 の年賀アニメは、≪兎もカッとなれば人をだって咬(か)むさ!≫という警句で終わります。 アニメで風刺された社会問題を列挙すると:(1) メラミン混入粉ミルク事件 (平成20年、河北省・三鹿乳業などが起した。被害者は推定30万人)アニメのなかでは “三鹿” が “三虎” 印のミルクになっています。それにしても、赤ん坊の死にざまが強烈!(2) 新疆カラマイの火災事件 (平成6年、式典中の火事で地元役人が先に逃げ、出口のシャッターを閉ざしたため小・中学生ら325名が死亡)現場で当局側が式典参加者に対して吐いた “別動! 譲領導先走!” 「動くな! お役人が先だ!」 が、アニメのセリフにもなっています。(3) 都市再開発のための民家取り壊し“拆”(とりこわし)の字が3つ揃うとチンジャラとコインが出るスロットマシンが役人の蓄財を風刺しています。(4) 河北大学キャンパスで起きたひき逃げ死亡事故 (平成22年、犯人が逮捕されるとき 「俺のおやじは李剛だぞ」 と公安分局副局長の親の名を叫んだ事件。これは非難を浴び、犯人には懲役6年の判決が下されました)アニメでは、“李剛”が“虎剛”に変えてあります。(5) 土地の不正収用に抗議した銭雲会さんが、交通事故に見せかけて殺された事件 (平成22年、浙江省で起きた。こちらのブログ に凄惨な写真が載っています。)(6) 民衆の反乱いわゆる 「抗議行動」 ですが、なかなか壮絶に描かれています。■ 新たな論点は何もない ■ アニメの内容をあらためて見れば、中国で社会問題化した話題の要約版にすぎず、チベット独立や共産党解体・民主化などを訴えたわけではない。思い切った新論点を提起したわけではない。 アニメに描かれたものは、中国人にとって既知情報にすぎない。 皮三さんが去年はじめ、当局に逮捕されずに済んだのは、その辺が理由でしょう。 その後、言論規制は厳しさを増しているから、いま同じことをして皮三さんが同じく無事でいられるかどうかは分かりませんね。 「民衆の反乱を煽っている」とイチャモンをつける余地は大いにあるわけで。* 皮三さんのアニメを取り上げたことで、ネット世論による中国民主化への期待を語ろうとしたと誤解されぬよう、1冊の本をご紹介しておきましょう。 安田峰俊(みねとし)著『中国・電脳大国の嘘 ― 「ネット世論」に騙されてはいけない』 (文藝春秋、平成23年刊) 帯にいわく≪中国に幻想を抱くな!「ミニブログが民主化実現」「5億人のネット世論が中国を変える」……そんなの全部 「嘘八百」 !? ≫
Feb 5, 2012
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あす2月4日午後、わたしの応援する大阪在住の “歴史講談師” 黒田裕樹(ひろき)さんが、東京・浅草で歴史講談をします。 わたしも、イベント後の飲み会まで参加しますので、ご興味のあるかたはぜひどうぞ。 講談は題して 「開拓者の悲劇 ~ 真説・平家物語」。 黒田講師によれば、≪あれだけの権勢を誇った平家が、なぜあっけなく滅び去ってしまったのでしょうか?その背景には、平家物語の世界だけでは語りつくすことのできない、武士政権の 「開拓者」 ゆえの 「悲劇」 があったのです――。平家にまつわる数々の逸話や真実について研究することによって、私たちは大きな歴史の流れをつかむと同時に、人生の幅をも広げることが可能になるのです。≫ 第28回黒田裕樹の歴史講座「開拓者の悲劇 ~真説・平家物語」 平成24年2月4日(土) 午後3時30分から スター貸会議室 浅草 (井門浅草ビル5階) 会費は無料 (カンパ歓迎)。イベントのあとは、近辺の居酒屋で飲み会です。
Feb 3, 2012
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