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きのう発売の 『週刊文春』 10月4日号の中国特集に、わたしのコメントが載っている。ちなみに29ページの2~3段目。立ち読みではなく、ぜひ買ってお読みください。……いちおう、関係箇所をご紹介しますと……≪大手総合商社に勤務し、中国駐在経験がある泉幸男氏はこう語る。「わたしは 『中国商売はつねに1回ぽっきりだと思え』 と20年間言い続けてきました。政治が親日であろうが反日であろうが、一般大衆が直接目にする最終製品や販売店網は短期間のうちに中国企業にとって代わられるだろうという割り切りも必要です。長期的に見た日本の強みは、製品内部の基幹部材や特殊素材など、中国企業が国産できないものの輸出に限定されると思います。日本はそこさえ押さえておけばいいのではないでしょうか。逆にいえば、地場企業が強くない東南アジアのような市場こそ、中国と違って日本が長く根づくことのできる共存共栄の市場と言えるでしょう」≫コメントでは、けっして「中国商売はつねに1回ぽっきりだ」とは言っていない。そんなことを言ったら、ウソになる。「つねに1回ぽっきりだと思え」の最後の3文字を、週刊文春もよく残してくれた。*週刊文春のライターさんの取材をうけたのは9月22日、土曜日の午後。新宿の椿屋珈琲店にて。文藝春秋にお勤めの旧知の編集者が週刊文春に異動してデスクになっていて、わたしをライターに紹介したもの。2時間くらい話したのだが、参考までにとメールで送られた文案を見て、取材を受けたことを深く後悔した。一瞬、ちからが抜けた。そして、凡庸な まとめ方に激怒した。ちなみにこんな文案であった。≪大手総合商社に勤務し、中国駐在経験がある泉幸男氏はこう語る。「もう中国ありきの投資はやめて、東南アジアなどに分散投資していくべきです。中国人は、投資を呼びかける時は 『ウィンウィンでやりましょう』 と調子いい言葉ばかりを並べる。しかし、いざ進出してみると、当局の規制がうるさかったり、ライバルとなる国営企業がすぐに成長してきたりと上手く立ち行かなり撤退するケースも多いのです。結局、残った合弁企業を通して、日本の技術が中国に移転させられてしまう。そんな現状も知らずに経営者たちは、『十三億人の市場』 という言葉に囚われ、今回のような暴動のリスクを考慮せず、対中投資を推し進めてきたのです」≫勘弁してくれよ、まったく。「東南アジアに分散投資」 なんて、とっくの昔からやってるじゃないか。俺がお勧め申し上げるようなことじゃない。「調子いい言葉ばかり並べる」 も、ひどいなぁ。そういう単純化が、俺はいちばん嫌いなんだよ。バカでも寝言で言えるような凡庸なコメントを、俺の名前で週刊文春に出す気か。今さら降りると言ったら、これまでたいへんお世話になった編集者に迷惑がかかるので、文案を2つ提示した。案1:≪東南アジア諸国とちがい中国は、あらゆる最終製品の製造やビジネスモデルを自国企業完結型でそろえる実力をもった国です。政治が親日であろうが反日であろうが、一般大衆が直接目にする製品や販売店網は短期間のうちに中国企業にとって代わられるだろうという割り切りも必要です。わたしは『中国商売はつねに1回ぽっきりだと思え』と20年間言い続けてきました。長期的に見た日本の強みは、製品内部の基幹部材や特殊素材など、中国企業が国産できないものの輸出に限定されると思います。それでいいのではないでしょうか。逆にいえば、地場企業が強くない東南アジアのような市場こそ、日本が長く根付くことのできる共存共栄の市場と言えるでしょう≫これが採用された。週刊文春誌上では、「わたしは『中国商売はつねに1回ぽっきりだと思え』と20年間言い続けてきました」 を最初にもってきていて、この辺の編集の腕は、さすが。ちなみに、案2:≪カリフォルニア州に進出したからといって、『米国・カナダ・メキシコ市場にくさびを打った』 などと言い出せばバカにされるでしょう。等身大でものを考えますよね。ところが、中国となると尺度が狂い、上海に進出しただけで 『中国13億人の市場にくさびを打った』 などと言ってしまうわけです。実際の中国は、政治や軍事が一枚岩でも、経済市場は省や大都市圏ごとにバラバラです。『中国市場』 と言わず、『上海市場』 『遼寧省市場』 のように等身大でものを考えていけば、より的確な判断ができると思います≫
Sep 28, 2012
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高校生のころ、学校で教わるが実際には使われない英語の典型として “lest xxxx should yyyy” という表現がよく槍玉にあがっていた。日本の、文法中心の英語教育への批判として。念のため書いておくと、“lest xxxx should yyyy” は 「xxxx が yyyy しないように」 という意味だ。たしかに会話で使うような表現でないことは確か。会話なら、 “so that xxxx may not yyyy” とか、あるいは発想を変えて “to prevent xxxx (from) yyyying” といった言い方をするだろう。少なくともぼくは。だからといって “lest xxxx should yyyy” を知らなくてよいかというと、そんなことはない。人間の傾向として、名詞・形容詞・動詞はまめに辞書を引こうとするし、辞書を引くことへの抵抗も少ない。日本語だって、知らない名詞や形容詞は、字引を引いて (いまなら 「ネットで調べて」?) 意味を確かめようとするだろう。しかし lest のような機能語 (lest は接続詞) を辞書で調べるのは面倒くさく感じられる。そしていい加減に読み流す……と、とんでもないことになる。接続詞の lest には 「~しないように」 という否定の意味が、地雷のように潜んでいるからね。実際に使われることが少ない接続詞でも、いざこれが出てきたときは極めて要注意なのである。だから、高校生たちの頭の隅っこに “lest xxxx should yyyy” を刻んでおくのは、意味がある。*と、突然に “lest xxxx should yyyy” のことを書いたのは、9月25日付のウォールストリートジャーナル紙の社説(Review & Outlook) で、この構文が2度も使われていたからだ。反日を煽っておいて、高まりすぎると抑えにかかる中国政府のやり口を評して、This dual approach typifies Beijing’s attitude. The Communist Party benefits from keeping anti-Japanese feeling simmering, since it derives its historic legitimacy from (supposedly) driving out the Japanese invaders and restoring China to its proper place in the world. But anger against Japan must also be kept within bounds, lest protesters blame China’s leaders for not being more assertive with Tokyo.(こういう、あちらと思えばこちらというアプローチは、中国政府の典型的なやりかただ。共産党としては、反日感情がふつふつと煮えたぎるほうが都合がいい。共産党の歴史的正当性は、日本の侵略者を追い出し(と一般には言われているが)、中国を世界におけるしかるべき位置に復帰させたことにあるとされるから。しかし日本への怒りが度を過ぎることがあってもいけない。反日抗議の声が、中国の指導部は日本に対して腰がひけている、などと批判をしないように。)もう1箇所は、社説の最後のところ。中国の体制側が自国中心主義に安易に身をまかせぬよう、米国はきっぱりとした対応が必要だ、というもの。So far China has not sought to overturn the international status quo as the Soviet Union did, but a rising, undemocratic power has often destabilized the world order, especially when nationalism is in the saddle. The U.S. needs to take a firm line against Chinese aggression toward its neighbors, lest Beijing’s rulers think they can indulge their nationalist furies without cost.(これまでのところ中国は、ソ連がおこなったような国際秩序の破壊というところまで踏み込んではいない。しかし、非民主的勢力が力をつけると、国際秩序を不安定化させることが多い。米国は、近隣諸国への中国の侵略に対してきっぱりとした対応をすべきだ。自国中心主義に安易に身をまかせるわけにはいかぬと中国政府に思い知らさせる必要がある。)以上ふたつの用例は、米国式に 「should なし」 表現になっている。より正確にいえば、動詞のかたちは 「仮定法現在」。つまり、たとえ主語が三人称単数でも、いわゆる三単現の –s が付かず、動詞の原形が使われる。
Sep 27, 2012
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わたしのイメージしてきた中国。■ 暴動予報の時間 ■ たまたま反日暴動だから日本で報道されるが、もともと年に10万件の暴動発生が推定される中国だ。 高気圧や低気圧の配置や、ゲリラ豪雨の発生を、朝晩の天気予報で解説するように、「さて、きょうは浙江省南部から暴動が北上しています。山東省済南市や天津市でも暴動注意報が出されていますので、十分ご注意ください。そのほかご覧の赤い点々の地域が要注意です。それでは、道路情報です。鈴木さん、おねがいします…」 そんな 「中国暴動予報が淡々と毎朝テレビで報じられる」 日が来ても驚くまいと心に決めていた。■ 昆虫の群れ ■ 平成元年の天安門事件のとき北京にいて、6月7日か8日の夜の日航機で東京に一時帰国したわたしたち夫婦だ。 「あのときより怖いわね」 と、テレビを見ながら家内が言った。 あのときは矛先が日本ではなかったから (そして報道も制限されていたから)、北京にいても怖さというのを感じなかった。 帰国便に乗ってから、だいじなものや思い出の品など何も携えなかったことに、はっと気がついたくらい緊張感がなかった。 つねづね、中国反日が報じられても、「あれは反日デモの盛り上がってるところだけ映してるから。じっさいはみんな、たらっとしてるんです」と言ってきたわたしだけど、今回の反日暴動同時多発は正直、23年前よりもずっと怖いと思った。 人間というより、巨大な昆虫の群れを前にしているような。あの、たらっとした 「人間」 たちの世界ではなくなっている。■ 1度ぽっきり ■ このあいだ、北京に赴任するひとのための歓送会があった。そこでぼくが挨拶して言ったのが・中国でやるプロジェクトは、つねに1度ぽっきりだと思うべし。 「同じような案件が10件20件と出てくるから、最初から儲けなくてもいい」 などと考えないこと! 初号案件をいかに赤字でとっても、中国人は 「外国人は儲けている」 と考える。そして2号案件からは中国人だけでやる。・投資をするなら、少なくとも元本だけでも5年以内に回収すること。・投資額は、全部スッてもあきらめがつく範囲に限ること。■ 大衆と面で接するな ■ 挨拶の時間がもう少し長ければ、こんなことも言いたかった。・中国に出ていくとしても、大衆と面で接する投資は避けたほうがいい。裏方に徹するべきだ。・いま日本にいる我々が周囲を見渡しても、中国資本や韓国資本がぎらぎらしている姿はない。 中国人がイメージする 「あるべき中国」 も、そういうものだ。 中国の一般大衆の前で日本がぎらぎらするものは、どうせ長続きしない。 だから、大衆と面で接する投資はとくに、短期間で収益を回収しなければならない。・日本の中国貿易で長続きするのは、中国大衆の目に見えない基幹部材や特殊素材の輸出だけだと割り切るべきだ。 他のことをやるなと言うわけではないが、「しょせんは短期の商売だ」 という割り切りが必要。■ 余裕、ですかね ■ こういうことを言っているからか勤務先では、周囲のだれよりも中国通でありながら、中国駐在のはなしはおろか、中国ビジネスについての相談に加えられることもない。 だから、わたしの意見は勤務先の見解とは異なる、のであろう。勤務先にそれだけ余裕があるわけで、結構なことである。 べつにすねているわけではなく、もっと有望な長期的市場を担当しているのでご安心ください。
Sep 19, 2012
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自民党の総裁選。 知能指数が図抜けて高いのは、石破 茂さんだろう。 ところがこのひと、歴史問題や靖国神社になると、賢いというより、小賢(こざか)しく立ち回ってしまうのが難である。 やはり防衛大臣の器だ。 その器量を大いに発揮して、わが国に貢献していただきたいという激励のつもりで言っている。 安倍晋三さんは、前回の安倍内閣の働きが素晴らしかった。 短い期間だったがリーダーシップがあり、安倍内閣は3年分くらいの仕事をした。 しかし、消費税引き上げについての否定的見解や、教養の低い橋下 徹 氏へのすり寄りなど、最近の 「媚び」 の姿勢はいただけない。 論旨でも 「本流」 に戻り、政界の本流として復帰いただくことを願っている。
Sep 18, 2012
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