建設業界でもDX、ICT、AI、という言葉が踊りだした。新技術などの開発で生産性を向上させようという取り組みである。国土交通省は2020年度から直轄土木工事での新技術活用を原則義務化する動きをとったようだ。
詳細は承知していないが、無謀の一言だ。というのは、この施策ができない、ということではない。地方が追いつかない、ということだ。国土交通省の工事であるため、一定の体力がある企業が対象となるため、地方の小さい建設業者の多くは取り急ぎ対象とならないのが救いかもしれないが。
大手ゼネコンなどもこうした流れに歩調を合わせる。ICT化や働き方改革・生産性向上などが求められる中で、研究開発を強化、新技術開発に注力しているようだ。繰り返しになるが、気がかりなのは、中小建設業がこうした動向から取り残されていないかという点だ。
外部から提供される新技術を受け身で活用するだけでは、競合他社との差別化はできず、大手との生産性の格差は拡大するばかりだ。とはいえ、数十億円〜数百億円規模の研究開発費を毎年投じることができる大手とは異なり、中小建設業が新技術を単独で開発し、現場に実装するハードルは高い。そして、その意識は逆に低い。
いつもこういう施策、方針、取り組みは、大手ゼネコンを前提に考えられているように感じるのは、私だけだろうか。
地方の建設業といえば、中小が当たり前。一人親方という建設業ならではの言葉があるように地方と東京では誰の目にも明らか過ぎるほど、違う。すべてが。
また、課題に対し、解決を行うのは、異業種企業だ。建設業界のスタッフではない。無論、資金を捻出するのは建設業者だが。政府はオープンイノベーションを中小企業支援の柱の一つと位置付け、関連する施策を展開しているが、この施策も同様である。一部の大手ゼネコンで取り組みが進んでいるものの、中小建設業が経営戦略の中核にオープンイノベーションを据えた例は、ほぼない。というか、 その気が無い、資金がない、頭に無い、というのが現実だ。
人工知能(AI)や仮想現実(VR)、ドローンなど、急速に一般化しているが、いかに投資し、自社のスタッフが課題解決に生かせるように確立させるか、を考えなければならない。
誰かがやってくれる、うちには関係ない、ここは田舎だから
という意識と体質が根強く、現業をやっていれば仕事をしている気になってしまっている企業、スタッフが常なのだ。無論、それは地方に限った話しでも建設業に限った話しでもない。どこの企業においても言えることだ。言われたとおり仕事をしていれば、首にならない、昇進する、給料が上がる、といった具合に。
これは、日本の高度経済成長から年功序列、終身雇用、と言った雇用体系・企業としてのあり方自体の問題かもしれないが、そういうスタッフが山のようにいるのだ。しかも30台前半から40代前半という比較的若い人というか第一線の人たちに多い。
地域に密着し、気候や地理条件にも詳しい地域の中小建設業は、イノベーションに最も必要な現場のニーズを把握していると言える。しかし、そのような変革の知恵、体験、能力、実績、意識がないのだ。また、意志決定に比較的時間のかかるのは大手ゼネコン、と少し前まで言われてきたが、2020年、それは違う。大手ゼネコンのほうが意思決定が早いのだ。そして、その傾向は建設業に限らない。中小の製造業やITベンチャーも同様だ。
スピード感
この市場の動向、スピード感を見誤っている人たちも多いのだ。新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向け、遠隔臨場やロボット活用などの三密対策が注目を集めている。今後も建設現場は社会・経済状況の変化に応じてめまぐるしく変わっていくだろう。だが、ここでもやはりというべきか、「国はなにも対策案をだしてくれない」「具体的対策方法を示してくれない」「どうしたら良いのか」と他力本願。
法律や制度、ルール、方針を決めるのは国や地方自治体だが、なんでもかんでも役所に依存する体質から中小建設業は抜けきれないのだ。この根源は、やはり「公共工事の入札制度」にあると思う。一般の人はあまり知らないかもしれないがs、公共工事は、入札によって落札者が決まる。つまり、工事会社が決まるのだ。
落札したら、数千万円から数億の仕事が入る。また、落札できなくても、落札者から下請けと言う形で受注する形で利率は下がるが、仕事は得られる。これが建設業界の昔からのからくりだ。そのため、落札業者と下請け業者間の接待を中心とした人脈は欠かせず、「人脈業界」と言われるほど下請け先や孫受け先までがお決まり業者への発注パターンになっている。
少しでも利率を上げようと、一人親方と言うように個人で工事をした受ける人たちも増加中だ。
そのような状況でイノベーションが起こるだろうか?国土交通省は、まず業界再編を図るほどの大鉈を振るう必要があるのではないか。業界の体質を変えないと、格差は広がり、温度差が広がり、建設業者でさえ、建設業界内で起こっていることについていけない状態となる。
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2020年09月07日
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