シリアの化学兵器使用疑惑をめぐり、西側諸国が軍事行動に踏み切る用意を整えている。
米国と同盟国は27日、シリアの反体制派に対し、数日以内に政府軍への攻撃を行う可能性があると通告したことが、関係筋の話から明らかになった。
米政府は米軍の「用意は整っている」としつつも、ホワイトハウスはオバマ大統領が引き続き軍事行動の他にもあらゆる選択肢を検討しており、シリアの「政権交代」は目指していないと伝えている。
米国の同盟国である英国のキャメロン首相は、いかなる攻撃も化学兵器使用の報復に「特定」し、シリアの内戦に引きずり込まれべきではないと言明した。同首相はまた、シリアへの対応を討議するため、29日に議会を召集すること決定した。
ダマスカス郊外で化学兵器による攻撃があったかどうかを検証している国連調査団による2日目の調査は28日に延期された。反体制派の間で、安全対策について意見の相違があったためという。
21日未明にダマスカス郊外で発生した攻撃では化学兵器が使用され、数百人が死亡したとみられている。
国連調査団による検証結果は、米欧の軍事介入を正当化する可能性があるものの、西側諸国およびアラブ連盟はアサド政権が化学兵器攻撃に関与したとほぼ断言し、責任追及に乗り出す構えを鮮明にしている。
シリア反体制派のシリア国民連合のジャルバ議長はイスタンブールで、「シリアの友人」の中核国11カ国を構成する米英仏独伊、トルコ、サウジアラビア、エジプト、ヨルダン、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールの代表と会合した。
同会合に出席した関係筋は「アサド政権による一段の化学兵器使用を阻止するために、数日中にも行動が取られる可能性があることが、反体制派に明確な形で伝えられた」と語った。また「ジュネーブでの和平協議に向けた準備を続けるべきだとも伝達された」と述べた。
軍事行動は、空爆が検討されているもよう。
ヘーゲル米国防長官は「オバマ大統領がいかなる選択肢を選ぼうと対応できるよう、すでに配備を整えている」とし、「われわれには用意ができている」と述べた。
国連安全保障理事会の制裁決議案採択では、ロシアと中国が拒否権を行使することが必至とみられている。
シリアの友好国ロシアは軍事介入に反対。また、反体制派が化学兵器を使用した可能性があるとの見方を示している。
中国の新華社は、シリアへの武力行使は危険で無責任な行為だという見解を示し、イラク戦争は大量破壊兵器をイラクが保有しているという米国の主張で始まったが、この主張が正しくなかったことを世界は思い出す必要があると指摘した。
そうした中、ホワイトハウスのカーニー報道官は「検討されている選択肢は、政権交代に向けたものではない」と強調。「化学兵器の使用を禁じる国際基準の明らかな違反に対応するためのものだ」と説明した。
キャメロン英首相はも記者団に対し、「これは中東紛争への関与や、シリアに対する英国のスタンスの変更などに関することではなく、化学兵器に関することだ」と言明。「化学兵器は使用するべきでない。世界全体がその使用を看過することがあってならない」と述べた。
フランスのオランド大統領も、シリアでの化学兵器使用に対し罰する用意があると表明。シリア反体制派に対する軍事支援を強化する意向を示した。
一方、アラブ連盟による西側諸国への支持は、軍事介入論に弾みをつけるとみられる。
アラブ連盟はエジプトのカイロで緊急会合を開き、アサド政権が化学兵器による攻撃に関与したとする声明を採択、国連安保理に対しシリアに対する決議を採択するよう要請した。
サウジアラビアのサウド外相は「真剣かつ断固とした態度」を示すよう国際社会に求めた。
シリアのムアレム外相は、西側諸国の攻撃は武装組織アルカイダを手助けすることになりかねないとし、欧米に軍事介入をけん制。シリアが自国を防衛する手段を有するとも言明し、「必要であれば、自国を防衛する。いかなる手段を行使することも辞さない」と語った。
中東情勢をめぐる緊張の高まりは金融市場を揺るがし、原油価格は半年ぶり高値をつけ、株価は世界的に下落した。
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