4月3日から福島第一原発2号機の格納容器の温度が約20℃から70℃へ急上昇し、2日後には88℃に達した。
それと連動するように、原発周辺の「放射線モニタリングポスト」が軒並み高い線量を記録。復旧したての
常磐自動車道・南相馬鹿島SA(サービスエリア)で通常の1000倍にあたる毎時55μSv(マイクロシーベルト)を
最大に市街地各所で数十倍の上昇が見られた
これは一体、何を意味するのか? 考えられるのは、原発内の核燃デブリ(ゴミ)が従来の注水冷却工程に対して異なった
反応を示す状態に変化した可能性。例えば、デブリが格納容器下のコンクリートを突き抜けて地盤まで到達(メルトアウト)し、地下水と接触するなどだ。
福島第一原発1〜3号機では、巨大地震直後に圧力容器内の核燃料がメルトダウンし格納容器の下部へたまった。
それは昨年4月から7月にかけて名古屋大学が2号機で実施した、宇宙線から生じる物質貫通力が強い「ミュー粒子」を利用した透視撮影で明らかになった。
さらに、同じく1号機格納容器内の底から約2m上の作業スペースで行なったロボット調査でも、
数千℃の超高温デブリが圧力容器を溶かして落下した痕跡が撮影された。だが、デブリの正確な位置は特定されていないし、
ミュー粒子画像に映った格納容器の底は平坦に見えた。
となると、100t超といわれる大量のデブリ塊はどこへ行ったのか? 半球状の格納容器底部の内側は
厚さ約3mのコンクリートを敷いて平らになっているが、そのうち深さ70?pほどが事故の初期段階で高熱デブリによって
溶解した可能性があると、東電はこれまで発表してきた。
この推測について、元・東芝の研究員で原子炉格納容器の強度設計を手がけた後藤政志氏(工学博士)に意見を聞くと、
「今回のミュー粒子による撮影でわかったのは、格納容器が間違いなく壊されたことで、これは2、3号機にも当てはまると思います。
しかし、ほぼ地面と同じ高さに感光板を置いた撮影なので、核燃料が実際今どこにあるのかの判断材料にはなりません。
東電の言う70?pという数字の根拠はよくわからない。コンクリートや建材の金属と核燃料が混ざり合った状態のデブリは、
もっと下まで潜り込んでいるとも考えられます。
ただし、ほかの物質が混じって時間がたっているのでデブリの放熱量は減り、容器の底の鋼板(厚さ20?p厚)までは達していないはずです。
仮に鋼板が溶けても、下には5、6mのコンクリート層があるため、その内部で冷却バランスを保って止まっていると思います」
もしも核燃デブリが格納容器を突き破れば、メルトダウンから先の「メルトアウト」に進んでいくわけだが、
実は先日、調査途中で止まったロボット装置について記者会見に臨んだ東電の広報担当者は、意味深長な感想を述べた。
格納容器内では10Sv(1000万μSv)のすさまじい高線量が計測されたが、それでも予想していた10分の1ほどだったと言ったのだ。
その意味するところは、デブリが金属格子の作業用足場から見えるような位置ではなく、ずっと深くまで沈んでいるということではないのか。
また最近、東電の廃炉部門責任者がNHK海外向け番組で「2020年までに核燃デブリの取り出しに着手する」という
作業目標について「困難」とコメントしたが、これも状況が非常に悪いことを示唆しているのかもしれない。
「メルトアウト」または「チャイナ・シンドローム」とは、核燃デブリが原発施設最下層のコンクリートすら蒸発させ、
地中へ抜け落ちていく状態で、それが現実化するかどうかは後藤政志博士が語ったデブリの温度次第だ。
1〜3号機内では4年後の今も各100tのデブリが4000〜5000℃の高温を発し、メルトアウトの危険性が高いと説く海外研究者もいる。
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