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2016年05月05日

ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」  荒木香織


の写真が表紙にドドンと載せられた、インパクトのある表紙。

しかしながら、五郎丸さんの本ではなく、五郎丸さんをはじめ、 ラグビー日本代表を「メンタルコーチ」としてサポートしたさんの本です。

ルーティンのことは”五郎丸ポーズ”で一躍注目を浴びましたが、それが実際にはどういうものなのか、どういう効果があるのか、ちゃんとした解説はあまりされていなかったように思います。

前々から興味はありましたが、「何かブームに乗らされている感」がどうしても自分の中で拭えなくて、これまでは読んでいませんでした。
でも、ある程度時間が過ぎ、ラグビーブームも落ち着いてきた中で、改めて「読んでみたいな」と静かな気持ちが湧き上がってきたことから、買うことにしました。

どんな本だった?


とても面白い本でした。

荒木さんはスポーツ心理学を専門に研究し、アメリカで博士号を取った人です。
また、ご自身も陸上でインターハイや国体に出場した優秀なアスリートとのこと。
自分自身のアスリートとしての経験をベースに、ラグビー日本代表のワールドカップでのエピソードを交えることで、スポーツ心理学をとても分かりやすく説明しているなと感じました。

スポーツ心理学を8年間学んだ後、かつてのアスリートとしての自分を振り返った荒木さんは、こう分かったそうです。

かつての私に必要だったものは、強い気持ちを持つことではなく(もちろん、それも絶対に必要ですが)、「心の準備」だったということ。


私はこの1フレーズに”スポーツ心理学”というものの考え方が凝縮されていると感じました。

世間一般には(私も含めて)、どちらかというと「強い気持ちを持つこと」が必要なことだと強く考えられていると思います。
そんな中、これは新しい考え方であり、目から鱗的な説得力のある表現だなと。

この本には、 この「心の準備」を具体的にどうやっていくかということが詳しく紹介されています。

読むことで得られるもの


ラグビー日本代表の多くのエピソードに触れながら、荒木さんが学んだスポーツ心理学のエッセンスを知ることができます。

荒木香織さんのことは、去年の年末にテレビ 「日本くぎづけ大学」で知っていました。
この番組は、ルーティンに関するエピソードや、ラグビー代表の選手たちが荒木さんのサポートで助けられた事などを紹介するなど、 「メンタルコーチ」という荒木さんの存在に焦点を充てたもので、大変面白かったです。

(その感想はこちら。記事 「日本くぎづけ大学に考える”言葉の力”」

この本ではさらに詳しく、具体的に、スポーツ心理学のエッセンスを紹介しています。

印象に残ったのは「第三章 目標を達成するためのメンタルスキル」の内容です。

スポーツをするにあたり、

・結果に関する目標

を立てることは普通にあることですが、荒木さんはこれに加えて


・過程に関する目標


を立てることが重要だと説明していました。

この2つの目標には、
・自分でコントロールできる内容が多いこと。
・自分自身の成長度合いや必要なスキルを確認できること。
・パフォーマンスを向上させるために考える力がつく。
・意欲を持ち続けることや集中することにつながる。
というような性格・効果があり、 この3つの目標を常にセットで考えることで、結果を出せる行動につながるそうです。

なるほどなあ、と思いました。
結果だけの目標を立てていても、強い相手が多くいれば結果を残すことは難しいし、そうなると「何のためにこれをやっているんだ・・・」とモチベーションが下がるということは容易に想像できますし、自分自身にも思い当たるところがあります。
目標を細分化することで、最終的な結果に至るための過程を考えていくことができるし、一つ一つの目標を達成するたびに「これが出来た」という喜びを感じることができそうです。

また、 駄目な例 として「精一杯がんばります」「一生懸命取り組みます」が挙げられており、ガツンと来ました。
普段何気なく言っているなあ、、、
反省することしきりでした。

どんな人にオススメできる?


ラグビー日本代表に興味がある人をはじめ、スポーツに関わる人にはぜひ読んで欲しいなあと思います。
また、それ以外の人にとっても、スポーツ心理学によって解説されるメンタルについての考え方は、とても参考になります。そもそもスポーツ心理学と言っても、「スポーツ」という一瞬の勝負の場面で結果を出すための学問かもしれませんが、多くの一般人にとっても基本的な理論は共通して適用されるはずです。

また、本書の最後にスポーツ指導においてメンタルの専門家がサポートすることの重要性を説いていました。
「スポーツ指導についての専門知識を持たないままスポーツを指導している」という趣旨の指摘には大いに納得できるところがありました。

スポーツ選手として結果を出したことと、指導者として適切な指導が出来るかどうかは別の話であり、それぞれに必要な専門知識があるということなんですね。

この認識が広がっていくことでスポーツについての見方が大きく変わっていくかもしれないという可能性を感じました。
posted by 霧島もとみ at 2016年05月05日 | Comment(0) | TrackBack(1) | 本:実用書
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霧島もとみ
他人との距離感をいつも遠く感じながら生きてきました。高校の体育祭のフィナーレでは、肩を抱き合って大はしゃぎする光景に「何でこんなに盛り上がれるんだろう・・・?」と全く共感できませんでした。共感できない自分が理解できず、いつも悩んでいます。そんな私でも面白いと思うことはこの世界に一杯あります。それが私の生きる糧でした。面白いことが増えていけば、よりたくさんの人が楽しく生きられるはず。そんな世界を夢見ています。
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