夜間血圧上昇型で心血管イベントリスク上昇ー6,000例超の日本研究
夜間血圧の高い人 が心臓血管イベント(狭心症、心筋梗塞、心不全)の発症が、通常型(早朝血圧の方が就寝前血圧よりも高い人)高血圧の人よりも高いことが、24時間血圧を測定する、多施設多人数の前向き研究で証明された。
今まで通り、診察室血圧測定ではなく、家庭血圧測定でしかも起床直後の血圧と就寝前血圧測定で
血圧の評価および血圧コントロールができているか否かの評価を行うことが再評価された。
>昼間と比べて夜間の血圧が高い人では心血管イベントのリスクが高まることが、
日本の 前向き観察研究 Japan Ambulatory Blood Pressure Prospective Study(JAMP)で示された。
自治医科大学循環器内科学主任教授の苅尾七臣氏らは、
夜間の収縮期血圧(SBP)値の上昇や、昼間と比べ夜間に血圧が上昇する「riser型」が、
心血管イベントのリスクと独立して関連していたとの結果をCirculation(2020; 142: 1810-1820)に発表した。
116施設の6,359例を解析
24時間自由行動下血圧測定(ABPM)値は
診察室血圧値よりも心血管イベントの予測因子として優れているとされるが、
これまでのABPMを用いた疫学研究は比較的小規模で
特定地域に限られており、確実なデータがなかった。
また高齢化に伴い患者数の増加が見込まれる心不全への影響も検討されていなかった。
こうした中、JAMP研究はわが国の心血管高リスク者を対象に全参加施設で同じABPM装置を用い、
共通の測定スケジュールやアプローチの下で
夜間高血圧および夜間の血圧下降パターンと心血管イベント
〔動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)+心不全の複合〕
の発生との関連が検討された。
解析対象は、2008〜17年に日本国内116施設で登録された心血管危険因子
(糖尿病、脂質異常症、高血圧、喫煙、腎疾患、心房細動、
メタボリックシンドローム、閉塞性肺疾患、睡眠時無呼吸症候群)を1つ以上保有するが、
症候性の心血管疾患はない6,359例。
全体の平均年齢は68.6±11.7歳、
男性が約半数(47.6%)を占め、降圧薬使用者の割合は76.7%だった。
平均4.5±2.4年の追跡期間中に心血管イベントは306件発生し、
うち脳卒中が119件、冠動脈疾患が99件、心不全が88件だった。
riser型で心不全リスク2.45倍に
解析の結果、夜間のSBPと複合心血管イベントリスクの間に有意な関連が認められ、
夜間のSBP値が20mmHg上昇するごとにASCVDリスクは18%
〔人口統計学的因子、臨床的危険因子を調整後のハザード比(HR)1.18、95%CI 1.02〜1.37、P=0.029〕、
心不全リスクは25%(同1.25、1.00〜1.55、P=0.048)上昇することが示された。
また、riser型の人では血圧の日内変動が正常な人と比べて
複合心血管イベントのリスクが約1.5倍で
(HR 1.48、95%1.05〜2.08、P=0.024)、
中でも心不全リスクは2.45倍だった(同2.45、1.34〜4.48、P=0.004)。
その一方で、夜間のSBP値が低過ぎると
24時間のSBP値は良好にコントロールされていても
脳卒中リスクが有意に上昇することが示された(同2.30、1.22〜4.35、P=0.010)。
苅尾氏らは「夜間の血圧高値および血圧変動がriser型であることは、
心血管イベントの発生に独立して関連しており、
中でも心不全の発生と強く関連していた」と結論。
また、「今回の研究結果から、
夜間の血圧管理を視野に入れた降圧療法の重要性が示された」と述べている。
早朝血圧;起床直後、排尿を済ませて、30分以内、
食事や薬を飲む前、椅子に座って2−3分たってから
左上腕で測定するタイプの自動血圧計で、
マンシェットの丸印が肘の曲げる側の内側に
右指3本で拍動を触れるところにあてて計測してください。
2回測りたい人は、上の血圧の低い方を記載する。
脈拍数も記載する。
就寝前血圧;就寝前、2−3分落ち着いてから測定する。
通常は早朝血圧が就寝前血圧よりも高く、130/80以上で高血圧になります。
就寝前血圧の高い人は、そうでない人に比べて、
3倍脳血管イベント発生率が高いことが知られていました。
また、riser型は別名”仮面高血圧”と呼ばれ、
検診では、引っかからない危険があり、
「サイレントキラー」という別名があります。