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2019年08月06日

覚えておきたい熱中症の基本事項 【救急診療の基礎知識】

(本格的な熱中症のシーズンに突入しました。
下記 記事を一部省略、順番を変えて載せいています)


覚えておきたい熱中症の基本事項



坂本 壮 ( さかもと そう ) 氏
国保旭中央病院 救命救急科
西伊豆健育会病院 内科

『本当に熱中症か?!』

熱中症は環境因子だけでも十分起こりえますが、
普段であれば自己対応(環境を変える、水分・塩分を摂取する)
ができずに発生した可能性があります。

つまり、熱中症に陥った原因をきちんと検索する必要があります。

とくに非労作性熱中症
(運動・労作業と関係のない、高齢者に多い熱中症です)
の場合には、
尿路感染症や肺炎などの感染症などが
引き金となっているかもしれません。
また、薬剤やクリーゼなども熱中症様症状をとることがあります。

これらの 鑑別は病歴をきちんと把握すればおおよそ可能です。

明らかに部屋が暑かった、
当日の朝までは普段どおりであった
などの病歴がわかれば、
感染症や薬剤の影響は考えづらいでしょう。

それに対して、数日前から体調の変化があった場合には、
感染症などの影響も考え対応する必要があります。

初期対応としては以下の2点を意識し、速やかに対応しましょう。

(1)目標体温

深部体温*が39℃を超える高体温の持続は予後不良因子であり、
38℃台になるまでは積極的な冷却処置を行いましょう。

*深部体温
中枢温を正確に反映する部位は腋窩温でも皮膚温でもありません。
最も好ましいのは深部体温(膀胱温、直腸温、食道温)です。

救急外来など初療時には、
直腸温を測定するか、
温度センサー付きバルーンカテーテルを利用し、
膀胱温を測定します。

健康な人の体温の平均値は、腋窩温36.4℃に対して
直腸温37.5℃と約1℃異なると言われていますが、
高体温で発汗している場合や測定方法によって、
腋窩温や皮膚温は容易に変化します
(正しく測定できません)。

熱中症、とくに重症度が高いと判断した症例では、
深部体温を測定する意識をもちましょう。

(2)冷却方法

体表冷却法が一般的です。気化熱を利用します。
ぬるま湯(40〜45℃)を霧吹きを用いて体表にかけ、扇風機などで扇ぎます。

熱中症の予防

熱中症は予防可能です。
起こしてしまった人へは、
治療だけでなく正しい熱中症の知識、
そして周囲の方への啓発・指導を含め、
ポイントを絞って熱中症を起こさないために必要なことを伝えましょう。

「また熱中症の患者か!?」と思うのではなく、
チャンスだと思い、再発予防に努めましょう。

『熱中症の基本的事項を伝授』

熱中症の初期症状、非労作性熱中症に関して伝えましょう。
症状が熱中症によるものであることを
知っておかないと対応できません。

また、熱中症は屋外で起こるものと思っていると、
非労作性熱中症に陥ります。

高齢の方からは
「風通しがいいのでクーラーは使用していません(設置していません)」、
「クーラーは嫌いでね」という台詞をよく聞きますが、
必要性をきちんと説明し、理解してもらうことが大切です。

●熱中症の発生リスク評価を伝授 スクリーンショット 2019-08-05 21.13.57.png


猛暑が続いていますが、
どの程度危険なのかを認識しなければ、
「大丈夫だろう」と軽視してしまいます。

朝のニュースをテレビやスマホで確認するのもよいですが、
暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature:WBGT)
を確認する癖をもっておきましょう。

熱中症の発生に関与する因子は気温だけではなく、
湿度、風速、日射輻射です。

とくに湿度は大きく影響し、
これらを実際に計測し算出して出てきた数値がWBGTです。

細かなことは割愛しますが、WBGT>28℃になると
熱中症が急増し危険と判断します(表)。

●環境省の熱中症予防情報を伝授

環境省熱中症予防情報サイトでは、
WBGT(暑さ指数)を都道府県、地点別に確認できます。

3日間の予測も併せて確認できるため、
熱中症を予防する立場にある学校の教師や職場の管理者は
必ず確認しておく必要があります。
朝のニュースなどで危険性は日々報道されていますが、
それでもなお発生しているのが熱中症です。

願わくは、自ら確認し意識しておくことが必要と考えます。
「熱中症の危険がある」ということを
事前に意識して対応すれば、
体調の変化に対する対応も迅速に行えるでしょう。

●熱中症? と思った際の対応を伝授

こむら返りや
頭痛、倦怠感などを自覚し、
環境因子から熱中症?
と判断した場合には、
速やかに環境を改善し
(日陰や店舗内など涼しい場所へ移動)、

水分だけでなく塩分を摂取するように勧めましょう。

症状が改善しない場合や、
自身で水分・塩分の摂取が困難な場合には、
時間経過で改善することも多いですが、

症状の増悪、
一人暮らしで経過を診ることができる家族がいない場合には、
病院へ受診するように指示したほうがよいでしょう。

屋内外のリスクを見極め夏を過ごす

7月は熱中症予防強化月間の重点取組期間です
(厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」)。
今年は梅雨明けが遅く、
いきなり真夏日に突入したので、
慣れの期間がありませんでした。

まだまだ暑い日が続きます。
日頃の体調管理を行いつつ、
屋外でのスポーツや作業をする場合には、
リスクを評価し、予防に努め、
屋内で過ごす場合には、
温度・湿度を意識した環境の設定を行い、
夏を乗り切りましょう!

参考文献

1)日本救急医学会熱中症に関する委員会.
熱中症の実態調査-日本救急医学会Heatstroke STUDY 2012最終報告-.
日救急医会誌. 2014;25:846-862.

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田中松平
元消化器外科医で,頭からつま先まで診れる総合診療科医です. 医学博士 元日本外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器内視鏡学会専門医, 日本医師会認定産業医, 日本病理学会認定剖検医,
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