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2019年06月15日
すこやかな人生?E 日本心身医学会名誉理事長 池見 酉次郎 (いけみ ゆうじろう)
最終的には、心の働きの脳内メカニス?ムについて述べていきます。
すこやかな人生?E
日本心身医学会名誉理事長 池見 酉次郎 (いけみ ゆうじろう)
九州名誉教授。北九州市立小倉病院名誉院長。日本心身医学会理事長。
自律調整法国際委員会委員長。国際心身医学会前理事長。医学博士。
著書「セルフコントロールの医学」「自己分析」「心で起こる体の病」「心療内科」ほか
平成三年九月十五日 放送
池見: それがさっき申しましたように、
人間の脳が人間の心身両面、
それからわれわれの哲学、宗教観も全部これですね。
いま、だんだん医学的にわかってきましたことは、
「脳は全身にある」と。
このさっき申しましたように、
調身・調息・調心で、
われわれの全身を通して、
それから中国の気功法になったら、
全身の経絡を通して脳を調える。
これが東洋の身体感覚、体から脳を調える。
その調った脳でこの人生を見ていった時に本当に人生が見える。
井筒屋: そのあたり自然の中の人間の意義といいますか、
これはどんなふうにみていらっしゃりますか。
池見: これが今日の現代の危機の一番要になるところですね。
ご承知のパスカルは「人間は考える葦である」と。
存在しながら、その存在の意味を本当に考えるのは、人間の特徴である。
私が、四十年来、人間が心身ともに健康になることをひたすら追って、
最後のゴールは、「人間が生きていることの意味が本当にわかることが、
心身の健康の核だ」と思うんですね。
一人ひとりが独自な存在、独自な個性。
他の人によってかけがえのない存在だ、ということなんですね。
これは他の動物とか、草花なんかと違うところなんです。
それは医学的に言いますと、男性の精子と女性の卵子には、
それぞれ八百五十万組の染色体
—これはDNAという遺伝子を運ぶ染色体が精子の中にも卵子の中にもあるわけです。
その精子と卵子が出会って一つの生命が生まれるわけですね。
そうしますと、それによって生まれた子どもの中には、
ちょうどもの凄い膨大な組み合わせの中の一つですから、
鳶(トンビ)が鷹(タカ)を生んだり、
ウリの蔓(つる)に茄子(なすび)がなったりしても、
ちっとも不思議はないわけですね。
それだけわれわれは、独自な可能性、芸術的な独自性を持っておるわけですね。
それがまず基本です。一人ひとり人間は独自なんだ。
その次は独自でありながら、みんな他の周囲の人、
周囲のすべての存在と持ちつ持たれつの関係にある。
そして宇宙の大きないのちに生かされている。
独自の存在でありながら、みんな独自の存在であることが、周囲の喜びになり、
それによって、周囲との関係ができ、
そして全体として大きないのちに支えられて、
そういうことを考えることが、思い付くことが、
人間が生きておることの本当の意味に辿り着くことになるわけですね。
井筒屋: そうやって、「自然の中で生かされている」ということについては、
例えば、禅の方もいろいろと発言していらっしゃいますね。
池見: そこで自然の考え方に、
今日のように機械文明がどんどん進んできて、自然を壊してしまう。
近頃天候がおかしくなって台風がどんどんやってきたりして、
たしかにに怪しくなってきましたですね。
だから、これは人類にとっては危ないから、
天地自然のことを考えなければいけない、
という考え方もあるんですが、
大体東洋の道教—タオイズム(自然のいのちに生かされて生きる道)なんかの考え、
もともと人間は、天地自然の大いなるいのちの中の、
草花なんかの一つの存在であると、
そういうような謙虚な立場からもう一遍考え直さなければいけない。
禅の山田無文老師が、現代文明のあり方ということで、
「造花の妙を生かす人為の巧み」ということを言っておられますが、
天然自然の摂理を生かしながら、
現代文明を、どうそれと調和して発達させていくか。
私どもの心身医学というのは、
初めはノイローゼの医学とか心身症の医学だったんですけれども、
それを科学的にあとづけたらいいか、
というところにまで、
いまだんだん辿り着いてきているところでございます。
そこで私が、現代の中高年者に申し上げたいと思いますことは、
年老いることによって、人間は—私も七十歳を越してから、
どうやらその辺が少しわかってきたんですけれども
—年老いることによって、だんだん気が付いてきた、
人間存在の本質に対する知恵というものですね。
「われわれはまったく独自の存在、周囲から生かされて生きている」。
それを現代の若い人たちに伝えてあげる。
それがこれからの中高年者の生きがいの核であってほしいと思います。
現にそういう運動が我が国のあちこちに起こってきている。
例えば、東京には「地球産業文化研究所」というのがあります。
これは日本の三十五の代表的な企業と通産省が一緒になって、
「自然にやさしい環境の創造」。
それをするためには、一人ひとりの人間がいのちに目覚めなければいけない。
そういう組織がありますし、
私の地元の福岡には最近、
「都夢創(とむそう)」という、
若手の実業家の方が集まられて、
都市化が進む中で人間性を失わせないような都市のあり方を確立しなければいけない。
そういう組織がこの十月一日には発足するようになって、
日本全国でそういうことが言い出されていますね。
井筒屋: そうした「自然との触れ合い」というのは、
まさに「人間の心身の健康にも非常に重要なことだ」と思うんです。
その辺りを心身医学からみますと、どういうことになりましょう。
これは、平成三年九月十五日に、NHK教育テレビの
「こころの時代」で放映されたものである
すこやかな人生?E
日本心身医学会名誉理事長 池見 酉次郎 (いけみ ゆうじろう)
九州名誉教授。北九州市立小倉病院名誉院長。日本心身医学会理事長。
自律調整法国際委員会委員長。国際心身医学会前理事長。医学博士。
著書「セルフコントロールの医学」「自己分析」「心で起こる体の病」「心療内科」ほか
平成三年九月十五日 放送
池見: それがさっき申しましたように、
人間の脳が人間の心身両面、
それからわれわれの哲学、宗教観も全部これですね。
いま、だんだん医学的にわかってきましたことは、
「脳は全身にある」と。
このさっき申しましたように、
調身・調息・調心で、
われわれの全身を通して、
それから中国の気功法になったら、
全身の経絡を通して脳を調える。
これが東洋の身体感覚、体から脳を調える。
その調った脳でこの人生を見ていった時に本当に人生が見える。
井筒屋: そのあたり自然の中の人間の意義といいますか、
これはどんなふうにみていらっしゃりますか。
池見: これが今日の現代の危機の一番要になるところですね。
ご承知のパスカルは「人間は考える葦である」と。
存在しながら、その存在の意味を本当に考えるのは、人間の特徴である。
私が、四十年来、人間が心身ともに健康になることをひたすら追って、
最後のゴールは、「人間が生きていることの意味が本当にわかることが、
心身の健康の核だ」と思うんですね。
一人ひとりが独自な存在、独自な個性。
他の人によってかけがえのない存在だ、ということなんですね。
これは他の動物とか、草花なんかと違うところなんです。
それは医学的に言いますと、男性の精子と女性の卵子には、
それぞれ八百五十万組の染色体
—これはDNAという遺伝子を運ぶ染色体が精子の中にも卵子の中にもあるわけです。
その精子と卵子が出会って一つの生命が生まれるわけですね。
そうしますと、それによって生まれた子どもの中には、
ちょうどもの凄い膨大な組み合わせの中の一つですから、
鳶(トンビ)が鷹(タカ)を生んだり、
ウリの蔓(つる)に茄子(なすび)がなったりしても、
ちっとも不思議はないわけですね。
それだけわれわれは、独自な可能性、芸術的な独自性を持っておるわけですね。
それがまず基本です。一人ひとり人間は独自なんだ。
その次は独自でありながら、みんな他の周囲の人、
周囲のすべての存在と持ちつ持たれつの関係にある。
そして宇宙の大きないのちに生かされている。
独自の存在でありながら、みんな独自の存在であることが、周囲の喜びになり、
それによって、周囲との関係ができ、
そして全体として大きないのちに支えられて、
そういうことを考えることが、思い付くことが、
人間が生きておることの本当の意味に辿り着くことになるわけですね。
井筒屋: そうやって、「自然の中で生かされている」ということについては、
例えば、禅の方もいろいろと発言していらっしゃいますね。
池見: そこで自然の考え方に、
今日のように機械文明がどんどん進んできて、自然を壊してしまう。
近頃天候がおかしくなって台風がどんどんやってきたりして、
たしかにに怪しくなってきましたですね。
だから、これは人類にとっては危ないから、
天地自然のことを考えなければいけない、
という考え方もあるんですが、
大体東洋の道教—タオイズム(自然のいのちに生かされて生きる道)なんかの考え、
もともと人間は、天地自然の大いなるいのちの中の、
草花なんかの一つの存在であると、
そういうような謙虚な立場からもう一遍考え直さなければいけない。
禅の山田無文老師が、現代文明のあり方ということで、
「造花の妙を生かす人為の巧み」ということを言っておられますが、
天然自然の摂理を生かしながら、
現代文明を、どうそれと調和して発達させていくか。
私どもの心身医学というのは、
初めはノイローゼの医学とか心身症の医学だったんですけれども、
それを科学的にあとづけたらいいか、
というところにまで、
いまだんだん辿り着いてきているところでございます。
そこで私が、現代の中高年者に申し上げたいと思いますことは、
年老いることによって、人間は—私も七十歳を越してから、
どうやらその辺が少しわかってきたんですけれども
—年老いることによって、だんだん気が付いてきた、
人間存在の本質に対する知恵というものですね。
「われわれはまったく独自の存在、周囲から生かされて生きている」。
それを現代の若い人たちに伝えてあげる。
それがこれからの中高年者の生きがいの核であってほしいと思います。
現にそういう運動が我が国のあちこちに起こってきている。
例えば、東京には「地球産業文化研究所」というのがあります。
これは日本の三十五の代表的な企業と通産省が一緒になって、
「自然にやさしい環境の創造」。
それをするためには、一人ひとりの人間がいのちに目覚めなければいけない。
そういう組織がありますし、
私の地元の福岡には最近、
「都夢創(とむそう)」という、
若手の実業家の方が集まられて、
都市化が進む中で人間性を失わせないような都市のあり方を確立しなければいけない。
そういう組織がこの十月一日には発足するようになって、
日本全国でそういうことが言い出されていますね。
井筒屋: そうした「自然との触れ合い」というのは、
まさに「人間の心身の健康にも非常に重要なことだ」と思うんです。
その辺りを心身医学からみますと、どういうことになりましょう。
これは、平成三年九月十五日に、NHK教育テレビの
「こころの時代」で放映されたものである