ミゲル・ディアスカネル大統領(左)と、米国ネイション誌の記者2人(右)
Cubadebate、2023年11月8日、DD GUTTENPLAN記者 + KATRINA VANDEN HEUVEL記者(The Nation)
米国メディアとの初のインタビューで、キューバ大統領はキューバ社会主義の将来、米国の封鎖、キューバが直面する経済的困難についての考えを語っている。
ディアス=カネル大統領にとって米国でのインタビューは初めてである。二人は、キューバが直面している経済危機、社会主義モデルの将来、そして米国政府が敵対を続けていることの影響について聞いた。
DD ガッテンプラン(以下 DDG): あなたは、革命後に生まれた最初のキューバ大統領です。 革命は、今日どのような意味を持っていますか?
ミゲル・ディアス=カネル(以下 MDC):まず、第78回国連総会へのキューバ代表団の一員として訪問した機会に、このようなインタビューに応じていただいたことに感謝します。米国民、特に米国に住む何百万人ものラテン系およびキューバ人に向けてお話しできることを、感謝します。
私の世代は、革命とともに生まれました。私は、1960年に生まれ、プラヤ・ヒロンでの勝利の翌日に1歳の誕生日を迎えました。革命の誕生とその生涯は、私の世代に大きな影響を与えました。
私たちは、幼い頃から、革命が、私たちに与えてくれたあらゆる機会に参加することに、動機を感じました。それは、自分自身を向上させ、知識を身につけ、文化や科学、スポー ツに参加し、医療へのアクセスを享受することでした。私たちは、また、権利を享受するだけでなく、国が直面する課題に対応する義務を果たす必要性も意識していました。
もちろん、革命は、さまざまな段階を経てきました。私の子供時代の記憶は、非常に困難な時代でした。その後、1970年代から1980年代にかけては、社会主義陣営、特にソ連との関係が緊密化し、経済的にも平穏な時期が続きました。その後(1990年)、「非常時」が訪れましたが、これもまた困難な時代でした。
2000年以降は、経済成長の新たな段階に入り、展望も良くなりました。しかし今日、私たちは、あなた自身が「困難」と表現したような状況に置かれています。このような不確実な世界、特にパンデミックによる問題で、国際関係は複雑です。
私は、政治生命と政府の責任を担うようになった全世代の代表として、革命、キューバ国民、そして先見の明のある指導者であったフィデル(・カストロ)とラウル(・カストロ) に対する多大な責任を感じています。
私たちは、直線的な継続の世代ではありませんが、自分たちを継続の世代と定義しています。それは弁証法的な連続性であり、私たちが、社会を変革し、進歩させ、最大限に改善しようとする一方で、可能な限り最善の社会正義をもって、わが国に社会主義を建設するという信念を捨てないということです。
それが、私たちの生涯の責任であり、ビジョンです。そのためには多大な努力と成果、そして無私の精神が必要であり、特に困難な状況においては、私たちに多くのことを要求し ます。
カトリーナ・ヴァンデン・ヒューベル(以下KvH): 現在キューバには、多くの若者がいます。その中で、あなたは、キューバ経済の将来をどのように想像しているのでしょうか。封鎖は、もちろん残酷ですが、若者の間には、変化がなければ、キューバに自分の未来はないかもしれないという思いもあります。
MDC:今現在では、何か特別なものがあります。私たちは、生まれてからずっと封鎖の下で生きてきました。例えば、私の世代、1960年代の世代は、封鎖とともに生まれまし た。私たちの子供たちや孫たち(私には孫がいます)は、封鎖の下で育ってきました。しかし、封鎖は 2019年後半に大きく変わりました。以前よりもさらに厳しくなったのです。
新たに厳しくなった封鎖は、2 つの要因の結果でした。ひとつはトランプ政権が243以上の措置を実施したことで、封鎖を国際化し、ヘルムズ=バートン法第3章を初めて実施することで封鎖を強化しました。そうすることで、外国資本、交換可能通貨、送金へのアク セスを遮断しました。米国人は、キューバを訪問できなくなり、キューバと取引のある銀行や金融グループに金融圧力をかけました。
さらに、トランプ大統領は、2021年1月に大統領を退任する9日か10日前に、キューバをテロ支援国家という虚偽のリストに載せました。世界中が、キューバの人道主義と平和への貢献を知っています。キューバは、軍隊を派遣せず、医師を派遣しています。それで も、私たちが、医師を海外に派遣し、世界の他の地域に連帯してサービスを提供すると、米国は、私たちが実際には人身売買に関与していると主張します。
同時に、経済状況が悪化していたキューバでは、他の地域と同じように新型コロナが猛威を振るいました。しかし、新型コロナの大流行中、米国政府は、凶悪にも封鎖を強化しま した。私は、米国政府のことを言っているのであり、アメリカ国民のことを言っているのではありません。なぜなら、私たちは、アメリカ国民に深い尊敬と友好の念を抱いているからです。
米国政府は、革命が、あの時を乗り切れないと考えたのでしょう。パンデミックは、キューバで非常に高いレベルに達し、2021年いっぱいまで続きました。2020年に始まったときは、まだワクチンもなければ、ワクチンを手に入れる可能性すらありませんでした。
その後、キューバの医療用酸素プラントが、故障しました。酸素が足りなくなり、米国政府は、カリブ海や中米の企業に、キューバに酸素を供給しないよう圧力をかけました。また、集中治療病棟を拡張しなければならなかったのですが、米国政府は、人工呼吸器を製造・販売する企業に、キューバに供給しないよう圧力をかけました。
状況は、危機的で、キューバ革命を貶める大規模なメディアキャンペーンが展開されました。そこで私たちは、効率的で、無料で、質の高い、医療を権利とみなす医療制度に訴え、科学者、特に若い科学者に訴えました。科学者たちは人工呼吸器を設計し、5種類のワクチン候補を開発しました。それが国を救ったのです。しかし、私たちは、パンデミックから抜け出しましたが、多くの問題を抱えたままでした。
医薬品、食料、燃料の不足。長引く停電は、国民を苦しめ、特に若者の生活に直接影響を与えます。私は、私たちの教育過程が、私たちが、経験している状況の重要性を若い人たちに印象づけたと信じています。それは、キューバの若者たち、つまり「非常時」の時代に生まれ、経済的にも社会的にも本当に困難な状況の中でずっと生きてきた若者たちが、革命や国そのものとのイデオロギー的な断絶に繋がらないようにすることです。
他の時代に比べて、移民が多いのは、事実です。しかし、これは、キューバと米国の歴史において定期的に起こってきたことです。移住が最も激しくなるのは、米国が、キューバの経済状況を悪化させるような攻撃的な政策をとった時期と常に関連しています。1966年のキューバ人地位調整法やその他の措置を通じて、米国はキューバ人の不法、危険、無秩序な移民を優遇してきました。
パンデミックを克服したとき、私は、多くを学びました。キューバ人の抵抗の仕方を、創造的な抵抗の一形態として理解するようになったのです。創造的な抵抗とは、単にその場 に留まることで抵抗するのではなく、逆境を克服するために国民の才能と力を創造し、活 用することで前進することです。その一例が、ワクチンです。世界でワクチンを開発できたのはわずか 5か国で、そのすべてが、先進国です。キューバは、それができた唯一の発展途上国であり、0.76という印象的な死亡指標を持っています。キューバは、パンデミックの間、どの国よりも多くのワクチンを国民一人当たりに投与しました。
キューバは、国民の90%以上が、新型コロナ・ワクチンを接種した 20か国のうちの1つです。また、2歳以上の小児にワクチンを接種した、世界で 2 番目の国でもあります。このような創造的な抵抗の形は、私たちの努力、才能、仕事によって封鎖を克服するために、現在、経済や社会生活の他の分野に敷衍されています。
その取り組みに若者を巻き込み、社会参加の場を提供することが、増えています。その結果、若者たちは、革命によって擁護された社会的プロジェクトと一致する人生の目標を持 つことが可能であることを、知ることができるのです。もちろん移住する人もいますが、若者の大半は、キューバにいて、私が挙げた分野やその他の分野で、働いています。彼らは、私たちの科学的発展をリードしているのです。若者は、キューバの主要な生産活動や経済活動に携わっています。彼らは社会のデジタル変革を推進し、社会的、政治的、組織的コミュニケーションの担い手です。彼らは、革命の継続のために働く必要性を私たちに確信させてくれる人たちなのです。
DDG: 大統領がおっしゃったことを2つ取り上げたいと思います。ひとつは、あなたがキューバからの移住と呼ぶものの周期的な性質と、あなたの見解では、それが制裁強化に対応しているということです。バイデン政権に何かできることがあるとお考えですか?
MDC:バイデン政権で何かが変わるとは、あまり思っていません。キューバには、米国 大使館があり、米国にはキューバ大使館があります。関係はオバマの下で再確立されまし たが、これはトランプが実施し、バイデンが維持しているものとはまったく異なる政策でした。なぜなら、キューバに最大限の圧力をかける政策を実施したのは、共和党の大統領でしたが、その政策を維持しているのは民主党の大統領だからです。
直接的、間接的なチャンネルを通じて、私たちはバイデン政権に対し、米国への移民を含む諸問題について、話し合う意思があることを伝えました。しかし、それは平等、尊重、無条件の立場から行われなければなりません。米国からは、何の返答もありません。従って、この政権側に私たちと協力する意思があるとは、感じられません。
しかし、私たちは、イデオロギーの違いにかかわらず、両国間の成熟した関係を望んでいます。その時が来るまで、私たちは、自分たちでその状況を打開する努力を続けます。私たちは、若者たちが、利用可能な機会について惑わされたり、操作されたり、誤った説明を受けたりしないように取り組んでいます。若者は、合法的にキューバを出国し、米国への移行の過程で違法となっただけで、完全に無秩序で違法な移住の流れに巻き込まれ、人身売買のスキームに陥ってしまいます。
キューバ人の移住、特に若いキューバ人の移住について話題になることが多いですが、実際には移住はすべての国に影響を及ぼし、移住する人々は、一般的に夢を持った若くて健康な人々です。
KvH: キューバでは、小さな商店や個人経営のホテル、レストランが見られますが、社会主義の枠組みの中で、このプロセスは、どこまで進むことができると思いますか?
MDC:私たちは、最大限の社会正義を保証する社会主義経済を目指しています。私たち は、不確実性と複雑性に満ちた世界、貧富の差が拡大し、南の国々が多くの不利益を被っている世界の状況を忘れることなく、この社会主義経済を構築し、強化し、発展させなければなりません。
それでも、私たちは社会主義の理想を決してあきらめません。しかし、封鎖やキューバ国 内の問題など、現在の状況を考えると、どうすればいいのでしょうか?私たちは、より大きな社会正義を実現する方法として社会主義経済を擁護すると同時に、社会主義国営企業、すなわち私たちの社会的経済モデルにおける公営企業の、より高い効率性、より大きな自主性、より優れた業績を提起しています。
私たちはまた、国営部門を補完するものとして、経済の民間部門と非国営部門を開放してきました。一方では、単一の企業システムがあり、そこには、今日、主要な生産手段を所有・管理する国営企業という1つのアクターが存在し、また、国の発展やGDPに貢献し、労働力の一部を吸収する 2つ目の非国営アクターが存在します。
最近、私たちは、非常に興味深い動きを目の当たりにしています。たとえば、封鎖された状況下では、国営企業は、その生産能力を十分に発揮することができません。しかし、封鎖されているにもかかわらず、輸入の可能性をより多く持っている非国営企業は、その国営企業と連携し、最終的に国民の利益となる生産活動やサービスを共に開発しています。
私たちは、キューバ国民に、長年にわたって封鎖に抵抗してきた英雄的行為にふさわしい繁栄を与えたいと願っています。それをどのように行ったらよいのでしょうか? 国営部門と民間部門を含む社会主義建設の概念で、でしょうか?難しい課題ですが、私たちはそれを成し遂げるでしょう。
KvH: アラルコン元外相が亡くなる1週間前に幸運にもお会いすることができましたが、彼が、最も心を奪われていたのはラテンアメリカ地域の変化でした。つい先日、ルーラが、 キューバで重要な会議に出席しました。この地域は、よりピンク色で右翼的でない方向に動いているようですが、キューバに変化をもたらす余地、あるいは新しい時代の非同盟運動の再構築をもたらす可能性はあるのでしょうか?
MDC:私たちは、ラテンアメリカとカリブ海地域の統合という原則を擁護しています。また、ラテンアメリカとカリブ海は、平和地帯であるべきだという原則も擁護しています。 私たちは、ラテンアメリカおよびカリブ海諸国のすべてと関係を持っています。
医療使節団や、工学などの専門家など、私たちの専門的・技術的サービスを要請してきた数カ国と協力・連携しています。私たちは、貿易関係の発展に努めています。さらに、協力の事業に参加することで、それらの国々について学ぶことができ、私たち自身の発展にも役立っています。
ラテンアメリカは、極右の潮流がこうしたプロセスを弱体化させようとしているにもかかわらず、進歩的な運動にとって非常に好ましい場所です。私たちはベネズエラ、ニカラグア、ボリビア、ブラジル、アルゼンチンと強い関係を築いており、その関係はますます強まっています。ブラジルは、ラテンアメリカの中でほとんど大陸のような存在であり、最も重要な経済国のひとつです。ルーラ政権、そしてジルマ政権のもとで、私たちは、広範な貿易と二国間交流を行ってきました。これらのような進歩的な政権が誕生すれば、私たちの国にも新たな可能性が開けるでしょう。
キューバは、コロンビアの和平プロセスを支援し、大陸全体の平和に貢献しました。その和平プロセスの最終合意は、数年前にハバナで調印されました。キューバは、他国との協力と協調、そして利他的な形での共有に基づく一貫した外交政策を発展させてきました。新型コロナが到来したとき、私たちは、カリブ海諸国やラテンアメリカ諸国の要請に応じてワクチンを提供しました。
DDG: 大統領、あなたは、海外のキューバ人について話されました。もちろん、キューバ人医師が世界中で医療を提供してきた長く輝かしい歴史は、周知の通りです。しかし、最近ウクライナでキューバ人が、戦場に駆り出されているという見出しを目にし、驚いた米国人もいます。この状況に対する政府の対応を説明していただけませんか?
MDC:まず第一に、ウクライナの戦争に対する私たちの立場は、私たちは、平和愛好の国であるということです。私たちは、国際法と国連憲章を支持します。戦争は、好みません。私たちは、戦争を祝福しませんし、戦争を支持しません。どちらの側で人命が失われても、私たちの心は痛みます。この戦争を終わらせるためには、対話と外交的解決策を追求すべきであると、私たちは信じています。
私たちは、ウクライナの戦争には加担していませんが、私たちの調査によって、違法なネットワークが、ロシアに住むキューバ人やキューバに住む何人かを雇い、ロシア側で戦わせていることを知りました。わが国の刑法は、傭兵を禁じており、私たちは、これを傭兵行為であると同時に人身売買であると考えています。そのため、今回の捜査で、すべての 証拠を集めた時点で、関係者に報告し、今回の事態を公に糾弾しました。ロシアとの緊密な関係のおかげで、双方は、傭兵に仕立て上げる違法な人身売買の撲滅に取り組むことができました。キューバは、戦争に加担していませんし、今回のような違法な人身売買ネットワークが再び発見されれば、それを糾弾し、阻止するために行動すると断言します。
KvH: ウクライナ戦争に対するキューバの立場を明確にするために、停戦の申し出に役割を果たそうとしましたか? ウクライナ戦争に対するキューバ政府の立場を教えてください。
MDC:私たちは、あらゆる国際的なメカニズムと対話の場を利用することを主張しています。問題は、現実を歪曲し、ねじ曲げられた枠組みを押し付けようとしていることです。私たちにとっては、米国政府は、ロシアの不満や、NATOの国境がロシアに延長されることによってもたらされる危険についての警告に耳を傾けなかったことで、戦争を引き起こしたのです。私の考えでは、米国は、状況を操作したのです。この紛争は、多くのヨーロッパ諸国も巻き込んでおり、ウクライナとロシアの戦争ではなく、NATOとロシアの紛争と言えるほどです。
この戦争の費用は、誰が負担するのでしょうか?戦争に巻き込まれた国の予算から捻出されているので、支払うのは、その国の人々です。しかし、戦争に関与していなくても、この戦争の結果を目の当たりにしている人々にも打撃があります。穀物輸出や食糧市場の問題は、このことが世界にどのような影響を及ぼすかを示しています。私たちは、また、紛争では人命が犠牲になるという、人道主義的信念に基づき、戦争に反対しています。
しかし、私たちは、米国がこの紛争において大きな責任を負っていると信じています。彼らは戦争の本質を歪め、そして自分たちこそが正しい立場にあるかのように装ってきました。私は、戦争を終結させるための正しい答えは、外交的手段であると信じています。すべての側に安全が、客観的に保証されなければなりません。知性と感受性があれば、戦争をあおり、紛争の火種を増やすのではなく、解決策を追求することを支援できるのではないでしょうか。
DDG: 先ほど社会主義の建設についてお話になりました。民間部門と国家との間の将来 的なバランスはどうなるのか、という質問について少し述べたいと思います。「非常時」の期間中、基本的にソ連からの補助金は打ち切られ、特に封鎖されていたキューバの人々にとっては非常に困難な状況でした。しかし、キューバでも社会主義建設の問題は解決していませんし、中国でも日常生活水準を上げるために民間部門を拡大せざるを得ませんでした。今後、民間部門と国家のバランスはどのように考えていますか?
MDC:社会主義経済において民間部門が存在するという事実は、社会主義を否定するものではありません。マルクス主義の古典、あるいはソビエト革命におけるレーニン自身の 実践でさえ、社会主義建設の中に民間部門が存在する過渡期があると考えられています。 私的部門を認めることは、決して社会主義を放棄することではありません。なぜでしょうか?なぜなら、大多数のまた大規模の基本的な生産手段は、依然として国家の手中にあるからです。
これらの生産手段は、国営形態と非国営形態を組み合わせた形で運営することができます。例えば、キューバでは土地の80%以上が国家によって所有されています。しかし、私たちの土地の約80%は、民間の農業協同組合によって長年にわたって運営されてきました。これは、私たちが社会主義の建設をやめたという意味ではありません。
経済に関しては、私たちは、現在の経済の達成状況に不満を持っていますが、キューバ経済の現実は、どうだったのでしょうか?世界最強の国による封鎖に直面しなければならなかった戦争経済でした。封鎖がなかったら、何が達成できたかを見なければなりません。もちろん、私たちは、自分自身を改善する方法も見つけようとしています。キューバ経済の達成状況に不満があるというのは、国民に完全な繁栄をもたらすような商品やサービスをいまだに生産できていないという事実を指しています。しかし、国家が補助する質の高い医療や教育、文化やスポーツへの自由なアクセスを保証してきたのは、同じ戦争経済なのです。キューバの専門職は、たとえ移民であっても、資本主義国の労働市場において競合力があります。
キューバには、誰一人取り残されたり、庇護されなくなることのない、驚くべき社会保障 制度があります。無料で受けられるなら、国の負担はないのでしょうか?これらの費用は、一方では封鎖によって大きな打撃を受けながらも、他方では資本主義国や先進国が達成できなかったような重要な社会的成果を上げてきた経済によって賄われているのです。封鎖が強化されたにもかかわらず、キューバの医療と教育の指標は世界の先進国と比較することができます。
私たちは、どこに向かうのでしょうか?私たちは、国際情勢に、より少なく依存するようにしなければなりません。そのために、私たちは、キューバ国民の創造的な抵抗に、私たち自身の努力と才能を賭けているのです。私たちは、インフレや外貨交換市場、物価の歪みに対処するためのマクロ経済安定化計画を含む経済・社会発展モデルに取り組んでいます。
私たちは、政権運営の柱として科学と技術革新に賭けています。パンデミックのときに私たちがしたことを、見てください。主権を主張するためには、キューバ産ワクチンが必要だと考え、科学と技術革新に基づく統治システムを設計しました。このアイデアは、新型コロナの間にテストされ、今では経済の他の分野にも拡大しています。
そのひとつが、食料主権です。キューバが、食料を輸入したり、外部供給源に依存したりする必要がないように、私たちは科学とイノベーションに焦点を当てて食料生産を促進しています。また、化石燃料への依存を減らし、再生可能エネルギーの利用を拡大するために、国のエネルギー構成を変えようとしています。私たちは、2030年までにエネルギーの24%以上を再生可能エネルギーでまかなうことを目指しています。
困難な状況の中、私たちは、社会的弱者や家族を支援する社会プログラムを開発しています。また、デジタル変革プロセスにも着手しています。これらの行動を組み合わせることで、より安定した現在と未来が生まれるでしょう。
KvH: デジタル変革ついて、インターネットへのアクセスという点で、キューバは、どのような状況にありますか?米国やヨーロッパの企業との合意が失敗し、デジタル変革への動きが止まってしまったと、私は理解しています。 人々はどのようにメディアを入手しているのでしょうか? 毎朝、情報番組を受け取っているのでしょうか?どんなメディアを見ているのか、興味があります。
MDC:私は、ツイッターで、とても積極的に活動しています。確かではありませんが、 キューバの誰よりもフォロワーが多いと思います。
KvH: フォロワー数は?
MDC:ツイッターのフォロワーは、76万人くらいだということです。私たちは、社会のデジタル化のためのプロジェクトを始めました。基本的に二つの分野に集中しています。ひとつは、電子商取引や電子政府といったデジタル・プラットフォームを発展させることで、国民と政府機関やサービスとの相互関係を強化し、国民の民主的な参加を促進することです。また、電子商取引をめぐる法的枠組みの整備にも取り組んでいます。なぜなら、 デジタル社会に移行するためには、財源と技術が必要だからです。そのため、デジタルインフラの基盤を独自に構築しなければなりません。
中国の援助によって、私たちは、テレビのデジタル化に進むことができました。インターネットに関しては、近年重要な進展がありました。すでに700万人以上のキューバ人が、携帯電話を通じてインターネットにアクセスしています。キューバでは、特に若者の間では、誰もがソーシャルネットワークに接続し、活発に活動しているのをよく見かけます。しかし、封鎖の結果、アクセスできないサイトやプラットフォームもあります。
アプリケーションをアップデートしたり、サイトにログインしようとしたり、科学者が研究データベースにアクセスしようとすると、「あなたの国ではこのサイトにアクセスできません」というメッセージが表示されることがあります。しかし、私たちは前進しています。国内のすべての大学に情報プログラムがあります。また、「アプクリス」というキューバのアプリケーション・ショップを開発し、キューバ独自のアプリケーション・システムも開発しています。「情報科学大学」が開発したオペレーティングシステムは、中国との共同プロジェクトで開発しているノートパソコンやタブレット、携帯電話で使われてい ます。
若いキューバ人のチームが、情報プログラミングの国際イベントに参加し、優れた結果を出しています。キューバでは、経済活動人口が少なく、私たちの社会計画のおかげで平均寿命が延びると同時に高齢化が進んでいるため、より多い非経済的活動人口を支えなければなりません。
つまり、キューバは、低開発国でありながら、先進国の人口動態を有しているのです。生産とサービスに直接従事する人口が減少しているため、より効率的な成果を達成しなければなりません。このような目標を達成するために、私たちは、いくつかの人気プログラムを開発しました。たとえば、「ヤング・コンピューター・クラブ」プログラムです。そこでは、子どもたちが幼いうちからコンピューターやその他の通信技術を学ぶことができます。高齢者向けのコースもあり、デジタル変革のプロセス全体から排除されることはありません。
もちろん、キューバ人は、ソーシャルネットワークにも積極的です。ソーシャルネットワークは、人類にとって非常に重要な知識を管理する道具になると、私は、信じています。私たちは、人々が物質的な所有物によって区別されるのではなく、精神性や社会や文化に 貢献するものによって区別されるような国を作りたいと願っています。私が、ソーシャルメディアについて非難するのは、低俗さ、凡庸さ、そして特に若者の間で多くの害をもたらすネット上のいじめのようなものの現れです。
また、世界は、インターネット・ガバナンスに対して、より包括的で統一されたアプローチを必要としていると思います。サイバーセキュリティの問題は、今や世界の大きな課題であり、キューバは、独自のサイバーセキュリティ・プラットフォームを開発しています。人工知能の課題は、技術的なものだけでなく、社会的・倫理的に重要な結果をもたらすこ とは言うまでもありません。私たちは、グローバルなインターネット・ガバナンスを実現する必要があります。バーチャルとフィジカルが、それほど離れておらず、インターネットが人々の問題に対する答えを見つける手助けになるような、解放的で包括的な世界を構築する必要があります。
DDG: 文化についてですが、キューバが、音楽、文学、ダンスの分野で文化大国であることは誰もが知っています。デジタル文化が、国境を尊重しないことを考えると、おそらく、キューバに住んでいなくてもキューバ人であることに誇りを感じているキューバ人に対するキューバ政府の態度に違いや変化はありますか?
MDC:私が、アメリカに来たのは、5年前と今回で2度目です。いずれも国連総会の会期に参加するためです。これらの訪問では、いつもアメリカ文化の代表者と会う機会をもうけてきました。例えば、昨日の午後は、まさにこの場所で、米国のアーティストや学者と、 キューバと米国を拠点とするキューバのアーティストとの会合がありました。
あなたと同じように、私もキューバと米国のミュージシャンがステージを共有することで生まれるハーモニーを経験してきました。ハバナのジャズ・フェスティバルでは、キューバ人と米国人のミュージシャンを組み合わせたオーケストラでいつも幕を閉じます。キューバ人ミュージシャンは、アメリカン・ジャズの原初的な力とその妙技に、ある種のラテン性をもたらします。
このような時は、人が、新たな精神的幸福のレベルに達する時です。今日、文化は、キューバと米国の間に壁ではなく橋を架けることができる分野のひとつです。文化交流を通じて、国境は取り払われ、私たちの国民は、団結します。私たちの国民は、自分たちの歴史と文化の価値を共有することができるのです。
数年前、オバマ大統領の時代に、ケネディセンターがワシントン DC でキューバ文化の展覧会を開催しました。それは素晴らしいイベントでした。そこでは、私たちのアーティス トたちはとてもよい居心地を感じました。私たちは、ケネディセンターのプロジェクトを 通じて米国のアーティストをキューバに呼びたかったのですが、トランプ大統領の規制のためにすべて失敗に終わりました。まだ多くの接触が、維持されています。例えば昨日、 長年米国に住んでいるキューバの重要なミュージシャンたちに会いました。彼らは母国との関係を捨てていませんし、彼らの成功は、キューバ文化の成功でもあると感じています。
KvH: バイデン政権との対話は、続いていますか?また、バイデン政権が再選された場合、米国とキューバの関係についてどのようなことを期待しますか?
MDC:バイデンに聞いてみなければわかりません。今は、外交関係があります。いくつかのテーマについて、対話を維持しています。しかし、バイデン政権側にキューバと異なる関係を築こうという意志は、見られません。
私たちは、引き続き、私たちの観点を主張します。社会主義建設を諦めるつもりはありません。しかし、私たちはキューバと米国の成熟した正常な関係を望んでいます。しかし、その関係を築くためには、私たちは腰を落ち着けて話し合う必要があります。意見が異なる問題、同意できる問題、同意できない問題をすべて評価し、前進を図る必要があります。そうすることで、より良い関係が築かれ、私たち国民にとって、関係改善の可能性や潜在力が高まるのではないでしょうか。しかし、今のところ、米国政府がそのような態度をとっているとは思えません。
KvH: 最後の質問ですが、映画「バービー」や「オッペンハイマー」は、見ましたか?
MDC:「オッペンハイマー」はまだ見ていませんが、見るように薦められたので近いうちに見るつもりです。「オッペンハイマー」を見ることには興味があります。「バービー」は、それほど興味がありません。「バービー」はとても軽薄のように思えます。
*この記事は、The Nation紙2023年11月13・20日号に 「質問と回答:ミゲル・ディアス=カネル」 の見出しで掲載された。
(スペイン語翻訳:Cubadebate)
EXCLUSIVE Interview with Cuban president Miguel Díaz-Canel
Presidente cubano Miguel Díaz-Canel se sienta a conversar con The Nation
http://www.cubadebate.cu/noticias/2023/11/08/presidente-cubano-miguel-diaz-canel-se-sienta-a-conversar-con-the-nation/