南岳下の南岳小屋のキャンプサイトを朝3時半に出発しました。8月に入り、登山者が増えているだろうな?の読みで、キレットでの登山者との相互通行を避ける狙いで暗いうちに出発しました。南岳小屋の裏の登りを越えるとすぐにキレットの入り口になります。早々に行動食を食べて4時からキレットに突入しました。暗くて辺りの判断はできませんが、獅子鼻岩を左手に見ている位置関係だと思われます。ライトで足元を照らすと朝露で草が濡れています。岩も一部滑るので丁寧に歩を進めます。
真っ暗の中でキレットを下るのは危険?と思われる方もいるかもしれませんが、LEDヘッドライトの明るさは抜群で、岩の凹凸やマーカーの白いペイントなどを正確に照らし出すことができますので、視野が昼間よりは狭くなる分、集中力は上がる気がします。浮石を見極めて鎖やハシゴを使って丁寧に漆黒の闇の中に降りていきます。自ら地獄に降りていく気がして少しだけドキドキします。
少し明るくなってきて、周りの様子がわかってきました。獅子鼻岩の脇から岩場を下り、ハシゴを下って、さらにもう一度ハシゴを使うと平坦部まで降りていけそうです。ここまではっきりした標高差はわかりませんが、250m程度下ってきたのだと思います。
平坦部に着きました。振り返ると後ろは絶壁で、前には岩尾根が延々と伸びています。ここが地獄の1丁目かな?と思いながら先の岩尾根を進んでいきます。
今回の装備は縦走を前提にしていますので、テント、マット、水、食料などザック重量は、自宅での計測時15kgほどありましたが、ここまでに食料や行動食を消費しているので、ザック重量は13.5kg程度だと推測します。ザックは軽いに越したことはありませんが、体にしっかりと密着するザックを使えば(今回はOsprey Xenith75:以前の投稿あり)、岩場でもほとんど気になりません。
4時50分。あたりが明るくなってきました。まだ日の出前ですが、空の青さと常念岳のシルエットが綺麗です。反対側には先日、暴風雨で苦労した笠ヶ岳の勇姿があります。今の所風もなく絶好のアタック日和になりそうです。
振り返ると獅子鼻岩(写真左)。前方には北穂高へと続く尾根が見えます(写真右)。中央奥の小さい突起状に見えるピークが長谷川ピークです。
5時40分:長谷川ピーク(2841m)に到着です。通ってきたルートがはっきりとわかります(写真右)。また逆の南西側は切れ落ちた絶壁になっていますが、ここに来るまでに高度感が麻痺してきているので特に恐怖心もなく、ピークに座って行動食を摂ります。ここまでは順調ですね。前後を眺めても人の気配はなく、「大キレット貸切り!」状態なので、早起きは三文の得ということになります。
写真左が長谷川ピークを下り側から見た図です。ピークから先はナイフリッジの下りになっていて、おそらく大キレット一番の注意ポイントだと思います。特に岩が濡れていたり、風が吹くと危険度が一気に増す場所だと思いました。写真右がその全容ですがナイフリッジ状の岩場をバランス良く通過していくことになります。
ナイフリッジの上面は、要所要所に鎖が掛けてあったり、ステップが固定されたりしていますが、不安定な場所でなおかつ落ちたら終了と言う所なので、丁寧にこなしていく必要がありますね。ここが地獄の3丁目くらいかな?
長谷川ピークをこなし鞍部(A沢のコル)に出ますが、その先に次の地獄が待っています。「飛騨泣き」と呼ばれる岩綾帯で垂直の登りや崩落の進んだ岩場を切り返しながら高度を稼いていく場所です。右手に滝谷の岸壁を眺めながら左方向に進みます。遥か先の上部に北穂高小屋が見えてきます。あそこまで行くぜえ〜と気合が入るところです。
飛騨泣きには、垂直の登りがありますが、ピンやステップが打ち込まれているので、基本的には鎖を使って垂直に攀じ登るだけです。岩自体のホールドもしっかりしているので冷静に登れば特に難しいことはありません。
だいぶ高度を稼いできました。振り返るとはるか遠方に昨日登った槍ヶ岳が見えます(写真左)。進行前方には北穂高小屋が近づいてきました。地獄もだいぶ終了地点に近づきましたね。
北穂高小屋の裏手が大キレットの出口です。天候にも恵まれて充実したキレット踏破となりました。小屋到着が7時だったので、谷底にいた時間は3時間だったのですね。その間人に会わなかったので、写真を撮ったり景色を眺めたり、地図を広げたりと、すごくリッチな時間を味わった気がしました。大キレット最高です!
やはり印象深いのは、長谷川ピークからのナイフリッジの下りと、飛騨泣きの岩綾帯の登りですね。通常の山歩き以上に集中している自分が認識できました。 この後すぐに写真右の奥穂高岳を目指しました。大キレット後も結構な岩場です。穂高岳山荘手前の涸沢岳の登りがシビれました。
やはり、槍・穂高は日本を代表する山ですね! いろいろなルートがあるので単発で登ることもできるし、今回のように縦走で楽しむこともできます。夏休みの期間でしたが上高地の雑踏を離れ、非常に気分のよい山行になりました。 ありがとうございました。
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