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令和13年度に予定される新たな護衛艦用としてのレーダー国内開発が決定いたしました。
図1 高速高機動目標対処レーダー
引用URL:https://www.mod.go.jp/j/press/news/2024/01/25a.pdf
量産単価が約481億円と驚く声があるようですが、イージスの1000億円越えよりは安い(白目)!
ダイヤモンド半導体を使ったレーダー素子なら、安いくらいだ!
(前回記事):『 謎水騒ぎを仕様書と契約の観点から解説【自衛隊】 』
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(1)FCS-3性能陳腐化の教訓を生かすべき
FCS-3レーダーに比べると非常に高価になっており、驚くのは良く分かります。
図2 OPY-1
引用wiki
FCS-3が研究開発終了時に、すぐに性能向上型開発を迫られた苦い教訓を生かすべきでしょう。
1.1 ガリウムヒ素(GaAs)から窒化ガリウム(GaN)へ!
FCS-3については、試験艦「あすか」に搭載されていたGaAsのレーダー素子を基本にしていました。
図3 試験艦あすか
引用wiki
1990年代から2000年代には、ガリウムヒ素半導体がパワー半導体の主力であり選択は間違っていませんでした。
しかし1993年に実用化された青色ダイオードに使用するGaNについては、急速な技術進歩により一気に発展していきます。
図4 GaN素材
引用URL:https://www.ganpro.imass.nagoya-u.ac.jp/img/gan_img_01.jpg
商業ベースに乗って2001年頃から、多量のGaNパワー半導体が登場することになります。
運悪くFCS-3の開発完了(2000年)と同時期になってしまったため、たかなみ型護衛艦4番艦「すずなみ」への搭載が見送られます。
(1年FCS-3開発完了が速ければ、「すずなみ」からFCS--3搭載はあったそうです)
海自も急速にGaN対応型のFCS-3を準備することになります。
1.2 19DD「あきづき」からGaN搭載へ!
軍用レーダーについては、「枯れた技術」により信頼性の高いものが好まれます。
しかしながら19DDは、SPY-1F売り込みもあり焦ってGaN搭載レーダーとなりました。
図5 あきづき
引用wiki
しかし運用者からGaNレーダー素子の不評は、かなり激しいものがありました。
(MTBFが予想を上回るペースになってしまった)
パワー半導体としてのGaN素子は、技術的熟成がまだまだだったといえます。
最近ようやく故障が落ち着いてきているでしょう。
1.3 FCS-4(仮称)はどの素子で開発すべきか?
FCS-3の研究開始は1983年までにさかのぼるため、基本技術は1990年代を元にしています。
(関連記事):『 ついにFCS-4開発開始となるか?!【海上自衛隊】 』
今回開発される新型レーダーは、2010年代の技術が基本となります。
しかし将来性を考えると、レーダー素子については可能な限り最新鋭のものにすべきでしょう。
図6 モジュール
引用URL:https://www.eis-japan.com/wp/wp-content/uploads/2023/03/nxp_20230317-600x338.jpg
令和13年度(2031年)に予算計上となると、2036年(令和18年)以降に就役となります。
2030年代〜2050年代において、十分に活躍できるパワー半導体素子導入を検討すべきです。
SiC(炭化ケイ素)半導体が、当面の次世代半導体ですがその先を見る必要があります。
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(2)ダイヤモンド半導体という夢の素材
SiCはすでに商業品が出回り始めましたが、限界もあります。
図7 SiC半導体
引用URL:https://xtech.nikkei.com/dm/atcl/feature/15/032200080/032200001/100zu01.jpg?__scale=w:800,h:320&_sh=0810b0cd0c
省電力の装置としては優れていても、大電力高周波数に対応できません。
2.1 SiCは高周波数レーダー素子には向かない
次世代半導体であるSiCについては、早くから有効性が注目されてきました。
図8 半導体分布
URL:https://www.nedo.go.jp/content/100939129.pdf
比較的低周波については、SiCの効果があるでしょうが高周波数帯(GHz)ではGaNの方がまだ向いています。
米国のSPY-6/7がGaN素子を使用する理由も、大電力高周数数での使用を考えたものです。
一応SiC後継となる酸化ガリウム半導体(Ga?O?)の実用化が、2023年に発表されました。
図9 酸化ガリウム
引用URL:https://www.nict.go.jp/press/2013/06/4otfsk00000fobbo-img/20130619-3.png
しかし究極となる半導体開発が、実用化に向けて開発されています。
2.2 ダイヤモンド半導体?!のブレークスルー!
防衛装備庁が実施している安全保障技術研究推進制度で、ダイヤモンド半導体の技術的ブレークスルーが発生しています。
図10 安全保障技術研究推進制度
引用URL:https://www.mod.go.jp/atla/funding/seidogaiyo_20230810.pdf
この制度を利用して、2017年に発表されたのがGaN素子にダイヤモンド結晶被膜を接合する技術です。
図11 ダイヤモンド素子
引用URL:https://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/12/7b.jpg
G aN素子が作動するとき熱放出が激しいため、熱損失による性能低下が起きやすい現象がありました。
対策としてダイヤモンド半導体が理想とされましたが、実現はかなり困難でした。
そんな中で量産技術実用化も視野に入った、革命的研究成果が平成29年(2017年)に発表されています。
(プレスリリース:h ttps://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/12/7.html )
13DDのレーダーについて、このダイヤモンド素子を利用したレーダー開発が行われているかもしれません。
それであれば、量産単価約481億円も不思議ではありません。
2.3 枯れた技術と新技術の融合を!
軍用製品には、どうしても枯れた技術で信頼性の高いものが選ばれる傾向があります。
図12 UYK-44
引用URL:https://cdn.vox-cdn.com/uploads/chorus_asset/file/20744791/ows_137737721361019.jpg
UYK-44みたいな古いコンピューターが、軍用では現役であることからもうかがえます。
しかしながら新技術を適時に導入していかないと、FCS-3のように開発完了時に性能陳腐化ということも起きえます。
今後の技術進歩を適切にみていくべきでしょう。
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(3)ASBM/HGVは新たな脅威!
新世代の護衛艦は、HGVやASBMの脅威に晒されるようになりました。
図13 ASBM
引用URL:https://s.japanese.joins.com/upload/images/2022/04/20220421142724-1.jpg
第二のASMDとして備える必要があります。
3.1 イージスの1000億越えよりはいいよね!
護衛艦レーダーとしては、量産単価約481億円というのは高く感じるかもしれません。
しかし1967年のエイラート号事件以降、対艦ミサイル防御(ASMD)が現代海軍の基本となりました。
図14 ミサイル艇
引用wiki
近いうちにASBM/HGVによる艦船撃沈記録が出るのも、時間の問題でしょう。
そこから慌てて対策検討をするより、最初から大気圏外監視能力を持ったレーダーを開発すべきでしょう。
イージスシステムが約1000億円越えとなる中で、500億円弱で完成するなら儲けものです。
3.2 ダイヤモンドレーダー登場なるか?
将来的には、ダイヤモンドレーダー搭載護衛艦の登場もあり得るでしょう。
ステルス機やHGV/低RCSミサイル探知には、どうしても強力なレーダーが必要です。
今後の開発状況が楽しみですね。
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やはり枯れた技術こそ信頼性があり、大量生産による豊富な予備品在庫につながるんですよね。
財務省から予算を取るとき「世界最先端!世界唯一!」とやると予算が出やすいけど、第一線部隊に出すと初期故障・信頼性欠如の繰り返しになってしまいます。
この負のスパイラルをどうにかしないと、破局的な大失敗が発生する気がしてなりません。
(何某の現状を見ながら・・・)
「世界でこれしかない!!」でえらいことに・・・・
紅海での対艦弾道ミサイルやら巡航ミサイル・CIWSでの迎撃など新世代の戦闘が繰りひろげられています。
次期護衛艦は、そんなHGV/ASBM・巡航ミサイル迎撃などを前提にしたコンセプトにしないとかなり厳しくなるでしょう。
狭い海域なのでかなり緊張状態だと思われます。
イージスシステム搭載艦は、はっきり言ってイージス艦2隻増勢よりも費用対効果・LCCの面で不利であるといえます。
LCCを考えると、2隻40年で総額2兆円を超えることになるでしょう。(運用費が非常にかかる)
イージスシステム搭載艦のメリットデメリットは、
・メリット
?@アメリカのSPY-6取得プログラム計画に左右されず取得できる。(ソフトウェアは米国に頼ることになる)
?ASPY-7はSPY-6より大きいレーダー面積で搭載できる。
?B日本独自の改良や防衛産業の関与が望める。
?CSPY-1に続きロッキード社との長い協力関係が築ける。
・デメリット
?@海上試験費用は日本持ちとなり、1隻4000億円以上となる可能性もある。
?A水上艦である以上、定期点検で不稼働期間が発生する。
?B米国SPY-6との部品共用性が無いため、稼働率に不安がある。
?Cカナダ・スペイン以外に採用国が現れず、価格が高止まりする可能性が高くなった。
だいたいこんなところでしょうかね?
メリットデメリットなども教えて頂ければ、ありがたいです。