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2025年度(令和7年度)の概算要求が、続々と出てきました。
驚くべきは、海上保安庁の多目的巡視船建造要求!
図1 多目的巡視船
引用URL:https://www.mlit.go.jp/page/content/001760292.pdf
多数のヘリとゴムボート(GB)搭載による、住民避難をを支援する目的です。
けどこれってどう見ても強襲揚陸艦・・・
(前回記事):『 中国海軍艦艇も耐衝撃試験をやるんだね! 』
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(1)デカすぎ?!多目的巡視船!
海上保安庁が、多目的に使用できる巡視船を建造したいという気持ちはわかります。
図2 巡視船
引用URL:https://www.kaiho.mlit.go.jp/soubi-yosan/soshiki/ship/hida.jpg
洋上救難を主目的にすると、船体の缶多数の住民収容などに支障をきたします。
1.1 海保としては住民退避を目指したい
南西諸島や各地の離島から、災害などで住民避難を行う巡視船が欲しいというのは当然出て来るでしょう。
図3 口永良部島
引用URL:https://blogs.mbc.co.jp/mbcnews/cat_heisei/4855/
2015年5月に鹿児島県口永良部島噴火が発生したとき、民間フェリーが住民救出をしました。
海保としては全島避難などでは、民間船舶の手を借りることになります。
今後予想される南西諸島有事では、海保単独での住民退避を行う必要もあります。
1.2 全長200m3万トンはデカすぎ!
そんな中で海上保安庁から、多目的巡視船の要求が出てきました。
普段は、尖閣周辺の警備に従事して有事の際には住民退避に活用するものです。
図4 海上保安庁
引用URL:https://www.mlit.go.jp/page/content/001760292.pdf
しかしニュースを見て驚きました!
全長約200m排水量約3万トンという、超大型巡視船です。
どう考えても、強襲揚陸艦にしか見えません!
(関連記事):『 空母より強襲揚陸艦が欲しいのが海自の本音! 』
以前記事で、海自は強襲揚陸艦(多目的輸送艦)が欲しい!と書きました。
まさに海自が欲しいものを、海保が建造するという状況です。
1.3 文民保護の観点からは妙案ではある!
海保版強襲揚陸艦かどうかはともかく、国民保護の観点からは十分必要性があります。
日本ではあまり知られていない、ジュネーブ条約の文民保護識別マークが使用できます。
図5 文民保護マーク
引用URL:https://www.kaiho.mlit.go.jp/info/books/report2024/html/topics/images/006-05.jpg
2023年5月に海上保安庁で実証訓練が行われた、巡視船に文民保護マークを付けたものです。
ジュネーブ条約追加議定書では、このマークを付けた船舶は攻撃対象にしてはならないとしています。
台湾・南西諸島有事には、多目的巡視船の活躍機会は十分あるといえます。
ただ建造費680億円と、それに見合う運用が出来るかどうかです。
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感想(1件)
(2)建造はどこがする?病院船機能を付与する?
今回の多目的巡視船は、建造するにも大変なところになるでしょう。
図6 下関造船
引用URL:https://www.mhi.com/sites/g/files/jwhtju111/files/styles/desktop_image_style/public/2021-10/21100802-1.jpg.webp?itok=iCHD6CNL
海保巡視船とフェリー双方の、建造経験が無いとかなり難しいでしょう。
2.1 下関か玉野か横浜か?
3万トンの多目的巡視船については、基礎となる大型フェリーがあります。
図7 フェリーあざれあ
引用wiki
新日本海フェリーがかつて所有していた、「フェリーあざれあ」「フェリーしらかば」がモデルになりそうです。
全長約200m、乗客約1000人や多数の車両を搭載していました。
IHI東京工場(既に閉鎖)で建造しており、IHI横浜で建造が出来るでしょう。
対抗馬として、三菱マリタイムシステムズ下関工場・玉野工場と言ったところです。
図8 三菱玉野
引用URL:https://www.mhi.com/jp/group/mhimts/sites/g/files/jwhtju2256/files/styles/crop_freeform/public/2024-03/mhimts_mv_01_pc.png?itok=yvYjjqSz
2.2 ウェルドックを作るなら玉野工場が有利かな?
多目的巡視船に、ウェルドック(船体内乾ドック)を付けるなら玉野工場が有利です。
図9 ウェルドック
引用wiki
離島から小型船舶で巡視船に住民を運ぶとき、直接艦内に収容できるウェルドックは有利です。
GBなどの小型ボートでいちいち吊り上げるより、よほど簡単です。
玉野工場は、建造経験があるため有利でしょうがもはや強襲揚陸艦です。
2.3 病院船構想と区別しないとね!
かつて政府主導で、災害対策用の病院船構想がありました。
図10 病院船
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/B7tsFCACUAEumIh?format=jpg&name=900x900
検討していくにつれ、強襲揚陸艦が最適との結論が出てきています。
病院船とは区別して、多目的巡視船は活用していくべきでしょう。
尖閣警備巡視船専従部隊への、母船補給機能があってもいいかもしれません。
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(3)離島警備住民避難体制の整備を!
南西諸島有事では、12万人の避難者輸送に10日かかるとの試算が出ました。
図11 住民避難
引用URL:https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO4355683023012024000000-3.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=319&h=319&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=77dddda92c6534ea0ceeb30559c8ce56
これはもっと真剣に、住民退避活動を検討すべきでしょう。
3.1 ウクライナ戦争の戦訓
ウクライナ戦争では、住民退避行動に多くの教訓を残しています。
図12 住民退避
引用URL:https://images.wsj.net/im-615739/square
ウクライナでは、2014年のドンバス紛争から内務省主導で住民退避が行われました。
2022年の開戦後、住民退避は各所で急務になっています。
今後とも多目的巡視船などを利用した、住民退避活動には留意しましょう。
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最近の船舶が、水素・メタノール・LNG・アンモニアなどいろんな燃料を使用して試行錯誤をしているのは、やはりNox規制が大きそうですね。
今年の夏に、一般公開でLNG燃料船舶の機関室を見る機会がありましたが物凄い排気系のぎ装で非常に驚きました。
JAMSTECの運航体制も、昔と違い大変革しているのですね!
昔に見学したときは、直轄船員と委託会社で運行していましたが激変する海事業界の動きがスゴイ状況になるのですね。
業界の実情を知ることができ、大変勉強になります。
最近建造が進むメタノール燃料使用の新造船が、結構建造工程に時間がかかる>
メタノールとA重油それぞれを燃料として使用できる高性能二元燃料エンジンを搭載するため、複数の燃料管系統が存在し、かつメタノール燃料に水を混ぜて燃焼温度を調整する新技術を採用してNOx3次規制(IMOが定める船舶航行時のNOx排出量削減に関する第3次規制で、2016年に第1次規制前から80%の削減を求めるもの)を排ガス再循環システム(EGR)や選択式触媒還元脱硝装置(SCR)なしで達成しようとする新造船も居るので、機関回りが相当な工程がかかります(室内外の各種設備や配管が既存船より多いため)。
大島造船所が三菱長崎の香焼工場を手に入れたのも手っ取り早く大きい艤装岸壁を取得するためでしたから。
https://newswitch.jp/p/42566
https://www.mol.co.jp/pr/2023/23006.html
北極探査船は、MOLが運航契約を取得したのは結構驚き>
この8年ばかりJAMSTECとその周辺で結構な改編がありまして。
まず、2016年にGODIが船員派遣業に特化(JOGMECの3D船「たんさ」の船員派遣業を受けたため、「ちきゅう」と並んで3隻体制は厳しい=6隻分の船員が必要)して「みらい」の運航管理を日海事に移しました。
https://www.godi.co.jp/gaiyo/history.html
次いで移管時の東大海洋研との取り決めで直接管理していた「白鳳丸」を2019年度から外部に委託(東大海洋研から移ってきた連中が概ね一掃されたので、厄介払いした)することになって入札したら、日海事ではなくMOLマリン&エンジニアリングが取りました(外国航路に出る可能性のある船はニッスイ系の日海事だと厳しい。MOLM&EはKDDI系のケーブル敷設船や三井海洋開発(MODEC)系の作業船の経験があり、抱えている船員もそれなりに居る)。
https://www.jamstec.go.jp/j/about/procurement/ships/pdf/sow_hakuhomaru.pdf
https://www.jamstec.go.jp/j/about/procurement/ships/pdf/bid_opening_result.pdf
上記の流れで北極域研究船も取ったということです(取れなかった日海事は2020年から都立大島国際海洋高の実習船「大島丸」の船員派遣業に手を出しています)。
https://www.molmec.com/services/offshore/
https://www.nme.co.jp/education/#oshimamaru
コメント失礼します。
新そうやが建造された理由はそういうことだったんですね。初めて知りました、ありがとうございます。今のしらせって舞鶴で建造されてましたね。
造船業界の建造船台は、やはり結構きつめになっているのですね。
最近建造が進むメタノール燃料使用の新造船が、結構建造工程に時間がかかることは知りませんでした。
そうなると、新造・修理で船台が厳しいかもしれませんね。
(しかもこめ国の艦艇修理を、横浜・磯子・長崎でやるともっと大変になりそうです)
北極探査船や砕氷巡視船新造が、JMU横浜でしかできないのがここに来て厳しくなってきましたね。
砕氷巡視船「てしお」の代替も、そろそろ必要になるため横浜の船台キャパはかなり厳しいところです。
北極探査船は、MOLが運航契約を取得したのは結構驚きです!
(いつもの会社が取るかと思っていたので・・・)
造船業界のキャパシティー>
JMUについては商船建造を他の工場でも行える利点>
JMUについていえば、
大型のバラ積み運搬船:津
コンテナ船:呉とその他(今治とかとのコンソーシアム建造)
タンカー(VLCC):有明と呉
という割り振りです。IMOは国際海運のGHGを2050年までに実質ゼロにする目標を掲げていて、ゼロエミッション船への代替などにより相応の新造船需要(重油焚きではなくメタノール焚き)が27年頃まで続きます(新燃料船は艤装が多く、従来に比べて工程が伸びる)。
影響を与えるとしたら新大陸の蛮人の艦船ではありませんか?横浜どころか鶴見や因島や玉野にまで入り込んできたので。。。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB2397K0T20C23A5000000/?msockid=37a36f7b009c6ec712f67c4101766f8f
@新そうやは横浜で建造
砕氷機能を持った船舶はJMU(旧日立→ユニバーサル系)でしか建造できません(しかも舞鶴は新造船建造を止めた)。現在関わっているJAMSTECの北極域研究船もJMUです(運航はMOL)。
https://www.jamstec.go.jp/parv/j/blog/20230630.html
現状では、大型巡視船については横浜・下関・玉野で分け合っている状況です。
商船建造も復活して来たところがあり、あまり余裕が無いのが現状といえますがJMUについては商船建造を他の工場でも行える利点があります。(まだ余裕があるといえます。)
三菱マリタイムも、比較的手空きの玉野事業所に仕事を割り振れる利点を持っており、最悪長崎事業所で建造が出来ます。
今回の多目的巡視船は、下関・玉野・横浜どこでも建造できる余裕はあるといえます。
(けど下関が有利かなあ?玉野はFFMで忙しいみたいです)
初のコメント失礼します。ssaoと申します。
多目的巡視船の建造について幾つか気になっている点があるのでコメントさせていただきます。
近年の大型巡視船は下関と玉野で主に建造されていますが、東シナ海や尖閣諸島警備を優先した結果、老朽化している巡視船が多くあり、今後は代替分の建造と増強分の建造を同時並行にやる可能性が高く、造船業界のキャパシティーは大丈夫なのでしょうか?
海自と海保と比べるとゆっくりですが、水産庁も増強をしていますし大型の漁業取締船2隻が船歴約30年で、昨今の漁業取締船も規制能力を高めるため、巡視船に似た船を建造している影響か玉野や横浜で建造されているので尚更です。
8月30日に進水した新そうやは横浜で建造されたので、
下関と横浜は大型巡視船
玉野は多目的巡視船
の様な振り分けでしょうか?
>実は先例があります
マジですか!しかも現職時代に見かけたことのある船!
(海保所属の信号なのに、民間船舶会社船員が乗ってて不思議に思った船です)
お役所の前例主義に沿って、海上保安庁の多目的巡視船についても同様の運用が可能になるかもしれませんね!
(ただ問題はやはり海員組合・・・)
やはり特殊船舶だと、下関が有力になりそうですね。
海自も護衛艦ふゆづき建造で、玉野工場にはエラい目に遭いました。
なんで11m複合作業艇と揚収ダビッドのサイズが合わないんですかあああ(怒)!!!
(5センチずれていて、複合作業艇のプロペラガードパイプ取付位置をずらす結果に)
海保の単独予算で建造運用するよりは、RO-ROフェリー船舶の借り上げの方が安上がりになるかもしれません。
万能輸送艦として、デリックや色々ついてるとオランダ・スペインが共同開発した「エンフォーサー給揚陸艦」(ロッテルダム)が16DDHの初期案によく酷似しているのを思い出します。
(おおすみ型の後継艦に使えるかもしれません)
組織の垣根を越えた海自や商船会社との協力で運用ノウハウの早期確立を期待>
問題は、ノウハウを持った乗員確保でありPFIも視野に入れて置くべき>
実は先例があります(しかも関わっていました)。大陸棚延伸調査の際に、国連が定める09年5月の期限内までに調査を間に合わせるため、04年に経団連主導で会社立てて(=日本大陸棚調査株式会社)、そこに外国から調査船買ってきて海保所管(=海洋情報部の大陸棚調査室)の船に仕立てて公船扱いで調査していたので、マンニング(船員派遣=非組合員)会社を作ってそこから派遣してもらう形ならば可能かもしれません(=JOGMECの3D船方式)。
@造船所
先日就役した海保大の練習船「いつくしま」や測量船「平洋」が下関ですから、下関が本命ですかね。対抗で玉野(ただ、測量船「昭洋」で散々な目に遭わされ・・・)。横浜は鉄砲付けた船を優先させたいらしいので、船台の空き状況によるというところでしょうか。
>まるで揚陸艦!? 海保が「異形の巨大巡視船」建造へ 広大なヘリコプター甲板も 完成はいつ?
>自衛隊の輸送船部隊「大拡充」なぜ? 民間船も巻き込み4年で一大勢力に “本気度”感じる驚きの計画
海保の予算が少ないのは言われていたので、え?海自のPFIに協力して、30kt出るROROフェリーの旧船を確保で良いのでは、とも思います
ただ、計画案の船見ると右舷に車出入りできるランプを持ち、甲板に重量物積載用クレーンとコンテナ、後甲板はヘリ甲板、舷側に揚陸艇?用のデリックがあります
万能揚陸輸送艦?16DDHの最初の船橋が大きい案を思い出しました
海上保安庁としても、住民保護のために全力を尽くすために計画したと思われます。
ジュネーブ条約の「安導船(非武装)」に適合させるため、FCSも搭載しない方針かもしれません。
問題は、ノウハウを持った乗員確保でありPFIも視野に入れて置くべきでしょう。
これほどの船体規模にもかかわらずFCS付き機関砲といった武装を搭載しないあたりが南西有事における文民保護を強く意識したコンセプトになっているのではないかと想像します。
能力を本格的に発揮するにはマンパワーが必要な船だと思いますが、海保が無理なく乗員を手配できると信じたいです。
ウェルドックがつくかはわかりませんが、海保には揚陸艦や車両が自走できるランプを持った船はないので、組織の垣根を越えた海自や商船会社との協力で運用ノウハウの早期確立を期待します。