男性の怒鳴り声が響いていた。
長靴に帽子、長髪を後ろで束ねた
60歳前後と思われる人が
カウンター(?)で2人の職員を相手に
わめき散らしていた…。
その怒鳴り声を聞いて
僕はすぐに気持ち悪くなってしまい目を伏せた。
それを見たケースワーカーさんが
「少し離れた席へ行きましょうか」と
遠い席へ誘導してくれた。
1年ほど前、保健福祉課の窓口で
怒鳴り散らしている男性と遭遇した。
区役所で怒りを露にする人に出逢うのは
今回で二度目だけど、慣れるものではない。
「タクシーの領収書が〇〇なんて知らん!」
「古着屋で売った額まで知らせろってのか!」
「俺は〇〇しろなんて話は聞いてねぇぞ!」
そんなようなことを
繰り返し叫んでいた気がする。
雇用保険の受給と違い、
生活保護を受けるとお年玉やお小遣いを含め
文字通りすべての収入を知らせないといけない。
リサイクルショップで何かを売った額も、
メルカリやフリマの売上金額も。
そんな収入申告の関連で不満を訴えていたのかなと
勝手に想像しながらも、耳を塞いで遠ざかった。
「生活保護課には、ああいう人は多いですか?」
ケースワーカーさんに聞いてみた。
「まぁ、たまに居ますね…。」
少し申し訳なさそうに答えてくれた。
クレーマーと呼んでいいのかわからないが、
所得が少ない人の生活に直接関わる部署だけに、
なおさら心に余裕がない人が怒鳴り込んでくるんだろう。
僕は今、こうして生活保護の受給者となるくらいだから、
本当に食べ物や家がなくなる恐怖に潰れかけたことはあるし、
どれだけ人から余裕を奪うかは一応わかるつもり。
一時期は食欲でさえも、あるのかないのか
わからなくなったこともあった。
→「 食の選択肢が狭いとどうなるか。」
https://fanblogs.jp/yaritaikotohanokosazuyaru/archive/317/0
擁護するわけではないが、あの怒鳴ってた人も
相当追い詰められてるんだろう。
家を失うレベルまでお金の心配が大きくなると、
本当に目の前以外の何も見えなくなる。
少し前の話だけど、よく行くスーパーで
やっぱり60代くらいの男性が学生相手にキレて、
警察沙汰になるシーンを目撃した。
この人もそうだし、区役所の人もそうだと思うけど、
明日の生活費も見えない不安に加えて
人から相手にされない寂しさも
きっと追い打ちをかけている。
貧困と孤独の二重苦が
彼らから余計に自制心を奪っている。
→スーパーで遭遇した警察沙汰事件。
「 「キレる」背景にある寂しさ。」
https://fanblogs.jp/yaritaikotohanokosazuyaru/archive/364/0
ただね、
怒りとして出しちゃアカンよ。
誰も救われないよ。
公共の場で怒鳴り散らしてる人に
手を差し伸べたいと寄り添ってくれる人は
きっと少ないよ。
本心では悲鳴なんだと思う。
どうしようもできない無力感、一向に上向かない生活水準、
明日への大きな不安、人が離れていく孤独感。
なのに、表現方法として怒鳴ることを選んでしまった。
だから誤解を生み、軋轢を生み、余計に人が離れる悪循環。
「伝え方が9割」と聞くけど、本当にその通りで、
自ら助け船を遮断してしまってる。
もっと違う方法で助けを求められれば、
敵を増やさなくて済んだのになぁ。
あの場ではすごく嫌な思いをしたし、
彼の怒鳴り声で嬉しい気持ちになった人は少ないだろう。
だけど、あんなふうに感情に自制心が呑み込まれた人は
いなくならないのかなぁと、悲しい気持ちになった。
古着を売った金額よりも、タクシーがどうのこうのよりも、
本当は何に怒ってるんだろう。
怒りに満ちた人生の根本には
どんな寂しさや悲しみが潜んでいるんだろう。
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