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2016.01.24
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カテゴリ: アート
<『絵画の向こう側・ぼくの内側』2>
図書館で横尾忠則著『絵画の向こう側・ぼくの内側』というエッセイ集を手にしたが・・・
各お話が、それぞれ2~3頁におさまり、まとまっていて読みやすいのである。

巻末の説明によれば、週刊「読書人」2011年4月から2013年7月に連載された原稿を加筆訂正したものとのことで・・・納得した次第です。



横尾

横尾忠則著、岩波書店、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
絵画とは何か。描くとはどのような行為なのか。アトリエで、記憶の中から、人や物との出会いの瞬間ー創造への道は開かれる。日常の中で問い続けた独自の思索を集成する、横尾忠則的現代美術への旅。
【目次】
1 美術の森羅万象(初めに破壊ありき/絵の中の文字のこと ほか)/2 現在という場所(絵が描き手を導く/見えないものは描かない ほか)/3 カレイドスコープ(アンリ・ルソーールソーと戯れる/パブロ・ピカソー無意識下のピカソへの軌跡 ほか)/4 記憶からの視線(星空からの視線/「夢枕」に立った龍 ほか)

<読む前の大使寸評>
各お話が、それぞれ2~3頁におさまり、まとまっていて読みやすいのである。
巻末の説明によれば、週刊「読書人」2011年4月から2013年7月に連載された原稿を加筆訂正したものとのことで・・・納得した次第です。

rakuten 絵画の向こう側・ぼくの内側


先日、横尾さんが奨める『マグリット事典』を読んだところだが、その横尾さんが、マグリットのような物語的作品への決別を語っています。
マグリット


<物語的作品からの脱却> p61~62
 ぼくの今までの作品はかなり物語を主題にしたものが多い。どうしてかよくわからないけれど、このような作品になってしまう。なにか他動的な働きが作用しているのかも知れない。といって、ぼくが物語を嫌いかといったらその反対だ。にもかかわらず、最近は物語的な作品から脱却したいという要求が強くなってきている。

 今までは物語絵画が好きだった。例えばマグリットとポール・デルボーらのシュルレアリストの作品だ。しかし、このような物語作家はどういうわけか固定した様式から一歩も出ようとしない。

 マグリットなどは、ある時期固定した自らの様式を破ろうとして、ルノアール・スタイルの絵や表現主義的な絵を試みて、なんとか自分のスタイルを破壊しようとしたが、結局失敗に終わって、再び元のスタイルに戻ってしまった。それにマグリットは自らの物語性を否定したわけではない。主題はそのままで様式だけを変えようとしたわけだ。

 ぼくがしたいことは物語の否定だ。ピカソの主題は、日記的というか日常的だ。彼の主題はそんなに多岐にわたっていない。恋人や子供の肖像だったり、ヌードや静物画が中心の、限定された主題である。ピカソは、そのわずかな主題を多岐にわたる様式で描き分けていく。それはまるで肉体の運動のように躍動している。そしてその一点一点が絵画的実験の反復である。反復といっても同じ様式を繰り返さない。またそこには物語が否定されている。

 ピカソの絵を見ていると、絵画はこうあるべきだという霊感を受けざるを得ない。ぼくにとって、物語こそぼくの絵画の核のようなものであった。その核を捨てようとしている。ぼくの内なる声がそれを求め、「お前の物語の時代は終わったよ」と言っているのが微かに聞こえてくるのである。一番後生大事にしていた物語を捨てるということは、いったいどういうことなんだろう。

 まだ煮え切らない状態だが、物語を捨てる時期に来ているような気がする。しがみついていたものからの自立である。

 絵画における物語は、絵画の歴史の初期から21世紀の現代まで連綿と続いている。だけど、ロマン派を最後に絵画は物語から日常の生活や事物を描く印象派に移り、物語が絵画の主題から後退したかに思えたが、シュルレアリスムで再び心理的物語が復活し、さらに1980年代の新表現主義に至って、再び物語の復権が台頭し始めた。

 ぼくが画家に転じた80年代の初頭と重なるために、ぼくの絵画が物語性を帯びたのだろうと思われる。と考えると、現在のぼくは新表現主義の亡霊から脱却していないことになる。もしかしたら、この意識がぼくを物語と決別させようとしているのかも知れない。

 絵画における物語は、下手をすると文学的に解釈されかねない。このような危機感を、ぼくの内なる声が察知しているのかも知れない。主題に引きずられる前に、フォルムの研究こそ最優先すべき主要課題である。今ぼくはY字路ではないが、岐路に立たされているような気がする。


『絵画の向こう側・ぼくの内側』1 byドングリ
『マグリット事典』 byドングリ






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Last updated  2016.01.24 17:06:37
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