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2016.02.01
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カテゴリ: 経済
図書館で『人口減少時代の住宅政策』という本を手にしたが・・・
少子高齢化時代の昨今、現状の建売住宅、マンション、公営団地の行末、再生などが気になるわけで・・・・
目下のところ「空家の処分、延命、再生」が、大使のミニブームとなっているのです。



住宅

山口幹幸, 川崎直宏著、鹿島出版会、2015年刊

<商品説明>より
人口減少、少子高齢化、環境問題、災害対策ーー、未曽有の課題に直面する日本社会で住宅政策はいかに機能するか。社会の写し鏡としての住宅政策を戦後70年の軌跡から読み解き、成熟社会に向けた展望を開く。
■第1部 住宅政策が変えたもの(戦後70年のエポック)
萌芽期(戦前~1964)/高度経済成長期(1965~1974)/政策模索期(1975~1984)/バブル期(1985~1994)/政策転換期(1995~2004)/低成長期(2005~)
■第2部 人口減少時代の論点住宅政策と10の論点
日本の住宅政策について/人口減少・少子高齢化社会/住宅の公共投資(社会資本整備)/都市居住と郊外居住/環境・エネルギー・防災問題と住宅/建築技術・生産・住宅計画

<読む前の大使寸評>
少子高齢化時代の昨今、現状の建売住宅、マンション、公営団地の行末、再生などが気になるわけで・・・・
目下のところ「空家の処分、延命、再生」が、大使のミニブームとなっているのです。

rakuten 人口減少時代の住宅政策


この本の「はじめに」で、ニッポンの住宅問題の概観が述べられています。
p6~7
<はじめに> より
 わが国の人口は、2008年をピークに減少しはじめている。欧米に比べて極端に低い出生率が原因で、高齢化と相まって日本経済や私たちの社会生活は大きな影響を被ることになる。
 出生率を改善し、人口減を食い止める方策が求められるなか、地方から都市への人口流出、とくに子を産む中心世代である若年女性の減少が地方都市の消滅につながるとし、にわかに自治体を含めて少子化対策に本腰を入れ始めた。

 昨今では、生きがいや自身の存在感を地方移住する若者たちが増えているが、都市に魅力を感じて流入する若者も後を絶たず、この自然な流れを意図的に変えるのも難しい。
 であるならば、東京など大都市に住む世帯形成期・子育て期にある世帯が、安心とゆとりをもって暮らせる住生活の環境改善にもっと力を注ぐべきであり、これは住宅政策に直結する課題といえる。


大使はドングリ国で、阪神・淡路大震災後に鉄骨系のプレハブ住宅を建てのであるが・・・
黎明期のプレハブ住宅が気になるので見てみましょう。
p68~7
<2-09 戸建て住宅プレハブの躍進> より
 プレハブ住宅は、低層住宅の分野ではわが国においてのみ定着したもので、一大産業を形成するまでに至った。それは日本人の生活様式や住宅市場という点で諸外国に比べ恵まれた条件もあるが、量産化の手法のみならず、住まいの性能や機能のより高度な快適性を追求してきた成果ともいえる。先進的な住宅部品の共用化などで従来工法にも影響を与え、住宅産業全体の資質向上に大きく寄与してきた。

 わが国のプレハブ住宅は戦後間もなく産声を上げたが、当時はいずれも企業としては成功せずに消えていった。1955(昭和30)年の大和ハウス工業の「パイプハウス」が民間市場で成功した初のプレハブ建築とされる。1959年の同社の「ミゼットハウス」は、量産化され、コストが安いことなどから爆発的に当時の社会に受け入れられた。この刺激もあり、翌年には積水化学工業の「セキスイハウスA型」、翌々年に松下電工の「松下1号」などが相次いで発表され、本格的なプレハブ住宅へと発展していった。

 この一連の動きは産業界に大きなインパクトを与えることになり、昭和30年代中ごろから鉄鋼や建築材料のメーカー、化学工業などが母体となったプレハブ住宅の生産が始まり、鉄骨系、木質系、コンクリート系など多くの住宅メーカーと開発技術者を誕生させた。(中略)

 この背景には、企業自らが銀行とともに開拓したプレハブ住宅ローン、公団や公社、電鉄会社などと提携した団地開発、代理店や特約店方式による販売網や住宅総合展示場による独自の販売方法、プレハブ建築協会の設立、住宅金融公庫の不燃組立て住宅への割増融資制度などの取組みがある。これらは、庶民や工務店の住意識の向上に影響を与えるとともに、企業の技術開発に刺激を与え、住宅の普及と住宅産業の成長支援につながった。


現代の時代状況を見てみましょう。
p160~161
<6 本格的な都市の縮退時代に向けて> より
 1970(昭和45)年に都市計画決定し、事業が開始されたわが国最大のニュータウン開発である多摩ニュータウン事業が2005年に修了したことで、これまで高度成長期を支えてきた郊外の計画住宅地における住宅供給が終焉を迎えた。また、2006年、住生活基本法が制定され、国民の住生活の安定の確保を目的として「住生活基本計画」の策定が閣議決定されたが、まさにその年、わが国の総人口が減転、本格的な都市の縮退時代に入った。

 まさに、低成長時代の到来である。人口減少・少子高齢化の進展など、社会経済情勢の変化にともない、高齢者の介護や見守り・生活支援、省CO2対策、地域防災への対応、増え続ける空き地や空き家対策など、これまでの時代以上に、輻輳したさまざまな問題が顕在化している。そして、2011年3月11日に発生した東日本大震災は、こうした事態を加速化させた。

 住宅政策の分野においては、高度経済成長期に大量供給されたマンションや郊外住宅団地が更新期を迎え、建替え問題が顕在化している。また、高齢者の増加にともなう住宅のバリアフリー化や在宅介護、介護施設やグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの質の確保と円滑な住替えが課題となりつつある。さらに、単親高齢者や片親世帯の子育て層、低所得者などの住宅確保など、さまざまな問題に対応を迫られている。

 住宅ストック面で捉えると、住宅の新規供給から既存ストックの活用・長寿命化を重視しながら持続的な再生が求められている。また、住宅などのハードな空間整備のみならず、地域マネジメントなどソフト施策を含め、地域コミュニティを再生し、多用な世帯が安心して暮らせる住生活の総合的な再生が求められる。


住宅政策の来し方、今後の展開を山口さんが述べているが・・・
これまでは戦略性が欠如していたとかなり手厳しいのです(笑)。
p215
<これからの住宅課題と市場政策の方向:山口幹幸> より
 今後一層の展開が期待される政策のひとつは、既存住宅ストックの活用である。住宅数はすでに供給過多となり、ストックの改善や建替えに軸足を移す必用がある。しかし、分譲マンションでは老朽ストックが増大する一方、建替えが円滑に進まないことや空き家の発生などから管理面の問題も懸念される。

 中古住宅を住まい方に応じ、改造するリノベーションも価格などから取得需要が少なく、事業の伸び悩みも見られる。新築と同様に高地価が住宅価格形成に大きく影響している。これらの原因は大都市での住宅政策に有効な土地政策を絡めた方策が欠如していることにある。

 もうひとつは、高齢者の安心居住、住環境の地域管理、地球環境や省エネルギーなどである。これら住環境に関わるテーマは単独でなく住宅供給と一体的に対処すべき問題であり、モデルによる検討を経て住宅供給の方向性を示し、総合的な政策として市場に働きかけることである。
(中略)

 こうして過去の住宅政策を振り返ると概して戦略性が欠如していたといえよう。政策は体系的な緒策であり、将来を見通した長期的、総合的視点に立った方策をもたねばならない。 






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Last updated  2016.02.01 06:38:57
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