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2019.08.13
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カテゴリ: 経済
図書館に予約していた『新・日本の階級社会』という新書を、待つこと約1ヵ月でゲットしたのです。
おお 楽天の日別ランキング (美容・暮らし・健康・料理) のトップではないか♪
でも、ジャンル分けがちょっとヘンやで。





橋本健二著、講談社、2018年刊

<「BOOK」データベース>より
豊かな人はより豊かに、貧しい人はより貧しくー「日本型階級社会」の実態!!!
【目次】
第1章 分解した「中流」/第2章 現代日本の階級構造/第3章 アンダークラスと新しい階級社会/第4章 階級は固定化しているか/第5章 女たちの階級社会/第6章 格差をめぐる対立の構図/第7章 より平等な社会を

<読む前の大使寸評>
おお 楽天の日別ランキング (美容・暮らし・健康・料理) のトップではないか♪
でも、ジャンル分けがちょっとヘンやで。

<図書館予約:(7/18予約、8/10受取)>

rakuten 新・日本の階級社会


「第7章 より平等な社会を」で生活保護の実態を、見てみましょう。
p282~286
■生活保護制度の実効性の確保
 今日の日本では、生活保護制度が機能不全の状態にある。というのは、本来は生活保護を受ける権利のあるはずの貧困層のごく一部しか、生活保護を受けることができていないからである。

 生活保護を受ける資格がある貧困層のうち、実際に生活保護を受給している人の比率を捕捉率という。それは、どれくらいの比率になるのか。2010年に厚生労働省は、2007年の国民生活基礎調査のデータの再集計して、捕捉率の推定結果を公表した。これによると生活保護基準以下の低所得世帯は705万世帯だった。これに対して当時の生活保護受給世帯は108万世帯だったから、補給率はわずか15.3%である。膨大な数の貧困層が、生活保護を受けることのできないままに放置されているのである。

 この15.3%という捕捉率は、他の先進国に比べて著しく低い。尾藤廣喜らによると、ヨーロッパ諸国の捕捉率は、スウェーデンが約82%、ドイツが64.6%、フランスが91.6%、英国は対象者の属性によって異なるが、47-90%だという。生活保護制度は、明らかに機能不全の状態にある。

 なぜ日本の捕捉率はこんなに低いのか。少なくとも、二つの理由がある。一つは、受給条件が厳しすぎること、もう一つは「水際作戦」の存在である。

 受給条件でとくに問題なのは、預貯金である。原則として生活保護申請時に預貯金があってはならず、最大でも最低生活費の1ヵ月分程度までの預貯金だけを認めるとされている。ひとり暮らしなら約10万円、家族がいてもせいぜい20数万円程度だろう。

 このため収入が少ないにもかかわらず、預貯金があるために生活保護を受けられない世帯がきわめて多い。先に紹介した厚生労働省の推計によると、生活保護基準以下で生活保護を受給いていない世帯は597万世帯だが、このうち最低生活費の1ヵ月分以上の預貯金のある世帯が368万世帯ある。現状ではこれらの世帯には生活保護の受給資格がないので、この分を引いて計算すると、捕捉率は32.1%になるのだという。

 生活費に充てることのできる預貯金がたくさんある、たとえば大企業や官公庁を定年退職した後の高齢者世帯を、生活保護の対象から外すというのは理解できなくもない。しかし預貯金は、生活費に充てるためだけにあるのではない。急に病気になったときの備え、近く進学を迎える子どもの学費、高齢の家族がいる場合は葬儀のための費用、その他急な出費が必要になったときのためにも、預貯金は必用である。にもかかわらず、1ヵ月分の生活費相当額までしか預貯金を認めていないために、生活保護の受給資格のある人の範囲が、著しく狭められているのである。

 このため多くの低所得世帯は、ささやかに貯金を取り崩して生活を続けたのちに、ようやく貯金が尽きて、幸か不幸か生活保護基準を満たすようになる。このため保護開始の理由をみると、「貯金等の減少・喪失」である世帯は月平均で5520世帯にも上がり、全体に対する比率は32.2%で、病気や失業などを押さえて堂々の第一位なのである。
(中略)

 水際作戦とは、自治体の一部にみられる対応で、生活保護を申請しようとして窓口にやってきた住民を、いろいろな理由をつけて追い返して申請させないようにしたり、理由にならない理由で申請を却下したりすることである。申請を水際で阻止するということから、関係者の間でこのように呼ばれてきた。またすでに生活保護を受給している住民に対し、受給を辞退するよう迫るというようなこともしばしば行なわれてきており、これを含めてこのように呼ぶ場合もある。

 申請させなかったり、申請を却下したりする口実としては「まだ働けるのだから仕事を探しなさい」「親族に養ってもらいなさい」「持ち家がある人は受けられない」などが多い。いずれも生活保護を受けさせない理由にはならない違法な対応である。
(中略)

 自治体が水際作戦に走る最大の原因は、生活保護費の財源の四分の一が自治体の負担になっていることだろう。生活保護費がかさむと自治体財政が苦しくなるわけだから、制度が自治体を水際作戦に追いやっているといっても過言ではない。

 生活保護制度は、憲法で保障された生存権、つまり「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を守るためにあるのだから、全額を国が負担すべきだろう。自治体の財政状況によって、生存権が保障される地域とされない地域が出てくるなどということがあってはならないからである。

 しかし生活保護費の削減を進めてきた日本政府が、全額負担を受け入れる見込みは当面ないから、さしあたっては、生活保護制度の運用を監視するしくみを作ることが有効だろう。これには、簡単な方法がある。総務省が5年ごとに行っている「就業構造基本調査」のデータを使えばいいのである。調査対象は100万人以上と多く、調査項目は、家族構成、世帯年収、職業の有無、職業がある場合には産業、職種、従業上の地位、企業規模、労働時間、その仕事から得ている年収など、幅広い。

 このデータを使えば、都道府県はもちろんのこと、一定以上の人口のある市区町村についても、貧困率を計算することができる。これを実際の生活保護需給率と比較すれば、生活保護制度がうまく機能していない地域、つまり水際作戦が行なわれていたり、自治体が怠慢だったりする地域はどこかということが一目瞭然となる。そうした地域に対しては原因を調査し、制度の運用を改善させればいい。


『新・日本の階級社会』1





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Last updated  2019.08.14 08:50:45
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