近代日本文学史メジャーのマイナー

近代日本文学史メジャーのマイナー

Calendar

Archives

2024.12
2024.11
2024.10
2024.09
2024.08
2024.07
2024.06
2024.05
2024.04
2024.03

Profile

analog純文

analog純文

全て | カテゴリ未分類 | 明治期・反自然漱石 | 大正期・白樺派 | 明治期・写実主義 | 昭和期・歴史小説 | 平成期・平成期作家 | 昭和期・後半男性 | 昭和期・一次戦後派 | 昭和期・三十年男性 | 昭和期・プロ文学 | 大正期・私小説 | 明治期・耽美主義 | 明治期・明治末期 | 昭和期・内向の世代 | 昭和期・昭和十年代 | 明治期・浪漫主義 | 昭和期・第三の新人 | 大正期・大正期全般 | 昭和期・新感覚派 | 昭和~・評論家 | 昭和期・新戯作派 | 昭和期・二次戦後派 | 昭和期・三十年女性 | 昭和期・後半女性 | 昭和期・中間小説 | 昭和期・新興芸術派 | 昭和期・新心理主義 | 明治期・自然主義 | 昭和期・転向文学 | 昭和期・他の芸術派 | 明治~・詩歌俳人 | 明治期・反自然鴎外 | 明治~・劇作家 | 大正期・新現実主義 | 明治期・開化過渡期 | 令和期・令和期作家
2012.12.31
XML
カテゴリ: 明治期・明治末期

『千鳥』鈴木三重吉(岩波文庫)

 世間にはいろいろな趣味があるもので、と書いている私も、人から見たら変な趣味だと思われるであろう事は、何となく薄々と感じております。
 何のことをまた書き出したのかと言いますと、いえ、本ブログのことなんですがね。

 本ブログも、もうすぐ450回になんなんとし、わたくし、やっと最近自分のやっていることの意味が少しだけ分かりつつあるのですが、よーするに、私の趣味は、ははーん、読書感想文を書くことであるのだな、と。

 で、自分でも思うんですが、たぶんほとんどの方がそうであったろうと思うのですが、小学校の頃、夏休みの宿題でもっとも嫌だったものベスト3(「ワースト3」?)をアンケートしたら、その中に入ってくるであろう宿題が、読書感想文ではなかったか、と。
 (残りの嫌だった宿題ベスト3の候補としては、おそらく「夏休み絵日記」とか、あと、「自由研究」! あれも大概大変でしたよねー。そんなに毎年毎年、夏のたびに研究したいことのテーマなんてありませんて。)

 とにかく、わたくしもみなさまの例に漏れず、夏休みの読書感想文には大いに頭を痛めていたはずなのですが、しかし偉いモンですねー、あの頃から時は移り時代は流れ、今では誰に強制されるわけでもないのに、自分で勝手に読書感想文を書いているではありませんか。
 ……うーん、……何といいますか、我が事ながら実に奇々怪々であります。

 その上、読んでいる本がこれまた、例えば、正宗白鳥とか徳田秋声とか田山花袋とか、たぶん今年一年間にこれらの作家の本を読んだ人、日本中から集合! と募っても、どこか商工会議所の50人規模の小会議室に充分入っちゃう数じゃないでしょうか、きっと。
 そんな、ピンポイントな読書感想文が趣味ですというのは、やはり客観的に見て、少し変人(ヘンタイでは、ありませんよねぇ、なんとか)であるでしょーなー。はは。

 さらにその読書感想文につきましてですが、内容がないので、読みやすいんではないかと常々思ってはいたのですが、今回、はたと、読みやすいとは何か、いえ、正確に言えば、読みにくいとは何か、ということを考えた次第であります。
 というのも、冒頭の本書でありますが、これが実に読みにくい小説であったのですが、何で私はこんなに読みにくく思うのだろうかと、読みながらとても不思議に感じたのでありました。

 わたくし、鈴木三重吉の小説というのは以前に『桑の実』と言うのを読み、本ブログでも報告しています。その記事は、さほど感動したというものではないがそれなりのものだったかなという書きぶりであります。

 ただ、これも不思議なんですが、確かに時々こんな本って、ありますよね。
 どんな本かというと、読み終えた直後は感動したわけでもなく、さほど高評価を下したわけでもないのに、その後内容もどんどん忘れていった後になって、へんに好印象の残る本なんですが、そんな本って、ありませんか。

 そんな本として、今ふっと浮かぶのが、これまた我ながらきわめて変なチョイスなんですが、古山高麗雄の『プレオー8の夜明け』なんてタイトルが、本当に脈絡なく浮かんできます。(なんでこの小説が浮かんできたんでしょうかね? この小説についても、一応本ブログで報告していますが。)

 ともあれ、そんな後日悪くない印象を持った『桑の実』と同様なものかと、今回冒頭短編集を読んだのですが、これが読むのにとても時間が懸かりました。
 総タイトルにもなっている「千鳥」は、漱石の絶賛を受けたんですね。
 漱石という人は、新しい才能を発見するのが好きな人で、事実何人もの「本物」の新しい才能を発見しています。

 例えば芥川龍之介とか中勘助とかが有名どころでしょうが、一方でご存じのように名だたる「漱石山脈」には、実作者として大成したと言える作家はいません。見事に、いません。敢えて言えば芥川がそうでしょうが、彼にしても実働10年で終わってしまいました。(近年、芥川の高評価については見直されつつあるとも漏れ聞きます。)

 そんな漱石発見の「千鳥」でありますが、うーん、私としてはやはりとても読みにくかったですねぇ。
 これはたぶん、描写の「息」が短いせいではないかと、私はまず思いました。
 描写の「息」が短いと、読者が頭の中でそのイメージを作った時には、実際の文はもう次の対象の描写に移行しており、その結果読者は次々と頭の中で新しいイメージを追っかけていかねばなりません(それも、短いので十分に形作れずに)。それが、けっこう大変。

 頭の中の一つのイメージから次のイメージへの移行に、心地よいジャンプ感覚のある文章もあるでしょうが、どうも本書はそんな感じのものではないように思いました。
 そこで、とても、読みにくい、と。

 かなり雑駁な推論で何とも情けないのですが、いくら私の大好きな漱石が褒めていても、やはり本作は、筆者の若書きではないかと思うのであります。
 本文庫には最後に筆者の解題がありますが、24歳の作と触れられています。
 24歳にもなっていりゃとんでもないような素晴らしい作品を書く人もいるでしょうが、まぁ、筆者の師匠の漱石は、その年にはまだ「坊っちゃん」もしていなかったんですから(漱石が松山に行くのは29歳ですね)、これはこれで、まずまずなものであるのでしょうかね。


 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓

俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2012.12.31 11:58:59
コメント(0) | コメントを書く
[明治期・明治末期] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Favorite Blog

徘徊日記 2024年12… New! シマクマ君さん

やっぱり読書 おい… ばあチャルさん

Comments

analog純文 @ Re[1]:父親という苦悩(06/04)  七詩さん、コメントありがとうございま…
七詩 @ Re:父親という苦悩(06/04) 親子二代の小説家父子というのは思いつき…
analog純文 @ Re:方丈記にあまり触れない方丈記(03/03)  おや、今猿人さん、ご無沙汰しています…
今猿人@ Re:方丈記にあまり触れない方丈記(03/03) この件は、私よく覚えておりますよ。何故…
analog純文 @ Re:漱石は「I love you」をどう訳したのか、それとも、、、(08/25) 今猿人さんへ コメントありがとうございま…

© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: