近代日本文学史メジャーのマイナー

近代日本文学史メジャーのマイナー

Calendar

Archives

2026.05
2026.04
2026.03
2026.02
2026.01
2025.12
2025.11
2025.10
2025.09
2025.08

Profile

analog純文

analog純文

全て | カテゴリ未分類 | 明治期・反自然漱石 | 大正期・白樺派 | 明治期・写実主義 | 昭和期・歴史小説 | 平成期・平成期作家 | 昭和期・後半男性 | 昭和期・一次戦後派 | 昭和期・三十年男性 | 昭和期・プロ文学 | 大正期・私小説 | 明治期・耽美主義 | 明治期・明治末期 | 昭和期・内向の世代 | 昭和期・昭和十年代 | 明治期・浪漫主義 | 昭和期・第三の新人 | 大正期・大正期全般 | 昭和期・新感覚派 | 昭和~・評論家 | 昭和期・新戯作派 | 昭和期・二次戦後派 | 昭和期・三十年女性 | 昭和期・後半女性 | 昭和期・中間小説 | 昭和期・新興芸術派 | 昭和期・新心理主義 | 明治期・自然主義 | 昭和期・転向文学 | 昭和期・他の芸術派 | 明治~・詩歌俳人 | 明治期・反自然鴎外 | 明治~・劇作家 | 大正期・新現実主義 | 明治期・開化過渡期 | 令和期・令和期作家
2025.10.19
XML
​   『プールサイド小景・静物』庄野潤三(新潮文庫)

 この度、わたくしなかなかいろんなことを考えさせられるいい短編小説集を読みました。感動したといってもいいと思います。
 ただ、こんな風にちょっと奥歯にものの挟まったような書き方になったのは、本短編集を読了するまでに、あれこれいろんな知識や読書体験があったからであります。

 ちょっと順にさかのぼって書いてみますね。
 私がこの作家の小説を始めて読んだのは、多分高校3年生のことです。なぜそんな事を覚えているかというと、ちょうどそのころ私は、受験勉強もいい加減にして、芥川賞受賞作品読書にはまっていたからであります。

 結果的には、すべての受賞作品が読めたわけではないのですが、ぽつぽつと芥川賞受賞作品を、主に新潮文庫で探して読んでいました。今では、「芥川賞全集」という本が、家の近くの図書館にもあることを知っているのですが、そのころはそんな本があることを知らず、わりと地道に丁寧に本屋さんで探して買っていました。

 で、私は冒頭の新潮文庫を買いました。(ただし今回読んだのは新たに購入した本で、なぜ新しく購入したかというと、高校時代に買った本はもう本の周りが焼けてしまっているうえに活字が小さくて、ちょっと読もうかという気にならなかったからです。だから今回読了したのは二冊目の新潮文庫。)

 そして「プールサイド小景」を読みました。これが芥川賞受賞作です。
 ところが、かつてはその一作だけしか、私は読まなかったんですね。なぜなら、他の作家の未読の受賞作が他にも一杯あったからです。多分そのころ私は、前後して吉行淳之介の「驟雨」や安岡章太郎の「悪い仲間」や小島信夫の「アメリカン・スクール」等を読みました。そちらのチョイスを優先したんですね。

 いわゆる「第三の新人」以外の作品も読みましたが、ちょうどあの辺り(1953年から57年あたり)は、本当に第三の新人グループの作家のものが次々に芥川賞をとっていて、私はそれらの作品の中でも、この「プールサイド小景」は、(高校生のくせに)「悪くない」という印象を持ったのでした。(今でもそれを覚えています。)

 で、私はこの文庫本の中の一作だけを読んで、残りはまた今度読もうと思いつつ、えらいもんですねー、もう半世紀が過ぎようとしていますよ。

 その半世紀の私の読書遍歴については、書き出すと切りがありませんので置いておいて、次に私が庄野潤三の作品を手に取ったのは数年前でした。(今、その記録を探ってみれば、もう十年近く前になっています。えーーっ。速いものですねー。)

 『庭のつるばら』。
 その読書報告がこの拙ブログにあります。私はあまり感心していないんですね。それどころか、ちょっとひどいことを書いたりしています。ただ、私の真面目な所は(自分で書くなよー)、そんな読書体験をした時ほど、ちょっとその作品について調べてみようと思ったりするところでありまして、その時も作者や作品について調べました。そして、幾つかの知識を手に入れました。
 しかし、その時もやはり他の庄野作品を読むには至らず、今回の読書まで、さらにその時から十年近くも経ってしまったわけです。

 で、やっと、冒頭の文庫本、七つの収録作品すべてを読みました。
 今回の読書までにあれこれ雑多な知識がすでに私の頭の中に挟まっていましたが、それらを丁寧に取り除いて、本作品たちだけについての読後感想を述べれば、とても面白かったです。

 私の読書歴でいっても近来まれにみる、いい短編集を読んだなあというものでした。
 総タイトルになっている「プールサイド小景」と「静物」は良かったですねー。特に、少し長い目の短編「静物」は良かった。

 同時に、上記に書いた『庭のつるばら』の、我が嫌な感じの感想に繋がる「足取り」めいたものの正体も、私なりに納得しました。
 そしてそのあと私はふっと、村上春樹の本を手に取ったんですね。この本です。

『若い読者のための短編小説案内』(文芸春秋)

 確かこのなかに「静物」についての批評がなかったか、と。

 ありました。読みました。(再読です。)
 で、私はちょっと驚きました。
 ここには、私が感じたものと同じ内容の分析がある、と。

 ……えー、すみません。
 別に、私が村上春樹並みの小説読解力を持っているといいたいわけでは、本当に、本当に、心底そうではありません。
 この村上本も私は過去に読んでいますから、表面上は忘れていても、実は今回の読書も村上本の内容に無意識に導かれた感想を持ったに過ぎないとも十分に考えられます。
 だから、まー、これは、主観、驚いた時の私の主観にすぎないものでということで、ご容赦いただければと存じますー。

 ということで、もうあっさり、村上感想の引用をさせていただきますね。こんな風に書いてあります。

 「舞踏」と「プールサイド小景」といった初期の作品を初めて読んだ人はおそらく、「この人がこういう方向でこれからどんどん成熟して伸びていけば、ほんとうに素晴らしい小説家になるんだろうな」と考えるのではないでしょうか。そのような来るべき小説を手にとって読んでみたいと思う。僕もそう思いました。ところがそういう方向にはいかない。
 「静物」に行っちゃうわけです。
 いや、僕は何もそれを非難しているわけではありません。「静物」は文句なく素晴らしい作品だし、僕は大好きです。ただ、ああ、行っちゃったんだなと、それだけです。(略)それ自体は素晴らしい。でもそこから先は、どこか別の方向に行っちゃうしかない、ということです。ここまで書いてしまうと、もうほぐしがきかない。

 いかがですか。上手に解説していますねー。私は上記に、私の考えていたことと一緒だと厚かましくも書きましたが、こうして書き写してみると、たぶん似ているのは全体の十分の一くらいの内容だと思います。(実に申し訳ない。)

 さらに数ページ先に、これも私が感じていたのと同じ内容(もー、やけくそに書いてます)の、上記引用文でいえば「どこか別の方向」に多分関係してのことが、こんな風に書いてあります。

​ 小説を書くという責任を行為的に完璧に果たすことによって、小説的責任(小説自身の責任)をねじ伏せることは可能です。しかしそれはいつまでも続けられることではない。この「静物」という作品はまことに見事な作品だけれど、その鋭敏な切っ先の部分で、ほとんど目に見えないほどの先端の部分で、小説的責任を見切っている(もっと強く言えば、放棄している)……そういう印象を僕は受けざるを得ないのです。そんなことを言う資格が僕にあるかどうかはおいておくとして。​

 ここも見事ですね。
 というわけで、私は本小説を読んで思いがけず、小説と作家の実生活の関係(あるいは作家の社会的責任や、さらには文学的既成事実なども)について、改めてあれこれと考えました。
 ただ、単独でこの短編集のことだけの感想ならば、上記のくり返しになりますが、この本は圧倒的にできのいい作品集だと思います。
​​​
​​​
 よろしければ、こちらでお休み下さい。↓ 
   ​ にほんブログ村 本ブログ 読書日記





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2025.10.19 15:08:32
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Comments

シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21) 純文さんへ  あたたかいお返事ありがとう…
analog純文 @ Re[1]:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  シマクマ君さんへ。  おや、思わぬお方…
シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  いつも読ませていただいてます。あのせ…
analog純文 @ Re[3]:無理筋仮定を考えてみる(12/28)  七詩さんへ、重ねてのコメントありがと…
七詩 @ Re[2]:無理筋仮定を考えてみる(12/28) analog純文さんへ 私もときどき読書日記を…

© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: